JP2007009086A - カチオン硬化性組成物 - Google Patents

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誠太郎 田島
Hiroshi Suzuki
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Abstract

【課題】 気泡の発生や肉痩せがなく、低タック性、透明性及び耐黄変性に優れた硬化物を形成可能なカチオン硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のカチオン硬化性組成物は、例えば、下記式(1)で表されるエポキシシリコーンと、〔b〕重量平均分子量が400〜10,000であり且つ上記〔a〕を除く多官能エポキシシリコーンと、〔c〕重量平均分子量が2,000〜40,000であり且つシラノール基を有するポリジメチルシロキサンと、〔d〕アルミニウム化合物と、〔e〕シロキサン構造を有さないエポキシ化合物と、を所定量含有する。
【化1】
Figure 2007009086

【選択図】 なし

Description

本発明は、室温硬化又は加熱硬化によるカチオン硬化性組成物に関し、更に詳しくはポリジメチルシロキサンを含有し、気泡や肉痩せがなく、低タック性、透明性、耐薬品性及び耐黄変性に優れた硬化物とすることができるカチオン硬化性組成物に関する。
エポキシ化合物及びシリコーン化合物を含有する硬化性組成物は、エポキシ化合物の長所である接着性及び機械的強度と、シリコーン化合物の長所である低応力性及び耐熱性とを兼ね備えると考えられており、更なる性能向上のため、長年に渡り研究されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、近年、エポキシ化合物及びシリコーン化合物を含有する硬化性組成物は、電気、電子、精密機器等の材料にも広く利用されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
特許文献4には、LED(発光ダイオード)の封止剤として利用可能なエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、該組成物が、芳香族化合物を多量に含む組成(特許文献1及び3も同様である)になっていることから、硬化物が黄変するといった問題がある。これは、耐熱性に優れたポリジメチルシロキサン構造を組成物へ導入し、更に、ポリジメチルシロキサン構造及びエポキシ構造の相溶性を改良するために、芳香族環構造を組成物へ導入せざるを得なかったからである。
ポリジメチルシロキサン構造及びエポキシ構造の相溶性の問題を解決するもう一つの手法として、組成物中におけるポリジメチルシロキサン構造の絶対量を少なくする方法が開示されている(特許文献2参照)。この方法によれば、芳香族化合物の使用量を少なくできる一方、そもそも耐熱性の低い有機化合物で組成が構成されてしまうので、高温下に長時間暴露すると黄変するという欠点を依然として持っていた。
相溶性の問題を解決する別の手法として、複数の重合開始剤を用いる方法が開示されている(特許文献3及び4参照)。この方法によれば、ポリジメチルシロキサン構造を有する部位は、Si−H基及び炭素−炭素二重結合のヒドロシリル化で硬化され、エポキシ構造を有する部位はカチオン重合で硬化されるのであるが、アルミニウム化合物によるカチオン硬化時にSi−H基を有する化合物が共存していると、一般的に気泡が発生することになり、例えば、パワーLED用の封止剤として満足のいくものは得られていなかった。
現在、パワーLEDの封止剤として検討されている封止剤の主流は、白金触媒によるビニル付加硬化型のシリコーンエラストマーであり、これは優れた耐黄変性を有するものの、タックがあるため埃がつきやすく、また、LEDパッケージとの密着性が低いため、経時的に剥離し、LEDの光度が低下するという問題を有している。
特開昭51−118728号 特開平2−73825号 特開平8−53603号 特開平6−240001号
本発明は、気泡の発生や肉痩せがなく、低タック性、透明性及び耐黄変性に優れた硬化物を形成可能なカチオン硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、以下の通りである。
1.〔a〕下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のエポキシシリコーン5〜50質量部と、
Figure 2007009086
(式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
Figure 2007009086
(式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
〔b〕重量平均分子量が400〜10,000であり且つ上記〔a〕を除く多官能エポキシシリコーン15〜65質量部(但し、〔a〕及び〔b〕の合計は20〜70質量部である。)と、
〔c〕重量平均分子量が2,000〜40,000であり且つシラノール基を有するポリジメチルシロキサン30〜80質量部(但し、〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計は100質量部である。)と、
〔d〕アルミニウム化合物と、
〔e〕シロキサン構造を有さないエポキシ化合物と、を含有し、
上記アルミニウム化合物〔d〕及び上記エポキシ化合物〔e〕の含有量は、上記の〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計を100質量部とした場合、それぞれ、0.0025〜0.1質量部、及び、0.2〜5質量部であることを特徴とするカチオン硬化性組成物。
2. 上記アルミニウム化合物〔d〕が、Al−O結合を有するアルミニウム配位化合物である請求項1に記載のカチオン硬化性組成物。
3.上記アルミニウム配位化合物〔d〕が、下記一般式(3)で表される化合物である上記2に記載のカチオン硬化性組成物。
Figure 2007009086
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、rは1〜3の整数であって、q+rは3である。)
4.上記アルミニウム配位化合物が、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジイソプロポキシド・モノセカンダリーブトキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー及びアルミニウムオキサイドステアレートトリマーから選ばれる少なくとも1種である上記2に記載のカチオン硬化性組成物。
本発明のカチオン硬化性組成物は、気泡や肉痩せといった問題を伴わずに、室温硬化(0〜40℃)又は加熱硬化でき、その硬化物は、低タック性、透明性、耐黄変性に優れる。具体的には、プローブタック試験における粘着力50gf以下、波長400nmでの光透過率80%以上、加熱試験(160℃×50時間)後の黄色度10以下を実現できる。従ってレンズやレンズシート、プリズム、光導波路材料、LED、半導体素子の封止材料等として有用である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のカチオン硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、〔a〕下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物〔a1〕」ともいう。)及び下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物〔a2〕」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種のエポキシシリコーン(以下、「成分〔a〕」ともいう。)5〜50質量部と、
Figure 2007009086
(式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
Figure 2007009086
(式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
〔b〕重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)が400〜10,000であり且つ上記〔a〕を除く多官能エポキシシリコーン15〜65質量部(但し、〔a〕及び〔b〕の合計は20〜70質量部である。)と、
〔c〕重量平均分子量Mwが2,000〜40,000であり且つシラノール基を有するポリジメチルシロキサン30〜80質量部(以下、「成分〔c〕」ともいう。但し、成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計は100質量部である。)と、
〔d〕アルミニウム化合物(以下、「成分〔d〕」ともいう。)と、
〔e〕シロキサン構造を有さないエポキシ化合物(以下、「成分〔e〕」ともいう。)と、をそれぞれ所定量含有する。
上記各成分は、圧力1mmHg及び温度100℃の条件下において、揮発しないことが好ましい。
[1]エポキシシリコーン
本発明に係るエポキシシリコーンは、エポキシシリコーン〔a〕(成分〔a〕)及び多官能エポキシシリコーン〔b〕(成分〔b〕)の2種類である。
成分〔a〕は、上記化合物〔a1〕及び〔a2〕から選ばれる少なくとも1種である。従って、化合物〔a1〕(の1種以上)のみを用いてよいし、化合物〔a2〕(の1種以上)のみを用いてよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記成分〔a〕としては、化合物〔a1〕を含むことが好ましく、その具体例としては、下記式(4)で表される、ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]−テトラメチルジシロキサン(分子量382)が挙げられる。
Figure 2007009086
一方、成分〔b〕は、2以上のエポキシ基を有するシリコーン化合物であれば、直鎖状化合物及び分岐状化合物のいずれでもよい。エポキシ基は、線状エポキシ基及び環状エポキシ基とすることができるが、分子中のどの位置にあってもよく、分子鎖中及び分子末端のいずれでもよい。また、珪素原子の結合形態は特に限定されず、他の官能基や骨格を有してもよい。エポキシ当量は、好ましくは500〜5,000であり、500未満では、硬化物にクラックが発生する場合があり、5,000を超えると、硬化物が白濁する場合がある。
上記成分〔b〕のMwは、400〜10,000であり、好ましくは1,000〜8,000、より好ましくは2,000〜5,000である。このMwが大きすぎると、白濁した硬化物が得られる場合があり、光透過率が十分でないことがある。尚、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。以下も同様である。
上記成分〔b〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的な化合物は、Plueddemannらの論文(「J.A.C.S.」、Vol.81(1959)、p.2632)、Crivelloらの論文(「Am.Chem.Soc.Symp.Ser」(1989)、p.398)、ヨーロッパ特許EP574264等に記載されている。
上記成分〔b〕としては、2以上のエポキシ基を有し且つ2以上のポリジメチルシロキサンユニットを有する化合物が好ましく、下記式(5)〜(15)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2007009086
(但し、nは1〜130の整数である。)
Figure 2007009086
Figure 2007009086
Figure 2007009086
(但し、nは1〜130の整数である。)
Figure 2007009086
(但し、nは1〜125の整数であり、mは2〜55の整数である。)
Figure 2007009086
(但し、nは1〜130の整数である。)
Figure 2007009086
Figure 2007009086
Figure 2007009086
Figure 2007009086
Figure 2007009086
(但し、nは1〜125の整数であり、mは2〜40の整数である。)
本発明においては、エポキシ基が、環状エポキシ基であることが好ましく、特に、下記式(16)で表される骨格を含む成分〔b〕がより好ましい。
Figure 2007009086
尚、上記(16)で表される骨格を含む例としては、下記(17)及び(18)で表される基等が挙げられる。
Figure 2007009086
Figure 2007009086
(但し、Rはアルキル基である。)
上記(17)及び(18)で表される基を含む化合物としては、上記式(10)〜(15)で表される化合物等があるが、これらのうち、下記(19)で表される骨格を含む化合物が好ましく、反応性が高く、成分〔c〕と相溶性が高いという点で、式(10)で表される化合物が、特に好ましい。
Figure 2007009086
[2]シラノール基を有するポリジメチルシロキサン〔c〕
本発明に係る成分〔c〕は、特定範囲のMwを有し且つ1以上のシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであれば、直鎖状化合物及び分岐状化合物のいずれでもよい。シラノール基は、分子中のどの位置にあってもよく、分子鎖中及び分子末端のいずれでもよい。
上記成分〔c〕のMwは、2,000〜40,000であり、好ましくは3,000〜30,000、より好ましくは4,000〜20,000である。このMwが小さすぎると、熱硬化した際に気泡が発生したり、硬化時に硬化物の表面が窪む、いわゆる肉痩せが発生したりする傾向がある。また、このMwが大きすぎると、白濁した硬化物が得られる場合があり、光透過率が十分でないことがある。
上記成分〔c〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔c〕としては、下記式(20)及び(21)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2007009086
(但し、nは1〜530の整数である。)
Figure 2007009086
(但し、nは1〜530の整数である。)
[3]アルミニウム化合物〔d〕
本発明に係る成分〔d〕は、Al−O結合を有するアルミニウム配位化合物(但し、「配位化合物」とは、配位結合を有する化合物であり、錯化合物(錯体)、付加化合物、分子化合物を含む。)であり、カチオン重合触媒として作用する。この成分〔d〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に好ましくは、3個のAl−O結合を有するアルミニウム錯体である。また、融点が60℃以下の化合物が好ましい。
上記アルミニウム配位化合物としては、アルミニウム原子にアルコキシ基、フェノキシ基、アシルオキシ基、o−カルボニルフェノラト基、β−ジケトナト基等の1種以上が結合した化合物等を用いることができる。
アルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜10のものであり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
フェノキシ基としては、フェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセタト、プロピオナト、イソプロピオナト、ブチラト、ステアラト、エチルアセトアセタト、プロピルアセトアセタト、ブチルアセトアセタト、ジエチルマラト、ジピバロイルメタナト等の配位子が挙げられる。
o−カルボニルフェノラト基としては、サリチルアルデヒダトが挙げられる。
また、β−ジケトナト基としては、アセチルアセトナト、トリフルオロアセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナトや、下記式(22)及び(23)で表される配位子等が挙げられる。
Figure 2007009086
Figure 2007009086
上記成分〔d〕としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジイソプロポキシド・モノセカンダリーブトキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー及びアルミニウムオキサイドステアレートトリマー等が挙げられる。
他のアルミニウム配位化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「アルミニウム金属石鹸」ともいう。)を用いることもできる。
Figure 2007009086
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、rは1〜3の整数であって、q+rは3である。)
上記一般式(3)で表されるアルミニウム金属石鹸は、(イ)有機酸とアルミニウムアルコキシドを有機溶媒中で反応させる溶媒法、又は、(ロ)有機酸のアルカリ石鹸と水溶性アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム)の複分解法により製造することができる。
上記化合物は水溶性が高いため、(イ)溶媒法が好ましい。この方法は、特定の有機酸と、原料となるアルミニウムトリアルコキシドとを、トルエン等の有機溶媒中で加熱して反応させ、反応に伴って原料アルミニウムアルコキシドから発生したアルコールと有機溶媒を留去して、目的物を釜残として得る製法である。
上記有機酸は、エーテル結合を有する脂肪族カルボン酸が好ましく、例えば、下記一般式(24)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2007009086
(但し、R及びRは、互いに、同一又は異なる炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0〜20の整数である。)
上記一般式(24)において、R及びRは、互いに、同一又は異なる炭素数1〜6のアルキレン基であり、好ましいRはメチレン基及びエチレン基であり、好ましいRはエチレン基及びプロピレン基である。また、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基及びエチル基である。mは0〜20の整数であり、好ましいmは1〜4の整数である。
従って、上記一般式(24)で表される化合物としては、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、イソプロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、イソブトキシ酢酸、sec−ブトキシ酢酸、tert−ブトキシ酢酸、アミロキシ酢酸、3−メチルブトキシ酢酸、2−メチルブトキシ酢酸、1−メチルブトキシ酢酸、2,2−ジメチルプロポキシ酢酸、1,2−ジメチルプロポキシ酢酸、1−エチルプロポキシ酢酸、tert−アミロキシ酢酸、ヘキシロキシ酢酸、シクロヘキシロキシ酢酸、メトキシエトキシ酢酸、エトキシエトキシ酢酸、プロポキシエトキシ酢酸、イソプロポキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシエトキシ酢酸、エトキシエトキシエトキシ酢酸、プロポキシエトキシエトキシ酢酸、イソプロポキシエトキシエトキシ酢酸、メトキシプロポキシ酢酸、エトキシプロポキシ酢酸、プロポキシプロポキシ酢酸、イソプロポキシプロポキシ酢酸、片末端メトキシポリエチレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端エトキシポリエチレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端メトキシポリプロピレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端エトキシポリプロピレングリコールのカーボキシメチルエーテル、メトキシプロピオン酸、エトキシプロピオン酸、プロポキシプロピオン酸、イソプロポキシプロピオン酸、ブトキシプロピオン酸、イソブトキシプロピオン酸、sec−ブトキシプロピオン酸、tert−ブトキシプロピオン酸、アミロキシプロピオン酸、3−メチルブトキシプロピオン酸、2−メチルブトキシプロピオン酸、1−メチルブトキシプロピオン酸、2,2−ジメチルプロポキシプロピオン酸、1,2−ジメチルプロポキシプロピオン酸、1−エチルプロポキシプロピオン酸、tert−アミロキシプロピオン酸、ヘキシロキシプロピオン酸、シクロヘキシロキシプロピオン酸、メトキシエトキシプロピオン酸、エトキシエトキシプロピオン酸、プロポキシエトキシプロピオン酸、イソプロポキシエトキシプロピオン酸、メトキシエトキシエトキシプロピオン酸、エトキシエトキシエトキシプロピオン酸、プロポキシエトキシエトキシプロピオン酸、イソプロポキシエトキシエトキシプロピオン酸、メトキシプロポキシプロピオン酸、エトキシプロポキシプロピオン酸、プロポキシプロポキシプロピオン酸、イソプロポキシプロポキシプロピオン酸、片末端メトキシポリエチレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端エトキシポリエチレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端メトキシプロピレンレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端エトキシポリプロピレングリコールのカーボキシエチルエーテルであり、メトキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシプロピオン酸及びメトキシエトキシエトキシプロピオン酸が特に好ましい。
上記アルミニウムトリアルコキシドは、従来、公知のアルミニウムトリアルコキシド、例えば、下記一般式(25)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2007009086
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
上記式(25)で表される化合物の好ましい例は、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドであり、取扱いの容易さから、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。
上記アルミニウム金属石鹸を製造する際に用いる有機溶媒は、上記の有機酸及びアルミニウムトリアルコキシドを溶解させることができることと、それら原料及び目的物であるアルミニウム金属石鹸と反応しないことが必要であり、後者の観点からジエチルアミン、ピリジン等のアミン類、アセチルアセトンやアセト酢酸エチル等は好ましくない。有機溶媒の好ましい例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい有機溶媒はトルエン及びキシレンである。
上記原料を用いて得られるアルミニウム金属石鹸は、モノソープ、ジソープ、トリソープ、更にはそれらの混合物であってよく、その割合は、上記の有機酸及びアルミニウムトリアルコキシドの仕込みモル比によって調節される。反応温度は、好ましくは50〜130℃、更に好ましくは80℃〜110℃である。
反応の追跡は、HPLC、ガスクロマトグラフィーで行うことができ、アルミニウムトリアルコキシド及び有機酸のピーク消失並びに目的物であるアルミニウム金属石鹸由来のピーク出現により反応の終点を決定することができる。
生成したアルミニウム金属石鹸は、原料として用いる有機酸の種類により外観が大きく異なるが、概ね褐色から淡黄色の、透明感のある飴状の固体であり、アルミニウム金属石鹸が得られたことは、赤外吸収スペクトルで有機酸に帰属される3,200〜2,600cm−1のブロードなOH伸縮振動や、1,700cm−1付近の二量体カルボキシルC=O伸縮の吸収がなくなり、1,600cm−1付近のCOO逆対称伸縮が生じたことで容易に確認することができる。
[4]シロキサン結合を有さないエポキシ化合物〔e〕
本発明に係る成分〔e〕は、シロキサン結合を有さず且つエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ基は、線状エポキシ基、環状エポキシ基等とすることができるが、分子中のどの位置にあってもよく、分子鎖中及び分子末端のいずれでもよい。更に、エポキシ当量及び分子量も特に限定されない。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔e〕を用いることにより、成分〔d〕を溶解状態とすることができ、本発明の組成物の取り扱いが容易なものとすることができる。
上記成分〔e〕としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルテトラヒドロピラニルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアセテート等が挙げられる。
[5]その他の成分
本発明の組成物は、上記の必須成分以外に、オキセタン化合物、酸化防止剤、シランカップリング剤、充填剤(無機フィラー、有機フィラー等)、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を含有したものとすることができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。これらのうち、窒素原子及びリン原子を含まない化合物が好ましく、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、特に、フェニルプロピオネート構造を有する化合物、更には、チオエーテル基及びフェニルプロピオネート構造を有する化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物としては2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(α−メチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、ステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、チオジエチレングリコールビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、市販品を用いることができ、例えば、和光純薬工業社製「ブチルヒドロキシトルエン」、旭電化工業社製の「アデカスタブHP−10」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−60」(いずれも商品名)、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035FF」(いずれも商品名)等が挙げられる。
上記酸化防止剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤としては、グリシジロキシトリメトキシシラン、ビス(グリシジロキシ)ジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
[6]組成物の構成
本発明のカチオン硬化性組成物は、上記の構成成分すべてを含有する1液型組成物とするよりも、エポキシシリコーン〔a〕及び〔b〕と、アルミニウム化合物〔d〕とを別々に含有する2液型組成物とすることが好ましい。即ち、本発明の組成物は、エポキシシリコーン〔a〕及び〔b〕を含有するA液と、アルミニウム化合物〔d〕を含有するB液とを調製し、使用直前に混合し、その直後から始まる硬化を利用するものである。上記のA液単独、B液単独に硬化性はないため、極めて安定性がよく、長期間の保管が可能である。
成分〔a〕及び〔b〕を含有するA液は、成分〔d〕を含有しない組成物であり、好ましくは成分〔c〕を含有する。また、必要に応じて、オキセタン化合物、シランカップリング剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等を含有したものとすることができる。
一方、成分〔d〕を含有するB液は、成分〔a〕及び〔b〕を含有しない組成物であり、好ましくは成分〔e〕を含有する。即ち、このB液は、硬化剤という位置付けである。B液は、必要に応じて、充填剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等を含有したものとすることができる。尚、シラノール基を発生させるシランカップリング剤は、B液の保存性が低下する場合があるため配合しないことが好ましい。
以下に各成分の配合割合について記述する。
A液が、成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕を含有する場合、これらの合計を100質量部としたとき、成分〔a〕及び〔b〕の合計量は、20〜70質量部であり、好ましくは25〜60質量部、より好ましくは30〜50質量部である。従って、成分〔c〕の含有量は、30〜80質量部、好ましくは40〜75質量部、より好ましくは50〜70質量部である。成分〔a〕及び〔b〕の合計量が20質量部未満、即ち、成分〔c〕の含有量が80質量部を超えると、硬化物に流動性を生じたり、シラノール基が多すぎることにより硬化物中に気泡が発生したりする場合がある。一方、成分〔a〕及び〔b〕の合計量が70質量部を超えた場合、即ち、成分〔c〕の含有量が30質量部未満であると、硬化物が黄変する場合がある。
尚、成分〔a〕の含有量は、成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計を100質量部としたとき、5〜50質量部であり、好ましくは7.5〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。また、成分〔b〕の含有量は、成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計を100質量部としたとき、15〜65質量部であり、好ましくは17.5〜55質量部、より好ましくは20〜45質量部である。但し、いずれの場合も、成分〔a〕及び〔b〕の合計量が上記範囲を逸脱しないものとする。成分〔a〕の含有量が5質量部未満では、硬化物が柔らかくなりすぎて流動性のある硬化物しか得られない場合がある。一方、50質量部を超えると、硬化物が黄変する場合がある。また、成分〔b〕の含有量が15質量部未満では、硬化時にクラックが発生する場合がある。一方、65質量部を超えると、硬化物が著しくタックを帯びる場合がある。
一方、B液が成分〔d〕及び〔e〕を含有する場合、これらの含有量は、上記の成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計100質量部に対して特定の範囲とするものである。即ち、成分〔d〕の含有量は、0.0025〜0.1質量部であり、好ましくは0.005〜0.05質量部、より好ましくは0.01〜0.02質量部である。この成分〔d〕の含有量が0.0025質量部未満であると、硬化物が柔らかくなりすぎ、粘着性の硬化物しか得られない場合がある。一方、0.1質量部を超えると、硬化物に気泡が発生する場合がある。また、成分〔e〕の含有量は、0.2〜5質量部であり、好ましくは0.5〜3質量部、より好ましくは0.75〜2質量部である。この成分〔e〕の含有量が0.2質量部未満であると、硬化に最低限必要な量の成分〔d〕を溶解できなくなるため、硬化物が柔らかくなりすぎ、流動性のある硬化物しか得られない場合がある。一方、5質量部を超えると、成分〔c〕との相溶性に劣ることから、硬化物が白濁し、光透過性が十分でない場合がある。
従って、A液及びB液は、成分〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計量を100質量部とした場合、成分〔d〕及び〔e〕の合計量として、好ましくは0.2025〜5.1質量部、より好ましくは0.505〜3.05質量部、更に好ましくは0.76〜2.02質量部となるように使用される。
尚、酸化防止剤は、A液及びB液のいずれか一方又は両方に配合することができるが、その配合量の合計は、上記の〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計を100質量部とした場合、通常、0.01〜5質量部であり、好ましくは0.1〜2質量部である。
上記のA液及びB液は、各々、上記の構成成分を混合することにより得ることができる。混合の際には、従来、公知の混合機等を用いることができる。具体的には、反応用フラスコ、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等が挙げられる。
尚、混合機によっては、混合中に発生する摩擦熱により重合が開始してしまうため、各成分を40℃以下、好ましくは25℃以下に保ちながら混合することが好ましい。
[7]組成物の硬化方法
本発明の組成物は、上記のA液及びB液を、好ましくは、使用直前に混合し、下記の温度で、一定時間加熱することにより硬化させることができる。
硬化温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは75〜180℃である。上記範囲内で、温度を一定としてもよいし、昇温させてもよい。更には、昇温と降温とを組み合わせてもよい。硬化時間は、成分〔d〕の種類、各成分の含有割合等により適宜、選択されるが、通常、10分以上であり、好ましくは1〜24時間である。
好ましい硬化方法の例としては、組成物を100℃で3時間加熱した後に、120℃に昇温し、この温度で3時間加熱する方法であり、この方法によると、110℃で6時間加熱した場合に比べて、より機械的強度に優れた硬化物が得られる。従って、硬化温度を段階的に変化させる硬化方法が好ましい。
また、組成物を固化する本硬化の後に、得られた硬化物を本硬化より低い温度で加熱する(後硬化)方法も、機械的強度に優れ、歪みの少ない硬化物が得られるため好ましい。この後硬化は、例えば、60〜120℃の温度で、30分〜8時間保持する等の条件で行われる。
本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、肉痩せや気泡がなく無色透明であるため外観に優れ、低タック性、透明性、耐薬品性及び加熱時の耐黄変性に優れる。
低タック性に関しては、ASTM D2979に準じて測定される硬化物表面の粘着力を、好ましくは50gf以下、より好ましくは30gf以下とすることができる。
透明性に関しては、波長400nmの光の透過率を好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上とすることができる。
また、耐薬品性に関しては、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、エチルセロソルブ、THF、MEK、MIBK、ジオキサン、トルエン、キシレン等の有機溶剤の接触に対しても、形状変化、透明性の低下、表面絶縁抵抗の変化等が生ずることがない。
更に、耐黄変性に関しては、硬化物を160℃×50時間という環境に暴露した後のJIS−K−7103に準じて測定される硬化物の黄色度を、好ましくは10以下、より好ましくは8以下とすることができる。
以下、本発明を、実施例により具体的に説明する。尚、下記において、「%」及び「部」は、特に断らない限り質量基準である。
1.カチオン硬化性組成物の調製及び硬化物の評価
実施例1
まず、下記要領で、A液及びB液を調製し、その後、これらを混合することで硬化性組成物を調製した。
(1)A液の調製
成分〔a〕としてのビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]−テトラメチルジシロキサン20部と、成分〔b〕としての両末端エポキシシクロヘキサニル基変性ポリジメチルシロキサン(商品名「X−22−169B」、信越化学工業社製。Mw;約4,000。以下、「b−1」ともいう。)20部と、成分〔c〕としての両末端シラノール基ポリジメチルシロキサン(商品名「DMS−S21」、GELEST社製。Mw;約4,200。以下、「c−1」ともいう。)60部と、酸化防止剤としての3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(商品名「ブチルヒドロキシトルエン」、和光純薬工業社製。以下、「BHT」ともいう。)1部と、をガラス製容器に入れ、50℃に加熱しながら1時間攪拌した。その後、減圧下に脱泡を行い、無色透明な液状の組成物を得た。これをA液とした。
(2)B液の調製
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、成分〔d〕としてのアルミニウムトリスアセチルアセトネート(東京化成工業社製。以下、「d−1」ともいう。)0.01部と、成分〔e〕としての3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P」、ダイセル化学工業社製。以下、「e−1」ともいう。)1部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら、50℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、無色透明な均一溶液を得た。これをB液とした。
(3)組成物の調製
その後、上記のA液及びB液を容器に入れ、ディスパーで5分間攪拌し、容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡することにより、無色透明な液状のカチオン硬化性組成物を得た。
(4)評価
上記カチオン硬化性組成物を用いて硬化物を得て、硬化物の外観性、低タック性、透明性、耐黄変性、耐薬品性及び密着性の評価を行った。尚、硬化物外観は目視により、低タック性はプローブタック試験により、透明性は波長400nmの光の透過率により、耐黄変性は分光式色差計により、耐薬品性及び密着性はアセトンラビング試験により評価した。詳細な評価方法は、下記の通りである。また、外観の良好な硬化物が得られたものについては、硬化物作製直後の他に、硬化物を160℃の環境下に50時間暴露し、同じ評価を行った。その結果を表1に示す。
(イ)硬化物の外観性
カチオン硬化性組成物を、長さ50mm×幅50mm×厚さ2mmの窪みを有するフッ素樹脂製型枠へ注入し、140℃で8時間加熱して硬化させた。加熱終了後、放冷し、硬化物を型枠から取り外し、その外観を目視で観察した。
(ロ)低タック性(プローブタック試験)
上記(イ)で得られた硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、これを測定試料とし、ASTM D2979に準じて、粘着力を測定した。測定装置は、プローブタック試験器「NS Tack Probe Tester」(ニチバン社製)であり、測定条件は、プローブ移動速度1cm/秒、ドエルタイム1秒である。
(ハ)光透過率
上記の(イ)で得られた硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、これを測定試料とし、分光蛍光光度計「V−550型」(日本分光社製)により、波長400nmにおける透過率を測定した。
(ニ)黄色度
上記の(イ)で得られた硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、これを測定試料とし、JIS−K−7103に準じて、分光式色差計「Σ80」(日本電色工業社製)により、透過光を用いる方法で黄色度を測定した。
(ホ)アセトンラビング試験
上記カチオン硬化性組成物を、ガラス基板上にバーコートし、厚さ約20μmの塗膜を得た。その後、140℃で8時間加熱して塗膜を硬化させた。硬化皮膜の表面に対して、アセトンを染み込ませた布を100回往復させ、硬化皮膜がガラス基板から剥離するかどうか、硬化皮膜の艶がなくなるかどうかを観察した。表中において、「○」は、硬化皮膜がガラス基板から剥離せず、艶がなくならなかったことを、「×」は、硬化皮膜がガラス基板から剥離したり、剥離しなくとも艶がなくなったことを示す。
実施例2
エポキシシリコーンb−1に代えて、両末端エポキシシクロヘキサニル基変性ポリジメチルシロキサン(商品名「KF−102」、信越化学工業社製。Mw;約8,000。以下、「b−2」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例3
エポキシシリコーンb−1に代えて、両末端グリシジルエーテル基変性ポリジメチルシロキサン(商品名「KF−101」、信越化学工業社製。Mw;約1,000。以下、「b−3」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例4
アルミニウム化合物d−1に代えて、1モルのアルミニウムイソプロポキシドと3モルのメトキシエトキシ酢酸とを反応して得られたアルミニウム金属石鹸(以下、「d−2」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
実施例5
エポキシ化合物e−1に代えて、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(商品名「EX−216L」、ナガセケミテックス社製。以下、「e−2」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表1に示す。
比較例1
ポリジメチルシロキサンc−1に代えて、両末端シラノール基ポリジメチルシロキサン(商品名「DMS−S12」、GELEST社製。Mw;約500。以下、「c−2」という。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例2
ポリジメチルシロキサンc−1に代えて、両末端シラノール基ポリジメチルシロキサン(商品名「DMS−S33」、GELEST社製。Mw;約43,500。以下、「c−3」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例3
成分〔a〕及びエポキシシリコーンb−1の使用量をそれぞれ、37.5部とし、ポリジメチルシロキサンc−1の使用量を25部とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例4
成分〔b〕を不使用とし、ポリジメチルシロキサンc−1の使用量を80部とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例5
成分〔a〕を不使用とし、エポキシシリコーンb−1の使用量を40部、ポリジメチルシロキサンc−1の使用量を60部とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例6
成分〔a〕及び〔b〕を不使用とし、ポリジメチルシロキサンc−1の使用量を80部、エポキシ化合物e−1の使用量を20部とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例7
ポリジメチルシロキサンc−1に代えて、シラノール基を有さず、Si−H基を有するポリジメチルシロキサン(商品名「HMS−031」、GELEST社製。Mw;約2,000。以下、「Si−Hシリコーン」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例8
ポリジメチルシロキサンc−1に代えて、シラノール基を有さず、両末端にトリメチルシリル基を有する、非反応性のポリジメチルシロキサン(商品名「DMS−T12」、GELEST社製。Mw;約2,000。以下、「PDMS」ともいう。)を用い、シラノール源としてβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名「KBM−303」、信越化学工業社製。以下、「シランカップリング剤」ともいう。)を3部用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例9
ポリジメチルシロキサンc−1に代えて、両末端にシラノール基を有する、ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(商品名「PSD−0332」、GELEST社製。Mw;約35,000。以下、「Phシリコーン」ともいう。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を得て、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例10
成分〔a〕20部、エポキシシリコーンb−1を20部、ポリジメチルシロキサンc−1を60部、エポキシ化合物e−1を1部、BHTを1部、及びカチオン系熱重合開始剤(商品名「アデカオプトンCP−66」、旭電化工業社製。以下、「CP−66」ともいう。)0.1部をガラス製容器に入れ、ディスパーで15分間攪拌した。その後、脱泡を行い、1液型カチオン硬化性組成物を得た。この組成物に関し、実施例1と同様にして各種評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例11
両末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(商品名「DMS−V31」、GELEST社製。Mw;約28,000。以下、「ビニルシリコーン」ともいう。)100部、上記Si−Hシリコーン5部、BHTを1部、及び白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体(商品名「SIH6832.0」、GELEST社製。以下、「白金触媒」という。)0.02部をガラス製容器に入れ、50℃で30分攪拌した。その後、脱泡を行い、白金触媒によるビニル付加硬化型の加熱硬化型シリコーンエラストマー組成物を得た。この組成物に関し、空気雰囲気下、温度130℃で1時間熱処理して硬化物を形成させ、実施例1と同様にして各種評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2007009086
Figure 2007009086
(5)評価結果について
表1及び表2より、以下のことが明らかである。
比較例1は、Mwが2,000未満のシラノール基を有するポリジメチルシロキサンエポキシシリコーンを用いた例であり、気泡及び肉痩せが発生し、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例2は、Mwが40,000を超えるシラノール基を有するポリジメチルシロキサンエポキシシリコーンを用いた例であり、硬化物が白濁した為、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例3は、成分〔a〕及び〔b〕の合計量が70部を超えた、即ち、成分〔c〕の含有量が30部未満の例であり、硬化物作製直後においては良好な性状の硬化物が得られているが、高温環境下に暴露すると黄色度が上昇し、耐黄変性の良好な硬化物が得られなかった。
比較例4は、成分〔b〕を用いなかった例であり、成分〔c〕が80部と多量に配合されているにも関わらず、硬化物にクラックが発生し、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例5は、成分〔a〕を用いなかった例であり、成分〔b〕が40部と多量に配合されているにも関わらず、半硬化のような流動性のある硬化物しか得られなかった。
比較例6は、成分〔a〕及び〔b〕の両方を用いず、硬化性材料の全てを、シロキサン結合を有さないエポキシ化合物とした例であり、加熱後の組成物には、硬化していない液状の部分が存在し、硬化している部分も白濁していて、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例7は、成分〔c〕を用いず、代わりにSi−H基を有するポリジメチルシロキサンを用いた例であり、気泡が発生し、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例8は、成分〔c〕を用いず、代わりに非反応性のポリジメチルシロキサンを用いた例であり、著しいタックが発生し、耐薬品性と密着性が得られなかった。
比較例9は、成分〔c〕を用いず、芳香族環を有するシラノールシリコーンを用いた例であり、硬化物作成直後においては良好な性状の硬化物が得られているが、高温環境下に暴露すると黄色度が上昇し、耐黄変性の良好な硬化物が得られなかった。
比較例10は、アルミニウム化合物ではなく、オニウム塩型のカチオン重合開始剤を用いた例であり、硬化物が白濁した為、外観の良好な硬化物が得られなかった。
比較例11は、カチオン硬化性組成物ではなく、白金触媒によるビニル付加硬化型の加熱硬化型シリコーンエラストマー組成物を用いた例であり、耐黄変性は良好であったが、著しいタックが発生した。
一方、実施例1〜4によると、硬化物に肉痩せがなく外観性に優れ、低タック性、光透過性、耐薬品性、耐黄変性の全てについて、十分な性能が得られたことが分かる。
本発明のカチオン硬化性組成物は、レンズ、レンズシート、プリズム、光導波路用材料、LED(発光ダイオード)、半導体素子等の封止材料等として有用である。

Claims (4)

  1. 〔a〕下記式(1)で表される化合物及び下記式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のエポキシシリコーン5〜50質量部と、
    Figure 2007009086
    (式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
    Figure 2007009086
    (式中、各Rは、互いに同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)
    〔b〕重量平均分子量が400〜10,000であり且つ上記〔a〕を除く多官能エポキシシリコーン15〜65質量部(但し、〔a〕及び〔b〕の合計は20〜70質量部である。)と、
    〔c〕重量平均分子量が2,000〜40,000であり且つシラノール基を有するポリジメチルシロキサン30〜80質量部(但し、〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計は100質量部である。)と、
    〔d〕アルミニウム化合物と、
    〔e〕シロキサン構造を有さないエポキシ化合物と、を含有し、
    上記アルミニウム化合物〔d〕及び上記エポキシ化合物〔e〕の含有量は、上記の〔a〕、〔b〕及び〔c〕の合計を100質量部とした場合、それぞれ、0.0025〜0.1質量部、及び、0.2〜5質量部であることを特徴とするカチオン硬化性組成物。
  2. 上記アルミニウム化合物〔d〕が、Al−O結合を有するアルミニウム配位化合物である請求項1に記載のカチオン硬化性組成物。
  3. 上記アルミニウム配位化合物〔d〕が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項2に記載のカチオン硬化性組成物。
    Figure 2007009086
    (但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、rは1〜3の整数であって、q+rは3である。)
  4. 上記アルミニウム配位化合物が、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジイソプロポキシド・モノセカンダリーブトキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー及びアルミニウムオキサイドステアレートトリマーから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のカチオン硬化性組成物。
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