JP2024031698A - 鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】被削性に優れ、高周波焼入れ時の溶融割れを抑制でき、機械構造用部品とした場合に優れた疲労強度を有する鋼材を提供する。【解決手段】鋼材は、質量%で、C:0.30超~0.60%、Si:0.01~0.55%、Mn:0.50~1.65%、P:0.050%以下、S:0.010~0.200%、Bi:0.0001~0.0050%、Ca:0.0001~0.0050%、Al:0.001~0.005%、N:0.0030~0.0250%、及び、O:0.0030%以下、を含有し、明細書中の式(1)を満たす。鋼材中の微細硫化物の個数密度は20個/mm2以上であり、粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm2以下であり、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm2以上である。【選択図】図3

Description

本発明は、鋼材に関し、さらに詳しくは、機械構造用部品の素材となる鋼材に関する。
自動車及び建設車両のクランクシャフト等に利用される機械構造用部品には、高い疲労強度が求められる。そこで、疲労強度の向上のために、機械構造用部品に対して表面硬化処理が施される場合がある。
種々の表面硬化処理のうち、高周波焼入れは、必要な部位のみ硬化させることができる。さらに、高周波焼入れは高温で加熱した後に冷却するため、軟窒化処理等の他の表面硬化処理と比較して、深い硬化層深さ及び高い疲労強度を得ることができる。そのため、機械構造用部品には、高周波焼入れが施される場合が多い。例えば、機械構造用部品の1種であるクランクシャフトの疲労強度を向上させるために、図1に示すフィレットR部1を高周波焼入れする技術が実用化されている。
近年、機械構造用部品のさらなる疲労強度の向上が求められている。高周波焼入れを利用して硬化層深さを大きくするためには、高周波焼入れにおいて、高周波電力の出力を増加して加熱温度を高めればよい。しかしながら、高温で高周波焼入れ処理を実施する場合、機械構造用部品のエッジ部(エッジ部はたとえば、機械構造用部品が図1に示すクランクシャフトの場合、符号2で示される部分に相当)で、加熱温度が過剰に高くなりやすい。特に、高周波焼入れ時の昇温速度が速い場合、加熱温度が過剰に高くなりやすい。たとえば、高周波焼入れにおける加熱温度が過剰に高くなり、1350℃以上となった場合、鋼材の表層又は内部の一部が溶融して割れが発生する場合がある。以下、このような割れを、本明細書では、「溶融割れ」という。機械構造用部品において、溶融割れの発生は抑制される方が好ましい。つまり、高周波焼入れを実施する場合には、溶融割れの抑制が求められる。
機械構造用部品の素材となる鋼材を用いて機械構造用部品を製造する場合、機械構造用部品はたとえば、次の方法で製造される。初めに、熱間鍛造を実施して、機械構造用部品に近い形状の機械構造用部品の中間品を製造する。その後、中間品に対して切削加工を実施する。切削加工後の中間品に対して、高周波焼入れを実施する。高周波焼入れ後の中間品に対して、さらに仕上げ加工(切削加工又は研削加工)を実施して、機械構造用部品を製造する。つまり、機械構造用部品の素材となる鋼材を用いて機械構造用部品を製造する場合、高周波焼入れ前、及び、高周波焼入れ後の二度にわたり切削加工又は研削加工が実施される場合がある。そのため、機械構造用部品の素材となる鋼材には、高周波焼入れ前の中間品においても、高周波焼入れ後の中間品においても、優れた被削性が求められる。
機械構造用部品の素材となる鋼材は、たとえば、特開2017-082299号公報(特許文献1)、特開2003-226934号公報(特許文献2)、及び、特開2004-91886号公報(特許文献3)に開示されている。
特許文献1に開示された製品部材は、C:0.4~0.7%、Si:0.25%以下、Mn:0.5~2.6%、P:0.050%以下、S:0.005~0.020%、Nb:0.01~0.06%、Al:0.010~0.050%、N:0.005~0.025%及びO:0.003%以下を含有し、かつ、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。ここで、式(1)は、17.0≦25.9C+6.35Mn≦27.2である。この製品部材の製造工程中において、高周波焼入れ及び焼戻しの条件を適切に制御する。これにより、高周波焼入れ及び焼戻し後の焼入れ材では、最終形態である製品部材の表面に相当する位置から20μmの深さ位置に相当する基準位置での組織が、マルテンサイトと体積率で8~20%の残留オーステナイトとを含む。さらに、焼入れ材に対する切削加工条件を適切に制御する。これにより、この製品部材では、基準位置での組織において、残留オーステナイトの体積率が12%以下であり、切削前の残留オーステナイト体積率(RI)と切削後の残留オーステナイトの体積率(RF)から式(A)によって求められる残留オーステナイト減少率Δγが40%以上となり、表面の算術平均粗さRaが0.8μm以下である。ここで、式(A)は、Δγ=(RI-RF)/RI×100である。この文献では、製品部材の化学組成と、高周波焼入れ後の組織及び硬さと、切削加工後の組織及び算術平均粗さと、を制御する。これにより、製品部材の疲労強度及び被削性を向上させる。
特許文献2に開示された機械構造用鋼は、C:0.05~0.8%、Si:0.01~2.5%、Mn:0.1~3.5%、S:0.01~0.2%、Al:0.001~0.020%、Ca:0.0005~0.02%、O:0.0005~0.01%及びN:0.001~0.04%を含有し、さらに、Ti:0.002~0.020%及びZr:0.002~0.040%の1種又は2種を含有し、残部が不可避の不純物およびFeからなる化学組成を有する。特許文献3に開示された機械構造用鋼は、Si、Ti及びZr含有量の上限以外、特許文献2の機械構造用鋼の化学組成と同じである。特許文献3の機械構造用鋼では、Si含有量の上限が2.0%であり、Ti含有量の上限が0.010%であり、Zr含有量の上限が0.025%である。特許文献2の機械構造用鋼は、CaO含有量が0.2~62重量%の酸化物系介在物と接して存在する、1.0重量%以上のCaを含有する硫化物系介在物の占有面積が、視野面積3.5mm当たり2.0×10-4mm以上である。特許文献3の機械構造用鋼では、特許文献2の機械構造用鋼の酸化物系介在物について、融点が1500~1750℃である点をさらに限定している。特許文献3の機械構造用鋼では、特許文献2の機械構造用鋼の硫化物系介在物のCa含有量について、1~45重量%である点をさらに限定している。特許文献2及び特許文献3では、MnS介在物が微細に分散することにより、被削性を向上させる。
特開2017-082299号公報 特開2003-226934号公報 特開2004-91886号公報
しかしながら、上述の特許文献1~3では、少なくとも、被削性及び疲労強度については検討されているものの、高周波焼入れ時の溶融割れの抑制については検討されていない。
本発明の目的は、被削性に優れ、高周波焼入れ時の溶融割れを抑制でき、機械構造用部品とした場合に優れた疲労強度を有する鋼材を提供することである。
本発明による鋼材は、
質量%で、
C:0.30超~0.60%、
Si:0.01~0.55%、
Mn:0.50~1.65%、
P:0.050%以下、
S:0.010~0.200%、
Bi:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Al:0.001~0.005%、
N:0.0030~0.0250%、及び、
O:0.0030%以下、を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
前記鋼材中において、
円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明による鋼材は、
質量%で、
C:0.30超~0.60%、
Si:0.01~0.55%、
Mn:0.50~1.65%、
P:0.050%以下、
S:0.010~0.200%、
Bi:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Al:0.001~0.005%、
N:0.0030~0.0250%、及び、
O:0.0030%以下、を含有し、
さらに、第1群~第4群からなる群から選択される1種以上を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
前記鋼材中において、
円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。
[第1群]
V:0.400%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.050%以下、
W:0.400%以下、及び、
Zr:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第2群]
Mg:0.0100%以下
Te:0.0100%以下
B:0.0050%以下
Sn:0.0100%以下、及び、
希土類元素:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第3群]
Co:0.0100%以下、
Se:0.0100%以下、及び、
Sb:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第4群]
Cr:0.30%以下、
Mo:0.30%以下、
Cu:0.50%以下、及び、
Ni:0.50%以下、からなる群から選択される1種以上
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
本発明の鋼材は、被削性に優れ、高周波焼入れ時の溶融割れを抑制でき、機械構造用部品とした場合に優れた疲労強度を有する。
図1は、機械構造用部品であるクランクシャフトの一部を示す正面図である。 図2は、本発明の範囲外である鋼材を100℃/秒の昇温速度で1350℃以上まで加熱して15秒間保持し、その後、水冷した後のミクロ組織の模式図である。 図3は、本実施形態の鋼材を100℃/秒の昇温速度で1350℃以上まで加熱して15秒間保持し、その後、水冷した後のミクロ組織の模式図である。 図4は、各模擬機械構造用部品の中間品から採取した回転曲げ疲労試験片の模式図である。
本発明者は初めに、被削性に優れ、機械構造用部品とした場合に優れた疲労強度を有する鋼材の化学組成について検討を行った。その結果、本発明者は、化学組成が、質量%で、C:0.30超~0.60%、Si:0.01~0.55%、Mn:0.50~1.65%、P:0.050%以下、S:0.010~0.200%、Ca:0.0001~0.0050%、Al:0.001~0.005%、N:0.0030~0.0250%、O:0.0030%以下、を含有し、任意元素を含有する場合はさらに、上述の第1群~第4群からなる群から選択される1種以上を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼材であれば、被削性に優れ、機械構造用部品とした場合に優れた疲労強度を有する可能性があると考えた。
次に、本発明者は、化学組成中の各元素含有量が上述の範囲内である鋼材において、高周波焼入れ時の溶融割れを抑制できる手段を検討した。初めに、本発明者は、鋼材に溶融割れが発生する原因を特定するために、高周波焼入れ時に溶融割れが発生した部位のミクロ組織を観察した。その結果、溶融割れが発生した部位では、脱炭が生じていなかった。一方、脱炭が生じている部位では、溶融割れが発生しなかった。
この結果から、本発明者は、高周波焼入れ時の鋼材に発生する溶融割れには、C含有量が影響すると考えた。具体的には、本発明者は、粒界に偏析するCにより溶融割れが発生しやすくなると考えた。そこで、本発明者は、粒界にCが偏析するのを抑制する手段について検討した。
本発明者は、鋼材中に生成する硫化物に着目した。具体的には、鋼材中の硫化物が微細であれば、高周波焼入れ時の鋼材の溶融割れを抑制することができると考えた。その理由は次のとおりと考えられる。微細な硫化物は、ピンニング効果により、高周波焼入れ時の鋼材中のオーステナイト(γ)粒の粗大化を抑制する。硫化物が微細であれば、ピンニング効果が高まる。高周波焼入れ時において、γ粒が微細に維持されれば、γ粒の粒界面積が増大する。粒界面積が増大すれば、単位面積当たりの粒界に偏析するCの濃度が減少する。その結果、高周波焼入れ時の鋼材の溶融割れの発生が抑制される。
次に、本発明者は、鋼材中に生成する硫化物を微細化する手段について検討した。その結果、上述の化学組成にさらに、Biを0.0001~0.0050%含有することにより、鋼材中に微細な硫化物を生成することができることを知見した。具体的には、鋼材中に生成する硫化物の多くは、凝固前の溶鋼中又は凝固時に晶出する。鋼材の凝固組織は、一般的に、デンドライトの形態となる。凝固時において、MnやS等の溶質元素はデンドライトの樹間部に濃化しやすい。そのため、MnS等の硫化物は樹間に晶出する。Biを0.0001~0.0050%含有することにより、デンドライトの樹間の間隔が短くなる。そのため、デンドライトの樹間に晶出する硫化物を微細化することができる。
以上より、Biを適量含有して、鋼材中に生成する微細な硫化物の個数密度をある程度確保することにより、高周波焼入れ時の溶融割れを十分に抑制することができると考えた。そこで、この効果を十分に発揮する微細な硫化物の個数密度について、さらに調査及び検討を行った。その結果、上述の化学組成の鋼材において、円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度が20個/mm以上であれば、高周波焼入れ時の溶融割れを十分に抑制できることを、本発明者は見出した。
しかしながら、本発明者のさらなる調査の結果、Biを含有すれば高周波焼入れ時の溶融割れの発生は抑制されるものの、高周波焼入れ後の仕上げ加工工程(切削加工又は研削加工)において、工具の摩耗が促進される場合があることが判明した。そこで、本発明者は、その原因について調査した。その結果、本発明者は、次の新たな知見を得た。
溶融割れの抑制のために鋼材にBiを含有する場合、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子が生成する場合がある。高周波焼入れ後の中間品は、高周波焼入れ前の中間品よりも硬い。そのため、高周波焼入れ後の中間品を切削や研削(以下、切削等ともいう)する場合、高周波焼入れ前の中間品を切削等する場合よりも、切削等の加工時の発熱が大きくなりやすい。粗大Bi粒子は、融点が低い。そのため、高周波焼入れ後の中間品に粗大Bi粒子が存在する場合、切削等の加工時の発熱で粗大Bi粒子が溶融して切削等の工具と反応する。そのため、切削等の工具が局所的に脆化する。その結果、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗が促進される。
以上の知見に基づいて、本発明者は、粗大Bi粒子の生成を抑制することにより、高周波焼入れ後の中間品の切削等において、切削等の工具の摩耗を抑制することを考えた。しかしながら、高周波焼入れ後の中間品の切削等では、粗大Bi粒子を抑制しても、切削等の工具の摩耗を十分に抑制できない場合があることが判明した。そこで、本発明者は、その原因について調査した。その結果、本発明者は、次の新たな知見を得た。
切削等の工具の摩耗を抑制するためには、Caを含有する酸化物(以下、Ca含有酸化物ともいう)を鋼材中に生成することが有効である。鋼材中のCa含有酸化物は、切削等の加工時の発熱で軟化する。そのためCa含有酸化物は、切削等の工具の表面に付着し、堆積する。Ca含有酸化物が工具に堆積すれば、切削等の工具の摩耗は抑制される。
そこで、本発明者は、鋼材中にCa含有酸化物の生成を促進させる手段について検討を行った。その結果、本発明者は、化学組成中の各元素含有量が上述の範囲内である鋼材において、さらに、式(1)を満たせば、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を十分に抑制できる可能性があると考えた。
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
しかしながら、単に鋼材中にCa含有酸化物を生成させるだけでは、切削等の工具の摩耗を十分に抑制できない場合がある。具体的には、鋼材中にCa含有酸化物を十分に生成させた場合でも、切削等の工具の表面に十分にCa含有酸化物が堆積しない場合がある。そこで、本発明者は、切削等の工具の表面にCa含有酸化物を十分に堆積させるための手段についてさらなる検討を行った。その結果、Biを含有するCa含有酸化物、つまり、BiとCaとを含有する酸化物系介在物であれば、切削等の工具の表面に堆積するCa含有酸化物の量を増加させることができることが判明した。
BiとCaとを含有する酸化物系介在物は、Ca含有酸化物とBi粒子とを含む。上述のとおり、Bi粒子は、低融点である。そのため、Bi粒子は、発熱量の多い高周波焼入れ後の中間品の切削等の加工時の発熱により、Ca含有酸化物よりも軟化しやすい。BiとCaとを含有する酸化物系介在物であれば、軟化したBi粒子が、Ca含有酸化物と切削等の工具との接着を促進する。そのため、切削等の工具の表面に堆積するCa含有酸化物の量が増加する。
以上の検討結果に基づいて、本発明者は、上述の化学組成の鋼材において、上述の式(1)を満たし、鋼材中の粗大Bi粒子の個数密度をなるべく抑制し、さらに、BiとCaとを含有する酸化物系介在物の個数密度をある程度確保することにより、高周波焼入れ後の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を十分に抑制できる可能性があると考えた。そこで、これらの効果を十分に発揮する粗大Bi粒子の個数密度、及び、BiとCaとを含有する酸化物系介在物の個数密度について、さらに調査及び検討を行った。その結果、上述の化学組成の鋼材において、円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度が20個/mm以上であることを前提に、上述の式(1)を満たし、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度が2.00個/mm以下であり、円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上であれば、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を十分に抑制できることを、本発明者は見出した。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による鋼材は、次の構成を有する。
[1]
鋼材であって、
質量%で、
C:0.30超~0.60%、
Si:0.01~0.55%、
Mn:0.50~1.65%、
P:0.050%以下、
S:0.010~0.200%、
Bi:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Al:0.001~0.005%、
N:0.0030~0.0250%、及び、
O:0.0030%以下、を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
前記鋼材中において、
円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である、
鋼材。
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
[2]
鋼材であって、
質量%で、
C:0.30超~0.60%、
Si:0.01~0.55%、
Mn:0.50~1.65%、
P:0.050%以下、
S:0.010~0.200%、
Bi:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.0050%、
Al:0.001~0.005%、
N:0.0030~0.0250%、及び、
O:0.0030%以下、を含有し、
さらに、第1群~第4群からなる群から選択される1種以上を含有し、
残部はFe及び不純物からなり、
各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
前記鋼材中において、
円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である、
鋼材。
[第1群]
V:0.400%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.050%以下、
W:0.400%以下、及び、
Zr:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第2群]
Mg:0.0100%以下
Te:0.0100%以下
B:0.0050%以下
Sn:0.0100%以下、及び、
希土類元素:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第3群]
Co:0.0100%以下、
Se:0.0100%以下、及び、
Sb:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第4群]
Cr:0.30%以下、
Mo:0.30%以下、
Cu:0.50%以下、及び、
Ni:0.50%以下、からなる群から選択される1種以上
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
[3]
[2]に記載の鋼材であって、
前記第1群を含有する、
鋼材。
[4]
[2]又は[3]の鋼材であって、
前記第2群を含有する、
鋼材。
[5]
[2]~[4]のいずれか1項に記載の鋼材であって、
前記第3群を含有する、
鋼材。
[6]
[2]~[5]のいずれか1項に記載の鋼材であって、
前記第4群を含有する、
鋼材。
以下、本実施形態の鋼材について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[本実施形態の鋼材の特徴]
本実施形態の鋼材は、次の特徴1~特徴5を満たす。
(特徴1)
化学組成中の各元素含有量が本実施形態の範囲内である。
(特徴2)
化学組成が式(1)を満たす。
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
(特徴3)
鋼材中において、円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上である。
(特徴4)
鋼材中において、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下である。
(特徴5)
鋼材中において、円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。
以下、特徴1~特徴5について説明する。
[(特徴1)化学組成について]
本実施形態の鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.30超~0.60%
炭素(C)は、鋼材を素材として製造された機械構造用部品の硬さを高め、機械構造用部品の疲労強度を高める。C含有量が0.30%以下であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、C含有量が0.60%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粒界にCが偏析する。この場合、粒界でのC濃度が高くなる。C濃度が高まれば、融点が低下する。そのため、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、C含有量は0.30超~0.60%である。
C含有量の好ましい下限は0.35%であり、さらに好ましくは0.36%であり、さらに好ましくは0.38%である。
C含有量の好ましい上限は0.55%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.45%である。
Si:0.01~0.55%
シリコン(Si)は、製鋼工程において鋼を脱酸する。Siはさらに、機械構造用部品の硬さを高め、機械構造用部品の疲労強度を高める。Si含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、SiはCとの親和力が弱い。そのため、Si含有量が0.55%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、加熱時において、Cは、Siが固溶している粒内よりも、粒界に偏析しやすくなる。その結果、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、Si含有量は0.01~0.55%である。
Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。
Si含有量の好ましい上限は0.50%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Mn:0.50~1.65%
マンガン(Mn)は、製鋼工程において鋼を脱酸する。Mnはさらに、機械構造用部品の硬さを高め、機械構造用部品の疲労強度を高める。Mnはさらに、Cとの親和力が強い。そのため、加熱時において、CはMnが固溶している粒内に留まる。そのため、Cの粒界への偏析が抑制され、高周波焼入れ時の溶融割れの発生が抑制される。Mn含有量が0.50%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Mnは鋼材の融点を低下させる。そのため、Mn含有量が1.65%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。Mn含有量が1.65%を超えればさらに、鋼材の硬さが過剰に高まる。その結果、高周波焼入れ前の中間品を切削する場合の被削性が低下する。
したがって、Mn含有量は0.50~1.65%である。
Mn含有量の好ましい下限は0.55%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.70%である。
Mn含有量の好ましい上限は1.60%であり、さらに好ましくは1.55%であり、さらに好ましくは1.45%であり、さらに好ましくは1.40%である。
P:0.050%以下
燐(P)は不純物である。Pは粒界に偏析する。そのため、Pは鋼材の融点を低下させる。そのため、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。したがって、P含有量は0.050%以下である。
P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は製造コストを高める。したがって、通常の工業生産を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
P含有量の好ましい上限は0.030%であり、さらに好ましくは0.025%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.015%である。
S:0.010~0.200%
硫黄(S)は硫化物を生成し、高周波焼入れ前の中間品を切削する場合の被削性を高める。Sはさらに、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制する。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。Sはさらに、微細硫化物を生成し、高周波焼入れ時の溶融割れを抑制する。S含有量が0.010%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Sは鋼材の融点を低下させる。そのため、S含有量が0.200%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、S含有量は0.010~0.200%である。
S含有量の好ましい下限は0.012%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.018%であり、さらに好ましくは0.020%である。
S含有量の好ましい上限は0.150%であり、さらに好ましくは0.095%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Bi:0.0001~0.0050%
ビスマス(Bi)は、鋼材中の凝固組織を微細化する。これにより、硫化物が微細化する。その結果、高周波焼入れ時の溶融割れが抑制される。Biはさらに、高周波焼入れ前の中間品を切削する場合の被削性を高める。Biはさらに、BiとCaとを含有する酸化物系介在物(特定酸化物)を生成する場合がある。この場合、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制する。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。Bi含有量が0.0001%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Bi含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大なBi粒子が生成する。そのため、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗が十分に抑制されない。
したがって、Bi含有量は0.0001~0.0050%である。
Bi含有量の好ましい下限は0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Bi含有量の好ましい上限は0.0048%であり、さらに好ましくは0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
Ca:0.0001~0.0050%
カルシウム(Ca)は、Ca含有酸化物を生成する。Caは、Ca含有酸化物のうち、円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物(特定酸化物)を生成する。そのため、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制する。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。Ca含有量が0.0001%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Ca含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、CaSが過剰に生成される。その結果、高周波焼入れ前の中間品を切削する場合の被削性が低下する。CaSが過剰に生成されればさらに、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗が十分に抑制されない。
したがって、Ca含有量は0.0001~0.0050%である。
Ca含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%である。
Ca含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
Al:0.001~0.005%
アルミニウム(Al)は製鋼工程において鋼を脱酸する。Al含有量が0.001%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Al含有量が0.005%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Alが過剰に生成する。この場合、Ca含有酸化物の生成が抑制される。そのため、特定酸化物が十分に生成されない。その結果、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を十分に抑制することができない。
したがって、Al含有量は0.001~0.005%である。
Al含有量の好ましい下限は0.002%である。
Al含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
N:0.0030~0.0250%
窒素(N)は、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工後の冷却過程で、窒化物及び/又は炭窒化物を生成して鋼材を析出強化する。その結果、機械構造用部品の疲労強度が高まる。N含有量が0.0030%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、N含有量が0.0250%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。
したがって、N含有量は0.0030~0.0250%である。
N含有量の好ましい下限は0.0035%であり、さらに好ましくは0.0040%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
N含有量の好ましい上限は0.0200%であり、さらに好ましくは0.0180%であり、さらに好ましくは0.0150%であり、さらに好ましくは0.0120%であり、さらに好ましくは0.0080%である。
O:0.0030%以下
酸素(O)は不純物である。Oは鋼中で酸化物を生成し、機械構造用部品の疲労強度を低下する。したがって、O含有量は0.0030%以下である。
O含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、O含有量の過剰な低減は製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮すれば、O含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%である。
O含有量の好ましい上限は0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%である。
本実施の形態による鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は、製造環境などから混入されるものであって、意図的に含有されるものではなく、本実施形態による鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
本実施形態の鋼材はさらに、Feの一部に代えて、第1群~第4群からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
[第1群]
V:0.400%以下、
Ti:0.050%以下、
Nb:0.050%以下、
W:0.400%以下、及び、
Zr:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第2群]
Mg:0.0100%以下
Te:0.0100%以下
B:0.0050%以下
Sn:0.0100%以下、及び、
希土類元素:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第3群]
Co:0.0100%以下、
Se:0.0100%以下、及び、
Sb:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
[第4群]
Cr:0.30%以下、
Mo:0.30%以下、
Cu:0.50%以下、及び、
Ni:0.50%以下、からなる群から選択される1種以上
以下、第1群~第4群について説明する。
[第1群(V、Ti、Nb、W及びZr)について]
V、Ti、Nb、W及びZrは任意元素であり、いずれも析出物を生成して、機械構造用部品の靱性を高める。
V:0.400%以下
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、V含有量が0%超である場合、Vは、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工工程の冷却過程において、炭化物及び/又は炭窒化物を生成して、結晶粒を微細化する。これにより、機械構造用部品の靱性が高まる。Vが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、V含有量が0.400%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和して、製造コストが高くなる。
したがって、V含有量は0~0.400%であり、含有される場合、0.400%以下である。
V含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.100%である。
V含有量の好ましい上限は0.300%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.150%である。
Ti:0.050%以下
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Ti含有量が0%超である場合、Tiは、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工工程の冷却過程において、炭化物及び/又は炭窒化物を生成して、結晶粒を微細化する。これにより、機械構造用部品の靱性が高まる。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Ti含有量が0.050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和して、製造コストが高くなる。
したがって、Ti含有量は0~0.050%であり、含有される場合、0.050%以下である。
Ti含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.011%であり、さらに好ましくは0.021%である。
Ti含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%である。
Nb:0.050%以下
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Nb含有量が0%超である場合、Nbは、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工工程の冷却過程において、炭化物及び/又は炭窒化物を生成して、結晶粒を微細化する。これにより、機械構造用部品の靱性が高まる。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Nb含有量が0.050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和して、製造コストが高くなる。
したがって、Nb含有量は0~0.050%であり、含有される場合、0.050%以下である。
Nb含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。
Nb含有量の好ましい上限は0.045%であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
W:0.400%以下
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、W含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、W含有量が0%超である場合、Wは、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工工程の冷却過程において、炭化物及び/又は炭窒化物を生成して、結晶粒を微細化する。これにより、機械構造用部品の靱性が高まる。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、W含有量が0.400%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和して、製造コストが高くなる。
したがって、W含有量は0~0.400%であり、含有される場合、0.400%以下である。
W含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.100%である。
W含有量の好ましい上限は0.300%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.150%である。
Zr:0.0100%以下
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Zr含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Zr含有量が0%超である場合、Zrは、機械構造用部品の製造工程中の熱間加工工程の冷却過程において、炭化物及び/又は炭窒化物を生成して、結晶粒を微細化する。これにより、機械構造用部品の靱性が高まる。Zrが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Zr含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が飽和して、製造コストが高くなる。
したがって、Zr含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Zr含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Zr含有量の好ましい上限は0.0050%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0019%である。
[第2群(Mg、Te、B、Sn、及び、希土類元素)]
Mg、Te、B、Sn、及び、希土類元素は任意元素であり、いずれも高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。これらの元素はさらに、いずれも高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。
Mg:0.0100%以下
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mg含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Mg含有量が0%超である場合、Mgは高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。Mgはさらに、高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Mg含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Mgは粗大な酸化物を生成する。粗大な酸化物は、鋼材を素材として製造された機械構造用部品の疲労強度を低下する。
したがって、Mg含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Mg含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
Mg含有量の好ましい上限は0.0050%であり、さらに好ましくは0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
Te:0.0100%以下
テルル(Te)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Te含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Te含有量が0%超である場合、Teは高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。Teはさらに、高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。Teが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Te含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、Te含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Te含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Te含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0040%である。
B:0.0050%以下
ボロン(B)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、B含有量が0%超である場合、Bは高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。Bはさらに、高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、B含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、B含有量は0~0.0050%であり、含有される場合、0.0050%以下である。
B含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
B含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
Sn:0.0100%以下
スズ(Sn)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sn含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Sn含有量が0%超である場合、Snは高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。Snはさらに、高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。Snが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Sn含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、Sn含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、Sn含有量は0.0100%以下である。
Sn含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Sn含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0070%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
希土類元素:0.0100%以下
希土類元素(REM)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、REM含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、REM含有量が0%超である場合、REMは高周波焼入れ前の中間品の被削性を高める。REMはさらに、高周波焼入れ後の中間品の被削性を高める。REMが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、REM含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、REM含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
REM含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
REM含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
本明細書におけるREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、及び、ランタノイドである原子番号57番のランタン(La)~原子番号71番のルテチウム(Lu)からなる群から選択される1種又は2種以上の元素である。また、本明細書におけるREM含有量とは、これらの元素の合計含有量である。
[第3群(Co、Se、及び、Sb)]
Co、Se、及び、Sbは任意元素であり、いずれも鋼材の脱炭を抑制する。
Co:0.0100%以下
コバルト(Co)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Co含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Co含有量が0%超である場合、Coは、熱間加工時に鋼材の脱炭を抑制する。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Co含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、Co含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Co含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
Co含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%である。
Se:0.0100%以下
セレン(Se)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Se含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Se含有量が0%超である場合、Seは、熱間加工時に鋼材の脱炭を抑制する。Seが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Se含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、Se含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Se含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
Se含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%である。
Sb:0.0100%以下
アンチモン(Sb)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sb含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Sb含有量が0%超である場合、Sbは、熱間加工時に鋼材の脱炭を抑制する。Sbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Sb含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、熱間加工性が低下する。
したがって、Sb含有量は0~0.0100%であり、含有される場合、0.0100%以下である。
Sb含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
Sb含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%である。
[第4群(Cr、Mo、Cu、及び、Ni)]
Cr、Mo、Cu、及び、Niは任意元素であり、いずれも機械構造用部品の疲労強度を高める。
Cr:0.30%以下
クロム(Cr)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cr含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Cr含有量が0%超である場合、Crは機械構造用部品の疲労強度を高める。Crが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Cr含有量が0.30%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の硬さが過剰に高まる。その結果、高周波焼入れ前の中間品を切削する場合の被削性が低下する。Crは鋼材の融点を低下させる。そのため、Cr含有量が0.30%を超えればさらに、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、Cr含有量は0~0.30%であり、含有される場合、0.30%以下である。
Cr含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。
Cr含有量の好ましい上限は0.28%であり、さらに好ましくは0.26%であり、さらに好ましくは0.24%である。
Mo:0.30%以下
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mo含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Mo含有量が0%超である場合、Moは機械構造用部品の疲労強度を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Mo含有量が0.30%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の硬さが過剰に高まる。その結果、熱間加工性が低下する。
したがって、Mo含有量は0~0.30%であり、含有される場合、0.30%以下である。
Mo含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。
Mo含有量の好ましい上限は0.19%であり、さらに好ましくは0.17%であり、さらに好ましくは0.15%である。
Cu:0.50%以下
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Cu含有量が0%超である場合、Cuは機械構造用部品の疲労強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Cuは、Siと同様に、高周波焼入れ時における溶融割れの発生を促進する。そのため、Cu含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、Cu含有量は0~0.50%であり、含有される場合、0.50%以下である。
Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。
Cu含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Ni:0.50%以下
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。
含有される場合、つまり、Ni含有量が0%超である場合、Niは機械構造用部品の疲労強度を高める。Niが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Niは、Si及びCuと同様に、高周波焼入れ時における溶融割れの発生を促進する。そのため、Ni含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高周波焼入れ時に溶融割れが発生しやすくなる。
したがって、Ni含有量は0~0.50%であり、含有される場合、0.50%以下である。
Ni含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。
Ni含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.05%である。
[鋼材の化学組成の測定方法]
本実施形態の鋼材の化学組成は、JIS G0321:2017に準拠した周知の成分分析法で測定できる。具体的には、ドリルを用いて、鋼材の表面から1mm深さ以上の内部から、切粉を採取する。採取された切粉を酸に溶解させて溶液を得る。溶液に対して、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)を実施して、化学組成の元素分析を実施する。C含有量及びS含有量については、周知の高周波燃焼法(燃焼-赤外線吸収法)により求める。N含有量については、周知の不活性ガス溶融-熱伝導度法を用いて求める。O含有量については、周知の不活性ガス溶融-赤外線吸収法を用いて求める。
なお、各元素含有量は、本実施形態で規定された有効数字に基づいて、測定された数値の端数を四捨五入して、本実施形態で規定された各元素含有量の最小桁までの数値とする。たとえば、本実施形態の鋼材のC含有量は小数第二位までの数値で規定される。したがって、C含有量は、測定された数値の小数第三位を四捨五入して得られた小数第二位までの数値とする。
本実施形態の鋼材のC含有量以外の他の元素含有量も同様に、測定された値に対して、本実施形態で規定された最小桁までの数値の端数を四捨五入して得られた値を、当該元素含有量とする。
なお、四捨五入とは、端数が5未満であれば切り捨て、端数が5以上であれば切り上げることを意味する。
[(特徴2)式(1)について]
本実施形態の鋼材の化学組成はさらに、特徴1を満たすことを前提として、式(1)を満たす。
Ca/Al≧0.18 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
fn1=Ca/Alと定義する。fn1は、鋼材中に生成されるCa含有酸化物の個数密度の指標である。鋼材中のCa含有酸化物は、高周波焼入れ後の中間品の切削等の加工時において、切削等の工具の表面に付着し、堆積する。切削等の工具に付着したCa含有酸化物は、切削等の工具の摩耗を抑制する。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。精錬工程におけるCaを用いた脱酸工程で、Ca含有酸化物の生成は促進される。しかしながら、鋼材中にはAlが含有される。そのため、Alは鋼材中の酸素と反応し、Alを生成する。そのため、鋼材中のCa含有酸化物の生成量を増加させるためには、Alの生成を抑制することが有効である。具体的には、Al含有量に対して、十分な量のCaを含有することが有効である。
鋼材中の各元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、fn1が0.18未満であれば、鋼材中のAl含有量に対して、Caが十分に含有されていない。そのため、Ca含有酸化物の生成は抑制され、Alの生成が促進される。この場合、特定酸化物の生成が抑制される。そのため、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を十分に抑制することができない。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が低くなる。
したがって、fn1は0.18以上である。
fn1の好ましい下限は0.50であり、さらに好ましくは0.75であり、さらに好ましくは1.00である。
fn1の上限は特に限定されないが、好ましくは5.00であり、さらに好ましくは4.50であり、さらに好ましくは4.00である。fn1の数値は、小数第三位を四捨五入して得られた値とする。
[(特徴3)微細硫化物の個数密度について]
本実施形態の鋼材では、化学組成が特徴1及び特徴2を満たすことを前提として、円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物(以下、単に微細硫化物ともいう)の個数密度が20個/mm以上である。微細硫化物の個数密度が20個/mm以上であれば、高周波焼入れ時の溶融割れの発生が抑制される。
本明細書において、微細硫化物とは、円相当径が0.2~1.0μm未満の硫化物を意味する。後述する微細硫化物の個数密度の測定方法において、円相当径が0.2~1.0μmの介在物であり、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray spectrometry:EDX)により、硫黄(S)含有量が質量%で3%以上検出され、かつ、Mnが検出されれば、その介在物を微細硫化物と定義する。硫化物とはたとえば、MnSである。硫化物には、S及びMn以外に、Ca及び/又はFeが含有されてもよい。硫化物にはたとえば、MnS以外に、CaS及び/又はFeSが含有されていてもよい。微細硫化物は、他の粒子(析出物又は介在物)に付着又は接触せずに鋼材中に単独で存在してもよい。微細硫化物は、他の粒子に付着又は接触して鋼材中に存在してもよい。微細硫化物が他の粒子に付着又は接触して存在する場合、硫化物と他の粒子とで形成される一塊の粒子の合計面積から算出される円相当径が0.2~1.0μm未満であれば、一塊の粒子を1個の微細硫化物と判断する。
上述のとおり、微細硫化物はγ粒界をピンニングする。円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物であれば、γ粒界のピンニング効果は高まる。高周波焼入れ時において、γ粒が微細に維持されれば、γ粒の粒界面積が増大する。粒界面積が増大すれば、粒界に偏析するCの濃度が減少する。その結果、溶融割れの発生が抑制される。微細硫化物の個数密度が20個/mm未満であれば、上記効果が十分に得られない。
したがって、微細硫化物の個数密度は20個/mm以上である。
微細硫化物の個数密度の好ましい下限は25個/mmであり、さらに好ましくは30個/mmであり、さらに好ましくは35個/mmであり、さらに好ましくは40個/mmである。
微細硫化物の個数密度の上限は特に限定されないが、好ましくは200個/mmであり、さらに好ましくは180個/mmである。
[微細硫化物の個数密度測定]
微細硫化物の個数密度は、次の方法で測定できる。鋼材(棒鋼)の長手方向に対して平行な断面(縦断面)のうち、R/2位置(鋼材の縦断面における、鋼材の中心軸と外表面とを結ぶ直線の中央位置)からサンプルを採取する。採取したサンプルの表面のうち、上記鋼材の縦断面に相当する表面を観察面とする。観察面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、500倍の倍率で鏡面研磨後の観察面を観察する。観察面積の合計は、32mmとする。
SEM観察により得られた反射電子像に基づいて、周知の画像解析式の粒子解析方法を用いて、微細硫化物の個数密度を調べる。具体的には、鋼材の母相と介在物及び析出物との界面に基づいて、鋼材中の介在物及び析出物を特定する。画像解析を行い、介在物及び析出物の円相当径を算出する。ここで、円相当径とは、各介在物及び析出物の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径を意味する。
得られた円相当径が0.2~1.0μm未満の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析する。本実施形態において、成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるビーム径であればよく、特に限定されない。EDXの元素分析結果において、S含有量が質量%で3%以上であり、かつ、Mnが含有される場合、その介在物を微細硫化物と定義する。EDX分析時の加速電圧は20kVとする。
上記の方法で微細硫化物を特定する。合計32mmの観察面積で特定された微細硫化物の総個数に基づいて、微細硫化物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求める。
[(特徴4)粗大Bi粒子の個数密度について]
本実施形態の鋼材では、特徴1及び特徴2を満たすことを前提として、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子(以下、単に粗大Bi粒子ともいう)の個数密度が2.00個/mm以下である。粗大Bi粒子の個数密度が2.00個/mm以下であれば、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制することができる。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。
本明細書において、粗大Bi粒子とは、円相当径が5μm以上のBi粒子を意味する。後述する粗大Bi粒子の個数密度の測定方法において、円相当径が5μm以上の介在物であり、EDXにより、Bi含有量が質量%で70%以上検出されれば、その介在物を粗大Bi粒子と定義する。粗大Bi粒子は、他の粒子(析出物又は介在物)に付着又は接触せずに鋼材中に単独で存在してもよい。粗大Bi粒子は、他の粒子に付着又は接触して鋼材中に存在していてもよい。粗大Bi粒子が他の粒子に付着又は接触して存在する場合、Bi粒子と他の粒子とで形成される一塊の粒子の合計面積から算出される円相当径が5μm以上であれば、一塊の粒子を1個の粗大Bi粒子と判断する。粗大Bi粒子の円相当径の上限は特に限定されないが、本実施形態の化学組成の場合、粗大Bi粒子は大きくても50μm以下である。
鋼材中にBiが含有される場合、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子が生成される場合がある。粗大Bi粒子は、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を促進する場合がある。粗大Bi粒子が2.00個/mmを超えれば、上記効果が十分に得られない。
したがって、本実施形態の鋼材では、粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下である。
粗大Bi粒子の個数密度は0個/mmであることが好ましい。しかしながら、粗大Bi粒子の個数密度の過剰な低減は製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮すれば、粗大Bi粒子の個数密度の好ましい下限は0.01個/mmであり、さらに好ましくは0.03個/mmである。
粗大Bi粒子の個数密度の好ましい上限は1.00個/mmであり、さらに好ましくは0.50個/mmであり、さらに好ましくは0.20個/mmである。粗大Bi粒子の個数密度はなるべく低い方が好ましい。
[粗大Bi粒子の個数密度測定]
粗大Bi粒子の個数密度は、次の方法で測定できる。微細硫化物の個数密度測定の方法と同様の方法で、サンプルを採取し、SEMで観察面を観察する。
SEM観察により得られた反射電子像に基づいて、周知の画像解析式の粒子解析方法を用いて、粗大Bi粒子の個数密度を調べる。具体的には、鋼材の母相と介在物及び析出物との界面に基づいて、鋼材中の介在物及び析出物を特定する。画像解析を行い、介在物及び析出物の円相当径を算出する。ここで、円相当径とは、各介在物及び析出物の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径を意味する。
得られた円相当径が5μm以上の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析する。本実施形態において、成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるビーム径であればよく、特に限定されない。EDXの元素分析結果において、Bi含有量が質量%で70%以上である場合、その介在物を粗大Bi粒子と定義する。EDX分析時の加速電圧は20kVとする。
上記の方法で粗大Bi粒子を特定する。合計32mmの観察面積で特定された粗大Bi粒子の総個数に基づいて、粗大Bi粒子の単位面積当たりの個数(個/mm)を求める。
[(特徴5)特定酸化物の個数密度について]
本実施形態の鋼材では、化学組成が特徴1及び特徴2を満たすことを前提として、円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上であれば、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制することができる。つまり、高周波焼入れ後の中間品を切削する場合の被削性が高まる。
本明細書において、特定酸化物とは、円相当径が1μm以上であり、Biを含有するCa含有酸化物、つまり、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を意味する。Ca含有酸化物とはたとえば、CaOを含む介在物である。Ca含有酸化物は、CaOの他に、Al、SiOを含んでもよい。EDXにより酸素(O)含有量が質量%で3%以上、かつ、Ca含有量が質量%で1%以上検出されれば、Ca含有酸化物と定義する。Ca含有酸化物のうち、円相当径が1μm以上であって、EDXにより、Bi含有量が質量%で0超~70%未満であるCa含有酸化物を、特定酸化物と定義する。特定酸化物は、Bi粒子以外の他の粒子(析出物又は介在物)に付着又は接触せずに鋼材中に単独で存在してもよい。特定酸化物は、Bi粒子以外の他の粒子に付着又は接触して鋼材中に存在してもよい。特定酸化物がBi粒子以外の他の粒子に付着又は接触して存在する場合、特定酸化物と他の粒子とで形成される一塊の粒子の合計面積から算出される円相当径が1μm以上であれば、一塊の粒子を1個の特定酸化物と判断する。特定酸化物の円相当径の上限は特に限定されないが、本実施形態の化学組成の場合、特定酸化物は大きくても10μm以下である。
Ca含有酸化物は、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の表面に堆積し、工具の摩耗を抑制する。Biを含有するCa含有酸化物、つまり、BiとCaとを含有する酸化物系介在物が存在する場合、融点の低いBi粒子がCa含有酸化物の工具への堆積を促進する。その結果、工具の摩耗をさらに抑制することができる。BiとCaとを含有する酸化物系介在物のサイズが円相当径で1μm以上であれば、工具の摩耗がさらに抑制される。つまり、鋼材中の特定酸化物は、高周波焼入れ後の中間品の切削等の工程において、切削等の工具の摩耗を抑制する。特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満の場合、上記効果が十分に得られない。
したがって、本実施形態の鋼材では、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。
特定酸化物の個数密度の好ましい下限は0.4個/mmであり、さらに好ましくは0.8個/mmであり、さらに好ましくは1.2個/mmであり、さらに好ましくは2.0個/mmである。
特定酸化物の個数密度はなるべく高い方が好ましい。特定酸化物の個数密度の上限は特に限定されないが、好ましくは10.0個/mmである。
[特定酸化物の個数密度測定]
特定酸化物の個数密度は、次の方法で測定できる。微細硫化物の個数密度測定の方法と同様の方法で、サンプルを採取し、SEMで観察面を観察する。
SEM観察により得られた反射電子像に基づいて、周知の画像解析式の粒子解析方法を用いて、特定酸化物の個数密度を調べる。具体的には、鋼材の母相と介在物及び析出物との界面に基づいて、鋼材中の介在物及び析出物を特定する。画像解析を行い、介在物及び析出物の円相当径を算出する。ここで、円相当径とは、各介在物及び析出物の面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径を意味する。
得られた円相当径が1μm以上の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析する。本実施形態において、成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるビーム径であればよく、特に限定されない。EDXの元素分析結果において、酸素(O)含有量が質量%で3%以上であり、Ca含有量が質量%で1%以上であり、かつ、Bi含有量が質量%で0超~70%未満である場合、その介在物を特定酸化物と定義する。EDX分析時の加速電圧は20kVとする。
上記の方法で特定酸化物を特定する。合計32mmの観察面積で特定された特定酸化物の総個数に基づいて、特定酸化物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求める。
[製造方法]
本実施形態による鋼材の製造方法の一例を説明する。特徴1~特徴4を満たす鋼材は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態による鋼材の製造方法の好ましい一例である。
本実施形態の鋼材の製造方法の一例は、次の工程を含む。なお、工程3は任意の工程であり、実施しなくてもよい。
(工程1)精錬工程
(工程2)鋳造工程
(工程3)熱間加工工程
以下、各工程について説明する。
[(工程1)精錬工程]
精錬工程では、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。精錬工程は、一次精錬工程と二次精錬工程とを含む。
一次精錬工程では、周知の方法で製造された溶銑に対して転炉での精錬を実施する。具体的には、溶銑に酸素を吹き付けて、炭素を除去する。二次精錬工程では、元素を添加して成分調整を実施し、溶鋼の化学組成が、本実施形態の鋼材の化学組成を有する溶鋼を製造する。具体的には、一次精錬工程後、転炉から出鋼した溶鋼に対して脱酸処理を実施する。脱酸処理後、除滓処理を実施する。除滓処理後、二次精錬を実施する。二次精錬はたとえば、複合精錬を実施する。たとえば、初めにLF(Ladle Furnace)又はVAD(Vacuum Arc Degassing)を用いた精錬処理を実施する。さらに、RH(Ruhrstahl-Hausen)真空脱ガス処理を実施する。LF又はVADを用いた精錬処理、及び、RH真空脱ガス処理の工程において、溶鋼を攪拌しながら、Bi以外の元素の成分の調整を実施する。RH真空脱ガス処理後、ワイヤーにてBiを添加した後に溶鋼を攪拌し、Biの成分調整を行う。二次精錬工程では、次の条件を満たす。
(条件1)
溶鋼にBiを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間t0を5分超~50分未満とする。
(条件2)
溶鋼にBiを添加した後の溶鋼の撹拌動力密度εを10~100W/tとする。ここで、撹拌動力密度ε(W/t)は次の式(A)で定義される。
ε=0.0285×Q×T/W×LOG(1+513.5×Z/V1) (A)
ここで、式(A)中のQには、溶鋼を収納した取鍋への吹き込みガス流量(NL/min)が代入される。Tには、溶鋼温度(K)が代入される。Wには、溶鋼質量(t)が代入される。Zには取鍋中の溶鋼深さ(m)が代入される。V1には、撹拌中の溶鋼を含む雰囲気での真空度(torr)が代入される。
以下、条件1及び条件2について説明する。
[条件1:時間t0について]
二次精錬工程において、溶鋼にBiを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間は、5分超~50分未満である。Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間が5分超~50分未満であれば、溶鋼中でBiが十分に拡散する。そのため、後述する鋳造工程の冷却時に、円相当径が5μm未満のBi粒子(以下、微細Bi粒子ともいう)が十分に生成される。凝固時に鋼材中の組織を十分に微細化することができる。その結果、微細硫化物を十分に生成することができる。微細Bi粒子が十分に生成されればさらに、特定酸化物を十分に生成することができる。
一方、Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間が5分以下の場合、溶鋼中でBiが十分に拡散しない。そのため、粗大Bi粒子が過剰に多く生成する。Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間が50分以上の場合、微細Bi粒子が凝集しやすくなる。そのため、微細Bi粒子の個数密度が減少する。そのため、凝固時に鋼材中の組織を十分に微細化することができない。その結果、微細硫化物が十分に生成されない。微細Bi粒子の個数密度が減少すればさらに、特定酸化物を十分に生成することができない。したがって、二次精錬工程で、Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間は、5分超~50分未満である。
Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間の好ましい上限は40分であり、さらに好ましくは30分である。Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの時間の好ましい下限は10分であり、さらに好ましくは20分である。
なお、Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの溶鋼の温度は1510~1630℃である。
[条件2:撹拌動力密度εについて]
溶鋼にBiを添加した後の溶鋼の撹拌動力密度εは、10~100W/tである。Biを添加した後の溶鋼の撹拌動力密度εが10~100W/tであれば、溶鋼中でBiが十分に拡散する。そのため、後述する鋳造工程の冷却時に、微細Bi粒子が十分に生成される。凝固時に鋼材中の組織を十分に微細化することができる。その結果、微細硫化物を十分に生成することができる。微細Bi粒子が十分に生成されればさらに、特定酸化物を十分に生成することができる。
溶鋼にBiを添加した後の溶鋼の撹拌動力密度εが10W/t未満であれば、溶鋼中でBiが十分に拡散しない。そのため、粗大Bi粒子が過剰に多く生成する。一方、溶鋼にBiを添加した後の溶鋼の撹拌動力密度εが100W/tを超えれば、微細Bi粒子が凝集しやすくなる。そのため、微細Bi粒子の個数密度が減少する。そのため、凝固時に鋼材中の組織を十分に微細化することができない。その結果、微細硫化物が十分に生成されない。微細Bi粒子の個数密度が減少すればさらに、特定酸化物を十分に生成することができない。
[(工程2)鋳造工程]
鋳造工程では、溶鋼を用いて、周知の鋳造方法により鋳片(スラブ又はブルーム)又は鋼塊(インゴット)を製造する。鋳造方法はたとえば、連続鋳造法や造塊法である。
[(工程3)熱間加工工程]
熱間加工工程は、任意の工程である。つまり、熱間加工工程は実施してもよいし、実施しなくてもよい。熱間加工工程を実施する場合、熱間加工工程では、上記鋳造工程で製造された鋳片又は鋼塊に対して、熱間加工を実施して、本実施形態の鋼材を製造する。本実施形態の鋼材はたとえば、棒鋼である。熱間加工工程はたとえば、熱間圧延であってもよく、熱間鍛造であってもよい。より具体的には、熱間加工工程において熱間圧延を実施する場合、たとえば、粗圧延工程のみであってもよいし、粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とを含んでもよい。粗圧延工程はたとえば、分塊圧延である。仕上げ圧延工程はたとえば、連続圧延機を用いた仕上げ圧延である。連続圧延機ではたとえば、一対の水平ロールを有する水平スタンドと、一対の垂直ロールを有する垂直スタンドとが交互に一列に配列される。粗圧延工程及び仕上げ圧延工程での加熱温度はたとえば、1000~1300℃である。
熱間圧延後に熱間鍛造を実施して鋼材を製造してもよい。熱間加工工程において熱間鍛造を実施する場合においても、加熱温度は1000~1300℃である。
以上の製造工程により、本実施形態の鋼材が製造される。上述のとおり、本製造方法は熱間加工工程を省略してもよい。つまり、本実施形態の鋼材は、鋳造品(鋳片又は鋼塊)であってもよい。また、本実施形態の鋼材は、熱間加工工程を実施して製造されてもよい。
[機械構造用部品の製造方法]
上述のとおり、本実施形態の鋼材は、機械構造用部品の素材となる。機械構造用部品はたとえば、自動車及び建設車両用途の部品である。機械構造用部品はたとえば、クランクシャフト等である。
本実施形態の鋼材を素材として用いた機械構造用部品は、たとえば、次の製造方法により製造される。
初めに、本実施形態の鋼材を熱間加工して、機械構造用部品の粗形状の中間品を製造する。熱間加工はたとえば、熱間鍛造である。製造された中間品を機械加工により所定の形状に切削する。切削後の中間品に対して、高周波焼入れを実施する。高周波焼入れ後、必要に応じて焼戻しを実施する。焼戻しを実施する場合、焼戻し後の中間品に対して、仕上げ加工(切削加工又は研削加工)を実施する。焼戻しを実施しない場合、高周波焼入れ後の中間品に対して、仕上げ加工を実施する。以上の工程により、機械構造用部品が製造される。
本実施形態の鋼材では、化学組成中の各元素含有量が本実施形態の範囲内であり、かつ、式(1)を満たす。さらに、円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度が2.00個/mm以下であり、円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である。そのため、本実施形態の鋼材を素材とした機械構造用部品を製造する場合、高周波焼入れを実施しても、溶融割れの発生が抑制される。さらに、本実施形態の鋼材を素材とした機械構造用部品を製造する場合、高周波焼入れ前の中間品、及び、高周波焼入れ後の中間品の被削性が高い。さらに、本実施形態の鋼材を素材として製造された機械構造用部品は優れた疲労強度を有する。
実施例により本実施形態の鋼材の効果をさらに具体的に説明する。以下の実施例での条件は、本実施形態の鋼材の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の鋼材はこの一条件例に限定されない。
表1~表4の化学組成を有する鋼材を製造した。
Figure 2024031698000002
Figure 2024031698000003
Figure 2024031698000004
Figure 2024031698000005
具体的には、70トン転炉を用いて、精錬工程(一次精錬工程、及び、二次精錬工程)を実施した。一次精錬工程では、周知の方法で製造された溶銑に対して転炉での精錬を同じ条件で実施した。一次精錬工程後、転炉から出鋼した溶鋼に対して、脱酸処理を実施した。脱酸処理後、除滓処理を実施した。除滓処理後、LFを用いた精錬処理を実施し、その後、RH真空脱ガス処理を実施した。LFを用いた精錬処理及びRH真空脱ガス処理の工程において、溶鋼を攪拌しながら、Bi以外の元素の成分の調整を実施した。RH真空脱ガス処理後、ワイヤーにてBiを添加し、Biの成分調整を行った。Biを添加した後の攪拌終了までの時間t0(分)は、表5及び表6に示すとおりであった。さらに、撹拌時の撹拌動力密度ε(W/t)は表5及び表6に示すとおりであった。なお、Biを添加した後、二次精錬工程での攪拌終了までの溶鋼の温度は、1510~1630℃であった。
Figure 2024031698000006
Figure 2024031698000007
連続鋳造法により鋳片(ブルーム)を製造した。この鋳片を加熱した後、鋳片を分塊圧延して、ビレットを製造した。ビレットを1250℃に加熱した後、熱間鍛造して、直径55mmの鋼材(棒鋼)を製造した。
[模擬機械構造用部品の中間品の製造]
製造された鋼材に対して、鋼材から機械構造用部品を製造する工程における熱間鍛造を模擬する熱処理を実施した。具体的には、鋼材を1100℃に加熱して30分保持した。その後、鋼材を大気中で放冷し、模擬機械構造用部品の中間品を製造した。模擬機械構造用部品の中間品は、直径55mmの棒鋼であった。
[評価試験]
各試験番号の鋼材に対して、微細硫化物、粗大Bi粒子及び特定酸化物の個数密度測定を実施した。各試験番号の模擬機械構造用部品の中間品に対して、溶融割れ評価試験、被削性評価試験、及び、疲労強度評価試験を実施した。
[微細硫化物、粗大Bi粒子及び特定酸化物の個数密度測定]
微細硫化物の個数密度は、次の方法で測定した。各試験番号の鋼材(棒鋼)の長手方向に対して平行な断面(縦断面)のうち、R/2位置からサンプルを採取した。採取したサンプルの表面のうち、上記鋼材の縦断面に相当する表面を観察面とした。観察面を鏡面研磨した後、SEMを用いて、500倍の倍率で鏡面研磨後の観察面を観察した。観察面積の合計は、32mmとした。
SEM観察により得られた反射電子像に基づいて、周知の画像解析式の粒子解析方法を用いて、微細硫化物の個数密度を調べた。具体的には、鋼材の母相と介在物及び析出物との界面に基づいて、鋼材中の介在物及び析出物を特定した。画像解析を行い、介在物及び析出物の円相当径を算出した。
得られた円相当径が0.2~1.0μm未満の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析した。成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるように適宜調整した。EDXの元素分析結果において、S含有量が質量%で3%以上であり、かつ、Mnが含有される場合、その介在物を微細硫化物と定義した。EDX分析時の加速電圧は20kVとした。
上記の方法で微細硫化物を特定した。合計32mmの観察面積で特定された微細硫化物の総個数に基づいて、微細硫化物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。得られた微細硫化物の個数密度の結果を表5及び表6の「微細硫化物個数密度(個/mm)」欄に示す。
微細硫化物の個数密度の測定方法と同様に、粗大Bi粒子及び特定酸化物の個数密度を測定した。SEM観察により得られた円相当径が5μm以上の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析した。成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるように適宜調整した。EDXの元素分析結果において、Bi含有量が質量%で70%以上である場合、その介在物を粗大Bi粒子と定義した。上記の方法で粗大Bi粒子を特定した。合計32mmの観察面積で特定された粗大Bi粒子の総個数に基づいて、粗大Bi粒子の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。得られた粗大Bi粒子の個数密度の結果を表5及び表6の「粗大Bi粒子個数密度(個/mm)」欄に示す。
SEM観察により得られた円相当径が1μm以上の介在物及び析出物に対して、SEMに備えられたEDXを用いて、成分を分析した。成分分析に用いるEDXのビーム径は、分析対象の介在物及び析出物の成分が分析できるように適宜調整した。EDXの元素分析結果において、酸素(O)含有量が質量%で3%以上であり、Ca含有量が質量%で1%以上であり、かつ、Bi含有量が質量%で0超~70%未満である場合、その介在物を特定酸化物と定義した。上記の方法で特定酸化物を特定した。合計32mmの観察面積で特定された特定酸化物の総個数に基づいて、特定酸化物の単位面積当たりの個数(個/mm)を求めた。得られた特定酸化物の個数密度の結果を表5及び表6の「特定酸化物個数密度(個/mm)」欄に示す。
[溶融割れ評価試験]
製造された各試験番号の模擬機械構造用部品の中間品の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置から、幅10mm、厚さ3mm、長さ10mmの試験片を機械加工により作製した。試験片の長さ方向は、模擬機械構造用部品の中間品の長手方向と平行であった。また、試験片の長手方向に平行な中心軸が、R/2位置と一致した。
富士電波工機株式会社製の試験装置(商品名「熱サイクル試験装置」)を用いて、上記試験片に対して、高周波焼入れの模擬試験を実施した。具体的には、高周波コイルを用いて試験片を100℃/秒の昇温速度で1350℃まで加熱した。そして、試験片を1350℃で15秒間保持した。その後、試験片を水冷した。
水冷後の試験片の長手方向に対して垂直な断面(観察面)を機械研磨した。機械研磨後の観察面をピクラール試薬にて腐食した。腐食された観察面を400倍の光学顕微鏡で観察し、溶融割れの有無を目視で確認した。観察面は、250μm×400μmであった。
観察面の組織の粒界において、5μm以上の幅で明瞭に腐食されている領域(腐食領域)が観察される場合、溶融割れが発生したと判断した。粒界において5μm以上の幅で明瞭に腐食されている領域とは、たとえば、図2中の溶融割れ10のような領域を意味する。一方、図3のように、粒界に腐食領域が観察されない場合、溶融割れが発生しなかったと判断した。溶融割れの評価結果を表5及び表6の「溶融割れ」欄に示す。溶融割れが発生しなかった場合を「〇」とし、溶融割れが発生した場合を「×」とした。
[被削性評価試験]
被削性評価試験として、次の2種類の試験を実施した。高周波焼入れ前の中間品に対する被削性を評価するため、ドリル寿命試験を実施した。高周波焼入れ後の中間品に対する被削性を評価するため、工具への摩耗抑制評価試験を実施した。
[高周波焼入れ前の中間品に対する被削性評価(ドリル寿命試験)]
各試験番号の模擬機械構造用部品の中間品から被削性評価用試験片を切り出した。具体的には、直径55mmの模擬機械構造用部品の中間品の長手方向に対して垂直な断面の外表面から14mmの位置にドリル穿孔した。工具は株式会社不二越製 型番SD3.0のドリルを使用し、1回転当たりの送り量を0.25mm/rev、1穴の穿孔深さを9mmとした。潤滑剤は水溶性の切削油であった。上述の条件でドリル穿孔を行い、鋼材の被削性を評価した。評価指標は、最大切削速度VL1000(m/分)を用いた。最大切削速度VL1000とは、1000mm長の穴開けが可能なドリルの切削速度である。最大切削速度VL1000が15m/分以上の場合、被削性が高いと判断した。最大切削速度VL1000が15m/分未満の場合、被削性が低いと判断した。被削性評価の結果を表5及び表6の「被削性」欄の「高周波焼入れ前」欄に示す。被削性が高い場合を「〇」とし、被削性が低い場合を「×」とした。
[高周波焼入れ後の中間品に対する被削性評価(工具への摩耗抑制評価試験)]
工具への摩耗抑制評価試験を次の方法で実施した。直径55mmの模擬機械構造用部品の中間品に対して、機械加工を実施して、丸棒試験片を製造した。丸棒試験片は円柱形状であり、直径は35mm、長さは300mmであった。丸棒試験片に対して、高周波焼入れの模擬試験を実施した。具体的には、周波数100kHzで、2.0秒間加熱した。その後、5~15%の希釈濃度の水溶性焼入冷却材を丸棒試験片に噴射し、丸棒試験片を冷却した。冷却後の丸棒試験片に対して、焼戻しを実施して、高周波焼入れ後の中間品を模擬した被削性評価用試験片を作製した。焼戻し温度は150℃であり、焼戻し温度での保持時間は2時間であった。
高周波焼入れ後の中間品を模擬した被削性評価用試験片(以下、試験片ともいう)に対して、汎用旋盤による旋削加工を実施した。具体的には、各試験番号の試験片に対して、次の条件で旋削加工を実施した。使用した切削工具は、CBN焼結工具であった。CBN焼結工具には、CBN粒子を主成分とし、セラミックスを結合材とした焼結材の表面に、TiAlNベースのセラミックコーティングが施されていた。切削速度を150m/分、送り速度を0.4mm/revとし、切込み量を0.1mmとした。旋削時には、水溶性切削油を使用して湿式で実施した。
上述の旋削条件で、試験片1本に対して1パスの切削加工を行った。複数の試験片について旋削加工を繰り返し、合計の切削時間が10分となるまで旋削加工を実施した。その後、切削工具の逃げ面摩耗量(μm)を測定した。
得られた逃げ面摩耗量が40μm以下の場合、工具への摩耗が十分に抑制されていると判断した。得られた逃げ面摩耗量が40μmを超える場合、工具への摩耗が十分に抑制できていないと判断した。工具への摩耗抑制評価の結果を表5及び表6の「被削性」欄の「高周波焼入れ後」欄に示す。工具への摩耗が十分に抑制されており、被削性が高い場合を「〇」とし、工具への摩耗が十分に抑制されておらず、被削性が低い場合を「×」とした。
[疲労強度評価試験(回転曲げ疲労試験)]
製造された模擬機械構造用部品の中間品から、回転曲げ疲労試験片を採取した。図4は各模擬機械構造用部品の中間品から採取した回転曲げ疲労試験片の模式図である。回転曲げ疲労試験片は、平行部の直径が8mm、掴み部の直径が12mmであった。模擬機械構造用部品の中間品に対して、機械加工を実施して、回転曲げ疲労試験片を製造した。模擬機械構造用部品の中間品の長手方向に対して垂直な断面のR/2位置から、回転曲げ疲労試験片を採取した。回転曲げ疲労試験片の長手方向は、模擬機械構造用部品の中間品の長手方向と平行であった。回転曲げ疲労試験片の長手方向に平行な中心軸は、模擬機械構造用部品の中間品のR/2位置に相当した。高周波焼入れ前の模擬機械構造用部品の中間品から採取した試験片での回転曲げ疲労強度が十分に高ければ、高周波焼入れ後の模擬機械構造用部品の中間品から採取した試験片においても、回転曲げ疲労強度が十分に高いことは当業者に周知の技術常識である。
回転曲げ疲労試験片の平行部には仕上げ研磨を実施し、表面粗さを調整した。具体的には、表面の中心線平均粗さ(Ra)を3.0μm以内とし、最大高さ(Rmax)を9.0μm以内にした。
仕上げ研磨を実施した回転曲げ疲労試験片を用いて、室温(23℃)、大気雰囲気にて、回転数3600rpmの両振りの条件で小野式回転曲げ疲労試験を行った。複数の試験片に対して加える応力を変えて疲労試験を実施し、10サイクル後に破断しなかった最も高い応力を疲労強度(MPa)とした。
得られた疲労強度が300MPa以上であれば、十分な疲労強度が得られると判断した。疲労強度評価の結果を表5及び表6の「疲労強度」欄に示す。疲労強度が300MPa以上の場合を「〇」とし、疲労強度が300MPa未満の場合を「×」とした。
[試験結果]
表5及び表6に試験結果を示す。表1~表6を参照して、試験番号1~47の鋼材は、化学組成が適切であり、かつ、式(1)を満たし、Bi添加後の攪拌終了までの時間も適切であった。そのため、各試験番号の鋼材は、微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上であった。そのため、溶融割れの発生が十分に抑制された。高周波焼入れ前の中間品に対する被削性評価試験において、最大切削速度VL1000が15m/分以上であり、高周波焼入れ前の中間品の被削性が高かった。さらに、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性評価試験において、逃げ面摩耗量が40μm以下であった。つまり、工具への摩耗が十分に抑制されており、高周波焼入れ後の中間品の被削性が高かった。さらに、疲労強度は300MPa以上であり、疲労強度は高かった。
一方、試験番号48では、C含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。
試験番号49では、C含有量が低すぎた。そのため、疲労強度が低かった。
試験番号50では、Si含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。
試験番号51では、Si含有量が低すぎた。そのため、疲労強度が低かった。
試験番号52では、Mn含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ前の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号53では、Mn含有量が低すぎた。そのため、溶融割れが発生した。さらに、疲労強度が低かった。
試験番号54では、P含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。
試験番号55では、S含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。
試験番号56では、S含有量が低すぎた。そのため、微細硫化物の個数密度が低かった。その結果、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ前の中間品、及び、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号57では、Cr含有量が高すぎた。そのため、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ前の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号58では、Bi含有量が高すぎた。そのため、粗大Bi粒子の個数密度が高すぎた。その結果、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号59では、Bi含有量が低すぎた。そのため、微細硫化物の個数密度が低かった。さらに、特定酸化物の個数密度も低かった。その結果、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ前の中間品、及び、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号60では、Ca含有量が高すぎた。そのため、高周波焼入れ前の中間品、及び、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号61では、Ca含有量が低すぎた。そのため、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満であった。その結果、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号62では、Al含有量が高すぎた。そのため、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満であった。その結果、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号63では、酸素(O)含有量が高すぎた。そのため、疲労強度が低かった。
試験番号64及び65では、fn1が低すぎた。つまり、式(1)を満たさなかった。そのため、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満であった。その結果、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号66及び67では、精錬工程において、Bi添加後攪拌終了までの時間t0(分)が短すぎた。そのため、粗大Bi粒子の個数密度が2.00個/mmを超えた。そのため、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号68及び69では、精錬工程において、Bi添加後攪拌終了までの時間t0(分)が長すぎた。そのため、微細硫化物の個数密度が20個/mm未満であり、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満であった。その結果、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号70及び71では、精錬工程において、動力攪拌密度εが小さすぎた。そのため、粗大Bi粒子の個数密度が2.00個/mmを超えた。そのため、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
試験番号72及び73では、精錬工程において、動力攪拌密度εが大きすぎた。そのため、微細硫化物の個数密度が20個/mm未満であり、特定酸化物の個数密度が0.1個/mm未満であった。その結果、溶融割れが発生した。さらに、高周波焼入れ後の中間品に対する被削性が低かった。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 フィレットR部
2 クランクシャフトのエッジ部
10 溶融割れ

Claims (6)

  1. 鋼材であって、
    質量%で、
    C:0.30超~0.60%、
    Si:0.01~0.55%、
    Mn:0.50~1.65%、
    P:0.050%以下、
    S:0.010~0.200%、
    Bi:0.0001~0.0050%、
    Ca:0.0001~0.0050%、
    Al:0.001~0.005%、
    N:0.0030~0.0250%、及び、
    O:0.0030%以下、を含有し、
    残部はFe及び不純物からなり、
    各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
    前記鋼材中において、
    円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
    円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
    円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である、
    鋼材。
    Ca/Al≧0.18 (1)
    ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  2. 鋼材であって、
    質量%で、
    C:0.30超~0.60%、
    Si:0.01~0.55%、
    Mn:0.50~1.65%、
    P:0.050%以下、
    S:0.010~0.200%、
    Bi:0.0001~0.0050%、
    Ca:0.0001~0.0050%、
    Al:0.001~0.005%、
    N:0.0030~0.0250%、及び、
    O:0.0030%以下、を含有し、
    さらに、第1群~第4群からなる群から選択される1種以上を含有し、
    残部はFe及び不純物からなり、
    各元素含有量が上記範囲内であることを前提として、式(1)を満たし、
    前記鋼材中において、
    円相当径が0.2~1.0μm未満の微細硫化物の個数密度は20個/mm以上であり、
    円相当径が5μm以上の粗大Bi粒子の個数密度は2.00個/mm以下であり、
    円相当径が1μm以上であって、BiとCaとを含有する酸化物系介在物を特定酸化物と定義するとき、前記特定酸化物の個数密度が0.1個/mm以上である、
    鋼材。
    [第1群]
    V:0.400%以下、
    Ti:0.050%以下、
    Nb:0.050%以下、
    W:0.400%以下、及び、
    Zr:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
    [第2群]
    Mg:0.0100%以下
    Te:0.0100%以下
    B:0.0050%以下
    Sn:0.0100%以下、及び、
    希土類元素:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
    [第3群]
    Co:0.0100%以下、
    Se:0.0100%以下、及び、
    Sb:0.0100%以下、からなる群から選択される1種以上
    [第4群]
    Cr:0.30%以下、
    Mo:0.30%以下、
    Cu:0.50%以下、及び、
    Ni:0.50%以下、からなる群から選択される1種以上
    Ca/Al≧0.18 (1)
    ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
  3. 請求項2に記載の鋼材であって、
    前記第1群を含有する、
    鋼材。
  4. 請求項2に記載の鋼材であって、
    前記第2群を含有する、
    鋼材。
  5. 請求項2に記載の鋼材であって、
    前記第3群を含有する、
    鋼材。
  6. 請求項2に記載の鋼材であって、
    前記第4群を含有する、
    鋼材。
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