JP2006316387A - 嵩高スパン糸、該嵩高スパン糸の製造方法、及び嵩高織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 一定方向に加撚したスパン糸を撚セットした後、該スパン糸の撚方向とは逆方向に逆撚してなることを特徴とする嵩高スパン糸。
【効果】 本発明の嵩高スパン糸は、撚りが戻ろうとするトルクが大きく、糸を構成する繊維間に隙間が多いため、膨らみがあって太く、柔軟性、嵩高性に優れる。また、この嵩高スパン糸を用いて製織編することで、保温性に優れた織編物を提供することができる。
【選択図】 図1
【効果】 本発明の嵩高スパン糸は、撚りが戻ろうとするトルクが大きく、糸を構成する繊維間に隙間が多いため、膨らみがあって太く、柔軟性、嵩高性に優れる。また、この嵩高スパン糸を用いて製織編することで、保温性に優れた織編物を提供することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、嵩高性に優れたスパン糸、該嵩高スパン糸の製造方法、及び該嵩高スパン糸を用いた嵩高織編物に関する。
従来、嵩高性を有するスパン糸としては、糸に加える撚りを少なくして、膨らみと柔軟性をもたせた甘撚糸が代表的である。しかし、甘撚糸は、単に糸を撚っただけであり、繊維自体には特別な処理がされていないため、繊維は従順に撚られる方向に従っており、嵩高性は十分とはいえないものであった。また、フィラメント糸としては、仮撚加工糸が知られているが、同方法は無撚のフィラメントを一方方向に撚った後、元の無撚の状態に戻す方法であり、スパン糸は無撚にするとす抜けることから、スパン糸には応用されていないのが現状である。
双糸の手法を用いて、一方の糸を解撚し、嵩高性を発現させた糸も知られている。例えば、太い糸と細い糸を沿わせ、これを撚りあわす時、双糸の太い糸の撚方向に対して逆撚した糸である。太い糸は逆撚されているのです抜けるが、細い糸はす抜けない様に、太い糸と逆方向の撚糸を使用することで、全体として、糸形状を保っている。しかし、この糸を織編物に用いた場合、2本の糸の撚りの周期と織物又は編物の周期の最小公倍数で模様が発生する。これを杢とよんでいるが、この杢は、場合によっては、できあがった織編物の品位を低下させるという問題があった。また、双糸である必要があること、細い糸を使用することは結果としてコストが高いという問題がある。
更に、溶解性の繊維と非溶解性の繊維を組み合わせた糸から溶解性繊維を除去することで得られる、空隙部分が多く、嵩高性に優れた糸が提案されている(特許文献1,2:特開2000−119927号公報,特開2000−30565号公報)が、より嵩高性に優れ、保温性や柔軟性に優れた糸が要求されている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、綿等の天然繊維のみならず、ポリエステル等の合成繊維を用いた嵩高性に優れたスパン糸及びその製造方法並びにこの嵩高スパン糸を用いた織編物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、従来であると、一度撚った糸をそのまま撚り戻すと、撚りがゼロになるところで糸が切れてしまい、撚りを反対方向までかけることは難しかったが、一定方向に撚りを加えたスパン糸を、一旦熱セットやシルケット処理等の方法で撚セットした後、このスパン糸を最初の撚りとは逆方向に撚り戻すことで、最初の撚方向に繊維が振れているため、撚りがゼロになっても繊維自体の絡み合いがあり、糸が切断することなく紡績が可能であることを見出した。そして、このようにして得られたスパン糸は、撚り戻ろうとするトルクが大きく、糸を構成する繊維と繊維の間に隙間があり、嵩高性に優れるものであることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
(1)一定方向に加撚したスパン糸を撚セットした後、該スパン糸の撚方向とは逆方向に逆撚してなることを特徴とする嵩高スパン糸、
(2)スパン糸が、熱可塑性繊維又はセルロース系繊維の単糸である(1)記載の嵩高スパン糸、
(3)撚セットが、熱セット、シルケット処理又は液体アンモニア処理である(1)又は(2)記載の嵩高スパン糸、
(4)逆撚前の撚係数が2.0〜8.0で、逆撚後の撚係数が2.0〜4.5である(1)、(2)又は(3)記載の嵩高スパン糸、
(5)一定方向に撚りを加えたスパン糸を撚セットし、次いで該スパン糸の撚方向とは逆方向に撚り戻すことを特徴とする嵩高スパン糸の製造方法、
(6)(1)乃至(4)のいずれかに記載の嵩高スパン糸を製織編してなる嵩高織編物
を提供する。
(1)一定方向に加撚したスパン糸を撚セットした後、該スパン糸の撚方向とは逆方向に逆撚してなることを特徴とする嵩高スパン糸、
(2)スパン糸が、熱可塑性繊維又はセルロース系繊維の単糸である(1)記載の嵩高スパン糸、
(3)撚セットが、熱セット、シルケット処理又は液体アンモニア処理である(1)又は(2)記載の嵩高スパン糸、
(4)逆撚前の撚係数が2.0〜8.0で、逆撚後の撚係数が2.0〜4.5である(1)、(2)又は(3)記載の嵩高スパン糸、
(5)一定方向に撚りを加えたスパン糸を撚セットし、次いで該スパン糸の撚方向とは逆方向に撚り戻すことを特徴とする嵩高スパン糸の製造方法、
(6)(1)乃至(4)のいずれかに記載の嵩高スパン糸を製織編してなる嵩高織編物
を提供する。
本発明の嵩高スパン糸は、撚りが戻ろうとするトルクが大きく、糸を構成する繊維間に隙間が多いため、膨らみがあって太く、柔軟性、嵩高性に優れる。また、この嵩高スパン糸を用いて製織編することで、保温性に優れた織編物を提供することができる。
本発明の嵩高スパン糸は、一定方向に加撚したスパン糸を撚セットした後、該スパン糸の撚方向とは逆方向に逆撚してなるものである。
ここで、本発明の嵩高スパン糸に用いられる繊維としては、特に制限されず、綿、麻等の天然セルロース系繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、高強度再生セルロース繊維(例えば、商品名テンセル)等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、絹、羊毛等のタンパク繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維等の熱可塑性繊維が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の嵩高スパン糸は、[1]上記繊維の束に撚りを加えてスパン糸を得る加撚工程、[2]糸の撚りを固定する撚セット工程、[3]糸の撚りを撚り戻す逆撚工程の3つの工程により製造することができる。
まず、上記繊維を通常の紡績方法によって撚りを加えてスパン糸(単糸)とする。この場合、例えば綿糸であれば、通常の紡績工程である開俵工程、混打綿工程、梳綿工程、練条工程、粗紡工程、精紡工程において適宜行うことができる。また、例えば、ポリエステルと綿を混綿したスパン糸は、通常の俵単位で混綿する俵混綿、混打綿工程において混綿機で混綿する秤量混綿、混打綿機上がりのラップを梳綿機に供給して混綿するラップ混綿、スライバーを練条工程で混綿するスライバー混綿等によって得ることができる。合成繊維の場合も同様である。上記精紡工程ではリング精紡等、撚りのかかる紡績方法であれば各種の方法が使用できる。
精紡工程において、最初にかける撚りは、Z撚り又はS撚りで撚係数2.0〜8.0が好ましく、より好ましくは3.0〜7.0である。撚係数が小さすぎると糸がす抜ける場合があり、大きすぎると撚り切れが発生する場合がある。
次に、撚りをかけた糸の撚り形態を固定するために、撚セットする。セット方法は、ポリエステル糸等の熱可塑性繊維の糸の場合、熱セットにより行うことができる。熱セットに使われる装置は、糸に熱をかけられる機械であれば特に制限されず、例えばスチームセッターや、糸熱処理機等の装置を用いて行うことができる。また、所定温度に設定した部屋に所定時間糸を入れておく方法を採用することもできる。
この場合、セット温度及び時間は、繊維が変質しない範囲内で適宜設定することができるが、セット温度は、望ましくは各繊維のガラス転移点〜融点が好ましい。上記条件を下回るとセットができない場合があり、上回ると繊維が溶けたり分解したりする場合がある。
一方、綿糸、麻糸等のセルロース系繊維の糸の場合は、シルケット処理又は液体アンモニア処理によりセットを行うことができる。シルケット処理又は液体アンモニア処理することで、セルロースの結晶構造が変換されて繊維の形状が保持されるため、糸の撚りは記憶される。
シルケット処理する場合、アルカリ剤としては、水酸化リチウム、苛性ソーダ、苛性カリ等の強アルカリ剤を用いることができるが、作業性、コストの面から苛性ソーダが好適である。また、必要に応じて他のアルカリ性の薬品を用いても構わない。
アルカリ濃度は、10〜30質量%、特に16〜25質量%が好ましく、−20〜80℃、特に−10〜40℃で、15秒〜60分間、特に30秒〜60分間で行うことが好ましい。処理条件が下回るとセットが不十分な場合があり、上回ると繊維が脆化したり、強力が低下したりする場合がある。
シルケット処理した糸に対して中和処理、水洗を行う。中和処理は、硫酸、塩酸等の無機酸、又は酢酸、蟻酸等の有機酸を使用して行うことができる。その後、乾燥する。
また、液体アンモニア処理は、例えば−33℃以下の温度に保持した液体アンモニア中に含浸する方法、液体アンモニアをスプレー又はコーティングする方法等が採用できる。この場合、液体アンモニアの含浸時間は適宜選択されるが、通常5〜40秒程度が好適である。含浸時間が足りないとセットが不十分な場合があり、長すぎると変色したりする場合がある。
なお、液体アンモニア処理は、液体アンモニアを用いるのが最も一般的であるが、場合によっては、メチルアミン、エチルアミン等の低級アルキルアミンを使用することもできる。液体アンモニア処理された糸は、付着しているアンモニアを加熱又は水洗、或いは両方により除去する。
最後に、上記方法で撚セットされた糸の撚りを逆方法に撚り戻す。即ち、最初にZ撚り(又はS撚り)に撚った糸を、撚りゼロを超えてS撚り(又はZ撚り)の糸にする。糸を撚り戻すのに使用される装置は、糸を撚ることができる装置であれば特に制限されるものではなく、上述したリング精紡機等、撚りの掛かる紡績方法等の装置を用いて行うことができる。
撚り戻すときの条件は、最終的に、逆撚後の撚係数が、2.0〜4.5、特に2.5〜4.0になるようにすることが好ましい。例えば、最初に撚方向Z、撚係数Xで撚った糸であれば、逆方向のS方向に撚係数Xの1.2倍以上で撚り戻すのが好ましく、より好ましくは1.6〜3.6倍程度であるが、最終的に得られるスパン糸の撚係数が上記範囲内となるように調整する。この場合、撚り戻し量が低すぎると、糸としては強力が低くなる場合があり、撚り戻し量が多すぎると、撚りの効果により糸が締まって、嵩高にならない場合がある。なお、逆撚りの撚係数1Xで、撚りが完全に戻り、無撚りの状態となる。
なお、上記工程においては、必要に応じて染色、起毛、柔軟仕上げ加工等を行なうことができる。
本発明においては、上記のようにして、例えば、一度Z撚りに撚られたスパン糸に対し、撚セットした後、最初の撚方向とは逆方向のS撚りに撚り戻すことにより、繊維がZ方向に撚られたことを記憶し、Z方向に戻ろうとすることから、糸の中で膨らもうとして、嵩高性が高められた嵩高スパン糸を得ることができる。
また、本発明の嵩高織編物は、以上のようにして得られる嵩高スパン糸を常法によって織成又は編成することにより得ることができる。
この場合、本発明の効果を発揮する織編物の組織としては、糸どうしの接点が少なく、浮きの大きい組織が嵩高性を発現しやすいという点から好ましい。このような織組織としては、例えば、綾織、サテン織、二重織等が挙げられ、これらの中でも好ましくは綾織、サテン織、二重織である。
また、編組織としては、通常のメリヤス編でも優れた嵩高性を得ることができるが、織組織と同様に浮きの大きな組織が好ましい。このような編組織としては、例えば、平編、ゴム編、パール編等のシングル編、ダブル編等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
ポリエステル短繊維100%、6番単糸(ダルテトロンスパン糸、Z撚り、撚数8.3T/inch、撚係数3.4)を常法により作成し、これを90℃で30分間熱処理して撚セットした。次に、この糸を精紡機により撚数16.6T/inch(撚係数6.8)で逆撚りに撚って、反対撚り(S撚り)の8.3T/inch(撚係数3.4)のスパン糸を得た。
ポリエステル短繊維100%、6番単糸(ダルテトロンスパン糸、Z撚り、撚数8.3T/inch、撚係数3.4)を常法により作成し、これを90℃で30分間熱処理して撚セットした。次に、この糸を精紡機により撚数16.6T/inch(撚係数6.8)で逆撚りに撚って、反対撚り(S撚り)の8.3T/inch(撚係数3.4)のスパン糸を得た。
[実施例2]
実施例1で得られた嵩高スパン糸を用いて丸編地を作成した。得られた編地を10枚重ねたときの厚さを厚み計により測定した。結果を表1に示す。また、この編地を一定温度に設定した熱板の上に載せ、編地の温度上昇の変化を測定して保温性を評価した。結果を表2に示す。
実施例1で得られた嵩高スパン糸を用いて丸編地を作成した。得られた編地を10枚重ねたときの厚さを厚み計により測定した。結果を表1に示す。また、この編地を一定温度に設定した熱板の上に載せ、編地の温度上昇の変化を測定して保温性を評価した。結果を表2に示す。
[比較例1]
撚セット及び撚り戻しを行わない以外は実施例1と同様のポリエステル糸を用い、実施例2と同様に編地を作成した。得られた編地について、実施例2と同様に厚さを測定し、保温性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
撚セット及び撚り戻しを行わない以外は実施例1と同様のポリエステル糸を用い、実施例2と同様に編地を作成した。得られた編地について、実施例2と同様に厚さを測定し、保温性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
また、実施例1で得られたスパン糸の拡大写真を図1に、比較例1の糸の拡大写真を図2に示す。図1の拡大写真から、本発明のスパン糸は繊維間に空間が多く膨らんでいることがわかる。また、同様に図1の拡大写真からは、本発明のスパン糸が、太く、撚りがあまりかかっていないことがわかる。
Claims (6)
- 一定方向に加撚したスパン糸を撚セットした後、該スパン糸の撚方向とは逆方向に逆撚してなることを特徴とする嵩高スパン糸。
- スパン糸が、熱可塑性繊維又はセルロース系繊維の単糸である請求項1記載の嵩高スパン糸。
- 撚セットが、熱セット、シルケット処理又は液体アンモニア処理である請求項1又は2記載の嵩高スパン糸。
- 逆撚前の撚係数が2.0〜8.0で、逆撚後の撚係数が2.0〜4.5である請求項1、2又は3記載の嵩高スパン糸。
- 一定方向に撚りを加えたスパン糸を撚セットし、次いで該スパン糸の撚方向とは逆方向に撚り戻すことを特徴とする嵩高スパン糸の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項記載の嵩高スパン糸を製織編してなる嵩高織編物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005141508A JP2006316387A (ja) | 2005-05-13 | 2005-05-13 | 嵩高スパン糸、該嵩高スパン糸の製造方法、及び嵩高織編物 |
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JP2005141508A JP2006316387A (ja) | 2005-05-13 | 2005-05-13 | 嵩高スパン糸、該嵩高スパン糸の製造方法、及び嵩高織編物 |
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JP2005141508A Pending JP2006316387A (ja) | 2005-05-13 | 2005-05-13 | 嵩高スパン糸、該嵩高スパン糸の製造方法、及び嵩高織編物 |
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JP (1) | JP2006316387A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015049887A1 (ja) * | 2013-10-01 | 2015-04-09 | 内野株式会社 | タオル製品 |
-
2005
- 2005-05-13 JP JP2005141508A patent/JP2006316387A/ja active Pending
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WO2015049887A1 (ja) * | 2013-10-01 | 2015-04-09 | 内野株式会社 | タオル製品 |
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