JP2010236005A - 冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents

冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間圧延ままあるいは球状化焼鈍後のいずれにおいても、冷間鍛造性が優れた機械構造用鋼を、安価かつ安定して提供する。
【解決手段】質量%で、C;0.30〜0.55%、Si:0.03〜0.30%、Mn:0.50〜l.50%、P:0.018%以下、S:0.02%以下、Al:0.010〜0.060%およびCr:1.2〜2.0%を、下記(l)式を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼材を、仕上げ温度:1000℃以下の条件で熱間圧延する。
【選択図】なし

Description

本発明は、建産機や自動車の分野、さらには各種産業機械等に供して好適な冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼およびその製造方法に関するものである。
一般に、機械構造部品は、切削加工や鍛造加工等によって所定の形状に加工された後、焼入れ・焼戻し処理や高周波焼入れ等の表面硬化処理を施す場合が多い。特に上記した鍛造加工、特に冷間鍛造は、製品の寸法精度がよく、また切削加工に比べて生産性が高いことから、機械構造部品の製造に広く用いられている。
通常、冷間鍛造に供される機械構造用鋼は、高い焼入れ性が要求されることから、JISに規定されたSCM440等を素材として、軟化焼鈍処理により冷間鍛造性を改善したものが使用されている。
しかしながら、厳しい冷間鍛造を付与する場合には、軟化焼鈍処理は不可欠であるものの、一方で、鍛造の程度によっては熱間圧延ままで使用可能な冷間鍛造用鋼への要求も強い。
また、冷間鍛造により複雑な形状を有する機械部品を製造する場合は、数回に分けて冷間鍛造を行うのが一般的であるが、製造工程の省略のために、より変形能の高い冷間鍛造用鋼が望まれている。
さらに、鋼材コストの低減のために、SCM440と同等の特性を有するMoフリー鋼として、特許文献1には、Si,Mnの低減に加え、焼入れ性を確保するための高Cr化と圧延条件の適正化によるフェライト分率の低減により、圧延ままで冷間鍛造性に優れた機械構造用強靭鋼の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、Moフリーによる焼入れ性の低下を,Mnの増加およびTi,Bの添加で補った安価な強靭鋼が提案されている。
特許第3371490号 特許第2686755号
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、Moをフリーとしたことによる焼入れ性の低下をCrを2.0%以上添加することで補っているため、素材コストの上昇を招き、またこの方法で得られる冷間鍛造用鋼は、軟化焼鈍を施した場合でも十分な冷間鍛造性が得られるとは限らないところに問題を残していた。
また、特許文献2に記載された方法では、得られる冷間鍛造用鋼について、Bによる焼入れ性向上効果に言及しているが、Bの焼き入れ性は不安定であり、この効果を安定化させるためには、過剰のTi,B添加が必要なことから、逆に疲労強度の低下や、鋳片または圧延材の表面性状の低下を招き、結果として、手入れ負荷の増大による製造コストの増加を余儀なくされていた。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、熱間圧延ままおよび球状化熱処理後のいずれにおいても冷間鍛造性に優れ、しかもMoを含有しない安価な機械構造用鋼を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(1) 熱間圧延ままで冷間鍛造性を向上させるには、単純な強度の低下を図るのではなく、逆にフェライト分率の低減が有効であり、そのためには、C,Mn,Cr量の適正化と圧延の低温化による組織微細化が有効である。
(2) また、球状化焼鈍後では炭化物の球状化率を高めることが有効であり、そのためには、C,Si,Mn,Cr量のバランスを厳密に制御する必要がある。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C;0.30〜0.55%、
Si:0.03〜0.30%、
Mn:0.50〜l.50%、
P:0.018%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.010〜0.060%および
Cr:1.2〜2.0%
を、下記(l)式を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、さらに酸化物系非金属介在物の最大径が19μm以下で、かつフェライト面積率が10%以下のフェライト−パーライト組織を有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼。

[%C]−[%Si]/2+[%Mn]/5+2[%Cr]≧3.2 ・・・ (1)
2.質量%でさらに、
Cu:0.30%以下および
Ni:0.30%以下
のうちから選んだ一種または二種を含有することを特徴とする上記1に記載の冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼。
3.質量%で、
C;0.30〜0.55%、
Si:0.03〜0.30%、
Mn:0.50〜l.50%、
P:0.018%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.010〜0.060%および
Cr:1.2〜2.0%
を、下記(l)式を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼材を、仕上げ温度:1000℃以下の条件で熱間圧延することを特徴とする冷間鍛造性に優れた機械構造用強靱鋼の製造方法。

[%C]−[%Si]/2+[%Mn]/5+2[%Cr]≧3.2 ・・・ (1)
4.質量%でさらに、
Cu:0.30%以下および
Ni:0.30%以下
のうちから選んだ一種または二種を含有することを特徴とする上記3に記載の冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
本発明によれば、熱間圧延ままあるいは球状化焼鈍後のいずれにおいても、冷間鍛造性が優れしかも高い焼入性を有する機械構造用鋼を、安価かつ安定して得ることができる。
冷間鍛造性評価のために使用した切欠き付き円筒試験片の形状を示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はV字状の溝の詳細寸法を示す図である。 球状化熱処理における熱処理条件を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C;0.30〜0.55%
Cは、冷間鍛造後の焼入れ・焼戻し処理または各種表面硬化熱処理による表面硬さを確保するために必要な元素であるが、含有量が0.30%未満では必要な硬さが得られず、一方0.55%を超えると冷間鍛造後の熱処理で焼割れが発生し易くなるため、C量は0.30〜0.55%の範囲に限定した。
Si:0.03〜0.30%
Siは、脱酸剤として有効であるので、少なくとも0.03%添加するものとした。しかしながら、Siは、フェライトに固溶して変形抵抗を高め、冷間鍛造性を劣化させる作用があるので、上限を0.30%とした。好ましくは0.05〜0.25%の範囲である。
Mn:0.50〜l.50%
Mnは、焼入れ性に有効な元素であるので、少なくとも0.50%添加するものとした。これを下回ると、フェライト分率が増加し、熱間鍛造ままで優れた冷間鍛造性が得られない。しかしながら、Mnは、Siと同様に、変形抵抗を高め冷間鍛造性を劣化させる作用があるため、上限を1.50%とした。好ましくは0.60〜1.40%の範囲である。
P:0.018%以下、
Pは、結晶粒界に偏析し、靭性を低下させるので、その混入は極力低減する方が望ましいが、0.018%までは許容される。好ましくは0.016%以下である。
S:0.02%以下
Sは、変形能に悪影響を与えるMnSを形成するので、少ないほどよいが、0.02%以下であれば実用上問題は生じないので、0.02%以下とした。
Al:0.010〜0.060%
Alは、脱酸剤として有用であり、少なくとも0.010%の添加が必要である。また、AlはNと結合してAlNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素である。しかしながら、含有量が0.060%を超えると疲労強度に対して有害なAl2O3介在物の生成を助長するため、Al量は0.010〜0.060%の範囲に限定した。
Cr:1.2〜2.0%
Crは、焼入れ性のみならず、焼戻し軟化抵抗性の向上に寄与し、さらには炭化物の球状化促進にも有用な元素であるが、含有量が1.2%に満たないとその添加効果に乏しく、一方2.0%を超えるとこれらの効果は飽和するので、Cr量は1.2〜2.0%の範囲に限定した。好ましくは1.35〜2.0%の範囲である。
以上、本発明の基本成分の適正組成範囲について説明したが、本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分で、C,Si,MnおよびCrについては、次式(1)の関係を満足させることが重要である。
[%C]−[%Si]/2+[%Mn]/5+2[%Cr]≧3.2 ・・・ (1)
上掲(1)式は、熱間圧延ままの強度や炭化物の球状化の容易さの指標となるもので、この値が3.2に満たないと、本発明で所期したほど良好な冷間鍛造性が得られない。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明では、その他にも、冷間鍛造後に行う焼入れ・焼戻し処理における焼入れ性を高めるために、必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:0.30%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効な元素であるが、多量に添加すると鋼材の表面性状の劣化や合金コストの増加を招くので、上限を0.30%とした。
Ni:0.30%以下
Niは、焼入れ性や靭性の向上に有効な元素であるが、高価であるので、上限を0.30%とした。
次に、本発明において、鋼組織を前記のように限定した理由について説明する。
本発明では、素材中に存在する酸化物系非金属介在物の大きさを制御することが重要である。すなわち、鋼中の酸化物系非金属介在物の最大径が大きいと、疲労強度の低下が起きるため、素材中に存在する酸化物系非金属介在物の最大径は19μm以下に制限する。
なお、酸化物系非金属介在物の大きさを上記の範囲に調整するには、RH脱ガス工程が重要で、このときの処理時間を50分以上とすることが好ましい。
さらに、鋼組織は、フェライト面積率が10%以下のフェライト−パーライト組織とする必要がある。冷間鍛造性を向上させるには、一般的には強度を低下させることが望ましい。熱間圧延後の強度を低下させるためには、フェライト分率の増加が有効である。しかしながら、軟質なフェライトは、微小クラックの伝播経路となり、割れが発生する限界の圧縮率、すなわち変形能を低下させる原因となる。よって、本発明では、フェライト面積率は10%以下とする。
次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。
前記した成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉を用いて溶製したのち、RH脱ガス等の精錬処理後、連続鋳造法や造塊−分塊法によりブルーム等とする。
ついで、得られたブルーム等を、1000〜1300℃の温度に加熱後、熱間圧延を行うが、本発明ではこの熱間圧延条件が重要である。
仕上げ圧延温度:1000℃以下
本発明では、Crを多量に含有する鋼であるので、1000℃を超える温度で仕上げ圧延を終了する、熱間圧延後の組織がベーナイトとなり、冷間鍛造性が低下する。このため、仕上げ圧延温度は、1000℃以下に限定した。
その後の冷却処理については特に制限はないが、冷却速度があまりに速いと、本発明で所望するフェライト−パーライト組織が得られないので、0.03〜1.0℃/s程度の速度で冷却することが好ましい。
上記のようにして得られる本発明の機械構造用鋼は、フェライトの面積分率が小さく、通常10%以下である。これにより、効果的に変形能を向上させて、熱間圧延ままで冷間鍛造を行っても冷間鍛造時における割れの発生を防止することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す成分組成になる鋼を溶製し、60分のRH脱ガス処理後、連続鋳造により鋳片とした。ついで、1100℃に加熱後、熱間圧延により直径:65mmの丸棒とした。なお、熱間圧延での仕上げ温度は、950℃(本発明法)と1050℃(比較法)とした(表2参照)。
得られた各棒鋼について、冷間鍛造性、球状化熱処理性および高周波焼入れ性について調査した結果を、表2に示す。
なお、各特性の評価方法は次のとおりである。
(1)冷間鍛造性
冷間鍛造性は、限界換え込み率および変形抵抗の2項目で評価した。
圧延ままの棒鋼の1/4D位置から、試験片を採取した。試験片形状は図1に示すように、直径:14mm、高さ:21mmの円柱形で、上下面に拘束溝および側面にV溝を有する切欠き付円柱試験片である。
図1において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はV字状の溝の詳細寸法を示す図であり、番号1でV字状の溝を、また番号2で被圧縮面(上下面)を示す。
冷間鍛造性の評価は、この試験片の上下面を拘束した状態で被圧縮面2に圧縮荷重を加えて圧縮試験を行い、変形能と変形抵抗を測定した。変形能は、V溝1の溝底から割れが発生するまでの最大圧縮率(限界圧縮率と呼ぶ)で評価し、また変形抵抗は圧縮率:30%のときの変形荷重(30%変形抵抗と呼ぶ)で評価した。
限界割れ率が46%以上、変形抵抗値が239MPa以下であれば冷間鍛造性は良好であるといえる。
(2)球状化熱処理性
球状化熱処理性は、球状化熱処理後の炭化物の球状化率、限界据え込み率および変形抵抗の3項目で評価した。
上記(1)と同様にして、圧延まま棒鋼を、図2に示す条件で球状化熱処理を行ったのち、図1に示す形状の試験片を1/4Dから採取した。球状化率は、炭化物のアスペクト比(長径/短径)が2以下のものの割合とした。この割合が51%以上であれば、球状化熱処理性に優れているといえる。
また、球状化熱処理後の限界据え込み率が51%以上、変形抵抗値が204MPa以下であれば、冷間鍛造性は良好であるといえる。
(3)高周波焼入れ性
高周波焼入れ性は、直径:30mmの試験片に高周波焼入れ・焼戻しを実施して表面硬度(表層より2mmの位置)を測定することにより行った。表層硬さがHV640以上であれば、高周波焼入れ性に優れているといえる。
Figure 2010236005
Figure 2010236005
表2に示したとおり、本発明に従い得られた発明例はいずれも、熱間圧延ままで優れた冷間鍛造性を有しているのは勿論のこと、球状化熱処理後においても優れた冷間鍛造性を有し、また高周波焼入れ性にも優れていた。
本発明によれば、熱間圧延ままあるいは球状化焼鈍後のいずれにおいても、冷間鍛造性が優れしかも高い焼入性を有する機械構造用鋼を、安価かつ安定して得ることができ、工業上、極めて有用である。
1 V字状の溝
2 被圧縮面

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C;0.30〜0.55%、
    Si:0.03〜0.30%、
    Mn:0.50〜l.50%、
    P:0.018%以下、
    S:0.02%以下、
    Al:0.010〜0.060%および
    Cr:1.2〜2.0%
    を、下記(l)式を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、さらに酸化物系非金属介在物の最大径が19μm以下で、かつフェライト面積率が10%以下のフェライト−パーライト組織を有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼。

    [%C]−[%Si]/2+[%Mn]/5+2[%Cr]≧3.2 ・・・ (1)
  2. 質量%でさらに、
    Cu:0.30%以下および
    Ni:0.30%以下
    のうちから選んだ一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼。
  3. 質量%で、
    C;0.30〜0.55%、
    Si:0.03〜0.30%、
    Mn:0.50〜l.50%、
    P:0.018%以下、
    S:0.02%以下、
    Al:0.010〜0.060%および
    Cr:1.2〜2.0%
    を、下記(l)式を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼材を、仕上げ温度:1000℃以下の条件で熱間圧延することを特徴とする冷間鍛造性に優れた機械構造用強靱鋼の製造方法。

    [%C]−[%Si]/2+[%Mn]/5+2[%Cr]≧3.2 ・・・ (1)
  4. 質量%でさらに、
    Cu:0.30%以下および
    Ni:0.30%以下
    のうちから選んだ一種または二種を含有することを特徴とする請求項3に記載の冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼の製造方法。
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