JP5059361B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
上記用途においては、熱可塑性樹脂又はこれを含む組成物に、未反応単量体、オリゴマー、溶媒、反応助剤等が残留していると、電子機器等の保持中、搬送中等において、これらの成分が揮発する等により該電子機器等に付着し、機器の性能が低下、外観性が低下する場合がある。特許文献1には、アウトガスの発生量が極めて少なく、且つ、帯電防止性(制電性)に優れた成形体を与える熱可塑性樹脂組成物が開示されており、該組成物をより高純度とする方法が開示されている。
1.制電性樹脂組成物を含む成形部を、熱可塑性重合体を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層してなる積層体において、
上記制電性樹脂組成物は、下記の成分[A]70〜95質量%及び成分[B]5〜30質量%〔但し、[A]+[B]=100質量%である。〕を含有する組成物であって、ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%であり、且つ、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、上記制電性樹脂組成物1gに対し、10,000μg以下であり、
上記熱可塑性重合体は、下記の成分[A]を含有することを特徴とする積層体。
成分[A];ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記単量体成分(b)の共重合体(A2)とからなる混合物。
成分[B];ポリアミド系エラストマーからなる高分子型帯電防止剤。
2.上記単量体(b1)が、メタクリル酸メチル10〜90質量%及び芳香族ビニル化合物90〜10質量%〔但し、これらの合計は、100質量%である。〕である上記1に記載の積層体。
3.上記成形部が上記支持体の両面に配されてなる上記1又は2に記載の積層体。
4.電子機器の容器、又は、電子機器製造設備に用いられる上記1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
5.上記1に記載の積層体を製造する方法であって、
上記成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、上記制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
また、「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたものである。
また、本発明の積層体の製造方法は、成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする。
1.制電性樹脂組成物
制電性樹脂組成物(以下、単に「本発明に係る組成物」ともいう。)は、ゴム質重合体を用いて製造された特定の樹脂成分と、高分子型帯電防止剤とを含有する組成物であり、組成物中のゴム質重合体の含有量が5〜40質量%であり、且つ、本組成物1gに対し、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、20,000μg以下の性質を備える。
この成分[A]は、ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上、又は、ゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上と、単量体成分(b)の共重合体の1種以上とからなる混合物である(以下、この成分[A]を、「ゴム強化樹脂[A]」ということもある。)。
ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられるゴム質重合体(a)は、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよい。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体;上記各(共)重合体の水素化物等が挙げられる。
これらのうち、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体等が特に好ましい。
尚、上記各(共)重合体は、ブロック(共)重合体でもよいし、ランダム(共)重合体でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、ゴム強化共重合樹脂(A1)の製造の際には、上記のゴム質重合体(a)及び単量体成分(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、単量体成分(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化共重合樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
尚、複数のゴム強化共重合樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化共重合樹脂(A1)とすることができる。
溶液重合の場合、通常、単量体成分(b)を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の不活性重合溶媒に溶解させ、重合開始剤の存在下に重合してよいし、あるいは、重合開始剤の非存在下に熱重合してもよい。尚、溶液重合の際の重合温度は、通常、100〜150℃、好ましくは100〜130℃である。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラムをアセトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
尚、上記のグラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)を製造するときの重合条件、即ち、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
従って、共重合体(A2)は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いた単量体成分(b)と同一種類の単量体を同一組成で重合してなる重合体であってもよいし、同一種類の単量体を異なる組成で重合してなる重合体であってもよいし、更には、異なる種類の単量体を重合してなる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
(i)メタクリル酸メチル・芳香族ビニル化合物共重合体
この(i)において、好ましい各化合物単位量は、全量を100質量%とした場合、50〜90質量%及び50〜10質量%、より好ましくは60〜90質量%及び40〜10質量%、更に好ましくは60〜80質量%及び40〜20質量%である。
この共重合体の具体例は、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・α−メチルスチレン共重合体等である。
また、この共重合体(A2)の極限粘度[η]は、重合条件を調整することにより制御することができる。
この成分[B]は、高分子型帯電防止剤であり、ポリアミド系エラストマー(ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド等を含む)である。この帯電防止剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
このポリアミド系エラストマーの代表的なものとしては、ポリアミド成分からなるハードセグメント(x1)と、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分からなるソフトセグメント(x2)とを含むブロック共重合体等である。
また、アミノカルボン酸としては、アミノカプロン酸、アミノエナン酸、アミノカプリル酸、アミノベルゴン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
HO(CH2CH2O)m(CH2CH(X)O)nH (I)
〔式中、Xは、水素原子(−H)又は置換基−CH3、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2Iもしくは−CH2OCH3を表し、n≧0、m≧0且つ(n+m)≧20である。〕
尚、上記ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の両末端は、アミノ化及び/又はカルボキシル化されていてもよい。
ポリアミド成分及びポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の各使用割合は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10〜95質量%及び90〜5質量%、より好ましくは20〜90質量%及び80〜10質量%、特に好ましくは30〜70質量%及び70〜30質量%である。ポリアミド成分の使用割合が10質量%未満では、得られるポリアミド系エラストマーと熱可塑性樹脂との相溶性が十分でない場合があり、一方、95質量%を超えると、帯電防止剤としての効果が発揮されない場合がある。
重合の際には、アンチモン系触媒、スズ系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、酢酸金属塩系触媒等を用いることができる。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらのうち、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が好ましい。また、これらのジカルボン酸は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハロゲン化物は、好ましくは、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物である。
また、無機酸塩は、好ましくは、アルカリ金属の無機酸塩である。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属の無機酸塩としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩等が挙げられる。
上記塩類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記塩類の配合量は、上記のポリアミド系エラストマー100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
本発明に係る組成物において、上記の成分[A]及び[B]の含有割合は、これらの合計量を100質量%とした場合、それぞれ、70〜95質量%及び30〜5質量%であり、好ましくは75〜95質量%及び25〜5質量%、より好ましくは75〜90質量%及び25〜10質量%、更に好ましくは75〜85質量%及び25〜15質量%である。この成分[A]の含有量が少なすぎる(成分[B]の含有量が多すぎる)と、剛性が低下し、フィルム、シート、容器等には不向きとなる場合がある。一方、成分[A]の含有量が多すぎる(成分[B]の含有量が少なすぎる)と、制電性が不十分となる。
上記低分子型帯電防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部である。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.05〜5質量部である。
上記耐候剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
上記充填剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.05〜20質量部である。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜0.5質量部である。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜0.5質量部である。
〔1〕組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、5〜40質量%であり、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、成形部の耐衝撃性が十分でない傾向にあり、多すぎると、成形加工性、成形部の表面外観性、剛性、耐熱性等が十分でない傾向にある。
〔2〕熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定(以下、「PyGC測定」ともいう。)を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質(以下、「特定検出物」ともいう。)総量が、組成物1gに対し、10,000μg以下である。これらの数値は、いずれも、オクタデカン換算量である。特定検出物の総量が、高すぎると、本発明に係る組成物を用いて成形する際に臭気を発したり、得られた成形部から臭気を発したりする場合があり、電子機器の容器、製造設備等とした場合に、該電子機器の汚染、欠陥等の悪影響を及ぼす場合がある。
尚、上記特定検出物は、明らかではないが、成分[A]の形成にシアン化ビニル化合物(b2)を含む単量体成分(b)を用いた場合のシアン化ビニル化合物に由来する含窒素化合物と推測される。
熱分解温度 ; 423℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 30秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
〔3〕成分[A]の形成に用いた単量体(b1)及び単量体(b3)からなる単位をそれぞれ、単位(b1’)及び単位(b3’)とする。
尚、上記の単位(b1’)がメタクリル酸メチル単位及び芳香族ビニル化合物単位の各含有量は、これらの合計を100質量%とすると、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び90〜10質量%、より好ましくは10〜80質量%及び90〜20質量%、更に好ましくは20〜80質量%及び80〜20質量%である。
上記の単位(b1’)及び(b3’)の各含有量は、アセトンにより本発明に係る組成物から抽出した重合体成分、即ち、ゴム質重合体(a)、成分[B]、他の重合体等の重合体成分を含まない成分(以下、「アセトン可溶成分」ともいう。)に対し、PyGCにより求めることができる。
熱分解温度 ; 590℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 5秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
〔5〕本発明に係る組成物の、ISO 179に準じて測定されるシャルピー衝撃強さは、好ましくは8kJ/m2以上、より好ましくは10kJ/m2以上、更に好ましくは12kJ/m2以上である。
〔6〕本発明に係る組成物の、温度23℃及び湿度50%RHの条件における表面固有抵抗は、好ましくは1011Ω以下、より好ましくは1010Ω以下、更に好ましくは109Ω以下とすることができる。
この熱可塑性重合体は、成分[A]であり、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、この樹脂は、リサイクル品であってもよい。
好ましい形状は、シート及びフィルムのような平板状であり、その場合の好ましい平均厚さは0.05〜3mm、より好ましくは0.05〜2mm、更に好ましくは0.05〜1mmである。
好ましい形状は、シート及びフィルムのような平板状であり、その場合の好ましい平均厚さは0.05〜3mm、より好ましくは0.05〜2mm、更に好ましくは0.05〜1mmである。
従って、本発明の積層体が、例えば、平板状等である場合、支持体21と、該支持体21の片面のみに配設された成形部22とを備える態様2(図2参照)であってよいし、支持体21と、該支持体21の両面に配設された成形部22a及び22bとを備える態様2’(図3参照)であってもよい。
尚、図3の態様のように、複数の成形部を有する積層体とする場合には、各成形部の構成材料は、同一でも、異なってもよい。また、各成形部の厚さは、同一でも、異なってもよい。各成形部の構成材料が同一である場合には、両面において優れた制電性を有する積層体とすることができる。また、各成形部の構成材料が異なる場合には、上記組成物を含む一方の面において優れた制電性を有し、他方の面において制電性の程度の異なる積層体とすることができる。
下記の参考例、実施例及び比較例における、各評価項目の測定方法を以下に示す。
(1)PyGC測定による検出物質総量
ガスクロマトグラフ装置(型式「GC−14A」、島津製作所社製)に高周波誘導加熱方式の熱分解装置(型式「JPS−350」、日本分析工業社製)を装着した熱分解ガスクロマトグラフ装置を用い、約0.25gの試料(ペレットから調製)をパイロホイルに包み、下記条件で測定に供した。得られたクロマトグラフから、リテンションタイム10〜24分における検出物質を同定し、オクタデカン換算した合計量(検出物質総量)を求めた。
<測定条件>
熱分解温度 ; 423℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 30秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
(2)シャルピー衝撃強さ
ISO 179に準じて測定した。
(3)曇価
制電性樹脂組成物を用いて作製した板状試験片(厚さ2.4mm)を、温度23℃及び相対湿度50%のもとで、2日間静置した後、同条件にて、曇価を測定した。測定装置は、Gardner社製ヘイズメーター(商品名「haze−gard plus」)である。
(4)臭気
ペレット状態の制電性樹脂組成物を、サンプル瓶に入れ、温度80℃で1時間保持した後、臭気判定を行い、下記基準で評価した。
○;全くなかった。
×;異臭がした。
(5)制電性
試験片を、温度23℃、湿度50%RHの条件下、48時間放置した後、表面固有抵抗(Ω)を、抵抗率計(商品名「ハイレスタ−UP MCP−HT450」、三菱化学社製)により、印加電圧500Vで測定した。
(6)制電性樹脂組成物のアセトン可溶成分中の構成単位量
上記(1)と同じ分析装置を用い、メタクリル酸メチル単位、芳香族ビニル化合物単位(スチレン単位)及びシアン化ビニル化合物単位(アクリロニトリル単位)の各量を、下記条件により定量した。
<測定条件>
熱分解温度 ; 590℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 5秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
2−1.ゴム強化樹脂[A]
製造例1(ゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕の製造)
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム2部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径300nmのポリブタジエンゴムラテックス30部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル1部及びメタクリル酸メチル12部を投入し、攪拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄0.05部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部よりなる活性剤水溶液、並びにクメンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン12部、アクリロニトリル4部、メタクリル酸メチル37部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=24.3%/7.7%/68.0%であった。
撹拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径310nmのポリブタジエンゴムラテックス18部(固形分換算)、スチレン5部及びメタクリル酸メチル15部を投入し、撹拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄0.01部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部からなる活性剤水溶液、並びにクメンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン15部、メタクリル酸メチル47部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−2〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−2〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=26.9%/73.1%であった。
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム2部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径280nmのポリブタジエンゴムラテックス18部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル2部及びメタクリル酸メチル15部を投入し、攪拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄0.05部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部よりなる活性剤水溶液、並びにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン8部、アクリロニトリル8部、メタクリル酸メチル45部及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−3〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−3〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=14.0%/11.1%/74.9%であった。
体積平均粒子径450nmのポリブタジエンゴムラテックスを用いた以外は、製造例2と同様にして、ゴム強化共重合樹脂〔A1−4〕を製造した。このゴム強化共重合樹脂〔A1−4〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=27.1%/72.9%であった。
体積平均粒子径80nmのポリブタジエンゴムラテックスを用いた以外は、製造例2と同様にして、ゴム強化共重合樹脂〔A1−5〕を製造した。このゴム強化共重合樹脂〔A1−5〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=26.7%/73.3%であった。
内容積30リットルのリボン翼を備えたジャケット付き重合反応器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の重合反応器にスチレン21部、アクリロニトリル7部、メチルメタクリレート72部、トルエン20部を連続的に投入した。次いで、分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.1部をトルエン5部に溶解させた溶液、及び重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解させた溶液を連続的に供給した。1基目の重合反応器の温度は110℃に制御し、平均滞留時間を2時間として重合させた。重合転化率は60%であった。その後、得られた重合体溶液から、1基目の重合反応器の外部に設けられたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、トルエン、分子量調節剤及び重合開始剤の合計供給量と同量を連続的に取り出し、2基目の重合反応器に供給した。この2基目の重合反応器における重合温度は130℃、平均滞留時間は2時間として重合させた。重合転化率は80%であった。次いで、2基目の重合反応器から重合体溶液を取り出し、この重合体溶液を直接2軸3段ベント付き押出機に供給し、未反応単量体及び溶媒を除去し、共重合体〔A2−1〕を得た。この共重合体〔A2−1〕の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=28%/5%/67%であった。また、この共重合体〔A2−1〕のアセトン可溶分の極限粘度[η]は0.25dl/gであった。
〔B−1〕として、ナイロン6系ポリアミドエラストマー(商品名「ペレスタットNC4321」、三洋化成工業社製)を用いた。還元粘度ηsp/c(25℃、0.5g/100mlギ酸溶液)は、1.1dl/gである。
〔B−2〕として、ナイロン12系ポリアミドエラストマー(試作品)を用いた。還元粘度ηsp/c(25℃、0.5g/100mlギ酸溶液)は、1.5dl/gである。
参考例1−1
ゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕45部と、共重合体〔A2−1〕35部と、高分子系帯電防止剤〔B−1〕20部とを、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、この混合物を2軸押出機に導入して、表1に示すペレット化条件で、温度200〜240℃で溶融混練し、ペレット(制電性樹脂組成物S1)を得た。この制電性樹脂組成物S1について、上記のPyGC測定による検出物質総量、シャルピー衝撃強さ、曇価、臭気、及び表面固有抵抗の評価を行った。その結果を表1に示す。
表1に示す成分を所定量用い、参考例1−1と同様にして制電性樹脂組成物S2〜S11を得た。その後、同様の評価を行い、その結果を表1に併記した。
実施例1及び比較例1
上記で得た樹脂組成物S7又はS8からなる支持体(厚さ0.54mm)の表裏面に、制電性樹脂組成物S2からなる表裏層(成形部)を形成させ、図3に示すような3層型積層体を製造した。本3層型積層体について、断面を削り取り、上記のPyGC測定による検出物質総量、表面固有抵抗及び成形外観性の評価を行った。その結果を表2に示す。
表1及び表2より、以下のことが明らかである。
制電性樹脂組成物の評価において、参考例1−1〜1−6は、いずれも、試験片作製時の臭気発生がなく、耐衝撃性及び制電性に優れていた。また、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が少ないので、被接触物及びその周辺設備の汚染を抑制することができる成形体の製造が容易である。一方、参考例2−1及び2−2は、成分[B]を含有しない例であり、制電性に劣る。参考例2−3は、成分[B]を含有せず、また、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が多すぎて、本発明の範囲外にある例であり、被接触物及びその周辺設備の汚染を導くものと思われる。更に、参考例2−4及び2−5も、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が多すぎる例であり、被接触物及びその周辺設備の汚染を導くものと思われる。
2,2’及び2";積層体
21;支持体
22,22a及び22b;成形部
23;薄肉部。
Claims (5)
- 制電性樹脂組成物を含む成形部を、熱可塑性重合体を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層してなる積層体において、
上記制電性樹脂組成物は、下記の成分[A]70〜95質量%及び成分[B]5〜30質量%〔但し、[A]+[B]=100質量%である。〕を含有する組成物であって、ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%であり、且つ、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、上記制電性樹脂組成物1gに対し、10,000μg以下であり、
上記熱可塑性重合体は、下記の成分[A]を含有することを特徴とする積層体。
成分[A];ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記単量体成分(b)の共重合体(A2)とからなる混合物。
成分[B];ポリアミド系エラストマーからなる高分子型帯電防止剤。 - 上記単量体(b1)が、メタクリル酸メチル10〜90質量%及び芳香族ビニル化合物90〜10質量%〔但し、これらの合計は、100質量%である。〕である請求項1に記載の積層体。
- 上記成形部が上記支持体の両面に配されてなる請求項1又は2に記載の積層体。
- 電子機器の容器、又は、電子機器製造設備に用いられる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
- 請求項1に記載の積層体を製造する方法であって、
上記成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、上記制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
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