JP2006131848A - ポリオルガノシロキサン及びその製造方法、並びにポリオルガノシロキサンを含有する硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明により得られる硬化性組成物の硬化物は、高温下に長時間暴露されても光透過性が高いレベルで保持されるため、レンズやレンズシート、プリズム、光半導体の封止剤として有用である。
例えば、特開平11−199853号公報、特開2000−65322号公報、特開2000−264969号公報、特開2000−265153号公報は、ポリメチルハイドロジェンシロキサンのようなSi−H基を有する含ケイ素化合物と、アリル基とオキセタン環を有する化合物をロジウム触媒でハイドロシリル化して得られるポリオルガノシロキサンおよび、当該ポリオルガノシロキサンを含有する光硬化性組成物を開示している。この技術によれば、アリル基に対するSi−H基のモル比を調節することで、製品のSi−H基含有量を容易にコントロールできる。
また、ゾル−ゲル法で製造されたかどうかは特定できないが、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を含んでいても良いポリオルガノシロキサンについても光硬化が知られていた。例えば、特表2002−526390号公報、特表2002−526391号公報はオキセタン環とシルセスキオキサン構造を含んでいても良いポリオルガノシロキサンを含有する光硬化性組成物を開示している。
さらに、ポリオルガノシロキサンであるかどうか特定できないが、ゾル−ゲル法で製造されたオキセタン環を有する物質についても光硬化が知られていた。例えば、特開2001−187812号公報はオキセタン環と加水分解性基を有する化合物と酸化物粒子とを、ゾル−ゲル法によって反応させて得られる反応性粒子と光カチオン重合開始剤とを含有する光硬化性組成物を開示している。
また近年、光半導体の分野では、紫外線発光素子を用いたLEDが盛んに開発されており、当該紫外線発光素子の封止剤には当然のことながら紫外線の光透過性の高い硬化物が求められているのであるが、光硬化性組成物の硬化物は紫外線を吸収する光カチオン重合開始剤を含んでいるため、紫外線領域において当該硬化物はほとんど光を通さず、封止剤として使用できなかった。
[1]Si−H基とオキセタン環を有するポリオルガノシロキサン
本発明におけるポリオルガノシロキサンは、ゾル−ゲル法で製造された、下記一般式(1)で示される官能基と、下記一般式(2)〜(4)で示される官能基から選択される少なくとも1種を有するポリオルガノシロキサンであって、好ましくは下記式(5)で示される、オキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)と、下記式(6)〜(8)から選択される、Si−H結合を有しオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)の少なくとも1種からなる混合物の共加水分解縮合物、若しくはこれら有機ケイ素化合物(I)と有機ケイ素化合物(II)に加えて更に、下記式(9)〜(11)から選択される、オキセタン環もSi−H基も有しない有機ケイ素化合物(III)の少なくとも1種からなる混合物の共加水分解縮合物であるポリオルガノシロキサンである。
R2 aR3 bHSiX’(3−a−b) (6)
R2 aR3 bR4 cSiX” (4−a−b−c) (9)
本発明におけるポリオルガノシロキサンの好ましい原料は、オキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)と、Si−H結合を有しオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)及びオキセタン環もSi−H基も有さない有機ケイ素化合物(III)に分類される。
本発明における好ましい有機含ケイ素化合物(I)は、オキセタン環と水素原子以外の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物であり、下記式(5)で表される化合物である。
本発明における好ましい有機ケイ素化合物(II)は、オキセタン環を有せず水素原子以外の加水分解性基を有する有機含ケイ素化合物であり、下記式(6)〜(8)で表される化合物である。
R2 aR3 bHSiX’3−a−b (6)
(但し、X’は水素原子以外の加水分解性基であり、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。a、bは0、1、2から選ばれる整数であり、a+bは2以下である。)
キサン、ビス(トリメチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン等が挙げられ、入手の容易さや反応のコントロールのしやすさから1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンがとりわけ好ましい。
本発明における好ましい有機ケイ素化合物(III)は、オキセタン環及びSi−H基を有せず、水素原子以外の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物であり、下記式(9)〜(11)で表される化合物である。
R2 aR3 bR4 cSiX”(4−a−b−c) (9)
オキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)は、1〜80mol%が好ましく、5〜40mol%がさらに好ましい。1mol%未満では硬化後にも流動性があるようなゲル状物しか得られず、80mol%を超えると本発明の目的とする黄変の抑制が達成できない恐れがある。
Si−H結合を有しオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)は、1〜40mol%が好ましく、5〜30mol%がさらに好ましい。1mol%未満では本発明の目的とする黄変の抑制が発現されず、60mol%を超えると硬化させた際に非常に脆い硬化物しか得られない。
オキセタン環もSi−H基も有さない有機ケイ素化合物(III)は、0〜80mol%が好ましく、5〜60mol%がさらに好ましい。1mol%未満ではオキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)とSi−H結合を有しオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)の縮合が円滑に進行しないため均一で透明なポリオルガノシロキサンが得られず、80mol%を超えると硬化させた際に非常に脆い硬化物しか得られない恐れがある。
本発明の製造方法は、上記の原料に対して、(1)加水分解共縮合工程、(2)加水分解縮合反応工程で使用した有機溶媒の除去工程の2工程を実施するものである。
本工程は、上記の原料を後述の水、触媒、有機溶媒の存在下に加水分解と縮合を行う工程である。
加水分解共縮合工程で使用する水は、上記原料を完全に加水分解するのに必要な水の量を1当量とすると、0.5〜10当量を使用するのが好ましく、とりわけ1.5〜5当量を使用するのが好ましい。
加水分解縮合工程では、上記式(1)に示す化合物を共加水分解する際、系をpH0.5以上4.5以下の酸性雰囲気とすることが好適である。pHが0.5未満であると大部分のオキセタニル基が開環してしまい、硬化性が著しく低下してしまう。pHが4.5より大きく6以下の弱酸性下では加水分解および縮合反応の速度が低下し、製造に長時間を要する。pHが7の中性下では有機ケイ素化合物(A)の加水分解が完全には進行しないため、所望のポリオルガノシロキサンが得られない。また、pH7より大きいアルカリ性雰囲気下では、Si−H基の分解が顕著に起こるため、本発明のポリオルガノシロキサンは全く製造できない。
上記のように加水分解時の雰囲気をpH0.5〜4.5とする場合、酸性触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、炭酸等が使用可能であり、なかでも入手が容易な塩酸を用いることが好ましい。
加水分解時に用いる有機溶媒は特に限定されず、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、リグロイン等を用いることができる。このうち1種類もしくは2種類以上の混合溶媒を用いて、反応系を均一な溶液にすることが好ましい。ピリジンやモルホリンのような塩基性を有する有機溶媒はSi−H基を分解するため使用できない。
加水分解時における好ましい反応温度は0〜60℃であり、より好ましくは20〜30℃である。0℃以下では反応の完結に長時間を要し、60℃以上ではSi−H基も著しく加水分解されてしまう。特開平10−330485号公報にあるように、エタノール/水の還流温度である80℃付近で加水分解を行なうとSi−H基はほぼ完全に加水分解されてしまい、本出願のポリオルガノシロキサンは得られない。
また、Si−H加水分解のための好適な反応時間は2〜30時間であり、より好ましくは4〜24時間である。
加水分解縮合後は、加水分解で消費されなかった水が存在する場合にはその水と加水分解縮合反応工程で使用した有機溶媒の除去を行うが、この工程は常圧ないし減圧下で通常の蒸留操作を行えばよい。
本発明のポリオルガノシロキサンは、オキセタン環及びSi−H基を有する化合物である。
ある化合物がオキセタン環を有するものであることは、1H−NMRのスペクトルにおいて、4.3〜4.4ppm付近に特徴的な2つのピークが観察されることによって確認でき、IRスペクトルにおいても、990cm−1付近にオキセタン環の吸収があることによって確認できる。
また、ある化合物がSi−H基を有するものであることは、IRスペクトルにおいて、2100cm−1付近に特徴的な吸収が存在することにより確認できる。
本発明のポリオルガノシロキサンは、Si−H基の含有割合が少なくとも2質量%である。好ましい上限は40質量%であり、より好ましい上限は30質量%である。
ポリオルガノシロキサンにおけるSi−H基の含有割合は、水素ガス発生法により容易に測定できる。この方法は、Si−H基を含有する試料を強アルカリ性溶液に溶解することによりSi−H基を切断し、発生する水素ガスの量を測定することにより試料中のSi−H基量を定量する方法である。
本発明の硬化性組成物は、前述の本発明のSi−H基とオキセタン環を有するポリオルガノシロキサン、エポキシ化合物及びアルミニウム化合物を必須成分として含有する。
本発明におけるエポキシ化合物は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルテトラヒドロピラニルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアセテート、特開平6−166752号公報や米国特許6706840号公報に記載のシリコーンエポキシ等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、エポキシ化合物の水素原子の一部又は全てがフッ素で置換されたものも使用できる。
本発明におけるアルミニウム化合物は、本発明のポリオルガノシロキサン中に含まれるSi−O−R基との相互作用により、本発明のポリオルガノシロキサン中のオキセタン環、並びに本発明のエポキシ化合物のオキシラン環を開環重合させる、硬化剤としての機能を有している。
なお、本発明のポリオルガノシロキサンは酸性下の加水分解・縮合反応により得られる化合物であるので、加水分解反応が100%進行することはなく、一部のSi−OR基が必ず残存する。そのため、上記のアルミニウム化合物の機能を発揮させるために、Si−OR基が残存するように態々加水分解反応を抑制する必要はない。
本発明における硬化性組成物には、必須成分以外に、オキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の硬化性組成物には、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを含有するため、Si−H基を分解する、水酸化ナトリウム、ピリジンのような塩基性の原料を配合してはならない。本発明の硬化性組成物はカチオン重合によって硬化するため、塩基性物質を配合するとSi−H基が分解されるだけでなく、硬化も起こらなくなってしまう。
本発明の硬化性組成物は、熱硬化性組成物であり、アルミニウム化合物の配合量によって、一液型にすることも、二液型にすることもできる。
本発明の一液型硬化性組成物は、使用直前の計量という操作がなく作業性が良いというメリットがある。一方、基本的に本発明の必須成分は混合直後から硬化反応を開始してしまうため、一液型硬化性組成物の棚ライフは短く、長期間に渡って使用できないという問題がある。
本発明の二液型硬化性組成物は、別々に調製されたA液、B液からなり、
使用直前に混合され、混合された直後から硬化が始まるものである。A液単独、B液単独に硬化性は無いため、二液型硬化性組成物は極めて安定性がよく、長期間の保管が可能である。
一液型硬化性組成物に関し、以下に各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替える。
本発明の二液型硬化性組成物は、本発明のポリオルガノシロキサンを必須成分とするA液と、本発明のエポキシ化合物と本発明のアルミニウム化合物を必須成分とするB液からなる組成物である。
またB液は、本発明のエポキシ化合物と本発明のアルミニウム化合物以外に、上述のオキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を配合することができるが、シラノール基を発生させることのできるシランカップリング剤を配合すると棚ライフが損なわれるため好ましくない。
以下にA液、B液を混合した場合の各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「A液とB液を混合した際の不揮発分全体」と読み替える。
本発明の硬化性組成物の硬化方法は、加熱による熱硬化であり、加熱とは組成物を50℃以上の環境下に暴露させることを意味する。
(実施例1)
[オキセタン環とSi−H基を有するポリオルガノシロキサンの合成例1]
攪拌機および温度計を備えた反応器に、イソプロピルアルコール200g、下記式(26)で示される3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン(以下OX−TRIESと略す)64.1g(200mmol)とメチルトリエトキシシラン213.96g(1.2mol)、下記式(27)で示されるテトラメチルジシロキサン13.43g(100mmol)を仕込んだ後、1%塩酸80gを徐々に加えて、25℃で攪拌した(pH1.1)。反応の進行をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより追跡し、原料のアルコキシシランがほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。引き続き、減圧下に溶媒を留去したところ、ほぼ定量的に、無色透明な粘度27000mPa・sの樹脂Aを得た。この樹脂AのIRスペクトルを図1に示す。
この樹脂AにおけるSi−H基の含有割合は、4.3質量%であった。
[オキセタン環とSi−H基を有するポリオルガノシロキサンの合成例2]
攪拌機および温度計を備えた反応器に、イソプロピルアルコール200g、OX−TRIES64.1g(200mmol)と、メチルトリエトキシシラン35.66g(200mmol)、下記式(28)で示されるトリエトキシシラン98.56g(600mmol)、下記式(29)で示されるヘキサメチルジシロキサン32.48g(200mmol)を仕込んだ後、1%塩酸70gを徐々に加えて(pH1.1)、25℃で攪拌した。反応の進行をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより追跡し、原料のアルコキシシランがほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。引き続き、減圧下に溶媒を留去したところ、ほぼ定量的に、無色透明な粘度21000mPa・sの樹脂Bを得た。この樹脂BのIRスペクトルを図2に示す。
[オキセタン環を有し、Si−H基を有さないポリオルガノシロキサンの合成例]
攪拌機および温度計を備えた反応器に、イソプロピルアルコール100g、OX−TRIES64.1g(200mmol)とメチルトリエトキシシラン213.96g(1.2mol)、ヘキサメチルジシロキサン16.24g(100mmol)を仕込んだ後、1%塩酸80gを徐々に加えて(pH1.1)、25℃で攪拌した。反応の進行をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより追跡し、OX−TRIESがほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。引き続き、減圧下に溶媒を留去し、無色透明な、粘度26000mPa・sの樹脂Xを得た。この樹脂XのIRスペクトルを図3に示す。
[二液型熱硬化性組成物の調製]
実施例1で得られた樹脂AをそのままA液とした。攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、エポキシ化合物[3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3、'4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製商品名セロキサイド2021P(以下CEL2021Pと略す)]99.99質量部と、東京化成工業株式会社製トリスアセチルアセトナトアルミニウム(以下Al(AcAc)3と称す)0.01質量部を配合し、窒素ガスを通気しながら50℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、均一無色透明な溶液を得た。これをB液とした。
上記A液50質量部とB液50質量部を容器に計量し、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al−1の配合量が50ppmである無色透明な液状の組成物を得た。
[二液型熱硬化性組成物の調製]
実施例2で得られた樹脂BをそのままA液とした。攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、CEL2021P99.99質量部と、Al(AcAc)30.01質量部を配合し、窒素ガスを通気しながら50℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、均一無色透明な溶液を得た。これをB液とした。上記A液50質量部とB液50質量部を容器に計量し、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al(AcAc)3の配合量が50ppmである無色透明な液状の組成物を得た。
[一液型熱硬化性組成物の調製]
実施例1で得られた樹脂A50質量部と、CEL2021P49.995質量部、オニウム塩型熱カチオン重合開始剤[(旭電化工業株式会社製商品名アデカオプトンCP−66(以下CP−66と称す)]を50ppm配合し、ディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない熱硬化性組成物を得た。
[光硬化性組成物の調製]
実施例1で得られた樹脂Aを50質量部、CEL2021Pを49.995質量部、ローディアジャパン製光カチオン重合開始剤photoinitiator2074(以下PI−2074と称す)を50ppm配合し、遮光してディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない光硬化性組成物を得た。
[光硬化性組成物の調製]
実施例1で得られた樹脂Aを50質量部、CEL2021Pを49質量部、PI−2074を1質量部配合し、遮光してディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない光硬化性組成物を得た。
[二液型熱硬化性組成物の調製]
比較例1で得られた樹脂XをそのままA液とした。攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコにCEL2021P99.99質量部と、Al(AcAc)30.01質量部を配合し、窒素ガスを通気しながら50℃で2時間攪拌した後、室温に戻し、均一無色透明な溶液を得た。これをB液とした。上記A液50質量部とB液50質量部を容器に計量し、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al(AcAc)3の配合量が50ppmである無色透明な液状の組成物を得た。
[一液型熱硬化性組成物の調製]
比較例1で得られた樹脂X50質量部と、CEL2021P49.995質量部、CP−66を50ppm配合し、ディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない熱硬化性組成物を得た。
[光硬化性組成物の調製]
比較例1で得られた樹脂Xを50質量部、CEL2021Pを49質量部、PI−2074を50ppm配合し、遮光してディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない光硬化性組成物を得た。
[光硬化性組成物の調製]
比較例1で得られた樹脂Xを50質量部、CEL2021Pを49質量部、PI−2074を1質量部配合し、遮光してディスパーで15分間攪拌した後、脱泡を行ない光硬化性組成物を得た。
実施例3及び4、比較例2〜8につき、下記の方法により、機械的強度(曲げ強さ)、接着性(引張せん断接着強さ)、光透過性(光透過率)を評価した。実施例の結果を表1へ、比較例の結果を表2へ各々示した。
試験はJIS−R−1601(ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法)に準じて実施した。組成物を、長さ80mm×幅4mm×厚さ3mmの窪みを有するポリ四フッ化エチレン製型枠へ注入し、下記の条件で硬化させ、インストロンジャパンカンパニイリミテッド製INSTRON−5564材料試験システムを用い、クロスヘッド速度0.5mm/minで3点曲げ試験を行なった。
[熱硬化性組成物の硬化条件]
対象:実施例(3,4)、比較例(2,5,6)
加熱装置:防爆型乾燥器
硬化条件:120℃で1時間加熱した後、150℃で7時間加熱した。
[光硬化性組成物の硬化条件]
対象:比較例(3,4,7,8)
ランプ:60W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:30cm
光照射時間:15分
雰囲気:大気中(空冷あり)
試験はJIS−K−6861−1977に準じて実施した。ガラス、アルミニウム、セラミック又はポリフタルアミド(PPA)でできたテストピース(長さ100mm×幅25mm×厚さ2mm)を、接着面積が3.125cm2になるように貼り合わせ冶具で固定し、下記の条件で組成物を硬化させた。25℃、65%RHの環境下に24時間静置した後、東洋精機製作所製ストログラフV20−Cを用い、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行なった。
[熱硬化性組成物の硬化条件]
対象:実施例(3,4)、比較例(2,5,6)
加熱装置:防爆型乾燥器
硬化条件:120℃で1時間加熱した後、150℃で7時間加熱した。
[光硬化性組成物の硬化条件]
対象:比較例(3,4,7,8)
ランプ:60W/cm高圧水銀ランプ
ランプ高さ:30cm
光照射時間:30秒
雰囲気:大気中(空冷あり)
ポリ四フッ化エチレン製型枠(長さ50mm×幅50mm×深さ2mm)へ組成物を注入し、下記の条件で硬化させた。このプレート状硬化物の光透過性を、日本分光株式会社製分光蛍光光度計V−550を用い、400nm波長の可視光と380nmの紫外光の透過率で調べた。これを硬化物作製直後の光透過率とした。測定終了後、150℃のオーブンで3日間加熱する強制劣化試験を行なった。劣化試験後に再度光透過率測定を行なった。
一方、本発明の硬化性組成物を用いなかった比較例2〜8においては、各種の問題点があった。
アルミニウム化合物に代えてオニウム塩型熱カチオン重合開始剤を配合した比較例2において、硬化物の外観は黒い斑点があり、透明性に劣るという問題点があった。このため、この硬化物は、加熱による強制劣化試験後において光透過性が大きく劣化した。また、この硬化性組成物は、硬化はするが、接着力が殆どなかった。
アルミニウム化合物に代えて光カチオン重合開始剤を50ppm配合した比較例3と比較例7において、硬化物を形成するに至らず、曲げ強さ、光透過性、接着特性を測定することができなかった。
アルミニウム化合物に代えて光カチオン重合開始剤を1wt%配合した比較例4と比較例8において、硬化物は硬化直後において無色透明であったが、加熱による強制劣化試験後は光カチオン重合開始剤が着色する傾向があるため、光透過性が顕著に低下した。また、この硬化性組成物を硬化させた場合、表面付近の硬化に止まるため、硬化物の曲げ強さは極めて小さかった。
樹脂X(オキセタン環は有するが、Si−H基を有しないポリオルガノシロキサン)を配合した比較例5において、硬化物は硬化直後においては無色透明であったが、加熱による強制劣化試験後は、肉眼ではっきりとわかる程度の黄変が起き、光透過性が低下した。この比較例と実施例と比較すれば、Si−H基の有無により、加熱下に置かれた硬化物の光透過性が顕著に異なることがわかる。
アルミニウム化合物に代えてオニウム塩型熱カチオン重合開始剤を配合し、樹脂Xを配合した比較例6において、硬化物は硬化直後においては無色透明であったが、加熱による強制劣化試験後は、肉眼ではっきりとわかる程度の黄変が起き、光透過性が低下した。また、比較例2と同様に接着特性に劣っていた。
また、長時間高温に暴露されても外観(透明性)や光透過性が低下しないことが要求される分野に使用されるコーティング剤や接着剤としても有用である。
Claims (6)
- 下記式(5)で示されるオキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)と、Si−H結合を有しオキセタン環を有しない、下記式(6)〜(8)から選択される1種類以上の有機ケイ素化合物(II)、及び所望により、オキセタン環もSi−H基も有さない、下記式(9)〜(11)から選択される1種類以上の有機ケイ素化合物(III)の共加水分解縮合物である請求項1記載のポリオルガノシロキサン。
(但し、R0は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、R1は炭素数2〜6のアルキレン基である。Xは水素原子以外の加水分解性基であり、Xは互いに同一であっても異なっていても良い。)
(化6)
R2 aR3 bHSiX’3−a−b (6)
(但し、X’は水素原子以外の加水分解性基であり、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。a、bは0、1、2から選ばれる整数であり、a+bは2以下である。)
(但し、R2、R3は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。nは0以上20以下の整数である。)
(但し、R2は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、pは3以上20以下の整数である。)
(化9)
R2 aR3 bR4 cSiX”4−a−b−c (9)
(但し、X”は水素原子以外の加水分解性基であり、R2、R3、R4は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。a、b、cは0、1、2から選ばれる整数であり、a+b+cは3以下である。)
(但し、R2、R3、R4は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。nは0以上20以下の整数である。)
(但し、R2は炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基から選択される基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。pは3以上20以下の整数である。) - 上記式(5)で示されるオキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)と、Si−H結合を有しオキセタン環を有しない、下記式(6)〜(8)から選択される1種類以上の有機ケイ素化合物(II)、及び所望により、オキセタン環もSi−H基も有さない、下記式(9)〜(11)から選択される1種類以上の有機ケイ素化合物(III)を塩酸又は酢酸の存在下、60℃以下で加水分解縮合することを特徴とする請求項1記載のポリオルガノシロキサンの製造方法。
- 下記の(a)、(b)及び(c)を必須成分とする硬化性組成物。
(a)請求項1又は請求項2に記載のポリオルガノシロキサン
(b)エポキシ化合物
(c)アルミニウム化合物 - 下記のA液及びB液で構成されることを特徴とする二液型硬化性組成物。
A液:請求項1又は請求項2に記載のポリオルガノシロキサン(a)を必須成分とする組成物。
B液:エポキシ化合物(b)とアルミニウム化合物(c)を必須成分とする組成物。
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