JP2018035419A - 浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法 - Google Patents

浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、冷間鍛造後の被削性に優れる浸炭用鋼を提供する。【解決手段】C:0.07〜0.13、Si:0.0001〜0.500%、Mn:0.0001〜0.80%、S:0.0050〜0.1000%、Cr:1.30超〜5.00%、B:0.0005〜0.0100%、Ti:0.020〜0.100%未満、Al:0.010〜0.100%に加え、Sb、Sn及びTeのうちの1種または2種以上を0.0001〜0.0050%含有し、更に、N:0.0080%以下、P:0.050%以下及びO:0.0030%以下であり、残部がFe及び不純物からなり、焼き入れ性指標として下記式(1)満たし、円相当径が2μ未満の硫化物の存在密度が300個/mm2以上の浸炭用鋼を採用する。7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0 ・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法に関し、特に、冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、限界加工率が大きく、そして、浸炭熱処理後に、従来鋼と同等の硬化層及び鋼部硬さを有するものとなる、浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法に関する。
機械構造用部品に使用される鋼には、一般に、Mn、Cr、Mo、及び、Ni等が組み合わせて添加される。このような化学成分を有し、鋳造、鍛造、圧延等の工程を経て製造された浸炭用鋼は、更に、鍛造、切削等の機械加工によって成型され、そして、浸炭等の熱処理を施されて、表層部の硬化層である浸炭層と浸炭処理の影響が及んでいない母材である鋼部とを備える浸炭鋼部品となる。
この浸炭鋼部品を製造するコストのうち、切削加工に関わるコストが非常に大きい。切削加工は切削の工具が高価であるだけでなく、切りくずを多量に生成するため、歩留の観点からも不利である。このため、切削加工を鍛造に置き換えることが試みられている。鍛造方法は熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造に大別できる。温間鍛造はスケールの発生が少なく、熱間鍛造よりも寸法精度が改善されるという特徴がある。また冷間鍛造はスケールの発生がなく、寸法精度が切削に近いという特徴がある。従って、熱間鍛造で大まかな加工を行った後に冷間鍛造で仕上げ加工を行うこと、温間鍛造を行った後に仕上げとして軽度の切削を行うこと、または、冷間鍛造のみで成型を行うこと等が検討されてきた。しかしながら、切削加工を温間又は冷間鍛造に置き換えるにあたって、浸炭用鋼の変形抵抗が大きいと、金型にかかる面圧が増加し、金型寿命が低下するため、切削に対するコストメリットが小さくなる。あるいは複雑な形状に成型する場合、大きな加工が加わる部位に割れが生じる等の問題が発生する。このため、浸炭用鋼の軟質化や限界加工率の向上を図るために種々の技術が検討されてきた。
例えば、特許文献1および特許文献2には、C、Si及びMn含有量を低減することによって浸炭用鋼の軟質化を図り、冷間鍛造性を向上させた浸炭用鋼が記載されている。特許文献3には、C含有量を低減することによって、微細なTi系析出物の密度を制御し、素材の硬さ上昇を抑制することにより冷間鍛造性と結晶粗大化防止特性に優れた浸炭用鋼が記載されている。いずれも、C含有量を低減することにより、冷間鍛造性が向上するとされている。なお、本明細書において、冷間鍛造性は、冷間鍛造時の変形抵抗および限界加工率で評価される。
冷間鍛造は、寸法精度が切削に近いという特徴があるが、冷間鍛造される部品によっては、少なからず切削工程が含まれる。すなわち、冷間鍛造される鋼は、冷間鍛造性だけでなく被削性向上も求められている。
特許文献1〜特許文献3では、冷間鍛造後の被削性について言及しておらず、被削性向上効果は不明確である。また、特許文献1及び特許文献2では、CaまたはMgを含有することにより、切削時の切削工具表面に保護被膜を形成し、被削性を向上させると記載されている。しかしながら、この技術は切り屑処理性を向上するものではない。よって特許文献1及び特許文献2では、切り屑が長くなることにより、切り屑が加工品または工具に巻き付き加工装置が停止する恐れがある。
工具摩耗量抑制および切り屑処理性を高めるには、S含有量を多くする必要がある。しかしながら、S含有量を多くすると、粗大な硫化物が多量に生成し、冷間鍛造性を低下させる。すなわち、被削性を高めるために、S含有量を多くすると、浸炭用鋼の軟質化による限界加工率の改善効果を打ち消してしまう。
特許第5135562号公報 特許第5135563号公報 特許第5458048号公報
本発明は上記の実情に鑑み、浸炭用鋼の段階で、従来鋼よりも冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、限界加工率が大きく、そして、冷間鍛造後の被削性に優れる浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために詳細な検討を行った結果、以下の知見を得た。
(a)S含有量を多くすることなく、被削性を向上するには、硫化物のサイズ及び分布の制御が重要である。
(b)硫化物の円相当径と工具摩耗量および切り屑処理性との関係について種々実験を行った結果、円相当径で2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上存在すると工具の摩耗が抑制され、かつ、鋼中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であると切り屑処理性が向上する。なお、硫化物間の粒子間距離は、画像解析によって求めることができる。
(c)鋼材中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)または凝固時に晶出することが多く、硫化物の大きさは、凝固時の冷却速度に大きく影響を受ける。また、連続鋳造により製造した鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈しており、このデンドライトは、凝固過程における溶質元素の拡散に起因して形成され、溶質元素は、デンドライトの樹間部において濃化する。Mnは、樹間部において濃化し、硫化物が樹間に晶出する。
(d)硫化物を微細に分散させるには、デンドライトの樹間の間隔を短くする必要がある。デンドライトの1次アーム間隔に関する研究は従来から行われており(例えば下記非特許文献)、下記(A)式で表すことができる。
λ∝(D×σ×ΔT)0.25 …(A)
ここで、λ:デンドライトの1次アーム間隔(μm)、D:拡散係数(m/s)、σ
:固液界面エネルギー(J/m)、ΔT:凝固温度範囲(℃)である。
非特許文献:W.Kurz and D.J.Fisher著、「Fundamentals of Solidification」、Trans Tech Publications Ltd.、(Switzerland)、1998年、p.256
この(A)式から、デンドライトの1次アーム間隔λは、固液界面エネルギーσに依存
し、このσを低減させることができればλが減少することがわかる。λを減少させること
ができれば、デンドライト樹間に晶出する硫化物サイズを低減させることができる。本発明者らは、鋼に微量のSb、SnおよびTeのうちの1種または2種以上を添加することにより、冷間鍛造時の変形抵抗を小さくしたままで、鋼中の硫化物を微細分散させることで冷間鍛造後の鋼の被削性を向上させることを見出した。
本発明の要旨は、次の通りである。
[1] 質量%で、
C:0.07%〜0.13%、
Si:0.0001%〜0.500%、
Mn:0.0001%〜0.80%、
S:0.0050%〜0.1000%、
Cr:1.30%超〜5.00%、
B:0.0005%〜0.0100%、
Ti:0.020%〜0.100%未満及び
Al:0.010%〜0.100%を含有し、
Sb:0.0001%〜0.0050%、Sn:0.0001%〜0.0050%及びTe:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種以上を含有し、
更に、N、P及びOがそれぞれ、
N:0.0080%以下、
P:0.050%以下、
O:0.0030%以下であり、
残部がFe及び不純物からなり、
前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として式(1)を満たし、
鋼中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であり、鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上であることを特徴とする浸炭用鋼。
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0 ・・・(1)
[2] 更に質量%で、
Nb:0.002%〜0.100%、
V:0.002%〜0.200%、
Mo:0.005%〜0.500%、
Ni:0.005%〜1.000%、
Cu:0.005%〜0.500%、
Ca:0.0002%〜0.0030%、
Mg:0.0002%〜0.0030%、
Zr:0.0002%〜0.0050%、
Rare Earth Metal:0.0002%〜0.0050%、
のうちの少なくとも1種または2種以上の元素を含有し、
前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として前記式(1)に代えて式(2)を満たすことを特徴とする[1]に記載の浸炭用鋼。
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(0.3633×Ni+1)<44.0・・・(2)
[3] 鋼部と、鋼部の外面に生成した厚さ0.4mm超2mm未満の浸炭層とを備える浸炭鋼部品であって、
部品表面から深さ50μmの位置での前記浸炭層のビッカース硬さがHV650以上HV1000以下であり、
前記部品表面から深さ2mmの位置での前記鋼部のビッカース硬さがHV250以上HV500以下であり、
前記鋼部は、質量%で、
C:0.07%〜0.13%、
Si:0.0001%〜0.500%、
Mn:0.0001%〜0.80%、
S:0.0050%〜0.1000%、
Cr:1.30%超〜5.00%、
B:0.0005%〜0.0100%
Ti:0.020%〜0.100%未満及び
Al:0.010%〜0.100%を含有し、
Sb:0.0001%〜0.0050%、Sn:0.0001%〜0.0050%及びTe:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種以上を含有し、
更に、N、P及びOがそれぞれ、
N:0.0080%以下、
P:0.050%以下、
O:0.0030%以下であり、
残部がFe及び不純物からなり、
前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として式(3)を満たし、
前記鋼部中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であり、鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上であることを特徴とする浸炭鋼部品。
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0 ・・・(3)
[4] 前記鋼部が、更に質量%で、
Nb:0.002%〜0.100%、
V:0.002%〜0.20%、
Mo:0.005%〜0.50%、
Ni:0.005%〜1.00%、
Cu:0.005%〜0.50%、
Ca:0.0002%〜0.0030%、
Mg:0.0002%〜0.0030%、
Zr:0.0002%〜0.0050%、
Rare Earth Metal:0.0002%〜0.0050%、
のうちの少なくとも1種または2種以上の元素を含有し、
前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として前記式(3)に代えて式(4)を満たすことを特徴とする[3]に記載の浸炭鋼部品。
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(0.3633×Ni+1)<44.0・・・(4)
[5] [1]または[2]に記載の前記浸炭用鋼に、冷間塑性加工を施して形状を付与する冷間加工工程と、
前記冷間加工工程後の前記浸炭用鋼に、浸炭処理または浸炭窒化処理を施す浸炭工程と、
を有することを特徴とする[3]または[4]に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
[6] 前記浸炭工程後に、焼入れ処理または焼入れ・焼戻し処理を施す仕上熱処理工程を行うことを特徴とする[5]に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
[7] 前記冷間加工工程後で前記浸炭工程前に、更に、切削加工を施して形状を付与する切削工程を有することを特徴とする[5]または[6]に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
本発明によれば、浸炭用鋼の段階で、従来鋼よりも冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、限界加工率が大きく、そして、冷間鍛造後の被削性に優れる浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法を提供できる。
以下本発明を詳細に説明する。
各成分元素の含有量について説明する。ここで、成分についての「%」は質量%である。
C:0.07%〜0.13%
炭素(C)は、浸炭層と鋼部とを備える浸炭鋼部品における鋼部の硬さを確保するために添加する。従来の浸炭用鋼のC含有量は、0.2%程度であるが、本実施形態に係る浸炭用鋼、及び、浸炭鋼部品における鋼部では、C含有量を、この量よりも少ない0.13%以下に制限している。この理由は、C含有量が0.13%超では、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが顕著に増加するとともに限界加工率も低下するためである。しかしながら、C含有量が0.07%未満では、焼入れ性を高める後述の合金元素を多量に添加して、できる限り硬さの増加を図ったとしても、浸炭鋼部品の鋼部の硬さを従来の浸炭用鋼のレベルにすることが不可能である。従って、C含有量を0.07%〜0.13%の範囲に制御する必要がある。好適範囲は0.08%〜0.12%である。更に望ましい範囲は、0.08%〜0.11%である。
Si:0.0001%〜0.500%
シリコン(Si)は、浸炭鋼部品のような低温焼戻しマルテンサイト鋼の焼戻し軟化抵抗を顕著に増加させることで、歯面疲労強度を向上させる元素である。この効果を得るためには、Si含有量が0.0001%以上である必要がある。しかし、Si含有量が0.500%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Si含有量を0.0001%〜0.500%の範囲に制御する必要がある。この範囲内で、浸炭鋼部品の歯面疲労強度を重視する場合にはSiを積極的に添加し、浸炭用鋼の変形抵抗の低減や限界加工性の向上を重視する場合にはSiを積極的に低減する。前者の場合の好適範囲は0.100%〜0.500%であり、後者の場合の好適範囲は0.0001%〜0.200%である。
Mn:0.0001%〜0.80%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入性を高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めるためには、Mn含有量が0.0001%以上である必要がある。しかし、Mn含有量が0.80%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Mn含有量を0.0001%〜0.80%の範囲に制御する必要がある。好適範囲は0.25%〜0.60%である。
S:0.0050%〜0.1000%
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる元素である。S含有量が0.1000%を超えると、鍛造時にMnSが起点となって割れが生じ、限界加工率が低下することがある。従って、S含有量を0.0050%〜0.1000%の範囲に制御する必要がある。好適範囲は0.0080%〜0.0200%である。
Cr:1.30%超〜5.00%
クロム(Cr)は、鋼の焼入性を高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めるためには、Cr含有量が1.30%超である必要がある。しかし、Cr含有量が5.00%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Cr含有量を1.30%超〜5.00%の範囲に制御する必要がある。また、Crは、同様の効果を有するMn、Mo、Ni等の他の元素と比べて、浸炭用鋼の硬さを上昇させる程度が少なく、かつ焼入れ性を向上させる効果が比較的大きい。よって、本実施形態に係る浸炭用鋼、及び、浸炭鋼部品における鋼部では、従来の浸炭用鋼よりも、Crを多量に添加する。好適範囲は1.35%〜2.50%である。更に望ましい範囲は、1.50%超〜2.20%である。
B:0.0005%〜0.0100%
ホウ素(B)は、オーステナイト中に固溶する場合、微量でも鋼の焼入性を大きく高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めることができる。また、Bは上記効果を得るために多量に添加する必要がないので、フェライトの硬さをほとんど上昇させない。つまり、鍛造前の浸炭用鋼の硬さをほとんど上昇させないという特徴があるため、本実施形態に係る浸炭用鋼、及び、浸炭鋼部品における鋼部ではBを積極的に利用する。B含有量が0.0005%未満では、上記の焼入れ性向上効果が得られない。一方、B含有量が0.0100%を超えると、上記効果が飽和する。従って、B含有量を0.0005%〜0.0100%の範囲に制御する必要がある。好適範囲は0.0010%〜0.0025%である。なお、鋼中に一定量以上のNが存在している場合、BがNと結合してBNを形成し、固溶B量が減少する。その結果、焼入性を高める効果が得られない場合がある。よって、Bを添加する場合には、Nを固定するTiを同時に適量添加することが必要である。
Al:0.010%〜0.100%
アルミニウム(Al)は脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Alの含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、粗大化した場合は、曲げ疲労強度が低下する。一方、Alの含有量が0.100%を超えると、粗大な酸化物を形成しやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.010〜0.100%とした。好適範囲は0.030%〜0.060%である。
Ti:0.020%〜0.100%未満
チタン(Ti)は、鋼中のNをTiNとして固定する効果を有する元素である。Tiを添加することで、BNの形成が防止され、焼入れ性に寄与する固溶Bが確保される。また、Nに対して化学量論的に過剰なTiは、TiCを形成する。このTiCは、浸炭時の結晶粒の粗大化を防止するピン止め効果を有する。Ti含有量が0.020%未満では、B添加による焼入れ性向上効果が得られず、また浸炭時の結晶粒の粗大化を防止することができない。一方、Ti含有量が0.100%以上になると、TiCの析出量が多くなりすぎ、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Ti含有量を0.020%〜0.100%未満の範囲に制御する必要がある。好適範囲は0.025%〜0.050%である。
Sb:0.0001%〜0.0050%
Sn:0.0001%〜0.0050%
Te:0.0001%〜0.0050%
アンチモン(Sb)、錫(Sn)及びテルル(Te)は、本発明において重要な元素である。微量のSb、Sn、Teのうち1種または2種以上を含有することによって、鋼の凝固組織が微細化し、硫化物が微細分散する。硫化物微細化効果を得るには、Sb、SnおよびTeの含有量の下限をそれぞれ0.0001%以上とする必要がある。しかし、Sb、SnおよびTeの含有量がそれぞれ0.0050%を超えると、鋼の熱間加工性が劣化し、連続鋳造が困難となる。これらのことから、本発明では、Sb、SnおよびTeの含有量をそれぞれ0.0001%〜0.0050%とする。より好ましくはそれぞれ、0.0015〜0.0030%である。熱間加工性を向上させるために、更に好ましくは、Sb、SnおよびTeの含有量の合計量を、0.0015〜0.0050%とする。
上記した基本成分の他に、本実施形態に係る浸炭用鋼、及び、浸炭鋼部品における鋼部は不純物を含有する。ここで、不純物とは、スクラップ等の副原料や、製造工程から不可避的に混入する、N、P、O、Pb、Cd、Co、Zn等の元素を意味する。この中で、N、P、及びOは、本発明の一態様の効果を十分に発揮させるために、以下のように制限する必要がある。ここで、記載する%は、質量%である。また、不純物含有量の制限範囲には0%が含まれるが、工業的に安定して0%にすることが難しい。
N:0.0080%以下
窒素(N)は不可避的に含有される不純物であり、BNを形成して、固溶B量を低減させる元素である。N含有量が0.0080%超では、Tiを添加したとしても、鋼中のNをTiNとして固定することができなくなり、焼入れ性に寄与する固溶Bを確保することができなくなる。また、N含有量が0.0080%超では、粗大なTiNが形成され、鍛造時に割れの起点になり、鍛造前の浸炭用鋼の限界加工率が低下する。従って、N含有量を0.0080%以下に制限する必要がある。好ましくは、N含有量は少ないほど望ましいので、上記制限範囲に0%が含まれる。しかし、N含有量を0%にするのは、技術的に容易でなく、また、安定的に0.0030%未満とするにも、製鋼コストが高くなる。よって、N含有量の制限範囲は、0.0030%〜0.0080%であることが好ましい。さらに好ましくは、0.0030%〜0.0055%である。なお、通常の操業条件では、不可避的に、Nが0.0060%程度含有される。
P:0.050%以下
燐(P)は不純物である。Pは鋼の疲労強度や熱間加工性を低下する。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量の上限は0.050%以下である。好ましいP含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。P含有量は少ないほど望ましいが、P含有量を0%にするのは技術的に容易ではなく、また、安定的に0.003%未満とするにも製造コストが高くなってしまう。したがって、P含有量の制限範囲は、0.003%〜0.0050%が好ましい。より好ましくは、0.003%〜0.035%であり、更に好ましくは、0.003%〜0.020%である。
O:0.0030%以下
酸素(O)は、は不可避的に含有される不純物であり、酸化物系介在物を形成する元素である。O含有量が0.0030%超では、疲労破壊の起点となる大きな介在物が増加し、疲労特性の低下の原因となる。従って、O含有量を0.0030%以下に制限する必要がある。好ましくは、0.0015%以下である。O含有量は少ないほど望ましいので、上記制限範囲に0%が含まれる。しかし、O含有量を0%にするのは、技術的に容易でなく、また、安定的に0.0007%未満とするにも、製鋼コストが高くなる。よって、O含有量の制限範囲は、0.0007%〜0.0030%であることが好ましい。さらに好ましくは、O含有量の制限範囲を0.0007%〜0.0015%とする。なお、通常の操業条件では、不可避的に、Oが0.0020%程度含有される。
上記した基本成分及び不純物元素の他に、本実施形態に係る浸炭用鋼及び浸炭鋼部品における鋼部は、更に、選択成分として、Nb、V、Mo、Ni、Cu、Ca、Mg、Te、Zr、REMのうちの少なくとも1種または2種以上を含有してもよい。以下に、選択成分の数値限定範囲とその限定理由とを説明する。ここで、記載する%は、質量%である。
上記した選択成分のうち、NbとVとは、組織の粗大化を防止する効果を有する。
Nb:0.002%〜0.100%
ニオブ(Nb)は、鋼中でC、Nと結合して、Nb(C、N)を形成する元素である。このNb(C、N)は、オーステナイト結晶粒界をピン止めすることによって、粒成長を抑制し、そして、組織の粗大化を防止する。Nb含有量が0.002%未満では、上記の効果が得られない。Nb含有量が0.100%を超えると、上記の効果が飽和する。従って、Nb含有量を0.002%〜0.100%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.010%〜0.050%である。
V:0.002%〜0.200%
バナジウム(V)は、鋼中でC、Nと結合して、V(C、N)を形成する元素である。このV(C、N)は、オーステナイト結晶粒界をピン止めすることによって、粒成長を抑制し、そして、組織の粗大化を防止する。V含有量が0.002%未満では、上記の効果が得られない。V含有量が0.200%を超えると、上記の効果が飽和する。従って、V含有量を0.002%〜0.200%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.05%〜0.100%である。
上記した選択成分のうち、Mo、Ni、Cuは、浸炭熱処理時にマルテンサイト分率を高める効果を有する。
Mo:0.005%〜0.500%
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入性を高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めるためには、Mo含有量が0.005%以上であることが好ましい。また、Moは、ガス浸炭のガス雰囲気で、酸化物を形成せず、窒化物を形成しにくい元素である。Moを添加することで、浸炭層表面の酸化物層や窒化物層、あるいは、それらに起因する浸炭異常層が形成されにくくなる。しかしながら、Moの添加コストが高価であるのに加え、Mo含有量が0.500%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Mo含有量を0.005%〜0.500%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.050%〜0.200%である。
Ni:0.005%〜1.000%
ニッケル(Ni)は、鋼の焼入性を高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めるためには、Ni含有量が0.005%以上であることが好ましい。また、Niは、ガス浸炭のガス雰囲気で、酸化物や窒化物を形成しない元素である。Niを添加することで、浸炭層表面の酸化物層や窒化物層、あるいは、それらに起因する浸炭異常層が形成されにくくなる。しかしながら、Niの添加コストが高価であるのに加え、Ni含有量が1.000%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Ni含有量を0.005%〜1.000%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.050%〜0.500%である。
Cu:0.005%〜0.500%
銅(Cu)は、鋼の焼入性を高める元素である。この効果によって浸炭熱処理後のマルテンサイト分率を高めるためには、Cu含有量が0.005%以上であることが好ましい。また、Cuは、ガス浸炭のガス雰囲気で、酸化物や窒化物を形成しない元素である。Cuを添加することで、浸炭層表面の酸化物層や窒化物層、あるいは、それらに起因する浸炭異常層が形成されにくくなる。しかしながら、Cu含有量が0.500%を超えると、1000℃以上の高温域における延性が低下し、連続鋳造、圧延時の歩留まり低下の原因になる。また、Cu含有量が0.500%を超えると、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、Cu含有量を0.005%〜0.500%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.050%〜0.300%である。なお、Cuを添加する場合、上記した高温域の延性を改善するために、Ni含有量を、質量%で、Cu含有量の1/2以上とすることが望ましい。
上記した選択成分のうち、Ca、Mg、Zr、REMは、被削性を改善する効果を有する。
Ca:0.0002%〜0.0030%
カルシウム(Ca)は、被削性改善ために添加するSに起因して生成するMnSの形状を、伸長させずに球状にするという形態制御の効果を有する元素である。Ca添加により、硫化物形状の異方性が改善され、機械的性質が損なわれなくなる。また、Caは、切削時の切削工具表面に保護被膜を形成して、被削性を向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Ca含有量が0.0002%以上であることが好ましい。Ca含有量が0.0030%を超えると、粗大な酸化物や硫化物が形成されて、浸炭鋼部品の疲労強度に悪影響を与える場合がある。従って、Ca含有量を0.0002%〜0.0030%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0008%〜0.0020%である。
Mg:0.0002%〜0.0030%
マグネシウム(Mg)は、上記した硫化物の形態を制御し、切削時に切削工具表面へ保護被膜を形成して被削性を向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Mg含有量が0.0002%以上であることが好ましい。Mg含有量が0.0030%を超えると、粗大な酸化物が形成されて、浸炭鋼部品の疲労強度に悪影響を与える場合がある。従って、Mg含有量を0.0002%〜0.0030%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0008%〜0.0020%である。
Zr:0.0002%〜0.0050%
ジルコニウム(Zr)は、硫化物の形態を制御する元素である。この効果を得るためには、Zr含有量が0.0002%以上であることが好ましい。Zr含有量が0.0050%を超えると、粗大な酸化物が形成されて、浸炭鋼部品の疲労強度に悪影響を与える場合がある。従って、Zr含有量を0.0002%〜0.0050%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0008%〜0.0030%である。
REM:0.0002%〜0.0050%
REM(Rare Earth Metal)は、硫化物の形態を制御する元素である。この効果を得るためには、REM含有量が0.0002%以上であることが好ましい。REM含有量が0.0050%を超えると、粗大な酸化物が形成されて、浸炭鋼部品の疲労強度に悪影響を与える場合がある。従って、REM含有量を0.0002%〜0.0050%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0008%〜0.0030%である。
なお、REMとは原子番号が57のランタンから71のルテシウムまでの15元素に、原子番号が21のスカンジウムと原子番号が39のイットリウムとを加えた合計17元素の総称である。通常は、これらの元素の混合物であるミッシュメタルの形で供給され、鋼中に添加される。
以上のように、本実施形態の浸炭用鋼は、上述の基本元素を含み、残部がFe及び不純物からなる化学組成、または、上述の基本元素と、上述の選択元素から選択される少なくとも1種とを含み、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。
[デンドライト組織]
本実施形態の浸炭用鋼の製造に用いる連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈している。浸炭用鋼中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、デンドライト1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライト1次アーム間隔が小さければ、樹間に晶出する硫化物は小さくなる。本実施形態の浸炭用鋼は、鋳片の段階におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満であることが望ましい。なお、本明細書において、硫化物は例えばMnS等である。
硫化物を安定的にかつ効果的に微細分散させるには、微量のSb、SnおよびTeのうち1種または2種以上を添加し、溶鋼中の固液界面エネルギーを低減させる。固液界面エネルギーが低減することにより、デンドライト組織が微細となる。デンドライト組織が微細化することで、デンドライト一次アームから晶出する硫化物が微細化される。
[硫化物]
浸炭用鋼に含まれる硫化物(MnS)は、切削性の向上に有用であるため、その存在密度を確保することが必要である。S含有量を多くすると被削性は向上するが、粗大な硫化物が増加する。熱間圧延等によって延伸した粗大な硫化物は、冷間鍛造性を損なうため、サイズ及び形状を制御することが必要である。さらに、被削時の切りくず処理性を向上するには、硫化物を微細に分散することが必要である。すなわち、硫化物同士の間隔を小さくすることが重要である。鋼材の圧延方向と平行な断面において円相当径で2μm未満のMnSが300個/mm以上の存在密度で鋼中に存在すると、工具の摩耗が抑制される。なお、介在物が硫化物であることは、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線解析装置によって確認すればよい。また、硫化物の円相当径は硫化物の面積と等しい面積を有する円の直径であり、画像解析によって求めることができる。同様に、硫化物の存在密度は、画像解析によって求められる。
また、硫化物同士の平均距離(硫化物間の粒子間距離)と、切りくず処理性との関係について種々実験を行った結果、硫化物間の粒子間距離が30.0μm未満であれば、良好な切りくず処理性が得られることを確認している。硫化物間の粒子間距離は、画像解析によって求めることができる。
[焼入れ性指標]
上記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標である下記式(B)を満足する必要がある。なお、選択成分であるMo、Niが含まれる場合には、下記式(B)に代わって、焼入れ性指標が、下記式(C)に再定義される。
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0・・・(B)
7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(0.3633×Ni+1)<44.0・・・(C)
焼入れ性指標である上記式(B)及び上記式(C)に基づいて、種々の化学成分を有する浸炭用鋼の浸炭焼入れを行い、同一の浸炭熱処理条件で、上記した従来の浸炭用鋼(C含有量が0.2%程度)と比較して、同等以上の浸炭層の硬さ及び有効硬化層深さ(ビッカース硬さがHV550以上となる深さ)を得ることができるしきい値を得た。すなわち、焼入れ性指標が7.5以下では、上記した従来鋼(C含有量が0.2%程度)と同等の特性を得ることができない。また、焼入れ性指標が44.0以上では、鍛造前の浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、焼入れ性指標が7.5超44.0未満である必要がある。この焼入れ性指標は、上述の硬さ指標を満足する範囲内で可能な限り大きくすることが望ましい。好ましくは、12.1以上44.0未満である。更に好ましくは、20.1以上44.0未満である。
また、本実施形態の浸炭用鋼は、ビッカース硬度が125Hv以下となり、また、限界圧縮率が68%以上となり、優れた冷間鍛造性を示すものとなる。
次に、本実施形態の浸炭鋼部品について説明する。
本実施形態の浸炭鋼部品は、上述の浸炭用鋼に対して、冷間加工工程、浸炭工程が施されることで製造される。浸炭工程後に、必要に応じて仕上熱処理工程を行ってもよい。浸炭工程によって、表面に0.4mm超〜2mm未満の厚さの浸炭層が形成される。本実施形態における浸炭層は、ビッカース硬さがHV550以上を示す領域である。
本実施形態の浸炭鋼部品は、より詳細には、鋼部と、鋼部の外面に生成した厚さ0.4mm超2mm未満の浸炭層とを備える。部品表面から深さ50μmの位置での浸炭層のビッカース硬さは、HV650以上HV1000以下であることが好ましい。また、部品表面から深さ2mmの位置での鋼部のビッカース硬さはHV250以上HV500以下であることが好ましい。浸炭層のビッカース硬度は、浸炭処理を施すことによって素材である浸炭用鋼よりも硬くなる。また、浸炭工程後の鋼部のビッカース硬度が不足する場合は、仕上熱処理工程として、焼入れまたは焼入れ・焼戻しを行い、鋼部のビッカース硬度をHV250以上にすればよい。
なお、鋼部の化学成分は、浸炭用鋼の化学成分とほぼ同じであり、上記式(B)または上記式(C)を満足するものとなり、また、鋼部中の硫化物間の平均距離は30.0μm未満となり、鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上となる。
[製造方法]
次に、本実施形態の浸炭用鋼の製造方法と、浸炭鋼部品の製造方法とを説明する。浸炭鋼部品の製造方法においては、一例として浸炭用鋼からなる冷間鍛造品を製造する工程を説明する。冷間鍛造品はたとえば、自動車及び建設機械等に利用される機械部品であり、たとえば、歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品である。
本実施形態の浸炭用鋼の製造方法は、上記の化学成分を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を連続鋳造し、この鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することによって製造される。熱間加工は、熱間圧延を含んでもよい。
[連続鋳造工程]
上記化学組成を満たす鋼の鋳片を連続鋳造法により製造する。造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件は例えば、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/minとする条件を例示できる。
さらに、上述したデンドライト一次アーム間隔を600μm未満にするために、上記化学組成を有する溶鋼を鋳造する際に、鋳片表面から15mmの深さにおける液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を100℃/min以上500℃/min以下とすることが望ましい。平均冷却速度が100℃/min未満では、鋳片表面から15mmの深さ位置におけるデンドライト一次アーム間隔を600μm未満とすることが困難となり、硫化物を微細分散できないおそれがある。一方、500℃/min超では、デンドライト樹間から晶出する硫化物が微細になり過ぎ、切削性が低下してしまう恐れがある。
液相線温度から固相線温度までの温度域とは、凝固開始から凝固終了までの温度域のことである。したがって、この温度域での平均冷却速度とは、鋳片の平均凝固速度を意味する。上記の平均冷却速度は、例えば、鋳型断面の大きさ、鋳込み速度等は適正な値に制御すること、または鋳込み直後において、水冷に用いる冷却水量を増大させるなどの手段により達成できる。これは、連続鋳造法および造塊法共に適用可能である。
上記の15mm深さの冷却速度は、得られた鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から15mmの深さの位置のそれぞれについて鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔λ(μm)を100点測定し、次式に基づいて、その値からスラブの液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均した平均である。
λ=710×A−0.39
例えば、鋳造条件を変更した複数の鋳片を製造し、各鋳片における冷却速度を上記式により求め、得られた冷却速度から最適な鋳造条件を決定すればよい。
鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造し、更に、ビレットを熱間加工して、棒鋼や線材とする。
熱間加工工程として、鋳造工程後の鋳片を、熱間圧延、熱間鍛造などを施して、熱間加工鋼材を得る。この熱間加工工程での、加工温度、加工率、ひずみ速度などの塑性加工条件は、特に、限定されるものではなく、適宜、好適な条件を選択すればよい。
この熱間加工工程の直後で、まだ、冷却されていない上記熱間加工鋼材に、徐冷工程として、この熱間加工鋼材の表面温度が800℃〜500℃となる温度範囲を、0℃/秒超1℃/秒以下の冷却速度で徐冷を施すことで、本実施形態の浸炭用鋼を得る。
オーステナイトからフェライト及びパーライトへ変態する温度である800℃〜500℃での冷却速度が、1℃/秒を超えると、ベイナイト及びマルテンサイトの組織分率が大きくなる。その結果、浸炭用鋼の硬さが上昇し、変形抵抗が上昇し、そして、限界加工率が低下する。従って、上記温度範囲での冷却速度を、0℃/秒超1℃/秒以下に制限することが好ましい。さらに好ましくは、0℃/秒超0.7℃/秒以下とする。なお、徐冷工程として、熱間加工工程後の熱間加工鋼材の冷却速度を小さくするには、圧延ラインや熱間鍛造ライン後に、保温カバー、熱源付き保温カバー、又は、保定炉などを設置すればよい。また、後述するように、更に球状化焼鈍を行って本実施形態の浸炭用鋼としてもよい。
次に、本実施形態に係る浸炭鋼部品の製造方法について説明する。
上記した基本成分、選択成分、及び不純物からなり、かつ、最後に上記徐冷工程を経て製造された浸炭用鋼に、冷間加工工程として、冷間塑性加工を施して形状を付与する。この冷間加工工程での、加工率、ひずみ速度などの塑性加工条件は、特に、限定されるものではなく、適宜、好適な条件を選択すればよい。
次に、冷間加工工程後の形状を付与された浸炭用鋼に、浸炭工程として、浸炭処理、又は浸炭窒化処理を施す。上記した金属組織と硬さとを有する浸炭鋼部品を得るためには、浸炭処理又は浸炭窒化処理の条件を、温度が830℃〜1100℃、カーボンポテンシャルが0.5%〜1.2%、浸炭時間が1時間以上とすることが好ましい。上記工程により、本実施形態に係る浸炭鋼部品を得る。
浸炭工程後、上記浸炭鋼部品に、必要に応じて、仕上熱処理工程として、焼入れ処理または焼入れ・焼戻し処理を施してもよい。特に、仕上熱処理工程は浸炭工程後の鋼部のビッカース硬度が不足する場合に行うとよい。上記した金属組織と硬さとを有する浸炭鋼部品を得るための焼入れ処理または焼入れ・焼戻し処理の条件は、焼入れ媒体の温度が室温〜250℃の範囲で実施することが好ましい。また、必要に応じて焼入れ後にサブゼロ処理を行っても良い。
また、必要に応じて、上記冷間加工工程前の浸炭用鋼に球状化焼鈍処理を行ってもよい。球状化焼鈍処理を行うことで、浸炭用鋼の硬さが低下し、変形抵抗が低下し、そして、限界加工率が向上する。球状化焼鈍条件は、特に、限定されるものではなく、適宜、好適な条件を選択すればよい。
上記冷間加工工程後で、上記浸炭工程前の浸炭用鋼に、更に、切削工程として、切削加工を施して形状を付与する。切削加工を行うことで、冷間塑性加工だけでは困難な、精密形状を浸炭用鋼に付与することができる。本実施形態の浸炭用鋼は被削性に優れるので、この切削加工工程おいて従来鋼に比べて切り屑処理性が向上するものとなる。
また、必要に応じて、上記仕上熱処理工程後の浸炭鋼部品に、更に、研削加工、または、ショットピーニング工程として、ショットピーニング処理を行っても良い。研削加工を行うことで、冷間塑性加工だけでは困難な、精密形状を浸炭用鋼に付与することができる。ショットピーニング処理を行うことで、浸炭鋼部品表層部に圧縮残留応力が導入される。圧縮残留応力は疲労亀裂の発生、進展を抑制するため、浸炭鋼部品の歯元、及び歯面疲労強度を更に向上させることができる。ショットピーニング処理は、直径が0.7mm以下のショット粒を用い、アークハイトが0.4mm以上の条件で行うことが望ましい。
本発明によれば、冷間鍛造性及び被削性に優れた浸炭用鋼及びその製造方法を提供できる。本発明では、所定の化学成分を有する鋳片を鋳造することで、硫化物の晶出核となるデンドライト組織を微細化させて、鋼中の硫化物を微細分散させることができる。これにより、歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の素材となる、冷間鍛造後の被削性、つまり、浸炭前の被削性を高めることができる。
以上のように、本発明の浸炭用鋼は、焼鈍後の冷間鍛造による粗成形品を直接に、または、必要に応じて焼きならしを行ってから、切削加工を施す際の被削性に優れている。このため、自動車、産業機械用の歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の製造費用に占める切削加工コストの割合を低減でき、また部品の品質を向上することができる。
本実施形態の浸炭用鋼によれば、炭素量を比較的少なくし、微量のSb、SnおよびTeのうちの1種または2種以上を添加し、焼入れ性指標として上記式(B)または上記式(C)に満足する成分組成を有し、且つ、硫化物間の平均距離を30.0μm未満とし、2μm未満の硫化物の存在密度を300個/mm以上とすることにより、冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、また、冷間鍛造後の被削性を向上することができる。特に、本実施形態の浸炭用鋼は、ビッカース硬度がHV125以下になるため冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、また、限界圧縮率も68%以上になるため、冷間鍛造性が良好である。そして、浸炭鋼部品の製造工程を経ることで鋼部のビッカース硬度がHV250以上になり、更に浸炭層のビッカース硬度がHV650以上になるので、浸炭鋼部品の素材として好適である。
本実施形態の浸炭用鋼は、焼鈍後の冷間鍛造による粗成形品を直接に、または、必要に応じて焼きならしを行ってから、切削加工を施す際の被削性に優れている。このため、自動車、産業機械用の歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の製造費用に占める切削加工コストの割合を低減でき、また部品の品質を向上することができる。
また、本実施形態では、浸炭用鋼を製造する際、所定の化学成分を有する鋳片を鋳造することで、硫化物の晶出核となるデンドライト組織を微細化させて、鋼中の硫化物を微細分散させることができる。これにより、歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品の素材となる、冷間鍛造後の被削性、つまり、浸炭前の被削性を高めることができる。
また、本実施形態の浸炭鋼部品によれば、鋼部と、鋼部の外面に生成した浸炭層とを備え、浸炭層のビッカース硬さがHV650以上HV1000以下であり、鋼部のビッカース硬さがHV250以上HV500以下であるので、歯車、シャフト、プーリー等の機械部品として好適に用いることができる。
以上のように、本実施形態によれば、冷間鍛造性及び被削性に優れた浸炭用鋼、浸炭鋼部品及びその製造方法を提供できる。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜ACを270ton転炉で溶製し、連続鋳造機を用いて連続鋳造を実施した。鋳造条件は、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/minとし、鋳片の表面から15mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を100〜500℃/minとした。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。このようにして得られた鋳片を、一旦室温まで冷却し、鋳片の表面割れの有無を目視にて判定した。その結果を表2に示す。更に、一旦室温まで冷却した鋳片を、デンドライト組織観察用の試験片として採取した。
鋳片の連続鋳造において、鋳片の表面から15mmの深さの位置における液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度の変更は、鋳型の冷却水量を変更することによって行った。このようにして、表1に示す化学成分を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を連続鋳造した。
表1に示す鋼A〜Oは、本発明で規定する化学組成を有する鋼である。鋼P〜ACは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。表1中の数値の下線は、本実施形態による浸炭用鋼の化学成分の範囲外であることを示す。
その後、連続鋳造により得られた鋳片を素材として、熱間鍛造を行った。各鋳片を1250℃で2時間加熱し、加熱後の鋳片を熱間鍛造して、長手方向と直行する切断面が円形で、その断面の直径が30mmの複数の丸棒を製造した。熱間鍛造後、丸棒を大気中で放冷した。放冷は、800℃〜500℃での冷却速度が、1℃/秒以下になるように、丸棒に保温カバーを被せて保温した。その後、放冷後の一部の丸棒に対して球状化焼鈍工程(SA工程:Spherodizing Annealing)として、球状化熱処理を行った。このようにして、試験番号1〜29の浸炭用鋼からなる鋼材を製造した。
[凝固組織観察方法]
凝固組織は、上記の鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から深さ方向に15mm位置を鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト1次アーム間隔および2次アーム間隔を100点測定し、平均値を求めた。
[ミクロ組織試験]
各鋼番号の丸棒のミクロ組織を観察した。丸棒の軸方向長さをLとした時のL/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面を研磨し、光学顕微鏡によって鋼の金属組織を観察し、組織中のコントラストから析出物を判別した。なお、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)とを用いて析出物を同定した。後述の試験片の長手方向を含む断面から、縦10mm×横10mmの研磨試験片を10個作製し、これらの研磨試験片の所定位置を光学顕微鏡にて100倍で写真撮影して、0.9mmの検査基準面積(領域)の画像を10視野分準備した。その観察視野(画像)中のMnSの中から大きい順に10個選定し、選定した各MnSの円相当径を算出した。これらの寸法(直径)は、析出物の面積と同一の面積を有する円の直径を示す円相当径に換算した。検出した硫化物の粒径分布から、円相当径が2μm未満である硫化物の存在密度及び、硫化物間の平均距離を算出した。表2に、その結果を示す。円相当径が2μ未満である硫化物の存在密度が300個/mm以上の場合を、かつ、硫化物間の平均距離が30.0μm未満の場合を、本発明の条件を満たすため、合格とした。
[硬さ測定試験]
硬さの測定は、ビッカース硬度計を用いて、合計10回の測定を行い、平均値を算出した。表2に、その結果を示す。徐冷工程後の浸炭用鋼の硬さがHV125以下の場合、または、球状化焼鈍後の浸炭用鋼の硬さがHV110以下の場合を、軟質化が十分であり、合格と判定した。
[冷間鍛造性試験]
直径30mmの丸棒の、周面から上記切断面の1/2深さの位置から、丸棒試験片を作製した。丸棒試験片は、直径30mmの丸棒の、周面から上記切断面の直径1/2深さの位置を中心とした直径10mm、長さ15mmの試験片であり、丸棒試験片の長手方向は、直径30mmの丸棒の鍛伸軸と平行であった。
各鋼について、10個の上記丸棒試験片を作製した。冷間圧縮試験には、500ton油圧プレスを使用した。拘束ダイスを使用して10mm/minのスピードで冷間圧縮を行い、切り欠き近傍に0.5mm以上の微小割れが生じたときに圧縮を停止し、その時の圧縮率を算出した。この測定を合計10回行い、累積破損確率が50%となる圧縮率を求めて、その圧縮率を限界圧縮率とした。表2に、その測定結果を示す。従来の球状化焼鈍後の浸炭用鋼の限界圧縮率がおよそ65%であるので、この値よりも明らかに高い値と見なせる68%以上となる場合を、限界加工率が十分であり、合格と判定した。
[被削性試験]
各鋼について、直径30mmの棒鋼の残りを用いて、冷間鍛造の代わりに冷間での引抜きにより歪を与え、その引抜き後の被削性で冷間鍛造後の被削性を評価した。
具体的には、直径30mmの丸棒鋼の残りを、減面率30.6%で冷間引抜きして、直径25mmの棒鋼にした。この冷間引抜きした棒鋼を長さ500mmに切断して、旋削加工用の試験材を得た。
このようにして得た直径25mmで長さ500mmの試験材の外周部を、NC旋盤を用いて、下記の条件で旋削加工し、被削性を調査した。旋削加工を開始してから10分経過後、超硬工具の逃げ面の摩耗量(mm)を測定した。表2に、その測定結果を示す。測定した逃げ面の摩耗量が0.2mm以下であれば、被削性が十分であり、合格と判定した。
<使用チップ>
母材材質:超硬P20種グレード
コーティング:なし
<旋削加工条件>
周速:150m/min
送り:0.2mm/rev.
切り込み:0.4mm
潤滑:水溶性切削油を使用
切りくず処理性は、以下の方法で評価した。被削性試験中の10秒間で排出された切りくずを回収した。回収された切りくずの長さを調べ、長いものから順に10個の切りくずを選択した。選択された10個の切りくずの総重量を「切りくず重量」と定義した。切りくずが長くつながった結果、切りくずの総数が10個未満である場合、回収された切りくずの総重量を測定し、10個の個数に換算した値を「切りくず重量」と定義した。例えば、切りくずの総数が7個であって、その総重量が12gである場合、切りくず重量は、12g×10個/7個、と計算した。表2にその測定結果を示す。切り屑重量が15g以下であれば、切り屑処理性が十分であり、合格と判定した。
[浸炭特性評価試験]
上記方法で製造した浸炭用鋼の、周面から上記切断面の直径1/4深さの位置から、長手方向が圧縮方向となるように、浸炭用の試験片(20mmφ×30mm)を採取した。浸炭工程として、変成炉ガス方式によるガス浸炭を行った。このガス浸炭は、カーボンポテンシャルを0.8%として、950℃で5時間の保持を行い、続いて、850℃で0.5時間の保持を行った。浸炭工程後に、仕上熱処理工程として、130℃への油焼入れを行い、そして、150℃で90分の焼戻しを行って、浸炭鋼部品を得た。
上記製造した浸炭鋼部品の、浸炭層及び鋼部について、特性を評価した。表2に、その
測定結果を示す。
上記浸炭鋼部品の浸炭層について、表面から深さ50μmの位置での硬さと、表面から深さ2mmの位置での硬さとを、ビッカース硬度計を用いて、合計10回の測定を行い、平均値を算出した。表2に、その測定結果を示す。表面から深さ50μmの位置での硬さがHV650〜HV1000の場合を、また、表面から深さ2mm位置での硬さがHV250〜HV500の場合を、硬さが十分であり合格と判定した。
さらに、上記浸炭鋼部品の浸炭層について、表面から5mm位置までの硬さ分布を、ビッカース硬度計を用いて、合計3回の測定を行い、平均値を算出した。HV550以上である位置の深さが、表面から0.4mm超、2mm未満であれば合格と判定した。
表1及び表2を参照して、鋼A〜Oの鋼の化学組成は、本実施形態による浸炭用鋼の化学組成の範囲内であり、焼入れ性指標、円相当径が2μm未満である硫化物の存在密度、硫化物間の平均距離のいずれもが目標を満足した。その結果、浸炭用鋼及び浸炭鋼部品として必要とされる性能を満足している。
試験番号16は、汎用鋼種として一般的な、JIS規格SCr420Hの規格を満たす鋼と同一成分である。この鋼は、化学成分のC、Cr、Ti、B、Sb、Sn、Te、Nの含有量が本発明の範囲を満たしていないため、硫化物の存在密度及び硫化物間の平均距離が本発明の範囲を満たさず、浸炭用鋼の軟質化、限界圧縮率、被削性及び切り屑処理性が不十分となった例である。
試験番号17は、Sb、SnまたはTeのいずれも含有しなかった。そのため、硫化物の存在密度及び硫化物間の平均距離が本発明の範囲を満たさず、被削性及び切り屑処理性が不十分となった例である。これは、Sb、SnまたはTeのいずれも含有しなかったことにより、硫化物微細分散化効果が得られなかったことに起因する。
試験番号18〜21は、Sb、SnまたはTe含有量が本発明の範囲を満たしていないため、連続鋳造後の鋳片に割れが発生した例である。これは、Sb、SnまたはTeの含有量が本発明の上限を超え、熱間加工性が低下したことに起因する。
試験番号22は、Bを含有しなかったため、浸炭鋼部品の鋼部の硬さ及び、浸炭層の厚さが不十分となった例である。これは、Bを含有しなかったことにより、焼き入れ性向上効果が得られなかったことに起因する。
試験番号23は、化学成分のN含有量が、本発明の範囲を満たしていないため、浸炭用鋼の限界圧縮率、浸炭鋼部品の鋼部の硬さ及び、浸炭層の厚さが不十分となった例である。浸炭用鋼の限界圧縮率が不十分になったのは、N含有量が多いため、粗大なTiNが生成し、これが冷間加工時の破壊の起点となったためである。また、浸炭鋼部品の鋼部の硬さが不十分となったのは、N含有量が多いため、鋼中のNをTiNとして固定することができなくなり、余分なNと固溶BとがBNを形成し、固溶Bによる焼入れ性向上効果が得られなかったことに起因する。
試験番号24は、化学成分のS含有量が、本発明の範囲を満たしていないため、浸炭用鋼の限界圧縮率が不十分となった例である。浸炭用鋼の限界圧縮率が不十分になったのは、S含有量が多いため、粗大なMnSが生成し、これが冷間加工時の破壊の起点となったためである。
試験番号25は、化学成分のS含有量が、本発明の範囲を満たしていないため、硫化物の存在密度及び、硫化物間の平均距離が本発明の範囲を満たさず、浸炭用鋼の被削性及び切り屑処理性が不十分となった例である。
試験番号26は、焼入れ性指標が本発明の範囲を満たしていないため、浸炭鋼部品の鋼部の硬さがHV500を超えた例である。
試験番号27は、焼入れ性指標が本発明の範囲を満たしていないため、浸炭鋼部品の鋼部の硬さ及び、浸炭層の厚さが不十分となった例である。
試験番号28は、化学成分のC含有量が、本発明の範囲を満たしていないため、浸炭鋼部品の鋼部の硬さ及び、浸炭層の厚さが不十分となった例である。
試験番号29は、化学成分のC含有量が本発明の範囲を満たしていないため、浸炭用鋼の軟質化及び限界圧縮率が不十分となった例である。
Figure 2018035419
Figure 2018035419
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.07%〜0.13%、
    Si:0.0001%〜0.500%、
    Mn:0.0001%〜0.80%、
    S:0.0050%〜0.1000%、
    Cr:1.30%超〜5.00%、
    B:0.0005%〜0.0100%、
    Ti:0.020%〜0.100%未満及び
    Al:0.010%〜0.100%を含有し、
    Sb:0.0001%〜0.0050%、Sn:0.0001%〜0.0050%及びTe:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種以上を含有し、
    更に、N、P及びOがそれぞれ、
    N:0.0080%以下、
    P:0.050%以下、
    O:0.0030%以下であり、
    残部がFe及び不純物からなり、
    前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として式(1)を満たし、
    鋼中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であり、鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上であることを特徴とする浸炭用鋼。
    7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0 ・・・(1)
  2. 更に質量%で、
    Nb:0.002%〜0.100%、
    V:0.002%〜0.200%、
    Mo:0.005%〜0.500%、
    Ni:0.005%〜1.000%、
    Cu:0.005%〜0.500%、
    Ca:0.0002%〜0.0030%、
    Mg:0.0002%〜0.0030%、
    Zr:0.0002%〜0.0050%、
    Rare Earth Metal:0.0002%〜0.0050%、
    のうちの少なくとも1種または2種以上の元素を含有し、
    前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として前記式(1)に代えて式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の浸炭用鋼。
    7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(0.3633×Ni+1)<44.0・・・(2)
  3. 鋼部と、鋼部の外面に生成した厚さ0.4mm超2mm未満の浸炭層とを備える浸炭鋼部品であって、
    部品表面から深さ50μmの位置での前記浸炭層のビッカース硬さがHV650以上HV1000以下であり、
    前記部品表面から深さ2mmの位置での前記鋼部のビッカース硬さがHV250以上HV500以下であり、
    前記鋼部は、質量%で、
    C:0.07%〜0.13%、
    Si:0.0001%〜0.500%、
    Mn:0.0001%〜0.80%、
    S:0.0050%〜0.1000%、
    Cr:1.30%超〜5.00%、
    B:0.0005%〜0.0100%
    Ti:0.020%〜0.100%未満及び
    Al:0.010%〜0.100%を含有し、
    Sb:0.0001%〜0.0050%、Sn:0.0001%〜0.0050%及びTe:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種以上を含有し、
    更に、N、P及びOがそれぞれ、
    N:0.0080%以下、
    P:0.050%以下、
    O:0.0030%以下であり、
    残部がFe及び不純物からなり、
    前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として式(3)を満たし、
    前記鋼部中の硫化物間の平均距離が30.0μm未満であり、鋼材の圧延方向と平行な断面において硫化物の円相当径が2μm未満のものの存在密度が300個/mm以上であることを特徴とする浸炭鋼部品。
    7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)<44.0 ・・・(3)
  4. 前記鋼部が、更に質量%で、
    Nb:0.002%〜0.100%、
    V:0.002%〜0.200%、
    Mo:0.005%〜0.500%、
    Ni:0.005%〜1.000%、
    Cu:0.005%〜0.500%、
    Ca:0.0002%〜0.0030%、
    Mg:0.0002%〜0.0030%、
    Zr:0.0002%〜0.0050%、
    Rare Earth Metal:0.0002%〜0.0050%、
    のうちの少なくとも1種または2種以上の元素を含有し、
    前記化学成分中の各元素の質量%で示した含有量が、焼入れ性指標として前記式(3)に代えて式(4)を満たすことを特徴とする請求項3に記載の浸炭鋼部品。
    7.5<(0.7×Si+1)×(5.1×Mn+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(0.3633×Ni+1)<44.0・・・(4)
  5. 請求項1または請求項2に記載の前記浸炭用鋼に、冷間塑性加工を施して形状を付与する冷間加工工程と、
    前記冷間加工工程後の前記浸炭用鋼に、浸炭処理または浸炭窒化処理を施す浸炭工程と、
    を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
  6. 前記浸炭工程後に、焼入れ処理または焼入れ・焼戻し処理を施す仕上熱処理工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
  7. 前記冷間加工工程後で前記浸炭工程前に、更に、切削加工を施して形状を付与する切削工程を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の浸炭鋼部品の製造方法。
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