本発明は、フレキシブルプリント配線板用の絶縁基板や、TABテープのキャリアテープとして使用される超耐熱ポリイミドフィルムのエッチング液、およびエッチング方法、ポリイミド樹脂よりなるカバーレイをパターン状に形成する方法、ポリイミド樹脂の剥離方法に関する。
ポリイミド樹脂は、耐熱性・耐薬品性・電気特性・機械特性・寸法安定性等に優れることから、電子材料としてIC、LSI、モジュール基板等の製造において種々の用途に用いられている。これらの用途においてはポリイミド樹脂はフィルム状、あるいはコーティング膜として用いられる(以後、ポリイミドフィルムと称する)。上記用途においてポリイミドフィルムには、金属層間の導通を確保するためのスルーホールやデバイス実装用のデバイスホール等の孔を多数形成する必要がある。孔を形成するためには、ドリル、パンチング、レーザー照射、またはそれらの組み合わせで機械的に加工する以外に、ポリイミド樹脂を溶解せしめるエッチング液を用いて化学的に加工する(以後、エッチング法と称する)ことが知られており、この技術は特許文献1〜14等に開示されている。またこのエッチング法によれば、円形の孔あけ加工だけでなく、様々な形状の加工を施すことが可能である。特許文献15〜16には、ステンレス鋼薄板層を有するポリイミドフィルムのエッチングによって、ステンレス薄板にバネ特性を発現させる方法が開示されている。
このうち特許文献1〜3に見られるように従来のポリイミドフィルムのエッチング液としては、ヒドラジンを含有するものが多く知られているが、ヒドラジンのエッチング特性上の問題点だけでなく、ヒドラジンは毒性が強く、蒸気の吸引による粘膜の炎症等の問題があるため、代替の技術が求められていた。特許文献3〜10、12〜13にはヒドラジン代替のエッチング技術が開示されている。なかでも特許文献13によれば、5〜40%のエタノールアミンと20〜45%の水酸化カリウムを含むエッチング液で、エッチング孔の形崩れが生じにくく、ピロメリット酸系ポリイミド(例えばフィルム単体の商品名としては、米国デュポン社製「カプトン」)だけでなく、他のエッチング液ではエッチングが困難であったビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミド(例えばフィルム単体の商品名としては、宇部興産株式会社製「ユーピレックス」)でも良好にエッチングされ、200ミクロン以下の微細な貫通孔ができると開示されている。
しかし貫通孔の小径化の要求が高まるなかで、100ミクロン以下の貫通孔では、孔の形状再現性(すなわち形崩れのおこりにくさ)はいまだ不十分であり、より微視的に見てなめらかで形状再現性の高いエッチング液およびエッチング方法が求められていた。孔壁がなめらかになることは、その後のメッキ工程において、面の凹凸によるメッキの故障箇所を減少させ、表裏の層間の導通の作製工程の信頼性を高めることにつながるため、非常に重要な技術である。さらに、実用化するためには、ポリイミド樹脂を溶解させた状態でも液が均一で安定である必要があるが、従来のエッチング液では使用後に常温で放置すると凝固したり、分離してしまうため、対策が求められていた。
また一方の面から穿孔したブラインドビアホールの場合は、上記貫通孔に比べて微細加工はより難しい。穴のテーパー構造とテーパー面のなめらかさの点で満足される水準の穴が得られる技術が求められている。ブラインドビアホールの場合は、特に浸透性の高いエッチング液を用いると、テーパー面と底面にエッチング液成分や除去成分の残留により、繊維状・粒状、その他様々な形状の不均一箇所が発生しやすく、メッキによる表裏の層間の導通の作製工程の信頼性に大きく影響するため、重要である。
特許文献17において、充分にまたは実質的に充分に架橋されたポリイミド樹脂を、金属水酸化物の水溶液と接触させ、ついで酸と接触させ、つぎに金属水酸化物の水溶液と接触させることにより、危険なまたは爆発性の薬品を必要としないエッチング液で、残留物による故障を防止する技術が開示されているが、エッチング速度が遅く、微細な形状の加工には適さないため、改良技術が求められていた。
またポリイミドフィルムのエッチングによる加工において、ポリイミドフィルムはその表面にパターン状にした金属層、または樹脂膜をレジストとして、エッチングによって円形やその他の様々な形状に加工される。金属層をレジストとする場合、金属層はエッチング液に対して安定で、液を浸透させず、かつポリイミドフィルムとの剥離が起こりにくいため、微細な形状の加工や厚いフィルムの加工等に適しているが、金属層レジストは製造コストが高く、かつ工程上金属層を使えないケースも多くあり、樹脂膜をレジストとしてエッチングする技術が求められている。樹脂膜をレジストとしてエッチングする技術は特許文献18〜23等に開示されている。エッチング液がアルカリ溶液であるため、ゴム+ビスアジド系樹脂で代表される有機溶剤現像型の感光性樹脂膜(例えば東京応化株式会社のネガ型フォトレジストOMRシリーズ)が適しており、特許文献19、20、21に開示されている。しかし作業環境や現像処理の簡便性、さらに製造コストの面からは、アルカリ現像型感光性樹脂膜が最も好ましい。特許文献18では、水処理可能な感光性樹脂膜をレジストとし、濃厚塩基溶液でポリイミドフィルムをパターン状にエッチングする技術が開示されているが、エッチング処理が進行するとともに、該感光性樹脂膜がエッチング液により溶解、膨潤、剥離したり、エッチング液を浸透させるため、レジストとしての可使時間が短く、微細な形状の加工や厚いポリイミドフィルム、溶解速度の遅いポリイミドフィルムの加工には適さない。可使時間を長くするために、エッチングする前に感光性樹脂膜を加熱(ポストキュア)したり、特許文献22に開示されるごとく、エッチングする前に感光性樹脂膜に紫外線を照射する技術が知られているが、微細な形状の加工や厚いポリイミドフィルム、溶解速度の遅いポリイミドフィルムの加工には対策は未だ不十分である。
またフレキシブルプリント配線板は基材(主としてポリイミドフィルム)上に形成された金属(主として銅)回路の上に、カバーレイを有する。リジッドプリント配線板のソルダーレジストの機能に加えて、フレキシブル基板の屈曲性によって生ずる基材からの金属回路のはがれを防止する機能を有せしめるため、基材の組成に近いものをカバーレイに使うことが多い。部品実装のための端子部分などは、カバーレイを開口しておく必要があるため、パターン状に加工する必要がある。
フレキシブル配線板の大半を占めるポリイミドを支持体とするフレキシブル配線板の場合、ポリイミドを構成成分とするカバーレイを有することが多く、その形成方法には、フィルムカバーレイ、ポリイミド前駆体、感光性カバーレイを用いる3種類の方法が多く採用されている。フィルムカバーレイは、ポリイミドフィルムにアクリル系、あるいはエポキシ系等の接着剤がついたもので、パンチング加工やルーター加工といった機械的加工によりパターン状に成型した後、金属回路上に貼り付けられる。貼り付け作業は手動で行われるのが一般的で、非常に工数のかかる作業である。ポリイミド前駆体は、スクリーン印刷により金属回路上にパターン状に印刷される。その後加熱することにより、前駆体をイミド化し、ポリイミドよりなるカバーレイを形成する。スクリーン印刷の位置精度・精細度では近年のフレキシブル配線板のファインパターン化には対応できないという問題がある。感光性カバーレイは、感光性ポリイミドを用いる。感光性ポリイミド層は、インクを塗布するか、フィルムをラミネートすることにより金属回路上に設けられる。これにフォトマスクを通してパターン状に紫外光を照射し、未感光部を溶出することにより、パターン状にカバーレイを形成することができる。光学的にパターン形成するため、比較的微細な加工が可能であるが、感光性ポリイミドは非常に高価である。上記のポリイミドを構成成分とするカバーレイの3種類の形成方法は、いずれも解決すべき課題があり、新しい技術が求められている。
特許文献19と23等で、金属回路上に設けたポリイミド前駆体膜表面、あるいは加熱してイミド化したポリイミド膜表面に感光性樹脂膜を設け、パターン状に露光した後、感光性樹脂膜をレジストにしてポリイミド前駆体膜、あるいはポリイミド膜を溶解(エッチング)する様々な方式が提案・検討されている。前述のように、エッチング液がアルカリ溶液であるため、有機溶剤現像型の感光性樹脂膜が適しているが、作業環境や現像処理の簡便性、さらに製造コストの面を考慮すると好ましくない。加熱してイミド化したポリイミド膜の場合、水系(アルカリ)現像の可能なネガ型感光性樹脂膜は弱アルカリ液には溶解するが、強アルカリ液には短時間だけではあるがレジスト性を有する性能を利用して、パターン状に加工する方式が検討されたが、ネガ型感光性樹脂膜のレジスト性が十分とは言えず、量産レベルでの実用には至っていない。しかも近年のフレキシブル配線板のファインパターン化に対応した高精細なパターンを形成することはできなかった。
さらに、ポリイミド樹脂の合成装置や、ポリイミドフィルムの製造装置において、付着したポリイミド樹脂を溶解除去して剥離する必要がある。またパターン状にしたポリイミド樹脂をエッチングやメッキ等の加工のレジストとして用いる場合には、エッチングやメッキ等の加工後に、ポリイミド樹脂を隣接する材料を損傷することなく溶解除去して剥離する技術が求められていた。特に樹脂剥離の用途にエッチング液を使用する場合、エッチング液に大量のポリイミド樹脂を溶解させる場合がある。その際には、ポリイミド樹脂を大量に溶解させた状態でも液が均一で安定である必要があるが、従来のエッチング液では使用後に常温で放置すると凝固したり、分離してしまうため、対策が求められていた。
特開昭50−4577号公報
特開昭51−27464号公報
特開昭53−49068号公報
特許1293360号
特許1336968号
特許1497927号
特公平1−35011号
特開平4−20539号公報
特開平4−20540号公報
特開平4−20541号公報
特開平5−283486号公報
特許3186834号
特許3251515号
特開2002−9418号公報
特開2003−231764号公報
特開2004−39056号公報
特公平7−19062号公報
特許3401281号公報
特開平6−120645号公報
特開平6−234870号公報
特開平7−273466号公報
特開2001−305750号公報
特開2002−26485号公報
本発明の課題は、100ミクロン以下の貫通孔、ブラインドビアホールでも孔の形状再現性にすぐれ、より微視的に見てなめらかな孔壁が得られ、かつ寿命の長いポリイミド樹脂のエッチング液、およびエッチング方法、アルカリ現像処理が可能な感光性樹脂膜をレジストとするポリイミドフィルムのエッチング方法、ネガ型感光性樹脂膜を用いて高精度でかつ高精細なパターン状にポリイミド樹脂よりなるカバーレイを形成する方法、ポリイミド樹脂の剥離方法を提案することにある。
本発明者らは検討した結果、10〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウムを含有する水溶液からなる樹脂のエッチング液で上記課題を解決することを見出した。好ましくは、10〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウム、および0.1〜4質量%のエタノールアミンを含有する水溶液からなる樹脂のエッチング液で上記課題を解決することを見出した。
また、ポリイミドフィルムの片面または両面に設けたパターン状の金属層をレジストにして、上記のエッチング液でポリイミドフィルムをエッチングすることを特徴とするポリイミドフィルムのエッチング方法で上記課題を解決することを見出した。
あるいは、ポリイミドフィルムの片面または両面に設けたパターン状の樹脂膜をレジストにして、上記のエッチング液でポリイミドフィルムをエッチングすることを特徴とするポリイミドフィルムのエッチング方法で上記課題を解決することを見出した。好ましくは、ポリイミドフィルムの片面または両面にバインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂膜を設け、少なくとも一方の面において露光・現像してパターン状にした該感光性樹脂膜をレジストにすることにより、上記課題を解決することを見出した。
好ましい態様としては、上記のエッチング液でエッチングした後、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種の化合物を0.5〜10質量%含有する水溶液からなる定着液で処理することにより、より好ましくは、定着液の温度がエッチング液の温度以下で、かつ定着液の温度とエッチング液の温度差が40℃以下であることにより、さらに好ましくは、定着した後、pHが5.0〜9.0のリン酸塩を含有する液で処理する工程を有することにより、上記問題を解決することを見出した。
また、金属回路形成後のフレキシブルプリント配線板の回路形成面にポリイミド前駆体層を設け、加熱してイミド化率70%以上にイミド化してポリイミド層を形成した後、該ポリイミド層上にネガ型感光性樹脂膜を設け、露光・現像してパターン状にした該ネガ型感光性樹脂膜をレジストにして、上記のエッチング液でポリイミド層をエッチングすることにより、パターン状にポリイミド樹脂よりなるカバーレイを形成することを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法により、上記問題を解決することを見出した。
また上記のエッチング液で処理することにより、ポリイミド樹脂を溶解除去することを特徴とする樹脂剥離方法で上記課題を解決することを見出した。
本発明によれば、100ミクロン以下の貫通孔、ブラインドビアホールでも孔の形状再現性にすぐれ、より微視的に見てなめらかな孔壁が得られ、かつ寿命の長いポリイミド樹脂のエッチング液、およびエッチング方法、アルカリ現像処理が可能な感光性樹脂膜をレジストとするポリイミドフィルムのエッチング方法、ネガ型感光性樹脂膜を用いて高精度でかつ高精細なパターン状にポリイミド樹脂よりなるカバーレイを形成する方法、ポリイミド樹脂の剥離方法を提案することができる。
以下に本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本発明のエッチング液は、10〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウムを含有する水溶液である。好ましい態様としては、10〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウム、および0.1〜4質量%のエタノールアミンを含有する水溶液である。より好ましくは、25〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウム、および0.1〜2質量%のエタノールアミンを含有する水溶液である。さらに好ましくは、25〜35質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜30質量%の水酸化カリウム、および0.5〜2質量%のエタノールアミンを含有する水溶液である。本発明のエッチング液には、アルキルアミン、界面活性剤、無機塩類等を含有せしめることもできる。
本発明のエッチング液は、20℃〜90℃の範囲で使用することができる。ポリイミド樹脂の種類や厚み、パターンの形状等により最適温度が異なるが、60℃〜90℃が好ましい。より好ましくは70℃〜85℃がよい。エッチング装置としては当業者で知られる機能・構造を有する装置を用いることができる。
本発明において、片面または両面にパターン状にした金属層を有するポリイミドフィルムの金属の例としては、銅・金・ステンレス・鉄・モリブデン・ニッケルがあげられる。金属層のついたポリイミドフィルムとしては、あらゆる方法で製造されたものを使用することができる。製造方法としては、キャスティング方式・ラミネート方式・メタライジング方式等がある。金属層を有するポリイミドフィルムには、エポキシ等の接着剤層を有する3層タイプと接着剤層のない2層タイプが知られているが、本発明においてはいずれのタイプをも使用することができる。金属上にドライフィルムレジスト、あるいは液状の感光性レジスト層を設け、フォトマスクを通して露光・現像してパターン状のエッチングレジスト層を形成し、金属の露出部を金属のエッチング液でエッチングして、パターン状のポリイミドの露出部を得る。その後ポリイミド樹脂のエッチング液でポリイミドフィルムの露出部をエッチングして、円形の孔あけやその他任意の形状の加工が可能になる。
本発明において、片面または両面にパターン状にした樹脂膜を有するポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム表面にドライフィルムレジスト、あるいは液状の感光性レジスト層を設け、フォトマスクを通して露光・現像してパターン状のエッチングレジスト層を形成することによって得られる。その後ポリイミド樹脂のエッチング液でポリイミドフィルムの露出部をエッチングして、円形の孔あけやその他任意の形状の加工が可能になる。
本発明において、ポリイミドフィルムのエッチングのレジストとなるより好ましい樹脂膜は、バインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂膜である。ネガ型感光性樹脂は、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤を含有してなる。
バインダーポリマーは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメエルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロロ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、ポロピオール酸、等の重合性単量体をラジカル重合させて製造することができる。バインダーポリマーの酸価は、100〜250mgKOH/gであり、好ましくは150〜200mgKOH/gがよい。酸基をもつ単量体の含有量を調整することにより、所望の酸価を有するバインダーポリマーが調製される。バインダーポリマーの酸価は、JIS K2501に規定された方法で測定することができる。
本発明において、バインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂は、染料、顔料、発色剤(光発色剤)、熱発色防止剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着促進剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、有機溶剤等を含有してもよい。バインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂膜はあらゆる方法でポリイミドフィルム表面に設けることができる。中でもバインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂のドライフィルムをポリイミドフィルム表面にラミネートする方法、バインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂液をポリイミドフィルム表面に塗工する方法が簡便でよく知られている。
高圧水銀灯などの光源を用いて、所望のパターンを描画したフォトマスクを通して本発明で用いられるバインダーポリマーの酸価が100〜250mgKOH/gであるネガ型感光性樹脂膜を密着露光することにより、感光部は硬化する。またフォトマスクを通して密着露光するかわりに、レーザーを走査露光して感光性樹脂を硬化させることもできる。露光後、例えば0.1〜5質量%の炭酸カリウム、あるいは0.1〜5質量%の炭酸ナトリウム、0.1〜5質量%の水酸化ナトリウム等で現像処理することにより、未感光部の樹脂を除去して、所望のパターンを有するレジストが形成される。
本発明において、ポリイミドフィルムをエッチングする際にレジストとなるパターン状にした金属層や樹脂膜は、ポリイミドフィルムの片面または両面に設けられる。片面にパターン状にした金属層を設ける場合は、他方の面にパターン状にした樹脂膜を設けて両面からエッチングする方法と、他方の面全面にエッチングを進行させない金属層や樹脂膜等を設けて片面のみからエッチングする方法がある。片面にパターン状にした樹脂膜を設ける場合は、他方の面にパターン状にした金属層を設けて両面からエッチングする方法と、他方の面全面にエッチングを進行させない金属層や樹脂膜等を設けて片面のみからエッチングする方法がある。両面にパターン状にしたレジストを設ける場合は、両面からエッチングされる。ポリイミドフィルムの両面にパターン状にしたレジストを設けて両面からエッチングするほうが、エッチング時間が短く、かつ深さ方向のテーパー角や微細加工性の点で有利であるが、両面のパターンの位置合わせ等が必要で、設備的に複雑になる等のデメリットもあり、要求品質や生産効率、コスト等を総合的に判断して方式を選択することができる。
本発明において、ポリイミドフィルムは、上記エッチング液でエッチングした後、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種の化合物を0.5〜10質量%含有する水溶液からなる定着液で処理される。好ましくは、1〜5質量%の水酸化カリウム、1〜5質量%の水酸化ナトリウム、あるいはそれらの混合物を含有する定着液で処理されるのがよい。エッチング液の持ち込みによる定着液の成分の変動をおさえるために、エッチング液による処理と定着液による処理の間に水洗・乾燥等の工程があってもよい。
本発明のより好ましい態様として、定着液の温度はエッチング液の温度以下で、かつ定着液の温度とエッチング液の温度差が40℃以下がよい。好ましくは温度差は10℃〜30℃がよい。
さらに本発明の好ましい態様として、ポリイミドフィルムは、エッチング、定着した後、pH=5.0〜9.0のリン酸塩を含有する液で処理する工程を少なくとも1つ有する。リン酸塩としては、リン酸、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸2水素1ナトリウム、リン酸2水素1カリウムや、それらの混合物を用いることができる。リン酸塩の含有量は0.1〜10質量%がよく、好ましくは1〜5質量%がよい。このリン酸塩を含有する液の温度は、エッチング液の温度以下で、かつエッチング液との温度差が40℃以下がよい。
本発明は、ピロメリット酸系ポリイミド(例えばフィルム単体の商品名としては、米国デュポン社製「カプトン」)やビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミド(例えばフィルム単体の商品名としては、宇部興産株式会社製「ユーピレックス」)等の当業者で知られるポリイミド樹脂に適用することができる。ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドはポリイミド樹脂の中ではアルカリエッチング液への溶解速度が低いと知られているが、このような溶解の遅いポリイミドフィルムでも、本発明によれば良好にパターン状に加工することができる。とりわけアルカリ現像処理が可能な感光性樹脂膜をレジストとした場合でも、本発明によれば、高精細なパターンを形成することができる。
本発明において、ポリイミド前駆体としては当業者で知られるものを用いることができる。たとえば、Industrial Summit Technology社のPyre−M.L.シリーズや宇部興産株式会社のU−ワニスシリーズを用いることができる。ポリイミド前駆体を塗布、印刷、あるいは貼り付けることによって、金属回路を形成したプリント配線板上にポリイミド前駆体層が形成される。スプレー塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、ダイ塗布、スクリーン印刷、ドライフィルム化してラミネート等のあらゆる方法でポリイミド前駆体層を設けることができる。
ポリイミド前駆体層は、加熱することによりイミド化され、ポリイミド層となる。イミド化率は、特開2002−25485号公報に記載されるように、赤外吸収強度を測定することで求められる。本発明において、ポリイミド前駆体層はイミド化率が70%以上になるように加熱される。好ましくは80%以上がよい。加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類によって異なるので一概に規定できないが、150℃以上が好ましく、より好ましくは、180℃から320℃がよい。
本発明において、加熱により形成されたポリイミド層の上に、ネガ型感光性樹脂膜を設け、露光・現像してパターン状にしたレジスト層が形成される。本発明において、ポリイミド層の上に膜を形成するネガ型感光性樹脂としては、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤を含有してなる。バインダーポリマーは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメエルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロロ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、ポロピオール酸、等の重合性単量体をラジカル重合させて製造することができる。
本発明において、ポリイミド層の上に膜を形成するネガ型感光性樹脂は、当業者で知られる染料、顔料、発色剤(光発色剤)、熱発色防止剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着促進剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、有機溶剤等を含有してもよい。ポリイミド層の上に膜を形成するネガ型感光性樹脂膜はあらゆる方法でポリイミド層表面に設けることができる。中でもネガ型感光性樹脂のドライフィルムをポリイミド層表面にラミネートする方法、ネガ型感光性樹脂液をポリイミド層表面に塗工する方法が簡便でよく知られている。本発明において、ポリイミド層の上に膜を形成するネガ型感光性樹脂膜として、プリント基板製造用の市販のドライフィルムレジストを使用すると、安価でかつ安定して高効率でカバーレイを形成することができる。
当業者で公知の光源(高圧水銀灯など)を用いて、所望のパターンを描画したフォトマスクを通して本発明で用いられるポリイミド層の上に膜を形成したネガ型感光性樹脂膜を密着露光することにより、感光部は硬化する。またフォトマスクを通して密着露光するかわりに、レーザーを走査露光して感光性樹脂を硬化させることもできる。露光後、例えば0.1〜5質量%の炭酸カリウム、あるいは0.1〜5質量%の炭酸ナトリウム、0.1〜5質量%の水酸化ナトリウム等で現像処理することにより、未感光部の樹脂を除去して、所望のパターンを有するレジストが形成される。
これを本発明のエッチング液でエッチングした後、1〜4質量%の水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の当業者で知られるアルカリ剥離液で処理することにより、感光性樹脂膜は除去され、部品実装のための端子部分などが開口したポリイミド樹脂よりなるカバーレイができあがる。なお、前の工程の液の持ち込みによる成分の変動をおさえるために、各処理の後には適宜水洗・乾燥等の工程入れてもよい。カバーレイが形成されたフレキシブル配線板はそのままでもカバーレイとしての機能を有するが、再度加熱してイミド化率を高めることもできる。加熱温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは、180℃から320℃がよい。
本発明において、カバーレイを形成するフレキシブルプリント配線板の基材としては、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミドその他、あらゆる樹脂フィルムを用いることができる。また回路を構成する金属としては、あらゆるものを用いることができるが、銅が最も一般的である。
さらに、本発明のエッチング液で処理することにより、ポリイミド樹脂の合成装置や、ポリイミドフィルムの製造装置において、付着したポリイミド樹脂を溶解除去して剥離することができる。容器の場合は、エッチング液を満たして加熱するか、加熱したエッチング液を壁面に流すことにより除去するのがもっとも効果的である。配管の場合は、液を封入して静置させるか、液を循環させるのがもっとも効果的である。またパターン状にしたポリイミド樹脂はエッチングやメッキ、サンドブラスト等の加工のレジストとして用いられることがある。特にセラミック、ガラスや金属等の無機材料の加工に有効である。感光性ポリイミドや非感光性ポリイミドと感光性樹脂の組み合わせで、光学的に微細なパターン状に加工することができるので、有望な加工手法である。加工後にポリイミド樹脂を本発明のエッチング液で処理することにより、隣接する材料を損傷することなくポリイミド樹脂を溶解除去して剥離することができる。樹脂剥離の用途にエッチング液を使用する場合、エッチング液に大量のポリイミド樹脂を溶解させる場合があるが、本発明によれば、ポリイミド樹脂を大量に溶解させた状態でも液が均一で安定で、使用後に常温で放置しても凝固しにくく、かつ分離しにくい。
実施例において特に記載がない場合、百分率は質量基準である。厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に厚さ18ミクロンの銅箔を有する銅張積層板の両面にドライフィルムレジストをラミネートし、円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光・現像後、塩化第2鉄系エッチング液で露出部の銅をエッチングして、平均直径74ミクロン(銅箔の断面はテーパー構造のため、ボトム部=最も銅が内側に張り出した部分で測定した)の円形のポリイミド露出部を作製し、これを材料アとした(露光時に両面の円形パターンの位置が±5ミクロンの精度で一致するように作製した)。
表1の液A1の構成のエッチング液を調製した。残部を水(純水)とした。
材料アを80℃で保温した液A1に攪拌しながら20分間浸漬し、純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥して得られた試料を顕微鏡で観察し、材料アのポリイミド露出部に貫通孔が形成されていることを確認した。銅箔に隠れたポリイミドフィルムの貫通孔の形状を観察するために、銅箔を塩化第2鉄系エッチング液で除去後、水洗・乾燥して試料a1を得た。図1に試料a1の光学顕微鏡写真を示す。直径65ミクロン(ポリイミドフィルムの断面はテーパー構造のため、ボトム部=最もポリイミド樹脂が内側に張り出した部分で測定した)の円形のなめらかな孔壁を有する良好な貫通孔が得られることが確認された。
(比較例1)
表1に示す液A2(残部を水とした)を80℃に保温して13分間浸漬した以外は試料a1と全く同じ操作で試料a2を得た。図2に試料a2の光学顕微鏡写真を示す。形崩れが著しく、貫通孔の形状はフォトマスクの円形の形状を再現していない。加えて孔壁はなめらかではない。液A2を用いて、液温と浸漬時間を変化させても、貫通孔の形成される条件では試料a2と同等の形崩れした貫通孔しか得られなかった。
厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムの両面に厚さ12ミクロンの銅箔を有する銅張積層板の両面にドライフィルムレジストをラミネートし、5ミリピッチで格子状に円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光・現像後、塩化第2鉄系エッチング液で露出部の銅をエッチングして、平均直径56ミクロン(銅箔の断面はテーパー構造のため、ボトム部=最も銅が内側に張り出した部分で測定した)の円形のポリイミド露出部を作製し、これを材料イとした(露光時に両面の円形パターンの位置が±5ミクロンの精度で一致するように作製した)。
表2の液A3〜液A6の構成のエッチング液を調製した。残部を水とした。
材料イを75℃で保温した液A3〜液A6に時間を変化させて浸漬し、純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥した。20カ所の円形のポリイミド露出部すべてに貫通孔が形成されている試料の中で浸漬時間が最短のものを観察用試料とし、塩化第2鉄系エッチング液で銅箔を除去後、水洗・乾燥して試料a3〜試料a6を得た。それぞれの試料に裏側から光を当てて、800倍の光学顕微鏡でポリイミドの貫通孔の透過像を20個ずつ観察して、形状(円形状)をグレード評価した。グレードは、
4:すべての貫通孔で形崩れが全く観察されず、完全な円形である
3:微小な欠落箇所のある貫通孔があるが、実用的には可のレベルである
2:少なくとも1つの貫通孔で形崩れが見られ、円形の形状が確認できない
1:すべての貫通孔で形崩れが著しく、円形の形状が確認できない
の4段階で評価した。結果を表2に示す。本発明により貫通孔の形状再現性にすぐれ、より微視的に見て完全な孔壁が得られることがわかる。
(比較例2)
表2の液A7〜液A11(残部を水とした)を用いて実施例2と同様の操作で試料a7〜試料a11を得た。貫通孔の形状をグレード評価した。結果を表2に示す。安定して所望の形状の貫通孔を作製できないことが確認された。
表3の液A12〜液A25の構成のエッチング液を調製した。残部を水とした。
実施例2の材料イを75℃で保温した液A12〜液A25に時間を変化させて浸漬し、純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥した。20カ所の円形のポリイミド露出部すべてに貫通孔が形成されている試料の中で浸漬時間が最短のものを観察用試料とし、塩化第2鉄系エッチング液で銅箔を除去後、水洗・乾燥して試料a12〜試料a25を得た。試料a12〜試料a25について、実施例2と同様に裏側から光を当てて、800倍の光学顕微鏡でポリイミドの貫通孔の透過像を20個ずつ観察して、形状(円形状)をグレード評価した。結果を表3に示す。また、それぞれの試料に表側から光を当てて、800倍の光学顕微鏡でポリイミドの貫通孔の反射像を20個ずつ観察して、ポリイミド表面と貫通孔へつながるテーパー部との境界部分の形状(エッジ形状)をグレード評価した。グレードは、
A:表面とテーパー部分がなめらかに接続している
B:境界部分に微小な欠落箇所のある貫通孔があるが、実用的には可のレベルである
C:すべての貫通孔で境界部分に欠落箇所がある
の3段階で評価した。結果を表3に示す。本発明の好ましい態様である、10〜40質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、および20〜40質量%の水酸化カリウムに加えて、0.1〜4質量%のエタノールアミン、および残部の水を含む水溶液からなることを特徴とするポリイミド樹脂のエッチング液で、よりなめらかな貫通孔が得られることがわかる。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に厚さ18ミクロンの銅箔を有する銅張積層板の両面にドライフィルムレジストをラミネートし、5ミリピッチで格子状に円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光・現像後、塩化第2鉄系エッチング液で露出部の銅をエッチングして、平均直径54ミクロン(銅箔の断面はテーパー構造のため、ボトム部=最も銅が内側に張り出した部分で測定した)の円形のポリイミド露出部を作製し、これを材料ウとした(露光時に両面の円形パターンの位置が±5ミクロンの精度で一致するように作製した)。
表4の液A26〜液A27の構成のエッチング液を調製した。残部を水とした。
材料ウを85℃で保温した液A26〜液A27に時間を変化させて浸漬し、純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥した。100カ所の円形のポリイミド露出部すべてに貫通孔が形成されている試料の中で浸漬時間が最短のものを観察用試料とし、塩化第2鉄系エッチング液で銅箔を除去後、水洗・乾燥して試料a26〜試料a27を得た。それぞれの試料について200倍の光学顕微鏡でポリイミドの貫通孔を100個ずつ観察して、円形でないものを不良として集計して百分率で不良率を求めた。結果を表4に示す。本発明により不良な貫通孔は観察されなかった。
(比較例3)
表4の液A28〜液A31(残部を水とした)を用いて実施例4と同様の操作で試料a28〜試料a31を得て、不良率を求めた。表4に示すように、安定して良好な貫通孔が得られないことが確認された。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面にビスアジド−環化天然ゴム系フォトレジストを塗布し、円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光・現像により、平均直径80ミクロンの円形のポリイミド露出部を作製し、これを材料エとした(露光時に両面の円形パターンの位置が±5ミクロンの精度で一致するように作製した)。
表5の液A32の構成のエッチング液を調製した。残部を水とした。
材料エを80℃で保温した液A32に浸漬し、純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥して試料a32を得た。試料a32を800倍の顕微鏡で観察したところ、ポリイミド露出部に貫通孔が形成されていることを確認した。
厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムの両面に厚さ12ミクロンの銅箔を有する銅張積層板の両面にドライフィルムレジストをラミネートし、4種類の異なる孔径の円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光・現像後、塩化第2鉄系エッチング液で露出部の銅をエッチングして、平均直径152ミクロン、108ミクロン、88ミクロン、68ミクロン(銅箔の断面はテーパー構造のため、ボトム部=最も銅が内側に張り出した部分で測定した)の4種類の孔径の円形のポリイミド露出部を有する材料オを得た(露光時に両面の円形パターンの位置が±5ミクロンの精度で一致するように作製した)。
表6のアミン化合物を25質量%、水酸化カリウムを25質量%、および残部の水よりなる液A36を調製した。
材料オを82℃で保温した液A36に時間を変化させて浸漬し、60℃の純水で水洗後、50℃の熱風で乾燥した。4種類の孔径それぞれについて円形のポリイミド露出部に貫通孔が形成される最短浸漬時間(孔径によって最短浸漬時間は異なる。具体的には孔径が小さくなるにつれて、最短浸漬時間は長くなる。)のものを観察用試料とし、塩化第2鉄系エッチング液で銅箔を除去後、裏側から光を当てて、800倍の光学顕微鏡でポリイミドの貫通孔の透過像を20個ずつ観察して、孔の形状をグレード評価した。グレードは、
4:すべての貫通孔で形崩れが全く観察されず、完全な円形である
3:微小な欠落箇所のある貫通孔があるが、実用的には可のレベルである
2:少なくとも1つの貫通孔で形崩れが見られ、円形の形状が確認できない
1:すべての貫通孔で形崩れが著しく、円形の形状が確認できない
の4段階で評価した。結果を表6に示す。
また、1Lのエッチング液A36に対して1m2の割合で厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムを処理したエッチング液A36を15℃に冷却し、48時間放置し、液の均一性を観察し、
2:均一で分離していない。
1:液が分離している。
の2段階で評価した。結果を表6に示す。
(比較例4)
表6のアミン化合物を25質量%、水酸化カリウムを25質量%、および残部の水よりなる液A33〜液A35、および液A37〜液A42(残部を水とした)を調製した。液A33〜液A35、および液A37〜液A42を用いて、実施例6と同様の操作で観察用試料を作製し、各孔径における孔の形状をグレード評価した。結果を表6に示す。比較例の液A33〜液A35、および液A37〜液A42では、孔径が100ミクロン以下では、形崩れのない円形の貫通孔ができないが、本発明の液A36では、100ミクロン以下でも良好に貫通孔が形成された。また、実施例6と同じ操作で、液A37〜液A42液の均一性を評価した。結果を表6に示す。比較例の液A33〜液A35、および液A37〜液A42では、液が分離したが、本発明の液A36では、均一であった。表6の結果から、本発明のエッチング液によれば、従来の技術から予想されない格段の効果が得られることが確認された。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、アルカリ現像可能な、市販のプリント配線板製造用の厚さ50ミクロンのネガ型感光性樹脂のドライフィルムレジストをラミネートした。感光性樹脂の酸価は、173mgKOH/gであった。5KWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用いて、ライン/スペース=300ミクロン/300ミクロンのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面にラミネートしたドライフィルムレジストに密着露光し、コンベアー式現像機を用いて液温30℃の1%無水炭酸ナトリウム水溶液でスプレー圧力0.2MPaで90秒間現像処理し、テスト用パターン部にボトム部でスペース/ライン=300ミクロン/300ミクロンの樹脂パターンを有する材料カを得た。
表7の液B1の構成のエッチング液を調製した。残部を水(純水)とした。
材料カを80℃で保温した液B1に攪拌しながら12分間浸漬し、純水で水洗後、コンベアー式剥離機を用いて液温50℃の3%水酸化ナトリウム水溶液でスプレー圧力0.2MPaで150秒間処理して樹脂を剥離し、純水で水洗後50℃の熱風で乾燥して試料b1を得た。500倍顕微鏡で試料b1のテスト用パターン部を観察したところ、樹脂のスペース部が貫通しており、貫通部/非貫通部=280ミクロン/320ミクロンであった。さらに非貫通部のポリイミドフィルムの厚みを測定したところ、25ミクロンとエッチング前と同じ厚みであり、本発明によれば、ポリイミドフィルムが良好にパターン状にエッチングされた。
(比較例5)
表7に示す液B2(残部を水とした)を80℃に保温して12分間浸漬した以外は試料b1と全く同じ操作で試料b2を得た。樹脂のスペース部は貫通しており、貫通部/非貫通部=270ミクロン/330ミクロンであった。さらに非貫通部のポリイミドフィルムの厚みは15ミクロンであり、10ミクロン薄くなっており、エッチングによるパターン状の加工には適さないことが確認された。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムを厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムにし、液B1に攪拌しながら浸漬した時間を3分間とした以外は試料b1と全く同じ操作で試料b3を得た。樹脂のスペース部は貫通しており、貫通部/非貫通部=280ミクロン/320ミクロンであった。さらに非貫通部のポリイミドフィルムの厚みは25ミクロンであった。本発明によれば、溶解速度の遅いビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムと溶解速度の速いピロメリット酸系ポリイミドフィルムでほぼ同等のパターン状の加工ができた。
(比較例6)
表7に示す液B2(残部を水とした)を80℃に保温して3分間浸漬した以外は試料b3と全く同じ操作で試料b4を得た。樹脂のスペース部は貫通しており、貫通部/非貫通部=260ミクロン/340ミクロンであった。さらに非貫通部のポリイミドフィルムの厚みは20ミクロンであり、5ミクロン薄くなっており、エッチングによるパターン状の加工には適さないことが確認された。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムを厚さ75ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムにし、液B1に攪拌しながら浸漬した時間を10分間とした以外は試料b1と全く同じ操作で試料b5を得た。樹脂のスペース部は貫通しており、貫通部/非貫通部=250ミクロン/350ミクロンであった。さらに非貫通部のポリイミドフィルムの厚みは75ミクロンとエッチング前と同じ厚みであった。本発明によれば、厚いポリイミドフィルムでも良好にパターン状にエッチングされた。
(比較例7)
表7に示す液B2(残部を水とした)を80℃に保温して10分間浸漬した以外は試料b5と全く同じ操作をしたところ、エッチング中にネガ型感光性樹脂のドライフィルムレジストが剥離してしまい、パターン状に加工することができなかった。
メタアクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとメタアクリル酸とスチレンのコポリマーよりなる表8のバインダーポリマーC(酸価170mgKOH/g)と、光重合性化合物、光重合開始剤、発色剤、染料、可塑剤を含有するネガ型感光性樹脂を調製し、乾燥後の膜厚が20ミクロンとなるように、厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムの両面に塗布・乾燥し、実施例7で用いた超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機で露光して、両面の樹脂を全面感光させた。これを80℃で保温した表7の液B1の構成のエッチング液に攪拌しながら3分間浸漬し、純水で水洗後、液温40℃の1.5%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬してネガ型感光性樹脂を観察しながら剥離し、剥離性を下記のグレードで評価した。さらに純水で水洗したあと50℃の熱風で乾燥後、厚みを測定した。結果を表8に示す。また、バインダーポリマーCをバインダーポリマーB、およびバインダーポリマーDにした以外は同じ操作で剥離性と厚みを求めた。結果を表8に示す。本発明により、ネガ型感光性樹脂膜がレジストとして有効に機能することが確認された。
1:軽い撹拌で容易に剥離した
2:軽い撹拌では剥離せず、非常に強く撹拌すると剥離した
3:剥離しなかった
(比較例8)
バインダーポリマーCをバインダーポリマーAにした以外は実施例10と同じ操作で剥離性と厚みを求めた。結果を表8に示す。ネガ型感光性樹脂膜が剥離せず、厚みを測定することができなかった。またバインダーポリマーCをバインダーポリマーEにした結果を表8に示す。エッチング中にネガ型感光性樹脂膜が剥離した。
厚さ25ミクロンのピロメリット酸系ポリイミドフィルムの両面に厚さ4ミクロンの銅箔を有する銅張積層板の両面にドライフィルムレジストをラミネートし、片面に円形パターンを有するフォトマスクを通して紫外線で密着露光した。他方の面には紫外線で全面露光し、現像後、塩化第2鉄系エッチング液で露出部の銅をエッチングして、片面にのみ直径90ミクロンの円形のポリイミド露出部を作製し、これを材料キとした。
33質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、27質量%の水酸化カリウム、および残部の水よりなるエッチング液C1を調製した。
材料キを75℃で保温した上記エッチング液C1に攪拌しながら10分間浸漬した(第1工程)あと、表9に示す処理をして(順に第2工程、第3工程、第4工程)、ブラインドビアホールの試料c1〜試料c13を得た。なお、第1工程と第2工程と第3工程と第4工程の間では、次の工程に移る前に純水で5秒間洗浄した。試料c12の第2工程は3質量%のNaH2PO4水溶液にNaOH水溶液を添加してpHを6.0に調整した液で処理した。試料c1〜試料c13のブラインドビアホールの壁面、及び底面を走査型電子顕微鏡で観察(倍率:700倍)し、平滑さを下記の基準でグレード評価した。結果を表9に示す。なお、試料c1〜試料c13のすべてにおいて、ブラインドビアホールは形成されていた。
1:壁面、底面の一部に繊維状、粒状の付着物が観察される
2:付着物はない。壁面に凸凹している部分がある
3:付着物はない。壁面も平滑である。
試料c1〜試料c13のブラインドビアホール断面を走査型電子顕微鏡で観察し、壁面のテーパー角(テーパー構造でない垂直構造を90°とした)を観察(倍率:500倍)し、下記のグレードに分類した。結果を表9に示す。
1:45°未満
2:45°以上60°未満
3:60°以上
本発明の好ましい態様である試料c3〜7、9〜12では、平滑さ、テーパー角にすぐれた良好なブラインドビアホールが形成された。また、エネルギー分散型X線検出器付走査電子顕微鏡を用いて観察すると、試料c1の壁面にはエッチング液C1の成分に由来するカリウムが検出されたが、試料c5の壁面ではカリウムは検出されず、残留物が除去されていることが確認された。
33質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、27質量%の水酸化カリウム、1質量%のエタノールアミン、および残部の水よりなるエッチング液C2を調製した。
実施例11の材料キを75℃で保温した上記エッチング液C2に攪拌しながら10分間浸漬した(第1工程)あと、表10に示す処理をして(順に第2工程、第3工程、第4工程)、ブラインドビアホールの試料c14〜試料c26を得た。なお、第1工程と第2工程と第3工程と第4工程の間では、次の工程に移る前に純水で5秒間洗浄した。試料c25の第2工程は3質量%のNaH2PO4水溶液にNaOH水溶液を添加してpHを6.0に調整した液で処理した。試料c14〜試料c26のブラインドビアホールの壁面、及び底面を走査型電子顕微鏡で観察(倍率:700倍)し、平滑さを実施例11と同じグレードで評価した。結果を表10に示す。なお、試料c14〜試料c26のすべてにおいて、ブラインドビアホールは形成されていた。
試料c14〜試料c26のブラインドビアホール断面を走査型電子顕微鏡で観察し、壁面のテーパー角(テーパー構造でない垂直構造を90°とした)を観察(倍率:500倍)し、下記のグレードに分類した。結果を表10に示す。
1:45°未満
2:45°以上60°未満
3:60°以上
本発明のより好ましい態様である試料c3〜c7、c9〜c12では、平滑さ、テーパー角によりすぐれた良好なブラインドビアホールが形成された。また、エネルギー分散型X線検出器付走査電子顕微鏡を用いて観察すると、試料c14の壁面にはエッチング液C2の成分に由来するカリウムが検出されたが、試料c18の壁面ではカリウムは検出されず、残留物が除去されていることを確認した。
厚さ25ミクロンのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルム基材の両面に厚さ12ミクロンの銅箔を有する材料の片面に、ポリイミド前駆体液であるIndustrial Summit Technology社のPyre−M.L. RC5057をN−メチルピロリドンで体積比で2倍に希釈した液を、ロールコーターで塗布後、120℃で30分乾燥した。その後250℃で30分加熱処理し、Perkin Elmer社製FT−IR Spectrometer Spectrum Oneで赤外吸収を測定し、特開2002−25485号公報に記載される方法でイミド化率を求めたところ、形成されたポリイミド層のイミド化率は92%であった。マイクロメーターでポリイミド層の厚みを測定したところ、平均厚みは23ミクロンであった。このポリイミド層上に、旭化成エレクトロニクス株式会社のドライフィルムレジスト サンフォート AK4021を温度110℃、圧力0.2MPaでラミネートし、5KWの超高圧水銀灯光源を搭載した露光機を用いて、直径3mmの円形のテスト用パターンを有するフォトマスクを通して、上記のドライフィルムレジスト貼付面に密着露光し、コンベアー式現像機を用いて液温30℃の1%無水炭酸ナトリウム水溶液でスプレー圧力0.2MPaで90秒間現像処理し、直径300ミクロンの開口部を有するレジスト層を形成した。これを材料クとする。裏面はパターンを有しない全面銅箔である。
33質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、27質量%の水酸化カリウム、および残部の水よりなるエッチング液D1を調製した。このエッチング液を80℃で保温し、材料クを揺動させながら5分間浸漬し、純水で水洗後、コンベアー式剥離機を用いて液温50℃の3%水酸化ナトリウム水溶液でスプレー圧力0.2MPaで150秒間処理してドライフィルムレジストを剥離し、純水で水洗後50℃の熱風で乾燥して試料d1を得た。500倍顕微鏡で試料d1のテスト用パターン部を観察したところ、フリンジのない円形開口部が形成されていた。本発明によれば、市販のドライフィルムレジストが有効なエッチングレジストとして機能し、開口部を有するカバーレイを形成できることが確認された。
(比較例9)
エッチング液D1を33質量%のエタノールアミン、33質量%の水酸化カリウム、および残部の水よりなるエッチング液D2にした以外は試料d1と全く同じ操作で試料d2を得た。試料d2のテスト用パターン部を観察したところ、レジストの開口部だけでなく、全面にわたってポリイミド層がエッチングされていた。エッチング液d2では、市販のドライフィルムレジストは膨潤し、エッチング液を浸透させるため、有効なエッチングレジストとして機能せず、開口部を有するカバーレイを形成できないことが確認された。
(比較例10)
250℃30分の加熱条件を160℃30分にした以外は試料d1と全く同じ操作で試料d3を得た。イミド化率は66%であった。試料d3のテスト用パターン部を観察したところ、円形開口部の周辺部がなめらかな円形ではなく、形状が再現されなかった。
ソーダライムガラスの片面に、ポリイミド前駆体液であるIndustrial Summit Technology社のPyre−M.L. RC5057をN−メチルピロリドンで体積比で2倍に希釈した液を、ロールコーターで塗布後、120℃で30分乾燥した。その後280℃で30分加熱処理し、平均厚さ25ミクロンのポリイミド層を得た。このポリイミド層上に、旭化成エレクトロニクス株式会社のドライフィルムレジスト サンフォート AK4021を温度110℃、圧力0.2MPaでラミネートし、5KWの超高圧水銀灯光源を搭載した露光機を用いて、格子パターンを有するフォトマスクを通して、上記のドライフィルムレジスト貼付面に密着露光した。液温30℃の1%無水炭酸ナトリウム水溶液で120秒間現像処理し、格子状の被覆部を有するレジスト層を形成した。これを材料ケとする。
33質量%のN−(β−アミノエチル)エタノールアミン、27質量%の水酸化カリウム、1質量%のエタノールアミン、および残部の水よりなるエッチング液E1を調製した。このエッチング液を80℃で保温し、材料ケを揺動させながら5分間浸漬し、純水で水洗後、液温50℃の3%水酸化ナトリウム水溶液で200秒間処理してドライフィルムレジストを剥離し、純水で水洗後50℃の熱風で乾燥して、ソーダライムガラス上に格子状のポリイミド層を得た。ポリイミド層を有する面を、フッ酸系エッチング液で処理して、ソーダライムガラスをエッチングし、エッチング液E1に再度5分間浸漬し、水洗したところ、ソーダライムガラス表面に格子状のレリーフ像が形成された。1Lのエッチング液E1に対して3m2の割合で材料ケを処理したエッチング液E1を15℃に冷却し、48時間放置したが、変化はみられなかった。
(比較例11)
エッチング液E1を、33質量%のエタノールアミン、33質量%の水酸化カリウム、および残部の水よりなるエッチング液E2にした以外は、実施例14と全く同じ操作で処理したところ、格子状のレリーフ像が形成された。1Lのエッチング液E2に対して3m2の割合で材料ケを処理したエッチング液E2を15℃に冷却し、48時間放置したところ、液が分離していた。
本発明のエッチング液で形成したポリイミドフィルムの貫通孔の光学顕微鏡写真。
比較例のエッチング液で形成したポリイミドフィルムの貫通孔の光学顕微鏡写真。