JP2007131871A - 高周波焼入れ用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高周波焼入れによって浸炭焼入れの場合と同等以上の曲げ疲労強度を確保することができる高周波焼入れ用鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.35〜0.65%、Si≦0.50%、Mn:0.65〜2.00%、P≦0.015%、S:0.003〜0.080%、Mo:0.05〜0.50%、Al≦0.10%、N≦0.0070%、O≦0.0020%を含有し、残部はFeと不純物からなり、マルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織である高周波焼入れ用鋼材。(第1群)B:0.0005〜0.0050%及びTi≦0.045で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%、(第2群)Cu≦0.20%、Ni≦0.20%、Cr≦0.20%、Nb≦0.30%、V≦0.20%のうちの1種以上、(第3群)Ca≦0.01%、Pb≦0.30%、Bi≦0.03%、Te≦0.10%のうちの1種以上、の各群の元素の1種以上を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、高周波焼入れ用鋼材に関する。詳しくは、高周波焼入れによって浸炭焼入れの場合と同等以上の疲労強度、なかでも曲げ疲労強度を確保することができる高周波焼入れ用鋼材に関する。
アクスルシャフト、ドライブシャフト、等速ジョイント用アウターレースなどの自動車部品や建設機械用部品は、所定形状への機械加工後、所望の機械的性質を具備させるための表面硬化処理が施され、表面硬化処理としては「浸炭焼入れ処理」が施されることが多い。そして、この「浸炭焼入れ処理」を施すために、前記部品の素材として、一般に、質量%で、0.2%程度のCに加えて、Si、Mn、Ni、CrやMo等の合金元素を含む低炭素合金鋼が使用されてきた。
しかしながら、「浸炭」は、拡散現象を利用する処理である。したがって、鋼材中に十分なCを拡散させるために、800〜1050℃程度のオーステナイト領域で、数時間から数十時間もの長時間の加熱処理を行うことが必要となる。このため、表面硬化処理として「浸炭焼入れ処理」を施す場合には、成形から熱処理までの製造工程をインライン化することが困難であるので生産能率を高めることが難しく、また、部品の製造コストも嵩んでしまう。
なお、浸炭処理としては通常「ガス浸炭法」が採用されるが、ガス浸炭の際に被処理材である鋼材の表面に、いわゆる「粒界酸化層」が形成されるので、浸炭処理後に疲労強度や衝撃特性の低下が生じてしまう。
上記の粒界酸化層の抑制のためには、鋼材中のSi、Mn及びCrの含有量を低減し、代わりにMoやNi等を含有させることが考えられるが、高価な合金元素を多量に含ませることになるので、鋼材コストの上昇を招く。
更に、浸炭処理は、上述のように、800〜1050℃程度の高温領域で、数時間から数十時間の長時間加熱する処理であるため、一般に「異常粒成長」と称されるオーステナイト結晶粒の粗大化が生じる場合があり、この異常粒成長が、浸炭焼入れ後の熱処理歪みの発生や、疲労強度、更には衝撃特性の低下を招いてしまう。
このため、浸炭焼入れ処理に代わる表面硬化処理として高周波焼入れ処理の適用が検討され、特許文献1〜9に、高周波焼入れ部品や高周波焼入れプロセスに適した鋼材が提案されている。
特許文献1に、冷間鍛造性、高周波焼入れ性及び転動疲労特性に優れた「機械構造用鋼」、具体的には、重量比で、C:0.40〜0.80%、Si:0.05超〜1.20%、Mn:0.40%未満、S:0.020%以下、Al:0.01〜0.05%未満、Cr:0.30%以下、B:0.0003〜0.0030%、Ti:0.005〜0.05%、N:0.007%以下、O:0.0020%以下を含有し、更に、必要に応じて、Mo:0.05〜0.50%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする冷間鍛造性、高周波焼入れ性及び転動疲労特性に優れた「機械構造用鋼」が開示されている。
特許文献2に、被削性に優れた「高強度高周波焼入れ用鋼」、具体的には、合金元素の含有率が質量%で、C:0.50〜0.80%、Si:0.15%以下、Mn:0.60%以下、B:0.0005〜0.0050%、Ti:0.05%以下であり、更に、必要に応じて、Cr:2.0%以下、Ni:3.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.10%以下、V:0.05〜0.50%のうちの1種又は2種以上の元素、及び/又は、S:0.20%以下、Te:0.20%以下、Ca:0.0050%以下のうちの1種ま又は2種以上の被削性向上元素を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする被削性に優れた「高強度高周波焼入れ用鋼」が開示されている。
特許文献3に、冷間鍛造や切削工程で製造される部品の製造時に冷間加工性に優れ、同時に高周波焼入れ後に、優れた強度特性を有する「高周波焼入れ用鋼材」とその製造方法、具体的には、重量%で、C:0.38超〜0.58%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.2〜0.6%、S:0.005〜0.15%、Cr:0.15〜0.6%、B:0.0005〜0.005%、Al:0.015〜0.05%、N:0.007%未満(0%を含む)を含有し、TiをN含有量に応じて、0.015〜(3.4N+0.02)%の範囲含有し、更に、必要に応じて、Mo:0.02〜0.3%、Ni:0.02〜1.0%のうちの1種又は2種、及び/又は、Nb:0.002〜0.035%を含有し、P:0.025%以下(0%を含む)、O:0.0025%以下(0%を含む)に各々制限し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、ミクロ組織は実質的にフェライト・パーライト組織であり、フェライト結晶粒径が25μm以下であり、熱間圧延方向に平行な断面の組織のフェライトバンドの評点が1〜5であることを特徴とする冷間加工性と高強度特性を兼備した「高周波焼入れ用鋼材」とその製造方法が開示されている。
特許文献4に、高強度の、被削性に優れた「高周波焼入れ歯車用鋼」、具体的には、重量基準で、C:0.50〜0.65%、Si:0.50%以下、Mn:2.0%以下、P:0.020%以下、S:0.010〜0.040%、Mo:0.05〜0.50%、Ti+Zr+REM:0.01%以下、B+N及び/又はTeをB:0.0040〜0.020%、N:0.0050〜0.020%、Te:0.003〜0.030%、で含有し、更に、必要に応じて、Cr、Ni、V、Nbの1種又は2種以上を重量基準で、Cr:1.00%以下、Ni:3.0%以下、V:0.50%以下、Nb:0.50%以下の量で含有し、残部実質的にFeから成ることを特徴とする高強度の被削性に優れた「高周波焼入れ歯車用鋼」が開示されている。
特許文献5に、高強度でかつ耐遅れ破壊特性及び転動疲労寿命特性に優れた「高周波焼入れ用鋼」とその製造方法、具体的には、重量%で、C:0.30〜0.80%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜2.0%、Ti:0.05〜0.20%、Al:0.010〜0.050%、N:0.0120%以下、O:12ppm以下を含有し、更に、必要に応じて、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.20〜2.0%、Mo:0.05〜1.0%のうちから選んだ1種ないし2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、大きさ70nm以下のTi炭化物、Ti炭窒化物を鋼中に微細分散させたことを特徴とする高強度でかつ耐遅れ破壊特性及び転動疲労寿命特性に優れた「高周波焼入れ用鋼」とその製造方法が開示されている。
特許文献6に、高周波焼入れ性に優れると共に、高強度特性に優れた「高強度高周波焼入れ用鋼材」とその製造方法、具体的には、質量%で、C:0.35〜0.6%、Si:0.01〜1%、Mn:0.2〜2%、S:0.005〜0.15%、Cr:0.35%以下(0%を含む)、B:0.0005〜0.005%、Al:0.015〜0.05%、Ti:0.05〜0.2%を含有し、更に、必要に応じて、Mo:1%以下、Ni:2.5%以下、V:0.4%以下のうちの1種又は2種以上を含有し、N:0.007%未満(0%を含む)、P:0.025%(0%を含む)及びO:0.0025%以下(0%を含む)に各々制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、熱間圧延後の組織のマトリックス中に直径0.2μm以下のTiの析出物を5個/μm2以上を有し、フェライト結晶粒径が20μm以下であり、フェライト分率が30%以下であり、JIS G 0558で規定する脱炭深さ:DM−T0.2mm以下であることを特徴とする等の「高強度高周波焼き入れ用鋼材」とその製造方法が開示されている。
特許文献7に、変形抵抗が小さく冷間鍛造性に優れ、かつ高周波焼入れ性にも優れた「機械構造用炭素鋼」、具体的には、重量%で、C:0.40〜0.60%、Si:0.05%以下、Mn:0.30〜0.75%、Cr:0.15%以下、S:0.005〜0.020%を、更に、必要に応じて、Mo:0.05〜0.30%を、0.015%以下に制限したP、0.0020%以下に制限したO及び0.0080%以下に制限したNと共に含有し、残部は実質的にFeの組成になることを特徴とする冷間鍛造性及び高周波焼入れ性に優れた「機械構造用炭素鋼」が開示されている。
特許文献8に、焼割れが生じにくく、かつ優れたねじり特性の得られる「高周波焼入れ用鋼」、具体的には、重量比で、C:0.45〜0.60%、Si:2.00超え〜2.50%、Mn:0.40〜1.20%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:0.10 〜1.00%、Cr:0.20〜0.40%、Mo:0.20〜0.40%、O:0.0020%以下、N:0.0050〜0.0200%と、V:0.05〜0.40%、Nb:0.03〜0.40%のうち1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物元素からなるねじり特性の優れた「高周波焼入れ用鋼」が開示されている。
特許文献9に、ねじり特性に優れた「駆動伝達系部品」、具体的には、重量比で、C:0.45〜0.60%、Si:1.50〜2.50%、Mn:0.40〜1.20%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Ni:0.10〜1.00%、Cr:0.20〜0.40%、Mo:0.20〜0.40%と、V:0.05〜0.40%、Nb:0.03〜0.40%のうち1種又は2種、O:0.0020%以下、N:0.0050〜0.0200%を含有し、残部がFe及び不純物元素からなる鋼に高周波焼入れを行った後、焼戻しを施したことを特徴とするねじり特性の優れた「駆動伝達系部品」が開示されている。
特開平9−272946号公報 特開平8−81733号公報 特開平11−217649号公報 特開平5−271868号公報 特開2000−319748号公報 特開2004−183065号公報 特開平2−145744号公報 特開平6−336646号公報 特開平6−336650号公報
前述の特許文献1〜3で提案された技術は、Mnの含有量が少なく、高周波焼入れを行うと、フェライト残存などの不完全焼入れが生じる場合があり、必ずしも良好な曲げ疲労強度が得られるとは限らなかった。
特許文献4で提案された技術は、Bを鋼中のNと積極的に結合させてBNを形成し、切削性改善に活用するものである。このため、Nと結合してBNの形成を阻害するTi、Zr及びREMを、合計量で0.01%以下とする必要があるので、高周波焼入れにおけるBの焼入れ性向上効果が確保されず、フェライト残存などの不完全焼入れが生じて、良好な曲げ疲労強度が得られないことがあった。
特許文献5及び特許文献6で提案された技術は、Tiの含有量が多く、鋼中のCと結合して多くの炭化物を形成するので、鋼材中のC量が減少してフェライトの割合が多くなり、高周波焼入れ性の低下を招くし、高周波焼入れされた硬化層の靱性の低下をも招く。このため、必ずしも良好な曲げ疲労強度が得られるとは限らなかった。
特許文献7で提案された技術は、素材に対して球状化熱処理を施した後、冷間鍛造にて所定形状に成形してから高周波焼入れするものである。このため、高周波焼入れ前のミクロ組織は「フェライト+球状セメンタイト」であり、高周波焼入れで均一硬質なマルテンサイトが得られない場合があって、必ずしも良好な曲げ疲労強度が得られるとは限らなかった。
特許文献8及び特許文献9で提案された技術は、Siの含有量が多く、高周波焼入れ時のA3変態点が上昇することによって高周波焼入れ性の低下を招き、更に、Crの含有量が多く、鋼中の炭化物が安定化することによっても高周波焼入れ性の低下を招くので、必ずしも良好な曲げ疲労強度が得られるとは限らなかった。
そこで、本発明の目的は、従来の浸炭焼入れを高周波焼入れに変更して生産効率を向上させた場合でも浸炭焼入れの場合と同等以上の疲労強度、なかでも曲げ疲労強度を確保することが可能で、自動車部品や建設機械用部品の素材として好適な「高周波焼入れ用鋼材」を提供することである。
高周波焼入れは、長時間での加熱時に表面から炭素が拡散し十分に焼入れ性を確保した状態から焼入れされる浸炭焼入れとは異なって、急速短時間で加熱された状態で焼入れされる。
そこで、本発明者らは、高周波焼入れ部における不完全焼入れを抑制するために、先ず、合金元素との関係を種々調査した。その結果、下記(a)〜(f)の知見を得た。
(a)通常の長時間加熱してから焼入れする場合、C、Si、Mnなど合金元素の含有量を高めれば焼入れ性が向上するが、急速短時間加熱される高周波焼入れの場合には、その含有量を高めた場合に焼入れ性の低下を招く元素がある。
(b)SiとAlは、いずれも、含有量の増加に伴ってA3変態点を上昇させる元素である。このため、高周波焼入れのような急速短時間加熱の場合、Si及びAlの含有量が高い鋼材ではオーステナイトの単相組織が得られず、フェライトとオーステナイトの2相組織となるので、加熱後急冷する焼入れ処理を行っても、均質なマルテンサイト組織が得られない。したがって、Si及びAlの含有量は低くするのがよい。
(c)Crは、セメンタイトを安定化する作用がある。このため、通常焼入れの場合には焼入れ性を増加させる元素の一つであるCrも、高周波焼入れの場合には、その含有量が高いと、焼入れ性の低下を招くことがある。したがって、Crの含有量も低くするのがよい。
(d)高周波焼入れ時の不完全焼入れを防止するためには、C、Mn、Mo及びBの含有量を高めてこれらの元素の焼入れ性向上作用を活用するのがよい。
(e)Bの焼入れ性向上効果を確保するためにはN固定のためにTiを含有させるのがよいものの、含有量が多すぎる場合には、鋼材中のC量が減少してフェライトの割合が多くなって高周波焼入れ性の低下を招く。このため、Tiの含有量を適正な範囲に調整するのがよい。
(f)強度向上に有効なVを含有させる場合、その量が多すぎる場合には、上記のTi同様、鋼材中のC量が減少してフェライトの割合が多くなって高周波焼入れ性の低下を招く。このため、Vを含有させる場合には、その量を適正な範囲に調整するのがよい。
そこで次に、本発明者らは、高周波焼入れ部における不完全焼入れを抑制するために、高周波焼入れ前の鋼材の組織との関係を種々調査した。その結果、下記(g)の重要な知見が得られた。
(g)高周波焼入れ前の鋼材の組織を、マルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織とすれば、高周波焼入れ性を高めることができる。なお、本明細書でいう「マルテンサイト」とは、等温変態及び連続冷却変態によって得られる、いわゆる「フレッシュマルテンサイト」及び「自己焼戻し(self-tempering)を受けたマルテンサイト」、並びに、それらを焼戻しして得られる「焼戻しマルテンサイト」のうち「ラス状組織形態」であることを特徴とする組織を指し、上記「ラス状組織」中にε或いはθ等の炭化物が析出している組織も含むものをいう。したがって、上記の「フレッシュマルテンサイト」及び「自己焼戻し(self-tempering)を受けたマルテンサイト」を焼戻しした場合であっても、高温での焼戻し、例えば、700℃を超えるような高い温度での焼戻しを施して、「ラス状組織」が再結晶して等軸状のフェライトになった場合には、「焼戻しマルテンサイト」に含めないこととする。
本発明者らは、更に、高周波焼入れした場合の静的強度及び疲労強度を向上させるために、なかでも曲げ疲労強度を向上させるために種々の調査も実施した。その結果、下記(h)〜(k)の知見が得られた。
(h)曲げ疲労強度と静的曲げ強度との間には良い相関関係が存在する。
(i)静的曲げ強度を向上させるためには、高周波焼入れ後に、その硬化層を均一硬質なマルテンサイト組織にして硬さを高めることに加えて、硬化層の靱性を高めることが重要である。
(j)鋼材の化学組成を適正化するとともに、高周波焼入れ前の組織を前述したマルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織とすることで、高周波焼入れ後にその硬化層を均一硬質なマルテンサイト組織にすることができる。
(k)高周波焼入れ前の鋼材の組織は、高周波焼入れで形成される硬化層の靱性に影響を及ぼす。すなわち、高周波焼入れ前の鋼材の組織が、焼入れ或いは焼入れ焼戻し処理されてマルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織である場合の高周波焼入れ後の硬化層の靱性は、高周波焼入れ前の鋼材の組織が、単純に焼準や球状化焼鈍処理された場合の硬化層の靱性に比べて、極めて大きくなる。
一般に、硬さと靱性は相反する特性を示し、硬化層の硬さ増加や、硬化層深さの増加は、靱性の低下を招くと考えられる。また、硬さ、靱性ともに、鋼材のC含有量の影響が非常に大きい。
そこで更に、本発明者らは、相反する靱性と硬さについて精査した。その結果、下記(l)及び(m)の知見が得られた。
(l)高周波焼入れで形成された硬化層の旧オーステナイト結晶粒径を20μm以下に微細化することによって、硬さを低下させずに靱性を確保することが可能である。
(m)化学組成を適正化するとともに、高周波焼入れ前の組織をマルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織とした鋼材は、高周波焼入れによって、その硬化層の旧オーステナイト結晶粒径を20μm以下に微細化することができる。しかも、この場合には高周波焼入れにより生成した旧オーステナイト粒界或いはラス界面への炭化物の析出が大きく抑制されるので、靱性が向上する。
なお、自動車部品や建設機械用部品の加工工程には、必ず所定形状への「切削加工」がある。このため、浸炭焼入れの代替として高周波焼入れを適用する場合にも被削性を考慮する必要がある。そこで、本発明者らは、被削性を高める技術についても検討した。その結果、下記(n)〜(p)の知見を得た。
(n)鋼中のO(酸素)の含有量を低減して、被削性に影響を与えるMnSの形態を微細化することで被削性を高めることができる。
(o)適正量のCaを含有させて低融点酸化物を形成させれば、工具寿命を大きくすることもできる。
(p)低融点の被削性向上元素であるPb、BiやTeを適正量含有させれば、切削加工中に加工熱で溶融し、粒界脆化によって切り屑分断性が向上するので、被削性を高めることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(4)に示す高周波焼入れ用鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.35〜0.65%、Si:0.50%以下、Mn:0.65〜2.00%、P:0.015%以下、S:0.003〜0.080%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.10%以下、N:0.0070%以下及びO(酸素):0.0020%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、更に、マルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。
(2)Feの一部に代えて、B:0.0005〜0.0050%及びTi:0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%を含有することを特徴とする上記(1)に記載の高周波焼入れ用鋼材。
(3)Feの一部に代えて、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Nb:0.30%以下及びV:0.20%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高周波焼入れ用鋼材。
(4)Feの一部に代えて、Ca:0.01%以下、Pb:0.30%以下、Bi:0.03%以下及びTe:0.10%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼材。
なお、先に述べたとおり、本明細書でいう「マルテンサイト」とは、いわゆる「フレッシュマルテンサイト」及び「自己焼戻し(self-tempering)を受けたマルテンサイト」、並びに、それらを焼戻しして得られる「焼戻しマルテンサイト」のうち「ラス状組織形態」であることを特徴とする組織を指す。
以下、上記 (1)〜(4)の高周波焼入れ用鋼材に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(4)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の高周波焼入れ用鋼材は、従来の浸炭焼入れを高周波焼入れに変更して生産効率を向上させた場合でも浸炭焼入れの場合と同等以上の疲労強度、なかでも曲げ疲労強度を確保することができるので、アクスルシャフト、ドライブシャフト、等速ジョイント用アウターレースなどの自動車部品や建設機械用部品の素材として用いることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.35〜0.65%
Cは、鋼の強度を確保する作用及び高周波焼入れ後の硬化層硬さを確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.35%未満では、前記作用による所望の効果が得られない。一方、Cの含有量が0.65%を超えると、鋼の靱性が劣化する。したがって、Cの含有量を0.35〜0.65%とした。なお、前記の効果を安定して得るためには、Cの含有量は0.40〜0.55%とすることが好ましい。
Si:0.50%以下
Siは、脱酸元素ではあるが、高周波焼入れ時のA3変態点を上昇させ、高周波焼入れ性の低下を招く。特に、その含有量が0.50%を超える場合には、脱酸効果は期待できるものの、高周波焼入れ性の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.50%以下とした。なお、良好な高周波焼入れ性の確保という点からは、Si含有量は可能な限り低減することが好ましい。但し、Siには、マルテンサイト組織を焼戻し処理する際に、焼戻し温度の上昇に対して硬さの低下を抑制する、いわゆる「焼戻し軟化抵抗」を確保する効果があり、その効果はSiの含有量が0.05%以下では期待できない。このため、良好な高周波焼入れ性確保と焼戻し軟化抵抗確保の双方を具備させたい場合には、Siの含有量は、0.05%超を超えて0.20%以下とすることが好ましい。
Mn:0.65〜2.00%
Mnは、高周波焼入れ性を向上させる有効な元素である。しかしながら、Mnの含有量が0.65%未満の場合、前記作用による所望の効果が得られない。一方、2.00%を超えてMnを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Mnの含有量を0.65〜2.00%とした。なお、合金コストを低く抑えたうえで前記の効果を安定して得るためには、Mnの含有量は0.75〜1.50%に調整するのが好ましい。
P:0.015%以下
Pは、高周波焼入れ時の硬化層の靱性を劣化させ、特に、その含有量が0.015%を超えると、硬化層の靱性低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を、0.015%以下とした。なお、Pの含有量は、0.010%以下にするのが好ましい。
S:0.003〜0.080%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性、なかでも切り屑処理性を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.003%未満では前記の効果が得られない。一方、Sは、結晶粒界に偏析して粒界強度を劣化させ、鋼の強度低下を招き、特に、Sの含有量が0.080%を超えると、鋼の強度低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.003〜0.080%とした。なお、Sの含有量は0.006〜0.060%とすることが好ましい。。
Mo:0.05〜0.50%
Moは、CやMnと同様、鋼の焼入れ性を高めて強度を向上させる作用がある。Moには、焼戻し軟化抵抗を高める効果もある。しかし、強度向上効果及び焼戻し軟化抵抗向上効果を確実に得るには、0.05%以上の含有量が必要である。一方、0.50%を超えてMoを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量を0.05〜0.50%とした。なお、Moの含有量は0.10〜0.30%とすることが好ましい。
Al:0.10%以下
Alは、Siと同様に、脱酸元素ではあるが、高周波焼入れ時のA3変態点を上昇させ、高周波焼入れ性の低下を招く。特に、その含有量が0.10%を超える場合には、前記の脱酸効果やAlが鋼中のNと結合して形成されたAlNの高周波焼入れ時の結晶粒粗大化防止作用は期待できるものの、高周波焼入れ性の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.10%以下とした。なお、良好な高周波焼入れ性の確保という点からは、Al含有量は可能な限り低減することが好ましい。
N:0.0070%以下
Nは、B、Al、Tiなどとの親和力が大きく、鋼中のBと結合してBNを形成した場合には、高周波焼入れ性を高めることができない。特に、Nの含有量が多くなって0.0070%を超えると、AlNやTiNの高周波焼入れ時の結晶粒粗大化防止作用は期待できるものの、BN形成による高周波焼入れ性向上効果が期待できない。また、鋼中の固溶N量が増加すると、熱間変形能の低下をきたす。したがって、Nの含有量を、0.0070%以下とした。なお、鋼中の不純物としてのNの含有量は可能な限り低減することが好ましい。
O(酸素):0.0020%以下
Oは、鋼中の元素と結合して酸化物を形成し、強度低下、なかでも疲労強度の低下を招く。特に、Oの含有量が0.0020%を超えると、形成される酸化物が多くなるとともにMnSが粗大化して、疲労強度の低下が顕著になる。したがって、不純物元素としてのOの含有量を0.0020%以下とした。なお、Oの含有量は0.0015%以下とすることが好ましい。
上記の理由から、本発明(1)に係る高周波焼入れ用鋼材の化学組成を、上述した範囲のCからO(酸素)までの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなることと規定した。
なお、本発明に係る高周波焼入れ用鋼材には、必要に応じて、Feの一部に代えて、
第1群:B:0.0005〜0.0050%及びTi:0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%、
第2群:Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Nb:0.30%以下及びV:0.20%以下のうちの1種又は2種以上、
第3群:Ca:0.01%以下、Pb:0.30%以下、Bi:0.03%以下及びTe:0.10%以下のうちの1種又は2種以上、
の各群の元素の1種以上を含有させることができる。すなわち、前記第1群〜第3群の3つの群の元素の1種以上を、Feの一部に代えて、任意添加元素として含有させてもよい。
以下、上記の任意添加元素に関して説明する。
第1群:B:0.0005〜0.0050%及びTi:0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%
Bは、高周波焼入れ性を向上させる作用を有し、その効果はBの含有量が0.0005%以上で顕著である。しかしながら、0.0050%を超えてBを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Bの含有量を0.0005〜0.0050%とした。Bの含有量は0.0010〜0.0020%とすることが好ましい。
なお、上記した範囲の量のBを含有する場合であっても、Bが鋼中の不純物として存在するNと結合してBNを形成した場合には、高周波焼入れ性を高めることができない。したがって、既に述べたように、Bの高周波焼入れ性向上効果を発揮させるためには、鋼中の不純物として存在するNを低減する必要がある。
Tiは、鋼中の不純物として存在しているNと優先的に結合することでBNの形成を抑制し、Bの高周波焼入れ性向上効果を確保するのに有効な元素である。この効果を得るためには、3.4N%以上のTiを含有させる必要がある。しかしながら、Tiの含有量が多すぎる場合には、鋼中のCと結合して炭化物を形成するため、鋼材中のC量が減少してフェライトの割合が多くなり、却って高周波焼入れ性の低下を招くし、高周波焼入れされた硬化層の靱性の低下をも招く。特に、Tiの含有量が多くなって、0.045%を超えると、高周波焼入れ性及び硬化層の靱性の著しい低下をきたす。そして、たとえ、Tiの含有量が0.045%以下であっても、(3.4N+0.02)%を超えると、高周波焼入れ性及び硬化層の靱性の低下をきたす。したがって、Tiの含有量を0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%とした。
第2群:Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Nb:0.30%以下及びV:0.20%以下
Cu:0.20%以下
Cuは、鋼の強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、CやMnと同様に鋼の焼入れ性を高めて、強度を向上させる作用を有する。しかしながら、Cu含有量が0.20%を超えると、焼入れ性は向上するものの、疲労強度の低下を招く場合がある。したがって、Cuの含有量を0.20%以下とした。なお、Cuの含有量は、0.008〜0.015%とすることが好ましい。
Ni:0.20%以下
Niは、鋼の強度を向上させる作用を有する。すなわち、Niは、CやMnと同様に鋼の焼入れ性を高めて、強度を向上させる作用を有する。しかしながら、Niの含有量が0.20%を超えると、焼入れ性は向上するものの、高周波焼入れ時に焼割れを生じる場合がある。したがって、Niの含有量を0.20%以下とした。なお、Niの含有量は、0.008〜0.015%%とすることが好ましい。
Nb:0.30%以下
Nbは、鋼の強度を向上させる作用を有する。すなわち、Nbは、炭化物、窒化物或いは炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、鋼の強度を高める作用を有する。しかしながら、0.30%を超えてNbを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbの含有量を0.30%以下とした。なお、Nbの含有量は、0.01〜0.30%とすることが好ましい。
V:0.20%以下
Vは、鋼の強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CやMnと同様に鋼の焼入れ性を高めて、また、炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度を向上させる作用を有する。しかしながら、Vの含有量が0.20%を超えると、炭窒化物が過剰に析出して高周波焼入れされた硬化層の靱性劣化を引き起こして疲労寿命の低下を招くし、鋼中のCと結合して炭化物を多く形成することにもなるため、鋼材中のC量が減少してフェライトの割合が多くなって高周波焼入れ性の低下を招く。したがって、Vの含有量を0.20%以下とした。なお、Vの含有量は、0.01〜0.20%とすることが好ましい。
なお、上記のCu、Ni、Nb及びVは、そのうちのいずれか1種のみ、又は2種以上の複合で含有することができる。
第3群:Ca:0.01%以下、Pb:0.30%以下、Bi:0.03%以下及びTe:0.10%以下
Ca:0.01%以下
Caは、被削性を高める作用がある。すなわち、Caは、工具寿命向上に有効な低融点酸化物を形成して、被削性を高める作用を有する。Caには脱酸作用もある。しかしながら、Caの含有量が0.01%を超えると、Caの添加歩留りが低いために、製造コストが嵩んでしまうし、却って低融点酸化物の形成が難しくなる。更に、Caを固溶するMnSが増加して粗大なMnSを形成しやすくなるため、被削性は確保できても、疲労強度の低下を招いてしまう。したがって、Caの含有量を0.01%以下とした。なお、疲労強度を低減することなく、被削性向上効果を、より安定して得るために、Caの含有量は、0.0005〜0.005%とすることが好ましい。
Pb:0.30%以下
Pbは、被削性を高める作用がある。しかしながら、その含有量が0.30%を超えると前記効果が飽和して経済性を損なうばかりか、曲げ疲労強度が劣化するようになる。更に、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間圧延や熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Pbの含有量を0.30%以下とした。なお、自動車部品や建設機械用部品の所定形状への切削加工を行うに際に、Pbの被削性向上効果を確実に得るためには、その含有量を0.02%以上とすることが好ましい。したがって、より好ましいPbの含有量は0.02〜0.30%である。
Bi:0.03%以下
Biは、被削性を高める作用がある。しかしながら、その含有量が0.03%を超えると前記効果が飽和してコストの上昇を招くばかりか、曲げ疲労強度が劣化するようになる。更に、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間圧延や熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Biの含有量を0.03%以下とした。なお、所定の部品形状への切削加工を行うに際に、Biの被削性向上効果を確実に得るためには、その含有量を0.005%以上とすることが好ましい。したがって、より好ましいBiの含有量は0.005〜0.03%である。
Te:0.10%以下
Teは、被削性を高める作用がある。しかしながら、その含有量が0.10%を超えると前記効果が飽和して経済性を損なうばかりか、曲げ疲労強度が劣化するようになる。更に、熱間加工性の劣化をもたらし、熱間圧延や熱間鍛造時に割れの発生を招く。したがって、Teの含有量を0.10%以下とした。なお、所定の部品形状への切削加工を行うに際に、Teの被削性向上効果を確実に得るためには、その含有量を0.01%以上とすることが好ましい。したがって、より好ましいTeの含有量は0.01〜0.10%である。
なお、上記のCa、Pb、Bi及びTeは、そのうちのいずれか1種のみ、又は2種以上の複合で含有することができる。
上記の理由から、本発明(2)に係る高周波焼入れ用鋼材の化学組成を、本発明(1)における高周波焼入れ用鋼材のFeの一部に代えて、B:0.0005〜0.0050%及びTi:0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%を含有することと規定した。
また、本発明(3)に係る高周波焼入れ用鋼材の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)における高周波焼入れ用鋼材のFeの一部に代えて、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Nb:0.30%以下及びV:0.20%以下のうちの1種又は2種以上を含有することと規定した。
更に、本発明(4)に係る高周波焼入れ用鋼材の化学組成を、本発明(1)から本発明(3)までのいずれかにおける高周波焼入れ用鋼材のFeの一部に代えて、Ca:0.01%以下、Pb:0.30%以下、Bi:0.03%以下及びTe:0.10%以下のうちの1種又は2種以上を含有することと規定した。
(B)組織
前記(A)項で述べた化学組成を有する本発明に係る高周波焼入れ用鋼材の組織は、マルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織でなければならない。
これは、化学組成に加えて、鋼材の組織を上記の組織とすることによって、高周波焼入れ時の不完全焼入れが抑制されて高周波焼入れで形成された硬化層が均一硬質なマルテンサイト組織になり、硬化層の硬さを高めることができ、更に、高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト結晶粒径が20μm以下に微細化され、しかも、高周波焼入れにより生成した旧オーステナイト粒界或いはラス界面への炭化物の析出が大きく抑制されるので、硬化層の靱性も確保することができて、良好な静的曲げ強度、したがって、良好な曲げ疲労強度を確保できるからである。
なお、本明細書でいう「マルテンサイト」が、いわゆる「フレッシュマルテンサイト」及び「自己焼戻し(self-tempering)を受けたマルテンサイト」、並びに、それらを焼戻しして得られる「焼戻しマルテンサイト」のうち「ラス状組織形態」であることを特徴とする組織を指し、上記「ラス状組織」中にε或いはθ等の炭化物が析出している組織も含むことは、既に述べたとおりである。
マルテンサイトが面積分率で85%以上を占める組織であれば、より安定して高周波焼入れ時の不完全焼入れが抑制されるとともに、硬化層の靱性が向上する。このため、前記(A)項で述べた化学組成を有する本発明に係る高周波焼入れ用鋼材の組織は、マルテンサイトが面積分率で85%以上を占める組織であることが好ましい。なお、高周波焼入れ用鋼材の組織は、マルテンサイトが面積分率で100%を占める組織、すなわち、マルテンサイト単相の組織であってもよい。
高周波焼入れ前の鋼材の組織調整方法としては、例えば、自動車部品や建設機械用部品の所定形状に加工した後、高周波焼入れする前に熱処理を施せばよい。熱処理条件としては、例えば、850〜1200℃の温度範囲に加熱した後、水冷或いは油冷すればよい。また、水冷或いは油冷した後、150〜700℃の温度範囲で15分以上保持してから冷却してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼A1〜A18及び鋼B1〜B5を真空炉溶製して150kg鋼塊を作製した。
表1中の鋼A1〜A18は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼B1〜B5は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
Figure 2007131871
このようにして得た鋼塊を、1200〜1300℃に加熱した後、熱間鍛造して直径30mmの丸棒とした。なお、熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
次いで、熱間鍛造して得た上記の直径30mmの丸棒を、900℃で30分加熱してオーステナイト単相組織にした後、表2に示す冷却速度で冷却或いは冷却後更に焼戻しして、高周波焼入れ前の丸棒の組織を変化させた。
上記の熱処理を施した直径30mmの丸棒を用いて、ミクロ組織を調査した。すなわち、熱処理した丸棒の横断面での状態を観察できるように切断して樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、ナイタルで腐食してミクロ組織を現出させ、走査型電子顕微鏡を用いて、マルテンサイトの判別を行い、マルテンサイトと判別された部分の面積分率を測定した。
マルテンサイト組織の判別は、その特徴である「ラス状組織形態」を呈しているかどうかを、走査型電子顕微鏡にて確認し、ラス状組織或いは炭化物析出が走査型電子顕微鏡で判別することが困難な場合には、透過型電子顕微鏡も併用して、マルテンサイトの判定を行った。
いわゆる「フレッシュマルテンサイト」及び「自己焼戻し(self-tempering)を受けたマルテンサイト」を焼戻しした場合であっても、高温での焼戻し、例えば、700℃を超えるような高い温度での焼戻しを施して、「ラス状組織」が再結晶して等軸状のフェライトになった場合には、「焼戻しマルテンサイト」といわないことは既に述べたとおりである。
なお、任意に10視野撮影した倍率2000倍の走査型電子顕微鏡写真を画像処理し、上記のようにして判別したラス状マルテンサイト組織の面積分率からマルテンサイトの面積分率を算出した。
また、前記の熱処理を施した直径30mmの丸棒から、断面が10mm×10mmで長さが100mmの直方体の長手中央部の1つの面に、半径2mmの半円切欠きを設けた3点曲げ試験片を機械加工によって切り出した。次いで、上記の3点曲げ試験片の半円切り欠きを設けた面を、周波数20kHz、出力50kWの条件で3.0秒間加熱した後水冷する高周波焼入れを行って、高周波焼入れ性及び硬化層の旧オーステナイト粒径の調査を行った。
高周波焼入れ性は、上記高周波焼入れ後の3点曲げ試験片の半円切欠き部での横断面が調査できるように樹脂に埋め込み、JIS G 2244(2003)に規定された方法でビッカース硬さ試験を行って評価した。すなわち、試験力を2.94Nとしてビッカース硬さ試験を行って硬さ分布を求め、切欠き底からビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)が500となる位置までの距離(mm)を求めた。なお、以下においては、切欠き底からHV硬さが500となる位置までの距離を「ECD」という。
高周波焼入れ性の目標は、ECDが0.85mm以上である。
硬化層の旧オーステナイト粒径は、上記高周波焼入れ後の3点曲げ試験片の横断面が観察できるように樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食して旧オーステナイト粒界を現出させ、任意に5視野撮影した倍率400倍の光学顕微鏡写真を用い、切断法によって求めた「平均切片長さ」Lを求め、「熱処理、第24巻、第6号(1984)」の334〜338ページに記載された方法に従って「1.128×L」を旧オーステナイト粒径とした。
旧オーステナイト粒径は20μm以下が目標である。
更に、上記条件で高周波焼入れした3点曲げ試験片を180℃で1時間焼戻しして、静的曲げ強度及び曲げ疲労強度を調査することも行った。
静的曲げ強度試験は、支点間距離45mm、試験片切欠き部底の歪み速度0.01/秒で行い、最大到達荷重から静的曲げ強度を算出した。なお、1800MPa以上の静的曲げ強度を有することが目標である。
曲げ疲労強度試験も、支点間距離45mmで行い、繰り返し回数1×104回での亀裂発生強度を曲げ疲労強度として評価した。なお、950MPa以上の曲げ疲労強度を有することが目標である。
表2及び表3に、上記の各試験結果を併せて示す。
Figure 2007131871
Figure 2007131871
表2及び表3から、本発明(1)〜(4)で規定する条件を満たす試験番号1〜18の場合、高周波焼入れ性に優れ、しかも、良好な曲げ疲労強度を有していることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた試験番号19〜28の曲げ疲労強度は低く、しかも、高周波焼入れ性に劣る場合もあることが明らかである。
なお、別途JIS G 4053(2003)に記載されたSCr420の鋼材に925℃で1時間加熱後空冷する焼準処理を施した後、先に述べた形状の3点曲げ試験片を採取し、その3点曲げ試験片をカーボンポテンシャル0.8%の状態下で、940℃で3時間保持してから870℃に冷却して更に1時間保持した後、油焼入する条件で浸炭焼入れし、更に、180℃で1時間焼戻しして、先に述べたのと同じ条件で静的曲げ強度及び曲げ疲労強度を調査した。その結果、浸炭焼入れしたSCr420の静的曲げ強度は1690MPa,曲げ疲労強度は700MPaであった。したがって、本発明(1)〜(4)で規定する条件を満たす試験番号1〜18の曲げ疲労強度が、浸炭焼入れ材と同等以上の曲げ疲労強度を有するものであることが確認できた。
また、鋼A1〜A18の熱間鍛造して得た直径30mmの丸棒を用いて旋削試験を実施し、工具摩耗量を測定して被削性も調査した。すなわち、熱間鍛造ままの直径30mmの各丸棒を、TiNコーティング処理が施されたP20種の超硬工具を用いて下記の条件で10分間旋削し、超硬工具の平均逃げ面摩耗量を測定し、これを工具摩耗量として被削性を評価した。
・切削速度:120m/分、
・切り込み量:1.5mm、
・送り量:0.40mm/rev.、
・潤滑:湿式(水溶性潤滑油剤を使用)。
その結果、鋼A1〜A18の工具摩耗量は全て100μm以下で、いずれの鋼も良好な被削性を有していることが確認できた。
本発明の高周波焼入れ用鋼材は、従来の浸炭焼入れの場合と同等以上の疲労強度、なかでも曲げ疲労強度を確保することができるので、アクスルシャフト、ドライブシャフト、等速ジョイント用アウターレースなどの自動車部品や建設機械用部品の素材として用いることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.65%、Si:0.50%以下、Mn:0.65〜2.00%、P:0.015%以下、S:0.003〜0.080%、Mo:0.05〜0.50%、Al:0.10%以下、N:0.0070%以下及びO(酸素):0.0020%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、更に、マルテンサイトが面積分率で70%以上を占める組織であることを特徴とする高周波焼入れ用鋼材。
  2. Feの一部に代えて、B:0.0005〜0.0050%及びTi:0.045%以下で、かつ3.4N〜(3.4N+0.02)%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入れ用鋼材。
  3. Feの一部に代えて、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Nb:0.30%以下及びV:0.20%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波焼入れ用鋼材。
  4. Feの一部に代えて、Ca:0.01%以下、Pb:0.30%以下、Bi:0.03%以下及びTe:0.10%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼材。
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