JP4213948B2 - 被削性に優れる鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や一般機械などに用いられる鋼に関するもので、特に切削時の工具寿命と切削表面粗さおよび切り屑処理性に優れた被削性に優れた鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般機械や自動車は多種の部品を組み合わせて製造されているが、その部品は要求精度と製造効率の観点から、多くの場合、切削工程を経て製造されている。その際、コスト低減と生産能率の向上が求められ、鋼にも被削性の向上が求められている。特に従来SUM23やSUM24Lは被削性を重要視して開発されてきた。これまで被削性を向上させるためにS,Pbなどの被削性向上元素を添加するのが有効であることが知られている。しかし、需要家にとってはPbは環境負荷として使用を避ける場合も有り、その使用量を低減する方向にある。
【0003】
これまでもPbを添加しない鋼の場合には、SのようにMnSのような切削環境下で軟質となる介在物を形成して被削性を向上させる手法が使われている。しかし、いわゆる低炭鉛快削鋼SUM24Lには低炭硫黄快削鋼SUM23と同量のSが添加されている。従って、従来以上のS量を添加する必要がある。しかし、多量S添加ではMnSを単に粗大にするだけで、被削性向上に有効なMnS分布にならないだけでなく、圧延、鍛造等において破壊起点になって圧延疵等の製造上の問題を多く引き起こす。さらに、SUM23をベースとする硫黄快削鋼では構成刃先が付着しやすく、構成刃先の脱落および切り屑分離現象に伴う、切削表面に凹凸が生じ、表面粗さが劣化する。従って、被削性の観点からも表面粗さが劣化による精度低下が問題である。切り屑処理性においても、切り屑が短く分断しやすい方が良好とされているが、単なるS添加だけではマトリックスの延性が大きいため、十分に分断されず、大きく改善できなかった。
【0004】
さらに、S以外の元素、Te,Bi,P等も被削性向上元素として知られているが、ある程度被削性を向上させることができても、圧延や熱間鍛造時に割れを生じ易くなるため、極力少ない方が望ましいとされている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−71840号公報
【特許文献2】
特開2000−160284号公報
【特許文献3】
特開2000−219936号公報
【特許文献4】
特開2001−329335号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、圧延や熱間鍛造における不具合を避けつつ、工具寿命と表面粗さの両者を改善し、従来の低炭鉛快削鋼と同等以上の被削性を有する鋼を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
切削は切り屑を分離する破壊現象であり、それを促進させることが一つのポイントとなる。この効果はSを単純に増量するだけでは限界がある。本発明者らは、Sを増量するだけでなく、マトリックスを脆化させることで破壊を容易にして工具寿命を延長するとともに切削表面の凹凸を抑制することで被削性が向上することを知見した。
【0008】
本発明は以上の知見に基づいてなされたもので、その要旨は次のとおりである。
【0010】
)質量%で、C:0.005〜0.2%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.5〜1.0%、total−N:0.002〜0.02%、total−O:0.005〜0.035%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、ミクロ組織においてパーライト面積率が5%以下であり、残部がフェライトで、さらに、抽出レプリカ法にて採取して透過型電子顕微鏡で観察するMnSに関し、鋼材の圧延方向と平行な断面において円相当径にて0.1〜0.5μmのものの存在密度が10,000個/mm 2 以上であることを特徴とする被削性に優れる鋼。
【0011】
)前記鋼が、質量%で、更に、B:0.0005〜0.005%を含有することを特徴とする()記載の被削性に優れる鋼。
【0012】
)前記鋼において、Mn/S:1.2〜2.8であることを特徴とする()または()記載の被削性に優れる鋼。
【0013】
)前記鋼が、質量%で、更に、V:0.01〜1.0%、Nb:0.005〜0.2%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.05〜1.0%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0014】
)前記鋼が、質量%で、更に、Ni:0.05〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%の1種または2種を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0015】
)前記鋼が、質量%で、更に、Sn:0.005〜2.0%、Zn:0.0005〜0.5%の1種または2種を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0016】
)前記鋼が、質量%で、更に、Ti:0.005〜0.1%、Ca:0.0002〜0.01%、Zr:0.0005〜0.1%、Mg:0.0003〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0017】
)前記鋼が、質量%で、更に、Te:0.0003〜0.2%、Bi:0.005〜0.5%、Pb:0.01〜0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0018】
)前記鋼において、Al:0.01%以下に制限することを特徴とする(1)〜()のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、鉛を添加することなく、十分な被削性、特に良好な表面粗さを有する鋼を得るものである。そのため、鋼のミクロ組織は極力均一な方がよく、鋼中のパーライトの分布ですら、不均一の原因となり、表面粗さを低下させる原因であることを見出した。そのため、均質化を徹底するためにパーライトの面積率を制限することで良好な表面粗さと工具寿命特性を得るものである。次に、本発明で規定する鋼成分の限定理由を説明する。
【0021】
Cは、鋼材の基本強度と鋼中の酸素量に関係するので被削性に大きな影響を及ぼす。Cを多量に添加して強度を高めると被削性を低下させるのでその上限を0.2%とした。一方、被削性を低下させる硬質酸化物生成を防止しつつ、凝固過程でのピンホール等の高温での固溶酸素の弊害を抑制するため、酸素量を適量に制御する必要がある。単純に吹錬によってC量を低減させすぎるとコストが嵩むだけでなく、鋼中酸素量が多量に残留してピンホール等の不具合の原因となる。従って、ピンホール等の不具合を容易に防止できるC量として0.005%を下限とした。
【0022】
Siの過度な添加は硬質酸化物を生じて被削性を低下させるが、適量の添加は酸化物を軟質化させ、被削性を低下させることがないのでその上限は0.5%であり、それ以上では硬質酸化物を生じる。0.001%未満では酸化物の軟質化が困難になるとともに工業的にはコストがかかる。
【0023】
Mnは、鋼中硫黄をMnSとして固定・分散させるために必要である。また鋼中酸化物を軟質化させ、酸化物を無害化させるために必要である。その効果は添加するS量にも依存するが、0.5%未満では添加SをMnSとして十分に固定できず、SがFeSとなり脆くなる。Mn量が大きくなると素地の硬さが大きくなり被削性や冷間加工性が低下するので、3.0%を上限とした。
【0024】
Pは、鋼中において素地の硬さが大きくなり、冷間加工性だけでなく、熱間加工性や鋳造特性が低下するので、その上限を0.2%にする必要がある。一方、被削性向上に効果がある元素なので下限値を0.003%とした。
【0025】
Sは、Mnと結合してMnS介在物として存在する。MnSは被削性を向上させるが、伸延したMnSは鍛造時の異方性を生じる原因の一つである。大きなMnSは避けるべきであるが、被削性向上の観点からは多量の添加が好ましい。従って、MnSを微細分散させることが好ましい。Pbを添加しない場合の被削性向上には0.5%以上の添加が必要である。一方、1.0%を越えると粗大MnSの生成が避けられないだけでなく、FeS等による鋳造特性、熱間変形特性の劣化から製造中に鋼に割れを生じるので、1.0%を上限とした。
【0026】
N(total−N)は、固溶Nの場合、鋼を硬化させる。特に、切削においては動的歪み時効によって刃先近傍で硬化し、工具の寿命を低下させるが、切削表面粗さを改善する効果もある。また、Bと結合してBNを生成して被削性を向上させる。0.002%未満では固溶窒素による表面粗さ向上効果やBNによる被削性改善効果が得られないので、0.002%を下限とした。また、0.02%を越えると固溶窒素が多量に存在するため、かえって工具寿命を低下させる。また、鋳造途中に気泡を生成し、疵などの原因となる。従って、本発明ではそれらの弊害が顕著になる0.02%を上限した。
【0027】
O(total−O)は、高温の溶鋼中に固溶状態で存在する場合には冷却時に気泡となり、ピンホールの原因となる。また、酸化物を軟質化し、被削性に有害な硬質酸化物を抑制するためにも制御が必要である。MnSの微細分散させる際にも析出核として酸化物を利用する。0.005%未満では十分にMnSを微細分散させることができず、粗大なMnSを生じ、機械的性質にも悪影響を及ぼすので0.005%を下限とした。さらに、酸素量0.035%を越えると鋳造中に気泡となりピンホールとなるため上限を0.035%とした。
【0028】
パーライト面積率を5%以下とする理由を説明する。一般に炭素を含む鋼を変態点以上の温度から冷却すると、フェライト−パーライト組織となる。本発明の対象となるC量の比較的少ない鋼の場合、変態点(A3 点)以上の温度から空冷後、切り出してその内部を鏡面研磨してナイタールでエッチングすると、図1のようなミクロ組織を観察することができる。黒い粒がパーライトと呼ばれるフェライトとセメンタイトの複合組織であるが、通常、このようにナイタールによって黒く見える粒は白くみえるフェライト粒よりも硬質であり、鋼の変形/破断挙動において局部的にフェライト粒とは異なる挙動を示す。このことは切削において切り屑の破断挙動において、均一変形/破断を阻害するため、構成刃先の生成に大きく関与し、さらには切削面の表面粗さを劣化させる。従って、Cに起因する組織的不均一を極力排除することが重要である。そこでナイタールでエッチングされる黒い粒をパーライト粒とみなし、このパーライト粒が多すぎると組織不均一を引き起こし、表面粗さ劣化の原因になるのでその面積率を5%以下に制限した。図4にパーライト面積率と表面粗さの関係を示した。
【0029】
ここで測定方法の詳細に関して述べる。圧延または鍛造後の鋼の長手方向断面(L断面)に切断、樹脂埋め込みサンプルを鏡面研磨し、ナイタールエッチングした。ナイタールにて黒色にエッチングされたものの内、灰色のMnSを除いた粒径(円相当径)1μm以上の粒を画像処理装置で解析し、その面積率を求めた。面積率測定の画像処理時に、黒色に見えるパーライトに合わせた“しきい値”設定で画像濃淡を合わせ、グレーに見える介在物(MnS等)を画面上から消すことで、パーライトのみを測定対象とした。この時の認識最小パーライトは約1μmであるが、1μm未満のパーライトは被削性に影響を及ぼさないので、認識されなくても影響はない。
【0030】
本発明での測定視野は、1視野0.2mm2 (0.4mm×0.5mm)を400倍以上の倍率で20視野測定し、計4mm2 の面積について、パーライト面積率を算出した。
【0031】
Bは、BNとして析出すると被削性向上に効果がある。これらの効果は0.0005%未満では顕著でなく、0.005%を超えて添加するとBNが多く析出し、鋳造特性、熱間変形特性の劣化から製造中に疵が発生しやすくなる。そこで0.0005〜0.005%を範囲とした。
【0032】
Mn/Sに関してはすでに熱間延性に大きく影響し、通常、Mn/S>3でなければ製造性を大きく低下させることが知られている。その原因はFeSの生成であるが、本発明においては、低Cかつ高Sの領域ではその比率をさらに低下させることができることを見出し、Mn/S:1.2〜2.8に規制した。Mn/S:1.2未満ではFeSが多く生成し、熱間延性を極端に低下させ、製造性を大きく低下させる。Mn/S:2.8では硬さが上昇し、更に微細MnSが生成しずらくなるので被削性が低下する。従って、Mn/S値は1.2〜2.8とすることが好ましい。
【0033】
次に、本発明においては、上述した成分に加え、V,Nb,Cr,Mo,W,Ni,Cu,Sn,Zn,Ti,Ca,Zr,Mg,Te,Bi,Pbの1種または2種以上を必要に応じて添加することができる。
【0034】
Vは、炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.01%未満では高強度化に効果はなく、1.0%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。
【0035】
Nbも、炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.005%未満では高強度化に効果はなく、0.2%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。
【0036】
Crは、焼入れ性向上、焼戻し軟化抵抗付与元素である。そのため高強度化が必要な鋼には添加される。その場合、0.01%以上の添加を必要とする。しかし、多量に添加するとCr炭化物を生成し脆化させるため、2.0%を上限とした。
【0037】
Moは、焼戻し軟化抵抗を付与するとともに、焼入れ性を向上させる元素である。0.01%未満ではその効果が認められず、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和しているので、0.01%〜1.0%を添加範囲とした。
【0038】
Wは炭化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.05%未満では高強度化に効果はなく、1.0%を超えて添加すると多くの炭化物が析出し、かえって機械的性質を損うので、これを上限とした。
【0039】
Niは、フェライトを強化し、延性を延性向上させるとともに焼入れ性向上、耐食性向上にも有効である。0.05%未満ではその効果は認められず、2.0%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。
【0040】
Cuは、フェライトを強化し、焼入れ性向上、耐食性向上にも有効である。0.01%未満ではその効果は認められず、2.0%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。特に熱間延性を低下させ、圧延時の疵の原因となりやすいのでNiと同時に添加することが好ましい。
【0041】
Snは、フェライトを脆化させ、工具寿命を延ばすとともに、表面粗さ向上に効果がある。0.005%未満ではその効果は認められず、2.0%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。
【0042】
Znは、フェライトを脆化させ、工具寿命を延ばすとともに、表面粗さ向上に効果がある。0.0005%未満ではその効果は認められず、0.5%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。
【0043】
Tiも、炭窒化物を形成し、鋼を強化する。また脱酸元素でもあり、軟質酸化物を形成させることで被削性を向上させることが可能である。0.005%未満ではその効果が認められず、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和する。またTiは高温でも窒化物となりオーステナイト粒の成長を抑制する。そこで上限を0.1%とした。
【0044】
Caは、脱酸元素であり、軟質酸化物を生成し、被削性を向上させるだけでなく、MnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0002%未満ではその効果は顕著ではなく、0.01%添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりでなく、硬質のCaOを大量に生成し、かえって被削性を低下させる。したがって成分範囲を0.00020.01%と規定した。
【0045】
Zrは、脱酸元素であり、酸化物を生成する。酸化物はMnSの析出核になりMnSの微細均一分散に効果がある。またMnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0005%未満ではその効果は顕著ではなく、0.1%添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりでなく、硬質のZrO やZrSなどを大量に生成し、かえって被削性を低下させる。したがって成分範囲を0.00050.1%と規定した。
【0046】
Mgは、脱酸元素であり、酸化物を生成する。酸化物はMnSの析出核になりMnSの微細均一分散に効果がある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0003%未満ではその効果は研著ではなく、0.01%添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりで効果は飽和する。従って、Mgの添加範囲を0.00030.01%と規定した。
【0047】
Teは、被削性向上元素である。またMnTeを生成したり、MnSと共存することでMnSの変形能を低下させてMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって、異方性の低減に有効な元素である。この効果は0.0003%未満では認められず、0.2%を超えると効果が飽和する。また、熱間延性を大幅に低下させるため圧延疵当の原因になる。
【0048】
Biは、被削性向上に効果のある元素である。その効果は0.005%未満では認められず、0.5%を超えて添加しても被削性向上効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造特性が低下して疵の原因となりやすいので、その範囲を0.005〜0.5%とした。
【0049】
Pbは、被削性向上に効果のある元素である。その効果は0.01%未満では認められず、0.5%を超えて添加しても被削性向上効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造特性が低下して疵の原因となりやすい。
【0050】
Alは、脱酸元素で鋼中ではAl23 やAlNを形成する。しかし、Al23 は硬質なので切削時に工具損傷の原因となり、摩耗を促進させる。そこで、Al23 を多量に生成しない0.01%以下に制限した。特に酸化物の軟質化を優先させる場合には0.005%以下が好ましい。
【0051】
次に、本発明では、抽出レプリカ法にて採取して透過型電子顕微鏡で観察するMnSに関し、円相当径で0.1〜0.5μmのものの存在密度が10,000個/mm2 以上であることが好ましい。図2に発明鋼のMnSをレプリカ法を用い、透過型電子顕微鏡にて観察した例を示す。従来鋼の成分範囲で従来どおりの熱履歴であれば、図2(b)に示すように大型のMnSのみとなり表面粗さを小さくすることができない。本発明では、上述のとおり、Mn/S:1.2〜2.8と規定することで図2(a)に示すような微細なMnSを生成させることができる。この微細なMnSは、連続鋳造やインゴットによる鋳造後、900℃以上の加熱を繰り返すことにより、個数を増加させることができる。
【0052】
なお、MnSとは、純粋なMnSのみならず、MnSを主体に含み、Fe,Ca,Ti,Zr,Mg,REM等の硫化物がMnSと固溶したり結合して共存している介在物や、MnTeのようにS以外の元素がMnと化合物を形成してMnSと固溶・結合して共存している介在物や、酸化物を核として析出した上記介在物が含まれるものであり、化学式では、(Mn,X)(S,Y)(ここで、X:Mn以外の硫化物形成元素、Y:S以外でMnと結合する元素)として表記できるMn硫化物系介在物を総称して言うものである。
【0053】
【実施例】
本発明の効果を実施例によって説明する。表1、表2(表1のつづき1)、表3(表1のつづき2)、表4(表1つづき3)に示す供試材のうち、実施例7は270t転炉で、その他は2t真空溶解炉で溶製後、ビレットに分圧延、さらにφ50mmに圧延した。
【0054】
材料は熱処理され、発明例に関してはその成分によって熱処理条件を変更した。表1〜表4熱処理の項において焼準と記された発明例の一部と比較例は920℃で10min以上保持し、空冷したものである。また急冷−焼鈍と記された発明例の一部は920℃から圧延ライン後端の水槽に投入して急冷後、焼鈍炉にて700℃で1時間以上保持した。これらの熱処理により鋼中パーライト面積率を調整した。
【0055】
MnS密度は凝固時の冷却速度を制御することにより調整した。冷却速度を増大させると微細MnSが生成しやすくなる。
【0056】
表1〜表4の実施例に示す材料の被削性評価はドリル穿孔試験で表5に切削条件を示す。累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000、単位はm/min )で被削性を評価した。
【0057】
さらに、切削における表面品質を示す切削表面粗さを評価した。その切削条件を表6に、その評価方法(以後、プランジ切削試験と記す)の概要を図3(a),(b)に示す。プランジ切削試験では工具は短時間切削を繰り返す。一回の切削で工具は被削材長手方向に動かず、回転している被削材中心に向かって動くため、短時間の切削後、工具は引き抜かれるが、その形状は基本的には工具は刃先形状が被削材表面に転写される。構成刃先の付着や工具の磨耗損傷によりこの転写された切削面の表面粗さは影響を受ける。この表面粗さを表面粗さ計で測定した。10点表面粗さRz(μm)を表面粗さを示す指標とした。
【0058】
円相当径にて0.1〜0.5μmの寸法のMnSの測定は、φ50mm圧延後の圧延方向と平行な断面のQ部より抽出レプリカ法にて採取して過型電子顕微鏡にて行った。測定は10000倍で1視野80μm2 を40視野以上行い、それを1平方ミリメートル当たりのMnS数に換算して算出した。
【0059】
切り屑処理性に関しては切り屑のカール時の曲率が小さいもの、あるいは分断されているものが好ましい。そこで切り屑が20mmを超えた曲率半径で3巻き以上連続してカールして長く延びた切り屑を不良とした。巻数が多くとも曲率半径が小さいもの、あるいは曲率半径が大きくとも切り屑長さが100mmに達しなかったものは良好とした。
【0060】
発明例1〜64はいずれも比較例65〜76に対してドリル工具寿命に優れるとともに、プランジ切削における表面粗さが良好であった。これは低パーライト面積率によってフェライトが局部的に脆化され、表面創成がスムーズに行われたために良好な表面粗さを得られたと考えられる。
【0061】
さらに、MnとSの比率が従来鋼によく見られる3程度でも効果が認められるが、Mn/Sを小さくすると、より工具寿命が向上するとともに、表面粗さも向上する。
【0062】
【表1】
Figure 0004213948
【0063】
【表2】
Figure 0004213948
【0064】
【表3】
Figure 0004213948
【0065】
【表4】
Figure 0004213948
【0066】
【表5】
Figure 0004213948
【0067】
【表6】
Figure 0004213948
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は切削時の工具寿命と切削表面粗さ、および切り屑処理性に優れた特性を有するため自動車用部材、一般機械用部材に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鋼のフェライト・パーライト組織を示す顕微鏡写真である。
【図2】(a)は本発明によるMnSの微細分散状態を示す顕微鏡写真であり、(b)は従来鋼における粗大MnSの存在状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】(a),(b)はプランジ切削試験を示す図である。
【図4】パーライト面積率と表面粗さの関係を示す図である。

Claims (9)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.2%、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.003〜0.2%、S:0.5〜1.0%、total−N:0.002〜0.02%、total−O:0.005〜0.035%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、ミクロ組織においてパーライト面積率が5%以下であり、残部がフェライトで、さらに、抽出レプリカ法にて採取して透過型電子顕微鏡で観察するMnSに関し、鋼材の圧延方向と平行な断面において円相当径にて0.1〜0.5μmのものの存在密度が10,000個/mm 2 以上であることを特徴とする被削性に優れる鋼。
  2. 前記鋼が、質量%で、更に、B:0.0005〜0.005%を含有することを特徴とする請求項記載の被削性に優れる鋼。
  3. 前記鋼において、Mn/S:1.2〜2.8であることを特徴とする請求項または記載の被削性に優れる鋼。
  4. 前記鋼が、質量%で、更に、V:0.01〜1.0%、Nb:0.005〜0.2%、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、W:0.05〜1.0%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
  5. 前記鋼が、質量%で、更に、Ni:0.05〜2.0%、Cu:0.01〜2.0%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
  6. 前記鋼が、質量%で、更に、Sn:0.005〜2.0%、Zn:0.0005〜0.5%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
  7. 前記鋼が、質量%で、更に、Ti:0.005〜0.1%、Ca:0.0002〜0.01%、Zr:0.0005〜0.1%、Mg:0.0003〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
  8. 前記鋼が、質量%で、更に、Te:0.0003〜0.2%、Bi:0.005〜0.5%、Pb:0.01〜0.5%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
  9. 前記鋼において、Al:0.01%以下に制限することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の被削性に優れる鋼。
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