本発明の一実施形態に係る刷版供給装置について説明する。なお、図1は当該刷版供給装置を備えた画像記録システムを模式的に示した側面概要図である。
図1において、当該刷版供給装置を備えた画像記録システムは、カセット2内に積載された刷版Pを取り出して搬送する刷版供給装置1、刷版供給装置1が搬送した刷版Pを画像記録装置8に供給し、記録された刷版Pを収納する給排トレー部7、刷版Pに画像を記録するための画像記録装置8、および画像記録装置8で記録された刷版を現像する刷版現像装置(図示せず)を備えている。
カセット2に積載される刷版Pは、例えば、PS(Presensitized Plate)版であり、支持層と画像記録層とから構成される。上記カセット2への収納の際には、刷版供給装置1の外部で刷版Pを複数枚積載され、刷版Pの画像記録層を下面にして行われる。また、カセット2への供給は、当該カセット内に複数枚の刷版Pが積載され、刷版間の摩擦を防止するための合紙は積載されない。これにより、刷版供給装置1には、合紙を取り除く機構が不要である。また、カセット2に積載される刷版Pは、そのサイズが変更されてもカセット2に対してその上端が予め設定された位置に配置されるように収納される。これは、カセット2に設けられた刷版Pの下端を支持する部材の位置を、収納される刷版Pのサイズに応じて予め調整することによって行われる。なお、カセット2は、カセット台車21(図2参照)によって刷版供給装置1に対して着脱される。
刷版供給装置1は、刷版Pを画像記録装置8に向けて搬送する場合、図1に示す刷版供給位置に配置されたカセット2に積載されている刷版Pを用いる。刷版供給装置1は、後述する吸着パッドが設けられたパッドロッドを有する刷版搬送機構3と、刷版搬送機構3を図示左右方向(以下、左方向を直動方向と記載し、右方向を反直動方向と記載する)に移動させる直動駆動機構4と、刷版搬送機構3によって搬送された刷版Pを給排トレー部7に送り出す一対の搬送ローラ51および52と、搬送中の刷版や刷版搬送機構3を案内する案内部6と、後述する刷版搬送機構3が有する回動機構の制御を行う刷版供給装置制御部11とを備えている。なお、搬送ローラ51は刷版供給装置1の筐体に設けられ、搬送ローラ52は刷版搬送機構3に設けられる。上記刷版供給位置に配置されたカセット2に積載されている刷版Pは、刷版搬送機構3の吸着パッドによって支持層側が吸着保持され、その状態でパッドロッドが回動しながら上記直動方向に移動することによって表裏を反転された後、図1に示すように刷版Pの先端部を搬送ローラ51の下方に向けて搬送される。そして、刷版搬送機構3が所定位置まで移動した際、搬送ローラ51が下降して当該搬送ローラ51と搬送ローラ52との間に刷版Pを挟む。そして、搬送ローラ51および52が回転することによって、刷版Pが支持層を下面としてガイド板55に沿って給排トレー部7の給版トレー71に搬送される。
画像記録装置8は、円筒状の記録ドラム81、記録ヘッド82、および画像記録装置制御部83を備えている。記録ドラム81は、その外周部に刷版Pを装着するためのものである。この記録ドラム81は、図示しないモータの駆動によりその円筒軸を中心に回転する。記録ヘッド82は、記録ドラム81の外周部に装着された刷版Pに画像を記録するためのものである。この記録ヘッド82は、そこに配設された多数の発光素子から画像信号等に対応して変調された光ビームを照射する構成を有している。画像記録装置制御部83は、画像記録装置8および刷版供給装置1が有する各機構に対する動作制御を行う。画像記録装置制御部83は、各機構の他に刷版供給装置制御部11に対しても所定のデータ伝送路を介してデータ送信が可能に構成される。なお、上述した刷版供給装置制御部11および画像記録装置制御部83を、一体的に画像記録装置8あるいは刷版供給装置1に設けてもかまわない。なお、これらの動作の詳細については後述する。
給版トレー71に載置された刷版Pは、画像記録装置8に設けられた記録ドラム81に搬送される。そして、刷版Pは、画像記録層を外側にして記録ドラム81の外周部に装着され、その円筒軸を中心に回転しながら、記録ヘッド82によって画像記録層に画像信号等に対応して変調された光ビームが照射される。その後、画像の記録が完了した刷版Pは、排版トレー72に排出される。
次に、図2および図3を参照して、刷版の供給位置に配置されたカセット2内からガイド板55に向けて刷版Pを搬送する刷版搬送機構3および直動駆動機構4の略構成および搬送動作について説明する。なお、図2は刷版供給装置1の側面方向から見た刷版搬送機構3および直動駆動機構4の概略的な動作を示す側面概要図であり、図3(a)は刷版搬送機構3および直動駆動機構4のみの概略的な構成を示す平面概要図であり、図3(b)はその側面概要図である。なお、刷版搬送機構3および直動駆動機構4は、1対の構成を有している部位がある。以下の刷版搬送機構3および直動駆動機構4の説明では、1対の一方(図2の紙面の手前側)を構成する部位の参照符号に「a」を付し、1対の他方を構成する部位の参照符号に「b」を付して説明する。また、上記1対のそれぞれの構成あるいは動作が共通であり総称して説明する場合は、「a」および「b」を省略して記載する。
図2および図3において、直動駆動機構4は、リニアシャフト41と、同期ベルト42および48と、駆動プーリ43、44、46、および47と、直動駆動モータ45と、駆動伝達軸49とを備えている。そして、刷版搬送機構3は、吸着パッド31と、スポンジカラー32と、支持部33と、直動ベース34と、連結ステー346と、パッド回転駆動モータ35と、駆動プーリ351、353、522、および524と、同期ベルト352と、パッド回転軸372と、搬送ローラ52と、搬送ローラ回転駆動モータ521と、ベルト523とを備えている。
上記カセット台車21を刷版供給装置1の外部から図示X方向に移動することによって、刷版供給位置(図2に示す位置)にカセット2が配置される。なお、上述したように、カセット2に積載された刷版Pは、刷版サイズが異なる場合もその上端位置が固定された位置になるように収納されている。そのカセット2から搬送ローラ51および52に向けて刷版Pを搬送するための刷版搬送機構3は、直動駆動モータ45の駆動により回動する無端状の同期ベルト42aおよび42bの駆動を受け、それぞれ紙面左右方向に向けて平行に配設されたリニアシャフト41aおよび41bに沿って走行する一対の直動ベース34aおよび34bを備える。同期ベルト42aおよび42bは、それぞれ2つの駆動プーリ43a、44aおよび43b、44bによって回動可能に掛け渡され、直動駆動モータ45の駆動力は、同期ベルト48を介して駆動プーリ43aおよび43bを回転させることによって伝達される。同期ベルト48は、駆動プーリ46および47によって回動可能に掛け渡され、一方の駆動プーリ46が直動駆動モータ45の出力軸に固設される。駆動プーリ47、43a、および43bは、共通の駆動伝達軸49に固設され、直動駆動モータ45の駆動によってその回転方向に同一位相で回転する。また、直動ベース34aおよび34bには、それぞれ後述する連結部が固設されており、これら連結部が同期ベルト42aおよび42bを挟持することによって同期ベルト42aおよび42bからの駆動を受ける。
一対の直動ベース34aおよび34bは、連結ステー346によって互いの位置が固定的に連結されている。パッド回転駆動モータ35は、直動ベース34bに設けられており、その回転軸に駆動プーリ351が固設されている。一対の直動ベース34aおよび34bには、パッド回転軸372aおよび372bが同軸上に回動可能に付設され、パッド回転軸372bには駆動プーリ353が固設されている。そして、同期ベルト352が駆動プーリ351および353によって回動可能に掛け渡され、パッド回転駆動モータ35の駆動によって、駆動プーリ351および353がパッド回転駆動モータ35の回転方向に同一位相で回転する。つまり、パッド回転駆動モータ35の駆動によって、パッド回転駆動モータ35の回転方向に同一位相でパッド回転軸372aおよび372bが回転する。そして、パッド回転軸372aおよび372bは、複数の吸着パッド31、搬送ローラ52、搬送ローラ回転駆動モータ521、駆動プーリ522、ベルト523、駆動プーリ524、および複数のスポンジカラー32が付設された支持部33の両端部に固設されている。
このような刷版搬送機構3および直動駆動機構4の構成によって、刷版搬送機構3は、直動駆動モータ45の回転に応じてリニアシャフト41に沿って上記直動および反直動方向に移動することが可能となる。また、刷版搬送機構3が有する支持部33は、パッド回転駆動モータ35の回転に応じて一対の直動ベース34aおよび34bを結ぶ軸(パッド回転軸372aおよび372b)を中心に回転することが可能となる。つまり、支持部33は、上記直動および反直動方向の移動とは独立して図2紙面の時計方向あるいは反時計方向(以下、反時計方向を搬送回転方向と記載する)に回動することができる。したがって、支持部33に付設された複数の吸着パッド31、搬送ローラ52、および複数のスポンジカラー32等も同様な直動および反直動方向の移動および上記回転が可能となる。
このような構成を有する刷版搬送機構3および直動駆動機構4においては、カセット2に積載された刷版Pの支持層側の一方の端部近傍を吸着パッド31が吸着保持する場合(図2に示す状態A)、積載された刷版Pに対して吸着パッド31が垂直になるように支持部33の回動角度を制御し、刷版搬送機構3全体を上記反直動方向に移動させる。そして、直動駆動モータ45の駆動により直動ベース34を状態Aから上記直動方向に移動させながら、その直動方向位置に応じて所定の回転角度で支持部33を上記搬送回転方向に回転させ、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置されたとき、当該搬送ローラ51を下降させる。これによって、刷版Pが搬送ローラ51および52に挟持される(図2に示す状態B)。この状態Bにおける刷版搬送機構3は、支持部33が直立状態(吸着パッド31の吸着面が上方向に向いた状態)に制御される。そして、状態Bにおいて搬送される刷版Pは、吸着パッド31と、搬送ローラ51および搬送ローラ52と、スポンジカラー32と、案内部6とによって支持される。なお、これら刷版Pの支持方法の詳細な説明は、後述する。
搬送ローラ回転駆動モータ521は、支持部33に設けられており、その回転軸に駆動プーリ522が固設されている。また、搬送ローラ52の回転軸には駆動プーリ524が固設されている。そして、ベルト523が駆動プーリ522および524によって回動可能に掛け渡され、搬送ローラ回転駆動モータ521の駆動によって、駆動プーリ522および524が搬送ローラ回転駆動モータ521の回転方向に同一位相で回転する。つまり、搬送ローラ回転駆動モータ521の駆動によって、搬送ローラ回転駆動モータ521の回転方向に同一位相で搬送ローラ52が回転する。
次に、図4〜図6を参照して、刷版搬送機構3の詳細な構造について説明する。なお、図4は、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置されていない状態を示す刷版搬送機構3の斜視図である。図5は、図4に示した状態の刷版搬送機構3を後方から見た斜視図である。図6は、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置された状態を示す刷版搬送機構3の斜視図である。なお、図4〜図6に示す刷版搬送機構3は、支持部33(すなわち、パッドロッド331aおよび331b)が直立して吸着パッド31の吸着面が上方向に向いた状態を示している。また、図4〜図6においては、刷版搬送機構3との位置関係を説明するために、刷版供給装置1の筐体側に設けられた搬送ローラ51およびガイド板55を示している。
図4〜図6において、直動ベース34aおよび34bは、複数の板状部材を連結することによって構成されている。直動ベース34aおよび34bには、それぞれリニアブッシュを介してリニアシャフト41aおよび41bが貫装される。また、直動ベース34aおよび34bは、それぞれ連結部によって同期ベルト42aおよび42bを挟持している。このような構成によって、上述した直動駆動モータ45によって同期ベルト42aおよび42bが回動された場合、直動ベース34aおよび34bは、それぞれ同期ベルト42aおよび42bの回動に合わせてリニアシャフト41aおよび41bに沿って移動する。また、直動ベース34aおよび34bには、それぞれベアリングの外輪部が固設され、それぞれの内輪部にパッド回転軸372aおよび372bが固設されている。このような構成によって、パッド回転軸372aおよび372bは、それぞれ直動ベース34aおよび34bに設けられたベアリングの回転軸を中心に回動可能となる。また、直動ベース34bには、パッド回転駆動モータ35が固設されている(図5参照)。
支持部33は、パッドロッド331aおよび331bと、パッド取付板333と、パッドフレーム334と、側板336aおよび336bとを備えている。パッドフレーム334の両端には、側板336aおよび336bを介してパッド回転軸372aおよび372bがそれぞれ固設される。上述したようにパッド回転軸372bには、パッド回転駆動モータ35の駆動に応じて回転する駆動プーリ353が固設されているため、パッドフレーム334は、パッド回転軸372aおよび372bを中心に回動可能となる。パッドフレーム334の両端部付近の側面には、それぞれパッドロッド331aおよび331bがリニアブッシュを介して上下動可能に貫装されている。パッドロッド331aおよび331bの一方端(図4に示す上端)には、パッド取付板333が固設される。パッドロッド331aおよび331bの他方端付近には、それぞれストッパが形成され、図示上方向の移動が規制される。また、パッド取付板333およびパッドフレーム334の間には、それぞれパッドロッド331aおよび331bを軸として圧縮バネ(図示せず)が配置される。これらの圧縮バネによって、パッド取付板333とパッドロッド331aおよび331bとは、上記上方向に付勢される。
パッド取付板333には、刷版Pを吸着保持するための複数個の吸着パッド31が付設されている。複数の吸着パッド31は、カセット2内に収納された刷版Pに対応するように配置されている。そして、全ての吸着パッド31は、ホースと接続するためのニップルを有しており、画像記録装置制御部83によって制御される電磁弁を介して真空ポンプと連通連結するホース(図示せず)がそれぞれ接続される。したがって、吸着パッド31に供給される負圧は、上記ホースを介して供給され、その負圧が画像記録装置制御部83によって制御される。なお、これらの吸着パッド31を、そこに吸着保持すべき刷版Pのサイズに応じてその列設方向(図3(a)における上下方向)に移動させるようにしてもよい。
側板336aおよび336bは、パッドフレーム334の両端に固設されている。側板336aおよび336bには、それらの上端部付近に2つの開口穴がそれぞれ形成される。側板336aおよび336bに形成された開口部の一方には、複数のスポンジカラー32が付設されたデルリン軸321が回転可能に貫装される。また、側板336aおよび336bに形成された開口部の他方には、搬送ローラ52が回転可能に貫装される。そして、搬送ローラ52の回転軸には、駆動プーリ524が固設されている(図5参照)。また、搬送ローラ52が設けられる位置は、パッドロッド331aおよび331bが直立した状態(吸着パッド31の吸着面が上方向に向いた状態)において吸着パッド31より反直動方向側である。
図5に示すように、パッドフレーム334には搬送ローラ回転駆動モータ521が固設されている。そして、搬送ローラ回転駆動モータ521の回転軸には、駆動プーリ522が固設され、搬送ローラ52の駆動プーリ524との間にベルト523が回動可能に掛け渡される。このような構成によって、搬送ローラ回転駆動モータ521の回転方向に同一位相で搬送ローラ52が回転する。
また、パッド回転駆動モータ35が駆動した場合、その駆動に応じてパッド回転軸372aおよび372bを中心にパッドフレーム334が回動するため、そのパッドフレーム334に貫装された2本のパッドロッド331aおよび331bや側板336aおよび336bも同一位相で回動する。したがって、それらパッドロッド331aおよび331bに固設されたパッド取付板333を介して連結された複数の吸着パッド31も同一位相でパッド回転軸372aおよび372bを中心に回動することができる。また、側板336aおよび336bに設けられた搬送ローラ52や複数のスポンジカラー32も同一位相でパッド回転軸372aおよび372bを中心に回動することができる。また、パッド回転軸372aおよび372bは、直動ベース34aおよび34bに対してそれぞれ付設されているため、直動駆動モータ45が駆動した場合、複数の吸着パッド31、搬送ローラ52、および複数のスポンジカラー32もその駆動に応じて上記直動方向あるいは反直動方向に移動することができる。また、圧縮バネがパッド取付板333側から加えられる荷重に応じて伸縮するため、パッドロッド331aおよび331bは、その荷重に応じて貫装方向へ上下動することができる。なお、これらの機構が刷版Pの搬送中に行う動作の詳細については、後述する。
次に、図7〜図10を参照して、搬送ローラ51および搬送ローラ上下動機構について説明する。なお、図7は、搬送ローラ51および52が当接した状態を示す搬送ローラ51および搬送ローラ上下動機構の斜視図である。図8は、搬送ローラ51および搬送ローラ上下動機構の斜視図である。図9は、搬送ローラ51の正面図である。図10は、搬送ローラ上下動機構の斜視図である。
図7において、搬送ローラ51は、それぞれ独立して回転可能な2本の搬送ローラ51aおよび51bで構成される。搬送ローラ51aおよび51bは、搬送ローラ52と当接した際、搬送ローラ52の回転に応じて回転する従動ローラである。なお、刷版Pの搬送動作のときは、搬送ローラ51aおよび51bと搬送ローラ52との間に刷版Pが挟持されるため、搬送ローラ51aおよび51bは、挟持される刷版Pの移動に応じて回転することになる。
図7〜図10において、搬送ローラ上下動機構は、搬送ローラ支持部材501と、ガイド突起502aおよび502bと、当接部材503aおよび503bと、揺動腕504aおよび504bと、揺動軸505aおよび505bと、搬送ローラ上下駆動モータ506と、揺動機構507とを備えている。
搬送ローラ支持部材501は、その下部に搬送ローラ51aおよび51bをそれぞれ回転可能に支持する。ここで、搬送ローラ51が2本の搬送ローラ51aおよび51bで構成される理由について説明する。刷版供給装置1は、1枚の刷版Pを搬送するだけでなく、2枚同時に並置して搬送することも可能である。しかしながら、搬送ローラ51および52をそれぞれ1本で構成すると、搬送ローラ51および52と刷版Pとの当たりが1点当たりになることがある。したがって、搬送ローラ51および52をそれぞれ1本で構成して2枚同時に並置して刷版を搬送する場合、何れか一方の刷版に対するニップが不足することが考えられる。一方、搬送ローラ51aが並置された一方の刷版を介して搬送ローラ52と当接し、搬送ローラ51bが並置された他方の刷版を介して搬送ローラ52と当接する場合、2枚同時に並置された刷版が別のローラによって挟持されることになる。そして、それぞれの搬送ローラにおける高さ方向の機械的な遊び等によって双方の高さ方向の寸法差が吸収され、双方の搬送ローラが共に安定して刷版をニップすることができる。さらに、搬送ローラ支持部材501に対して、それぞれ独立して搬送ローラ51aおよび51bが上下移動可能に構成することによって、積極的に双方の高さが変動するようにしてもかまわない。この場合、極端に厚さが異なる刷版を2枚同時に並置して搬送することも可能になる。
搬送ローラ支持部材501の両側面には、それぞれガイド突起502aおよび502bが突設されている。ガイド突起502aおよび502bは、それぞれ刷版搬送装置1の筐体に形成された上下方向のガイド穴(図示せず)に嵌合しており、当該ガイド穴に沿って上下方向に移動する。搬送ローラ支持部材501の下部の両端(搬送ローラ51aおよび51bの外側)には、それぞれ当接部材503aおよび503bが設けられる。当接部材503aおよび503bは、それらの下方がそれぞれ揺動腕504aおよび504bと当接する。このような構成によって、当接部材503aおよび503bが揺動腕504aおよび504bから所定荷重以上の上方向の駆動力を受けたとき、上記ガイド穴に沿って搬送ローラ51aおよび51bが上昇する。また、揺動腕504aおよび504bからの上方向の駆動力が解除されたとき、上記ガイド穴に沿って搬送中の刷版Pと当接するまで搬送ローラ51aおよび51bがそれらの自重によって下降する。
揺動腕504aおよび504bは、それぞれ刷版搬送装置1の筐体に支持された揺動軸505aおよび505bを回動軸として揺動可能に設けられる。そして、揺動腕504aおよび504bの一方端部付近は、それぞれ当接部材503aおよび503bの下部と当接可能に配置される。また、揺動腕504aおよび504bの他方端部付近は、揺動機構507に連結される。揺動機構507は、上記筐体に固設された搬送ローラ上下駆動モータ506の駆動に応じて揺動腕504aおよび504bの他方端部を上下に揺動させる。つまり、搬送ローラ上下駆動モータ506を駆動することによって、揺動腕504aおよび504bを揺動させ、搬送ローラ51aおよび51bを昇降させることができる。
次に、図11を参照して、刷版供給装置制御部11の構成について説明する。なお、図11は、刷版供給装置制御部11の構成を示すブロック図である。
図11において、画像記録装置制御部83は、CPU(中央演算装置)やROM等の記憶装置によって構成される。画像記録装置制御部83には、画像記録装置8において刷版Pに画像記録する画像データPD、その刷版Pの各種情報(サイズ、厚み、枚数等)を示す刷版情報PI、および画像記録装置8や刷版供給装置1に設けられた各種センサからのエラー信号ES等が入力される。画像記録装置制御部83は、それらの情報に基づいて、上記直動駆動モータ45を駆動するための直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSやパッド回転駆動モータ35の回転駆動パターンを指定する回転駆動パターン指定信号RIを刷版供給装置1に出力する。これらの処理動作の詳細については、後述する。
直動駆動モータ45は、直動駆動モータドライバ451を介して、直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSに応じて駆動する。また、刷版供給装置制御部11は、直動駆動モータドライバ451に供給される直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSに基づいて、所定の動作パターンでパッド回転駆動モータ35を駆動する回転駆動パルスRPを生成する電気回路や記憶装置によって構成される。また、上記電気回路は、各種センサからの信号に基づいて、所定のタイミングで搬送ローラ51を昇降および所定のタイミングで搬送ローラ52を回転させる。刷版供給装置制御部11は、直動位置カウンタ111、回転駆動パターンメモリ112、フリップフロップ113、AND回路114、および搬送ローラ制御部115を備えている。
直動位置カウンタ111は、具体的にはアップダウンカウンタで構成される。直動位置カウンタ111は、画像記録装置制御部83から出力された直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DPに基づいて、現在の直動駆動に対するパルスを計数し、その計数結果から刷版搬送機構3における現在の上記直動方向の位置アドレスを演算して直動位置アドレス信号ADを出力する。この直動位置アドレス信号ADは、例えば10ビットの信号を用いて刷版搬送機構3の位置アドレスを示す。
回転駆動パターンメモリ112は、一般的なROMやRAMで構成される記憶装置であり、予め直動位置アドレスに対する回転駆動動作が記述された回転駆動パターンテーブルを複数格納されている。回転駆動パターンメモリ112は、搬送する刷版Pのサイズ、厚みや材質等の種類、残量、搬送動作、および吸着動作等に応じて、複数の回転駆動パターンテーブルをそれぞれ格納している。これらの回転駆動パターンテーブルは、画像記録装置制御部83から出力される回転駆動パターン指定信号RIによって選択が可能である。回転駆動パターンメモリ112は、回転駆動パターン指定信号RIによって指定された回転駆動パターンテーブルを用いて、直動位置アドレス信号ADの変化に応じた回転駆動パターンデータRPD(「1」あるいは「0」)を出力する。なお、回転駆動パターンメモリ112に格納されている上記回転駆動パターンテーブルは、図示しない入力装置によるユーザからの入力によって変更が可能である。例えば、新たな刷版を供給する場合、その刷版に応じた新たな回転駆動パターンテーブルを追加することも可能であるし、刷版Pを搬送する軌跡を変更するために、任意の直動位置アドレスに対する回転駆動パターンデータのみを更新することも可能である。
フリップフロップ113は、2つの安定状態を持ち、この2つの状態を「0」と「1」とに対応させることで1ビットの情報を保持できる電子回路である。フリップフロップ113は、回転駆動パターンメモリ112から出力される信号によって上記2つの状態が交互に変化する。したがって、フリップフロップ113は、直動駆動パルスDPと同期して回転駆動パターンメモリ112から出力される回転駆動パターンデータRPDが「1」の場合、フリップフロップ信号FFとして「1」を出力し、回転駆動パターンデータRPDが「0」の場合、フリップフロップ信号FFとして「0」を出力する。
AND回路114は、フリップフロップ信号FFおよび直動駆動パルスDPを比較して、共に「1」(High)が入力されたときのみ「1」を回転駆動パルスRPとして出力する。つまり、AND回路114は、直動駆動パルスDPに対してフリップフロップ信号FFが「1」を示すパルスのみを出力し、フリップフロップ信号FFが「0」を示す場合、その直動駆動パルスDPが間引かれることになる。つまり、回転駆動パルスRPは、刷版搬送機構3の直動位置アドレスに応じて、パッド回転駆動モータ35を動作させる信号であり、選択された回転駆動パターンテーブルに基づいて生成されている。
そして、パッド回転駆動モータ35は、パッド回転駆動モータドライバ354を介して、直動駆動方向信号DSおよびAND回路114から出力される回転駆動パルスRPに応じて駆動する。
搬送ローラ回転駆動モータ521は、搬送ローラ回転駆動モータドライバ525を介して、搬送ローラ制御部115の制御に応じて駆動する。また、搬送ローラ上下駆動モータ506は、搬送ローラ上下駆動モータドライバ508を介して、搬送ローラ制御部115の制御に応じて駆動する。ここで、刷版供給装置1は、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置される位置に刷版搬送機構3が移動したとき、所定の信号SSを出力するセンサ(図示せず)を有している。搬送ローラ制御部115は、初期設定では搬送ローラ回転駆動モータ521を停止し、搬送ローラ上下駆動モータ506を搬送ローラ51が上昇状態となるように停止させている。そして、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置されたことを示す信号SSが上記センサから出力されると、搬送ローラ51を下降させる信号を搬送ローラ上下駆動モータドライバ508へ出力し、搬送ローラ上下駆動モータ506が搬送ローラ51を下降させる。そして、搬送ローラ51が搬送する刷版Pと当接するまで下降した後、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ52を搬出方向に回転させる信号を搬送ローラ回転駆動モータドライバ525へ出力し、搬送ローラ回転駆動モータ521が搬送ローラ52を刷版搬出方向に回転させる。刷版Pの搬出が完了すると、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ回転駆動モータ521および搬送ローラ上下駆動モータ506が上記初期設定状態となるように、搬送ローラ回転駆動モータドライバ525および搬送ローラ上下駆動モータドライバ508を制御する。
次に、図12および図13を参照して、画像記録装置制御部83および刷版供給装置制御部11が刷版供給装置1の動作を制御する処理について説明する。なお、図12は、画像記録装置制御部83および刷版供給装置制御部11が行う制御動作を示すフローチャートである。図13(a)〜(d)は、それぞれ刷版搬送機構3が刷版Pを搬送する動作を順次示した図である。
図12において、画像記録装置制御部83は、ユーザ等からの入力によって、刷版Pの刷版情報PIを取得する(ステップS1)。この刷版情報PIには、刷版供給装置1のカセット2に収納される刷版Pのサイズ(縦、横、厚さ等)や種類(材質、刷版製造メーカ名等)およびカセット2に初期的に積載される刷版Pの枚数等の情報が含まれている。
次に、画像記録装置制御部83は、刷版供給装置1がカセット2に収納された刷版Pを吸着するための動作(吸着動作)を行うか、吸着された刷版Pを搬送ローラ51および52に向けて搬送する動作(搬送動作)を行うかを判断する(ステップS2)。典型的には、刷版搬送機構3を図2に示す状態Bから状態Aに移動させる反直動方向の動作が上記吸着動作であり、刷版搬送機構3を図2に示す状態Aから状態Bに移動させる直動方向の動作が上記搬送動作である。画像記録装置制御部83は、吸着動作を行う場合、処理を次のステップS3に進める。一方、画像記録装置制御部83は、搬送動作を行う場合、処理を次のステップS7に進める。
ステップS3において、画像記録装置制御部83は、刷版搬送機構3の直動位置アドレスに応じて吸着動作の際に支持部33を回動させる回転駆動パターンを決定する。画像記録装置制御部83は、上記回転駆動パターンを決定する際、上記ステップS1で取得した刷版情報PIと、上記ステップS2で決定した動作方向と、現在のカセット2に収納されている刷版Pの残量(カセット2に供給された刷版Pの枚数や刷版Pの残量)とに基づいて、吸着パッド31が最適な軌道で動作する回転駆動パターンを選択する。例えば、吸着動作を行う回転駆動パターンは、刷版搬送機構3を図2に示した状態Bから状態Aまで移動させるとき、支持部33を反直動方向(図2の紙面右方向)に移動させながら反搬送回転方向(図2紙面の時計方向)に回動させる。そして、刷版Pの一方端付近と吸着パッド31を接触させる(図13(a)の状態)。
次に、画像記録装置制御部83は、上記ステップS3で決定した回転駆動パターンを示す回転駆動パターンテーブルを刷版供給装置1に指示するために、回転駆動パターンメモリ112に回転駆動パターン指定信号RIを出力する(ステップS4)。上記ステップS4で回転駆動パターン指定信号RIが出力されることによって、上述したように回転駆動パターンメモリ112において動作に用いる回転駆動パターンテーブルが選択される。
次に、画像記録装置制御部83は、上記ステップS2で決定した吸着動作に応じて直動駆動モータ45を駆動するための直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSを直動駆動モータドライバ451および刷版供給装置制御部11に出力し、直動駆動方向信号DSをパッド回転駆動モータドライバ354に出力する(ステップS5)。なお、画像記録装置制御部83は、負圧ポンプおよび電磁弁(図示せず)を制御することによって、吸着パッド31に所定圧力の負圧供給を所定の直動位置から開始する。
上述したように、直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSが刷版供給装置制御部11に出力されることによって、上記ステップS3で決定された回転駆動パターンに応じて直動駆動パルスDPに同期した回転駆動パルスRPが刷版供給装置制御部11で生成され、パッド回転駆動モータドライバ354に出力される。したがって、直動駆動モータ45は、画像記録装置制御部83の制御によって駆動し、パッド回転駆動モータ35は、直動駆動パルスDPに同期して選択された回転駆動パターンに応じて駆動する。
次に、画像記録装置制御部83は、吸着パッド31によってカセット2内の刷版Pが吸着されたか否かを判断する(ステップS6)。そして、画像記録装置制御部83は、刷版Pが吸着された場合に上記ステップS2に戻って処理を進め、刷版Pが吸着されていない場合に上記ステップS5に戻って処理を繰り返す。ここで、吸着パッド31に刷版Pが吸着されたか否かの判断は、吸着パッド31における圧力変化によって判断してもいいし、現在の直動位置アドレスに応じて判断してもよい。あるいは、刷版供給装置1に刷版搬送機構3が上記反直動方向の終端位置に到達したことを検出する位置センサ(図示せず)を設けておき、当該位置センサからの出力に基づいて判断してもかまわない。
一方、上記ステップS2で搬送動作であると判断した場合、画像記録装置制御部83は、刷版搬送機構3の直動位置アドレスに応じて搬送動作の際に支持部33を回動させる回転駆動パターンを決定する(ステップS7)。画像記録装置制御部83は、ステップS7においても回転駆動パターンを決定する際、上記ステップS1で取得した刷版情報PIと、上記ステップS2で決定した動作方向と、現在のカセット2に収納されている刷版Pの残量(カセット2に供給された刷版Pの枚数や刷版Pの残量)とに基づいて、吸着パッド31が最適な軌道で動作する回転駆動パターンを選択する。搬送動作を行う回転駆動パターンは、刷版搬送機構3を図2に示した状態Aから状態Bまで移動させるとき、支持部33を直動方向(図2の紙面左方向)に移動させながら搬送回転方向(図2紙面の反時計方向)に回動させる。このような搬送動作によって、吸着パッド31に吸着された刷版Pは、完全にカセット2から持ち上げられ、支持部33が直立した状態(吸着パッド31の吸着面が上方向に向いた状態)に回動することによって表裏反転した状態(具体的には、刷版Pの画像記録層が上面となった状態)となる。
このような回転駆動パターンは、刷版Pのサイズ(縦、横、厚さ等)や種類(材質、刷版製造メーカ等)と、刷版搬送機構3の動作方向と、現在のカセット2に収納されている刷版Pの残量等とに基づいて、それぞれ上記最適な軌道で動作するように予め設定されている。画像記録装置制御部83は、上記ステップS7において、刷版情報PI、動作方向、および刷版Pの残量に基づいて、それらの回転駆動パターンから最適な回転駆動パターンを選択する。
次に、画像記録装置制御部83は、上記ステップS7で決定した回転駆動パターンを示す回転駆動パターンテーブルを刷版供給装置1に指示するために、回転駆動パターンメモリ112に回転駆動パターン指定信号RIを出力する(ステップS8)。上記ステップS8で回転駆動パターン指定信号RIが出力されることによって、上述したように回転駆動パターンメモリ112において動作に用いる回転駆動パターンテーブルが選択される。
次に、画像記録装置制御部83は、上記ステップS2で決定した搬送動作に応じて直動駆動モータ45を駆動するための直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSを直動駆動モータドライバ451および刷版供給装置制御部11に出力し、直動駆動方向信号DSをパッド回転駆動モータドライバ354に出力する(ステップS9)。上述したように、直動駆動パルスDPおよび直動駆動方向信号DSが刷版供給装置制御部11に出力されることによって、上記ステップS7で決定された回転駆動パターンに応じて直動駆動パルスDPに同期した回転駆動パルスRPが刷版供給装置制御部11で生成され、パッド回転駆動モータドライバ354に出力される。したがって、直動駆動モータ45は、画像記録装置制御部83の制御によって駆動し、パッド回転駆動モータ35は、直動駆動パルスDPに同期して選択された回転駆動パターンに応じて駆動する。
次に、刷版供給装置制御部11は、センサ信号SSが出力されたか否かを判断する(ステップS10)。そして、刷版供給装置制御部11は、センサ出力SSが出力された場合(図13(b)の状態、すなわち、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置されている)にステップS11に処理を進め、センサ出力SSが出力されていない場合に上記ステップS9に戻って処理を繰り返す。なお、上記ステップS10の判断は、画像記録装置制御部83が直動駆動パルスDPを計数することによって現在の直動位置アドレスを演算し、終端として設定されている直動位置アドレスと比較することによって判断してもよい。
ステップS11において、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ上下駆動モータドライバ508を介して、搬送ローラ上下駆動モータ506を駆動し、搬送ローラ51が刷版Pと当接するまで下降させる(図13(c)の状態)。そして、画像記録装置制御部83は、負圧ポンプおよび電磁弁を制御することによって、吸着パッド31への負圧供給を停止して、刷版Pへの吸着保持を解除する(ステップS12)。
次に、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ回転駆動モータドライバ525を介して、搬送ローラ回転駆動モータ521を駆動して、搬送ローラ52を搬出方向に回転させる(ステップS13;図13(d)の状態)。搬送ローラ制御部115は、刷版Pが給排トレー部7(図1参照)に搬出されるまで、搬送ローラ52の回転を継続する。刷版Pが給排トレー部7に搬出されると(ステップS14でYes)、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ上下駆動モータドライバ508を介して、搬送ローラ上下駆動モータ506を駆動して搬送ローラ51を上昇させる。また、搬送ローラ制御部115は、搬送ローラ回転駆動モータ521の駆動を停止して、搬送ローラ52の回転を停止する(ステップS15)。
次に、画像記録装置制御部83は、刷版供給装置1の刷版供給位置に配置されているカセット2の刷版残量を演算し、刷版供給装置1から画像記録装置8への刷版Pの供給を終了するか否かを判断する(ステップS16)。画像記録装置制御部83は、刷版Pの供給を継続する場合、上記ステップS2に戻って処理を継続し、刷版Pの供給を終了する場合、当該フローチャートによる処理を終了する。
次に、図13(a)〜図13(d)を参照して、上記搬送動作における刷版搬送機構3の状態について詳述する。
図13(a)において、吸着パッド31によってカセット2内の刷版Pが吸着される際(上記ステップS6でYes)、刷版搬送機構3は、カセット2に収納された刷版Pに対して吸着パッド31が垂直になるように支持部33の回動角度が制御され、刷版Pの支持層側の一方の端部近傍を吸着パッド31が吸着保持する。ここで、刷版供給装置1において刷版Pを搬送ローラ51および52によってニップする箇所は、吸着保持する箇所より刷版Pの中央側(すなわち、図13(a)における下側)であるため、刷版Pの一方端部側にニップ代を考慮する必要がない。このとき、吸着パッド31やパッド取付板333の重量やパッドロッド331aおよび331bの圧縮バネ伸長力によって、パッドロッド331aおよび331bが伸長した状態となる。したがって、カセット2に収納された刷版Pに対する吸着を開始する際、刷版Pにはまず吸着パッド31の吸着面が接触するため、刷版Pに対して安定した接触および吸着動作を行うことができる。また、吸着パッド31が刷版Pと接触した後、さらに刷版搬送機構3が上記反直動方向に移動したとしても、パッドロッド331aおよび331bの圧縮バネが圧縮することによって刷版Pに与える力を軽減することができる。
図13(b)において、吸着パッド31が刷版Pを吸着保持した状態で、その吸着面が上方向に向いた場合、刷版Pがその重量によってたわむため、刷版Pは、吸着パッド31の吸着面、搬送ローラ52の外周面、およびスポンジカラー32の外周面、さらに案内部6(図1参照)によって支持される。このとき、パッドロッド331aおよび331bの圧縮バネ伸長力、刷版Pの自重、および曲げられた刷版Pが平面に戻ろうとする力がパッドロッド331aおよび331bの伸び方向に作用するため、パッドロッド331aおよび331bが伸長した状態を保っている。このような支持状態を保って、搬送ローラ51の直下位置に搬送ローラ52が配置される(上記ステップS10でYes)。
図13(c)において、搬送ローラ51が下降し、搬送ローラ51および52が刷版Pを挟持する(上記ステップS11)。これによって、刷版Pが搬送ローラ51および52によってニップされるが、そのニップ位置は、吸着パッド31で吸着保持している箇所より反直動方向側(すなわち、図13(b)における右側)である。
図13(d)において、吸着パッド31による刷版Pの吸着が解除される(ステップS12)。このとき、吸着パッド31やパッド取付板333の重量がパッドロッド331aおよび331bを短縮させる方向に働き、当該パッドロッド331aおよび331bが短縮する。したがって、吸着パッド31の吸着面は、負圧供給が停止されることによって刷版Pから離れる。これにより、搬送ローラ51および52が刷版Pを画像記録装置8に搬送する際、刷版Pと吸着パッド31の吸着面との接触を防止することができる。そして、搬送ローラ52が刷版Pを給排トレー部7へ搬出する搬出方向に回転する(図示矢印方向)。この搬送ローラ52の回転に応じて、搬送ローラ51および52にニップされた刷版Pがガイド板55側に搬出され、当該刷版Pの移動に応じて搬送ローラ51も従動して回転する(上記ステップS13)。このような動作によって、刷版Pは、ガイド板55に沿って搬出される。
このように、本実施形態の刷版供給装置は、刷版を吸着保持してカセットから取り出して画像記録装置に向けて搬送する際に、当該吸着保持する箇所を設定するにあたって搬送ローラによって当該刷版をニップする長さを考慮する必要がない。したがって、カセットから刷版を取り出すときに吸着する箇所を刷版の先端にできるだけ近い位置に設定することができる。例えば、刷版Pや刷版供給装置の製造バラツキを考慮しても、刷版Pの先端から吸着箇所まで長さL(図15参照)は、5mm以下で設定することができる。したがって、吸着パッドによって刷版の先端にできるだけ近い位置を吸着することによって、吸着パッドによる刷版の2枚取りを防止することができる。
また、本実施形態の刷版供給装置は、吸着パッドで吸着保持した刷版の最も先端を搬送ローラ間にニップするように導くことが不要であるため、刷版の先端部等に損傷を与えることがない。これによって、吸着パッドに保持された刷版の先端の位置調整も容易となる。また、刷版への吸着を解除した後に搬送ローラの回転を行うため、搬送ローラの回転速度と他の動作速度とを合わせることが不要であるため、速度調整作業が不要となる。
また、本実施形態の刷版供給装置は、刷版の画像記録層と当接する搬送ローラが従動ローラであるため、ニップの際に当該画像記録層への損傷を防止できる。また、画像記録層と当接する搬送ローラが2本のローラで構成されているため、2枚同時に並置した刷版を別のローラによって挟持することができる。したがって、それぞれの搬送ローラにおける高さ方向の機械的な遊び等によって双方の高さ方向の寸法差が吸収できるため、2枚同時に並置した刷版を安定してニップして搬送することができる。
なお、刷版供給装置1は、様々な画像記録装置に刷版Pを供給することができる。例えば、刷版供給装置1は、記録ドラムの外面に刷版Pを装着する円筒外面走査装置や、記録ドラムの内面に刷版Pを装着する円筒内面走査装置等に、刷版Pを供給することができる。
また、上述した説明では、刷版供給装置1に配置されるカセット2を斜めに配置したが、カセット2を水平に配置しても本発明を実現できることは言うまでもない。