JP2007023060A - 帯電防止剤及びその製造方法 - Google Patents

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明 上田
Masaaki Chatani
政昭 茶谷
Masaki Tasaka
誠基 田坂
Yasuo Kamimura
康夫 上村
Norihiko Kusunoki
規彦 楠
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Abstract

【課題】 本発明は、樹脂成形品に格段に優れた導電性ないし帯電防止性を付与し得ると共に、樹脂表面を非粘着状態に保ち、優れた耐ブロッキング性を備えたものにすることのできる帯電防止剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の帯電防止剤は、合成樹脂成形品の表面に帯電防止能を付与するための帯電防止剤であって、前記帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、前記グラフト鎖ブロック共重合体は、(1)合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖、(2)導電機能を有する親水性ポリマー鎖及び(3)樹脂成形品表面を疎水化する疎水性ポリマー鎖を有している。
【選択図】 なし

Description

本発明は、帯電防止剤及びその製造方法に関する。
本来、合成樹脂は、電気抵抗が高く帯電性があり、表面の帯電によって樹脂成形品の表面に粉塵が付きやすく汚れやすい欠点を有している。このため、合成樹脂に帯電防止剤を添加配合して、樹脂の表面電気抵抗を低下させ、その結果帯電を防止することが広く行われている。
帯電防止の一例として、親水性を有するポリマー鎖と相溶性を有するポリマー鎖とからなるブロック共重合体乃至グラフト共重合体を合成し、これを合成樹脂に添加して表面改質を行う方法が知られている。
このようなブロック共重合体乃至グラフト共重合体の製造方法としては、例えば、特許文献1には、ポリメリックペルオキシド又はポリアゾ化合物をビニル重合開始剤として使用し、ビニル重合開始剤の存在下で、第1の工程で親水性のポリマー鎖を形成するビニル単量体又は相溶性のポリマー鎖を形成するビニル単量体のいずれか一方を重合させ、次いで、第2の工程で、他方のビニル単量体を添加して重合させて、親水性を有するポリマー鎖と相溶性を有するポリマー鎖とを有するブロック重合体とする方法が開示されている。
この方法で製造されるブロック共重合体は、親水性を有するポリマー鎖が樹脂表面を濡らして導電性(即ち、帯電防止機能)を発現するので、帯電防止剤として使用される。
しかしながら、樹脂表面に存在する親水性ポリマー鎖は、水との濡れ性が大きく、樹脂表面を湿潤ないし粘着状態にする性質があり、このため、樹脂成形品は、その表面が塵挨を物理的に吸着して汚れやすく、また、樹脂成形品表面の滑り性が低下する難点があった。
さらに、樹脂表面の粘着性が大きい場合には、板材などの樹脂成形品を重積して保管運搬する際に成形品相互が密着する(ブロッキング)のを避けられず、これを防止するのに剥離紙を板材間に介在させるなど、取扱いに難があった。
また、親水性のポリマー鎖は、合成樹脂成形品中にほぼ均一に分散するので、帯電防止剤を合成樹脂に多量に添加しないと、合成樹脂表面に所望の帯電機能を付与することができず、逆に、帯電防止剤の多量添加は、樹脂の劣化その他変質の原因となり、しかもコスト高となっていた。
特公平5−41668号公報
本発明は、樹脂成形品に格段に優れた導電性ないし帯電防止性を付与し得ると共に、樹脂表面を非粘着状態に保ち、優れた耐ブロッキング性を備えたものにすることのできる帯電防止剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖(1)、導電機能を有する親水性ポリマー鎖(2)及び樹脂成形品表面を疎水化する疎水性ポリマー鎖(3)を有する特定のブロック共重合体が所望の帯電防止剤になり得ることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
本発明は、下記1〜18に示す帯電防止剤、その製造方法及び合成樹脂成形品を提供する。
1.合成樹脂成形品の表面に帯電防止能を付与するための帯電防止剤であって、
前記帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、
前記グラフト鎖ブロック共重合体は、(1)合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖、(2)導電機能を有する親水性ポリマー鎖及び(3)樹脂成形品表面を疎水化する疎水性ポリマー鎖を有している、
帯電防止剤。
2.相溶性を有するポリマー鎖(1)及び疎水性ポリマー鎖(3)は連結され、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、上記1に記載の帯電防止剤。
3.相溶性を有するポリマー鎖(1)及び疎水性ポリマー鎖(3)は交互に繰り返し連結され、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、上記1に記載の帯電防止剤。
4.相溶性を有するポリマー鎖(1)及び親水性ポリマー鎖(2)は連結され、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、上記1に記載の帯電防止剤。
5.相溶性を有するポリマー鎖(1)及び親水性ポリマー鎖(2)は交互に繰り返し連結され、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、上記1に記載の帯電防止剤。
6.合成樹脂成形品の表面に帯電防止性を付与するための帯電防止剤であって、
前記帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、
前記グラフト鎖ブロック共重合体は、ポリアゾ化合物及びポリメリックペルオキシド化合物からなる群より選ばれた重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下で、ビニル単量体及びマクロモノマーをラジカル共重合することにより製造されたものである、
帯電防止剤。
7.前記ポリアゾ化合物が疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、上記6に記載の帯電防止剤。
8.前記疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物がポリ有機シロキサンを含むポリアゾ化合物であり、前記親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーがポリエチレングリコールのマクロモノマーである上記7に記載の帯電防止剤。
9.前記ポリメリックペルオキシド化合物が疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、上記6に記載の帯電防止剤。
10.前記ポリアゾ化合物が親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、上記6に記載の帯電防止剤。
11.前記親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物がポリエチレングリコールを含むポリアゾ化合物であり、前記疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーがポリ有機シロキサンのマクロモノマー及びパーフルオロアルキル基を有するマクロモノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記10に記載の帯電防止剤。
12.前記ポリメリックペルオキシド化合物が親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、上記6に記載の帯電防止剤。
13.疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
帯電防止剤の製造方法。
14.疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
帯電防止剤の製造方法。
15.親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
帯電防止剤の製造方法。
16.親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
帯電防止剤の製造方法。
17.上記1〜12のいずれかに記載の帯電防止剤からなる被膜を合成樹脂の表面に形成してなる合成樹脂成形品。
18.上記1〜12のいずれかに記載の帯電防止剤と合成樹脂とを混練し、次いで混練物を溶融成形して得られる合成樹脂成形品。
本発明の帯電防止剤は、樹脂成形品の表面に帯電防止性を付与するための帯電防止剤である。
本発明の帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、該グラフト鎖ブロック共重合体は、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖(1)、導電機能を有する親水性ポリマー鎖(2)及び樹脂成形品表面を疎水化する疎水性ポリマー鎖(3)を有している。
グラフト鎖ブロック共重合体A
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体は、例えば、相溶性を有するポリマー鎖(1)と疎水性ポリマー鎖(3)とが連結(以下「ブロック結合」という)され、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している。このグラフト鎖ブロック共重合体(以下、「グラフト鎖ブロック共重合体A」という)は、例えば、下記の模式図に示すような構造を有している。
Figure 2007023060
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Aは、相溶性を有するポリマー鎖(1)及び疎水性ポリマー鎖(3)は交互に繰り返しブロック結合してもよい。この場合も、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している。
相溶性を有するポリマー鎖(1)と疎水性ポリマー鎖(3)とが交互に繰り返しブロック結合している場合、ポリマー鎖(1)及びポリマー鎖(3)の繰返し単位は、通常5以下、好ましくは1〜3程度である。
相溶性を有するポリマー鎖(1)と疎水性ポリマー鎖(3)とが交互に繰り返しブロック結合している場合、親水性ポリマー鎖(2)は全ての相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している必要はない。
親水性ポリマー鎖(2)が相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している場合、1個の相溶性を有するポリマー鎖(1)に対してグラフト重合している親水性ポリマー鎖(2)の数は、平均2〜10個程度である。
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Aにおける疎水性ポリマー鎖(3)の占める割合は、10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。親水性ポリマー鎖(2)は、グラフト鎖ブロック共重合体Aから疎水性ポリマー鎖(3)を除いた残部の30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%である。更に、グラフト鎖ブロック共重合体Aから疎水性ポリマー鎖(3)及び親水性ポリマー鎖(2)を除いた残部が相溶性ポリマー鎖(1)である。
相溶性ポリマー鎖(1)、親水性ポリマー鎖(2)及び疎水性ポリマー鎖(3)の割合が上記範囲内である場合には、グラフト鎖ブロック共重合体Aに、樹脂成形品に顕著に優れた導電性ないし帯電防止性を長期に亘って付与し得る性質、樹脂成形品表面を非粘着状態に長期間維持できる性質及び格段に優れた耐ブロッキング性を付与することができる。
グラフト鎖ブロック共重合体Aにおける相溶性ポリマー鎖(1)の重量平均分子量は1500〜8000程度(好ましくは1800〜3000程度)、親水性ポリマー鎖(2)の重量平均分子量は500〜3000程度(好ましくは1100程度)及び疎水性ポリマー鎖(3)の重量平均分子量は3000〜20000程度(好ましくは8900〜11800程度)である。
相溶性ポリマー鎖(1)は、合成樹脂に対して相溶性を示すので、樹脂の内部に捕捉され、樹脂内部で存在する。
親水性ポリマー鎖(2)は、合成樹脂に対して難溶性を示すので、樹脂を加熱して樹脂成形品を製造した際に、樹脂成形品表面の近傍に存在して導電性を発現する。
疎水性ポリマー鎖(3)は、合成樹脂に対して非相溶性を示すので、樹脂を加熱して樹脂成形品を製造する際(この段階では、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aと合成樹脂とが混合溶融された状態になっている)に、グラフト鎖ブロック共重合体Aの疎水性ポリマー鎖(3)の部分が樹脂成形品表面に移行し、それに伴って親水性ポリマー鎖(2)も樹脂成形品表面に移行し、その結果、樹脂成形品内部よりも表面部において本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aの濃度が高くなる。疎水性ポリマー鎖(3)は、樹脂成形品表面で極めて薄い被膜を形成し、樹脂成形品の最表面を疎水性にし、樹脂成形品表面の水に対する濡れ性を悪くし、親水性ポリマー鎖(2)による粘着性を低減させ、樹脂成形品表面を乾質状態に維持する役割を果たす。
疎水性ポリマー鎖(3)で構成される被膜は非常に薄い(例えば、0.05〜0.1μm程度)ので、親水性ポリマー鎖(2)による導電性を殆ど阻害しない。
相溶性ポリマー鎖(1)は、合成樹脂成形品の内部に捕捉されている。また、相溶性ポリマー鎖(1)と化学的に結合している疎水性ポリマー鎖(3)は、樹脂成形品の最表面で極めて薄い被膜を形成している。このために、相溶性ポリマー鎖(1)にグラフト重合している親水性ポリマー鎖(2)は合成樹脂成形品から容易に脱離しない。その結果、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aは、長期間に亘って優れた導電性能(帯電防止性能)を発揮することができる。
本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aは、例えば、ポリアゾ化合物及びポリメリックペルオキシド化合物からなる群より選ばれた重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下で、ビニル単量体及びマクロモノマーをラジカル共重合することにより製造される。
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Aを製造するに当たっては、重合開始剤及びマクロモノマーを以下の組み合わせで用いるのがよい。
重合開始剤として疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び/又は疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物を使用し、マクロモノマーとして親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーを使用する。
疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物としては、例えば、以下に示すポリ有機シロキサンを含むポリアゾ化合物を挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、m1は3〜200の整数、n1は3〜50の整数を示す。]
Figure 2007023060
[式中、m2は3〜200の整数、n2は3〜50の整数を示す。]
疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物としては、例えば、以下に示す化合物を挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、m3は3〜200の整数、n3は3〜50の整数を示す。]
これら疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
好ましい疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物は、m1が60〜140の整数、n1が6〜10の整数を示す上記一般式(1)で表されるポリアゾ化合物である。
好ましい疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物は、m3が60〜140の整数、n3が6〜10の整数を示す上記一般式(3)で表されるポリメリックペルオキシド化合物である。
親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとしては、例えば、以下に示すポリエチレングリコールのマクロモノマーを挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、n4は4〜200の整数を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は、水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。]
これらのマクロモノマーは、1種単独又は2種以上混合して使用される。
好ましい親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーは、n4が20〜50の整数を示す上記一般式(4)で表されるマクロモノマーである。
ビニル単量体としては、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体を広く使用することができる。このようなビニル単量体としては、例えば、下記一般式(5)
CH2=CR34 (5)
[式中、R3は、水素原子、塩素原子又はメチル基を示す。R4は、塩素原子、−OCOCH3基、シアノ基、−COOR5基(R5はC1-8の脂肪族炭化水素又はC3-8の飽和環状炭化水素を示す)、フェニル基又はナフチル基を示す。]
で表されるビニル単量体を挙げることができる。
このようなビニル単量体の具体例を示せば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。ビニル単量体は、1種単独又は2種以上混合して使用される。
本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aが帯電防止剤として所望の性能を具備するためには、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Aにおける疎水性ポリマー鎖(3)の凝集エネルギー密度(又は溶解度パラメータ)が、相溶性ポリマー鎖(1)、親水性ポリマー鎖(2)及び合成樹脂の凝集エネルギー密度(又は溶解度パラメータ)と比べて小さいことが望ましい。上記で例示した重合開始剤、マクロモノマー及びビニル単量体の組み合わせは、この条件を満たしている。
連鎖移動剤としては、公知のものを広く使用することができ、例えば、ハロゲン化脂肪族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、ハロゲン化飽和環状炭化水素、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、飽和環状メルカプタン、メルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩、スチレンダイマー、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
また、連鎖移動剤として、本発明者が新たに見い出した一般式(6)
[HS−R6−SO3-[NR78910+ (6)
[式中、R6は、C1-6アルキレン基を示す。R7、R8、R9及びR10は、同一又は異なって、水素原子又はC1-6アルキル基を示す。但し、R7、R8、R9及びR10は同時に水素原子であってはならない。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩を使用することができる。
上記一般式(6)において、R6で示されるC1-6アルキレン基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-6アルキレン基であり、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、1−メチルトリメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
上記一般式(6)において、R7、R8、R9及びR10で示されるC1-8アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のC1-8アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル基などが挙げられる。
一般式(6)で挙げられるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩の具体例としては、例えばメルカプトメタンスルホン酸モノメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、メルカプトメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸モノメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸モノメチルアンモニウム、3−メルカプトエタンスルホン酸ジメチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム、3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリn−ブチルアンモニウム及び3−メルカプトプロパンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウムが好ましい。
本発明のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、例えば、一般式(7)
HS−R6−SO3M (7)
[式中、R6は前記に同じ。MはNa、Kなどのアルカリ金属原子を示す。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(8)
78910NX (8)
[式中、R7、R8、R9及びR10は前記に同じ。Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を示す。]
で表されるハロゲン化アルキルアンモニウムとを反応させることにより製造される。
一般式(7)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(8)で表されるハロゲン化アルキルアンモニウムとの反応は、溶媒としてイオン交換水などの精製水を用いて行われる。また、一般式(8)で表されるハロゲン化アルキルアンモニウムは、通常、これを強酸性イオン交換樹脂に担持した状態で使用される。
一般式(7)のメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(8)のハロゲン化アルキルアンモニウムとの使用割合としては、特に限定されるものではないが、前者1モルに対して、後者を通常0.5〜2モル程度、好ましくは0.8〜1.2モル程度とするのがよい。
一般式(7)のメルカプトアルカンスルホン酸塩と一般式(8)のハロゲン化アルキルアンモニウムとの反応は、室温付近で速やかに進行し、一般式(6)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩が生成する。
また、R10が水素原子を示す一般式(6)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、例えば、一般式(9)
HS−R6−SO3H (9)
[式中、R6は前記に同じ。]
で表されるメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(10)
789N (10)
[式中、R7、R8及びR9は前記に同じ。]
で表されるアルキルアミンとを反応させることによっても製造される。
一般式(9)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(10)で表されるアルキルアミンとの反応は、溶媒としてイオン交換水などの精製水を用いて行われる。
一般式(9)のメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(10)のアルキルアミンとの使用割合としては、特に限定されるものではないが、前者1モルに対して、後者を通常0.5〜2モル程度、好ましくは0.8〜1.2モル程度とするのがよい。
一般式(9)のメルカプトアルカンスルホン酸と一般式(10)のアルキルアミンとの反応は、室温付近で速やかに進行し、目的とするメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩が生成する。
上記各反応により生成する一般式(6)のメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、通常行われている単離、精製手段、例えば、減圧濃縮などにより、反応混合物から容易に単離し、精製される。
一般式(6)で表されるメルカプトアルカンスルホン酸アンモニウム塩は、水溶性かつ油溶性であり、臭気がなく、低毒性で、高い連鎖移動係数を有している。
ポリアゾ化合物及びポリメリックペルオキシド化合物からなる群より選ばれた重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下で、ビニル単量体及びマクロモノマーをラジカル共重合するに当たり、重合開始剤を、ビニル単量体1モル当たり、通常0.001〜0.2モル程度、好ましくは0.01〜0.1モル程度で使用するのがよい。マクロモノマーは、ビニル単量体1モル当たり、通常0.001〜0.4モル程度、好ましくは0.01〜0.2モル程度で使用するのがよい。連鎖移動剤は、ビニル単量体1モル当たり、通常0.001〜0.2モル程度、好ましくは0.01〜0.1モル程度で使用するのがよい。
重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下でのビニル単量体及びマクロモノマーのラジカル共重合には、公知の溶液重合法などが適用できる。溶液重合における溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸シクロヘキシル、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどが使用できる。
上記重合反応により生成するグラフト鎖ブロック共重合体Aは、通常行われている単離、精製手段により、重合反応溶液から容易に単離し、精製される。
グラフト鎖ブロック共重合体B
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体は、例えば、相溶性を有するポリマー鎖(1)と親水性ポリマー鎖(2)とがブロック結合しており、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している。このグラフト鎖ブロック共重合体(以下、「グラフト鎖ブロック共重合体B」という)は、例えば、下記の模式図に示すような構造を有している。
Figure 2007023060
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Bは、相溶性を有するポリマー鎖(1)及び親水性ポリマー鎖(2)は交互に繰り返しブロック結合していてもよい。この場合も、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している。
相溶性を有するポリマー鎖(1)と親水性ポリマー鎖(2)とが交互に繰り返しブロック結合している場合、ポリマー鎖(1)及びポリマー鎖(2)の繰返し単位は、通常5以下、好ましくは1〜3程度である。
相溶性を有するポリマー鎖(1)と親水性ポリマー鎖(2)とが交互に繰り返しブロック結合している場合、疎水性ポリマー鎖(3)は全ての相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している必要はない。
親水性ポリマー鎖(2)が相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している場合、1個の相溶性を有するポリマー鎖(1)に対してグラフト重合している親水性ポリマー鎖(2)の数は、平均2〜10個程度である。
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Bにおける疎水性ポリマー鎖(3)の占める割合は、10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。親水性ポリマー鎖(2)は、グラフト鎖ブロック共重合体Bから疎水性ポリマー鎖(3)を除いた残部の30〜80重量%、好ましくは40〜70重量%である。更に、グラフト鎖ブロック共重合体から疎水性ポリマー鎖(3)及び親水性ポリマー鎖(2)を除いた残部が相溶性ポリマー鎖(1)である。
相溶性ポリマー鎖(1)、親水性ポリマー鎖(2)及び疎水性ポリマー鎖(3)の割合が上記範囲内である場合には、グラフト鎖ブロック共重合体Bに、樹脂成形品に顕著に優れた導電性ないし帯電防止性を長期に亘って付与し得る性質、樹脂成形品表面を非粘着状態に長期間維持できる性質及び格段に優れた耐ブロッキング性を付与することができる。
グラフト鎖ブロック共重合体Bにおける相溶性ポリマー鎖(1)の重量平均分子量は1500〜8000程度(好ましくは1800〜3000程度)、親水性ポリマー鎖(2)の分子量は1000〜10000程度(好ましくは9000〜9400程度)及び疎水性ポリマー鎖(3)の分子量は500〜6000程度(好ましくは1200程度)である。
相溶性ポリマー鎖(1)は、合成樹脂に対して相溶性を示すので、樹脂の内部に捕捉され、樹脂内部で存在する。
親水性ポリマー鎖(2)は、合成樹脂に対して難溶性を示すので、樹脂を加熱して樹脂成形品を製造した際に、樹脂成形品表面の近傍に存在して導電性を発現する。
疎水性ポリマー鎖(3)は、合成樹脂に対して非相溶性を示すので、樹脂を加熱して樹脂成形品を製造する際(この段階では、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bと合成樹脂とが混合溶融された状態になっている)に、グラフト鎖ブロック共重合体Bの疎水性ポリマー鎖(3)の部分が樹脂成形品表面に移行し、それに伴って疎水性ポリマー鎖(3)にブロック結合された親水性ポリマー鎖(2)も樹脂成形品表面に移行し、その結果、樹脂成形品内部よりも表面部において本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bの濃度が高くなる。疎水性ポリマー鎖(3)は、樹脂成形品表面で極めて薄い被膜を形成し、樹脂成形品の最表面を疎水性にし、樹脂成形品表面の水に対する濡れ性を悪くし、親水性ポリマー鎖(2)による粘着性を低減させ、樹脂成形品表面を乾質状態に維持する役割を果たす。
疎水性ポリマー鎖(3)で構成される被膜は非常に薄い(例えば、0.05〜0.1μm程度)ので、親水性ポリマー鎖(2)による導電性を殆ど阻害しない。
相溶性ポリマー鎖(1)は、合成樹脂成形品の内部に捕捉されている。また、相溶性ポリマー鎖(1)にグラフト結合している疎水性ポリマー鎖(3)は、樹脂成形品の最表面で極めて薄い被膜を形成している。このために、相溶性ポリマー鎖(1)と化学的に結合している親水性ポリマー鎖(2)は合成樹脂成形品から容易に脱離しない。その結果、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bは、長期間に亘って優れた導電性能(帯電防止性能)を発揮することができる。
本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bは、例えば、ポリアゾ化合物及びポリメリックペルオキシド化合物からなる群より選ばれた重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下で、ビニル単量体及びマクロモノマーをラジカル共重合することにより製造される。
本発明のグラフト鎖ブロック共重合体Bを製造するに当たっては、重合開始剤及びマクロモノマーを以下の組み合わせで用いるのがよい。
重合開始剤として親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び/又は親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物を使用し、マクロモノマーとして疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーを使用する。
親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物としては、例えば、以下に示すポリエチレングリコールを含むポリアゾ化合物を挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、m5は3〜200の整数、n5は3〜50の整数を示す。]
Figure 2007023060
[式中、m6は3〜200の整数、n6は3〜50の整数を示す。]
親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物としては、例えば、以下に示す化合物を挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、m7は3〜50の整数、n7は2〜10の整数を示す。]
これら親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
好ましい親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物は、m6が20〜50の整数、n6が5〜15の整数を示す上記一般式(12)で表されるポリアゾ化合物である。
好ましい親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物は、m7が10〜30の整数、n7が3〜5の整数を示す上記一般式(13)で表されるポリアゾ化合物である。
疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとしては、例えば、以下に示すポリ有機シロキサンのマクロモノマー、パーフルオロアルキル基を有するマクロモノマーなどを挙げることができる。
ポリ有機シロキサンのマクロモノマーとしては、下記一般式(14)で表されるマクロモノマーを挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、R11は水素原子又はメチル基を示す。n8は2〜200の整数を示す。]
パーフルオロアルキル基を有するマクロモノマーとしては、下記一般式(15)で表されるマクロモノマーを挙げることができる。
Figure 2007023060
[式中、R12は水素原子又はメチル基を示す。R13はパーフルオロアルキル基を示す。n9は1又は2を示す。]
13で示されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、ノナフルオロブチル、トリデカフルオロヘキシル、ヘプタデカフルオロオクチル、ヘンイコサフルオロデシル、デカフルオロ−3−メチルブチル、ペンタデカフルオロ−5−メチルヘキシル、ノナデカフルオロ−7−メチルオクチル、4H−オクタフルオロブチル、6H−ドデカフルオロヘキシル、8H−ヘキサデカフルオロオクチル、10H−イコサフルオロデシル基などが挙げられる。
これらのマクロモノマーは、1種単独又は2種以上混合して使用される。
好ましい疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーは、n8が6〜30の整数を示す上記一般式(14)で表されるマクロモノマーである。
ビニル単量体及び連鎖移動剤としては、グラフト鎖ブロック共重合体Aを製造する際に用いられるビニル単量体及び連鎖移動剤をいずれも使用することができる。
本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bが帯電防止剤として所望の性能を具備するためには、本発明グラフト鎖ブロック共重合体Bにおける疎水性ポリマー鎖(3)の凝集エネルギー密度(又は溶解度パラメータ)が、相溶性ポリマー鎖(1)、親水性ポリマー鎖(2)及び合成樹脂の凝集エネルギー密度(又は溶解度パラメータ)と比べて小さいことが望ましい。上記で例示した重合開始剤、マクロモノマー及びビニル単量体の組み合わせは、この条件を満たしている。
重合開始剤、マクロモノマー、ビニル単量体及び連鎖移動剤の使用割合としては、グラフト鎖ブロック共重合体Aを製造する方法におけるそれらと同じでよい。
重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下でのビニル単量体及びマクロモノマーのラジカル共重合には、グラフト鎖ブロック共重合体Aを製造する方法において説明した公知の溶液重合法などが広く適用でき、これら重合反応条件もグラフト鎖ブロック共重合体Aを製造する方法におけるそれらと同じでよい。
本発明の帯電防止剤は、合成樹脂成形品の表面に帯電防止性を付与するために使用される。
本発明帯電防止剤の適用可能な合成樹脂としては、本発明帯電防止剤中の相溶性ポリマー鎖(1)と相溶性のある合成樹脂を挙げることができる。
このような合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンなどのビニル系樹脂;ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテルなどを主成分とする樹脂が挙げられる。
また、本発明帯電防止剤と相溶性がない合成樹脂であっても、適当な相溶化剤を配合することにより、本発明帯電防止剤を該樹脂中に安定に分散させることができるので、ポリカーボネート、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどに対しても適用可能である。
ここで相溶化剤としては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリカーボネート−ポリスチレンブロック共重合体、ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体、ポリエチレン−ポリスチレングラフト共重合体、ポリアミド−ポリスチレンブロック共重合体などが挙げられる。
本発明帯電防止剤を合成樹脂の帯電防止性付与に使用するに当たっては、合成樹脂の表面を本発明帯電防止剤で被覆する方法及び合成樹脂に本発明帯電防止剤を混合する方法を適用すればよい。
前者の方法は、本発明帯電防止剤を合成樹脂成形品の表面に積層被覆して帯電防止層を形成し、樹脂成形品に帯電防止性を付与するものである。具体的には、(i)本発明帯電防止剤を溶剤に溶解又は分散した液を樹脂成形品の表面に吹きつけ、乾燥し、固着する方法、(ii)本発明帯電防止剤を含む塗料を樹脂成形品の表面に塗布し、乾燥する方法、(iii)本発明帯電防止剤を含む塗料をフィルム上に塗布し、乾燥し、該フィルムを樹脂成形品の表面にプレス又はラミネートする方法、更に、(iv)本発明帯電防止剤又は帯電防止剤を含む樹脂から形成したフィルムを樹脂成形品の表面に接着又は熱圧着する方法などを例示できる。
これらの方法では、本発明帯電防止剤をフィルムないし被膜にするので、本発明帯電防止剤の使用量を減ずることができるので、安価であり、また、本発明帯電防止剤と相溶性のない樹脂に対しても有効に使用できる利点がある。
後者の方法は、帯電防止剤を合成樹脂中に混練し、溶融成形して、樹脂成形品の表面に帯電防止性を付与するものである。具体的には、帯電防止剤と合成樹脂とを混練溶融し、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、注型法などの公知の方法を適用して所望形状の成形品とする方法である。この方法では、樹脂成形品の表面から本発明帯電防止剤が脱離することがなく、優れた帯電防止効果を長期に亘って発現できる。
合成樹脂中に本発明帯電防止剤を混合する場合、帯電防止剤の配合量を、上記帯電防止剤中の親水性ポリマー鎖(2)の樹脂中への含有量が1〜15重量%程度、特に2〜6重量%程度となるようにするのが好ましい。
本発明帯電防止剤を上記方法で適用した樹脂成形品は、樹脂表面の電気抵抗を低下させて表面が帯電せず、しかも、疎水性ポリマー鎖(3)の存在によって成形品表面が湿潤状態にならず、べとつかず、常に乾性の状態を維持でき、粘着性がないので、埃や粉塵が付着しにくく、汚れにくく、更に、耐ブロッキング性を容易に確保できるので、樹脂同士を重積して保管する場合にも密着することがない。
このような樹脂成形品の用途として、例えば、ラジオ、テレビ、オーディオセット、エアコンデイショナー、掃除機、洗濯機などの電気製品;シート、フィルム、ボトルなどの包装材料・容器;ボールペン、歯ブラシなどの文房具・雑貨類;パイプ、シートや板などの工業製品が挙げられる。
合成樹脂成形品の他の用途としては、特に、集積回路など半導体材料部品の製造工程で使用される容器・トレー、半導体製造工場のクリーンルーム、その製造装置・設備・器具を構成する樹脂製の部材などが挙げられる。半導体製造工程では、挨及び粉塵を極度に嫌うが、本発明の樹脂成形品は、帯電性及び粘着性を有していないので、埃及び粉塵の付着を防止できる。また、本発明帯電防止剤は、金属を含有しないので、本発明帯電防止剤で処理された樹脂成形品は、半導体製造工程で生ずる腐食液及び洗浄液を処理しても金属の溶出する虞れがない。このため、半導体が金属で汚染されることなく、また、容器及び部材を透明ないし半透明に保持できる利点がある。
本発明は、合成樹脂成形品に格段に優れた導電性ないし帯電防止性を付与し得ると共に、樹脂表面を非粘着状態に保ち、優れた耐ブロッキング性を備えたものにすることのできる帯電防止剤を提供する。
本発明帯電防止剤における相溶性を有するポリマー鎖(1)は、合成樹脂成形品内部に固着され安定化されているので、樹脂成形品表面の水分の存在、摩擦などによっても、親水性を有するポリマー鎖(2)が剥離乃至消失することがなく、合成樹脂成形品は長期に亘って優れた帯電防止効果を発現し得る。
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1
連鎖移動剤(3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム、MPS)の合成
内径25mm、高さ600mmの円柱状カラムにイオン交換水に分散させた強酸性イオン交換樹脂(アンバーライト、登録商標)500mlを充填した。3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム40.0g(224mmol)をイオン交換水160mlに溶解させ、2リットル/時の速度で樹脂内を通し、3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を得た。3−メルカプトプロパンスルホン酸水溶液を激しく撹拌し、トリn−ブチルアミン41.9g(226mmol)を滴下し、エバポレーターにて減圧濃縮を行い、やや粘性のある無色透明液体として、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム76.1g(収率99.2%)を得た。
得られた化合物の1H−NMRの解析データは以下の通りである。
1H−NMR(CDCl3,ppm):
0.99(t,3HH=14.4Hz,9H),1.4−1.5(m,7H),1.7−1.8(m,6H),2.1−2.2(m,2H),2.7(dt,3HH=7.5Hz,3HH=7.5Hz,2H),3.0−3.1(m,8H),10.5(brs,1H)。
実施例1
グラフト鎖ブロック共重合体Aの合成
ポリアゾ化合物、ビニル単量体、マクロモノマー及び連鎖移動剤として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPS−0501(PDMS−MAI、疎水性ポリマー鎖(ポリジメチルシロキサン)を有するポリアゾ化合物、一般式(1)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:スチレン(St)
マクロモノマー:日本油脂(株)製のブレンマーPME1000(PEG−MM、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するマクロモノマー)
連鎖移動剤:参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)
還流冷却器及び窒素導入管付きのフラスコ内で、ポリアゾ化合物(PDMS−MAI)5.77重量部をメチルエチルケトン26.16重量部に加えて溶解し、ここにスチレン5.77重量部、マクロモノマー(PEG−MM)5.18重量部及び参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)0.22重量部を添加し、窒素気流中で79.6℃に加熱して6時間重合させた。重合溶液を濃縮乾固し、更に残存するメチルエチルケトンをn−ヘキサンで抽出除去した後、真空乾燥して、グラフト鎖ブロック共重合体(主鎖がポリスチレン−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体であり、ポリスチレンにポリエチレングリコールがグラフト結合している)10.5重量部を得た。
得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は39重量%、ポリスチレン含有率は17重量%、ポリジメチルシロキサン含有率は43重量%及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム含有率は1重量%であった。
また、得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:4,200、Mw:20,800、Mw/Mn:5.0であった。
実施例2
グラフト鎖ブロック共重合体Bの合成
ポリアゾ化合物、ビニル単量体、マクロモノマー及び連鎖移動剤として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPE−0201(PEG−MAI、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するポリアゾ化合物、一般式(12)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:スチレン(St)
マクロモノマー:チッソ(株)製のサイラプレーンFM−0711(PDMS−MM、疎水性ポリマー鎖(ポリジメチルシロキサン)を有するマクロモノマー)
連鎖移動剤:参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)
還流冷却器及び窒素導入管付きのフラスコ内で、ポリアゾ化合物(PEG−MAI)5.77重量部をメチルエチルケトン26.14重量部に加えて溶解し、ここにスチレン5.77重量部,マクロモノマー(PDMS−MM)5.77重量部及び参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)0.22重量部を添加し、窒素気流中で79.6℃に加熱して6時間重合させた。重合溶液を濃縮乾固し、更に残存するメチルエチルケトンをn−ヘキサンで抽出除去した後、真空乾燥して、グラフト鎖ブロック共重合体(主鎖がポリスチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体であり、ポリスチレンにポリジメチルシロキサンがグラフト結合している)10.0重量部を得た。
得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は39重量%、ポリスチレン含有率は26重量%、ポリジメチルシロキサン含有率は33重量%及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム含有率は2重量%であった。
また、得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:8,600、Mw:23,000、Mw/Mn:2.7であった。
実施例3
グラフト鎖ブロック共重合体Aの合成
ポリアゾ化合物、ビニル単量体、マクロモノマー及び連鎖移動剤として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPS−0501(PDMS−MAI、疎水性ポリマー鎖(ポリジメチルシロキサン)を有するポリアゾ化合物、一般式(1)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:メタクリル酸メチル(MMA)
マクロモノマー:日本油脂(株)製のブレンマーPME1000(PEG−MM、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するマクロモノマー)
連鎖移動剤:参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)
還流冷却器及び窒素導入管付きのフラスコ内で、ポリアゾ化合物(PDMS−MAI)5.77重量部をメチルエチルケトン26.15重量部に加えて溶解し、ここにメタクリル酸メチル5.77重量部、マクロモノマー(PEG−MM)5.77重量部及び参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)0.22重量部を添加し、窒素気流中で79.6℃に加熱して6時間重合させた。重合溶液を濃縮乾固し、更に残存するメチルエチルケトンをn−ヘキサンで抽出除去した後、真空乾燥して、グラフト鎖ブロック共重合体(主鎖がポリメタクリル酸メチル−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体であり、ポリメタクリル酸メチルにポリエチレングリコールがグラフト結合している)12.1重量部を得た。
得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は39重量%、ポリメタクリル酸メチル含有率は20重量%、ポリジメチルシロキサン含有率は40重量%及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム含有率は1重量%であった。
また、得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:10,400、Mw:30,200、Mw/Mn:2.9であった。
実施例4
グラフト鎖ブロック共重合体Bの合成
ポリアゾ化合物、ビニル単量体、マクロモノマー及び連鎖移動剤として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPE−0201(PEG−MAI、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するポリアゾ化合物、一般式(12)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:スチレン(St)及びアクリロニトリル(AN)
マクロモノマー:チッソ(株)製のサイラプレーンFM−0711(PDMS−MM、疎水性ポリマー鎖(ポリジメチルシロキサン)を有するマクロモノマー)
連鎖移動剤:参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)
還流冷却器及び窒素導入管付きのフラスコ内で、ポリアゾ化合物(PEG−MAI)5.77重量部をメチルエチルケトン26.18重量部に加えて溶解し、ここにスチレン4.72重量部、アクリロニトリル1.07重量部、マクロモノマー(PDMS−MM)5.77重量部及び参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)0.22重量部を添加し、窒素気流中で79.6℃に加熱して6時間重合させた。重合溶液を濃縮乾固し、更に残存するメチルエチルケトンをn−ヘキサンで抽出除去した後、真空乾燥して、グラフト鎖ブロック共重合体(主鎖がスチレン・アクリロニトリル共重合体とポリエチレングリコールとのブロック共重合体であり、スチレン・アクリロニトリル共重合体にポリジメチルシロキサンがグラフト結合している)11.1重量部を得た。
得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は38重量%、スチレン含有率は17重量%、アクリロニトリル含有率は4重量%、ポリジメチルシロキサン含有率は40重量%及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム含有率は1重量%であった。
また、得られたグラフト鎖ブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:8,400、Mw:24,800、Mw/Mn:3.0であった。
比較例1
ブロック共重合体の合成
ポリアゾ化合物及びビニル単量体として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPE−0201(PEG−MAI、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するポリアゾ化合物、一般式(12)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:スチレン(St)
還流冷却器及び窒素導入管付きのフラスコ内で、ポリアゾ化合物(PEG−MAI)46重量部をジメチルホルムアミド94重量部に加えて溶解し、ここにスチレン45重量部を添加し、窒素気流中で80℃に加熱して6時間重合させた。重合溶液を大過剰のメタノールに投入して濾別した後、真空乾燥して、ポリエチレングリコール−ポリスチレンのブロック共重合体63重量部を得た。
得られたブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は52重量%及びスチレン含有率は48重量%であった。
また、得られたブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:73,600、Mw:115,100、Mw/Mn:1.6であった。
比較例2
ブロック共重合体の合成
ポリアゾ化合物、ビニル単量体及び連鎖移動剤として、以下に示すものを使用した。
ポリアゾ化合物:和光純薬工業(株)製のマクロアゾ化合物VPE−0201(PEG−MAI、親水性ポリマー鎖(ポリエチレングリコール)を有するポリアゾ化合物、一般式(12)で表されるポリアゾ化合物)
ビニル単量体:スチレン(St)
連鎖移動剤:参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)
試験管中でポリアゾ化合物(PEG−MAI)2.36重量部をジメチルホルムアミド4.73重量部に加えて溶解し、ここにスチレン2.31重量部及び参考例1で得られた連鎖移動剤(MPS)0.07重量部を添加し、窒素ガスで置換した後、シリコン栓をして80℃に加熱し6時間重合させた。重合溶液を濃縮乾固し、更に残存するジメチルホルムアミドをジエチルエーテルで抽出除去した後、真空乾燥して、ポリエチレングリコール−ポリスチレンのブロック共重合体3.52重量部を得た。
得られたブロック共重合体について、NMR分析を行った結果、該共重合体中のポリエチレングリコール含有率は52重量%、ポリスチレン含有率は46重量%、3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム含有率は2重量%であった。
また、得られたブロック共重合体について、GPC分析を行った結果、該共重合体の分子量は、Mn:25,300、Mw:57,200、Mw/Mn:2.3であった。
試験例1
実施例1及び実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体並びに比較例1及び比較例2で得られたブロック共重合体について、帯電防止性能を調べた。
これら共重合体中の相溶性セグメント鎖と同じ構造(相溶性)である合成樹脂としてポリスチレン樹脂を選び、これに上記各共重合体(帯電防止剤)の配合量を変えて添加し、溶融混練し、射出成形してシート状のポリスチレン成形品にした。
これらの成形品について、帯電防止性及び表面対水接触角を測定した。表面対水接触角は、表面の湿潤性又は粘着性を評価するもので、表面対水接触角が小さいほど水の濡れ性が大きいことになる。
帯電防止性の測定は、日本スタチック(株)製のスタチックメータS−4104型により、ポリスチレンの帯電初期の表面の帯電圧に対する漏洩60秒経過時点での帯電圧の比をもって帯電防止性を評価した。表面対水接触角の測定は、エルマ光学(株)製の接触角測定器を用いて行った。
(1)帯電防止性能の評価
実施例1で得られたグラフト鎖ブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成(ポリエチレングリコール及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム)含有率と成形品の帯電防止性との関係を図1に示す。
図1から、ポリスチレン成形品中の親水性組成含有率が2重量%以上になると、帯電防止性能が向上することが分る。
実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成(ポリエチレングリコール及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム)含有率と成形品の帯電防止性との関係を図2に示す。
図2から、ポリスチレン成形品中の親水性組成含有率が5重量%以上になると、帯電防止性能が向上することが分る。
比較例1で得られたブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成(ポリエチレングリコール)含有率と成形品の帯電防止性との関係を図3に示す。
図3から、ポリスチレン成形品中の親水性組成含有率が5重量%以上になると、帯電防止性能が向上することが分る。
比較例2で得られたブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成(ポリエチレングリコール及び3−メルカプトプロパンスルホン酸トリブチルアンモニウム)含有率と成形品の帯電防止性との関係を図4に示す。
図4から、ポリスチレン成形品中の親水性組成含有率が3重量%以上になると、帯電防止性能が向上することが分る。
(2)表面対水接触角の評価
図5及び図6は、それぞれ実施例1及び実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。図7及び図8は、それぞれ比較例1及び比較例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。
図5〜図8から、次のことが明らかである。
ブロック共重合体を添加しないポリスチレン成形品では表面対水接触角は83度であるが、比較例1及び比較例2のように、帯電防止性の現われた領域での表面対水接触角は、最高でそれぞれ69度及び46度となり、ポリスチレン成形品中の親水性組成含有率が大きくなるに従って、表面対水接触角がポリスチレン成形品のそれに比べて大きく低下し、ポリスチレン成形品の表面は湿潤性を帯びる。
これに対して、実施例1及び実施例2のものは、帯電防止性の現われた領域で表面対水接触角は殆ど低下せず、帯電防止性の現われた広い領域で大きい表面対水接触角を示す。従って、実施例1及び実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面は、本来のポリスチレン成形品の表面と同様に、粘着性がなく乾性を示し、滑りもよい。
図1は、実施例1で得られたグラフト鎖ブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成含有率と成形品の帯電防止性との関係を示すグラフである。 図2は、実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成含有率と成形品の帯電防止性との関係を示すグラフである。 図3は、比較例1で得られたブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成含有率と成形品の帯電防止性との関係を示すグラフである。 図4は、比較例2で得られたブロック共重合体をポリスチレン成形品に添加したときの該成形品中の親水性組成含有率と成形品の帯電防止性との関係を示すグラフである。 図5は、実施例1で得られたグラフト鎖ブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。 図6は、実施例2で得られたグラフト鎖ブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。 図7は、比較例1で得られたブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。 図8は、比較例2で得られたブロック共重合体を配合したポリスチレン成形品の表面対水接触角と親水性組成含有率との関係を示すグラフである。

Claims (18)

  1. 合成樹脂成形品の表面に帯電防止能を付与するための帯電防止剤であって、
    前記帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、
    前記グラフト鎖ブロック共重合体は、(1)合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖、(2)導電機能を有する親水性ポリマー鎖及び(3)樹脂成形品表面を疎水化する疎水性ポリマー鎖を有している、
    帯電防止剤。
  2. 相溶性を有するポリマー鎖(1)及び疎水性ポリマー鎖(3)は連結され、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、請求項1に記載の帯電防止剤。
  3. 相溶性を有するポリマー鎖(1)及び疎水性ポリマー鎖(3)は交互に繰り返し連結され、親水性ポリマー鎖(2)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、請求項1に記載の帯電防止剤。
  4. 相溶性を有するポリマー鎖(1)及び親水性ポリマー鎖(2)は連結され、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、請求項1に記載の帯電防止剤。
  5. 相溶性を有するポリマー鎖(1)及び親水性ポリマー鎖(2)は交互に繰り返し連結され、疎水性ポリマー鎖(3)は相溶性を有するポリマー鎖(1)にグラフト結合している、請求項1に記載の帯電防止剤。
  6. 合成樹脂成形品の表面に帯電防止性を付与するための帯電防止剤であって、
    前記帯電防止剤はグラフト鎖を有するブロック共重合体からなり、
    前記グラフト鎖ブロック共重合体は、ポリアゾ化合物及びポリメリックペルオキシド化合物からなる群より選ばれた重合開始剤並びに連鎖移動剤の存在下で、ビニル単量体及びマクロモノマーをラジカル共重合することにより製造されたものである、
    帯電防止剤。
  7. 前記ポリアゾ化合物が疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、請求項6に記載の帯電防止剤。
  8. 前記疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物がポリ有機シロキサンを含むポリアゾ化合物であり、前記親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーがポリエチレングリコールのマクロモノマーである請求項7に記載の帯電防止剤。
  9. 前記ポリメリックペルオキシド化合物が疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、請求項6に記載の帯電防止剤。
  10. 前記ポリアゾ化合物が親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、請求項6に記載の帯電防止剤。
  11. 前記親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物がポリエチレングリコールを含むポリアゾ化合物であり、前記疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーがポリ有機シロキサンのマクロモノマー及びパーフルオロアルキル基を有するマクロモノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項10に記載の帯電防止剤。
  12. 前記ポリメリックペルオキシド化合物が親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物であり、前記ビニル単量体が合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体であり、且つ、前記マクロモノマーが疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーである、請求項6に記載の帯電防止剤。
  13. 疎水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
    帯電防止剤の製造方法。
  14. 疎水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と親水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
    帯電防止剤の製造方法。
  15. 親水性ポリマー鎖を有するポリアゾ化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
    帯電防止剤の製造方法。
  16. 親水性ポリマー鎖を有するポリメリックペルオキシド化合物及び連鎖移動剤の存在下で、合成樹脂に対して相溶性を有するポリマー鎖を構成し得るビニル単量体と疎水性ポリマー鎖を有するマクロモノマーとをラジカル共重合する工程を含む、
    帯電防止剤の製造方法。
  17. 請求項1〜12のいずれかに記載の帯電防止剤からなる被膜を合成樹脂の表面に形成してなる合成樹脂成形品。
  18. 請求項1〜12のいずれかに記載の帯電防止剤と合成樹脂とを混練し、次いで混練物を溶融成形して得られる合成樹脂成形品。
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