JP2007090976A - タイヤデフレクタ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性の確保との両立を図ることができ、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れて、ホイール内への冷却風増加を図ることができるタイヤデフレクタ装置の提供を目的とする。
【解決手段】ブレーキ装置を含む左右の前輪1と、前輪1を転舵可能に収容するホイールハウス2を備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置であって、デフレクタ23は板状に形成されると共に、ホイールハウス2直前の床面18において下方に突出し、かつ車両正面視で少なくともタイヤ中心線L1とホイールハウス2の車内側端部2aとの間にわたって車幅方向に延存して設けられ、デフレクタ23には正面視でタイヤ内縁端部4Sとオーバラップして、タイヤ4よりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部28が形成されたことを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

この発明は、ブレーキ装置を含む左右の前輪と、これら左右の前輪を転舵可能に収容するホイールハウスを備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置に関する。
一般に、前輪を収容するホイールハウスは該前輪の転舵代を見込んで奥行き空間が大きい形状に形成されており、車両走行時には車体底面のアンダガードからホイールハウスに走行風が流入し、ホイールハウスに流入した走行風はその車体側面から流出するが、この車体側面から流出する空気によって渦が形成され、この渦が車両全体の空気の流れを乱す要因となって、車両全体の空気抗力係数(Cd値)が悪化する。
このような問題点を解決するために、タイヤデフレクタを設け、このタイヤデフレクタによりホイールハウスへの空気流入量を低減させると、ホイールハウスから車体側面に流れ出る空気量が減少するので、車体側面部の流れの乱れが小さくなって、車両全体としてのCd値の改善を図り得ることが知られている。
一方で、上述のタイヤデフレクタを設けることにより、ホイールハウスへの空気流入量が減少し、これに起因して、前輪制動用のブレーキ装置の走行風による冷却性が悪化するので、タイヤデフレクタの上に、さらに、ブレーキ導風用の開口部を設けてブレーキ冷却性能を確保する工夫が成されている(特許文献1,2参照)。
特許文献1には、図17に示すように、ブレーキ装置としてのディスクブレーキのキャリパ81を備えた前輪82の前方において、フロントアンダガード83に車幅方向に延びるタイヤデフレクタ84を設けると共に、上述のキャリパ81に走行風を導くために、タイヤデフレクタ84の上方に、下方以外の三方が囲まれたガイド溝85を形成し、このガイド溝85の後端に開口部86を開口形成したものが開示されている。
この特許文献1に開示された従来構造は、タイヤデフレクタ84によりホイールハウスへの空気流入量低減と、ガイド溝85および開口部86によるブレーキ冷却性との両立を目的とするものであるが、上述のタイヤデフレクタ84で絞ったホイールハウス内への空気流入量がガイド溝85および開口部86により再び増大する弊害があり、Cd値が悪化する問題点があった。
加えて、上述のガイド溝85および開口部86は前輪82のタイヤ幅よりも車両中心側に設けられると共に、フロントアンダガード83に凹設加工して形成されているので、各要素85,86をこのフロントアンダガード83に対して別途加工する必要があった。
特許文献2には、図18に示すようにエンジンルームの底部を覆うフロントアンダガード91を設け、このフロントアンダガード91の左右の前輪92,92と対向する部分には、車両方向に延びるタイヤデフレクタ93,93(気流偏向板)を一体的に設けると共に、これらタイヤデフレクタ93,93の直前部には側壁94と、傾斜部95と、開口部96とを備えたブレーキ導風部97を備えた構造が開示されている。
しかし、この特許文献2に開示された従来構造においても、上述のタイヤデフレクタ93で絞ったホイールハウス内への空気流入量がブレーキ導風部97により再び増大し、特に、上述の開口部96は前輪92のタイヤ側よりも大きく、ホイールハウスの車幅方向の略全域にわたって開口形成されている関係上、ホイールハウス内への空気流入量が過大となって、Cd値が悪化するという問題点があった。
特許第3608965号公報 特開2002−362429号公報
そこで、本発明者等は、空気流を把握するために、スモークを使った風洞実験等を行なった結果、回転する前輪の内縁部に沿って上昇し、かつ前輪の内縁を回り込んでホイール内に流れ込む空気流(以下、タイヤ巻き込み効果と略記する)を把握した。つまりタイヤデフレクタの前輪内縁部とオーバラップする位置に比較的小さい開口部を設けると、従来構造のようにブレーキ装置に向けたガイド溝を設定して、ホイールハウス内への空気流入量を増大させることなく、能動的に走行風がホイール内に向うことを把握した。
そこで、この発明は、上記知見に基づいて、ホイールハウス直前の床面において下方に突出する板状のデフレクタを設け、このデフレクタが車両正面視で少なくともタイヤ中心線とホイールハウスの車内側端部との間にわたって車幅方向に延びるように設けられ、かつ該デフレクタには正面視でタイヤ内縁端部とオーバラップして、該タイヤよりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部を形成することで、空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性の確保との両立を図ることができ、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れて、ホイール内への冷却風増加を図ることができるタイヤデフレクタ装置の提供を目的とする。
この発明によるタイヤデフレクタ装置は、ブレーキ装置を含む左右の前輪と、前輪を転舵可能に収容するホイールハウスを備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置であって、デフレクタは板状に形成されると共に、ホイールハウス直前の床面において下方に突出し、かつ車両正面視で少なくともタイヤ中心線とホイールハウスの車内側端部との間にわたって車幅方向に延存して設けられ、上記デフレクタには正面視でタイヤ内縁端部とオーバラップして、該タイヤよりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部が形成されたものである。
上記構成によれば、正面視でタイヤの内縁部とオーバラップする位置において上記デフレクタに上述の開口部を形成したので、走行風は回転するタイヤの内縁部に沿って上昇し、かつタイヤ内縁を回り込んでホイール内に流れるので、空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性確保との両立を図ることができ、特に、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れて、ホイール内への冷却風増加を図り、開口部からの走行風が少量であっても、これを適切にブレーキ装置に案内して、ブレーキ装置を冷却することができる。
この発明の一実施態様においては、上記開口部を、ホイールハウス前方の車体下面部を覆うアンダガードより下方において上記板状のデフレクタに一体形成したものである。
上述の開口部はデフレクタの上端部に開口形成することが望ましい。
上記構成によれば、アンダガードに従来構造の如きブレーキ導風部を一切加工する必要がなく、デフレクタそれ自体に上記開口部を形成するとよい。また板状のデフレクタという従来技術に対して低い位置への開口部形成であっても、タイヤ内縁に沿う流れにより、ホイール内に冷却風を導入することができる。
この発明の一実施態様においては、上記開口部は横長形状の孔部に設定されたものである。
上記構成によれば、デフレクタに設けた開口部により、ホイールハウス内への過大な流量増大を招くことなく、タイヤの内縁部に沿って上昇しつつ、かつタイヤ内縁部を回り込んでホイール内に入る流れを形成することができ、しかも、開口部を横長形状の孔部に設定したので、この孔部を通過した流れは横長となって、タイヤの内縁部を回り込みやすく、ホイール内部の上下全体にわたって風が行き渡るため、ホイールハウスから流出する層状の流れ(2次元状の流れ)が形成され、車体側面部の流れの乱れを小さくすることができる。
この発明の一実施態様においては、上記デフレクタはアンダガードに対して取外し可能に固定されたものである。
上記構成によれば、車種やグレードの差異によりタイヤ幅が異なるが、これに対応してデフレクタを簡単に取替えることができ、汎用性の拡大を図ることができる。
この発明の一実施態様においては、上記デフレクタは、デフレクタ主体部とデフレクタ取付け部とを断面L字状に形成すると共に、デフレクタ主体部とデフレクタ取付け部との間には補強リブが設けられたものである。
上記構成によれば、デフレクタの取付け性確保と、デフレクタの剛性確保との両立を図ることができる。
この発明によれば、ホイールハウス直前の床面において下方に突出する板状のデフレクタを設け、このデフレクタが車両正面視で少なくともタイヤ中心線とホイールハウスの車内側端部との間にわたって車幅方向に延びるように設けられ、かつ該デフレクタには正面視でタイヤ内縁端部とオーバラップして、該タイヤよりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部を形成したので、空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性の確保との両立を図ることができ、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れて、ホイール内への冷却風増加を図ることができる効果がある。
空気抗力係数の改善と、ブレーキ冷却性の確保との両立を図るという目的を、ブレーキ装置を含む左右の前輪と、前輪を転舵可能に収容するホイールハウスを備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置において、デフレクタは板状に形成されると共に、ホイールハウス直前の床面において下方に突出し、かつ車両正面視で少なくともタイヤ中心線とホイールハウスの車内側端部との間にわたって車幅方向に延存して設けられ、デフレクタには正面視でタイヤ内縁端部とオーバラップして、タイヤよりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部を形成するという構成にて実現した。
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1はタイヤデフレクタ装置を備えた車両の側面図、図2は図1の要部の底面図であって、図1、図2において左右の前輪1,1はホイールハウス2,2内に転舵可能に収容されている。
上述の前輪1は図2〜図4に示すように、ディスクホイール3と、タイヤ4と、ブレーキ装置としてのディスクブレーキのキャリパ5およびディスクブレーキロータ6とを備え、ナックルアーム7を介して転舵されるように構成している。ここで、上述のキャリパ5はステアリングナックルに支持されており、ディスクブレーキロータ6に対して鞍状にまたがって配設されている。
また上述の前輪1は図2に示すように、ロアアーム8を含むフロントサスペンション(例えばダブルウィッシュボーン形式のサスペンション)により左右独立して懸架されており、ロアアーム8の揺動支点部は同図に示すようにラバーブッシュ9およびブラケット10を介してフロントサスペンションメンバとしてのぺリメータフレーム11に枢支されている。
このペリメータフレーム11は車両の前後方向に延びる左右一対のペリメータフレーム側辺部12,12と、前部において車幅方向に延びるペリメータフレーム前辺部13と、後部において車幅方向に延びるペリメータフレーム後辺部14とを枠形状に組合わせたもので、上述のロアアーム8の揺動支点部は、ペリメータフレーム後辺部14の後端部と対応する部位のペリメータフレーム側辺部に対して上述のラバーブッシュ9およびブラケット10を介して支持されている。ここで、上述のペリメータフレーム11としてはサスペンション剛性を高めるためにハイドロフォーム成形品を採用してもよい。
一方、上述の前輪1を転舵可能に収容するホイールハウス2は、図3に示すように、前輪1の転舵代を見込んだ奥行き空間を有するように形成されている。また該ホイールハウス2の所定部にはサスタワー部15が一体または一体的に形成されている。
このホイールハウス2の車外側にはフロントフェンダダッシュパネル16が接合される一方、ホイールハウス2の下部車内側には、エンジンルームサイド部を車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのフロントサイドフレーム17(フロントフレーム)が接合されている。
上述のフロントサイドフレーム17の下部にはラバーマウントRM(ボディ結合部ブッシュ)を介して上述のペリメータフレーム側辺部12が支持されている。
ところで、上述のエンジンルームの下部は、図2に示すようにフロントアンダガード18によって覆われている。この実施例では、フロントアンダガード18は、アンダガード前部19と、アンダガード中央部20と、左右のアンダガードサイド部21,21とに4分割されている。
アンダガード前部19は、フロントバンパ22とペリメータフレーム前辺部13との車幅方向中央部の相互間を覆い、アンダガードサイド部21は、フロントバンパ22のサイド部とペリメータフレーム11の前側コーナ部とホイールハウス2の前辺部との間を覆い、アンダガード中央部20はペリメータフレーム前辺部13とペリメータフレーム後辺部14と左右一対のペリメータフレーム側辺部12,12とで囲繞された部分を覆い、このアンダガード中央部20周辺部は、図示しない係止部材にて、ペリメータフレーム11に係止、固定されている。
ここで、上述のアンダガードサイド部21にはホイールハウス内張りとしてのスプラッシュシールドを一体形成してもよい。
上述の左右の各ホイールハウス2,2直前の床面としてのアンダガードサイド部21,21には板状のデフレクタ23,23を設けている。
左右のデフレクタ23,23は左右対称に構成されるが、図5には左側の前輪1に対応して左側のデフレクタ23を下方から仰視した斜視図を示している。
図4に平面図で、図5に斜視図でそれぞれ示すように、このデフレクタ23は、ホイールハウス2の前辺部とホイールハウス2の前部かつ車内側のアール形状のコーナ部とに沿う構造のデフレクタ主体部24と、デフレクタ23をアンダガードサイド部21に取外し可能に取付けるためのデフレクタ取付け部25とを、断面L字状に一体または一体的に形成したもので、このデフレクタ23を合成樹脂で構成する場合には、図5、図6に示すように、デフレクタ主体部24とデフレクタ取付け部25との間には複数の補強リブ26を一体形成して、デフレクタ23の剛性を確保する。
また、上述のデフレクタ取付け部25には複数の取付け孔27を形成し、ボルト、ナットなどの取付け部材(図示せず)を用いて、デフレクタ23をアンダガードサイド部21に着脱可能に取付け、取付けた状態のデフレクタ23が図1、図3に示す如く、アンダガードサイド部21から下方に突出するように構成する。
図3に正面図で示すように、このデフレクタ23は車両正面視で少なくともタイヤ中心線L1とホイールハウス2の車内側端部2aとの間にわたって車幅方向に延びるように設けられている。
しかも、デフレクタ23のデフレクタ主体部24には開口部28を形成するが、図3に正面図で示すように、この開口部28は正面視でタイヤ内縁端部としてのショルダ部4Sとオーバラップして、該タイヤ4よりも車幅方向中心寄りに所定幅に開口形成されたものである。
図7にデフレクタ主体部24の正面図を示すように、該デフレクタ主体部24の車外側端部の上下高さをHとする時、開口部28の上下幅Wは0.3〜0.4Hに、開口部28の車幅方向の長さLEは1.3〜1.6Hに設定することが望ましく、該開口部28は図3、図5、図7に示すように横長形状の孔部(貫通孔)に設定されている。なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。また、図中、30はフロントドア、31はボンネット、32はフロントウィンドガラスである。
次に、この実施例のタイヤデフレクタ装置を備えた車両A(図1、図3参照)と、図8、図9に示すデフレクタが存在しない従来例の車両Bと、図10、図11に示すように開口部28が全く存在しないデフレクタ23を取付けた比較例の車両Cと、図12、図13に示すようにタイヤ4のショルダ部4Sと一切オーバラップしないようホイールハウス2の車内側端部2a寄りに横長形状の開口部28を形成した比較例の車両Dとに対して、スモークを使った風洞実験を行なった結果について以下に詳述する。但し、説明の便宜上、図8〜図13においても図1、図3と同一の部分には同一符号を付している。
ここで、上記風洞実験は車両A,B,C,Dの前方から擬似走行風と共にスモーク(いわゆる煙)を所定時間供給し、所定時間経過後にスモークの供給を停止し、ディスクホイール3内のスモークが擬似走行風により完全に掃気されるまでに要する時間を計測した。
この実施例のタイヤデフレクタ装置を備えた車両Aは、図1、図3、図4に示すように、デフレクタ23の開口部28からホイールハウス2内に入った走行風(スモーク)は、タイヤ4のショルダ部4Sに当って、タイヤ4に沿って上昇し、かつ平面図で示す図4に矢印で示す如くタイヤ4の車内側の内縁を回り込んでディスクホイール3内に流れ込み、車外側から流出する。
ディスクホイール3内に充満したスモークは均一に薄くなり、このディスクホイール3内のスモークが完全に掃気されるまでの時間は約2.0秒であった。
またディスクホイール3を通じてホイールハウス2から流出する走行風の風速分布aは図3に示すように層状(2次元状)の特性となり、つまり、ディスクホイール3内部の上下全体にわたって風が行き渡り、これが層状に薄く車体側面に流れ出すので、これにより車体側面部の流れの乱れが小さくなることが明らかとなった。
一方、デフレクタが存在しない従来例の車両Bは、図8、図9に示すように、タイヤ4に当った走行風(スモーク)は四方八方に向きを変える。タイヤ4のショルダ部4S近傍に当った走行風(スモーク)は、ホイールハウス2内をタイヤ4に沿って上昇しながらタイヤ4の車内側の内縁からディスクホイール3内に流れ込み、車外側から流出する。
この従来例の車両Bにおいては、全体的にホイールハウス2への流入空気量(いわゆる風量)が過大となり、ディスクホイール3内に充満したスモークは均一に薄くなり、このディスクホイール3内のスモークが完全に掃気されるまでの時間は約1.5秒であった。
またホイールハウス2から流出する走行風の風速分布bは図9に示すように3次元状の特性となり、車体側面部の流れの乱れが大となる。
開口部28のないデフレクタ23を取付けた比較例の車両Cは、図10、図11に示すように、上述のデフレクタ23によりタイヤ4に当った走行風(スモーク)はタイヤ4の下域側へ移動し、ホイールハウス2内の上部に流入する走行風は大幅に減少する(つまりブレーキ冷却効果が大幅に低減する)。このため、ディスクホイール3内に流れ込む走行風は少なく、ディスクホイール3内のスモークが完全に掃気されるまでの時間は約3.0秒であった。
また、ディスクホイール3を通じてホイールハウス2から流出する走行風の圧力分布cは図11に示すように3次元状の特性となり、つまり、断面略山形の分布となり、この中央部から走行風が勢いよく車体側面に流れ出すので、車体側面部の流れの乱れが大となる。
さらに開口部28の形成位置を内寄りに設定した比較例の車両Dは、図12、図13に示すように、デフレクタ23の開口部28からホイールハウス2内に流入した走行風(スモーク)は後方に向けて略直進し、ロアアーム8(図2参照)などと干渉しつつディスクホイール3内を通って車外側へ流出する。
ディスクホイール3内に充満したスモークは、そのディスクホイール3の下域部のものは約1.5秒で素早く掃気される一方で、ディスクホイール3の上域部では走行風の流れが少ない関係上、このディスクホイール3の上域部のスモークが完全に掃気されるまでの時間は約3.0秒であった。
またホイールハウス2から流出する走行風の風速分布dは図13に示すように、タイヤ4の下方域にシフトした3次元状の特性となった。つまり、ホイールハウス2から流出する走行風の風速分布dは上下でアンバランスとなって上述の如き3次元状の特性となるため、車体側面部の流れの乱れが大となる。
以上要するに、実施例の車両A(図1、図3、図4参照)、従来例の車両B(図8、図9参照)、比較例の車両C(図10、図11参照)、比較例の車両D(図12、図13参照)に対するスモークを使った風洞実験の結果、この実施例のタイヤデフレクタ装置を備えた車両Aにおいては、空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性の確保とが最も優れており、特に、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れるため、開口部28から流入する走行風だけで充分なブレーキ冷却効果が得られることが明らかとなった。
このように、図1〜図7で示した実施例のタイヤデフレクタ装置は、ブレーキ装置(キャリパ5、ディスクブレーキロータ6参照)を含む左右の前輪1と、前輪1を転舵可能に収容するホイールハウス2を備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置であって、デフレクタ23は板状に形成されると共に、ホイールハウス22直前の床面(フロントアンダガード18参照)において下方に突出し、かつ車両正面視(図3参照)で少なくともタイヤ4中心線L1とホイールハウス2の車内側端部2aとの間にわたって車幅方向に延存して設けられ、上記デフレクタ23には正面視でタイヤ内縁端部(ショルダ部4S参照)とオーバラップして、該タイヤ4よりも車幅方向中心寄りに所定幅LE(図7参照)の開口部28が形成されたものである。
この構成によれば、正面視でタイヤ4の内縁部(ショルダ部4S)とオーバラップする位置において上記デフレクタ23に上述の如き開口部28を形成したので、走行風は回転するタイヤ4の内縁部(ショルダ部4S)に沿って上昇し、かつタイヤ内縁を回り込んでディスクホイール3内に流れるので、空気抗力係数(Cd値)の改善と、ブレーキ冷却性確保との両立を図ることができ、特に、タイヤ巻き込み効果が顕著に現れて、ディスクホイール3内への冷却風増加を図ることができ、開口部28からの走行風をディスクブレーキ(ブレーキ装置)に案内して、該ディスクブレーキを適切に冷却することができる。
また、上記開口部28を、ホイールハウス2前方の車体下面部を覆うフロントアンダガード18より下方において上記板状のデフレクタ23に一体形成したものである。
この構成によれば、フロントアンダガード18に従来構造の如きブレーキ導風部を一切加工する必要がなく、デフレクタ23それ自体に上記開口部28を形成するとよい。また板状のデフレクタ23という従来技術に対して低い位置への開口部28形成であっても、タイヤ内縁に沿う流れにより、ディスクホイール3内に冷却風を導入することができる。
さらに、上記開口部28は横長形状の孔部に設定されたものである。
この構成によれば、デフレクタ23に設けた開口部28により、ホイールハウス2内への過大な流量増大を招くことなく、タイヤの内縁部に沿って上昇しつつ、かつタイヤ内縁部を回り込んで、ディスクホイール3内に入る流れを形成することができ、しかも、この孔部を通過した流れは横長となって、タイヤの内縁部を回り込みやすく、ホイール内部の上下全体にわたって風が行き渡るため、ホイールハウス2から流出する層状の流れ(2次元状の流れ)が形成され、車体側面部の流れの乱れを小さくすることができる。
加えて、上記デフレクタ23はフロントアンダガード18に対して取外し可能に固定されたものである。
この構成によれば、車種やグレードの差異によりタイヤ幅が異なるが、これに対応してデフレクタ23を簡単に取替えることができ、汎用性の拡大を図ることができる。
また、上記デフレクタ23は、デフレクタ主体部24とデフレクタ取付け部25とを断面L字状に一体形成すると共に、デフレクタ主体部24とデフレクタ取付け部25との間には補強リブ26が設けられたものである。
この構成によれば、デフレクタ23の取付け性確保と、デフレクタ23の剛性確保との両立を図ることができる。
図14はタイヤデフレクタ装置の他の実施例を示し、フロントアンダガード18におけるアンダガードサイド部21においてデフレクタ23を取付ける部位に段差部が形成されたものにあっては、デフレクタ23におけるデフレクタ主体部24の上端部とデフレクタ取付け部とを、この段差部に沿う形状に構成するとよい。
図14に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同様であるから、図14において図3と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
図15はデフレクタ23の他の実施例を示し、図6で示した先の実施例においては、デフレクタ主体部24とデフレクタ取付け部25と補強リブ26とを合成樹脂により一体形成したが、図15に示すこの実施例においては、デフレクタ主体部24を合成樹脂で形成する一方、デフレクタ取付け部25はアルミニウムまたはアルミ合金などの軽金属、軽合金などの2枚の金属板25A,25Bで構成し、これら2枚の金属板25A,25Bの折曲げ部25a,25b間で、デフレクタ主体部24の上端部を強固に挟持したものである。
このように構成すると、デフレクタ23の剛性、特にデフレクタ主体部24の上端部(いわゆる根元部)の剛性向上を図ることができる。なお、図15に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図15において図6と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
図16はデフレクタ23のさらに他の実施例を示し、折曲げ部25cにインサート用の複数の開口29(但し、図16では1つの開口29のみを示す)を形成したアルミニウムなどの軽金属またはアルミ合金などの軽金属の金属板25Cを設け、この金属板25Cを合成樹脂製のデフレクタ主体部24の上端部にインサート成形手段にて一体的に埋込み連結したものである。
このように構成しても、先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図16において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、デフレクタ23の全体をアルミニウム、アルミ合金などの軽金属、軽合金にて構成し、デフレクタ23の軽量化を剛性確保との両立を図るように成してもよいことは勿論である。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のブレーキ装置は、実施例のディスクブレーキのキャリパ5とディスクブレーキロータ6を含む装置に対応し、
以下同様に、
タイヤ内縁端部は、ショルダ部4Sに対応し、
アンダガードは、4分割構造のフロントアンダガード18に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
本発明のタイヤデフレクタ装置を備えた車両の側面図 図1の要部の底面図 タイヤとデフレクタとの関連構造を示す正面図 タイヤ巻き込み効果を示す平面図 デフレクタを下方から見上げた状態で示す斜視図 図5のX−X線矢視断面図 デフレクタ主体部の正面図 デフレクタを有さない従来構造の車両を示す側面図 図8の従来車両の風洞実験結果を示す正面図 開口部がないデフレクタを取付けた比較例の車両を示す側面図 図10の比較例車両の風洞実験結果を示す正面図 開口部を内寄りに形成したデフレクタを取付けて成る比較例の車両の側面図 図12の比較例車両の風洞実験結果を示す正面図 タイヤデフレクタ装置の他の実施例を示す正面図 デフレクタの他の実施例を示す断面図 デフレクタのさらに他の実施例を示す断面図 従来構造を示す側面図 従来構造を示す斜視図
符号の説明
1…前輪
2…ホイールハウス
2a…車内側端部
4…タイヤ
4S…ショルダ部(タイヤ内縁端部)
5…キャリパ(ブレーキ装置)
6…ディスクブレーキロータ(ブレーキ装置)
18…フロントアンダガード(アンダガード)
23…デフレクタ
24…デフレクタ主体部
25…デフレクタ取付け部
26…補強リブ
28…開口部
L1…タイヤ中心線

Claims (5)

  1. ブレーキ装置を含む左右の前輪と、前輪を転舵可能に収容するホイールハウスを備えた車体前部のタイヤデフレクタ装置であって、
    デフレクタは板状に形成されると共に、ホイールハウス直前の床面において下方に突出し、
    かつ車両正面視で少なくともタイヤ中心線とホイールハウスの車内側端部との間にわたって車幅方向に延存して設けられ、
    上記デフレクタには正面視でタイヤ内縁端部とオーバラップして、該タイヤよりも車幅方向中心寄りに所定幅の開口部が形成された
    タイヤデフレクタ装置。
  2. 上記開口部を、ホイールハウス前方の車体下面部を覆うアンダガードより下方において上記板状のデフレクタに一体形成した
    請求項1記載のタイヤデフレクタ装置。
  3. 上記開口部は横長形状の孔部に設定された
    請求項1または2記載のタイヤデフレクタ装置。
  4. 上記デフレクタはアンダガードに対して取外し可能に固定された
    請求項3記載のタイヤデフレクタ装置。
  5. 上記デフレクタは、デフレクタ主体部とデフレクタ取付け部とを断面L字状に形成すると共に、デフレクタ主体部とデフレクタ取付け部との間には補強リブが設けられた
    請求項4記載のタイヤデフレクタ装置。
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