JP2005307241A - 高硫黄快削鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、S含有率を高めつつも粗大な硫化物や硬質の炭硫化物の生成を抑制し、ひいては被削性が極めて良好で、かつ介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下、工具寿命の低下、さらには被削面の仕上げ精度悪化などの不具合も生じにくい高硫黄快削鋼を提供することにある。
【解決手段】 上記課題を解決するため、本発明の高硫黄快削鋼は、
質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.50〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、O:0.0050〜0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は高硫黄快削鋼に関するものである。
機械部品等の切削加工にて製造される部材の生産性を向上させるために、近年、快削鋼の用途が増大しつつある。鉄系材料の被削性向上元素としては、S、Pb、Se、Bi、Te、Caなどが知られている。このうち、Pbは、環境保護に対する関心が地球規模で高まりつつある近年では次第に敬遠されるようになっており、その使用を制限する機器や部品も多くなりつつある。そこで、Sを被削性向上元素の主体として用いた材料が、代替材料として考えられている(特許文献1〜特許文献4)。これらは、主にMnS系の介在物を生成させ、介在物に対する切屑形成時の応力集中効果や、工具と切屑間の潤滑作用により被削性や研削性を高めるようにしている。また、Sとともに相当量のTi及びCを添加し、Ti4S2C2系の介在物を分散形成して快削性を付与した鋼も提案されている(特許文献5〜特許文献7)。
特開昭56−16653号公報 特開平10−46292号公報 特開昭62−258955号公報 特開昭54−17567号公報 特開平9−49053号公報 特開平11−1743号公報 特開2001−262280号公報 特開2002−249848号公報 特開2000−319753号公報
しかしながら、Sを快削性付与元素として用いる場合、S添加量が過剰になると、合金の耐食性、熱間加工性あるいは冷間加工性を劣化させる原因となるため、その添加量は一般に0.3質量%以下に留められている(例えば、特許文献1、特許文献3)。当然、S添加量が少ないことから、硫化物系介在物の形成量も不足しがちであり、被削性向上効果には一定の限界があった。また、MnSなどの硫化物は材料の鍛伸方向に延伸しやすく、材料強度の異方性化等を招く原因ともなっている。なお、特許文献3には、TiとSを複合添加して硫化物を球状化できることが開示されているが、S添加量が少ないため、被削性向上効果の向上に限界がある点については何ら変わりはない。
他方、特許文献8、特許文献9、特許文献2あるいは特許文献4のごとく、Sの含有量の上限を0.4質量%以上に高め、被削性をさらに向上させる提案もなされているが、前述の問題のほか、粗大な硫化物系介在物が形成されやすく、例えば酸洗処理後メッキして使用される材料等の場合、介在物の脱落により表面性状が悪化したり、また油圧部品など気密性が重視される用途等には適用が困難になったりする問題があった。
なお、特許文献8、特許文献9、特許文献2においては、被削性向上のため、鋼中のS含有量のほかO含有量も規定しているが、いずれもO含有量が不足すると硫化物が小型化し、切削に不向きなる主旨の記載がある。したがって、これら特許文献におけるO含有量の規定は、粗大な硫化物の形成を促進し、微細な硫化物の形成はなるべく抑制することに主眼が置かれていることが明白である。従って、被削性をさらに向上させる目的でS含有量を増大させようとした場合、粗大な硫化物の形成が過剰となり、上記の弊害が助長されることは必至となる。
一方、特許文献4〜特許文献7に開示されている、Ti炭硫化物を利用する快削鋼の場合、介在物がMnS等と比較すると硬質なため、ハイス工具等による切削加工では、工具寿命が低下しやすい欠点がある。
本発明の課題は、S含有率を高めつつも粗大な硫化物や硬質の炭硫化物の生成を抑制し、ひいては被削性が極めて良好で、かつ介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下、工具寿命の低下、さらには被削面の仕上げ精度悪化などの不具合も生じにくい高硫黄快削鋼を提供することにある。
課題を解決するための手段・発明の効果
上記課題を解決するため、本発明の高硫黄快削鋼は、
質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.50〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、O:0.0050〜0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
上記本発明の高硫黄快削鋼においては、MnとSとを添加することにより、被削性を改善する硫化物系介在物(以下、「被削性向上介在物」ともいう)として、MnS系介在物(Mnに対しCa等の副成分が固溶しうるが、カチオン元素の主体(50質量%以上)はMnである)を組織中に分散形成する。そして、Sは、従来の快削鋼よりも多い0.4質量%以上を添加する。他方、Si含有量とO含有量とを調整することにより、粗大なMnS系介在物の過度な微細化が抑制され、MnS系介在物は均一かつ適度な粒径に整粒化される。その結果、被削性が劇的に向上するとともに、粗大介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下も生じにくい。
例えば、特許文献2,特許文献8及び特許文献9のごとく、O含有量のみを調整するだけでは、硫化物の球状化を生ずるだけであったり、あるいは硫化物が却って粗大化することにつながる。従って、本発明のごとく、0.4質量%以上という多量のSが添加される条件下では粗大なMnS系介在物の生成が避け難い。しかし、Si含有量をO含有量とともに特定の範囲内に調整して始めて、粗大なMnS系介在物の形成を抑制しつつ、適度な粒径に整粒化されたMnS系介在物を均一に分散させた組織が得られ、表面性状の悪化や気密性の低下を生ずることなく、被削性を大幅に向上させることが可能となるのである。
MnS系介在物を均一に分散させた組織が得られる理由は、次の通りである。Si含有量をO含有量とともに特定の範囲内に調整することで、鋼中には硫化物の晶出核となる微細なSi系酸化物が生成するが、このSi系酸化物は比較的低融点であるため、偏晶型の硫化物の晶出核となり易く、偏晶凝固的な機構による硫化物の晶出が促進されて、均一な球状のMnS系介在物が生成する。詳しくは、偏晶凝固的な機構におけるMnS系介在物の形成過程は、共晶反応等が介在しない、液相中への硫化物の核発生・成長が主体的となる。具体的には、成長を阻害する固相が周囲に存在しないこともあって、比較的小さな過冷度で核発生・成長に移行でき、少数の核の周囲にて等方的にMnSの成長が進行するので、球状の硫化物が比較的大きく成長し、かつ、その形成間隔はまばらである。該硫化物は、素材に加工が施されなければ、材料組織内に球状のMnS系介在物として形状が保持される。図1に、本発明の高硫黄快削鋼(後述する実施例2,3,5の試験片)の断面組織の光学顕微鏡観察画像を示す。
鋼断面組織上にて観察される該球状のMnS系介在物は、図6のような円換算直径deqにて定義された粒径が3μmを超え、また、その形成間隔(断面組織上における、最近接のMnS系介在物の重心間距離とする)の平均値も20μm以上と比較的広い。なお、鍛造や圧延などの加工が施されると、その鍛伸方向に延伸することがあるが、組織上にて観察される面積はそれほど変化しない。なお、被削性向上効果を高めるためには、鋼組織断面に観察される、円換算直径deqにて定義された粒径が3μmを超える硫化物系介在物(MnS系介在物)の、観察視野1mmあたりの個数が1000個以上2000個以下であることが望ましい。
また、過度に粗大な介在物が形成すると、該介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下や、介在物の総数が減少による切屑破砕性の悪化等の問題が発生するので、鋼組織断面に観察される粒径25μmを超える粗大な硫化物系介在物の、観察視野1mmあたりの個数は、50個未満となっているのがよく、望ましくは可及的に形成されないのがよい。
次に、上記本発明の高硫黄快削鋼は、上述の効果に加え、さらには以下に記述する効果を有する。
(1)工具皮膜効果
上述のごとくSi含有量をO含有量とともに特定の範囲内に調整し、Si系酸化物を晶出核とするMnS系介在物を有する本発明の高硫黄快削鋼では、切削工具の表面にSi系酸化物及びMnS系の皮膜を形成することがわかった。詳しくは、工具表面にSi系酸化物の皮膜が形成され、その上にMnS系の皮膜が形成される。図2に、本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具表面(すくい面)の光学顕微鏡観察画像及びEPMA(電子線プローブ微小分析)観察画像を示す。このような皮膜が工具表面に形成されることで、工具と切屑との間の潤滑効果が得られるとともに、酸化摩耗等の化学的な工具摩耗が抑制され、ひいては工具の耐久性が向上する。
(2)マトリックスの延性低下効果
また、本発明の高硫黄快削鋼では、Si系酸化物の生成に寄与しなかった余剰Siがマトリックスへ固溶するため、マトリックスの延性が低下する。これにより、切屑破砕性が良好となるとともに、工具摩耗が抑制され、ひいては工具の耐久性が向上する。
工具による切削によって被削材側の面粗度が悪化する要因は、次の二つが考えられる。一つは、図5(a)に示すように、粗大な構成刃先によって被削材が削り取られてしまう場合である。もう一つは、図5(b)に示すように、長期間の切削により工具に発生する境界溝摩耗が被削材表面に転写されてしまう場合である。本発明の高硫黄快削鋼では、上記(1)工具皮膜効果及び(2)マトリックスの延性低下効果に起因する以下の(3)及び(4)の効果によって、面粗度を悪化させる二つの要因が共に解消され、良好な仕上げ面粗さ及びその持続性が得られる。
(3)構成刃先の工具への凝着抑制効果
本発明の高硫黄快削鋼では、構成刃先の工具への凝着が抑制されることがわかった。これは、上記(1)工具皮膜効果及び(2)マトリックスの延性低下効果によるものと推測される。図3に、本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具刃先の光学顕微鏡観察画像を示す。なお、比較例として、Si添加以外の方法で脱酸制御した高硫黄快削鋼の場合も示す。図によると、本発明の高硫黄快削鋼を切削した工具の刃先に生成した構成刃先は、比較例の場合よりも小型であることがわかる。このように、構成刃先が小型で安定することにより、工具の刃先が保護されつつも、図5(a)に示すような粗大な構成刃先による面粗度の悪化が防止される。
(4)工具摩耗の抑制効果
本発明の高硫黄快削鋼では、工具摩耗が抑制されることがわかった。これも、上記(1)工具皮膜効果及び(2)マトリックスの延性低下効果によるものと推測される。図4に、本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具の摩耗形態を示す。なお、比較例として、JIS−SUM22相当材の場合及びSi添加以外の方法で脱酸制御した高硫黄快削鋼の場合も示す。図によると、本発明の高硫黄快削鋼を切削した工具では、比較例の場合よりも工具摩耗、特には前逃げ面の境界溝摩耗が大幅に抑制されていることがわかる。これにより、図5(b)に示すような境界溝摩耗による面粗度の悪化が防止される。すなわち、工具における境界溝摩耗の発生が抑制されるため、長時間に渡る切削を続けたとしても良好な仕上げ面が持続するのである。
以下、本発明における組成限定理由について説明する。
C(炭素):0.20%以下
Cは、鋼の強度向上を目的として添加される。C含有量が0.20%を超えると鋼の硬度が増加しすぎ、被削性の低下を招くことにつながる。
Si(ケイ素):0.05〜1.50%
Siは、O含有率をコントロールし、MnS系介在物の形態を制御する成分であるとともに、低融点酸化物の形成、及びマトリックス特性を改善するために重要な成分である。Si含有量が0.05%未満であると、形態制御効果が不十分となり巨大なMnS系介在物を生じることがある。他方、1.50%を超えると鋼の硬度が増加しすぎ、被削性の低下を招くことにつながる。
Mn(マンガン):0.50〜3.0%
MnはSと結合し、MnS系介在物を形成して被削性向上に寄与する。Mn含有量が0.50%未満では、FeSを生じて熱間加工性が悪化することにつながる。また、3.0%を超えると鋼の硬さが上昇し、被削性が低下することにつながる。なお、Mn含有量をWMn(質量%)とし、Sの含有率をWSとして、WMn/WSは1.50以上5.0以下となっていることが望ましい。WMn/WSがこの範囲外になると、熱間加工性の劣化を招く場合がある。
P(リン):0.02〜0.40%
Pは、被削性改善効果を有し、特に仕上げ面の粗さ改善に有効である。ただし、0.02%未満ではその効果に乏しい。他方、0.40%を超えて添加すると、粒界に偏析して粒界腐食感受性を高めるほか、靭性の低下を招くこともある。
S(硫黄):0.4〜1.0%
SはMnと結合し、MnS系介在物を形成して被削性向上に寄与する。既に説明した通り、0.4%以上と、従来の硫黄快削鋼よりも大量に添加し、被削性をより改善する。S含有量が0.4%未満では、被削性を十分に向上させることができなくなる。また、1.0%を超えると熱間加工性が著しく悪化することにつながる。
O(酸素):0.0050〜0.0150%以下
Oは、上述の通り、Siとともに含有量を制御することにより、多量に生ずるMnS系介在物の形態制御に寄与する。ただし、O含有量が0.0150%を超えると、過度に粗大な介在物の形成確率が増大し、該介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下につながる。他方、O含有量が0.0050%未満になると、MnS系介在物の微細化が進みすぎて、切削加工を行ったときの被削面が荒れが顕著となって、切削面の仕上げ精度低下につながる。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、Te(テルル):0.2%以下、Se(セレン):0.2%以下、Ca(カルシウム):0.02%以下、Mg(マグネシウム):0.02%以下、Ba(バリウム):0.02%以下、REM(希土類元素):0.2%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有させることができる。これにより、熱間加工時等において、MnS系介在物が鍛伸方向に長く延伸することが抑制され、材料強度の異方性化(特に鍛伸方向と直角な向きの強度低下)を防ぐ上で有効となる。上記成分の合計含有量が0.01%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されると効果が飽和し、逆に熱間加工性が低下することがあるので、いずれも好ましくない。なお、希土類元素としては、放射活性の低い元素を主体的に用いることが取り扱い上容易であり、この観点において、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる1種又は2種以上を使用することが有効である。特に上記効果のより顕著な発現と価格上の観点から、軽希土類、特にLaあるいはCeを使用することが望ましい。ただし、希土類分離過程等にて不可避的に残留する微量の放射性希土類元素(例えばThやUなど)が含有されていても差し支えない。また、原料コスト低減等の観点から、ミッシュメタルやジジムなど、非分離希土類を使用することもできる。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、B(ホウ素):0.020%以下、Nb(ニオブ):2.0%以下、V(バナジウム):1.0%以下、N(窒素):0.030%以下、Cu(銅):2.0%以下、Ni(ニッケル):2.0%以下、Cr(クロム):2.0%以下、Mo(モリブデン):2.0%以下、Sn(スズ):0.60%以下、As(ヒ素):0.060%以下、Sb(アンチモン):0.060%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有させることができる。これらの元素は、鋼のマトリックスを適度に脆くし、切削時に発生する切り屑を断続化して、ひげ状の連続切り屑となることを抑制する効果を有する。ただし、これらの元素の合計含有量が0.001%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されるとマトリックスが過度に硬化し、被削性が却って低下することがあるので好ましくない。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、Pb(鉛)及びBi(ビスマス)の一方または双方を合計にて0.50%以下含有させることができる。これらの元素は被削性をさらに向上させる効果がある。ただし、本発明の快削鋼は高硫黄組成であり、MnS系介在物が微細に分散した形で多量に形成されるので、これらの添加元素の補助がなくとも本来的に被削性は良好である。ただし、材料ロット内あるいはロット間のバラツキを考慮した場合、量産スケールでの被削性の安定化等を図る目的で添加することはもちろん可能である。なお、これらの元素の合計含有量が0.01%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されると熱間加工性を低下させるため好ましくない。なお、Pbに関しては、環境への配慮から添加が好まれないこともある。しかし、本発明の快削鋼は、上記の通りMnS系介在物の多量形成により本来的に被削性が良好であり、Pb含有量が0.3%以下(0%を含む)であっても良好な被削性を確保でき、Pbを含有しない(不純物として不可避的に混入する場合も、「含有しない」概念に属するものとする)組成を採用することも十分に可能である。
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
まず、表1(本発明実施例)及び表2(比較例)に示す成分組成(質量%)に配合した各々150kg鋼塊を高周波誘導炉にて溶製し、これを1100℃以上1200℃以下の適当な温度で加熱して熱間鍛造を行うことにより、外径55mmの丸棒に加工した(鍛造比:約8)。それら丸棒をさらに950℃で1時間加熱した後空冷(焼ならし処理)し、各試験に供した。
Figure 2005307241
Figure 2005307241
上記の各試験品につき、以下の実験を行った。
1.工具摩耗および被削面の粗さ評価
切削工具として超硬合金(JIS:K10)チップを用いてNC旋盤により以下の条件で切削試験を行う:
・切削速度:100m/min;
・一回転当りの切り込み量:0.3mm;
・一回転当りの送り量:0.050mm;
・切削油:水溶性。
そして、上記の切削時より1min経過後及び60min経過後の切削面におけるそれぞれの最大高さRmaxを、JISB0601(1994)に規定された方法により測定した。また、前逃げ面摩耗量を測定した。
2.切り屑破砕性試験
切削工具として超硬合金(JIS:K10)チップを用いてNC旋盤により以下の条件で切削試験を行う:
・切削速度:80m/min、100m/min及び120m/minの3条件;
・一回転当りの切り込み量:0.3mm及び1.0mmの2条件;
・一回転当りの送り量:0.025mm、0.050mm、0.100mmの3条件;
・切削油:水溶性。
そして、上記の切削速度3条件×切り込み量2条件×送り量3条件の計18条件で、丸棒試験片を長手方向に旋削加工したときの切屑を、表5に示す基準に基づき点数をつけ、その合計点を切屑破砕性評価の指標とした。点数が高いほど切り屑破砕性が良好であることを意味する。
3.メッキ性評価
丸棒試験片に対し、表面を砥石研磨とバフ研磨により6.3Sに平滑に仕上げた後、10%塩酸により10分間酸洗後、無電解Niメッキを施した。その後、試験片を軸直交面にて切断し、断面の表層近傍を光学顕微鏡でランダムに20箇所観察した。そして、各観察部にて、MnS介在物脱落に起因した酸洗ピットメッキ不良の有無を調べ、以下のように評価した:
○:不良なし、△:1〜10箇所が不良、×:10箇所以上が不良。
以上の結果を表3及び表4に示す。
Figure 2005307241
Figure 2005307241
Figure 2005307241
すなわち、本発明に属する実施例の鋼はいずれも、上述したようにMnS系介在物が十分多数形成されているにもかかわらずその粗大化が抑制されているため、被削性とメッキ性とのいずれにおいても良好な結果が得られている。また、切り屑破砕性指数も高い。さらには、加工初期(1min加工後)の被削面(仕上げ面)の粗さが良好であるとともに、長時間加工後(60min加工後)の被削面(仕上げ面)の粗さについても良好な結果が得られている。このように長時間加工後でも良好な仕上げ面粗さが得られたのは、工具摩耗、特に境界溝摩耗が抑制されたためであると考えられる。なお、本発明に属する実施例の鋼は、Pbを含有せずとも、比較例9に示すPb系快削鋼(JIS:SUM24L相当)と略同等の被削性及びメッキ性を有していることがわかる。
以上、本発明の実施例を示したが、これはあくまで例示であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、当事者の知識に基づき種々の改良ないし変形を加えた態様でも実施可能であることはいうまでもない。
本発明の高硫黄快削鋼(実施例2,3,5の試験片)の断面組織の光学顕微鏡観察画像 本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具すくい面の光学顕微鏡観察画像及びEPMA観察画像 本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具刃先の光学顕微鏡観察画像 本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具の摩耗形態を示す図 仕上げ面粗さの悪化原因を示す説明図 介在物の粒径の定義を示す説明図

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.20%以下、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.50〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、O:0.0050〜0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする高硫黄快削鋼。
  2. 不純物として、Al:0.005%以下、Ti:0.005%以下、Zr:0.005%以下に規制することを特徴とする請求項1に記載の高硫黄快削鋼。
  3. 鋼成分としてさらに、Te:0.2%以下、Se:0.2%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、Ba:0.02%以下、REM:0.2%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高硫黄快削鋼。
  4. 鋼成分としてさらに、B:0.020%以下、Nb:2.0%以下、V:1.0%以下、N:0.030%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、Sn:0.60%以下、As:0.060%以下、Sb:0.060%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼。
  5. 鋼成分としてさらに、Pb及びBiの一方または双方を合計にて0.50%以下含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼を製造するにあたり、脱酸制御をSiで行うことを特徴とする高硫黄快削鋼の製造方法。
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