JP2005307243A - 高硫黄快削鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、S含有率を高めつつも粗大な硫化物や硬質の炭硫化物の生成を抑制し、ひいては被削性が極めて良好で、かつ介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下、工具寿命の低下、さらには被削面の仕上げ精度悪化などの不具合も生じにくい高硫黄快削鋼を提供することにある。
【解決手段】 上記課題を解決するため、本発明の高硫黄快削鋼は、
質量%で、C:0.20%以下、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、Cr:0.5〜3.0%、O:0.0050〜0.0250%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、
Mn含有量をWMn(%)とし、Cr含有量をWCr(%)とし、S含有量をWS(%)とし、O含有量をWO(%)として、
(1)1.5≦(WMn+WCr)/WS≦4.0;
(2)40≦(WMn+WCr)/WO;
(3)1.0≦WCr/WMn≦2.5;
にて表される組成条件(1)ないし(3)を充足することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は高硫黄快削鋼に関するものである。
機械部品等の切削加工にて製造される部材の生産性を向上させるために、近年、快削鋼の用途が増大しつつある。鉄系材料の被削性向上元素としては、S、Pb、Se、Bi、Te、Caなどが知られている。このうち、Pbは、環境保護に対する関心が地球規模で高まりつつある近年では次第に敬遠されるようになっており、その使用を制限する機器や部品も多くなりつつある。そこで、Sを被削性向上元素の主体として用いた材料が、代替材料として考えられている(特許文献1〜特許文献4)。これらは、主にMnS系の介在物を生成させ、介在物に対する切屑形成時の応力集中効果や、工具と切屑間の潤滑作用により被削性や研削性を高めるようにしている。また、Sとともに相当量のTi及びCを添加し、Ti4S2C2系の介在物を分散形成して快削性を付与した鋼も提案されている(特許文献5〜特許文献7)。
特開昭56−16653号公報 特開平10−46292号公報 特開昭62−258955号公報 特開昭54−17567号公報 特開平9−49053号公報 特開平11−1743号公報 特開2001−262280号公報 特開2002−249848号公報 特開2000−319753号公報
しかしながら、Sを快削性付与元素として用いる場合、S添加量が過剰になると、合金の耐食性、熱間加工性あるいは冷間加工性を劣化させる原因となるため、その添加量は一般に0.3質量%以下に留められている(例えば、特許文献1、特許文献3)。当然、S添加量が少ないことから、硫化物系介在物の形成量も不足しがちであり、被削性向上効果には一定の限界があった。また、MnSなどの硫化物は材料の鍛伸方向に延伸しやすく、材料強度の異方性化等を招く原因ともなっている。なお、特許文献3には、TiとSを複合添加して硫化物を球状化できることが開示されているが、S添加量が少ないため、被削性向上効果の向上に限界がある点については何ら変わりはない。
他方、特許文献8、特許文献9、特許文献2あるいは特許文献4のごとく、Sの含有量の上限を0.4質量%以上に高め、被削性をさらに向上させる提案もなされているが、前述の問題のほか、粗大な硫化物系介在物が形成されやすく、例えば酸洗処理後メッキして使用される材料等の場合、介在物の脱落により表面性状が悪化したり、また油圧部品など気密性が重視される用途等には適用が困難になったりする問題があった。
なお、特許文献8、特許文献9、特許文献2においては、被削性向上のため、鋼中のS含有量のほかO含有量も規定しているが、いずれもO含有量が不足すると硫化物が小型化し、切削に不向きなる主旨の記載がある。したがって、これら特許文献におけるO含有量の規定は、粗大な硫化物の形成を促進し、微細な硫化物の形成はなるべく抑制することに主眼が置かれていることが明白である。従って、被削性をさらに向上させる目的でS含有量を増大させようとした場合、粗大な硫化物の形成が過剰となり、上記の弊害が助長されることは必至となる。
一方、特許文献4〜特許文献7に開示されている、Ti炭硫化物を利用する快削鋼の場合、介在物がMnS等と比較すると硬質なため、ハイス工具等による切削加工では、工具寿命が低下しやすい欠点がある。
本発明の課題は、S含有率を高めつつも粗大な硫化物や硬質の炭硫化物の生成を抑制し、ひいては被削性が極めて良好で、かつ介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下、工具寿命の低下、さらには被削面の仕上げ精度悪化などの不具合も生じにくい高硫黄快削鋼を提供することにある。
課題を解決するための手段・発明の効果
上記課題を解決するため、本発明の高硫黄快削鋼は、
質量%で、C:0.20%以下、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、Cr:0.5〜3.0%、O:0.0050〜0.0250%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、
Mn含有量をWMn(%)とし、Cr含有量をWCr(%)とし、S含有量をWS(%)とし、O含有量をWO(%)として、
(1)1.5≦(WMn+WCr)/WS≦4.0;
(2)40≦(WMn+WCr)/WO;
(3)1.0≦WCr/WMn≦2.5;
にて表される組成条件(1)ないし(3)を充足することを特徴とする。
上記本発明の高硫黄快削鋼においては、MnとSとを添加することにより、被削性を改善する硫化物系介在物(以下、「被削性向上介在物」ともいう)として、MnS系介在物(Mnに対しCa等の副成分が固溶しうるが、カチオン元素の主体(50質量%以上)はMnである。また、後述するようにCrも含む。)を組織中に分散形成する。そして、Sは、従来の快削鋼よりも多い0.4質量%以上を添加する。そして、さらに本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上記の範囲にS及びMnの含有率を設定し、かつ、上記組成条件(1)〜(3)を充足するように、Mn含有量、Cr含有量、S含有量及びO含有量とを調整することにより、図1のごとく、比較的大粒径の球状のMnS系介在物(第一種介在物)と、微細なMnS系介在物(第二種介在物)とが適度な比率にて混在形成された組織が得られるとの知見を得た。
ここで、大粒径の第一種介在物が主体的となった場合、極端に大きな硫化物系介在物の形成が助長されるため、粗大介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下といった不具合につながるので好ましくない。また、切屑の破砕性が悪化することにもつながる。他方、大粒径の第一種介在物がほとんど排除され、微細な第二種介在物がもっぱら形成されるような組織になった場合、切削加工を行なったときに被削面が荒れやすくなり、切削面の仕上げ精度を確保することが困難になることが判明した。その理由としては、微細な第二種介在物が被削性向上介在物の主体となっている場合、超硬合金や高速度工具鋼等で構成された切削工具に構成刃先を生じやすくなり、面荒れを起こしやすくなるものと考えられる。
しかしながら、上記本発明のごとく第一種介在物と第二種介在物とが適度な比率にて混在形成した組織が得られた場合、微細な硫化物系介在物を、上記第二種介在物の形で従来の快削鋼よりもはるかに多量に形成することができるので、被削性が劇的に向上する。また、切屑破砕性も向上する。それに加えて、粒径の大きい第一種介在物の相対的な形成量が減少することで、第一種介在物のみが形成される場合と比較して、過度に粗大な介在物の形成確率が減少し、該介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下も生じにくい。さらに、粒径の大きい第一種介在物が適当な比率にて混在形成されることで、切削加工を行なったときに被削面が荒れが抑制され、切削面の仕上げ精度を向上させることができる。その理由としては、第一種介在物の混在により、第二種介在物が主体的な場合に生じやすかった構成刃先の形成が抑制されることが考えられる。
例えば、特許文献2,特許文献8及び特許文献9のごとく、O含有量のみを調整するだけでは、硫化物の球状化を生ずるだけであったり、あるいは硫化物が却って粗大化することにつながる。従って、本発明のごとく、0.4質量%以上という多量のSが添加される条件下では、粗大なMnS系介在物の生成が避け難く、微細なMnS系介在物が多量に形成された組織を得ることはできない。しかし、Mn,Cr,S,O含有量とともに、上記組成条件(1)〜(3)を充足する特定の範囲内に調整して始めて、粗大なMnS系介在物の形成を抑制しつつ、微細なMnS系介在物を適度に混在させた組織が得られ、介在物脱落による表面性状の悪化や気密性の低下、及び被削面の面荒れ等を生ずることなく、被削性を大幅に向上させることが可能となるのである。
上記のような組織が得られる理由は、次の通りである。まず、鋼の凝固時において、偏晶凝固的な機構により球状で大形のMnS系介在物が生成する。他方、凝固後には、MnS系介在物の構成成分のうち上記大型のMnS系介在物として生成しなかった余剰分(過飽和分)が、Fe系マトリックス中に微細なMnS系介在物として分散析出する。前者のMnS系介在物が第一種介在物となり、後者のMnS系介在物が第二種介在物となる。
偏晶凝固的な機構におけるMnS系介在物の形成過程は、共晶反応等が介在しない、液相中への硫化物の核発生・成長が主体的となる。具体的には、成長を阻害する固相が周囲に存在しないこともあって、比較的小さな過冷度で核発生・成長に移行でき、少数の核の周囲にて等方的にMnSの成長が進行するので、球状の硫化物が比較的大きく成長し、かつ、その形成間隔はまばらである。該硫化物は、素材に加工が施されなければ、材料組織内に球状の第一種介在物として形状が保持される。鋼断面組織上にて観察される該第一種介在物は、図7のような円換算直径deqにて定義された粒径が3μmを超え、また、その形成間隔(断面組織上における、最近接の第一種介在物の重心間距離とする)の平均値も20μm以上と比較的広い。なお、鍛造や圧延などの加工が施されると、その鍛伸方向に第一種介在物が延伸することがあるが、組織上にて観察される面積はそれほど変化しない。
一方、凝固後の析出により生成する第二種介在物はより微細で、円換算直径にて定義された粒径は2μm以下であり、その形成間隔(断面組織上における、最近接の第一種介在物の重心間距離とする)の平均値も10μm未満と小さい。
例えば、鋼断面組織上にて観察される硫化物系介在物において、円換算直径にて定義された粒径が3μm以上の硫化物系介在物を第一種介在物、同じく0.25μm以上2μm以下の硫化物系介在物を第二種介在物として、それぞれ把握することができる。この場合、第一種介在物の鋼組織断面上での面積率をS(i)、第二種介在物の鋼組織断面上での面積率をS(ii)として、上記本発明の組成を採用することにより、
0.03≦S(ii)/[S(i)+S(ii)]≦0.10
を充足させることができる。
S(ii)/[S(i)+S(ii)]が0.03未満であると、過度に粗大な介在物の形成確率が増大し、該介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下につながる。また、介在物の総数が減少するために、切屑破砕性が悪化しやすくなる。他方、S(ii)/[S(i)+S(ii)]が0.10を超えると、切削加工を行なったときの被削面が荒れが顕著となり、切削面の仕上げ精度低下につながる。
なお、鋼組織断面に観察される粒径25μmを超える粗大な硫化物系介在物の、観察視野1mmあたりの個数は、50個未満となっているのがよく、望ましくは可及的に形成されないのがよい。また、被削性向上効果を高めるためには、鋼組織断面に観察される粒径0.25μm以上の硫化物系介在物(MnS系介在物)の、観察視野1mmあたりの個数が10000個以上80000個以下であることが望ましい。
また、例えば、上記硫化物系介在物において、硫化物系介在物中のMn含有量を[Mn]、Cr含有量を[Cr]として、
0.05≦[Cr]/([Mn]+[Cr])≦0.15
を充足させることができる。
Crは、硫化物系介在物の硬さを向上させる効果を有する(図3参照)。したがって、Crが固溶した場合、硫化物系介在物(より詳しくは第一種介在物)は、鍛造や圧延などの加工による鍛伸方向への延伸が抑制され、より球状に近い形状を保つこととなる。これによって、切削加工を行なったときの被削面の荒れがより抑制され、切削面の仕上げ精度をより向上させることができる。なお、このような効果を得るためには、[Cr]/([Mn]+[Cr])は0.05以上であることが好ましい。他方、[Cr]/([Mn]+[Cr])が0.15を超えると、硫化物系介在物の硬さが過度なものとなり、被削性が低下する場合がある。
図2に、本発明の高硫黄快削鋼の鋼断面組織の光学顕微鏡観察画像及びEPMA(電子線プローブ微小分析)観察画像を示す。これによると、MnS系介在物中にCrが含有されているのがわかる。
さらに、本発明の高硫黄快削鋼では、切削工具の表面にCrを含有したMnS系の皮膜を形成することがわかった。図4に、本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具表面(すくい面)の光学顕微鏡観察画像及びEPMA(電子線プローブ微小分析)観察画像を示す。このような皮膜が工具表面に形成されることで、工具と切屑との間の潤滑効果が得られるとともに、酸化摩耗等の化学的な工具摩耗が抑制され、ひいては工具の耐久性が向上する。
工具による切削によって被削材側の面粗度が悪化する要因は、次の二つが考えられる。一つは、図5(a)に示すように、粗大な構成刃先によって被削材が削り取られてしまう場合である。もう一つは、図5(b)に示すように、長期間の切削により工具に発生する境界溝摩耗が被削材表面に転写されてしまう場合である。しかしながら、以上に記述したように、本発明の高硫黄快削鋼では、構成刃先の形成が抑制され、且つ工具の摩耗が抑制される効果を有するため、そのような面粗度を悪化させる二つの要因が共に解消され、良好な仕上げ面粗さ及びその持続性が得られる。
図6に、本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具の摩耗形態を示す。なお、比較例として、JIS−SUM22相当材の場合及びSi添加以外の方法で脱酸制御した高硫黄快削鋼の場合も示す。図によると、本発明の高硫黄快削鋼を切削した工具では、比較例の場合よりも工具摩耗、特には前逃げ面の境界溝摩耗が大幅に抑制されていることがわかる。これにより、図5(b)に示すような境界溝摩耗による面粗度の悪化が防止される。すなわち、工具における境界溝摩耗の発生が抑制されるため、長時間に渡る切削を続けたとしても良好な仕上げ面が持続するのである。
以下、本発明における組成限定理由について説明する。
C(炭素):0.20%以下
Cは、鋼の強度向上を目的として添加される。C含有量が0.20%を超えると鋼の硬度が増加しすぎ、被削性の低下を招くことにつながる。
Mn(マンガン):0.5〜3.0%
MnはCrとともに、Sと結合し、MnS系介在物を形成して被削性向上に寄与する。Mn含有量が0.5%未満では、FeSを生じて熱間加工性が悪化することにつながる。また、3.0%を超えると鋼の硬さが上昇し、被削性が低下することにつながる。
P(リン):0.02〜0.40%
Pは、被削性改善効果を有し、特に仕上げ面の粗さ改善に有効である。ただし、0.02%未満ではその効果に乏しい。他方、0.40%を超えて添加すると、粒界に偏析して粒界腐食感受性を高めるほか、靭性の低下を招くこともある。
S(硫黄):0.4〜1.0%
SはMnと結合し、MnS系介在物を形成して被削性向上に寄与する。既に説明した通り、0.4%以上と、従来の硫黄快削鋼よりも大量に添加し、被削性をより改善する。S含有量が0.4%未満では、被削性を十分に向上させることができなくなる。また、1.0%を超えると熱間加工性が著しく悪化することにつながる。
Cr(クロム):0.5〜3.0%
CrはMnとともに、Sと結合し、MnS系介在物を形成して、介在物の変形を抑制する。Cr含有量が0.5%未満では、そのような効果が十分に得られないとともに、熱間加工性が悪化することにつながる。また、3.0%を超えると鋼の硬さが上昇し、被削性が低下することにつながる。
O(酸素):0.0050〜0.0250%以下
Oは、上述の通り、Siとともに含有量を制御することにより、多量に生ずるMnS系介在物の微細化組織制御に寄与する。ただし、O含有量が0.0150%を超えると、過度に粗大な介在物の形成確率が増大し、該介在物の脱落による表面性状の悪化や気密性の低下につながる。他方、O含有量が0.0050%未満になると、MnS系介在物の微細化が進みすぎて、切削加工を行なったときの被削面が荒れが顕著となって、切削面の仕上げ精度低下につながる。
以下、本発明における組成条件の限定理由について説明する。
(1)1.5≦(WMn+WCr)/WS≦4.0
(WMn+WCr)/WSが1.5未満の場合、FeSを生じて熱間加工性が悪化することにつながる。他方、(WMn+WCr)/WSが4.0を超える場合、偏晶凝固的な機構により生成する第一種介在物に大半のSが用いられて、凝固後に析出する第二種介在物を十分な量形成するためのSが不足してしまい、第一種介在物と第二種介在物とを適度に混在させることが困難となる。
(2)40≦(WMn+WCr)/WO
本発明では、Mn及びCrによって脱酸制御を行っているが、(WMn+WCr)/WOが40未満の場合、十分な脱酸制御が行われずに過度に粗大な硫化物が形成されることがある。
(3)1.0≦WCr/WMn≦2.5
当該組成条件を適用することによって、硫化物系介在物中のMn含有量及びCr含有量を、上述した0.05≦[Cr]/([Mn]+[Cr])≦0.15の範囲に制御することが可能となる。これによって、上述の通り、過度の硬さを有さず、且つ変形能の抑制された硫化物系介在物を得ることができる。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、Te(テルル):0.2%以下、Se(セレン):0.2%以下、Ca(カルシウム):0.02%以下、Mg(マグネシウム):0.02%以下、Ba(バリウム):0.02%以下、REM(希土類元素):0.2%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有させることができる。これにより、熱間加工時等において、MnS系介在物が鍛伸方向に長く延伸することが抑制され、材料強度の異方性化(特に鍛伸方向と直角な向きの強度低下)を防ぐ上で有効となる。上記成分の合計含有量が0.01%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されると効果が飽和し、逆に熱間加工性が低下することがあるので、いずれも好ましくない。なお、希土類元素としては、放射活性の低い元素を主体的に用いることが取り扱い上容易であり、この観点において、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる1種又は2種以上を使用することが有効である。特に上記効果のより顕著な発現と価格上の観点から、軽希土類、特にLaあるいはCeを使用することが望ましい。ただし、希土類分離過程等にて不可避的に残留する微量の放射性希土類元素(例えばThやUなど)が含有されていても差し支えない。また、原料コスト低減等の観点から、ミッシュメタルやジジムなど、非分離希土類を使用することもできる。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、B(ホウ素):0.020%以下、Nb(ニオブ):2.0%以下、V(バナジウム):1.0%以下、N(窒素):0.030%以下、Cu(銅):2.0%以下、Ni(ニッケル):2.0%以下、Cr(クロム):2.0%以下、Mo(モリブデン):2.0%以下、Sn(スズ):0.60%以下、As(ヒ素):0.060%以下、Sb(アンチモン):0.060%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有させることができる。これらの元素は、鋼のマトリックスを適度に脆くし、切削時に発生する切り屑を断続化して、ひげ状の連続切り屑となることを抑制する効果を有する。ただし、これらの元素の合計含有量が0.001%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されるとマトリックスが過度に硬化し、被削性が却って低下することがあるので好ましくない。
次に、本発明の高硫黄快削鋼は、上記成分に加え、Pb(鉛)及びBi(ビスマス)の一方または双方を合計にて0.50%以下含有させることができる。これらの元素は被削性をさらに向上させる効果がある。ただし、本発明の快削鋼は高硫黄組成であり、MnS系介在物が微細に分散した形で多量に形成されるので、これらの添加元素の補助がなくとも本来的に被削性は良好である。ただし、材料ロット内あるいはロット間のバラツキを考慮した場合、量産スケールでの被削性の安定化等を図る目的で添加することはもちろん可能である。なお、これらの元素の合計含有量が0.01%未満では効果に乏しく、各々上限値を超えて添加されると熱間加工性を低下させるため好ましくない。なお、Pbに関しては、環境への配慮から添加が好まれないこともある。しかし、本発明の快削鋼は、上記の通りMnS系介在物の多量形成により本来的に被削性が良好であり、Pb含有量が0.3%以下(0%を含む)であっても良好な被削性を確保でき、Pbを含有しない(不純物として不可避的に混入する場合も、「含有しない」概念に属するものとする)組成を採用することも十分に可能である。
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
まず、表1(本発明実施例)及び表2(比較例)に示す成分組成(質量%)に配合した各々150kg鋼塊を高周波誘導炉にて溶製し、これを1100℃以上1200℃以下の適当な温度で加熱して熱間鍛造を行なうことにより、外径55mmの丸棒に加工した(鍛造比:約8)。それら丸棒をさらに950℃で1時間加熱した後空冷(焼ならし処理)し、各試験に供した。
Figure 2005307243
Figure 2005307243
(組織観察及び介在物のキャラクタリゼーション)
丸棒試験片の軸直交断面を鏡面研磨した後、該研磨断面の半径の1/2の位置にて面積0.1mmの視野をランダムに10個設定して、各々光学顕微鏡により組織観察した(倍率:約400倍)。そして、各視野の観察画像を解析することにより、粒径0.25μm以上の介在物の個数(1mm当たりの換算値)及び円換算直径による粒径を求めた。そして、該粒径が3μmを超えるものを第一種介在物、2μm未満のものを第二種介在物として識別し、それぞれの面積をS(i)、S(ii)として求め、第一種介在物の相対面積率S(i)/(S(i)+S(ii))の値を算出した。なお、介在物は別途EPMAとX線回折により分析を行っており、MnS系の化合物であることを確認している。
上記の各試験品につき、以下の実験を行った。
1.工具摩耗および被削面の粗さ評価
切削工具として超硬合金(JIS:K10)チップを用いてNC旋盤により以下の条件で切削試験を行う:
・切削速度:100m/min;
・一回転当りの切り込み量:0.3mm;
・一回転当りの送り量:0.050mm;
・切削油:水溶性。
そして、上記の切削時より1min経過後及び60min経過後の切削面におけるそれぞれの最大高さRmaxを、JISB0601(1994)に規定された方法により測定した。また、前逃げ面摩耗量を測定した。
2.切り屑破砕性試験
切削工具として超硬合金(JIS:K10)チップを用いてNC旋盤により以下の条件で切削試験を行う:
・切削速度:80m/min、100m/min及び120m/minの3条件;
・一回転当りの切り込み量:0.3mm及び1.0mmの2条件;
・一回転当りの送り量:0.025mm、0.050mm、0.100mmの3条件;
・切削油:水溶性。
そして、上記の切削速度3条件×切り込み量2条件×送り量3条件の計18条件で、丸棒試験片を長手方向に旋削加工したときの切屑を、表5に示す基準に基づき点数をつけ、その合計点を切屑破砕性評価の指標とした。点数が高いほど切り屑破砕性が良好であることを意味する。
3.メッキ性評価
丸棒試験片に対し、表面を砥石研磨とバフ研磨により6.3Sに平滑に仕上げた後、10%塩酸により10分間酸洗後、無電解Niメッキを施した。その後、試験片を軸直交面にて切断し、断面の表層近傍を光学顕微鏡でランダムに20箇所観察した。そして、各観察部にて、MnS介在物脱落に起因した酸洗ピットメッキ不良の有無を調べ、以下のように評価した:
○:不良なし、△:1〜10箇所が不良、×:10箇所以上が不良。
以上の結果を表3及び表4に示す。
Figure 2005307243
Figure 2005307243
Figure 2005307243
すなわち、本発明に属する実施例の鋼はいずれも、介在物の極度の粗大化が抑制され、且つ被削性とメッキ性とのいずれにおいても良好な結果が得られている。また、切り屑破砕性指数も高い。さらには、加工初期(1min加工後)の被削面(仕上げ面)の粗さが良好であるとともに、長時間加工後(60min加工後)の被削面(仕上げ面)の粗さについても良好な結果が得られている。このように長時間加工後でも良好な仕上げ面粗さが得られたのは、工具摩耗、特に境界溝摩耗が抑制されたためであると考えられる。なお、本発明に属する実施例の鋼は、Pbを含有せずとも、比較例12に示すPb系快削鋼(JIS:SUM24L相当)と略同等の被削性及びメッキ性を有していることがわかる。
以上、本発明の実施例を示したが、これはあくまで例示であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、当事者の知識に基づき種々の改良ないし変形を加えた態様でも実施可能であることはいうまでもない。
本発明の高硫黄快削鋼(実施例1の試験片)の断面組織の光学顕微鏡観察画像 本発明の高硫黄快削鋼の鋼断面組織の光学顕微鏡観察画像及びEPMA(電子線プローブ微小分析)観察画像 硫化物系介在物の硬さの含有元素による依存性を表す図 本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具すくい面の光学顕微鏡観察画像及びEPMA観察画像 仕上げ面粗さの悪化原因を示す説明図 本発明の高硫黄快削鋼を切削した後の超硬旋削工具の摩耗形態を示す図 介在物の粒径の定義を示す説明図

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.20%以下、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02〜0.40%、S:0.4〜1.0%、Cr:0.5〜3.0%、O:0.0050〜0.0250%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、
    Mn含有量をWMn(%)とし、Cr含有量をWCr(%)とし、S含有量をWS(%)とし、O含有量をWO(%)として、
    (1)1.5≦(WMn+WCr)/WS≦4.0;
    (2)40≦(WMn+WCr)/WO;
    (3)1.0≦WCr/WMn≦2.5;
    にて表される組成条件(1)ないし(3)を充足することを特徴とする高硫黄快削鋼。
  2. 鋼断面組織上にて観察される硫化物系介在物において、円換算直径にて定義された粒径が3μmを超える硫化物系介在物を第一種介在物、同じく0.25μm以上2μm以下の硫化物系介在物を第二種介在物とし、前記第一種介在物の前記鋼組織断面上での面積率をS(i)、前記第二種介在物の前記鋼組織断面上での面積率をS(ii)として、
    0.03≦S(ii)/[S(i)+S(ii)]≦0.10
    を充足することを特徴とする請求項1に記載の高硫黄快削鋼。
  3. 前記硫化物系介在物中のMn含有量を[Mn]、Cr含有量を[Cr]として、
    0.05≦[Cr]/([Mn]+[Cr])≦0.15
    を充足することを特徴とする請求項2に記載の高硫黄快削鋼。
  4. 鋼成分としてさらに、Te:0.2%以下、Se:0.2%以下、Ca:0.02%以下、Mg:0.02%以下、Ba:0.02%以下、REM:0.2%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼。
  5. 鋼成分としてさらに、B:0.020%以下、Nb:2.0%以下、V:1.0%以下、N:0.030%以下、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、Sn:0.60%以下、As:0.060%以下、Sb:0.060%以下のうちのいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼。
  6. 鋼成分としてさらに、Pb及びBiの一方または双方を合計にて0.50%以下含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高硫黄快削鋼。
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