JP2007015596A - 乗用車用タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤ赤道面に関する非対称化技術を利用して背反性能の両立を図り、特に大多数の一般的なドライバーに対して、従来のタイヤを凌駕する操縦安定性および乗心地性を併せ持ったタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤのトレッド部に、タイヤの赤道を含みかつ該赤道に沿って連続して延びる中央陸部を、該陸部の幅中心がタイヤの赤道より車両装着時の車両内側となる配置の下に有し、さらにタイヤの幅方向断面において、タイヤの赤道面を境として、車両装着時に車両外側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHoutが、車両装着時に車両内側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHinを超えるものとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、良好な直進安定性および旋回安定性を有すると共に、乗心地を向上して車の運転による疲労の軽減に寄与し、しかも磨耗寿命も良好な乗用車用タイヤに関するものである。
タイヤの性能向上に対する要求が高まるにつれ、操縦安定性、乗心地性、騒音性能および耐摩耗性能など、従来の考え方では互いに背反すると考えられてきた複数の性能を両立させる様々な手法が提案されてきた。
その1つの流れとして、タイヤをその赤道面に関し非対称化する手法がある。例えば、車両装着時における、トレッド部のタイヤ赤道面を挟む車両内側と外側とでは、上記した各性能に対する寄与が異なることに着目し、タイヤ赤道面を境としてトレッドのパターン形状を異なるものとした、いわゆる非対称トレッドパターンが多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、タイヤの幅方向の断面形状においても、上記トレッドパターンと同様に、車両装着時の車両の内側と外側とでは各性能に対する寄与が異なることに着目し、タイヤ赤道面を境として断面形状を非対称とする手法が数多く提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平1−266001号公報 特開昭63−78802号公報
しかしながら、上記の技術は、例えば高速かつ大舵角入力下でのコーナリング性能による操縦安定性であったり、突起物乗り上げ時の衝撃力による乗り心地性やスラローム走行試験による操縦安定性であるように、限界的な走行における性能の向上を目指しているが、一方で以下に示す観点からの改良が希求されていた。
すなわち、発明者は、自動車を日常生活の道具として用いる多くのドライバーにとって、上記した高速かつ大舵角のコーナリングを行う機会は非常に少なく、限界領域での操縦安定性が大多数のユーザーにとって利益たり得ないこと、その一方、一般公道上において車線内を正確に走行できること等、日常の運転における操縦安定性が多くのドライバーにとっては重要であることに注目した。それ故、操縦安定性としては、タイヤ性能の限界領域においてのそれではなく、日常の生活の便として非職業的あるいは非趣味的に運転を行う大多数のドライバーにとっての操縦安定性、具体的には、タイヤの赤道面とタイヤ進行方向との成す角度(スリップ角)が約1度以下の範囲である微小舵角領域での、路面から加えられる振動、外乱に対する直進安定性並びにハンドル操作に対する応答性の向上が求められる。
また、発明者は、車体幅方向の横揺れおよび振動の抑制が、乗員の緊張感を緩和し、乗車中のストレスや疲労を軽減するのに役立つことを、心電図測定を用いた試験で知見した。それ故、乗心地性としては、この横方向の揺れおよび振動を抑制するに足る性能が求められている。
本発明は、以上のような観点からの操縦安定性および乗り心地性の両立を図るものであり、タイヤ赤道面に関する非対称化技術を利用して背反性能の両立を図り、特に大多数の一般的なドライバーに対して、従来のタイヤを凌駕する操縦安定性および乗心地性を併せ持ったタイヤを提供することを目的とする。
発明者は、非対称トレッドパターンと非対称断面形状を組み合わせて適用することで両者の効果を相互に助長もしくは補完させ、より一層の性能向上を達成する手法を見出した。すなわち、タイヤが車両に装着された際の使用環境において、車両のサスペンションの挙動やアライメントがタイヤ赤道面に対して非対称であること、その結果として、直進中やコーナリング中を問わずタイヤに作用する力がタイヤ赤道面に対してやはり非対称となることに立脚するものであり、タイヤ赤道面を境とするタイヤの車両の内側と外側とで機能分離を明確にするための方途を与えるものである。
本発明の要旨は、次の通りである。
(1)タイヤのトレッド部に、タイヤの赤道を含みかつ該赤道に沿って連続して延びる中央陸部を、該陸部の幅中心がタイヤの赤道より車両装着時の車両内側となる配置の下に有し、さらにタイヤの幅方向断面において、タイヤの赤道面を境として、車両装着時に車両外側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHoutが、車両装着時に車両内側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHinを超えることを特徴とする乗用車用タイヤ。
ここで、上記最大幅位置とは、タイヤの赤道面からタイヤの回転軸と平行にサイドウォール部表面(タイヤ側面の模様や文字などを除いた表面)に引いた線分が最大となるサイドウォール部表面の点を指す。
(2)前記垂線の長さSWHoutが、垂線の長さSWHinの110%以上200%以下であることを特徴とする請求項1に記載の乗用車用タイヤ。
(3)前記中央陸部の幅中心が、タイヤの赤道から該陸部幅の1/6以上1/2以下は車両装着時の車両内側に位置することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の乗用車用タイヤ。
(4)前記中央陸部は、周方向に間隔を置いて配した複数のサイプを有することを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の乗用車用タイヤ。
(5)タイヤのカーカスの径方向外側に配置したベルトの径方向外側に、さらにベルト補強層を有し、該ベルト補強層は、タイヤの赤道面を境として、車両装着時に車両外側となる領域の周方向剛性が、車両装着時に車両内側となる領域の周方向剛性より低いことを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の乗用車用タイヤ
本発明によれば、公道上で日常的に行われる範囲の一般的な運転において、良好な直進安定性および旋回安定性を有すると同時に、乗心地性を向上し車の運転による疲労を軽減でき、摩耗寿命も良好な乗用車用空気入りタイヤを提供することが可能になる
図1に、本発明に従うタイヤの幅方向断面を示す。
すなわち、図示のタイヤは、1対のビードコア1間にトロイド状に跨る例えばラジアルプライによるカーカス2の径方向外側に、カーカス2側から、少なくとも2層のベルト3およびベルト補強層4a,4bを順に積層配置し、これらの上にトレッド部5を配置してなる。
このトレッド部5は、図2にその展開図を示すように、タイヤの赤道Oに沿って周方向に延びる4本の周方向溝6,7,8および9とトレッド端Tによって、5つの陸部10,11、12、13および14に区画して成る。さらに、陸部10は曲率を持って略タイヤ幅方向に延びる横溝10aによって分断され、同様に、陸部11はタイヤの赤道Oに対して強く傾斜して延びる横溝11aによって分断され、陸部12はタイヤの赤道Oに対して強く傾斜して延びるサイプ12aによって分断され、陸部13はタイヤの赤道Oに対して弱い傾斜で延びる横溝13aによって分断され、そして陸部14はタイヤの赤道Oに対して弱い傾斜で延びる一部サイプを含む横溝14aによって分断されている。
ここで、タイヤの赤道O上で延びる中央陸部12の幅中心が、タイヤの赤道Oより車両装着時の車両内側となる配置とすること、より好ましくはタイヤの赤道Oから該陸部幅tの1/6以上1/2以下は車両装着時の車両内側に配置することが、肝要である。
まず、日常的運転の大部分を占める微小舵角領域の操縦安定性を特に向上させるためには、タイヤの赤道O上で周方向に連続して延びる中央陸部を設けるとよい。なぜなら、微小舵角領域でのタイヤ接地形状を観察すると、その周方向接地長さはタイヤ赤道位置でほぼ最大となり、タイヤ接地領域の重心もほぼタイヤ赤道上に位置することになるが、その際、最も効率良く操舵力(横方向力)を発生し、ドライバーのハンドル操作に対する応答性を向上させるためには、当該位置に出来るだけ剛性の高いブロックを配置し、タイヤから路面間での力の伝達効率を高めることが重要となるからである。最も剛性の高いブロック形状がすなわち、周方向に連続して延びる陸部であることは言うまでもない。
そして、この中央陸部12を車両装着時の車両内側にオフセットして配置することによって、タイヤに対する路面凹凸の入力を実質的に車両装着内側に偏らせることができる。
すなわち、車両の乗り心地を悪化させ、あるいは直進安定性、特に微小舵角での操縦安定性を低下させる外的要因として最も大きなものは、車両の上下方向または左右方向を問わず、走行中の車両に振動を与える路面の凹凸である。この凹凸がタイヤの赤道を境とする車両装着時の車両外側部分に衝突した場合と、同内側部分に衝突した場合とについて比較を行ってみると、路面の凹凸の大きさが同じであれば、殆どの乗用車においては、車輪取り付け支持部(ホイールのハブ面)がオフセットされており荷重負担の割合の大きい車両装着外側部分の方がより大きな振動となる。その為、車両装着外側部分での振動入力を抑制することが、乗り心地の向上には効果的である。
従って、路面凹凸の入力を実質的に車両装着内側に偏らせることができれば、車両装着外側部分での振動入力が抑制されるから、結果として乗り心地性は向上するのである。
とりわけ、中央陸部12の幅中心が、タイヤの赤道Oから該陸部幅tの1/6以上1/2以下は車両装着時の車両内側に位置することが好ましい。すなわち、上記の非対称トレッドパターンにおいて、タイヤ赤道面O付近に設ける中央陸部12については、タイヤ接地面の中心(重心)付近に配置して、直進および微小舵角での安定性を担う効果と、車両装着時内側ヘオフセットさせることにより、路面凹凸によるタイヤヘの入力を同内側に偏在させる効果の両立を考えると、オフセット量は陸部幅tの1/4程度であることが最適と考えられる。
さらに、上記したタイヤの幅方向断面において、タイヤの赤道面Oを境として、車両装着時に車両外側となる領域の、最大幅位置Poutからタイヤ回転軸Lに下ろした垂線の長さSWHoutが、車両装着時に車両内側となる領域の、最大幅位置Pinからタイヤ回転軸Lに下ろした垂線の長さSWHinを超える、非対称形状を与えることが肝要である。
すなわち、タイヤの最大幅の位置をトレッド部に近づけると、タイヤ断面で最も厚さが薄く剛性の低いトレッド部からサイドウォール部に至る曲線部分の曲率が小さくなり、当該部分の曲げ変形に対する剛性をさらに低くすることが出来る。従って、かような作用は、車両装着時に車両外側となる領域の断面構造に適用する。換言すると、SWHoutを長くする。すると、路面からトレッド部に加えられる振動を吸収し易くなる。
逆に、タイヤの最大幅位置をトレッド部から遠ざけると、タイヤ断面でトレッド部からサイドウォール部に至る曲線部分の曲率が大きくなり、当該部分の曲げ変形に対する剛性を高くすることが出来る。従って、かような作用は、車両装着時に車両内側となる領域の断面構造に適用する。換言すると、SWHinを短くする。すると、ドライバーの意図する操舵力の路面への伝達は容易に達成されるようになる。
以上のタイヤ断面構造並びにトレッドパターンの2つの相乗効果により、路面凹凸からタイヤ、さらに車体に加えられる振動を、車両装着時外側を主体として効果的に抑制し、タイヤの乗り心地性と直進安定性、特に微小舵角領域における操縦安定性を共に向上させることが可能となる。
ここで、前記垂線の長さSWHoutが、垂線の長さSWHinの110%以上200%以下であることが、上記の非対称形状において、車両装着時の外側および内側を機能分離し、特に外側での振動減衰効果を十分に発揮させる為に望ましい。なぜなら、SWHoutがSWHinの110%未満では、同様の効果は発揮されるものの、その効果の量が小さく、本発明が想定する一般的なドライバーには認知され難く利益とならないからである。一方、200%を超えると、外側と内側のサイドウォールで著しい剛性差が生じ、微小舵角領域においても車両の挙動が唐突に不安定になる場合があるためである。
また、前記中央陸部12に設けたサイプ12aは、トレッド接地域内で荷重直下の接地状態にあるときは閉口していて、従って該接地常態において中央陸部12は周方向に連続しているものである。すなわち、中央陸部12を設けるに当っては、タイヤ赤道面O付近において一般に生じやすい偏摩耗を回避する必要があり、そのためには、サイプ12aによって陸部を周方向に分断することが、路面への踏み込み及び蹴りだし時にタイヤに加えられる周方向せん断力を抑制するのに有利であり、さらに荷重直下の接地状態ではサイプが閉じることにより陸部は周方向に一体化するから、直進性向上の機能を奏することができる。
さらに、高速耐久性の確保の観点から、カーカス2の径方向外側に配置したベルト3の径方向外側に、さらにベルト補強層4aおよび4bを配置した場合は、該ベルト補強層4aおよび4bは、タイヤの赤道面Oを境として、車両装着時外側となる領域(図示例でベルト補強層4a)の周方向剛性を、車両装着時内側となる領域(図示例でベルト補強層4b)の周方向剛性より低くすることにより、路面凹凸からタイヤに加わる振動を車両装着時外側領域において抑制する一方、車両装着時内側となる領域の高剛性構造によってドライバーが意図する操舵力を確実に伝達することが可能になる。従って、上記したトレッドパターンおよぶタイヤ断面構造による効果と相乗して、タイヤの乗り心地性、直進安定性および微小舵角領域における操縦安定性を更に改善することができる。
なお、ベルト補強層4aおよび4bの周方向剛性を上記のように変化させるには、ベルト補強層について、車両装着時外側部分を同内側部分に比べて、例えば幅を狭くする、厚みを薄くする、化学繊維コードの打込み数を減少する等は勿論、コード繊維を剛性の低い種類にする、コード繊維の密度を減少する等の手法が適合する。化学繊維コードとしては、ナイロン、PEN、PET、ケブラー、その他ポリアミドあるいはポリケトンを用いることができる。
また、図1には、ベルト補強層を分割して設ける例を示したが、図3(a)〜(d)に示す構造のベルト補強層を採用することもできる。すなわち、図3(a)に示す例は、ベルト3の幅方向に延びるベルト補強層4cを配置したもの、同図(b)に示す例は、ベルト補強層4cとベルト補強層4aおよび4bとを組み合わせたもの、同図(c)に示す例は、ベルト3の幅方向に延びるベルト補強層4cおよび4dの2層を配置したもの、同図(d)に示す例は、ベルト補強層4cおよび4dとベルト補強層4aおよび4bとを組み合わせたもの、である。
表1に示す仕様の下に、各タイヤを、サイズ:205/55R16にて試作し、サイズ:6.5J×16のリムに組付け、230kPaの内圧に調整した。かくして得られたタイヤを排気量2000ccの乗用車の4輪に装着し、以下の試験に供した。
Figure 2007015596
評価試験は、長い直線部分を含む周回路および緩やかなカーブの多いハンドリング評価路などからなるテストコース内を、低速から100km/h程度までの、公道上で一般的なドライバーが経験する速度域で2名乗車で走行し、直進安定性/微小舵角での操縦安定性(ハンドル応答性)および乗り心地をドライバーが10点満点でフィーリング評価した。
さらに、同一のタイヤおよび車両を用いて一般道路、高速道路、山道を含むコースを走行した場合の摩耗寿命を評価結果とした。結果は以下の通りである。今回の評価法においては直進安定性/操縦安定性と乗心地の両方の評価が7.0点以上が実用上優良と考えられる領域であり、本発明によるタイヤは全ての性能で満足するべき性能を有していることがわかる。
Figure 2007015596
タイヤの幅方向断面を示す図である。 タイヤのトレッドパターンを示す図である。 ベルト補強層の他の構造を示す図である。
符号の説明
1 ビードコア
2 カーカス
3 ベルト
4a,4b ベルト補強層
5 トレッド部
10,11、13、14 陸部
12 中央陸部
10a、11a、13a、14a 横溝
12a サイプ

Claims (5)

  1. タイヤのトレッド部に、タイヤの赤道を含みかつ該赤道に沿って連続して延びる中央陸部を、該陸部の幅中心がタイヤの赤道より車両装着時の車両内側となる配置の下に有し、さらにタイヤの幅方向断面において、タイヤの赤道面を境として、車両装着時に車両外側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHoutが、車両装着時に車両内側となる領域の、最大幅位置からタイヤ回転軸に下ろした垂線の長さSWHinを超えることを特徴とする乗用車用タイヤ。
  2. 前記垂線の長さSWHoutが、垂線の長さSWHinの110%以上200%以下であることを特徴とする請求項1に記載の乗用車用タイヤ。
  3. 前記中央陸部の幅中心が、タイヤの赤道から該陸部幅の1/6以上1/2以下は車両装着時の車両内側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の乗用車用タイヤ。
  4. 前記中央陸部は、周方向に間隔を置いて配した複数のサイプを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乗用車用タイヤ。
  5. タイヤのカーカスの径方向外側に配置したベルトの径方向外側に、さらにベルト補強層を有し、該ベルト補強層は、タイヤの赤道面を境として、車両装着時に車両外側となる領域の周方向剛性が、車両装着時に車両内側となる領域の周方向剛性より低いことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の乗用車用タイヤ
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