JP4910782B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、操縦安定性を向上させながら、乗心地性を向上させるようにした空気入りタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤの操縦安定性を向上させるための手法として、トレッド部に高硬度ゴムを配置することが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、トレッド部を高硬度ゴムで構成すると、操縦安定性を向上させることはできるものの、乗心地性を低下させるという問題があった。
この対策として、従来、トレッド部を2層構造にすると共に、キャップゴムに制駆動性に優れたゴムを配置し、ベースゴムにキャップゴムとは異なる剛性や硬さの大きいゴム組成物を配置することにより、操縦安定性と乗心地性とを両立させる試みが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このようにベースゴムを単一のゴム層のみで構成する限り、操縦安定性を所定レベルに向上させようとすると、乗心地性の改善効果が犠牲になるという問題があった。
特開2004−50869号公報 特開2006−335983号公報
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消するもので、操縦安定性を向上させながら、乗心地性を向上させるようにした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド部をキャップトレッド層とアンダートレッド層との2層構造にすると共に、前記キャップトレッド層の表面に少なくとも3本のタイヤ周方向に延びる主溝を形成した空気入りタイヤにおいて、車両への装着方向を指定すると共に、前記アンダートレッド層を、車両外側の端部からタイヤ幅方向内側に最外側の主溝を超えた領域まで延びる外側ゴム層と車両内側の端部からタイヤ幅方向外側に最内側の主溝を超えた領域まで延びる内側ゴム層との少なくとも2列のタイヤ周方向に配列するゴム層で構成し、前記外側ゴム層のJIS−硬度(Aタイプ)Hoを65〜80、100%モジュラスMoを4MPa以上にし、前記内側ゴム層のJIS−硬度(Aタイプ)Hiを50〜70、100%モジュラスMiを2〜4MPaにし、かつ両ゴム層の硬度差(Ho−Hi)を5以上、100%モジュラス差(Mo−Mi)を2MPa以上にしたことを特徴とする。
さらに、上述する構成において、以下の(1)〜(5)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記最外側の主溝及び最内側の主溝を、それぞれトレッド中心からタイヤ幅方向にトレッド展開幅の25%以内の領域に配置する。
(2)前記アンダートレッド層の厚さを0.5〜5.0mmにする。この場合において、前記内側ゴム層の厚さを、前記外側ゴムの厚さと同等又はそれ以上にするとよい。
(3)前記キャップトレッド層を構成するゴム組成物のJIS−硬度(Aタイプ)を60〜75にする。
(4)前記外側ゴム層に対する前記主溝の溝下ゲージを0.7〜2.0mmにする。
(5)前記内側ゴム層に対する前記主溝の溝下ゲージを0.5〜2.0mmにする。
本発明によれば、トレッド部をキャップトレッド層とアンダートレッド層との2層構造にした空気入りタイヤにおいて、車両への装着方向を指定した上で、アンダートレッド層を車両に対して最外側と最内側との特定領域に配置された少なくとも2列の互いに物性の異なる外側ゴム層と内側ゴム層とで構成し、これら外側ゴム層と内側ゴム層とのJIS−硬度(Aタイプ)及び100%モジュラスをそれぞれ特定すると共に、両ゴム層間の硬度差及びモジュラス差を特定したので、高速旋回走行時には荷重負担の多い車両外側における高硬度高モジュラスの外側ゴム層が支えることによって操縦安定性が向上すると共に、直進走行時には低硬度低モジュラスの内側ゴム層がクッション作用を発揮して乗心地性を向上することができる。
特に近年は、ネガティブキャンバーに設定されている高性能タイプの車両が殆どであり、直進走行時には車両内側のトレッド部に対する荷重負担が多くなっていることから、車両内側に配置された低硬度低モジュラスの内側ゴム層により乗心地性を向上することができる。
本発明の実施形態について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの概要を示す子午線断面図、図2は図1のタイヤにおけるトレッド部の詳細を拡大して示す子午線断面図である。
本発明の空気入りタイヤ1は、図1に例示するように、トレッド部2からサイドウォール部3、3を経て左右のビード部4、4のビードコア5、5に至るカーカス層6と、トレッド部2におけるカーカス層6の外周側に配置されたベルト層7とを備えている。
トレッド部2はキャップトレッド層2Aとアンダートレッド層2Bとの2層からなり、キャップトレッド層2Aの表面には少なくとも3本(図では4本)のタイヤ周方向に延びる主溝8が形成されている。本発明の空気入りタイヤ1は、車両への装着方向が指定されており、図1に示すように、図の右側が車両の内側に、図の左側が車両の外側になるようにそれぞれ装着される。
アンダートレッド層2Bは、図2に示すように、車両外側の端部2Xからタイヤ幅方向内側に最外側の主溝8(8o)を超えた2xに至る領域まで延びる外側ゴム層2S(2So)と車両内側の端部2Yからタイヤ幅方向外側に最内側の主溝8(8i)を超えた2yに至る領域まで延びる内側ゴム層2S(2Si)との少なくとも2列のタイヤ周方向に配列するゴム層2So、2Siで構成されている。
そして、外側ゴム層2SoのJIS−硬度(Aタイプ)Hoを65〜80、好ましくは70〜75、100%モジュラスMoを4MPa以上、好ましくは7MPa以下にし、内側ゴム層2SiのJIS−硬度(Aタイプ)Hiを50〜70、好ましくは55〜65、100%モジュラスMiを2〜4MPa、好ましくは2.5〜3.5MPaにすると共に、両ゴム層2So、2Siの硬度差(Ho−Hi)を5以上、好ましくは15以下、100%モジュラス差(Mo−Mi)を2MPa以上、好ましくは3.5MPa以下にしている。なお、本発明におけるJIS−硬度(Aタイプ)の値は、それぞれ20℃における値を示す。
これにより、高速旋回走行時には荷重負担の多い車両外側における高硬度高モジュラスの外側ゴム層2Soが支えることによって操縦安定性が向上すると共に、直進走行時には低硬度低モジュラスの内側ゴム層2Siがクッション作用を発揮して乗心地性を向上することができる。
特に近年の高性能タイプの車両には、車両外側からの横力が入力した際に、タイヤが最適な接地形状を保持するように、通例、タイヤ軸にはネガティブキャンバーが付与されている。そのため、直進走行時にはタイヤの車両内側が接地領域を支配することになり、車両内側におけるトレッド部2のゴム硬さ及び弾性率が乗心地性に大きく影響を及ぼす。このような背景から、本発明では、この部分(車両内側)におけるアンダートレッド層2Bに低硬度低モジュラスのゴムを配置することによって、乗心地性を向上させるようにしている。
なお、キャップトレッド層2Aは外周面が露出した状態で直接路面と接触するため、キャップトレッド層2Aの車両外側に高硬度高モジュラスのゴムを配置し、車両内側に低硬度低モジュラスのゴムを配置する試みは、これらゴムのトレッド中心O側の端末(図2における2x、2yに相当する部分)においてクラックが発生し易くなるため、耐久性の面から実用上採用することができない。
本発明において、主溝8とは、溝幅を8.0〜14.5mm、溝深さを7.5mm以上とするタイヤ周方向に延びる溝をいい、その平面形態は特に限られるものではなく、通例は、ストレート状又はジグザグ状に形成される。本発明の空気入りタイヤ1におけるトレッド部2には、これら主溝8とは別に溝幅や溝深さを異にする多種の副溝が形成され、これら主溝8と副溝との組み合わせにより、タイヤに対する要求性能に応じた各種のトレッドパターンが形成されている。
なお、上述する実施形態では、アンダートレッド層2Bをタイヤ周方向に配列した3列のゴム層2Sで構成した場合を示したが、アンダートレッド層2Bを構成するゴム層2Sはこれに限られることなく、2列又は4列以上で構成することができる。ゴム層2Sを3列以上で構成する場合には、外側ゴム層2Soと内側ゴム層2Siとの中間に配置されるゴム層2SのJIS−硬度及び100%モジュラスの値は、最外帯状ゴム2Soと最内帯状ゴム2Siとの中間の値になるように設定するとよい。これにより、良好な操縦安定性を維持しながら、乗心地性を確実に向上させることができる。
この場合において、相互に隣接するゴム層2S、2Sの間では、JIS−硬度及び100%モジュラスの値が車両外側から車両内側に向かって徐々に漸減するように配置するとよい。さらに好ましくは、隣接するゴム層2S、2S間において、JIS−A硬度の差が3以上、100%モジュラスの差が1MPa以上となるように設定するとよい。これにより、乗心地性を一層確実に向上させることができる。
また、隣接するゴム層2S、2Sの境界面は、この境界面からクラックが発生することのないように、図2に示すように傾斜面に形成することが好ましい。しかしながら、隣接するゴム層2S、2Sの物性値によっては、これら境界面を垂直面に形成することができる。
本発明において、最外側の主溝8o及び最内側の主溝8iを、それぞれトレッド中心Oからタイヤ幅方向にトレッド展開幅TDWの25%以内、好ましくは20%以上の領域に配置するとよい。これにより、ネガティブキャンバーに設定された車両に装着した場合であっても、直進走行時において、主溝8oを含めた車両内側におけるトレッド面の接地状態が確保できるので、排水性などのWET性能をはじめとするタイヤ諸性能の低下を抑制することができる。
なお、上述するトレッド展開幅TDWとは、図2に示すように、タイヤを適用リムに装着し、規定の空気圧とした場合のタイヤ子午線断面において、トレッド部2の輪郭の延長線と両サイドウォール部3、3の輪郭の延長線との交点をそれぞれPとしたとき、トレッド部2の輪郭に沿って測定される点P、P間の距離をいう。
本発明において、アンダートレッド層2Bの厚さは0.5〜5.0mm、好ましくは1.0〜3.0mmに設定するとよい。この厚さが0.5mm未満では、乗心地性を向上させることが難しくなり、5.0mm超では、タイヤ重量が増加する原因になる。
この場合において、内側ゴム層2Siの厚さを、外側ゴム層2Soの厚さと同等又はそれ以上に設定するとよい。また、アンダートレッド層2Bを構成するゴム層2Sを3列以上で構成する場合には、それぞれのゴム層2Sの厚さを、相互に隣接する帯状ゴム2S、2S間で、同等又は車両外側から車両内側に向かって徐々に漸増するように設定するとよい。これにより、乗心地性を確実に向上させることができる。
本発明の空気入りタイヤ1では、高レベルでの操縦安定性を確保する観点から、キャップトレッド層2Aを構成するゴム組成物のJIS−硬度(Aタイプ)を60〜75、好ましくは70〜75に設定するとよい。
また、外側ゴム層2Soに対する主溝8の溝下ゲージh1(図2参照)を0.7〜2.0mm、好ましくは1.0〜1.5mmに設定するとよい。溝下ゲージh1が0.7mm未満にすると、主溝8の溝下からクラックが発生し易くなり、2.0mm超にすると、操縦安定性の向上効果が低下すると共にタイヤ重量増加の原因になる。
さらに、内側ゴム層2Siに対する主溝8の溝下ゲージh2(図2参照)を0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.2mmに設定するとよい。溝下ゲージh2が0.5mm未満にすると、主溝8の溝下からクラックが発生し易くなり、2.0mm超にすると、乗心地性の向上効果が低下すると共にタイヤ重量増加の原因になる。
上述するように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部をキャップトレッド層とアンダートレッド層との2層構造にして、車両への装着方向を指定した上で、アンダートレッド層を車両に対して最外側と最内側との特定領域に配置した少なくとも2列の外側ゴム層と内側ゴム層とで構成し、これら両ゴム層のJIS−硬度と100%モジュラス、及び両ゴム層の硬度差とモジュラス差、をそれぞれ特定することにより、操縦安定性を向上させながら、乗心地性を向上させるようにしたもので、特に高性能タイプの車両に装着する乗用車タイヤとして好ましく適用される。
タイヤサイズを255/35ZR20、タイヤ構造を図1として、アンダートレッド層を単一のゴム層で構成した従来タイヤ(従来例)と、アンダートレッド層を2列の外側ゴム層2So及び内側ゴム層2Siで構成すると共に、これら2列のゴム層2So、2Siの物性値(JIS−硬度(Aタイプ)、100%モジュラス)及びこれらゴム層2So、2Siの配置(境界2x、2yの位置)を表1のように異ならせた本発明タイヤ(実施例1〜4)及び比較タイヤ(比較例1〜6)とをそれぞれ作製した。なお、各タイヤにおいて、アンダートレッド層の厚さを1mm、キャップトレッド層の20℃におけるJIS−硬度(Aタイプ)を72とした。
これら11種類のタイヤについて、以下の方法により操縦安定性及び乗心地性を評価し、その結果を従来タイヤを3点とする5点評価により、表1に併記した。数値が大きいほど優れていることを示す。なお、評価点の右側に「+」を付したタイヤは「評価点よりやや優れていた」ことを示し、「−」を付したタイヤは「評価点よりやや劣っていた」ことを示している。
〔操縦安定性及び乗心地性の評価〕
各タイヤに空気圧220kPaを充填すると共に、車両(排気量2.5L、ネガティブキャンバー角−:−2.7°)の前後車輪に装着して、平坦路面と凹凸路面とからなる1周3kmのテストコースを平均速度150km/hにて10周走行させ、熟練したテストドライバーにより、操縦安定性及び乗心地性の官能評価を行った。
Figure 0004910782
表1より、本発明タイヤは、従来タイヤに比して、操縦安定性を向上させながら、乗心地性を向上させていることがわかる。なお、比較例1は内側ゴム層2Siの100%モジュラスが低過ぎたため、操縦安定性が低下し、比較例2は両ゴム層2So、2Siの100%モジュラスが共に低過ぎたため、操縦安定性及び乗心地性が共に低下し、比較例3は外側ゴム層2Soと内側ゴム層2Siとの硬度差が小さ過ぎると共に内側ゴム層2Siの100%モジュラスが高すぎたので乗心地性が低下し、比較例4は外側ゴム層2Soと内側ゴム層2SiとのJIS−硬度が共に低過ぎたため、操縦安定性が低下したことがわかる。
また、比較例5は外側ゴム層2Soと内側ゴム層2Siとの100%モジュラスが逆転すると共に外側ゴム層2Soと内側ゴム層2Siとの境界2x、2yが車両外側に寄り過ぎて内側ゴム層2Si占める割合が大きくなり過ぎたので、操縦安定性が低下し、比較例6は内側ゴム層2Siの100%モジュラスが高すぎると共に外側ゴム層2Soと内側ゴム層2Siとの境界2x、2yが車両内側に寄り過ぎて外側ゴム層2Soの占める割合が大きくなり過ぎたので、乗心地性が低下したことがわかる。
本発明の実施形態による空気入りタイヤの概要を示す子午線断面図である。 図1のタイヤにおけるトレッド部の詳細を拡大して示す子午線断面図である。 (a)〜(e)は、それぞれ実施例において採用したアンダートレッド層の配置形態を示す図2に相当する子午線断面図である。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2A キャップトレッド層
2B アンダートレッド層
2S ゴム層
2So 外側ゴム層
2Si 内側ゴム層
2X アンダートレッド層の車両外側の端部
2Y アンダートレッド層の車両内側の端部
8 主溝
8o 最外側の主溝
8i 最内側の主溝
O トレッド中心
W トレッド展開幅

Claims (7)

  1. トレッド部をキャップトレッド層とアンダートレッド層との2層構造にすると共に、前記キャップトレッド層の表面に少なくとも3本のタイヤ周方向に延びる主溝を形成した空気入りタイヤにおいて、
    車両への装着方向を指定すると共に、前記アンダートレッド層を、車両外側の端部からタイヤ幅方向内側に最外側の主溝を超えた領域まで延びる外側ゴム層と車両内側の端部からタイヤ幅方向外側に最内側の主溝を超えた領域まで延びる内側ゴム層との少なくとも2列のタイヤ周方向に配列するゴム層で構成し、前記外側ゴム層のJIS−硬度(Aタイプ)Hoを65〜80、100%モジュラスMoを4MPa以上にし、前記内側ゴム層のJIS−硬度(Aタイプ)Hiを50〜70、100%モジュラスMiを2〜4MPaにし、かつ両ゴム層の硬度差(Ho−Hi)を5以上、100%モジュラス差(Mo−Mi)を2MPa以上にした空気入りタイヤ。
  2. 前記最外側の主溝及び最内側の主溝を、それぞれトレッド中心からタイヤ幅方向にトレッド展開幅の25%以内の領域に配置した請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記アンダートレッド層の厚さを0.5〜5.0mmにした請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記内側ゴム層の厚さを、前記外側ゴムの厚さと同等又はそれ以上にした請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記キャップトレッド層を構成するゴム組成物のJIS−硬度(Aタイプ)を60〜75にした請求項1、2、3又は4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記外側ゴム層に対する前記主溝の溝下ゲージを0.7〜2.0mmにした請求項1、2、3、4又は5に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記内側ゴム層に対する前記主溝の溝下ゲージを0.5〜2.0mmにした請求項1、2、3、4、5又は6に記載の空気入りタイヤ。
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