JP3739958B2 - 被削性に優れる鋼とその製造方法 - Google Patents

被削性に優れる鋼とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車や一般機械などに用いられる鋼に関するものであり、特に高強度かつ被削性に優れた鋼とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年鋼の高強度化が進む反面、加工性が低下するため、切削能率の低下させないいわゆる快削鋼に対するニーズが高まっている。これまで被削性を向上させるためにS、Pbなどの被削性向上元素を添加するのが有効であることが知られているが、それらの方法は近年問題を生じている。たとえばSはMnSのような切削環境下で軟質となる介在物を形成して被削性を向上させるが、製造途中で介在物自身が変形し方向性を有するので製造された鋼材や部品に材料の異方性を生じる場合がある。特に鍛造や圧延によりMnSは伸延すると異方性を生じ、特定の方向に極端に弱くなる。また設計上もその様な異方性を考慮する必要が生じる。したがってこのような快削元素の異方性を最低限にする技術が必要になる。またPbの様に比較的異方性の少ない快削性元素を添加することも考えられるが、Pb、Biは被削性を向上させることができても、圧延や熱間鍛造時に割れを生じ易くなるため、極力少ない方が望ましいとされている。Pに関しても被削性を向上させることが知られているが、鋳造時に割れを生じ易いために多く添加することができず、被削性向上効果にも限界がある。
【0003】
Teを添加すれば異方性が解消されることが提案されているが(特開昭55−−141550号公報)、Teは鋳造時や圧延または熱間鍛造時に疵や割れ発生の原因となりやすく、その使用量にも限界がある。
【0004】
そこで異方性に起因する部品強度の低下を抑制するために、既存の介在物による被削性向上手法に依存することなくマトリックスの性能により被削性を向上させることが重要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状に対応するため、異方性を抑制し、被削性の良好な高強度鋼を実現するとともにその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
切削は切り屑を分離する破壊現象であり、それを促進させることが一つのポイントとなる。ただしやみくもに破壊を促進させるための手段を鋼に講じると肝心の部品強度が不足し、構造材には使用できなくなる。
【0007】
一般に鋼は圧延や鍛造により加工が加わるがその際の塑性流動により、機械的性質に異方性を生じる。部品に加工した場合にはその異方性の弱い方向への強度が最弱となる。したがって部品として使用するには異方性を最低限に抑制し、最弱部の強度(または破壊特性)低下を抑制することが、被削性と強度を両立させる手法である。
【0008】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下に示す通りである。
【0009】
(1) 重量%で、
C :0.41〜0.85%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.05〜2.0%、
P :0.003〜0.2%、
S :0.003〜0.5%
を含有するとともに
Al:0.01%以下、
total−O:0.02%以下、
total−N:0.02%以下
に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号が7番以下であることを特徴とする被削性に優れる鋼
【0010】
(2) 重量%で、
C :0.41〜0.85%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.05〜2.0%、
P :0.003〜0.2%、
S :0.003〜0.5%
を含有するとともに
Al:0.01%以下、
total−O:0.02%以下、
total−N:0.02%以下
に制限し、さらに、
Cr:0.01〜2.0%、
Ni:0.05〜2.0%、
Mo:0.05〜1.0%、
B:0.0005〜0.005%
の1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号が7番以下であることを特徴とする被削性に優れる鋼
【0011】
(3) さらに、重量%で、
V :0.05〜1.0%、
Nb:0.005〜0.2%、
Ti:0.005〜0.1%
の1種または2種以上を含むことを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の被削性に優れる鋼
【0012】
(4) さらに、重量%で、
Ca:0.0002〜0.005%、
Mg:0.0003〜0.005%、
の1種または2種を含むことを特徴とする、上記(1)乃至上記(3)のいずれかに記載の被削性に優れる鋼
【0013】
(5) さらに、重量%で、
Bi:0.05〜0.5%、
Pb:0.01〜0.5%
の1種または2種を含むことを特徴とする、上記(1)乃至上記(4)のいずれかに記載の被削性に優れる鋼
【0014】
(6) 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を1000℃以上で10min以上保持することで、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号を7番以下とすることを特徴とする被削性に優れる鋼の製造方法。
【0015】
ここで本発明で用いられている「オーステナイト」の意味を説明しておく。本発明鋼の室温でのミクロ組織はフェライト、セメンタイトまたはマルテンサイトからなり、室温での残留オーステナイトは極めて少ない。本発明での「オーステナイト」は室温で残留する残留オーステナイトのことではなく、高温時に生成したオーステナイト粒を指し、室温における本発明でのオーステナイト粒の記述はJIS G 0551のオーステナイト粒測定法で測定される粒を指しており、ここではそれを「オーステナイト」と記している。
【0016】
【発明の実施の形態】
Cは鋼材の基本強度に大きな影響を及ぼす元素であり、十分な強度を得るために0.41〜0.85%とした。0.1%未満では十分な強度を得られず、他の合金元素をさらに多量に投入せざるを得ず、0.85%を超えると過共析に近くなり、硬質の炭化物を多く析出するので被削性を著しく低下させる。
【0017】
Siは脱酸元素として添加されるが、フェライトの強化や焼戻し軟化抵抗を付与するために添加する。0.01%未満ではその効果は認められず、2.5%を超えると脆化し、高温での変形抵抗も増加するのでこれを上限とした。
【0018】
Mnは鋼中硫黄をMnSとして固定・分散させるために必要であるとともに、マトリックスに固溶させて焼入れ性の向上や焼入れ後の強度を確保するために必要である。その下限値は0.05%で、それ未満であるとSがFeSとなり脆くなる。Mn量が大きくなると素地の硬さが大きくなり冷間加工性が低下するとともに、強度や焼入れ性に及ぼす影響も飽和するので、2.0%を上限とした。
【0019】
Pは鋼中において素地の硬さが大きくなり、冷間加工性だけでなく、熱間加工性や鋳造特性が低下するので、その上限を0.2%にしなければならない。一方、被削性に効果がある元素で下限値を0.003%とした。
【0020】
SはMnと結合してMnS介在物として存在する。MnSは被削性を向上させるが、伸延したMnSは鍛造時の異方性を生じる原因の一つである。異方性の程度と要求される被削性によって調整されるべきであるが、冷間加工性の点からその上限値を0.5%とした。下限は現状の工業生産レベルでコストが大幅に上昇しない限界である0.003%とした。
【0021】
Alは脱酸元素で鋼中ではAl23やAlNを形成する。Al23は硬質なので切削時に工具損傷の原因となり、摩耗を促進させる。またAlNはピン止め効果によりオーステナイト粒成長を抑制する。本発明では硬質Al23の抑制とオーステナイト粒を成長させることが必要なため、0.01%以下に制限した。
【0022】
Oはfreeで存在する場合には冷却時に気泡となり、ピンホールの原因となる。またAlと結合すると硬質酸化物を生成するため、制限が必要である。本鋼ではその弊害が顕著となる0.02%を上限として制限した。
【0023】
Nは固溶Nの場合、鋼を硬化させる。特に切削においては動的ひずみ時効によって刃先近傍で硬化し、工具の寿命を低下させる。またTi、Al、Vなどの窒化物として存在する場合もオーステナイト粒の成長を抑制するので制限が必要である。特に高温域ではTiNを生成する。また窒化物を生成しない場合でも鋳造途中に気泡を生成し、疵などの原因となる。本発明ではその弊害が顕著になる0.02%を上限とした。
【0024】
Crは焼入れ性向上、焼戻し軟化抵抗付与元素である。そのため高強度化が必要な鋼には添加される。その場合、0.01%以上の添加を必要とする。しかし多量に添加するとCr炭化物を生成し脆化させるため、2.0%を上限とした。
【0025】
Niはフェライトを強化し、延性を延性向上させるとともに焼入れ性向上、耐食性向上にも有効である。0.05%未満ではその効果は認められず、2.0%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。
【0026】
Moは焼戻し軟化抵抗を付与するとともに、焼入れ性を向上させる元素である。0.05%未満ではその効果が認められず、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和しているので、0.05〜1.0%を添加範囲とした。
【0027】
Bは固溶している場合は粒界強化や焼入れ性に効果があり、析出する場合にはBNとして析出するので被削性に効果がある。これらの効果は0.0005%未満では顕著でなく、0.005%を超えて添加してもその効果が飽和し、BNが多く析出しすぎるとかえって鋼の機械的性質を損なう。そこで0.0005〜0.005%を範囲とした。
【0028】
Vは炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.05%以下では高強度化に効果はなく、1.0%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。
【0029】
Nbも炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.005%以下では高強度化に効果はなく、0.2%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。
【0030】
Tiも炭窒化物を形成し、鋼を強化する。また脱酸元素でもあり、軟質酸化物を形成させることで被削性を向上させることが可能である。0.005%以下ではその効果が認められず、0.1%を超えて添加してもその効果が飽和する。またTiは高温でも窒化物となりオーステナイト粒の成長を抑制する。そこで上限を0.1%とした。
【0031】
Caは脱酸元素であり、軟質酸化物を生成し、被削性を向上させるだけでなく、MnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0002%未満ではその効果は顕著ではなく、0.005%以上添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりでなく、硬質のCaOを大量に生成し、かえって被削性を低下させる。したがって成分範囲を0.0002〜0.005%と規定した。
【0033】
Mgは脱酸元素であり、酸化物を生成する。酸化物はMnSの析出核になりMnSの微細均一分散に効果がある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0003%未満ではその効果は顕著ではなく、0.005%以上添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりで効果は飽和する。したがって成分範囲を0.0003〜0.005%と規定した。
【0035】
BiおよびPbは被削性向上に効果のある元素である。その効果は0.05%以下では認められず、0.5%を超えて添加しても被削性向上効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造特性が低下して疵の原因となりやすい。
【0036】
次にオーステナイト粒径の粒度番号が7番以下とする理由を述べる。
【0037】
切削は切り屑を分離する破壊現象であり、それを促進させることが一つのポイントとであるが、極力異方性を抑制して最弱方向の強度低下を最低限に抑制する手法で破壊を促進すれば、最終的な部品強度の低下を最低限に抑制して被削性を向上させることができる。被削性向上のための軟質介在物に頼る被削性向上手法は異方性を助長し、最強方向の強度はそれほど低下させないものの、最弱方向の強度は極端に低下するという欠点がある。それを避けるために軟質介在物に頼ること無く、オーステナイト粒を粗大化させてマトリックスの破壊特性を平均的にわずかに低下させることで異方性を助長せずに被削性を付与する。この効果はオーステナイト粒の再結晶により粒径が変化しない限り、最終的なミクロ組織の影響をうけない。すなわち同一ミクロ組織で、同一硬さであればオーステナイト粒径が大きな方が被削性に優れる。その理由は焼戻しマルテンサイトやフェライト−パーライトのいずれであってもその組織の局部的な変形/破壊挙動は結局オーステナイト粒径に支配されるためである。たとえフェライト−パーライト組織であっても軟質なフェライトはオーステナイト粒界に多く、結局変形挙動はオーステナイト粒界に支配されている。
【0038】
この性質を利用して被削性を向上させるためにはJIS G 0551のオーステナイト粒測定法の粒度番号において7以下の粗大な粒度に調整する必要がある。
【0039】
図1の(a)および(b)に示すように、被削材1の切削では、変形前のオーステナイト粒2は刃先で分離直前に大きく変形して点X3において分離され切り屑4となる。そのため変形破断挙動には工具5周辺の変形領域、すなわち、二次せん断域6および主せん断域7とオーステナイト粒径が大きく影響する。工具周辺の変形領域は切削条件によってコントロールできるが、通常切削で用いられる切込み量8(被削材表面からの切削線9までの距離)は0.05〜0.3mm程度であるから、粒度番号8以上では切込み量に比べてオーステナイト粒径が微細なので、ほとんど均質体としての挙動を示すため、破壊に対する粒の影響は小さくなり、被削性向上効果が認められなくなる。一方、オーステナイト粒度が7番以下の粗粒の場合、オーステナイト粒径の粒界や結晶方位のずれにより、均一な変形をせず、容易に刃先で分離できる。
【0040】
次に、鋼の製造方法で温度および保持時間を限定した理由を述べる。
【0041】
オーステナイト粒径の粒度番号が7番以下とするには、それだけオーステナイト粒を成長させる操作が必要である。そのためには変態点以上の温度で保持する必要がある。すなわち、Ti、V、Nbなどのオーステナイト粒微細化元素が添加されていない場合には1000℃以上まで昇温し10min以上保持すればオーステナイト粒度番号を7番以下にできる。また、Ti、V、Nbなどが添加されている場合には、Ti、V、Nbなどのオーステナイト粒微細化元素は通常炭窒化物を生成し、それがピン止め効果によってオーステナイト粒の成長を抑制しているが、これらの炭窒化物は1000℃以上の温度で10min以上保定すれば固溶するため、ピン止め効果が失われる。したがって、これらの成分が添加されている場合には、1000℃以上の温度で10min以上保持することが好ましい。なお、加熱温度および保持時間の上限は特に限定されるものでないが、熱効率や操業上の条件により決められる。したがって部品製造までにこのような変態点以上の温度域で熱間圧延、熱間鍛造または熱処理を施す必要がある。
【0042】
【実施例】
本発明の効果を実施例によって説明する。
【0043】
表1に示す化学成分の供試材は270t転炉で溶製後、ビレットに分解圧延、さらにφ60mmに圧延した。さらに硬さ、オーステナイト粒径、ミクロ組織を調整するために熱処理した。熱処理条件を表1中に併記して示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003739958
【0045】
表1実施例1〜34に示す材料の被削性評価はドリル穿孔試験で行った。
【0046】
表2に切削条件を示す。累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000)で被削性を評価した。またそれぞれの圧延方向と断面方向に対する衝撃値の比率を示した。すなわち(衝撃値の比)=(断面方向の衝撃値)/(圧延方向の衝撃値)で、この値が大きいほど異方性が少ないことを示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003739958
【0048】
図2に示すように鋼のミクロ組織や硬さによって被削性は異なるが、硬さとミクロ組織を同一に調整した鋼では加熱温度が1000℃より低く、オーステナイト粒径が小さな場合には被削性が悪く、オーステナイト粒度番号が7以下(すなわち粗粒)の場合には被削性が良好である。なお図中の番号はそれぞれの実施例番号である。
【0049】
表1の実施例に関して、衝撃値の比は比較例の方が低い傾向にあった。この衝撃値と本発明の意義を明確にするため、Sとの関係を用いて説明する。
【0050】
図3に棒鋼の長手方向と断面方向から切り出した場合の衝撃値の比較を示す。使用した鋼材は表1中の実施例19、21、25、27、34である。Sが添加されるとMnSが生成され、断面方向の衝撃値が低下する。ここで注目すべきは実施例19(発明例)と実施例27(比較例)では実施例19(発明例)の方がわずかに優れた被削性を有していることである。実施例19はオーステナイト粒径が大きなため、長手方向の衝撃値は低下するものの、同一の被削性を得るためにSを添加した鋼実施例27((比較例)よりは断面方向の衝撃値は良好である。さらにこの同様の被削性を有する実施例19(発明例)と実施例27(比較例)の小野式回転曲げ疲労特性を評価した。断面方向は試験片つかみ部を摩擦圧接することで試験片形状として試験を実施した。
【0051】
その結果は図4に示す通りで、長手方向の疲労特性はほぼ同様にもかかわらず、断面方向の疲労特性はS量の少ない実施例19の方が優れていた。すなわち本発明によれば同様の被削性であれば、断面方向の機械的性質の低下を最低限に抑制できる。また逆に被削性のためにSを添加する必要が無いので、断面方向の機械的性質の低下を最低限に抑制しつつ、被削性を向上させることができる。
【0052】
また同一のオーステナイト粒度であっても、Alの含有量によって被削性は影響を受ける。
【0053】
表3に示す供試材に対してドリルによる被削性を評価を行った。その結果を図5に示す。同一硬さ、同一ミクロ組織で比較するとAl>0.01%の範囲では被削性が悪い。
【0054】
【表3】
Figure 0003739958
【0055】
さらに表4に示す鋼に関してオーステナイト粒度番号と加熱温度の影響について述べる。表4の化学成分は両者とも本発明の範囲内であるが、実施例45はTi、V、Nbなどのオーステナイト粒径をピン止め効果によって微細化する元素を多く含んでいる。
【0056】
図6に実施例44および46の化学成分の鋼を加熱した場合のオーステナイト粒度番号を示す。いずれの場合も1000℃以上に加熱すれば本発明で必要とするオーステナイト粒度7以下を達成できる。オーステナイト微細化元素を添加していない実施例44ではさらに低温でもオーステナイト粒度7以下を達成している。保持時間はサンプル全体に変態/粒成長が行き渡ればよいが、オーステナイト粒の成長速度から考えて実用上は最低10minは必要である。
【0057】
【表4】
Figure 0003739958
【0058】
さらに他の鋼種への適用性を検討した。表5にさまざまな化学成分に対する被削性を示す。表5の供試材は50kg真空溶解炉で溶製し、190mm角のインゴットを減面率90%まで熱間圧延し、それからφ20×30mmの円柱サンプルを採取した。中心線は圧延長手方向である。さらに採取したサンプルを熱間鍛造を行い、その際、鍛造温度を変化させてオーステナイト粒径を変化させた。実施例63、64を除く実施例46〜67はすべて1200℃にて円盤状に鍛造した。実施例63、64の鍛造温度は950℃である。圧下比は50%で表面機械加工後、ドリルによる被削性を評価した。ドリルの評価方法は表2に示す通りである。硬さは成分によりばらつきがあるものの、HV220〜260であり、比較例である実施例63、64はオーステナイト粒度番号は8番以上であり、実施例65〜67はそれぞれO、N、Alの含有量が本発明と異なる。それら比較例のVL1000は発明例に比べて低いことがわかる。
【0059】
【表5】
Figure 0003739958
【0060】
【発明の効果】
本発明により、被削性を向上させつつも圧延や鍛造で生じた最弱方向の機械的性質低下を最低限に抑制できるので、部品の機械的性質と加工性を両立させることが可能となる。特に熱間鍛造や切削を多用して製造される部品に有用である。また鍛造フローなどの異方性の原因となる複雑な部品内部の不均一を考慮する必要がなくなるので、部品設計、工程設計などに要する仕事を大幅に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】切削におけるオーステナイト粒の影響を説明するための図である。
【図2】被削性に及ぼすオーステナイト粒の影響を示す図である。
【図3】衝撃値に及ぼすS量の影響を示す図である。
【図4】疲労特性に及ぼすS量の影響を示す図である。
【図5】被削性におよぼずAl量の影響を示す図である。
【図6】加熱温度とオーステナイト粒径の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 被削材
2 オーステナイト粒
3 点X
4 切り屑
5 工具
6 二次せん断域
7 主せん断域
8 切込み量
9 切削線

Claims (6)

  1. 重量%で、
    C :0.41〜0.85%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    P :0.003〜0.2%、
    S :0.003〜0.5%
    を含有するとともに
    Al:0.01%以下、
    total−O:0.02%以下、
    total−N:0.02%以下
    に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号が7番以下であることを特徴とする被削性に優れる鋼
  2. 重量%で、
    C :0.41〜0.85%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.05〜2.0%、
    P :0.003〜0.2%、
    S :0.003〜0.5%
    を含有するとともに
    Al:0.01%以下、
    total−O:0.02%以下、
    total−N:0.02%以下
    に制限し、さらに、
    Cr:0.01〜2.0%、
    Ni:0.05〜2.0%、
    Mo:0.05〜1.0%、
    B:0.0005〜0.005%
    の1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号が7番以下であることを特徴とする被削性に優れる鋼
  3. さらに、重量%で、
    V :0.05〜1.0%、
    Nb:0.005〜0.2%、
    Ti:0.005〜0.1%
    の1種または2種以上を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の被削性に優れる鋼
  4. さらに、重量%で、
    Ca:0.0002〜0.005%、
    Mg:0.0003〜0.005%、
    の1種または2種を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の被削性に優れる鋼
  5. さらに、重量%で、
    Bi:0.05〜0.5%、
    Pb:0.01〜0.5%
    の1種または2種を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の被削性に優れる鋼
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の化学成分を有する鋼を1000℃以上で10min以上保持することで、JIS G 0551で規定するオーステナイト粒径の粒度番号を7番以下とすることを特徴とする被削性に優れる鋼の製造方法。
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