JP5092578B2 - 低炭素硫黄快削鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、低炭素硫黄快削鋼に関し、超硬工具を用いた仕上げ旋削加工を行った際に優れた被削性を有する、特に細径のプリンターシャフト等のOA部品の用途に適したPb非添加の低炭素硫黄快削鋼に関する。
従来、軟質の小物部品、例えば、自動車部品のブレーキパーツ、OA部品のプリンターシャフトおよび電気機器部品などの素材には、生産性向上のために被削性に優れた鋼材である所謂「快削鋼鋼材」が用いられてきた。
快削鋼鋼材としてはJIS G 4804(1999)に規定された鋼材、すなわち、Sを多量に添加してMnSによって被削性を改善した「硫黄快削鋼鋼材」(以下、「S快削鋼材」という。)、SとPbの両者を添加した「硫黄複合快削鋼鋼材」(以下、「S複合快削鋼材」という。)、あるいはPbを添加した「鉛快削鋼鋼材」(以下、「Pb快削鋼材」という。)がよく知られている。
上記の快削鋼材のうちでもPbを含むもの、つまり、Pb快削鋼材およびS複合快削鋼材は、切り屑が分断されやすいので、所謂切り屑処理性に優れ、さらに工具寿命が長く、切削加工後の鋼材表面の仕上げ面粗さに優れるといった特性を有している。
しかし、近年、地球環境問題に対する高まりから、Pbを製品から排除しようとする動きが強まっており、例えば欧州では、鋼材に含まれるPbの含有量が質量%で、0.35%以下に制限されるなど、Pbの含有量をできる限り低減させることが望まれている。
さらに、Pbは融点が低く、鋼中への固溶度が小さいために、Pbを含有した鋼は圧延時に割れを生じやすいなど、製造面においても問題を抱えている。
そこで、上述した課題を解決するべく、例えば、特許文献1〜5に、Pbを含有しない低炭素快削鋼に関する技術として、S量を増量させるとともに、MnS等の硫化物系介在物(以下、単に「MnS」ともいう。)の形態を制御して被削性を向上させる技術や、組織をコントロールして被削性を向上させる技術が提案されている。
具体的には、特許文献1に、Mn/S比(質量比)が3.5以上である高S快削鋼の製造方法において、鋳造直前の溶鋼のフリー酸素濃度を質量%で、0.004%以上にすることを特徴とする低炭素の「高S快削鋼」に関する技術が開示されている。
特許文献2に、質量%で、0.50%までの高いS量と0.01〜0.03%の高いO量を含有するとともに、鋼中に含まれる硫化物系介在物の幅を規定した「低炭素硫黄系快削鋼線材」に関する技術が開示されている。
特許文献3に、質量%で、0.1〜0.5%のSを含有するとともに、パーライト面積率を5%以下とすることを特徴とする「被削性に優れる鋼」に関する技術が開示されている。
特許文献4に、質量%で、0.5〜1.0%のSを含有するとともに、パーライト面積率を5%以下とすることを特徴とする「被削性に優れる鋼」に関する技術が開示されている。
特許文献5に、質量%で、Sを0.1〜1.0%の範囲で含有させ、円相当径にて0.1〜0.5μmのMnSの存在密度が10000個/mm2以上であることを特徴とする「被削性に優れる鋼」に関する技術が開示されている。
特開2005−23342号公報 特開2003−253390号公報 特開2004−176176号公報 特開2004−169054号公報 特開2004−169052号公報
しかしながら、上記の技術は、ブレーキパーツ等の自動車部品の加工を主として対象とした高速度鋼工具(以下、「HSS工具」という。)によるフォーミング加工の際の被削性を改善することに関するものである。
ブレーキパーツなどの自動車部品に加工される場合には、加工機として自動盤を使用し、主としてHSS工具を用いて、被削材の回転軸と垂直方向に工具を押し当てて工具を送り込むことで、工具形状を被削材に転写して部品形状に加工するような加工方法、所謂フォーミング(突っ切り)加工によって仕上げ加工されることが多い。
フォーミング加工の場合には、工具の刃先全体により部品の表面を仕上げるために、工具の刃先に形成される「構成刃先」が仕上げ面粗さに大きく影響する。そして、小さな仕上げ面粗さの部品を得るためには、工具の刃先に形成される構成刃先は、小さく、切削加工中に脱落することなく、しかも、その大きさが安定していなければならない。
そして、上述の特許文献1〜5で提案された快削鋼鋼材はいずれも、化学成分や製造方法を制御することにより、上記のような小さく、安定した構成刃先を工具の刃先に形成させ、フォーミング加工における仕上げ面粗さを改善させることを目的とするものであった。
一方、プリンターシャフト等の所謂OA部品は、精密部品であるため、ブレーキパーツ等の自動車部品よりも小さな仕上げ面粗さが求められる。
このようなOA部品の場合には、より小さい仕上げ面粗さを得るために、超硬工具あるいは表面にコーティング処理を施した超硬工具を用い、潤滑油剤を使った湿式条件下で、0.07mm/rev以下の小さな送り量で旋削加工によって仕上げ加工されることが多い。そして、このような用途に用いられる鋼材に対しては、自動化された加工ラインの中で、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間、維持し続けることが要求される。
上述の特許文献1〜5で提案された技術はいずれも、HSS工具を用いたフォーミング加工の際の被削性を改善することは可能であるものの、このような超硬工具を用いた仕上げ旋削加工の場合には、仕上げ面粗さは必ずしも十分といえるものではなかった。
本発明の目的は、超硬工具を用いた仕上げ旋削加工を行った場合に、従来のPb非添加の低炭素快削鋼に比べて優れた被削性、なかでも、仕上げ面粗さの小さい、優れた表面性状が得られるPb非添加の低炭素硫黄快削鋼を提供することである。
本発明者らは、上記目的のため鋭意検討を重ねた。
その結果、先ず、下記〈1〉〜〈4〉の知見を得た。
〈1〉超硬工具を用いて旋削加工する場合には、被削材が工具に凝着しにくいため工具の刃先に構成刃先が形成されにくい。したがって、超硬工具による仕上げ旋削加工の場合に被削材の仕上げ面粗さを決定するのは、HSS工具によるフォーミング加工の場合のような構成刃先ではない。
〈2〉プリンターシャフトなどのように、より小さい仕上げ面粗さが要求されるOA部品を仕上げ加工するための旋削加工条件としては、湿式条件下で、0.07mm/rev以下の小さな送り量を設定される場合が多く、このような場合には、被削材の表面は工具のノーズR部によって仕上げられる。
〈3〉このような状態で長時間加工した場合には、図1に模式的に示すように、被削材の表面と接触する超硬工具先端のノーズR部に送り量と同間隔の数本の溝状摩耗が生ずる。
〈4〉超硬工具を用いた送り量の小さい仕上げ旋削加工の場合には、この工具側に生じた溝状摩耗が被削材側の表面に転写されることによって、被削材の仕上げ面の粗さが決定されることになり、工具側の溝状摩耗が大きければ大きいほど被削材の仕上げ面粗さは大きくなる。工具交換直後、すなわち新しい工具の使用開始の初期段階では、工具先端には溝状摩耗がほとんど生じないので、得られる仕上げ面粗さには、被削材の材質による差はあまり認められない。しかしながら、加工時間が長くなるにつれて、工具先端の溝状摩耗は発達し、被削材の仕上げ面粗さは次第に大きくなってくる。したがって、より小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持するためには、工具先端に生じる溝状摩耗を小さくかつ進みにくくすることが重要であり、このような加工方法に用いられる快削鋼においてもそのような特性がその材料設計に要求される。
そこで、本発明者らは、超硬工具による送り量の小さい仕上げ旋削加工において、工具先端の溝状摩耗に及ぼす快削鋼の介在物形態や組成の影響について検討した。具体的には、まず被削材のMnSの形態を種々に変化させて、MnSの分布形態が超硬工具の摩耗に対してどのような影響を及ぼすかについて詳細な検討を行った。
その結果、下記〈5〉〜〈7〉の新たな知見を得た。
〈5〉工具先端の溝状摩耗は、比較的小さいMnSにはほとんど影響を受けず、粗大なMnSに影響を受ける。円相当直径換算で10μmを超えるMnSがほとんど存在しない場合、具体的には、鋼材縦断面1mm2中で観察されるMnSのうち、円相当直径換算で10μmを超えるMnSの総面積が10%以下の場合に、工具先端の溝状摩耗を抑制することができる。
〈6〉粗大なMnSの生成をできる限り抑制するためには、鋼中に含まれるO量を可能な限り低減することが有効である。Oの含有量を低減することにより、MnS中に固溶するO量、すなわちMnS中のOの固溶量が少なくなり、MnSの変形抵抗を小さくすることができる。
〈7〉凝固後の鋳片においてはたとえ10μmを超える粗大なMnSが存在していても、Oの固溶量が少ない変形抵抗の小さいMnSは、熱間加工を行えば延伸して細かく分断するので、細かいMnSとすることができる。
そこで、本発明者らは、鋼中に含まれるO量を低減するため、脱酸元素を種々変更することでさらに酸化物について検討を行った。
その結果、下記〈8〉〜〈11〉の知見を得た。
〈8〉Al、Mg、Ti、Zr、REM(希土類元素)といったOとの親和力の大きい元素は添加することによってOの含有量を低減し、粗大なMnSを少なくすることができるが、これらの元素はいずれも硬質な酸化物を形成しやすいので、工具先端に生じる溝状摩耗を抑制することはできない。
〈9〉SiもO含有量の低減に有効な元素であるが、脱酸元素として単独に使用した場合は硬質なSiO2を形成する。このため、工具先端の溝状摩耗を抑えるのには有効ではない。
〈10〉しかしながらSiとCaを併用し、それぞれの質量バランスを調整するとともに、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMといったOとの親和力の大きい元素の含有量を制限することにより、酸化物の平均組成としてCaOおよびSiO2を合計で少なくとも5質量%含有するAl23−MnO−SiO2−CaO系の軟質な複合酸化物組成とすることができ、大幅に工具先端の溝状摩耗を抑制することができる。
〈11〉上記のように、快削鋼において、粗大なMnSを少なくし、軟質な酸化物組成とすることにより、超硬工具を用いた仕上げ旋削加工を行った場合に、従来のPb非添加の低炭素快削鋼に比べて優れた被削性、なかでも、仕上げ面粗さの小さい、優れた表面性状が得られるPb非添加の低炭素硫黄快削鋼を提供することができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す低炭素硫黄快削鋼にある。
(1)質量%で、C:0.02%以上0.20%未満、Si:0.10%を超えて1.5%以下、Mn:0.8〜2.2%、P:0.005〜0.25%、S:0.40%を超えて0.8%以下、O:0.010%未満、N:0.025%以下、Ca:0.0003〜0.005%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMがそれぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満であり、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする低炭素硫黄快削鋼。
2.0<Mn/S<4.0・・・(1)、
0.0005≦10Ca×Si≦0.050・・・(2)。
ただし、(1)式および(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Te:0.05%以下、Bi:0.15%以下およびSn:0.5%以下のうちの1種以上を含有する上記(1)に記載の低炭素硫黄快削鋼。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Cr:2.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.3%以下およびNb:0.3%以下のうちの1種以上を含有する上記(1)または(2)に記載の低炭素硫黄快削鋼。
なお、本発明でいう「REM」は、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計含有量を指す。
以下、上記 (1)〜(3)の低炭素硫黄快削鋼を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(3)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の鋼は、Pb非添加の「地球環境に優しい快削鋼」であるにも拘わらず、超硬工具を用いた仕上げ旋削加工を行った場合に、従来のPb非添加の低炭素快削鋼と比較して、仕上げ面粗さの小さい、良好な表面性状が得られる。さらに、熱間加工性にも優れているので、工業的な規模で安価に製造することができる。したがって、ブレーキパーツ等の自動車部品に比べて一層小さな仕上げ面粗さが要求される細径のプリンターシャフトなどのOA部品の素材として利用することができる。
先ず、本発明の低炭素硫黄快削鋼における化学組成とその限定理由について述べる。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
本発明の低炭素硫黄快削鋼においては、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することが最も要求される点であり、そのためには工具先端の溝状摩耗を抑える必要がある。
C:0.02%以上0.20%未満
Cは、被削性および強度に大きな影響を及ぼす元素である。超硬工具を用いた仕上げ旋削加工において、仕上げ面粗さを小さくするためには、Cの含有量は0.20%未満でなければならない。これは、Cの含有量が0.20%以上の場合、鋼の硬さが高くなって工具先端の溝状摩耗が進みやすくなるためである。一方、Cの含有量が0.02%を下回ると、製造コストが嵩むことに加えて、硬さが柔らかくなりすぎるため、良好な切り屑処理性が得られない。よって、優れた切り屑処理性を確保するためには、伸線加工のような冷間での加工を何度も繰り返して硬さを上昇させなければならなくなるので好ましくない。したがって、Cの含有量を、0.02%以上0.20%未満とした。なお、好ましいC含有量の範囲は、0.03〜0.18%である。0.05〜0.12%であればさらに好ましい。
Si:0.10%を超えて1.5%以下
本発明におけるSiの役割は重要であり、後述するCaとの質量バランスを十分に配慮したうえで含有させなければならない。但し、Siの含有量が0.10%以下の場合、Oの含有量を十分な量まで下げることができないので、10μmを超えるMnSが多く存在するようになり、工具先端の溝状摩耗が進みやすく、良好な仕上げ面粗さが得られない。一方、Siを1.5%を超えて含有させた場合、Siがフェライト中に固溶して鋼の強度を高めるため、逆に溝状摩耗が進みやすくなり、良好な仕上げ面粗さが得られない。したがって、Siの含有量の範囲を、0.10%を超えて1.5%以下とした。なお、後述するCaとの質量バランスを考慮した場合、Caは歩留まりが悪いため、CaよりもSiによって脱酸効果を得るのが望ましく、その場合Siは0.15%を超えて含有させることが望ましく、0.20%を超えて含有させることが一層望ましい。一方、硬さが上昇すれば、工具先端の溝状摩耗を進みやすくさせ、良好な仕上げ面粗さが得られなくなるので、Si含有量の上限は、1.0%とすることが好ましく、0.5%以下であれば一層望ましい。
なお、上記範囲にあるSiの含有量は、後述するように、10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050も満たす必要がある。
Mn:0.8〜2.2%
Mnは、SとともにMnSを形成して被削性全般、すなわち仕上げ面粗さ、切り屑処理性および切削抵抗のいずれにも大きな影響を及ぼす重要な元素である。その含有量が0.8%未満では、MnSとしての絶対量が不足となり、所望の良好な被削性を得ることができない。また、連続鋳造の際に鋳片内部に割れが発生したり、熱間加工性を劣化させる要因となる。なお、Mnには浸炭特性を高める作用もあるので、良好な浸炭特性を得たい場合にはMnの含有量を高めればよい。しかしながら、2.2%を超える多量のMnを含有する場合には、Mnが固溶して硬さが高くなり、溝状摩耗が進みやすくなり、良好な仕上げ面粗さが得られず、また、冷間加工性の低下をもきたす。したがって、Mnの含有量を0.8〜2.2%とした。Mnの含有量は1.0〜1.8%であることが望ましく、1.2〜1.7%であればさらに望ましい。
なお、上記範囲にあるMnの含有量は、後述するように、Mn/Sの値で、2.0を超えて4.0未満を満たすようにする必要がある。
P:0.005〜0.25%
Pは、強度を高める作用を有するので、Cの含有量が低い本発明において、部品としての強度を確保させるとともに、良好な仕上げ面粗さや切り屑処理性が得られるように硬さを調整するのに有効な元素である。そのためには、Pは0.005%以上含有させればよい。しかしながら、Pの含有量が過剰になると、硬さが高くなりすぎて溝状摩耗が進みやすくなり、結果として良好な仕上げ面粗さが得られない。特に、0.25%を超えると溝状摩耗が著しくなることに加えて、冷間加工性や熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量の範囲を0.005〜0.25%とした。なお、Pの含有量は0.03〜0.15%とすることが望ましい。
S:0.40%を超えて0.8%以下
Sは、MnとともにMnSを形成して良好な被削性全般、すなわち仕上げ面粗さ、切り屑処理性および切削抵抗を確保するために必須の元素である。Sの含有量が0.40%以下では、十分な量のMnSを生成することができず、所望の仕上げ面粗さや切り屑処理性を得ることができない。また、Sの含有量が高くなると連続鋳造の際に鋳片内部に割れが発生したり、熱間加工性を劣化させる要因となるが、Mnの含有量とのバランスを適正化することで、内部割れや熱間加工性の劣化を引き起こすことなく、所望の仕上げ面粗さや切り屑処理性を確保することができる。しかしながら、Sを0.8%を超えて含有させた場合には、S含有量に見合うだけのMnを多量に含有させる必要があり、その場合には粗大なMnSが多く形成されるので、溝状摩耗が進みやすくなり、良好な仕上げ面粗さを得ることができない。また、含有量で0.8%を超える過剰なSの添加は歩留まりの悪化によるコスト上昇に繋がる。したがって、Sの含有量を0.40%を超えて0.8%以下とした。
より優れた被削性を安定して得るためには、Sを0.50%を超えて含有させることが望ましく、その上限は0.70%未満とすることが望ましく、0.6%以下とすれば一層望ましい。
なお、上記範囲にあるSの含有量は、後述するように、Mn(%)/S(%)の値で、2.0を超えて4.0未満を満たすようにする必要がある。
O:0.010%未満
本発明において、O(酸素)は、極めて重要な元素である。Oの含有量が高いと、粗大なMnSが多量に形成されてしまう。粗大なMnSが多量に形成されると、工具先端の溝状摩耗の進行を早めてしまい、その結果仕上げ面粗さが大きくなってしまう。したがって、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持するためには、粗大なMnSを可能な限り低減すること、具体的には、鋼材縦断面1mm2中で観察されるMnSのうち、円相当直径換算で10μmを超えるMnSの総面積を低減することが重要であり、そのためには、Oの含有量をできるだけ低減させることが必要である。Oの含有量が0.010%未満であれば、凝固後の鋳片において、鋼中に粗大なMnSが存在していても、その後の熱間加工で延伸して細かく分断するので、鋼材縦断面1mm2中で観察されるMnSのうち、円相当直径換算で10μmを超えるMnSの総面積が10%以下となり、鋼材中には粗大なMnSはほとんど観察されなくなる。したがって小さな仕上げ面粗さを確保することができる。しかしながら、Oの含有量が増えて0.010%以上になると、MnS中に固溶するO量も多くなって、MnSの変形抵抗は高くなり、MnSは分断しにくく、粗大な状態で残存するので、仕上げ面粗さが大きくなってしまう。したがって、Oの含有量を0.010%未満とした。
なお、粗大なMnSを低減して小さい仕上げ面粗さを得るためには、Oの含有量は低ければ低いほど好ましく、0.008%未満であれば安定的に粗大なMnSの割合を減らすことができる。Oの含有量が0.005%未満であれば、さらに良好な被削性を得ることができる。
N:0.025%以下
Nは、不純物として不可避的に含有される元素である。また、本発明においては、AlやTiを実質的に含有しないので、Nは、硬質のAlやTiの窒化物をほとんど形成せず、フェライト中に固溶した状態で存在する。Nを積極的に含有させた場合、フェライトに固溶したNは、強度を高める作用を有する。さらに、Nには、仕上げ面粗さを小さくする作用もある。しかし、Nを0.025%を超えて含有させても、前記の効果が飽和するばかりでなく、冷間加工性の低下を招き、さらに製造コストの上昇をきたす。したがって、Nの含有量を0.025%以下とした。より効果的に強度を向上させ、仕上げ面粗さを小さくし、良好な冷間加工性を具備させるためには、Nの含有量は0.005〜0.015%とすることが好ましい。
Ca:0.0003〜0.005%
Caは、本発明において重要な元素であり、Siとの質量バランスを十分に配慮したうえで0.0003%以上含有させれば、Oの含有量を十分な量まで下げることが可能になるとともに、硬質な酸化物の形成を抑制することができ、切り屑処理性とともに仕上げ面粗さを飛躍的に小さくすることができる。しかしながら、Caは添加歩留まりが極めて低いので、0.005%を超えて含有させるには製造コストが高くなりすぎるので好ましくない。したがって、Caの含有量を0.0003〜0.005%とした。なお、Caの含有量は0.0005%以上0.0045%未満とすることが好ましく、0.001%以上0.0040%未満とすればさらに好ましい。
なお、上記範囲にあるCaの含有量は、後述するように、10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050も満たす必要がある。
本発明に係る低炭素硫黄快削鋼においては、不純物中のAl、Mg、Ti、ZrおよびREMの含有量を、それぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満に制限する。
以下、このことについて説明する。
Al:0.005%未満
Alは、O(酸素)との親和性が強い脱酸元素であり、不純物として0.005%以上含有される場合には、上述のSi含有量、Ca含有量、後述する10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050を満たしていても、硬質の酸化物が形成されてしまう。したがって、工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。このため、不純物中に含有されるAlの含有量は0.005%未満とする必要がある。
なお、不純物中に含有されるAlの含有量は0.003%未満であることが望ましく、0.002%未満であれば一層望ましい。
Mg:0.0003%未満
Mgも、O(酸素)との親和性が強い脱酸元素であり、不純物として0.0003%以上含有される場合には、上述のSi含有量、Ca含有量、後述する10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050を満たしていても、硬質のMgの酸化物が形成されてしまう。したがって、工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。このため、不純物中に含有されるMgの含有量は0.0003%未満とする必要がある。
Ti:0.002%以下
Tiも、O(酸素)との親和性が強い脱酸元素であり、不純物として0.002%を超える場合には、上述のSi含有量、Ca含有量、後述する10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050を満たしていても、硬質のTiの酸化物が形成されてしまう。したがって、工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。このため、不純物中に含有されるTiの含有量は0.002%以下とする必要がある。不純物中に含有されるTiの望ましい含有量は0.001%以下であり、0.0005%以下であればさらに好ましい。
Zr:0.002%以下
Zrも、O(酸素)との親和性が強い脱酸元素であり、不純物として0.002%を超える場合には、上述のSi含有量、Ca含有量、後述する10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050を満たしていても、硬質のZrの酸化物が形成されてしまう。したがって、工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。このため、不純物中に含有されるZrの含有量は0.002%以下とする必要がある。不純物中に含有されるZrの望ましい含有量は0.001%以下であり、0.0005%以下であればさらに好ましい。
REM:0.0003%未満
REMも、O(酸素)との親和性が強い脱酸元素であり、不純物として0.0003%以上含有される場合には、上述のSi含有量、Ca含有量、後述する10Ca(%)×Si(%)の値で、0.0005〜0.050を満たしていても、硬質のREMの酸化物が形成されてしまう。したがって、工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。このため、不純物中に含有されるREMの含有量は0.0003%未満とする必要がある。
なお、既に述べたように、「REM」は、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計含有量を指す。
「Mn/S」の値:2.0を超えて4.0未満
上述した範囲のC、Si、Mn、P、S、O、N、Caを含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMがそれぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満である鋼は、その「Mn/S」の値が2.0を超えて4.0未満であること、つまり、前記(1)式を満たすようにする必要がある。
すなわち、本発明は、0.40%を超える高い量のSを含有するものである。「Mn/S」の値が2.0未満の場合には、熱間延性が乏しいため、連続鋳造の際に鋳片内部で割れが生じやすくなる。また、鋳片内部に割れが生じていなくとも、熱間加工性が乏しくなる。一方、「Mn/S」の値が4.0以上の場合には、過剰なMnが含有されるため、マトリックスに固溶するMnの量も過剰となって工具先端の溝状摩耗を抑えることができないので、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。したがって、「Mn/S」の値は2.0を超えて4.0未満であること、つまり、前記(1)式を満たす必要がある。なお、(1)式における「Mn/S」中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
「Mn/S」の値は、2.5以上3.5未満とするのが好ましく、2.8以上3.5未満とするのが一層好ましい。
「10Ca×Si」の値:0.0005以上0.050以下
前記範囲のC、Si、Mn、P、S、O、N、Caを含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMがそれぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満である鋼は、その「10Ca×Si」の値が0.0005以上0.050以下であること、つまり、前記(2)式を満たすようにする必要もある。
既に述べたように、粗大なMnSはOを多く固溶しており、仕上げ旋削加工の際に、工具先端の溝状摩耗を進めやすい。このため、固溶するO量を少なくして変形抵抗を小さくしたMnSを、熱間加工によって細かくする必要があるが、これに加えて、酸化物組成を適正なもの、具体的には酸化物の平均組成としてCaOおよびSiO2を合計で少なくとも5質量%含有する軟質な酸化物とした場合に、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することが可能となる。このためには、上述のように、酸素と親和性の高い元素である、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMを、それぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満と制限するに加え、「10Ca×Si」の値が0.0005以上0.050以下とする必要があるのである。
「10Ca×Si」の値が0.0005未満の場合には、Oの含有量を下げることが困難となる。さらに、Oの含有量を下げることができたとしても酸化物の平均組成としては、CaOおよびSiO2を合計で少なくとも5質量%含有する軟質な酸化物とはならず、工具先端の溝状摩耗が進行しやすい。一方、「10Ca×Si」の値が0.050を超える場合には、軟質な酸化物組成が得難いし、過剰のSiの含有がフェライトの硬さを高くしすぎてしまうことから、やはり工具先端の溝状摩耗を進めやすくなる。さらに、Caの添加歩留まりを考慮すると製造コストが嵩んでしまう。したがって、「10Ca×Si」の値は0.0005以上0.050以下であること、つまり、前記(2)式を満たす必要がある。なお、(2)式における「10Ca×Si」中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
なお、安定して小さな仕上げ面粗さを得るためには「10Ca×Si」の値は、0.001以上0.030以下であることが望ましく、0.002以上0.010以下であれば一層望ましい。
上記の理由から、本発明(1)に係る低炭素硫黄快削鋼は、C、Si、Mn、P、S、O、N、Caを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMがそれぞれ、上述の範囲にあり、しかも、前記(1)式および(2)式を満たすことと規定した。
本発明に係る低炭素硫黄快削鋼には、必要に応じて、上記本発明(1)におけるFeの一部に代えて、
第1群:Te:0.05%以下、Bi:0.15%以下およびSn:0.5%以下のうちの1種以上、
第2群:Cr:2.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.3%以下およびNb:0.3%以下のうちの1種以上、
の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を含有するものとすることができる。
すなわち、より優れた特性を得るために、前記第1群と第2群の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を、本発明(1)の低炭素硫黄快削鋼におけるFeの一部に代えて、含有してもよい。
以下、上記の元素に関して説明する。
第1群:Te:0.05%以下、Bi:0.15%以下およびSn:0.5%以下のうちの1種以上
Te、BiおよびSnは、いずれも、被削性を改善する作用を有する元素であり、より優れた被削性を得たい場合には以下の範囲で含有してもよい。
Te:0.05%以下
Teは、Mn、SとともにMn(S、Te)を生成して工具先端の溝状摩耗を進めにくくし、仕上げ面粗さを改善する作用を有するので、さらに小さな仕上げ面粗さを得たい場合には上記範囲内で含有させてもよい。しかしながら、Teを0.05%を超えて含有させてもその効果が飽和するので経済的でなくなるし、熱間加工性も劣化する。したがって、添加する場合のTeの含有量を0.05%以下とした。
前記したTeの効果を確実に得るためには、Teの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいTe含有量は0.002〜0.05%である。なお、Te含有量の上限は0.03%とすることが好ましい。
Bi:0.15%以下
Biは、Pbと同様の低融点金属介在物として脆化作用を有し、鋼のあらゆる被削性、すなわち仕上げ面粗さ、切り屑処理性および切削抵抗を改善する効果を有する。しかしながら、Biを0.15%を超えて含有させてもその効果が飽和してコストが嵩むし、熱間加工性も劣化する。したがって、添加する場合のBiの含有量を0.15%以下とした。
前記したBiの効果を確実に得るためには、Biの含有量を0.01%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいBi含有量は0.01〜0.15%である。なお、Bi含有量の上限は0.10%とすることが好ましい。
Sn:0.5%以下
Snは、仕上げ面粗さと切り屑処理性とを改善する作用を有する。これは、Snがマトリックスを脆化するためであると考えられる。しかしながら、Snを0.5%を超えて含有させてもその効果が飽和してコストが嵩むし、熱間加工性も劣化する。したがって、添加する場合のSnの含有量を0.5%以下とした。
前記したSnの効果を確実に得るためには、Snの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいSn含有量は0.05〜0.5%である。なお、Sn含有量の上限は0.3%とすることが好ましい。
上記のTe、BiおよびSnは、いずれか1種のみ、あるいは2種以上の複合で含有することができる。
第2群:Cr:2.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.3%以下およびNb:0.3%以下のうちの1種以上
Cr、Mo、VおよびNbは、いずれも、強度を高める作用を有する。このため、超硬工具を用いた仕上げ旋削加工によって得られる部品において特に強度を高めたい場合には以下の範囲で含有してもよい。
Cr:2.0%以下
Crは、強度を高める作用を有する。Crには、焼入れ性を高めて浸炭特性を改善する作用もある。しかしながら、Crの含有量が多くなり、特に、2.0%を超えると、工具先端の溝状摩耗が進みやすくなり、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。しかも、前記の効果が飽和するのでコストも嵩む。したがって、添加する場合のCrの含有量を2.0%以下とした。
前記したCrの効果を確実に得るためには、Crの含有量を0.02%以上とすることが好ましく、0.05%以上であれば一層好ましい。このため、望ましいCr含有量は0.02〜2.0%である。なお、Cr含有量は0.05〜1.5%とすることがより好ましい。
Mo:0.5%以下
Moは、強度を高める作用を有する。Moには、焼入れ性を高める作用もある。しかしながら、Moの含有量が多くなり、特に、0.5%を超えると、工具先端の溝状摩耗が進みやすくなり、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。しかも、前記の効果が飽和するのでコストも嵩む。したがって、添加する場合のMoの含有量を0.5%以下とした。
前記したMoの効果を確実に得るためには、Moの含有量を0.02%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいMo含有量は0.02〜0.5%である。なお、Mo含有量は0.05〜0.3%とすることが好ましい。
V:0.3%以下
Vは、析出強化によって強度を高める作用を有し、しかも、含有させてもMnSの形態に大きな影響を与えない。このため、被削性を確保した上で強度を向上させるのに極めて有効な元素である。しかしながら、Vの含有量が多くなり、特に、0.3%を超えると、工具先端の溝状摩耗が進みやすくなり、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。したがって、添加する場合のVの含有量を0.3%以下とした。
前記したVの効果を確実に得るためには、Vの含有量を0.02%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合の望ましいV含有量は0.02〜0.3%である。なお、V含有量は0.05〜0.2%とすることがより好ましい。
Nb:0.3%以下
Nbは、Vと同じく析出強化によって強度を高める作用を有し、しかも、含有させてもMnSの形態に大きな影響を与えない。このため、被削性を確保した上で強度を向上させるのに極めて有効な元素である。しかしながら、Nbの含有量が多くなり、特に、0.3%を超えると、工具先端の溝状摩耗が進みやすくなり、仕上げ旋削加工において、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができない。したがって、添加する場合のNbの含有量を0.3%以下とした。
前記したNbの効果を確実に得るためには、Nbの含有量を0.02%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいNb含有量は0.02〜0.3%である。なお、Nb含有量は0.05〜0.2%とすることが好ましい。
上記のCr、Mo、VおよびNbは、いずれか1種のみ、あるいは2種以上の複合で含有することができる。
上述の理由から、本発明(2)に係る低炭素硫黄快削鋼の化学組成を、本発明(1)に係る低炭素硫黄快削鋼のFeの一部に代えて、Te:0.05%以下、Bi:0.15%以下およびSn:0.5%以下のうちの1種以上を含有するものと規定した。
また、本発明(3)に係る低炭素硫黄快削鋼の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)の低炭素硫黄快削鋼におけるFeの一部に代えて、Cr:2.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.3%以下およびNb:0.3%以下のうちの1種以上を含有することと規定した。
なお、Cu、Niは原料スクラップから混入する可能性のある不純物元素であるが、製鋼工程でのいたずらなコストアップを避け、また過剰な含有による被削性の低下を防止する観点から、各々0.3%以下とするのが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
高周波誘導炉を用いて、表1および表2に示す種々の化学組成を有する鋼1〜25を溶製し、180kgの鋼塊を作製した。鋼塊は、上側が直径250mm、下面が直径210mmのテーパーが付いた円柱状である。
表1中の鋼1〜14は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼(以下、「本発明例の鋼」という。)であり、鋼15〜25は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。比較例の鋼のうち鋼15および鋼16は従来のPb非添加の低炭素快削鋼である。
Figure 0005092578
Figure 0005092578
次いで、これらの鋼塊を1200℃の高温まで加熱して2時間以上保持した後、仕上げ温度が1000℃以上となる熱間鍛造を行い、鍛造後は空冷を行って直径40mmの丸棒を得た。
化学成分は、上記直径40mmの丸棒のD/4部(ただし、「D」は丸棒の直径を表す。)から分析用試験片を採取して、化学分析によって求めた。前記表1及び表2に示した各鋼の成分は、この化学分析結果に基づくものである。
なお、鋼25については熱間加工性が悪く、鍛造時に割れが生じたため、上記化学分析の調査だけを行い、以降の調査は実施しなかった。
また、上記直径40mmの丸棒のD/4部からミクロ観察用の試験片を切り出し、縦断面を樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨を行い、MnSの分布形態および酸化物組成を調査した。
すなわち、パッチワークが可能な光学顕微鏡にて約1.4mm2の領域を64分割して撮影し、取り込まれた写真画像から画像解析を行って、MnSの分布形態を測定した。MnSの面積率を求めるにあたっては、ミクロ観察試料内の違う領域に対して上述の作業を少なくとも2回は行って、1mm2当たりの値に換算した。また、測定対象としたMnSはその面積から求められる円相当直径換算で1μmを超えるのものとした。
鋼材縦断面1mm2中で観察されるMnSのうち、円相当直径換算で10μmを超えるMnSの総面積を[A]とし、鋼材縦断面1mm2中で観察される全MnSの総面積を[B]として、[A]/[B]により粗大なMnSの量を評価した。
また、上記で準備したミクロ観察用試験片を使って、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)およびEDS(エネルギー分散型X線分光分析装置)を使用し、定量分析を行うことによって酸化物の組成を調査した。なお、ランダムに観察された10個以上の酸化物について組成を調査し、その算術平均を酸化物の平均組成とした。
さらに、上記の熱間鍛造で得た直径40mmの各丸棒をピーリング加工して直径31mmの丸棒とし、これに冷間伸線加工を行って直径28mmの丸棒とした後、被削性試験を実施した。
被削性試験は、PVDコーティング処理が施されたスローアウェイ型の超硬工具(材質:JIS K種相当、ノーズR:0.2mmR)を用いて下記の条件で旋削して、仕上げ面粗さと切り屑処理性を調査した。
・切削速度:100m/min、
・送り量:0.03mm/rev、
・切り込み深さ:1.0mm、
・潤滑:非水溶性切削油を用いた湿式潤滑。
仕上げ面粗さは、上記条件にて切削距離で6000m切削した後の表面を、触針式の粗さ計を用いて各3点測定し、平均仕上げ面粗さRaの算術平均値にて評価を行った。
また、切り屑処理性は、上記の条件にて切削距離で200m切削する間に排出された切り屑を採取し、長い切り屑から順に20個の質量を各々測定し、その20個の合計の質量にて評価を行った。この質量が小さい値であるほど切り屑処理性は良好であると判断できるため、質量が従来のPb非添加の低炭素快削鋼である鋼15、鋼16と同等の5.0g以下であった場合に、切り屑処理性が良好であると判断した。なお、切り屑処理性が悪く、長い切り屑が排出された結果、20個の切り屑が採取できなかったものについては、その個数と質量から20個当たりの質量に換算した。
表3に、上記の各試験結果をまとめて示す。
なお、表3における「酸化物の平均組成」欄において、「○」はCaOとSiO2が合計で5質量%以上含有されることを、「×」はCaOとSiO2の合計含有量が5質量%未満であることを示す。いずれの場合も平均組成でSiO2およびCaOが単独で90%以上となることはなかった。
さらに、表3における「切り屑処理性」欄の「○」は切り屑の質量が5.0g以下で従来のPb非添加の低炭素快削鋼である鋼15、鋼16と同等の切り屑処理性を有することを、また、「×」は切り屑の質量が5.0gを上回って切り屑処理性が上記従来のPb非添加の低炭素快削鋼である鋼15、鋼16より劣ることを示す。
表3中の鋼25を用いた試験番号25における「−」は、熱間加工性が悪く、鍛造時に割れが生じたため、調査を実施しなかったことを示す。
Figure 0005092578
表3から、試験番号1〜14の本発明に係る低炭素硫黄快削鋼は、超硬工具を用いて送り量の小さい条件の下で仕上げ旋削加工を行った場合に、従来のPb非添加の低炭素快削鋼と比較して、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができるとともに良好な切り屑処理性を有することが明らかである。
これに対して、試験番号15〜24の本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼は、試験番号1〜14の本発明に係る低炭素硫黄快削鋼に比べていずれも仕上げ面粗さが大きく表面性状に劣っている。上記のうちで試験番号17および試験番号18の鋼は、切り屑処理性にも劣っている。
本発明の鋼は、Pb非添加の「地球環境に優しい快削鋼」であるにも拘わらず、送り量の小さい条件の下で超硬工具を用いた仕上げ旋削加工を行った場合に、従来のPb非添加の低炭素快削鋼と比較して、小さな仕上げ面粗さを同一工具の下で長時間の加工の間維持することができ、しかも、良好な切り屑処理性を有している。さらに、熱間加工性にも優れているので、工業的な規模で安価に製造することができる。したがって、ブレーキパーツ等の自動車部品に比べて一層小さな仕上げ面粗さが要求される細径のプリンターシャフトなどの「OA部品」の素材として利用することができる。
被削材の表面側と接触する超硬工具先端のノーズR部に形成された送り量と同間隔の溝状摩耗を模式的に説明する図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.02%以上0.20%未満、Si:0.10%を超えて1.5%以下、Mn:0.8〜2.2%、P:0.005〜0.25%、S:0.40%を超えて0.8%以下、O:0.010%未満、N:0.025%以下、Ca:0.0003〜0.005%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中に含有されるAl、Mg、Ti、ZrおよびREMがそれぞれ、Al:0.005%未満、Mg:0.0003%未満、Ti:0.002%以下、Zr:0.002%以下およびREM:0.0003%未満であり、下記(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする低炭素硫黄快削鋼。
    2.0<Mn/S<4.0・・・(1)、
    0.0005≦10Ca×Si≦0.050・・・(2)。
    ただし、(1)式および(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Te:0.05%以下、Bi:0.15%以下およびSn:0.5%以下のうちの1種以上を含有する請求項1に記載の低炭素硫黄快削鋼。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Cr:2.0%以下、Mo:0.5%以下、V:0.3%以下およびNb:0.3%以下のうちの1種以上を含有する請求項1または2に記載の低炭素硫黄快削鋼。
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