JP5299169B2 - 耐食性厚板用低合金鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造鋳片 - Google Patents

耐食性厚板用低合金鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造鋳片 Download PDF

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Description

本発明は、連続鋳造時に表面疵の発生がなく、後工程の熱間圧延でも割れ感受性の低い熱間圧延用母材となる、表面品質の良好な、Snを含有する耐食性厚板用低合金鋼を連続鋳造する方法、および、この方法により製造した連続鋳造鋳片に関するものである。
Cuと同様、Snはスクラップ鉄中のトランプエレメントであるが、鋼の耐食性を向上させることも知られている。しかしながら、Snは鋼の熱間加工時に割れを生じさせる脆化元素でもあるため、Snを含有する耐食鋼を製造する際は、表面疵の防止が最大の課題となる。
特許文献1には、Snによる耐候性向上効果を利用した橋梁用鋼材が開示されている。この橋梁用鋼材では、耐食性の観点からCuとNiの上限が規制されている。
しかしながら、この特許文献1には、熱間の表面脆化や連続鋳造時の表面疵防止に関する記載はない。
また、特許文献2には、熱間加工時に表面疵を発生させずに製造することができるCu、Sn含有熱延鋼が開示されている。このCu、Sn含有熱延鋼は、質量%で、 C:1.0%以下 、Si:1.0%以下、 Mn:0.1〜1.5%、 Al:0.001〜0.1%、 Cu:0.1〜0.5%、 Sn:0.2〜1.0% を含み、かつ、Snの濃度を、2×Cu%以上としたものである。
しかしながら、特許文献2で開示されたCu、Sn含有熱延鋼は、Feの選択酸化によって生じるCu、Sn融液の組成比の影響により発生する表面疵の防止に限定されたものである。また、Cuの他にSnを含む場合、Niの割れ防止効果を低下することが記載されているだけで、Niが共存する場合の効果については十分な記載がない。さらに、C量が0.09〜0.20質量%のような縦割れ感受性の高まるC領域では、鋳造割れを防止する必要があるが、その手段についての言及もない。
また、非特許文献1には、CuやSnに起因する表面赤熱脆性の抑制方法が記載されている。この非特許文献1では、表面赤熱脆性(液体脆化)による熱間の加工割れに及ぼすCu、Snの影響は、次のように説明されている。
1000℃以上に加熱された鋼材は、大気酸化によってその表面にスケールが生成する。0.3質量%程度のCu含有鋼では、主成分のFeが選択酸化され、表層部にCuが濃化する。その際、融点が低いCuは表層部に液相として析出し、これが結晶粒界に侵入して液膜脆化を招く。
CuのほかSnおよびNiは母相の主成分であるFeより酸化されにくい貴な金属元素である。Feより貴な金属のうちCuとSnを含有するCu−Sn含有鋼(0.3質量%Cu−0.04質量%Sn)は、Feより貴な金属のうちCuのみを含有するCu単独含有鋼(0.3質量%Cu)に比べて表面割れが顕著になる。ところが、Feより貴な金属のうちSnのみを含有するSn単独含有鋼の場合は、表面割れを生じない。たとえば0.04質量%Sn、あるいは0.3質量%Snを単独添加した鋼材を大気酸化させても表面割れは生じない。
非特許文献1では、Niによる脆化抑制効果についても検討されている。0.3質量%Cu鋼の脆化は、Niを0.15質量%添加することで抑制されるが、0.3質量%Cu−0.04質量%Sn鋼では、Niを0.15質量%添加するだけでは不十分で、0.3質量%のNiを添加することで脆化を抑制できる。
このように、非特許文献1では、0.3質量%程度のCu含有鋼の脆化に及ぼすSn、Niの影響と、Sn単独鋼は脆化しないことが明らかにされている。
特開2008−163374 特開平6−256904
材料とプロセス、Vol.13、2000年、 p.1080
本発明が解決しようとする問題点は、Snを含有する耐食鋼を製造する際は、表面疵の防止が最大の課題となるが、橋梁用鋼材について開示された特許文献1には、熱間の表面脆化や連続鋳造時の表面疵防止に関する配慮はないという点である。
また、特許文献2に開示されたCu、Sn含有熱延鋼は、Feの選択酸化によって生じるCu、Sn融液の組成比の影響により発生する表面疵の防止に限定されているという点である。また、この特許文献2には、Niが共存する場合の効果や、C量が0.09〜0.20質量%のような縦割れ感受性の高まるC領域における鋳造割れ防止手段についての言及はないという点である。
また、非特許文献1では、0.3質量%程度のCu含有鋼の脆化に及ぼすSn、Niの影響と、Sn単独鋼は脆化しないことが明らかにされているだけであるという点である。
本発明の耐食性厚板用低合金鋼の連続鋳造方法は、
Cを0.09〜0.20質量%、Snを0.05〜0.50質量%添加した耐食性厚板用低合金鋼の連続鋳造時における表面疵の発生を防止するために、
質量%で、C:0.09〜0.20%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.1%、Sn:0.05〜0.50%、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる耐食性厚板用の低合金鋼を、
質量%の成分比、Cu/Snの値を0.02以上、0.5以下、および、(Cu+Ni)/Snの値を0.04以上、0.7以下として鋳造することを主要な特徴としている。
そして、本発明の連続鋳造方法による連続鋳造中または連続鋳造直後の高温状態での大気による酸化によって生成された、鋳片表層部のSn、CuおよびNiが濃化する、母相であるFeと異相の組成が、少なくとも30質量%以上のFeを含有したものが本発明の連続鋳造鋳片である。
本発明は、Cを0.09〜0.20質量%、Snを0.05〜0.50質量%添加した耐食性厚板用低合金鋼を、表面疵の発生を防止して連続鋳造することができる。また、後工程の熱間圧延時にも、割れ感受性の低い連続鋳造鋳片を提供することができ、品質の良好な鋼材を製造することができる。
Cu−Ni−Sn三元系組成図において、0.02≦Cu/Sn≦0.5で、かつ0.04≦(Cu+Ni)/Sn≦0.7を示す範囲を示した図である。 1127℃のCu−Ni−Sn三元系状態図上に、母相表面に析出した鋳片表面の(Cu、Sn、Ni)濃化相の三元系換算組成を示した図である。 Fe−(Cu+Ni)−Sn組成図上に、(Cu、Sn、Ni)濃化挙動の組成変化を矢印で示し、鋳片表面に形成される(Cu、Ni、Sn)濃化相のFeを含めた四元系換算組成をSEM/EDS分析によって調査した結果を示した図である。 解析ソフトを用い、付属データベースと文献の熱力学データを加えて作成した1250℃における、Fe−(Cu+Ni)−Sn系状態図の高Fe側を示した図である。 連続鋳造鋳片の表面に形成される(Cu、Ni、Sn)濃化相について、Feを含めた四元系換算組成をSEM/EDS分析によって調査した結果を、1250℃のFe−(Cu+Ni)−Sn組成図上に示した図である。
本発明では、Cを0.09〜0.20質量%、Snを0.05〜0.50質量%添加した耐食性厚板用低合金鋼を連続鋳造する際の表面疵の発生を防止するという目的を、CuとNiが共存する鋼の脆化抑制条件を検討することによって実現した。
以下、本発明の着想から課題解決に至るまでの過程と共に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
発明者等は、Feの選択酸化に伴って生じるCu脆化現象について、Snの影響を見直した。特に、Feの選択酸化時に形成されるCu、Ni、Snの濃化によって生じる低融点合金組成と割れ感受性の関係に着目し、脆化を抑制する組成系を検討した。
元来、Cu脆化は、Feが選択酸化する際、Feより貴なCuが濃化し、Cu濃度がオーステナイトFe相の固溶限を超えて低融点のCu液相が析出することにより、液相のCuが母相であるFeのオーステナイト結晶粒界へ浸透し、粒界を脆弱化するものと考えられている。
また、NiとSnは、Cuと同様にFeより貴な元素である。Niは、Cuの固溶限を高めてCu液相の融点を上昇させるので、Cu脆化を抑制する元素である。これに対し、Snは、Cuの固溶限を低めてCu液相の融点を降下させるので、Cu脆化を助長する元素である。
このため、従来は、Niを脆化抑制元素として添加し、Snの添加量を制限する対策、すなわち、低融点液相の形成を防止する対策がとられることが多かった。
これに対して、Feより貴なCu、Ni、Snの三合金元素中で、特にSnを主要な添加元素とする鋼を対象とする場合は、従来の対策をとることができない。その理由は、SnはCuと比べて遙かに低融点であり、Niを添加しても液相形成の抑制効果が小さいためである。
そこで、発明者等は、Feの選択酸化によって形成する液相組成に注目し、基礎実験と熱力学解析による検討を行った。その結果、母相のFeから、母相に溶解しない異相成分として析出する(Cu、Sn)液相ではなく、母相のFeにSnが濃化して低融点化した(Fe、Sn)液相を優先して生じさせることで脆化を抑制することが可能であることを見出した。
すなわち、(Cu、Sn)液相は、スケール/母相界面に膜状に集積し、母相であるFeのオーステナイト結晶粒界に浸透して粒界脆化をもたらす。これに対し、(Fe、Sn)液相の挙動は、脆化の原因となる(Cu、Sn)液相の性質とは大きく異なっている。(Fe、Sn)液相は、母相のFe成分を多く含み、酸化速度の速い比較的高温で液相化するため、Snを効果的に母相表面に生じたスケール中に排斥できるからである。よって、(Cu、Sn)液相を形成させずに(Fe、Sn)液相を優先して生じさせれば、表面疵の問題を解消することができる。
図1は、本発明にて提示する、耐食性厚板の表面割れを防止することができるCu、Ni、Snの組成比の範囲、すなわち0.02≦Cu/Sn≦0.5で、かつ0.04≦(Cu+Ni)/Sn≦0.7を示した図である。
まず、種々のCu、Ni、Snを含有する鋼を試験的に連続鋳造した鋳片について、表面割れの有無を確認し、鋳片表層部の断面試料を採取して走査型電子顕微鏡(以下、SEMと称す。)による観察を行った。
鋳片試料の断面観察では、反射電子像を用いる。反射電子像では原子量が大きいほど像が明るい色となるため、材料の組成差によって像コントラストに濃淡が生じる。従って、母相であるFeとFeに比べて原子量の大きなCu、Ni、Snが濃化した部分の判別が可能となる。
Feの選択酸化により生じた鋳片表面の(Cu、Ni、Sn)濃化相の三元系換算組成をエネルギー分散型X線分光分析法(以下、EDSと称す。)によって調査した。
図2は、1127℃のCu−Ni−Sn三元系状態図上に、母相表面に析出した鋳片表面の(Cu、Sn、Ni)濃化相の三元系換算組成を示した図である。計算状態図計算は、解析ソフトThermo−Calc(Thermo−Calc Sotware AB社の製品)を用い、付属データベースと文献に記載された一般的な熱力学データを加えて作成した。
鋳片表面における濃化相の三元組成は、概ね図2の(a)〜(d)に示す4グループに分類され、1127℃において、(a)〜(c)は液相領域に、(d)は固相領域にある。
このうち、液相領域の(b)では軽微な鋳片表面割れが発生し、(c)では鋳片表面割れが多発した。一方、(d)はCu−Ni軸上の固相領域にあるので、鋳片表面割れが皆無であるのは当然であるが、高Sn側液相領域の(a)も鋳片表面割れは皆無であった。
すなわち、Cu−Ni−Sn三元状態図上で液相が生じる組成系であっても、鋳片表面割れを抑制することが可能な組成範囲が高Sn側にあることが分かった。しかしながら、これは三元組成上の検討であるため、実際はFe選択酸化過程のFe母相中での濃化が主要な機構であると考えられる。そこで、発明者等は、Feを加えた四元系の挙動について検討を加えた。
図3は、Fe−(Cu+Ni)−Sn組成図上に、(Cu、Sn、Ni)濃化挙動の組成変化を矢印で示し、鋳片表面に形成される(Cu、Ni、Sn)濃化相のFeを含めた四元系換算組成をSEM/EDS分析によって調査した結果を示した図である。
(Cu+Ni)/Sn比を0.25(=20/80)とすると、Fe選択酸化過程で生じる濃化相の組成はFeを比較的多く含み、Feが完全に酸化消失する前のFe≧30質量%で生じており、この場合には鋳片の表面割れは発生しない(図3でドットを付した領域)。
一方、(Cu+Ni)/Sn比を1.5(=60/40)とすると、Fe選択酸化過程で生じる濃化相の組成にはFeが比較的少なく、ほぼFeが酸化消失した後のFe<30質量%で生じるCu−Sn系の低融点液相であり、この場合には鋳片の表面割れを伴っている(図3でドットを付さない領域)。
さらに種々の組成の鋼を調査した結果、鋳片表面割れは(Cu+Ni)/Sn比と密接な関係があり、(Cu+Ni)/Sn比を0.7以下とすることで表面割れを抑制できることが分かった。
図4は、前記解析ソフトThermo−Calcを用い、付属データベースと文献に記載された一般的な熱力学データを加えて作成した1250℃における、Fe−(Cu+Ni)−Sn系状態図の高Fe側を示した図である。
図4の状態図から、液相は二相分離することが分かる。Fe−Sn軸近くの高Fe側ではL1(Fe、Sn)液相領域が、低Feかつ高(Cu+Ni)側では、L2(Cu、Sn)液相領域がそれぞれ存在している。
表面割れのない図3中の(a)に示した濃化相組成は、図4の1250℃状態図において(Fe、Sn)液相が生じる領域である。このFe側液相は、Feの選択酸化によってSnが濃化し、30質量%以上のSnを含有することによって母相であるFe相自身が低融点化し、溶融したものである。
母相が溶解したFe側液相は、粒界浸透性に乏しく、粒界割れに対しては無害である。すなわち、比較的高温の1250℃付近で、Feを多く含有したL1(Fe、Sn)液相が生じた場合は、表面割れを抑制することができる。
他方、表面割れが生じた図3中の(b)に示した濃化相組成は、図4の1250℃状態図においてL1液相が生じることがなく、粒界に湿潤しやすいL2(Cu、Sn)液相が形成する。
このように鋳片表面割れが生じるか否かは、Feの選択酸化過程で生じる濃化相の組成に依存し、高Feを含有するL1(Fe、Sn)液相を生じさせることにより、表面割れを防止できることが分かる。
図5は、連続鋳造鋳片の表面に形成される(Cu、Ni、Sn)濃化相について、Feを含めた四元系換算組成をSEM/EDS分析によって調査した結果を1250℃のFe−(Cu+Ni)−Sn組成図上に示した図である。
(Cu+Ni)/Sn比を0.7以下とした鋳片表面の濃化相組成(○印)は、比較的Feを多く含む組成で、状態図上のL1(Fe、Sn)液相形成領域とよく一致している。この場合、鋳片の表面割れは発生しない。
一方、Snを含有し、(Cu+Ni)/Sn比が0.7を超える鋳片表面の濃化相組成(□印)は、状態図上のL1(Fe、Sn)液相形成から外れ、L2(Cu、Sn)液相のみが形成される。
図5は、高Fe濃度側(Fe:60質量%以上、Cu+Ni+Sn:40質量%以下)領域のみを表しているが、図5中に『→□』で示すように、この範囲外の濃化相(Cu+Ni+Sn:40質量%超)が多く検出されている。この場合は、鋳片に表面割れが多発する。
本発明が対象とする鋼におけるCu、Ni、Sn以外の合金組成は、質量%で、C:0.09〜0.20%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.2〜2.5%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.1%である。
これは汎用の構造用材料に用いられる一般的な組成系である。しかしながら、本発明が対象とする組成系の鋼は、特にC量が0.09〜0.20質量%であり、後述するように、凝固過程に包晶反応(L+δ→γ)を伴うため、連続鋳造時における縦割れ感受性が極めて高い。従って、本発明が対象とする鋼は、鋳造時の縦割れを抑制すると同時に、Cu、Snによる粒界割れを防止することが重要となる。
以下、本発明が対象とする鋼における各合金組成の配合量の限定理由について説明する。なお、以下、合金組成の配合量の「%」は「質量%」を意味している。
C:0.09〜0.20%
Cは材料としての強度を確保するために必要な元素である。本発明が対象とする0.09〜0.20%の範囲は、構造材料として適した組成である。しかしながら、このC範囲は連続鋳造の割れ感受性の高まる領域である。なぜなら、このC範囲では液相〜固相にかけて凝固過程に包晶反応(L+δ→γ)を伴い、凝固(L→δ)と変態(δ→γ)の各収縮が重畳するため、初期凝固殻の不均一成長、粒界割れが生じやすく、特に縦割れが生じやすいからである。
Si:0.05〜1.00%
Siは脱酸に必要な元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.05%以上含有させることが必要である。しかしながら1.00%を超えて含有させると、母材の靱性が損なわれる。従って、本発明では0.05〜1.00%としている。好ましい範囲は0.10〜0.50%である。
Mn:0.20〜2.50%
Mnは、鋼強度を高めるのに必要な元素であり、この効果を得るためには0.20%以上の含有量が必要である。しかしながら、2.50%を超えて含有させると靱性が低下する。従って、本発明では0.20〜2.50%としている。好ましい範囲は0.40〜1.5%である。
P:0.05%以下
Pは、鋼中に含まれる不純物元素であり、少ない方が良い。その含有量が0.05%を超えると、溶接性を著しく低下させる。従って、本発明では0.05%以下としているが、できるだけ少ない方が良い。
S:0.02%以下
Sは、鋼中に含まれる不純物元素であり、少ない方が良い。その含有量が0.02%を超えると、腐食起点となるMnS介在物量が多くなり、耐食性を低下させる。従って、本発明では0.02%以下としているが、できるだけ少ない方が良い。
Al:0.003〜0.1%
Alは、脱酸に必要な元素であり、鋼中に不可避に存在している。その含有量が0.003%以上であると耐候性が向上するが、0.1%を超えると鋼が脆化し易くなる。従って、本発明では0.003〜0.1%としている。好ましい範囲は0.005〜0.06%である。
Sn、Cu、Niは、Feより酸化されにくい“貴な”金属であり、耐食性を向上させるために添加する元素である。また、これらの3元素は、鋼の製造過程の高温酸化雰囲気で、母相となるFeの選択酸化に伴って濃化してゆき、表層濃化組成から低融点液相が析出すると赤熱脆化の原因となる。従って、これらの組成比は、鋼の耐食性や高温脆化等の鋼特性を決定する上で極めて重要であり、本発明では、以下のように規定している。本発明が対象とする鋼では、Snを主要な添加元素としている。
Sn:0.05〜0.50%
Snは、耐食性を決定する主要元素であり、その含有量が0.05%未満では所望する耐食性が得られない。本発明では、耐食性能を得るためにSnを主要な添加元素とするので、0.05%以上のSnを添加する。しかしながら、0.50%を超えても耐食性は飽和し、また、過剰な添加は鋼の靱性を低下させる。従って、本発明では0.05〜0.50%としている。好ましい範囲は0.08〜0.30%である。
Cu:0.01〜0.20%
Cuは、耐食性を向上させる成分であるが、鉄鋼原料のスクラップ鉄に限らず、高炉溶銑中にも少なくとも0.01%のCuが不純物として不可避に含まれ、通常の精錬では除去することが困難である。一方、耐食性の向上のみを考えると、Cuの含有量は多いほど良いことになるが、鋼中にCuが過剰に存在すると、鋼材の製造過程すなわち連続鋳造や熱間圧延の際に、いわゆるCu赤熱脆化によって表面疵が発生して問題となる。また、Snを主要な耐食性向上添加元素とする場合は、Cuの添加によって耐食性をさらに向上させる効果は小さい。そこで、本発明では、上限を0.20%とした。
また、Cu,Sn共存下では、赤熱脆化が助長される。高Cuに対し、少量のSnの場合は著しい脆化を示す。従って、Feの選択酸化時の濃化相をL1(Fe,Sn)液相組成に制御して脆化を抑制するために、本発明では、Cu/Sn比を0.5以下とする。Cu/Snの下限値は、Cuを下限値(0.01%)、Snを上限値(0.50%)とすればよいので、0.02になる。
Ni:0.01〜0.20%
Niは、耐食性を向上させる効果を有し、不可避的に鋼中に0.01%以上含有される。一方、耐食性の向上のみを考えると、Niの含有量は多いほど良いことになるが、Snを主要な耐食性向上添加元素とする本発明の場合は、耐食性をさらに向上させる効果は小さい。また、Niは、赤熱脆化を抑制する効果を有しているが、Sn、Cu共存下ではNiによる脆化抑制効果は小さくなる。さらに、Niは高価な合金元素であり、多量のNi添加はコスト増大を招く。そこで、本発明では、Ni含有量の上限を0.20%とした。
また、Ni、Snが共存するとき、Ni量が多くなると図2に示すように1100℃付近で脆化の起点となる金属間化合物Ni3Sn2が析出して好ましくない。従って、本発明では、Ni−Snの金属間化合物の析出防止のため、(Cu+Ni)/Sn比を0.7以下としている。(Cu+Ni)/Snの下限値は、CuとNiを下限値(共に0.01%)、Snを上限値(0.50%)とすればよいので、0.04になる。
この組成系において縦割れを防止するには、たとえば、以下の条件で連続鋳造すれば良い。
(鋳造条件)
・溶鋼の過熱度:50℃以下
・鋳造速度:0.7〜1.2m/min
・二次冷却の鋳片重量1kg当りの比水量:2.4リットル以下
・使用するモールドフラックスの主な物性値:凝固温度1210〜1270℃、1300℃における粘度0.3〜1.0poise、塩基度(CaO/SiO2)1.5〜2.0
以下、本発明の効果を確認するために行った、実施結果について説明する。
(実施例1)
2.5tonの溶鋼を用いた垂直型連続鋳造機による試験を行った。下記表1の組成条件の溶鋼を溶解炉にて溶製し、取鍋を介してタンディッシュに注入した過熱度40〜60℃の溶鋼を、浸漬ノズルから振動する内部水冷の銅板鋳型に給湯し、0.8m/minの鋳造速度にて連続鋳造を行った。使用したモールドフラックスは、凝固温度が1235℃、1300℃における粘度は0.04Pa・s、塩基度(CaO/SiO2)は1.8である。鋳型下方では、鋳片重量1kgあたり比水量2.0リットルでスプレー冷却を行い、厚さ100mm×幅800mm×長さ3500mmのスラブ鋳片を得た。
鋳片を室温まで冷却した後、鋳片の一部を切り出して、鋳片表面割れの有無の調査と鋳片表面の濃化層の組成調査を行うとともに、熱間圧延試験用の試料を採取した。熱間圧延試験は、1100℃に加熱した後、圧下率75%の条件で行い、鋼材表面割れ発生の有無を調査し、熱間加工性を評価した。
なお、表面割れの確認方法は、鋳片縦割れの有無は肉眼による観察、鋳片および熱間圧延後の鋼片の粒界割れの有無はダイチェック(染色浸透探傷検査)により行った。結果は表2に記載した。
Figure 0005299169
Figure 0005299169
表1に示した本発明例のNo.1〜6は、表2に示すように、鋳片の縦割れ・粒界割れは全くなく、熱間圧延試験時の割れも全くなかった。また、本発明例のNo.1〜6の組成では、目標とする耐食性も十分得られた。
一方、表1に示した比較例のNo.7〜10では、表2に示すように、いずれも鋳片粒界割れが発生した。特に、No.7では、亜包晶鋼特有の縦割れも発生し、0.3%以上の高Cu含有鋼にSnが共存したときに割れ感受性が助長されていた。これら比較例では疵を手入れした後、熱間圧延試験を行ってもやはり表面疵が発生した。
また、比較例のNo.11、12では、鋳造時の縦割れや粒界割れはないものの、No.11ではSn量が過大のため鋼材の靱性が劣化を招き、No.12ではSnを含まないため、十分な耐食性が得られなかった。
(実施例2)
転炉にて脱炭精練した溶鋼250tonを取鍋に出鋼した後、真空精練を行い、その末期にSnを525kg添加し、下記表3のような溶鋼組成とした。
Figure 0005299169
取鍋溶鋼をタンディッシュに供給し、溶鋼温度を1540〜1550℃の範囲で保持しつつ、垂直曲げ型連続鋳造機にて、0.9m/minの鋳造速度で、厚さ250mm×幅2300mmの矩形断面のスラブ形状に鋳造した。
二次冷却は、鋳片重量1kgあたり比水量1.2リットルとした。このとき鋳片表面割れは皆無であり、無手入れで熱間圧延母材とした。1100℃に再加熱した後、熱間圧延を行い厚さ20mmの製品としたが、その際も表面疵の発生はなく、全く問題がなかった。
(実施例3)
転炉にて脱炭精練した溶鋼300tonを取鍋に出鋼した後、真空精練を行い、その末期にSnを330kg添加し、下記表4のような溶鋼組成とした。
Figure 0005299169
取鍋溶鋼をタンディッシュに供給し、溶鋼温度を1540〜1550℃の範囲の過熱度35℃以下で保持しつつ、垂直曲げ型連続鋳造機にて、1.0m/minの鋳造速度で、厚さ250mm×幅2300mmの矩形断面のスラブ形状に鋳造した。
二次冷却は、鋳片重量1kgあたり比水量を1.3リットルとした。このとき鋳片表面割れは皆無であり、無手入れで熱間圧延母材とした。1100℃に再加熱した後、熱間圧延を行ったが、その際も表面疵の発生はなく、全く問題なかった。
なお、前記実施例2および実施例3において使用したモールドフラックスは、凝固温度が1250℃、1300℃における粘度は0.07Pa・s、塩基度(CaO/SiO2)は1.7であった。
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.09〜0.20%、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.1%、Sn:0.05〜0.50%、Cu:0.01〜0.20%、Ni:0.01〜0.20%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる耐食性厚板用の低合金鋼を、
    質量%の成分比、Cu/Snの値を0.02以上、0.5以下、および、(Cu+Ni)/Snの値を0.04以上、0.7以下として鋳造することを特徴とする耐食性厚板用低合金鋼の連続鋳造方法。
  2. 連続鋳造中または連続鋳造直後の高温状態での大気による酸化によって生成した、鋳片表層部のSn、CuおよびNiが濃化する、母相であるFeと異相の組成が、少なくとも30質量%以上のFeを含有することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造方法を用いて鋳造された連続鋳造鋳片。
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