JP2007063589A - 棒鋼・線材 - Google Patents

棒鋼・線材 Download PDF

Info

Publication number
JP2007063589A
JP2007063589A JP2005248739A JP2005248739A JP2007063589A JP 2007063589 A JP2007063589 A JP 2007063589A JP 2005248739 A JP2005248739 A JP 2005248739A JP 2005248739 A JP2005248739 A JP 2005248739A JP 2007063589 A JP2007063589 A JP 2007063589A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel
inclusions
steel bar
sulfide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2005248739A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4424503B2 (ja
Inventor
Yoshihiro Ofuji
善弘 大藤
Norimasa Ono
訓正 小野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2005248739A priority Critical patent/JP4424503B2/ja
Publication of JP2007063589A publication Critical patent/JP2007063589A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4424503B2 publication Critical patent/JP4424503B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】良好な冷間鍛造性及び優れた切削性を兼備し、自動車や産業機械などに用いられる部品の素材として好適な棒鋼・線材の提供。
【解決手段】C:0.15〜0.6%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.2〜1.5%、S:0.02〜0.05%、Cr:0.1〜2.0%、Al:0.01〜0.05%、N:0.004〜0.025%を含み、残部はFeと不純物からなり、不純物中のP≦0.025%、Ti≦0.003%、O≦0.0015%の化学組成を有し、且つ、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる介在物の最大長径が、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下で、更に、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下である棒鋼・線材。
【選択図】図1

Description

本発明は、棒鋼及び/又は線材(以下、「棒鋼・線材」という。)に関し、詳しくは、鍛造と切削加工を施す部品の素材、なかでも自動車や産業機械などに用いられる部品の素材となる棒鋼・線材に関する。
棒鋼・線材を素材とする自動車や産業機械などに用いられる部品の成形は、冷間鍛造或いは熱間鍛造と、切削加工とを組み合わせて行うことが多い。このため、産業界からは、冷間鍛造や熱間鍛造の際の良好な加工性と優れた切削性を兼ね備えた棒鋼・線材に対する要望が大きく、特に、冷間鍛造時に割れの発生を安定して防止できることが強く望まれている。
特許文献1には、被顕面積150mm2内に存在する硫化物又は硫化物を主体とする複合化合物を評価し、断面積が、それぞれ、60μm2以上のもの及び10〜20μm2のものの個数を特定の範囲内に調整した「冷間鍛造性の優れた鋼線材」が開示されている。
また、特許文献2には、0.0003〜0.01%のZrなど特定の元素を含有し、更に、MnSの平均アスペクト比と最大アスペクト比、或いは、前記MnSのアスペクト比に加えてその最大粒径と1mm2あたりの数を制御した「鍛造性と被削性に優れた鋼」が開示されている。
なお、特許文献3にも、MnSの長径長さと短径長さの最大比や最大長さを制御した技術が開示されている。
特開2000−204440号公報 WO01/066814号公報 特開2001−40452号公報
前記特許文献1で提案された技術は、硫化物又は硫化物を主体とする複合化合物の断面積が、それぞれ、60μm2以上のもの及び10〜20μm2のものについて着目しただけのものであり、大きな介在物が冷間鍛造性に及ぼす影響、特に、介在物の最大長径が冷間鍛造性に及ぼす影響について全く考慮されていない。しかも、硫化物又は硫化物を主体とする複合化合物についての被顕面積すなわち評価面積が極めて小さい。このため、冷間鍛造における限界据込み率が小さく、加工性が不十分であって、工業的な規模で自動車や産業機械などに用いられる部品を量産することは難しい。
また、特許文献2で提案された技術は、MnS以外の他の介在物による冷間鍛造性への影響について全く考慮されておらず、また、介在物の分散状態についての考慮もなされていない。更に、介在物としてのMnSについての評価面積が小さい。このため、前記特許文献1で提案された技術の場合と同様に、冷間鍛造における限界据込み率が小さく、加工性が不十分であって、工業的な規模で自動車や産業機械などに用いられる部品を量産することは難しい。
特許文献3で提案された技術は、介在物としてのMnSの長径長さと短径長さの最大比や最大長さについて考慮されたものであり、優れた接触疲労寿命強度を確保することができるものである。しかしながら、MnS以外の他の介在物についての考慮が全くなされていない。しかも、その実施例の記載から明らかなように、鋼の化学組成は脱酸元素として一般的なAlが非添加で、しかも、不純物に対する配慮が不十分である。また、MnSも、実施例に具体的に記載されているように、約200個という少数を評価したものでしかない。このため、冷間鍛造における加工性は必ずしも良好ではなく、工業的な規模で自動車や産業機械などに用いられる部品を量産することが難しかった。
本発明の目的は、冷間鍛造や熱間鍛造の際の良好な加工性、なかでも冷間鍛造の際の良好な加工性及び優れた切削性を兼ね備え、自動車や産業機械などに用いられる部品の素材として好適な棒鋼・線材を提供することである。
従来、鍛造での割れ発生が開始する限界の加工度(以下、「限界加工度」という。)の向上には、介在物について量の低減と微細化を行えばよいことが知られていた。また、棒鋼・線材においては、通常質量%で、0.005%以上のSを含むため、最も多い介在物はMnSを主体とする硫化物や複合介在物であり、S量の低減が限界加工度の向上に有効であることも知られていた。
しかしながら一方、MnSを主体とする硫化物や複合介在物は、工具寿命を延ばし、切削抵抗を低減し、また、切り屑処理性を高めるので、Sの含有量を増やすことが切削性の向上に有効であることも知られていた。
そこで、本発明者らは、自動車や産業機械などに用いられる部品の素材として利用される棒鋼・線材に、大きな限界加工度、なかでも冷間鍛造での大きな限界加工度を確保させ、しかも、良好な切削性を確保させて、工業的な規模で安定した量産を行うことができるようにするために介在物の形態、分布などについて種々調査・研究を重ねた。その結果、下記(a)〜(f)の知見を得た。
(a)冷間鍛造の際の限界加工度に対して、介在物の長径、なかでも最大長径が大きな影響を及ぼす。上記介在物の最大長径は、熱間鍛造の際の限界加工度にも影響する。
(b)鋼中の介在物としては、硫化物、酸化物、窒化物、炭化物や炭窒化物などが挙げられ、これらの介在物のうちで硫化物は比較的軟質であるが、他の介在物は硬質である。そして、軟質な介在物と硬質な介在物とでは、冷間鍛造における限界加工度への影響度合いが異なるので、良好な限界加工度を得るためには、先ず、硬質な介在物の最大長径をより一層小さくする必要がある。
(c)一方、硫化物は切削性の向上に寄与するため、Sを積極的に添加して硫化物を形成させる必要があるものの、冷間鍛造における限界加工度を高めるためにはその最大長径を抑制する必要がある。
(d)工業的な規模で安定した量産を行うためには、部品の素材として用いられる棒鋼・線材について、広い領域で介在物の最大長径及び分布状況を評価する必要があり、その評価方法としては、例えば下記の文献に示される「極値統計法」が優れている。
「金属疲労 微小欠陥と介在物の影響」、233〜239ページ、(著者:村上敬宜、発行日:1993年3月8日、発行所:養賢堂)。
なお、「極値統計法」による介在物の最大長径及び分布状況の評価は、例えば次に示すような手順で行えばよい。
〈1〉棒鋼・線材の長手方向に平行である断面を鏡面研磨した後、その研磨面を被検面として、検査基準面積S0(mm2)を決める。
〈2〉上記S0中で最大の長径を有する介在物を選び、その長径Lmax(μm)を測定する。
〈3〉上述した測定を、重複しない場所でn回繰り返して行う。
〈4〉測定したn個のLmaxを小さい順に並べ直し、それぞれLmax,j(j=1〜n)とする。
〈5〉それぞれのjについて下記の基準化変数yjを計算する。
j=−ln[−ln{j/(n+1)}]。
〈6〉極値確率用紙の座標横軸にLmax、縦軸に基準化変数yをとって、j=1〜nについてプロットし、最小二乗法により近似直線を求める。
〈7〉評価したい面積をS(mm2)、T=S/S0として下記の式からyの値を求め、上記の近似直線を用いて、前記yの値におけるLmaxを求めれば、これがその評価面積における介在物の最大長径である。
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]。
(e)Teは、硫化物の最大長径を小さくして冷間鍛造や熱間鍛造の際の限界加工度を高める作用を有するので、含有させてもよい。しかしながら、Teの含有量が多くなると、MnとTeを主体とする介在物が生成しやすくなって、熱間鍛造時に割れや疵の発生が顕著になる。
(f)Zr、Ca、Mg及びREM(希土類元素)は、硫化物の最大長径を小さくする作用を有するものの、これらの元素は非常に酸化力が強く粗大な酸化物を生成する場合がある。このため、不純物としてその含有量の上限を規制することが好ましい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(5)に示す棒鋼・線材にある。
(1)質量%で、C:0.15〜0.6%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.2〜1.5%、S:0.02〜0.05%、Cr:0.1〜2.0%、Al:0.01〜0.05%、N:0.004〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.003%以下及びO(酸素):0.0015%以下の化学組成を有し、且つ、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる介在物の最大長径が、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下であるとともに、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下であることを特徴とする棒鋼・線材。
(2)Feの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有する上記(1)に記載の棒鋼・線材。
(3)Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下から選択される1種以上を含有する上記(1)又は(2)に記載の棒鋼・線材。
(4)Feの一部に代えて、Te:0.008%以下を含有し、且つ、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面積100mm2中におけるMnとTeを主体とする介在物の存在割合が1個未満である上記(1)から(3)までのいずれかに記載の棒鋼・線材。
(5)不純物中のZr:0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、Mg:0.0005%以下及びREM(希土類元素):0.0010%以下である上記(1)から(4)までのいずれかに記載の棒鋼・線材。
ここで、「硫化物を主体とする複合介在物」とは、硫化物が面積率で50%以上である介在物を指す。なお、「酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物を主体とする複合介在物」とは、酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物が介在物に占める面積率が合計で50%以上である介在物を指す。
また、「MnとTeを主体とする介在物」とは、介在物中に検出されるMnとTe以外の元素の割合が30原子%未満である介在物を指す。
本発明でいう「REM(希土類元素)」は、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計含有量を指す。
以下、上記(1)〜(5)の棒鋼・線材に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(5)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の棒鋼・線材は、冷間鍛造や熱間鍛造の際の良好な加工性、なかでも冷間鍛造の際の良好な加工性及び優れた切削性を兼ね備えているので、自動車や産業機械などに用いられる部品の素材として利用することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.15〜0.6%
Cは、部品としての強度を確保するために必須の元素である。しかし、その含有量が0.15%未満では前記の効果が不十分である。一方、Cの含有量が0.6%を超えると、強度が高くなりすぎるため、冷間鍛造での限界加工度及び切削性が大きく低下する。したがって、Cの含有量を0.15〜0.6%とした。なお、Cの含有量は0.15〜0.25%にすることが好ましい。
Si:0.05〜0.8%
Siは、部品としての強度を確保するために必須の元素である。しかし、その含有量が0.05%未満では前記の効果が不十分である。一方、Siの含有量が0.8%を超えると、冷間鍛造での変形抵抗が大きく増加し、鍛造金型の寿命を短くする。したがって、Siの含有量を0.05〜0.8%とした。鍛造金型の寿命をより重視する場合には、Siの含有量は0.05〜0.3%にすることが好ましい。
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、部品としての強度を確保するために必須の元素である。しかし、その含有量が0.2%未満では前記の効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると、強度が高くなりすぎるため、冷間鍛造での限界加工度及び切削性が大きく低下する。したがって、Mnの含有量を0.2〜1.5%とした。なお、Mnの含有量は0.5〜0.9%にすることが好ましい。
S:0.02〜0.05%
Sは、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物を形成し、切削性を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.02%未満では、前記の効果が不十分である。一方、Sの含有量が多くなると、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物が粗大化しやすくなる。特に、Sの含有量が0.05%を超えると、様々な工夫を施しても硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径を後述する本発明の規定内に制御することが困難になって、冷間鍛造での限界加工度が大きく低下する。したがって、Sの含有量を0.02〜0.05%とした。なお、Sの含有量は0.02〜0.03%にすることが好ましい。
Cr:0.1〜2.0%
Crは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、部品としての強度を確保するために必須の元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では前記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、強度が高くなりすぎるため、冷間鍛造での限界加工度及び切削性が大きく低下する。したがって、Crの含有量を0.1〜1.5%とした。焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗の向上効果をより重視する場合には、Crの含有量は1.0〜2.0%とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.05%
Alは、鋼を脱酸して鋼中の酸素量を低減するために必須の元素である。また、AlはNと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化して部品の靱性や疲労強度を高める効果も有する。しかしながら、Alの含有量が0.01%未満ではこれらの効果が得難くなる。一方、Alの含有量が0.05%を超えると、介在物の最大長径を後述する本発明の規定内に制御することが困難になって、冷間鍛造での限界加工度が大きく低下する。したがって、Alの含有量を0.01〜0.05%とした。なお、Alの含有量は0.02〜0.04%にすることが好ましい。
N:0.004〜0.025%
Nは、Al、Nb、V及びTiと結合してAlN、NbN、VN及びTiNを形成しやすく、本発明においては、上記の窒化物のうちでAlN、NbN及びVNは結晶粒微細化に有効で、延性を高める効果がある。しかし、Nの含有量が0.004%未満では前記の効果は得難い。一方、Nの含有量が0.025%を超えると、凝固段階でボイドが形成されやすくなり、これが棒鋼・線材中でもクラックとして残存するため、冷間鍛造での限界加工度が大きく低下する。したがって、Nの含有量を0.004〜0.025%とした。なお、Nの含有量は0.012〜0.020%にすることが好ましい。
本発明においては、不純物元素としてのP、Ti及びO(酸素)の含有量を下記のとおりに制限する。
P:0.025%以下
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素で、特に、その含有量が0.025%を超えると、粒界脆化が顕著になって冷間鍛造での限界加工度が大きく低下する。したがって、Pの含有量を0.025%以下とした。なお、Pの含有量は0.020%以下にすることが好ましい。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成しやすい。TiNは非常に硬質で、且つ、形状が角状であるため、冷間鍛造での割れの起点となりやすい。そのため、Tiの含有量が0.003%を超えると、介在物の最大長径を後述する本発明の規定内に制御しても、冷間鍛造での限界加工度が大きく低下して、後述する本発明の目標値に達しない。したがって、Tiの含有量を0.003%以下とした。なお、不純物元素としてのTiの含有量はできるだけ少なくすることが望ましいが、原料及び製鋼でのコストを考慮すると0.001%以下にすることが好ましい。
O(酸素):0.0015%以下
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、特に、Oの含有量が0.0015%を超えると、介在物の最大長径を後述する本発明の規定内に制御することが困難になって、冷間鍛造での限界加工度が大きく低下する。したがって、Oの含有量を0.0015%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.0010%以下にすることが好ましい。
上記の理由から、本発明(1)に係る棒鋼・線材の化学組成を、上述した範囲のCからNまでの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.003%以下及びO(酸素):0.0015%以下であることと規定した。
なお、本発明に係る棒鋼・線材の化学組成は、必要に応じて、Feの一部に代えて、後述する第1群〜第3群に示される元素を任意に含有させたものでもよい。
以下、上記第1群〜第3群の任意添加元素に関して説明する。
第1群:Mo:0.8%以下
Moは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める作用を有し、前述したMn及びCrによる強度確保の効果を補完するのに有効である。しかしながら、Moの含有量が0.8%を超えると、強度が高くなりすぎるため、冷間鍛造での限界加工度及び切削性が大きく低下する。したがって、Moの含有量を0.8%以下とした。なお、前記したMoの効果を確実に得るためには、その含有量を0.05%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいMoの含有量は0.05〜0.8%である。
第2群:Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下
Nbは、部品の靱性や疲労強度を高める効果を有する。すなわち、Nbは、C及びNと結合して、NbC、NbN及びNb(C、N)を形成しやすく、前述したAlNによる結晶粒微細化作用を補完するのに有効で、部品の靱性や疲労強度を高める効果を有する。しかしながら、Nbを0.08%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、コストが嵩むだけである。したがって、Nbの含有量を0.08%以下とした。なお、前記したNbの効果を確実に得るためには、その含有量を0.01%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいNbの含有量は0.01〜0.08%である。
Vは、部品の靱性や疲労強度を高める効果を有する。すなわち、Vは、N及びCと結合してVN及びVCを形成しやすく、このうち、VNは前述したAlNによる結晶粒微細化作用を補完するのに有効で、部品の靱性や疲労強度を高める効果を有する。しかしながら、Vを0.15%を超えて含有させてもその効果が飽和し、コストが嵩むだけである。したがって、Vの含有量を0.15%以下とした。なお、前記したVの効果を確実に得るためには、その含有量を0.02%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいVの含有量は0.02〜0.15%である。
上記のNb及びVはいずれか1種のみ、又は2種の複合で含有することができる。
第3群:Te:0.008%以下
Teは、MnS中に固溶して、硫化物のアスペクト比を小さくして最大長径を短くし、冷間鍛造や熱間鍛造の際の限界加工度を高める効果を有する。しかしながら、Teの含有量が0.008%を超えると、様々な工夫を施しても後述するMnとTeを主体とする介在物の生成を抑制することが困難になって、熱間鍛造時に割れや疵が多発するようになる。したがって、Teの含有量を0.008%以下とした。なお、前記したTeの効果を確実に得るためには、その含有量を0.002%以上とすることが好ましい。したがって、より望ましいTeの含有量は0.002〜0.008%である。
上記の理由から、本発明(2)に係る棒鋼・線材の化学組成は、本発明(1)における棒鋼・線材のFeの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有することと規定した。
また、本発明(3)に係る棒鋼・線材の化学組成は、本発明(1)又は本発明(2)における棒鋼・線材のFeの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下から選択される1種以上を含有することと規定した。
更に、本発明(4)に係る棒鋼・線材の化学組成は、本発明(1)から本発明(3)までのいずれかにおける棒鋼・線材のFeの一部に代えて、Te:0.008%以下を含有することと規定した。
なお、本発明においては、不純物元素としてのZr、Ca、Mg及びREM(希土類元素)の含有量を、それぞれ、Zr:0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、Mg:0.0005%以下及びREM(希土類元素):0.0010%以下に制限することによって、冷間鍛造の際の限界加工度を一層安定して高めることができる。
したがって、本発明(1)から本発明(4)までのいずれかにおいて棒鋼・線材の不純物中のZr、Ca、Mg及びREMの含有量について、Zr:0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、Mg:0.0005%以下及びREM(希土類元素):0.0010%以下に制限するのが特に好ましく、棒鋼・線材の化学組成をこのように規定したものが本発明(5)である。
なお、既に述べたとおり、「REM」は、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量は上記元素の合計含有量を指す。
(B)硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径
本発明の棒鋼・線材においては、その長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径が、1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下を満たす必要がある。既に述べたように、「硫化物を主体とする複合介在物」とは、硫化物が面積率で50%以上である介在物を指す。
なお、極値統計法による硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径(以下、簡単のために、「硫化物系介在物の最大長径」ということがある。)の評価は、例えば、先に述べた〈1〉〜〈7〉の手順で行えばよい。
以下、上記の硫化物系介在物の最大長径の規定について説明する。
本発明者らは、表1に示す鋼A〜Iを真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。なお、鋼A及び鋼Bは150kg真空溶解炉で溶解し、鋼C〜Iは30kg真空溶解炉で溶解し、鋳造は、鋼Bについてはシリカ鋳型を用いて行い、また、鋼B以外の鋼については鋳鉄鋳型を用いて行った。インゴットの平均直径は150kgインゴットが220mmであり、30kgインゴットが120mmである。
溶解は不純物元素が十分低減するように原料の選定に十分注意を払うだけでなく、下記(1-1)〜(1-3)の手順で実施して酸化物量を低減するとともに粗大な酸化物や窒化物が生成しないように配慮した。
(1-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCを添加。
(1-2)1570〜1590℃で40分保持して、十分な脱ガス処理を実施。
(1-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素とAlを添加し、その後90秒以内に出鋼。
このようにして得た鋼A〜Iのインゴットを1250℃で60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように一次熱間鍛造し、室温まで放冷して、各鋼について直径が30〜65mmの範囲の3種類の棒鋼を得た。表2に、一次熱間鍛造した各棒鋼の直径の詳細を示す。
上記の一次熱間鍛造した各棒鋼を、表2に示す均質化処理条件で熱処理してから室温まで放冷し、次いで、1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように二次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製した。
なお、表2には、鋳型材質、インゴットの質量及び平均直径を併記した。また、一次熱間鍛造の際の鍛錬成形比も「鍛錬比」の項に示した。
Figure 2007063589
Figure 2007063589
上記のようにして得た鋼A〜Iの直径25mmの棒鋼から、その長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、目盛りが入った接眼鏡を装着した光学顕微鏡を用いて倍率200倍で60視野観察し、各視野の中での硫化物系介在物の最大長径を計測した。上記各視野の面積は0.30mm2である。
なお、光学顕微鏡による観察で硫化物は灰色のコントラストを呈するため、他の介在物と容易に識別できるが、最大長径を有する介在物が複合介在物で、硫化物を主体とするか否かの判別が困難な場合は、倍率400倍で撮影した写真を画像解析して硫化物の占める面積率を計測した。
次いで、各視野で測定した硫化物系介在物の最大長径について、極値統計法によってデータを整理した。すなわち、各視野での硫化物系介在物の最大長径Lmaxについて、既に述べた手順〈1〉〜〈6〉に則って横軸にLmax、縦軸に基準化変数yをとってプロットし、最小二乗法によって近似直線を求めた。
ここで、自動車や産業機械などに用いられる部品の大きさは、比較的大きいものでも100mm×100mm程度であるため、極値統計における評価面積は1.0×104mm2とすれば十分である。また、量産においてその部品を1000個製造してもトラブルが発生しないことが要求されると仮定すれば、1.0×107mm2について評価すれば十分である。
なお、評価面積が1.0×104mm2の場合、既に述べた手順〈7〉におけるTは、(1.0×104)/0.30で求められるため、y=10.4となる。また、評価面積が1.0×107mm2の場合、Tは、(1.0×107)/0.30で求められるため、y=17.3となる。そこで次に、上記で求めた近似直線から、y=10.4及びy=17.3におけるLmaxを求めた。
表2に、上記極値統計法によって求めた1.0×104mm2中及び1.0×107mm2中の硫化物系介在物の最大長径(つまり、y=10.4及びy=17.3でのLmax)を示す。
前記のように二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た棒鋼は、次のようにしてその限界加工度も調査した。
先ず、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼A〜Hの直径25mmの棒鋼には、更に920℃で1時間保持した後、室温まで放冷する焼鈍処理を施した。同様に、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼Iの直径25mmの棒鋼には、更に750℃で3時間保持した後、10℃/hの冷却速度で680℃まで冷却し、その後は室温まで放冷する焼鈍処理を施した。
次いで、上記の焼鈍処理を施した鋼A〜Iの直径25mmの棒鋼の各々から、直径が14mmで長さ(高さ)が21mmの円柱状試験片を11個ずつ採取した。なお、上記の円柱状試験片の側面積は923mm2であるため、各鋼について11個の試験片の側面積の合計が1.0×104mm2となる。
上記の円柱状試験片を用いて以下に示す冷間圧縮試験を行い、割れが発生する限界加工度を測定した。
すなわち、先ず円柱状試験片の高さ方向に、高さ21mmの50%(つまり、10.5mm)の圧縮加工を施し、その後、初期高さである21mmの2%に相当する0.42mmずつの圧縮加工を行い圧縮加工の度毎に割れが発生していないかを目視で判定した。上記の試験は11個ずつ採取した全ての円柱状試験片について実施し、最も早い段階で割れが発生した試験片の加工度をその条件における限界加工度である「限界圧縮率」と判定した。
前記の冷間圧縮試験における目標は、上記の限界圧縮率が65%以上、且つ、一次熱間鍛造後に前記した均質化処理を施さない場合に較べて限界圧縮率が10%以上向上することとした。それに加えて冷間圧縮試験での試験数を11個の1000倍行ったと仮定したときの、限界圧縮率が60%以上と判断されることも目標とした。
上記のようにして求めた限界圧縮率を表2に併せて示す。また、図1に、表2に示した限界圧縮率と硫化物系介在物の最大長径との関係を整理して示す。
図1から、極値統計法によって求められる1.0×104mm2中の硫化物系介在物の最大長径が250μm以下の場合に、65%以上の限界圧縮率が得られることが明らかであり、また、上記の場合には、表2から、一次熱間鍛造後の均質化処理を施さない場合に較べ、限界圧縮率が10%以上向上していることも分かる。
ここで実施した冷間圧縮試験での側面積の合計は1.0×104mm2であるが、量産においてその部品を1000個製造してもトラブルが発生しないことが要求されると仮定すれば、先に述べたように1.0×107mm2について評価する必要がある。これを直接評価するためには、前述した冷間圧縮試験の1000倍の個数を処理する必要があるが、個数が多すぎて現実的ではない。そこで図1から、極値統計法によって求められる1.0×104mm2中での硫化物系介在物の最大長径が400μm以下の場合には、60%以上の限界圧縮率が得られていることから、1.0×107mm2での硫化物系介在物の最大長径が400μm以下であれば、量産を考慮して、前述した冷間圧縮試験の1000倍の個数を処理しても、60%以上の限界圧縮率が得られると判断できる。
したがって、本発明においては、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる硫化物系介在物の最大長径、つまり、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径が、1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下であることと規定した。
なお、硫化物系介在物の最大長径には、介在物の組成、凝固速度、凝固偏析などが影響する。また、製鋼の設備によっても影響を受ける。このため、以下に、極値統計法によって求められる硫化物系介在物の最大長径、つまり、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径を1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下にする方法の一例を示す。
a.Sの鋼中含有量を質量%で、0.05%以下にする。
b.取鍋、タンディッシュ等の耐火物の溶損や鋳造時のスラグ及びパウダーの巻き込みを防止する。
c.鋳造をインゴットで行う場合には、小型の鋳型を用い、鋳型の材質に熱伝導のよいものを用いる。
例えば、30kgのインゴットの場合には、1200〜1250℃で60分〜120分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように一次熱間鍛造し、室温まで放冷して直径が30mmの棒鋼にした後、1220〜1270℃×8〜12時間の均質化処理条件で熱処理してから室温まで放冷し、次いで、1150〜1200℃で30〜60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように二次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製する。且つ、上記のa、bを満たしていれば、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物に関して、本発明の規定内の最大長径が得られる。
d.連続鋳造によって大断面のブルーム、例えば300×400mm角といったブルームを製造する場合には、Sの鋼中の含有量を質量%で、0.04%以下にし、二次精錬でRH法真空脱ガス処理を長時間実施し、溶鋼の電磁攪拌を十分に行い、未凝固圧下を行い、総鍛錬成形比(ブルームの断面積/棒鋼・線材の断面積)が120以上で、しかも、その鍛錬成形比が10以上の熱間圧延を施した後、1250℃以上で10時間以上の熱処理を行う。
(C)酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径
本発明の棒鋼・線材においては、その長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径が1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下を満たす必要がある。既に述べたように、「酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物を主体とする複合介在物」とは、酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物が介在物に占める面積率が合計で50%以上である介在物を指す。
なお、極値統計法による酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径(以下、「酸化物等の最大長径」ということもある。)の評価も、例えば、先に述べた〈1〉〜〈7〉の手順で行えばよい。
以下、上記の酸化物等の最大長径の規定について説明する。
本発明者らは、表3に示す鋼J〜Sを真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。なお、鋼Jは150kg真空溶解炉で溶解し、鋼K〜Sは30kg真空溶解炉で溶解し、鋳造は、鋼Jについてはシリカ鋳型を用いて行い、また、鋼J以外の鋼については鋳鉄鋳型を用いて行った。インゴットの平均直径は150kgインゴットが220mmであり、30kgインゴットが120mmである。
鋼J〜O及び鋼Q〜Sの溶解は、次の(2-1)〜(2-3)の手順で行った。
(2-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCを添加。
(2-2)1570〜1590℃において表4に示した時間保持し、脱ガス処理を実施。
(2-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素とAlを添加して、表4に示した時間が経過してから出鋼。
また、鋼Jの溶解は、次の(3-1)〜(3-3)の手順で行った。
(3-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCとAlを添加。
(3-2)1570〜1590℃において表4に示した時間保持し、脱ガス処理を実施。
(3-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素を添加して、表4に示した時間が経過してから出鋼。
このようにして得た鋼J〜Sのインゴットを1250℃で60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように一次熱間鍛造し、室温まで放冷して、鋼Jについては直径が35mmの棒鋼を、また、鋼K〜Sについては直径が30mmの棒鋼を得た。
上記の一次熱間鍛造した各棒鋼を、1250℃×10時間の均質化処理条件で熱処理してから室温まで放冷し、次いで、1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように二次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製した。
Figure 2007063589
Figure 2007063589
上記のようにして得た鋼J〜Sの直径25mmの棒鋼から、その長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、目盛りが入った接眼鏡を装着した光学顕微鏡を用いて倍率200倍で60視野観察し、各視野の中での酸化物等の最大長径を計測した。上記各視野の面積は0.30mm2である。
なお、既に述べたように、光学顕微鏡による観察で硫化物は灰色のコントラストを呈し、他の介在物と容易に識別できるので、それ以外の介在物を酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物のいずれかと判定した。最大長径を有する介在物が複合介在物で、酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物を主体とするか否かの判別が困難な場合は、倍率400倍で撮影した写真を画像解析して酸化物、窒化物、炭化物又は炭窒化物が介在物に占める面積率を計測した。
このようにして各視野で測定した酸化物等の最大長径について、既に述べた極値統計法によってデータを整理した。また、評価面積も、先に述べたのと同様に、1.0×104mm2及び1.0×107mm2とした。
表4に、極値統計法によって求めた1.0×104mm2中及び1.0×107mm2中の酸化物等の最大長径を示す。
前記のように二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た棒鋼は、次のようにしてその限界加工度も調査した。
先ず、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼J〜Rの直径25mmの棒鋼には、更に920℃で1時間保持した後、室温まで放冷する焼鈍処理を施した。同様に、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼Sの直径25mmの棒鋼には、更に750℃で3時間保持した後、10℃/hの冷却速度で680℃まで冷却し、その後は室温まで放冷する焼鈍処理を施した。
次いで、上記の焼鈍処理を施した鋼J〜Sの直径25mmの棒鋼の各々から、直径が14mmで長さ(高さ)が21mmの円柱状試験片を11個ずつ採取した。
上記の円柱状試験片を用いて既に「(B)硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径」の項で述べたのと同じ方法で冷間圧縮試験を行い、割れが発生する限界加工度としての限界圧縮率を測定した。
すなわち、先ず円柱状試験片の高さ方向に、高さ21mmの50%(つまり、10.5mm)の圧縮加工を施し、その後、初期高さである21mmの2%に相当する0.42mmずつの圧縮加工を行い、圧縮加工の度毎に割れが発生していないかを目視で判定した。上記の試験は11個ずつ採取した全ての円柱状試験片について実施し、最も早い段階で割れが発生した試験片の加工度をその条件における限界加工度である「限界圧縮率」と判定した。
なお、前記の冷間圧縮試験における目標は、限界圧縮率が65%以上であることとした。それに加えて冷間圧縮試験での試験数を11個の1000倍行ったと仮定したときの、限界圧縮率が60%以上と判断されることも目標とした。
上記のようにして求めた限界圧縮率を表4に併せて示す。また、図2に、表4に示した限界圧縮率と酸化物等の最大長径との関係を整理して示す。
図2から、極値統計法によって求められる1.0×104mm2中の酸化物等の最大長径が50μm以下の場合に、65%以上の限界圧縮率が得られることが明らかである。
ここで実施した冷間圧縮試験での側面積の合計は1.0×104mm2であるが、量産においてその部品を1000個製造してもトラブルが発生しないことが要求されると仮定すれば、先に述べたように1.0×107mm2について評価する必要がある。これを直接評価するためには、前述した冷間圧縮試験の1000倍の個数を処理する必要があるが、個数が多すぎて現実的ではない。そこで図2から、極値統計法によって求められる1.0×104mm2中での酸化物等の最大長径が80μm以下の場合には、60%以上の限界圧縮率が得られていることから、1.0×107mm2での酸化物等の最大長径が80μm以下であれば、量産を考慮して、前述した冷間圧縮試験の1000倍の個数を処理しても、60%以上の限界圧縮率が得られると判断できる。
したがって、本発明においては、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる酸化物等の最大長径、つまり、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径が、1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下であることと規定した。
なお、酸化物等の最大長径には、介在物の組成、凝固速度、凝固偏析などが影響する。また、製鋼の設備によっても影響を受ける。このため、以下に、極値統計法によって求められる酸化物等の最大長径、つまり、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径を1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下にする方法の一例を示す。
e.Al、O(酸素)及びTiの鋼中含有量を、質量%で、それぞれ、Al:0.01〜0.05%、O:0.0015%以下及びTi:0.003%以下にする。
f.取鍋、タンディッシュ等の耐火物の溶損や鋳造時のスラグ及びパウダーの巻き込みを防止する。
g.鋳造をインゴットで行う場合には、小型の鋳型を用い、鋳型の材質に熱伝導のよいものを用いる。
例えば、30kgのインゴットの場合には、下記(4-1)〜(4-3)に記載した溶解方法で、且つ、上記のe、fを満たしていれば、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物に関して、本発明の規定内の最大長径が得られる。
(4-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCを添加。
(4-2)1570〜1590℃で40〜60分保持して、十分な脱ガス処理を実施。
(4-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素とAlを添加し、その後90秒以内に出鋼。
h.連続鋳造によって大断面のブルーム、例えば300×400mm角といったブルームを製造する場合には、Al、O(酸素)及びTiの鋼中含有量を、質量%で、それぞれ、Al:0.02〜0.04%、O:0.0010%以下及びTi:0.002%以下にし、二次精錬でRH法真空脱ガス処理を長時間実施し、溶鋼の電磁攪拌を十分に行い、未凝固圧下を行い、総鍛錬成形比(ブルームの断面積/棒鋼・線材の断面積)が120以上で、しかも、その鍛錬成形比が10以上の熱間圧延を施した後、1250℃以上で10時間以上の熱処理を行う。
(D)MnとTeを主体とする介在物の存在割合
棒鋼・線材の長手方向に平行である断面積100mm2中におけるMnとTeを主体とする介在物の存在割合が1個以上の場合には、熱間鍛造時に割れや疵が生じる場合がある。このため、上記断面積100mm2中におけるMnとTeを主体とする介在物の存在割合は1個未満とするのがよい。
したがって、本発明(4)に係る棒鋼・線材においては、その長手方向に平行である断面積100mm2中におけるMnとTeを主体とする介在物の存在割合を1個未満と規定した。
なお、既に述べたように、「MnとTeを主体とする介在物」とは、介在物中に検出されるMnとTe以外の元素の割合が30原子%未満である介在物を指す。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
[実施例1]
表5に示す化学組成を有する鋼a〜uを真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。なお、鋼aは150kg真空溶解炉で溶解した後、シリカ鋳型を用いて鋳造した。また、鋼b〜uは30kg真空溶解炉で溶解した後、鋳鉄鋳型を用いて鋳造した。インゴットの平均直径は150kgインゴットが220mmであり、30kgインゴットが120mmである。
鋼a〜p及び鋼r〜uの溶解は、次の(E1-1)〜(E1-3)の手順で行った。
(E1-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCを添加。
(E1-2)1570〜1590℃において表6及び表7に示した時間保持し、脱ガス処理を実施。
(E1-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素とAlを添加して、表6及び表7に示した時間が経過してから出鋼。
また、鋼qの溶解は、次の(E1-4)〜(E1-6)の手順で行った。
(E1-4)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCとAlを添加。
(E1-5)1570〜1590℃において表7に示した時間保持し、脱ガス処理を実施。
(E1-6)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素を添加して、表7に示した時間が経過してから出鋼。
なお、表5における鋼a〜f、鋼h、鋼i及び鋼p〜uは、化学組成が本発明(1)〜(4)で規定する条件を満たす本発明例の鋼である。一方、表5における鋼g及び鋼j〜oは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
上記のようにして得たインゴットのうち、Teを含有する鋼i、鋼j及び鋼r〜uのインゴットは、その高さ方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、調査面積を100mm2としてEPMAによる面分析を行った。その結果、鋼i及び鋼r〜uには、MnとTeを主体とする介在物は全く観察されなかった。一方、Teを0.010%含む鋼jには、MnとTeを主体とする介在物が4個観察された。なお、既に述べたように、「MnとTeを主体とする介在物」とは、介在物中に検出されるMnとTe以外の元素の割合が30原子%未満である介在物を指す。
次いで、鋼a〜h及び鋼k〜qの鋳込みままのインゴット、並びに、EPMAでの面分析用試験片を切り出した鋼i、鋼j及び鋼r〜uのインゴットの残部を、1250℃で60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように一次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径が30〜65mmの範囲の各種サイズの棒鋼を得た。表6及び表7に、一次熱間鍛造した各棒鋼の直径の詳細を示す。なお、鋼jは一次熱間鍛造した際に割れを生じたため、以降の作業を中止した。
鋼jを除いた上記の一次熱間鍛造した各棒鋼を、表6及び表7に示す均質化処理条件で熱処理してから室温まで放冷し、次いで、1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように二次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製した。
表6及び表7には、鋳型材質及びインゴットの質量を併記した。また、一次熱間鍛造の際の鍛錬成形比も「鍛錬比」の項に示した。なお、上記のとおり鋼jは一次熱間鍛造した際に割れを生じたので、表7には記載しなかった。
Figure 2007063589
Figure 2007063589
Figure 2007063589
上記のようにして得た鋼a〜i及び鋼k〜uの直径25mmの棒鋼から、その長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、目盛りが入った接眼鏡を装着した光学顕微鏡を用いて倍率200倍で60視野観察し、各視野の中での硫化物系介在物の最大長径及び酸化物等の最大長径を計測した。上記各視野の面積は0.30mm2である。
このようにして各視野で測定した硫化物系介在物の最大長径及び酸化物等の最大長径について、既に述べた極値統計法によってデータを整理した。また、評価面積も、先に述べたのと同様に、1.0×104mm2及び1.0×107mm2とした。
なお、上記で計測した「硫化物系介在物の最大長径」は「硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径」を指し、また、「酸化物等の最大長径」は「酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径」を指す。
前記のように二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た棒鋼は、次のようにしてその限界加工度も調査した。
先ず、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼a〜g、鋼i及び鋼k〜uの直径25mmの棒鋼には、更に920℃で1時間保持した後、室温まで放冷する焼鈍処理を施した。同様に、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼hの直径25mmの棒鋼には、更に750℃で3時間保持した後、10℃/hの冷却速度で680℃まで冷却し、その後は室温まで放冷する焼鈍処理を施した。
次いで、上記の焼鈍処理を施した鋼a〜i及び鋼k〜uの直径25mmの棒鋼の各々から、直径が14mmで長さ(高さ)が21mmの円柱状試験片を11個ずつ採取した。
上記の円柱状試験片を用いて既に述べたのと同じ方法で冷間圧縮試験を行い、割れが発生する限界加工度としての限界圧縮率を測定した。
すなわち、先ず円柱状試験片の高さ方向に、高さ21mmの50%(つまり、10.5mm)の圧縮加工を施し、その後、初期高さである21mmの2%に相当する0.42mmずつの圧縮加工を行い、圧縮加工の度毎に割れが発生していないかを目視で判定した。上記の試験は11個ずつ採取した全ての円柱状試験片について実施し、最も早い段階で割れが発生した試験片の加工度をその条件における限界加工度である「限界圧縮率」と判定した。
前記の冷間圧縮試験における目標は、限界圧縮率が65%以上であることとした。また望ましくは、均質化処理を施さない場合に較べて限界圧縮率が10%以上向上することとした。
上記のようにして求めた限界圧縮率を表6及び表7に併せて示す。
表6及び表7から、本発明(1)〜本発明(4)で規定する条件を満たす試験番号6、11、14、17、20、26、27及び35〜38の場合には、65%以上の限界圧縮率が得られており、冷間鍛造の際の良好な加工性を有していることが明らかである。
これに対して、本発明(1)〜本発明(4)で規定する条件から外れた試験番号の場合には、冷間圧縮試験における限界圧縮率が目標とする65%に達しておらず、冷間鍛造の際の加工性に劣っている。
なお、65%以上の限界圧縮率が得られた試験番号6、11、14、17、20、26、27及び35〜38の焼鈍処理後の棒鋼については、旋削試験による切削性の調査も実施した。すなわち、焼鈍処理後の直径25mmの各棒鋼を機械加工によって直径24mmにし、次いで、超硬工具P20の三角チップを用いて下記の条件で20秒間旋削して主分力、送り分力及び背分力を測定し、その合力の平均値として求めた切削抵抗で切削性を評価した。
・周速:100m/分、
・切り込み深さ:1.0mm、
・送り量:0.15mm/rev.、
・ 潤滑:なし(乾式)。
切削性の目標は、表8に示す化学組成を有する鋼vを新たに溶製し、鋼vを用いた比較材を上記条件で旋削試験した際の切削抵抗を5%以上下回ることとした。
Figure 2007063589
なお、切削性評価のための比較材は次のようにして作製した。すなわち、Sの含有量が本発明で規定する条件から外れた鋼vを30kg真空溶解炉を用いて溶解し、鋳鉄鋳型を用いて平均直径が120mmのインゴットに鋳造した。次いで、そのインゴットを1250℃で60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製し、更に920℃で1時間保持した後、室温まで放冷する焼鈍処理を施した後、機械加工して直径24mmにした。
切削抵抗を求めた結果、本発明(1)〜本発明(4)で規定する条件を満たす試験番号6、11、14、17、20、26、27及び35〜38の全てにおいて、目標に達する良好な切削性も有することが判明した。
[実施例2]
表9に示す化学組成を有する鋼イ〜チを30kg真空溶解炉で溶解した後、鋳鉄鋳型を用いて平均直径が120mmのインゴットに鋳造した。
なお、鋼の溶解は、全て次の(E2-1)〜(E2-3)の手順で行った。
(E2-1)真空排気したチャンバー内のるつぼ中の電解鉄を誘導加熱によって溶解し、目標含有量に相当するCを添加。
(E2-2)1570〜1590℃において表10に示した時間保持し、脱ガス処理を実施。
(E2-3)C及びAl以外の合金元素を添加した後、通常の方法で迅速分析を行い、目標の含有量に達していない合金元素とAlを添加して、表10に示した時間が経過してから出鋼。
なお、表9における鋼イ〜チは全て化学組成が本発明(1)〜(4)で規定する条件を満たす本発明例の鋼である。このうち鋼イ〜ニは化学組成が本発明(5)で規定する条件も満たす鋼である。
次いで、鋼イ〜チの鋳込みままのインゴットを、1250℃で60分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように一次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径が30mmの棒鋼を得た。
上記の一次熱間鍛造した各棒鋼を、表10に示す均質化処理条件で熱処理してから室温まで放冷し、次いで、1150℃で30分加熱した後、仕上げ温度が950℃以上となるように二次熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径25mmの棒鋼を作製した。
表10には、鋳型材質及びインゴットの質量を併記した。また、一次熱間鍛造の際の鍛錬成形比も「鍛錬比」の項に示した。
Figure 2007063589
Figure 2007063589
上記のようにして得た鋼イ〜チの直径25mmの棒鋼から、その長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、目盛りが入った接眼鏡を装着した光学顕微鏡を用いて倍率200倍で60視野観察し、各視野の中での硫化物系介在物の最大長径及び酸化物等の最大長径を計測した。上記各視野の面積は0.30mm2である。
このようにして各視野で測定した硫化物系介在物の最大長径及び酸化物等の最大長径について、既に述べた極値統計法によってデータを整理した。また、評価面積も、先に述べたのと同様に、1.0×104mm2及び1.0×107mm2とした。
なお、上記で計測した「硫化物系介在物の最大長径」は「硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径」を指し、また、「酸化物等の最大長径」は「酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径」を指す。
前記のように二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た棒鋼は、次のようにしてその限界加工度も調査した。
先ず、二次熱間鍛造後室温まで放冷して得た鋼イ〜チの直径25mmの棒鋼には、更に920℃で1時間保持した後、室温まで放冷する焼鈍処理を施した。
次いで、上記の焼鈍処理を施した鋼イ〜チの直径25mmの棒鋼の各々から、直径が14mmで長さ(高さ)が21mmの円柱状試験片を11個ずつ採取した。
上記の円柱状試験片を用いて既に述べたのと同じ方法で冷間圧縮試験を行い、割れが発生する限界加工度としての限界圧縮率を測定した。すなわち、先ず円柱状試験片の高さ方向に、高さ21mmの50%(つまり、10.5mm)の圧縮加工を施し、その後、初期高さである21mmの2%に相当する0.42mmずつの圧縮加工を行い、圧縮加工の度毎に割れが発生していないかを目視で判定した。上記の試験は11個ずつ採取した全ての円柱状試験片について実施し、最も早い段階で割れが発生した試験片の加工度をその条件における限界加工度である「限界圧縮率」と判定した。
上記のようにして求めた限界圧縮率を表10に併せて示す。
表9及び表10から、本発明(1)〜本発明(4)で規定する条件を満たす試験番号39〜46の全てにおいて、65%以上の限界圧縮率が得られており、冷間鍛造の際の良好な加工性を有していることが明らかである。上記の試験番号のうちでも本発明(5)で規定する条件を満たす試験番号39〜42の場合には、72%以上の限界圧縮率が得られており、一層良好な冷間鍛造性を有していることが明らかである。
なお、[実施例1]の場合と同様に、焼鈍処理後の棒鋼については、旋削試験による切削性の調査も実施した。すなわち、焼鈍処理後の直径25mmの各棒鋼を機械加工によって直径24mmにし、次いで、超硬工具P20の三角チップを用いて下記の条件で20秒間旋削して主分力、送り分力及び背分力を測定し、その合力の平均値として求めた切削抵抗で切削性を評価した。
・周速:100m/分、
・切り込み深さ:1.0mm、
・送り量:0.15mm/rev.、
・ 潤滑:なし(乾式)。
切削性の目標は、表8に示す化学組成を有する鋼vを用いた比較材を上記条件で旋削試験した際の切削抵抗を5%以上下回ることとした。なお、切削性評価のための鋼vの比較材作製方法は既に述べたとおりである。
切削抵抗を求めた結果、本発明(1)〜本発明(4)で規定する条件を満たす試験番号39〜46の全てにおいて、目標に達する良好な切削性も有することが判明した。
本発明の棒鋼・線材は、冷間鍛造や熱間鍛造の際の良好な加工性、なかでも冷間鍛造の際の良好な加工性及び優れた切削性を兼ね備えているので、自動車や産業機械などに用いられる部品の素材として利用することができる。
限界圧縮率と硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物の最大長径との関係を整理して示す図である。 限界圧縮率と酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物の最大長径との関係を整理して示す図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.6%、Si:0.05〜0.8%、Mn:0.2〜1.5%、S:0.02〜0.05%、Cr:0.1〜2.0%、Al:0.01〜0.05%、N:0.004〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.003%以下及びO(酸素):0.0015%以下の化学組成を有し、且つ、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面において、極値統計法によって求められる介在物の最大長径が、硫化物又は硫化物を主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中250μm以下且つ1.0×107mm2中400μm以下であるとともに、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はこれらを主体とする複合介在物については、1.0×104mm2中50μm以下且つ1.0×107mm2中80μm以下であることを特徴とする棒鋼・線材。
  2. Feの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有する請求項1に記載の棒鋼・線材。
  3. Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下から選択される1種以上を含有する請求項1又は2に記載の棒鋼・線材。
  4. Feの一部に代えて、Te:0.008%以下を含有し、且つ、棒鋼・線材の長手方向に平行である断面積100mm2中におけるMnとTeを主体とする介在物の存在割合が1個未満である請求項1から3までのいずれかに記載の棒鋼・線材。
  5. 不純物中のZr:0.0005%以下、Ca:0.0005%以下、Mg:0.0005%以下及びREM(希土類元素):0.0010%以下である請求項1から4までのいずれかに記載の棒鋼・線材。
JP2005248739A 2005-08-30 2005-08-30 棒鋼・線材 Active JP4424503B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005248739A JP4424503B2 (ja) 2005-08-30 2005-08-30 棒鋼・線材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005248739A JP4424503B2 (ja) 2005-08-30 2005-08-30 棒鋼・線材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007063589A true JP2007063589A (ja) 2007-03-15
JP4424503B2 JP4424503B2 (ja) 2010-03-03

Family

ID=37926121

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005248739A Active JP4424503B2 (ja) 2005-08-30 2005-08-30 棒鋼・線材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4424503B2 (ja)

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010150566A (ja) * 2008-12-24 2010-07-08 Sumitomo Metal Ind Ltd 真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材
JP2010236005A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Jfe Steel Corp 冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法
JP2011157597A (ja) * 2010-02-02 2011-08-18 Sumitomo Metal Ind Ltd 熱間圧延棒鋼または線材
JP2011167725A (ja) * 2010-02-18 2011-09-01 Ihi Corp 欠陥寸法推定方法及び装置
JP2012117098A (ja) * 2010-11-30 2012-06-21 Sumitomo Metal Ind Ltd 冷間鍛造用快削鋼
JP2014031525A (ja) * 2012-08-01 2014-02-20 Nippon Steel & Sumitomo Metal 冷間鍛造用鋼材
JP2014040894A (ja) * 2012-08-23 2014-03-06 Ntn Corp 軸受部品用リング部材、軌道輪、転がり軸受および軸受部品用リング部材の製造方法
WO2014171472A1 (ja) * 2013-04-18 2014-10-23 新日鐵住金株式会社 肌焼用鋼材と肌焼鋼部品
WO2014175377A1 (ja) * 2013-04-24 2014-10-30 新日鐵住金株式会社 低酸素清浄鋼及び低酸素清浄鋼製品
JPWO2020071219A1 (ja) * 2018-10-01 2021-09-02 日本製鉄株式会社 サワー環境での使用に適した継目無鋼管
CN113684423A (zh) * 2021-10-26 2021-11-23 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种高碳钢盘条

Cited By (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010150566A (ja) * 2008-12-24 2010-07-08 Sumitomo Metal Ind Ltd 真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材
JP2010236005A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Jfe Steel Corp 冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法
JP2011157597A (ja) * 2010-02-02 2011-08-18 Sumitomo Metal Ind Ltd 熱間圧延棒鋼または線材
JP2011167725A (ja) * 2010-02-18 2011-09-01 Ihi Corp 欠陥寸法推定方法及び装置
JP2012117098A (ja) * 2010-11-30 2012-06-21 Sumitomo Metal Ind Ltd 冷間鍛造用快削鋼
JP2014031525A (ja) * 2012-08-01 2014-02-20 Nippon Steel & Sumitomo Metal 冷間鍛造用鋼材
JP2014040894A (ja) * 2012-08-23 2014-03-06 Ntn Corp 軸受部品用リング部材、軌道輪、転がり軸受および軸受部品用リング部材の製造方法
WO2014171472A1 (ja) * 2013-04-18 2014-10-23 新日鐵住金株式会社 肌焼用鋼材と肌焼鋼部品
WO2014175377A1 (ja) * 2013-04-24 2014-10-30 新日鐵住金株式会社 低酸素清浄鋼及び低酸素清浄鋼製品
KR20150131392A (ko) * 2013-04-24 2015-11-24 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 저산소 청정 강 및 저산소 청정 강 제품
JP5935944B2 (ja) * 2013-04-24 2016-06-15 新日鐵住金株式会社 低酸素清浄鋼及び低酸素清浄鋼製品
EP2990497A4 (en) * 2013-04-24 2016-11-30 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp PURIFIED STEEL WITH LOW OXYGEN CONTENT AND PURIFIED STEEL PRODUCT WITH LOW OXYGEN CONTENT
KR101719946B1 (ko) 2013-04-24 2017-03-24 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 저산소 청정 강 및 저산소 청정 강 제품
US10526686B2 (en) 2013-04-24 2020-01-07 Nippon Steel Corporation Low-oxygen clean steel and low-oxygen clean steel product
JPWO2020071219A1 (ja) * 2018-10-01 2021-09-02 日本製鉄株式会社 サワー環境での使用に適した継目無鋼管
JP6996641B2 (ja) 2018-10-01 2022-02-04 日本製鉄株式会社 サワー環境での使用に適した継目無鋼管
CN113684423A (zh) * 2021-10-26 2021-11-23 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种高碳钢盘条
CN113684423B (zh) * 2021-10-26 2022-01-28 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种高碳钢盘条

Also Published As

Publication number Publication date
JP4424503B2 (ja) 2010-03-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4424503B2 (ja) 棒鋼・線材
JP3918787B2 (ja) 低炭素快削鋼
JP6918238B2 (ja) マルテンサイト系s快削ステンレス鋼
JP7417091B2 (ja) 鋼材
JP2010070812A (ja) 冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材とその製造方法
JP5368830B2 (ja) 機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品
JP5316495B2 (ja) 軸受鋼鋼材
JP6642237B2 (ja) 冷間鍛造用鋼およびその製造方法
JP5092578B2 (ja) 低炭素硫黄快削鋼
CN108138288B (zh) 热锻造用钢及热锻造品
JP5556778B2 (ja) 冷間鍛造用快削鋼
JP7199231B2 (ja) フェライト系s快削ステンレス鋼
JP5474615B2 (ja) 鍛造性に優れるマルテンサイト系ステンレス快削鋼棒線
JP4348163B2 (ja) 被削性に優れる鋼及びその製造方法
JP5474616B2 (ja) 鍛造性に優れるフェライト系ステンレス快削鋼棒線
JP6642236B2 (ja) 冷間鍛造用鋼
KR20180117129A (ko) 압연 선재
JP4032915B2 (ja) 機械構造用線または機械構造用棒鋼およびその製造方法
JP5583986B2 (ja) 鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼棒線
JP2004292929A (ja) 機械構造用鋼
JP6801717B2 (ja) 冷間鍛造用鋼及びその製造方法
JP5363882B2 (ja) 冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品
WO2023017829A1 (ja) 鋼材
JP2018035419A (ja) 浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法
JP6766531B2 (ja) 冷間鍛造用鋼およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070919

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20091112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091118

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4424503

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091201

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121218

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131218

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131218

Year of fee payment: 4

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131218

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350