JP5059361B2 - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐衝撃性及び制電性に優れる積層体並びにその製造方法に関する。
近年、電子機器等の保持部材、保護部材、支持部材、容器等の成形材料として、熱可塑性樹脂が広く用いられている。この熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂等のゴム強化樹脂、オレフィン系樹脂等が好適といわれている。
上記用途においては、熱可塑性樹脂又はこれを含む組成物に、未反応単量体、オリゴマー、溶媒、反応助剤等が残留していると、電子機器等の保持中、搬送中等において、これらの成分が揮発する等により該電子機器等に付着し、機器の性能が低下、外観性が低下する場合がある。特許文献1には、アウトガスの発生量が極めて少なく、且つ、帯電防止性(制電性)に優れた成形体を与える熱可塑性樹脂組成物が開示されており、該組成物をより高純度とする方法が開示されている。
特開2005−139215号
本発明の目的は、積層体とした場合に、被接触物及びその周辺設備の、上記残留物質等による汚染を抑制することができ、耐衝撃性及び制電性に優れる積層体並びにその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、特定のゴム強化樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有する組成物が好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。詳しくは、熱分解ガスクロマトグラフィー測定を特定の条件下で行ったときの検出物質が上記課題に関係していることを見出し、その解決のために、シアン化ビニル化合物の使用量の少ない特定のゴム強化樹脂を用いることで、上記課題を解決することを見出したものである。
本発明は、以下に示される。
1.制電性樹脂組成物を含む成形を、熱可塑性重合体を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層してなる積層体において、
上記制電性樹脂組成物は、下記の成分[A]70〜95質量%及び成分[B]5〜30質量%〔但し、[A]+[B]=100質量%である。〕を含有する組成物であって、ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%であり、且つ、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、上記制電性樹脂組成物1gに対し、10,000μg以下であり、
上記熱可塑性重合体は、下記の成分[A]を含有することを特徴とする積層体。
成分[A];ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記単量体成分(b)の共重合体(A2)とからなる混合物。
成分[B];ポリアミド系エラストマーからなる高分子型帯電防止剤。
2.上記単量体(b1)が、メタクリル酸メチル10〜90質量%及び芳香族ビニル化合物90〜10質量%〔但し、これらの合計は、100質量%である。〕である上記1に記載の積層体。
3.上記成形部が上記支持体の両面に配されてなる上記1又は2に記載の積層体。
4.電子機器の容器、又は、電子機器製造設備に用いられる上記1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
5.上記1に記載の積層体を製造する方法であって、
上記成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、上記制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
本発明の積層体によれば、成形表面において接触する被接触物及びその周辺設備の汚染を抑制することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
また、「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたものである。
本発明の積層体は、後述する成分[A]及び[B]を含有する制電性樹脂組成物を含む成形部が、熱可塑性重合体として成分[A]を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層されてなるものである。
また、本発明の積層体の製造方法は、成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする。
1.制電性樹脂組成物
制電性樹脂組成物(以下、単に「本発明に係る組成物」ともいう。)は、ゴム質重合体を用いて製造された特定の樹脂成分と、高分子型帯電防止剤とを含有する組成物であり、組成物中のゴム質重合体の含有量が5〜40質量%であり、且つ、本組成物1gに対し、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、20,000μg以下の性質を備える。
1−1.成分[A]
この成分[A]は、ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上、又は、ゴム強化共重合樹脂(A1)の1種以上と、単量体成分(b)の共重合体の1種以上とからなる混合物である(以下、この成分[A]を、「ゴム強化樹脂[A]」ということもある。)。
ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられるゴム質重合体(a)は、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよい。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
ゴム質重合体(a)としては、ジエン系重合体を用い、これらを組み合わせて用いることもできる。
ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体;上記各(共)重合体の水素化物等が挙げられる。
これらのうち、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体等が特に好ましい。
尚、上記各(共)重合体は、ブロック(共)重合体でもよいし、ランダム(共)重合体でもよい。
上記ゴム質重合体(a)としては、粒子状のものを用いることが好ましく、その体積平均粒子径は、好ましくは200〜400nmであり、より好ましくは200〜350nm、更に好ましくは250〜350nmである。体積平均粒子径が上記範囲にある場合、特に耐衝撃性に優れる。尚、上記体積平均粒子径は、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
上記ゴム質重合体(a)の製造方法は、乳化重合、溶液重合等があるが、上記のように、好ましい平均粒子径等に調整するために、乳化重合が好ましい。乳化重合による具体的な平均粒子径(粒子径分布)の調整は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより可能である。また、上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有するゴム質重合体(a)の2種類以上をブレンドする方法でもよい。
上記ゴム質重合体(a)は、体積平均粒子径が上記範囲内にあるものであれば、例えば、特公平4−79366号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている方法等の公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられる単量体成分(b)は、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)を含む。即ち、この単量体(b1)は、メタクリル酸メチルのみでよいし、芳香族ビニル化合物のみでよいし、メタクリル酸メチル及び芳香族ビニル化合物でもよい。
芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。また、この芳香族ビニル化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
メタクリル酸メチル及び芳香族ビニル化合物を組み合わせる場合の割合は、この順に、好ましくは10〜90質量%/90〜10質量%、より好ましくは10〜80質量%/90〜20質量%、更に好ましくは20〜80質量%/80〜20質量%である。この範囲にあれば、透明性に優れる。
また、上記単量体成分(b)は、必要に応じて、上記単量体(b1)と共重合可能な他の単量体(b3)を含有する。この単量体(b3)としては、メタクリル酸メチル(b1)以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド系化合物;酸無水物;官能基を有するビニル系化合物等が挙げられる。これらは、組み合わせて用いてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、官能基を有するビニル系化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基を有する化合物;メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン等のアミノ基を有する化合物;メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する化合物;メタクリルアミド、アクリルアミド等のアミド基を有する化合物;メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を有する化合物;ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基を有する化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記単量体成分(b)を構成する単量体(b1)の割合は単量体(b1)及び単量体(b3)の合計を100質量%とした場合、60〜100質量%であり、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは100質量%である。単量体(b1)の使用割合が少なすぎる場合、及び、単量体(b3)の使用割合が多すぎる場合、PyGC測定における残存物が増加する傾向にある。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)は、上記ゴム質重合体(a)の存在下に、上記単量体成分(b)を重合して得られたものであるが、その重合方法としては、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等を適用することができる。これらのうち、乳化重合が好ましい。
尚、ゴム強化共重合樹脂(A1)の製造の際には、上記のゴム質重合体(a)及び単量体成分(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、単量体成分(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化共重合樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
乳化重合によりゴム強化共重合樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。尚、反応を阻害しないものであれば、本発明に係る組成物に配合可能な、後述の添加剤を反応系に追加してもよい。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記単量体成分(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記単量体成分(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
上記乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記単量体成分(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、複数のゴム強化共重合樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化共重合樹脂(A1)とすることができる。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)を溶液重合、塊状重合又は懸濁重合により製造する場合、常法で行うことができる。
溶液重合の場合、通常、単量体成分(b)を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン等のケトン類;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の不活性重合溶媒に溶解させ、重合開始剤の存在下に重合してよいし、あるいは、重合開始剤の非存在下に熱重合してもよい。尚、溶液重合の際の重合温度は、通常、100〜150℃、好ましくは100〜130℃である。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜150%、より好ましくは10〜100%、更に好ましくは10〜60%である。上記ゴム強化共重合樹脂(A1)のグラフト率が10%未満では、本発明に係る組成物及びそれを含む成形体の表面外観性及び耐衝撃性が低下する場合がある。また、150%を超えると、成形加工性が劣る場合がある。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)1グラムをアセトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(%)={(y−x)/x}×100
また、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)のアセトンによる可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.1〜0.6dl/g、更に好ましくは0.1〜0.5dl/gである。この範囲とすることにより、成形加工性に優れ、本発明に係る組成物及びそれを含む成形体の耐衝撃性も優れる。
尚、上記のグラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)を製造するときの重合条件、即ち、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
上記ゴム強化共重合樹脂(A1)は、1種単独で用いてもよいが、ゴム質重合体(a)の種類及び量、単量体成分(b)の種類及び量を変化させて得られたものの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
尚、前述のように、上記成分[A]は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)のみであってよいし、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と、上記単量体成分(b)の重合によって得られた共重合体(A2)との混合物であってもよい。
共重合体(A2)の形成に用いられる単量体成分(b)としては、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられる前記化合物を適用することができる。
従って、共重合体(A2)は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いた単量体成分(b)と同一種類の単量体を同一組成で重合してなる重合体であってもよいし、同一種類の単量体を異なる組成で重合してなる重合体であってもよいし、更には、異なる種類の単量体を重合してなる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
上記共重合体(A2)は、下記(i)である。
(i)メタクリル酸メチル・芳香族ビニル化合物共重合体
この(i)において、好ましい各化合物単位量は、全量を100質量%とした場合、50〜90質量%及び50〜10質量%、より好ましくは60〜90質量%及び40〜10質量%、更に好ましくは60〜80質量%及び40〜20質量%である。
この共重合体の具体例は、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・α−メチルスチレン共重合体等である。
上記共重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.1〜0.6dl/g、更に好ましくは0.1〜0.45dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
上記共重合体(A2)は、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)の製造に適用される重合開始剤等を用いて、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、製造することができる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。尚、反応を阻害しないものであれば、本発明に係る組成物に配合可能な、後述の添加剤を反応系に追加してもよい。
また、この共重合体(A2)の極限粘度[η]は、重合条件を調整することにより制御することができる。
上記成分[A]が、上記ゴム強化共重合樹脂(A1)と、上記共重合体(A2)との混合物である場合、上記成分[A]は、各成分を、通常、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等を用いて混練することにより製造することができる。各成分の使用方法は特に限定されず、押出機等に一括配合して混練してもよく、多段、分割配合して混練してもよい。混練温度は、通常、180〜260℃、好ましくは200〜240℃である。
1−2.成分[B]
この成分[B]は、高分子型帯電防止剤であり、ポリアミド系エラストマー(ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド等を含む)である。この帯電防止剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、ポリアミド系エラストマーについて説明する。
1−2−1.ポリアミド系エラストマー
このポリアミド系エラストマーの代表的なものとしては、ポリアミド成分からなるハードセグメント(x1)と、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分からなるソフトセグメント(x2)とを含むブロック共重合体等である。
ハードセグメント(x1)の形成に用いられるポリアミド成分としては、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する重合体であれば、特に限定されない。このポリアミド成分は、通常、環構造を有するラクタム化合物の開環重合、アミノカルボン酸の重合、ジカルボン酸及びジアミン化合物の縮重合等公知の方法により製造される。従って、ポリアミド成分は、ホモポリアミド、コポリアミド等として用いられる。
開環重合において用いられるラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、アミノカプロン酸、アミノエナン酸、アミノカプリル酸、アミノベルゴン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸及びジアミン化合物を縮重合させる場合のジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,3,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
上記ポリアミド成分としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等を用いることができる。尚、このポリアミド成分の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
上記ポリアミド成分の数平均分子量は、好ましくは500〜10,000、更に好ましくは500〜5,000である。尚、2種以上のポリアミド成分を用いる場合には、混合したときの測定値が上記範囲に入ればよい。
ソフトセグメント(x2)の形成に用いられるポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分としては、下記式(I)で表される重合体等公知の重合体を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
HO(CHCHO)(CHCH(X)O)H (I)
〔式中、Xは、水素原子(−H)又は置換基−CH、−CHCl、−CHBr、−CHIもしくは−CHOCHを表し、n≧0、m≧0且つ(n+m)≧20である。〕
ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキサイド)グリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキサイド及びテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレングリコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
尚、上記ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の両末端は、アミノ化及び/又はカルボキシル化されていてもよい。
上記ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の数平均分子量は、好ましくは200〜20,000、より好ましくは300〜10,000、更に好ましくは300〜4,000である。2種以上のポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分を用いる場合には、混合したときの測定値が上記範囲に入ればよい。
上記ポリアミド系エラストマーは、ポリアミド成分及びポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分を、減圧下又は常圧下において重合することにより得ることができる。
ポリアミド成分及びポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の各使用割合は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10〜95質量%及び90〜5質量%、より好ましくは20〜90質量%及び80〜10質量%、特に好ましくは30〜70質量%及び70〜30質量%である。ポリアミド成分の使用割合が10質量%未満では、得られるポリアミド系エラストマーと熱可塑性樹脂との相溶性が十分でない場合があり、一方、95質量%を超えると、帯電防止剤としての効果が発揮されない場合がある。
重合の際には、アンチモン系触媒、スズ系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、酢酸金属塩系触媒等を用いることができる。
尚、ポリアミド成分及びポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の重合の際には、ジカルボン酸、ジアミン化合物等を重合原料として併用することができる。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。これらのうち、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が好ましい。また、これらのジカルボン酸は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、脂環族ジアミン化合物及び脂肪族ジアミン化合物が用いられる。芳香族ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。脂環族ジアミン化合物としては、ピペラジン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、シクロヘキシルジアミン等が挙げられる。脂肪族ジアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、オクタメチレンジアミン等が挙げられる。これらのうち、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。また、これらのジアミン化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミド成分及びポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分の重合、あるいは、ポリアミド成分、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分並びにジカルボン酸、ジアミン化合物等の重合によって、ハードセグメント(x1)及びソフトセグメント(x2)の結合は、ソフトセグメント(x2)の末端構造に依存し、通常、エステル結合又はアミド結合である。
上記ポリアミド系エラストマーとしては、(1)炭素数が6以上のアミノカルボン酸の重合又はラクタム化合物の重合により得られたポリアミド、あるいは、炭素数が6以上のジアミン化合物及びジカルボン酸塩を用いて得られたポリアミドと、(2)数平均分子量が200〜20,000のポリエチレングリコールと、(3)炭素数が4〜20のジカルボン酸とを用いて得られ、ポリエーテルエステル単位が、重合体全体に対して10〜95質量%であるポリエーテルエステルアミドが好ましい。
上記ポリアミド系エラストマーの還元粘度ηsp/c(25℃、0.5g/100mlギ酸溶液を用いて測定)は、好ましくは0.5〜3.0dl/gであり、更に好ましくは1.0〜2.5dl/gである。尚、ポリアミド系エラストマーは、本発明に係る組成物の製造時、成形加工時等における熱劣化によって、分子量が低下する場合があるが、最終製品中の還元粘度ηsp/cは、好ましくは0.3dl/g以上である。
上記ポリアミド系エラストマーは、単独で帯電防止剤として用いることができるが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩等の塩類を含有した混合物を成分[B]として用いることもできる。この塩類を含有することにより、制電性能を更に向上させることができる。上記塩類の配合は、ポリアミド系エラストマーの製造前、製造中及び製造後のいずれにおいてでもよく、更には、本発明に係る組成物の製造中であってもよい。
上記塩類としては、ハロゲン化物、無機酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
ハロゲン化物は、好ましくは、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物である。
また、無機酸塩は、好ましくは、アルカリ金属の無機酸塩である。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属の無機酸塩としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、酢酸カリウム、ステアリン酸リチウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩;オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸等の、炭素数が8〜24のアルキル基を有するアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩;フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸等の、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩;オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸等の、炭素数が6〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩;ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸等の、炭素数が2〜18のアルキル基を有するアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩;トリフルオロメタンスルホン酸等のフッ化スルホン酸のアルカリ金属塩;トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンのアルカリ金属塩等が挙げられる。
上記塩類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記塩類の配合量は、上記のポリアミド系エラストマー100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
1−3.制電性樹脂組成物
本発明に係る組成物において、上記の成分[A]及び[B]の含有割合は、これらの合計量を100質量%とした場合、それぞれ、70〜95質量%及び30〜5質量%であり、好ましくは75〜95質量%及び25〜5質量%、より好ましくは75〜90質量%及び25〜10質量%、更に好ましくは75〜85質量%及び25〜15質量%である。この成分[A]の含有量が少なすぎる(成分[B]の含有量が多すぎる)と、剛性が低下し、フィルム、シート、容器等には不向きとなる場合がある。一方、成分[A]の含有量が多すぎる(成分[B]の含有量が少なすぎる)と、制電性が不十分となる。
本発明に係る組成物は、目的や用途に応じて、更に、低分子型帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤等の添加剤;他の重合体を含有してもよい。
低分子型帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤;アルキルスルホン酸ホスホニウム、アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウム、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン系帯電防止剤;多価アルコール誘導体、アルキルエタノールアミン等の非イオン系帯電防止剤;アルキルベタイン、スルホベタイン誘導体等の両性系帯電防止剤;錯化合物;金属アルコキシド及びその誘導体(アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等);有機ホウ素化合物;コーテッドシリカ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記低分子型帯電防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.05〜5質量部である。
耐候剤としては、有機リン系化合物、有機硫黄系化合物、ヒドロキシル基を含有する有機化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記耐候剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部である。
充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフィライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾノトライト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、胡粉、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.05〜20質量部である。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜0.5質量部である。
老化防止剤としては、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分[A]100質量部に対して、通常、0.1〜0.5質量部である。
他の重合体としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
本発明に係る組成物は、下記性質を備える。
〔1〕組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、5〜40質量%であり、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、成形の耐衝撃性が十分でない傾向にあり、多すぎると、成形加工性、成形の表面外観性、剛性、耐熱性等が十分でない傾向にある。
〔2〕熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定(以下、「PyGC測定」ともいう。)を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質(以下、「特定検出物」ともいう。)総量が、組成物1gに対し、10,000μg以下である。これらの数値は、いずれも、オクタデカン換算量である。特定検出物の総量が、高すぎると、本発明に係る組成物を用いて成形する際に臭気を発したり、得られた成形から臭気を発したりする場合があり、電子機器の容器、製造設備等とした場合に、該電子機器の汚染、欠陥等の悪影響を及ぼす場合がある。
尚、上記特定検出物は、明らかではないが、成分[A]の形成にシアン化ビニル化合物(b2)を含む単量体成分(b)を用いた場合のシアン化ビニル化合物に由来する含窒素化合物と推測される。
このPyGC測定の詳細な条件は、下記の通りであり、分析装置は、特に限定されない。
熱分解温度 ; 423℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 30秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
また、本発明に係る組成物は、更に、下記性質を備えることが好ましい。
〔3〕成分[A]の形成に用いた単量体(b1)及び単量体(b3)からなる単位をそれぞれ、単位(b1’)及び単位(b3’)とする。
尚、上記の単位(b1’)がメタクリル酸メチル単位及び芳香族ビニル化合物単位の含有量は、これらの合計を100質量%とすると、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び90〜10質量%、より好ましくは10〜80質量%及び90〜20質量%、更に好ましくは20〜80質量%及び80〜20質量%である。
上記の単位(b1’)及び(b3’)の各含有量は、アセトンにより本発明に係る組成物から抽出した重合体成分、即ち、ゴム質重合体(a)、成分[B]、他の重合体等の重合体成分を含まない成分(以下、「アセトン可溶成分」ともいう。)に対し、PyGCにより求めることができる。
このPyGC測定の詳細な条件は、下記の通りであり、分析装置は、特に限定されない。
熱分解温度 ; 590℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 5秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
〔4〕本発明に係る組成物のアセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.6dl/g、より好ましくは0.1〜0.4dl/g、更に好ましくは0.1〜0.35dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
〔5〕本発明に係る組成物の、ISO 179に準じて測定されるシャルピー衝撃強さは、好ましくは8kJ/m以上、より好ましくは10kJ/m以上、更に好ましくは12kJ/m以上である。
〔6〕本発明に係る組成物の、温度23℃及び湿度50%RHの条件における表面固有抵抗は、好ましくは1011Ω以下、より好ましくは1010Ω以下、更に好ましくは10Ω以下とすることができる。
本発明に係る組成物は、電子機器の容器(保持部材、支持部材を含む)を形成する成形材料;壁、被覆体(保護部材を含む)、搬送容器等の電子機器製造設備を形成する成形材料等として好適である。
本発明に係る組成物は、射出成形、押出成形(シート押出、Tダイ押出、異形押出)、カレンダー成形、インフレーション成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形、ブロー成形等の公知の成形法により、所定形状の成形体とすることができる。各成形加工方法を組み合わせてもよく、延伸加工を行ってもよい。
本発明の積層体は、上記組成物を含む成形体を、熱可塑性重合体を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層してなるものであり、熱可塑性重合体を含む支持体と、該支持体の少なくとも1面上に配設され、且つ、上記組成物を含む成形部とを備える。上記支持体上の成形部の数は、1つのみでよいし、2つ以上でもよい。
支持体は、熱可塑性重合体のみから構成されてよいし、熱可塑性重合体と他の成分(上記添加剤等)とを含む組成物から構成されてもよい。
この熱可塑性重合体は、成分[A]であり、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、この樹脂は、リサイクル品であってもよい。
上記支持体の形状は、板状、線状、塊状等とすることができ、一部又は全体が曲がっていたり、凹部、凸部、穴部、貫通孔等を有したりしていてもよく、例えば、トレイ、ケース等の容器の形状であってもよい。
好ましい形状は、シート及びフィルムのような平板状であり、その場合の好ましい平均厚さは0.05〜3mm、より好ましくは0.05〜2mm、更に好ましくは0.05〜1mmである。
一方、成形部は、上記支持体の少なくとも1面上に配設されてなるものである。その形状は、支持体形状と同じであってよく、全く異なる形状であってもよい。また、凹部、凸部、穴部、貫通孔等を有してもよい。
好ましい形状は、シート及びフィルムのような平板状であり、その場合の好ましい平均厚さは0.05〜3mm、より好ましくは0.05〜2mm、更に好ましくは0.05〜1mmである。
従って、本発明の積層体が、例えば、平板状等である場合、支持体21と、該支持体21の片面のみに配設された成形部22とを備える態様2(図2参照)であってよいし、支持体21と、該支持体21の両面に配設された成形部22a及び22bとを備える態様2’(図3参照)であってもよい。
上記成形部は、上記組成物を含むものであるが、該組成物のみからなるものであってよいし、他の物質を更に含むものであってよい。
尚、図3の態様のように、複数の成形部を有する積層体とする場合には、各成形部の構成材料は、同一でも、異なってもよい。また、各成形部の厚さは、同一でも、異なってもよい。各成形部の構成材料が同一である場合には、両面において優れた制電性を有する積層体とすることができる。また、各成形部の構成材料が異なる場合には、上記組成物を含む一方の面において優れた制電性を有し、他方の面において制電性の程度の異なる積層体とすることができる。
上記のように、本発明の積層体は、延伸加工等により、部分的に肉厚の薄い薄肉部23を備える態様とすることもできる(図4参照)。図4は、薄肉部23における、支持体21並びに成形部22a及び22bの厚さが、薄肉部以外の部分に比べて小さくなった態様2"における部分断面図である。
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されず、(i)支持体と、成形部を構成することとなる成形体とを別々に準備してから一体化させる方法、(ii)支持体形成材料(熱可塑性重合体を含む)と、成形部形成材料(本発明に係る組成物を含む)とを用いて一工程で複合体とする方法等がある。
上記態様(i)としては、予め、支持体と、成形部を構成することとなる成形体とを、別々に準備し、熱圧着する方法、接着剤又は粘着剤で接合する方法等が挙げられる。上記の支持体及び成形体は、公知の成形方法により、各々、所定形状とし、必要に応じて、被接合面に対して、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、UV処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、アンカーコート処理等により改質しておいてもよい。上記の支持体及び成形体が薄様体である場合には、予め、射出成形、カレンダー成形、インフレーション成形、シート押出、Tダイ押出等により、平板状フィルム又は平板状シートとし、その後、上記方法により積層フィルム又は積層シートとすることができる。
上記態様(ii)としては、支持体形成材料と、成形部形成材料とを用いて共押出、多層インフレーション成形等により積層体を得ることができる。
また、図4のような薄肉部23を有する積層体2"とするためには、図3に示す積層体2’を製造後、カレンダー処理、インフレーション成形、真空成形等の方法により、所望の延伸倍率を有する薄肉部23を形成することができる。
本発明の積層体は、電子機器の容器(保持部材、支持部材を含む)、トレイ;壁、カーテン、被覆体(保護部材を含む)、搬送容器等の電子機器製造設備等として好適である。尚、上記用途において、電子部品、電子機器等の被接触物が積載、保持等させる場合には、本発明に係る組成物を含む成形部の表面上とすることが好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.評価方法
下記の参考例、実施例及び比較例における、各評価項目の測定方法を以下に示す。
(1)PyGC測定による検出物質総量
ガスクロマトグラフ装置(型式「GC−14A」、島津製作所社製)に高周波誘導加熱方式の熱分解装置(型式「JPS−350」、日本分析工業社製)を装着した熱分解ガスクロマトグラフ装置を用い、約0.25gの試料(ペレットから調製)をパイロホイルに包み、下記条件で測定に供した。得られたクロマトグラフから、リテンションタイム10〜24分における検出物質を同定し、オクタデカン換算した合計量(検出物質総量)を求めた。
<測定条件>
熱分解温度 ; 423℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 30秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
(2)シャルピー衝撃強さ
ISO 179に準じて測定した。
(3)曇価
制電性樹脂組成物を用いて作製した板状試験片(厚さ2.4mm)を、温度23℃及び相対湿度50%のもとで、2日間静置した後、同条件にて、曇価を測定した。測定装置は、Gardner社製ヘイズメーター(商品名「haze−gard plus」)である。
(4)臭気
ペレット状態の制電性樹脂組成物を、サンプル瓶に入れ、温度80℃で1時間保持した後、臭気判定を行い、下記基準で評価した。
○;全くなかった。
×;異臭がした。
(5)制電性
試験片を、温度23℃、湿度50%RHの条件下、48時間放置した後、表面固有抵抗(Ω)を、抵抗率計(商品名「ハイレスタ−UP MCP−HT450」、三菱化学社製)により、印加電圧500Vで測定した。
(6)制電性樹脂組成物のアセトン可溶成分中の構成単位量
上記(1)と同じ分析装置を用い、メタクリル酸メチル単位、芳香族ビニル化合物単位(スチレン単位)及びシアン化ビニル化合物単位(アクリロニトリル単位)の各量を、下記条件により定量した。
<測定条件>
熱分解温度 ; 590℃(オーブン温度280℃、ニードル温度260℃)
熱分解時間 ; 5秒
カラム ; GLサイエンス社製「BPX−5」(溶融シリカキャピラリーカ ラム、膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
カラム温度 ; 50℃→350℃(昇温速度10℃/分),350℃で5分保持
GC注入口温度 ; 350℃
検出器 ; FID
検出器温度 ; 350℃
キャリアガス ; ヘリウム(流速1ml/分、スプリット比1/50)
2.制電性樹脂組成物の製造及びその評価
2−1.ゴム強化樹脂[A]
製造例1(ゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕の製造)
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム2部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径300nmのポリブタジエンゴムラテックス30部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル1部及びメタクリル酸メチル12部を投入し、攪拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄0.05部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部よりなる活性剤水溶液、並びにクメンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン12部、アクリロニトリル4部、メタクリル酸メチル37部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=24.3%/7.7%/68.0%であった。
製造例2(ゴム強化共重合樹脂〔A1−2〕の製造)
撹拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径310nmのポリブタジエンゴムラテックス18部(固形分換算)、スチレン5部及びメタクリル酸メチル15部を投入し、撹拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄0.01部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部からなる活性剤水溶液、並びにクメンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン15部、メタクリル酸メチル47部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−2〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−2〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=26.9%/73.1%であった。
製造例3(ゴム強化共重合樹脂〔A1−3〕の製造)
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、ロジン酸カリウム2部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部、体積平均粒子径280nmのポリブタジエンゴムラテックス18部(固形分換算)、スチレン4部、アクリロニトリル2部及びメタクリル酸メチル15部を投入し、攪拌しながら昇温させた。温度が50℃となった時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.2部、硫酸第1鉄0.05部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水10部よりなる活性剤水溶液、並びにジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部を添加し、1時間反応させた。その後、スチレン8部、アクリロニトリル8部、メタクリル酸メチル45部及びジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部を4時間かけて、連続的に添加しながら反応を継続した。反応後の単量体の重合転化率は96%であった。その後、反応生成物であるラテックスを90℃まで昇温し、36%塩化カルシウム水溶液で凝固させ、得られたスラリーを95℃まで昇温させて5分間保持した。次いで、これを水洗し、その後、脱水した。次いで、75℃で24時間乾燥し、粉末状のゴム強化共重合樹脂〔A1−3〕を得た。このゴム強化共重合樹脂〔A1−3〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=14.0%/11.1%/74.9%であった。
製造例4(ゴム強化共重合樹脂〔A1−4〕の製造)
体積平均粒子径450nmのポリブタジエンゴムラテックスを用いた以外は、製造例2と同様にして、ゴム強化共重合樹脂〔A1−4〕を製造した。このゴム強化共重合樹脂〔A1−4〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=27.1%/72.9%であった。
製造例5(ゴム強化共重合樹脂〔A1−5〕の製造)
体積平均粒子径80nmのポリブタジエンゴムラテックスを用いた以外は、製造例2と同様にして、ゴム強化共重合樹脂〔A1−5〕を製造した。このゴム強化共重合樹脂〔A1−5〕について、アセトン可溶分の組成は、スチレン/メタクリル酸メチル=26.7%/73.3%であった。
製造例6(共重合体〔A2−1〕の製造)
内容積30リットルのリボン翼を備えたジャケット付き重合反応器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の重合反応器にスチレン21部、アクリロニトリル7部、メチルメタクリレート72部、トルエン20部を連続的に投入した。次いで、分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン0.1部をトルエン5部に溶解させた溶液、及び重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解させた溶液を連続的に供給した。1基目の重合反応器の温度は110℃に制御し、平均滞留時間を2時間として重合させた。重合転化率は60%であった。その後、得られた重合体溶液から、1基目の重合反応器の外部に設けられたポンプにより、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、トルエン、分子量調節剤及び重合開始剤の合計供給量と同量を連続的に取り出し、2基目の重合反応器に供給した。この2基目の重合反応器における重合温度は130℃、平均滞留時間は2時間として重合させた。重合転化率は80%であった。次いで、2基目の重合反応器から重合体溶液を取り出し、この重合体溶液を直接2軸3段ベント付き押出機に供給し、未反応単量体及び溶媒を除去し、共重合体〔A2−1〕を得た。この共重合体〔A2−1〕の組成は、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=28%/5%/67%であった。また、この共重合体〔A2−1〕のアセトン可溶分の極限粘度[η]は0.25dl/gであった。
2−2.高分子系帯電防止剤[B]
〔B−1〕として、ナイロン6系ポリアミドエラストマー(商品名「ペレスタットNC4321」、三洋化成工業社製)を用いた。還元粘度ηsp/c(25℃、0.5g/100mlギ酸溶液)は、1.1dl/gである。
〔B−2〕として、ナイロン12系ポリアミドエラストマー(試作品)を用いた。還元粘度ηsp/c(25℃、0.5g/100mlギ酸溶液)は、1.5dl/gである。
2−3.制電性樹脂組成物の製造及び評価
参考1−
ゴム強化共重合樹脂〔A1−1〕45部と、共重合体〔A2−1〕35部と、高分子系帯電防止剤〔B−1〕20部とを、ヘンシェルミキサーにより混合した。その後、この混合物を2軸押出機に導入して、表1に示すペレット化条件で、温度200〜240℃で溶融混練し、ペレット(制電性樹脂組成物S1)を得た。この制電性樹脂組成物S1について、上記のPyGC測定による検出物質総量、シャルピー衝撃強さ、曇価、臭気、及び表面固有抵抗の評価を行った。その結果を表1に示す。
参考1−2〜1−11
表1に示す成分を所定量用い、参考1−1と同様にして制電性樹脂組成物S2〜S11を得た。その後、同様の評価を行い、その結果を表1に併記した。
Figure 0005059361
尚、表1において、シングルベントは、押出機付属のベント数1ヶ所を意味し、ダブルベントは、押出機付属のベント数2ヶ所を意味し、真空度は、下記の通りである。
高:−90kPa、
中:−85kPa。
3.積層体の製造及び評価
実施例1及び比較例1
上記で得た樹脂組成物S7又はS8からなる支持体(厚さ0.54mm)の表裏面に、制電性樹脂組成物S2からなる表裏層(成形部)を形成させ、図3に示すような3層型積層体を製造した。本3層型積層体について、断面を削り取り、上記のPyGC測定による検出物質総量、表面固有抵抗及び成形外観性の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005059361
4.各評価について
表1及び表2より、以下のことが明らかである。
制電性樹脂組成物の評価において、参考1−1〜1−6は、いずれも、試験片作製時の臭気発生がなく、耐衝撃性及び制電性に優れていた。また、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が少ないので、被接触物及びその周辺設備の汚染を抑制することができる成形体の製造が容易である。一方、参考2−1及び2−2は、成分[B]を含有しない例であり、制電性に劣る。参考2−3は、成分[B]を含有せず、また、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が多すぎて、本発明の範囲外にある例であり、被接触物及びその周辺設備の汚染を導くものと思われる。更に、参考2−4及び2−5も、PyGC測定による、リテンションタイム10〜24分における検出物質総量が多すぎる例であり、被接触物及びその周辺設備の汚染を導くものと思われる。
また、表2に示した3層型積層体の評価において、実施例は、本発明に係る制電性樹脂組成物を用いてなるものであり、各層の密着性が良好であり、制電性及び成形外観性に優れていた。
本発明に係る制電性樹脂組成物は、耐衝撃性及び制電性に優れ、フィルム等成形体とした場合の表面外観性にも優れるため、その成形部を備える積層体は、電子機器の容器、電子機器製造設備等として好適である。また、OA・家電分野、車両分野、サニタリー分野、建材分野等の各種部材、部品等にも好適である。
本発明の積層体を形成する成形体(薄様体)の1例を示す断面図である。 本発明の積層体の1例を示す断面図である。 本発明の積層体の他の例を示す断面図である。 凸状の薄肉部を有する積層体の部分断面図である。
符号の説明
1;成形体(薄様体)
2,2’及び2";積層体
21;支持体
22,22a及び22b;成形部
23;薄肉部。

Claims (5)

  1. 制電性樹脂組成物を含む成形を、熱可塑性重合体を含む支持体の少なくとも一方の表面に積層してなる積層体において、
    上記制電性樹脂組成物は、下記の成分[A]70〜95質量%及び成分[B]5〜30質量%〔但し、[A]+[B]=100質量%である。〕を含有する組成物であって、ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量%であり、且つ、熱分解温度423℃及び熱分解時間30秒の条件で熱分解ガスクロマトグラフィー測定を行ったときに、リテンションタイム10〜24分の間における検出物質の総量が、上記制電性樹脂組成物1gに対し、10,000μg以下であり、
    上記熱可塑性重合体は、下記の成分[A]を含有することを特徴とする積層体。
    成分[A];ジエン系重合体からなるゴム質重合体(a)5〜80質量部の存在下に、メタクリル酸メチル及び/又は芳香族ビニル化合物からなる単量体(b1)60〜100質量%を含み、且つ、シアン化ビニル化合物を含まない単量体成分(b)〔但し、全量は100質量%である。〕20〜95質量部〔但し、(a)+(b)=100質量部である。〕を重合して得られたゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記単量体成分(b)の共重合体(A2)とからなる混合物。
    成分[B];ポリアミド系エラストマーからなる高分子型帯電防止剤。
  2. 上記単量体(b1)が、メタクリル酸メチル10〜90質量%及び芳香族ビニル化合物90〜10質量%〔但し、これらの合計は、100質量%である。〕である請求項1に記載の積層体。
  3. 上記成形部が上記支持体の両面に配されてなる請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 電子機器の容器、又は、電子機器製造設備に用いられる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 請求項1に記載の積層体を製造する方法であって、
    上記成分[A]を含有する樹脂組成物からなる支持体の表面に、上記制電性樹脂組成物からなる成形部を形成する工程を備えることを特徴とする積層体の製造方法。
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