JP4496928B2 - 新規なアルミニウム金属石鹸を含有する硬化性組成物 - Google Patents
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Description
例えば、特公昭53−29720号公報には(A)分子当り少なくとも一つのケイ素結合水酸基を含有するオルガノシリコン化合物と、(B)分子当り平均一つより多いエポキシ基を含有する化合物、(C)三水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、アルミニウムアシレートおよびアルコキシドの塩、アルミノシロキシ化合物及びアルミニウムキレートからなる群から選択された触媒量のアルミニウム化合物、及び(D)オルガノヒドロシリコン化合物からなる組成物が開示されている。当該公報の(C)アルミニウム化合物のうち、アルミニウムアシレートがアルミニウム金属石鹸に相当する。当該公報でアルミニウム金属石鹸としては、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムトリプロピオネート、アルミニウムトリベンゾエート、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムトリブチレート、アルミニウムトリベンゾエート等が好ましいものとして開示されている。
Al(OR1)n(OC=OR2)3−n(3)
これと共にカチオン重合性エポキシ化合物、シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物を含有する硬化性組成物である。
また、本発明の硬化性組成物は、従来のエポキシ硬化剤用アルミニウム化合物を使用した硬化性組成物と比較して、着色の少ない硬化物が製造できるため、レンズやレンズシート、プリズム、光半導体の封止剤として有用である。
[1]アルミニウム金属石鹸
一般に長鎖脂肪酸やナフテン酸、ロジン酸などの有機酸の金属塩を総称して「石鹸」というが、「金属石鹸」とは有機酸の金属塩のうち、アルカリ金属以外の金属塩をいい、本発明におけるアルミニウム金属石鹸とは、後に述べる特定の有機酸とアルミニウムの金属塩と定義される。
本発明のアルミニウム金属石鹸の好ましい製法は、従来公知のアルミニウム金属石鹸の製法がそのまま適用でき、大きく分けて(イ)有機酸のアルカリ石鹸と水溶性アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム)の複分解法と、(ロ)有機酸とアルミニウムアルコキシドを有機溶媒中で反応させる溶媒法がある。
本発明のアルミニウム金属石鹸は通常のアルミニウム金属石鹸とは異なり、水溶性が高いため(ロ)の溶媒法が好ましい。即ち、後に述べる特定の有機酸と、原料となるアルミニウムトリアルコキシドとを、トルエン等の有機溶媒中で加熱して反応させ、反応に伴って原料アルミニウムアルコキシドから発生したアルコールと有機溶媒を留去して、目的物を釜残として得る製法である。
本発明における有機酸は、エーテル結合を有する脂肪族カルボン酸であって、具体的には下記式(2)で表される化合物である。
本発明における原料のアルミニウムトリアルコキシドは、従来公知のアルミニウムトリアルコキシドが使用でき、その好ましい例は下記式(4)で表される化合物である。
本発明のアルミニウム金属石鹸を製造する際に用いる有機溶媒は、本発明における有機酸と原料のアルミニウムトリアルコキシドを溶解させることができることと、それら原料および目的物であるアルミニウム金属石鹸と反応しないことが求められ、後者の観点からジエチルアミンやピリジン等のアミン類、アセチルアセトンやアセト酢酸エチル等は好ましくない。有機溶媒の好ましい例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。とりわけ好ましい有機溶媒はトルエン、キシレンである。
本発明のアルミニウム金属石鹸は、モノソープ、ジソープ、トリソープ、またそれらの混合物であって良く、その割合は本発明の有機酸と原料のアルミニウムトリアルコキシドの仕込みモル比によって調節できる。また反応温度は50〜130℃が好ましく、80℃〜110℃がさらに好ましい。
反応の追跡はHPLCやガスクロマトグラフィで行なうことができ、原料アルミニウムトリアルコキシドや有機酸のピーク消失および、目的物であるアルミニウム金属石鹸由来のピーク出現により反応の終点を決定することができる。
本発明のアルミニウム金属石鹸は、原料として用いる有機酸の種類で大きく異なるが、概ね褐色から淡黄色の、透明感のある飴状の固体であり、本発明のアルミニウム金属石鹸が得られたことは、例えば赤外吸収スペクトルで原料有機酸に帰属される3200〜2600cm−1のブロードなOH伸縮振動や1700cm−1付近の二量体カルボキシルC=O伸縮の吸収が無くなり、1600cm−1付近のCOO−逆対称伸縮が生じたことで容易に確認できる。
本発明の硬化性組成物は(a)本発明のアルミニウム金属石鹸、(b)カチオン重合性エポキシ化合物、(c)シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物、を必須成分として含んでおり、更に(d)カチオン重合性オキセタン化合物、を含んでいても良い。また、シラノールを有するか若しくは発生させることができるカチオン重合性オキセタン化合物として、(e)ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンを含んでいても良い。よって本発明の硬化性組成物を構成する各成分の組み合わせとしては、(a)+(b)+(c)、(a)+(b)+(c)+(d)、(a)+(b)+(c)+(e)、(a)+(b)+(e)又は(a)+(b)+(d)+(e)がある。以下各成分について述べる。
本発明におけるカチオン重合性エポキシ化合物(b)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルテトラヒドロピラニルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアセテート、特開平6−166752号公報や米国特許6706840号公報に記載のシリコーンエポキシ等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、エポキシ化合物の水素原子の一部又は全てがフッ素で置換されたものも使用できる。
シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物(c)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、ジフェニル(メチル)シラノール、フェニル(ビニル)シランジオール、トリ(パラメトキシフェニル)シラノール、トリアセチルシラノール、ジフェニル(エチル)シラノール、ジフェニル(プロピル)シラノール、トリ(パラニトロフェニル)シラノール、フェニルジビニルシラノール、2−ブテニルジフェニルシラノール、ジ(2−ペンテニル)フェニルシラノール、フェニルジプロピルシラノール、パラメチルベンジルジメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリメチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリブチルシラノール、トリイソブチルシラノールトリフェニル(メトキシ)シラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニル(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)メトキシシラン、フェニル(ビニル)(メチル)(メトキシ)シラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリ(パラメトキシフェニル)メトキシシラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、ジフェニル(エチル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(プロピル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)(アセトキシ)シラン、ジフェニルジプロピオニルオキシシラン、ジフェニル(メチル)(トリフェニルアセトキシ)シラン、トリ(パラニトロフェニル)(メトキシ)シラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、フェニルジビニル(プロポキシ)シラン、2−ブテニルジフェニル(メトキシ)シラン、ジ(2−ペンテニル)(フェニル)(エトキシ)シラン、フェニルジプロピル(メトキシ)シラン、トリ(パラメトキシフェニル)(エトキシ)シラン、パラメチルベンジルトリメトキシシラン、トリフルオロアセチルトリメトキシシラン、ジ(パラクロルフェニル)ジエトキシシラン、トリエチル(メトキシ)シラン、トリメチル(メトキシ)シラン、トリプロピル(メトキシ)シラン、トリブチル(エトキシ)シラン、トリイソブチル(アセトキシ)シラン、1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルテトラシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタフェニルテトラシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1,1,5,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラ(ジメチルフェニル)ジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサエチルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタプロピルテトラシロキサン、1,3,5−トリヒドロキシ−3−エチル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジp−トリルトリシロキサン、ペルオキシシラノ基、o−ニトロベンジルオキシ基、α−ケトシリル基のいずれかを有する有機ケイ素化合物、シラノール基かMe−O−Si結合、Et−O−Si結合、CH3(C=O)O−Si結合を有するシリコーン製品、テトラメトキシシランの縮合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
カチオン重合性オキセタン化合物(d)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−アリロキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブタンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ヘキサンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カーボネートビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、特開平6−16804号公報に記載のオキセタンシリコーン等が挙げられ、これらオキセタン系モノマーは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明における、ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサン(e)は、下記の有機含ケイ素化合物(I)の加水分解縮合物であるか、または有機含ケイ素化合物(I)と下記の有機含ケイ素化合物(II)の加水分解縮合物である。
本発明における有機含ケイ素化合物(I)は、オキセタン環とシロキサン結合生成基を有する有機含ケイ素化合物であり、その好ましい例は、下記式(5)で表される化合物である。
本発明における有機含ケイ素化合物(II)はオキセタン環を有せずシロキサン結合生成基を有する有機含ケイ素化合物であり、その好ましい例は、下記式(6)〜(8)で表される化合物である。
R12 nSiX”4−n (8)
(但し、X”はシロキサン結合生成基であり、R12はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、nは1〜3の整数である。)
有機ケイ素化合物(II)は、1〜80mol%が好ましく、5〜60mol%がさらに好ましい。1mol%未満ではオキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)とオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)の縮合が円滑に進行しないため均一で透明なポリオルガノシロキサンが得られず、80mol%を超えると硬化させた際に非常に脆い硬化物しか得られない恐れがある。
用である。
本発明の硬化性組成物には、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の硬化性組成物は、本質的には本発明のアルミニウム金属石鹸と、カチオン重合性エポキシ化合物、シラノールの三者が共存した直後に硬化が開始されるものである。
よって、一液型硬化性組成物とする場合にはシラノール基が何らかの有機基で保護された、「シラノールを発生させることができる化合物」を使用することが好ましい。
また、二液型硬化性組成物とする場合は、本発明のアルミニウム金属石鹸とカチオン重合性エポキシ化合物からなるA液と、シラノールを有する化合物とカチオン重合性エポキシ化合物からなるB液のように、予めエポキシ化合物へ溶解しておくことが好ましい。なぜならば本発明のアルミニウム金属石鹸もシラノールを有する化合物も、大気からの湿気や酸素の影響で変質するためである。
本発明の一液型硬化性組成物は、前述の(a)+(b)+(c)か、(a)+(b)+(c)+(d)で構成される組成物であり、適宜上述の添加剤を使用することができる。以下に各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えることができる。
0.001質量%以下では硬化速度が著しく遅く、実質硬化物が得られない場合がある。0.5質量%以上であると棚ライフが極めて短く、使用に耐えない。
本発明の二液型硬化性組成物は、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(d)+(e)で構成されるB液]のいずれかの組み合わせを持つ組成物であり、適宜上述の添加剤を使用することができる。以下に各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えることができる。
室温硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は、組成物全体の0.01〜2質量%であることが好ましい。なお、室温硬化させた後50℃以上に加熱して硬化を進めると硬化物の強度が著しく上昇するので好ましい。加熱硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は組成物全体の0.001〜0.5質量%であることが好ましい。
加熱硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は、組成物全体の0.001〜2質量%であることが好ましい。アルミニウム金属石鹸(a)の配合割合が0.001質量%未満の場合には、熱の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことがあり、重合後の耐熱性および強度が不十分となる場合が有る。また、2質量%を超えて配合すると、触媒の作用が強すぎて急激に重合するため、強度のある硬化物や外観の良い硬化物は得られない。この傾向は、脂環式エポキシを選択した場合に顕著で、調合操作自体が危険になることがあり、避けるべきである。
本発明の硬化性組成物の硬化方法は、一液型か二液型かで異なる。一液型硬化性組成物の硬化方法は加熱による熱硬化であり、加熱とは組成物を50℃以上の環境下に暴露させることを意味する。
熱硬化させる場合は、加熱温度を好ましくは50〜200℃に、さらに好ましくは75〜180℃にするとよい。硬化時間はアルミニウム金属石鹸(a)の種類、組成物の配合比にもよるが、10分以上加熱することが好ましく、さらに好ましくは1時間以上加熱することが望ましい。また、硬化温度は段階的に上昇されることが好ましく、例えば100℃×3時間の加熱後に、120℃×3時間の加熱を行なうと、単純に110℃×6時間の加熱より機械的強度に優れた硬化物が得られる。また、例えば液状の組成物を固体化する工程である本硬化の後に、得られた硬化物を本硬化より低い温度で加熱する後硬化も、機械的強度に優れた硬化物が得られるため好ましい。
(アルミニウム金属石鹸の合成例1)
攪拌ペラ、バキュームスターラー、窒素導入管、還流冷却器を付属した四つ口フラスコに、東京化成製アルミニウムイソプロポキシド10.21g(0.05モル)、トルエン50mlを仕込んだ。窒素でバブリングをしながら、15分間室温で攪拌した。アルドリッチ製メトキシエトキシ酢酸24.14g(0.18モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後加熱を開始し、6時間還流させた後、室温まで放冷した。減圧下に揮発分を全て留去したところ、褐色透明の飴状の半固体であるアルミニウム金属石鹸aが20.3g得られた。この物質のIRスペクトルを図1に示す。
攪拌ペラ、バキュームスターラー、窒素導入管、還流冷却器を付属した四つ口フラスコに、東京化成製アルミニウムイソプロポキシド10.21g(0.05モル)、トルエン50mlを仕込んだ。窒素でバブリングをしながら、15分間室温で攪拌した。アルドリッチ製メトキシエトキシエトキシ酢酸32.07g(0.18モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後加熱を開始し、6時間還流させた後、室温まで放冷した。減圧下に揮発分を全て留去したところ、淡黄色透明の飴状の半固体であるアルミニウム金属石鹸bが27.1g得られた。この物質のIRスペクトルを図2に示す。
攪拌機および温度計を備えた反応器に、イソプロピルアルコール100g、下記式(9)で示される3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン115.38g(360mmol)とメチルトリエトキシシラン32.09g(180mmol)、ヘキサメチルジシロキサン14.62g(90mmol)を仕込んだ後、1%塩酸40gを徐々に加えて、25℃で攪拌した。反応の進行をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより追跡し、OX−TRIESがほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。引き続き、減圧下に溶媒を留去し、無色透明な、粘度4300mPa・sの樹脂Aを得た。
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、エポキシ化合物[3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3、'4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製商品名セロキサイド2021P(以下CEL2021Pと略す)]97.7重量部と、合成例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、トリメチルシラノール(信越化学工業株式会社製商品名LS−310、以下LS−310と称す)2重量部を加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
合成例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例3と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
実施例3のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製アルミニウム(III)アセチルアセトナート(以下Al(AcAc)3と称す)を用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であった。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、CEL2021P47.7重量部と、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製商品名アロンオキセタンOXT−221)50重量部、合成例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ、均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
合成例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例5と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
実施例5のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製Al(AcAc)3を用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であった。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、ナガセケミテックス株式会社製EX−216L(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル)49.7重量部と、合成例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、上記合成例のポリオルガノシロキサンa50重量部を加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
合成例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例7と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
実施例7のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製アルミニウム(III)アセチルアセトナートを用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であり、溶液は淡黄色になった。この溶液を室温へ戻し、上記合成例のポリオルガノシロキサンaを加えて溶解させ、淡黄色透明な液状の組成物を得た。
硬化性組成物の実施例3〜8、硬化性組成物の比較例1〜3につき、下記の方法により、接着性(引張せん断接着強さ)、光透過性(光透過率)を評価した。実施例の結果を表1へ、比較例の結果を表2へ示した。
試験はJIS−K−6861−1977に準じて実施した。組成物を長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmの、アルミでできたテストピースを用い、接着面積が3.125cm2になるように貼り合わせ冶具で固定し、下記の条件で硬化させた。25℃、65%RHの環境下に24時間静置した後、東洋精機製作所製ストログラフV20−Cを用い、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行なった。
[硬化条件]
加熱装置:防爆型乾燥器
硬化条件:120℃で1時間加熱した後、150℃で7時間加熱した。
組成物を、長さ50mm×幅50mm×厚さ2mmの窪みを有するポリ四フッ化エチレン製型枠へ注入し、下記の条件で硬化させた。このプレートの光透過性を、日本分光株式会社製分光蛍光光度計V−550を用い、400nmの波長の透過率で調べた。これを硬化物作成直後の光透過率とした。
一方、本発明のアルミニウム金属石鹸を用いなかった比較例1〜3においては、何れも硬化物の光透過性が劣るという問題があった。
[光透過性の比較(単位:%)]
実施例3,4/比較例1=81,84/69
実施例5,6/比較例2=82,86/72
実施例7,8/比較例3=75,78/64
本発明のアルミニウム金属石鹸を含有させたエポキシ系硬化性組成物は、接着性に優れると共に硬化物の光透過性が優れるので、レンズやレンズシート、プリズム、光半導体の封止剤のような、高度な光透過性が要求される用途で有用である。
また、外観(透明性)や光透過性が要求される分野に使用されるコーティング剤や接着剤としても有用である。
Claims (4)
- 下記の(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
(a)請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム金属石鹸
(b)カチオン重合性エポキシ化合物
(c)シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物
(d)カチオン重合性オキセタン化合物
- シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物が、ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンである請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
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