JP2006308059A - ベルト式無段変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ベルト式無段変速機でフィードフォワード制御を実行する場合に、目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性を向上させる。
【解決手段】 ベルト式無段変速機の変速比を制御するにあたり、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを実行可能なベルト式無段変速機の変速制御装置において、第1の目標入力回転数から仮目標入力回転数を求め、仮目標入力回転数から第2の目標入力回転数を求める入力回転数算出手段(ステップS100,102)と、実変速比に基づいてプーリの可動片の現在位置を求める現在位置算出手段(ステップS103)と、第3の目標入力回転数を実出力回転数で除して目標変速比を求める目標変速比算出手段(ステップS103)と、目標変速比に対応する可動片の目標位置と、可動片の現在位置とに基づいて、フィードフォワード制御における油圧室のオイル量を求めるオイル量算出手段(ステップS105,106)とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 ベルト式無段変速機の変速比を制御するにあたり、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを実行可能なベルト式無段変速機の変速制御装置において、第1の目標入力回転数から仮目標入力回転数を求め、仮目標入力回転数から第2の目標入力回転数を求める入力回転数算出手段(ステップS100,102)と、実変速比に基づいてプーリの可動片の現在位置を求める現在位置算出手段(ステップS103)と、第3の目標入力回転数を実出力回転数で除して目標変速比を求める目標変速比算出手段(ステップS103)と、目標変速比に対応する可動片の目標位置と、可動片の現在位置とに基づいて、フィードフォワード制御における油圧室のオイル量を求めるオイル量算出手段(ステップS105,106)とを備えている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、ベルト式無段変速機の変速比を制御する変速制御装置に関し、特に、その変速制御をフィードバック制御とフィードフォワード制御とによって実行するように構成された変速制御装置に関するものである。
車両用の無段変速機は、変速比を連続的に変化させることができるので、車速やエンジン回転数、アクセルペダルの踏み込み量に代表される駆動要求量などの車両の状態に基づいて目標入力回転数もしくは目標変速比などの目標値を求め、実際の入力回転数あるいは実際の変速比などの実際値がその目標値に一致するように変速比が制御される。このような変速比制御は、目標値と実際値との偏差に基づくフィードバック制御によって通常実行される。フィードバック制御は、偏差に所定のゲインを掛けて制御量を求める制御であるから、偏差が生じることによって実行され、偏差の発生を前提とするので、不可避的な制御の遅れがある。これを是正するためにゲインを大きくすると、ハンチングが生じたり、あるいは収束性が悪くなるなどの不都合が生じる。そこで、従来では、フィードフォワード制御を併用することがおこなわれている。フィードフォワード制御は、目標値に基づいて制御量を算出する制御であるから、偏差の検出を待つことなく制御を実行でき、応答性の点ではフィードバック制御よりも優れている。そのために特許文献1に記載された発明は、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを選択的に切り替えて変速制御を行うように構成されている。
この特許文献1においては、実プライマリ回転数と定常目標回転数との偏差の絶対値が求められ、その絶対値が所定値以上であるか否かが比較・判定される。そして、その絶対値が所定値未満であると判定された場合は、プライマリ回転数のフィードバック制御がおこなわれる。これに対して、その絶対値が所定値以上であると判定された場合は、基本的にはフィードフォワード制御がおこなわれる。なお、フィードフォワード制御およびフィードバック制御を含むベルト式無段変速機の変速制御装置は、特許文献2にも記載されている。
特開平6−109113号公報
特開2003−343709号公報
ところで、ベルト式無段変速機の変速制御にあたり、フィードバック制御の他に、一方のプーリの溝幅を制御する油圧室へのオイルの流入・流出量と変速比との対応関係に基づいて、油圧室のオイル量を制御するフィードフォワード制御を組み合わせて実行することが考えられる。その場合、目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性をさらに向上させる必要があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて実行する場合に、目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性を向上させることの可能なベルト式無段変速機の変速制御装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源の出力側にベルト式無段変速機が配置されており、このベルト式無段変速機が、環状のベルトが巻き掛けられる入力側プーリおよび出力側プーリと、前記入力側プーリおよび出力側プーリにおける前記ベルトの巻き掛け半径を制御するために、前記入力側プーリおよび出力側プーリに、それぞれ軸線方向に移動可能に設けられた可動片と、各プーリにおける可動片の動作を別々に制御する2つの油圧室とを有しており、いずれか一方のプーリに設けられた可動片を軸線方向に動作させて、各プーリにおける前記ベルトの巻き掛け半径を制御することにより、前記入力側プーリと前記出力側プーリとの変速比を制御することが可能であり、前記一方のプーリに対応する油圧室へのオイルの流入・流出量と変速比との対応関係から、目標変速比に基づいて前記油圧室のオイル量を制御することにより、前記一方のプーリにおける可動片の位置を制御するフィードフォワード制御と、目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づいて前記油圧室のオイル量を制御するフィードバック制御とを実行可能なベルト式無段変速機の変速制御装置を前提とする。
そして、請求項1の発明は、前提とする構成において、車速および加速要求および前記動力源の運転効率に基づいて、第1の目標入力回転数を求めるとともに、この第1の目標入力回転数をなまし処理することにより、前記フィードフォワード制御で用いることを想定した仮目標入力回転数を求め、この仮目標入力回転数に対する実入力回転数の制御の遅れを想定することにより、前記フィードバック制御で用いる第2の目標入力回転数を求める入力回転数算出手段と、前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実変速比に基づいて、前記一方のプーリに設けられた可動片の軸線方向における現在の位置を求める現在位置算出手段と、前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実入力回転数に、前記仮目標入力回転数の変化率を加えて第3の目標入力回転数を求め、その第3の目標入力回転数を、前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実出力回転数で除して目標変速比を求める目標変速比算出手段と、この目標変速比に対応する前記一方のプーリの可動片の軸線方向における目標位置を求める目標位置算出手段と、前記可動片の現在位置と、前記可動片の目標位置との差に基づいて、前記フィードフォワード制御で制御される前記油圧室のオイル量を求めるオイル量算出手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記目標変速比算出手段は、前記第3の目標入力回転数を求める場合に用いる実出力回転数として、実出力回転数に実出力回転数の変化率を加えたものを用いる手段を含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記オイル量算出手段は、目標変速比と可動片の位置との関係を幾何学的に定めたマップに基づいて、前記オイル量を求める手段を含み、前記マップは、前記目標変速比が小さくなることにともない、変速比の変化量に対する可動片の位置の変化量が大きくなる特性を有していることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、入力回転数と出力回転数との間の変速比を制御する場合に、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を実行可能である。具体的には、フィードフォワード制御では、油圧室へのオイルの流入・流出量と変速比との対応関係に基づき、目標変速比に対応させて油圧室のオイル量が制御される。すると、一方のプーリにおける可動片の軸線方向の位置が調整されて、そのプーリにおける溝幅が制御され、各プーリにおけるベルトの巻き掛け半径が制御される。また、フィードバック制御では、目標変速比に対応する目標入力回転数と、実入力回転数との偏差に基づいて、油圧室のオイル量が制御され、実入力回転数が目標入力回転数に近づけられる。
また、車速および加速要求および前記動力源の運転効率に基づいて、第1の目標入力回転数が求められ、この第1の目標入力回転数をなまし処理して、フィードフォワード制御で用いる仮目標入力回転数を求め、この仮目標入力回転数に対する実入力回転数の制御の遅れを想定することにより、フィードバック制御で用いる第2の目標入力回転数が求められる。そして、第2の目標入力回転数に基づいてフィードバック制御を実行した場合におけるベルト式無段変速機の実変速比に基づいて、一方のプーリに設けられた可動片の軸線方向の現在位置が求められる。さらに、ベルト式無段変速機の実入力回転数に第2の目標入力回転数の変化率を加えて第3の目標入力回転数を求め、その第3の目標入力回転数を、ベルト式無段変速機の実出力回転数で除して目標変速比が求められる。そして、この目標変速比に対応する一方のプーリの可動片の軸線方向における目標位置が求められるとともに、可動片の現在位置と、可動片の目標位置とに基づいて、フィードフォワード制御で用いる油圧室へのオイル供給量、または油圧室からのオイル排出量を求めると、油圧室に供給するオイルの流量、または油圧室から排出するオイルの流量を可及的に増加することができる。したがって、第1の目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性を向上することが可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第3の目標入力回転数を求める場合に用いる実出力回転数として、実出力回転数に実出力回転数の変化率を加えたものを用いるため、目標変速比の算出精度が向上する。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、
現在の実変速比<前回のルーチン実行時における目標変速比
の関係にあり、
目標変速比算出手段により求められる目標変速比<現在の目標変速比
の関係にある場合は、
前回のルーチン実行時における目標変速比から、現在の目標変速比に変更する場合に比べて、現在の実変速比から、目標変速比算出手段により求められる目標変速比に変更する場合の方が、マップ上では、より小さな変速比の領域での変速比の変更になる。したがって、現在の実変速比から目標変速比算出手段により求められる目標変速比に変更する場合に対応するオイルの供給・排出量の方が、前回のルーチン実行時における目標変速比から、現在の目標変速比に変更する場合に対応するオイルの供給・排出量よりも多くなる。したがって、第1の目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性が一層向上する。
現在の実変速比<前回のルーチン実行時における目標変速比
の関係にあり、
目標変速比算出手段により求められる目標変速比<現在の目標変速比
の関係にある場合は、
前回のルーチン実行時における目標変速比から、現在の目標変速比に変更する場合に比べて、現在の実変速比から、目標変速比算出手段により求められる目標変速比に変更する場合の方が、マップ上では、より小さな変速比の領域での変速比の変更になる。したがって、現在の実変速比から目標変速比算出手段により求められる目標変速比に変更する場合に対応するオイルの供給・排出量の方が、前回のルーチン実行時における目標変速比から、現在の目標変速比に変更する場合に対応するオイルの供給・排出量よりも多くなる。したがって、第1の目標入力回転数に対する実入力回転数の追従性が一層向上する。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。まず、この発明を適用できる車両の構成例を、図2に基づいて説明する。この図2には、ベルト式無段変速機1を搭載した車両Veのパワートレーンが示されているとともに、車両Veの制御系統が示されている。ベルト式無段変速機1においては、駆動プーリ(プライマリプーリ)2と従動プーリ(セカンダリプーリ)3とが、それぞれの中心軸線を互いに平行にして所定の間隔を空けて配置されている。その駆動プーリ2は、環状(無端状)のベルト4を巻き掛けるいわゆるV溝の幅を変更できるようになっており、駆動プーリ2は、プライマリシャフト30と一体回転し、かつ、軸線方向には固定された固定プーリ片5と、プライマリシャフト30と一体回転し、かつ、軸線方向に動作可能に構成された可動プーリ片6とを有している。その可動プーリ片6の背面側に、可動プーリ片6を軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ7が設けられている。油圧アクチュエータ7は、可動プーリ片6に軸線方向の推力を与える油圧室31を有している。そして、これら固定プーリ片5と可動プーリ片6との対向面が、テーパ角の一定なテーパ面となっていて、これらのテーパ面によって前記V溝が形成されている。
前記従動プーリ3は、セカンダリシャフト32と一体回転し、かつ、軸線方向には固定された固定プーリ片8と、セカンダリシャフト32と一体回転し、かつ、軸線方向に動作可能な可動プーリ片9とを有している。そして、これら固定プーリ片8と可動プーリ片9との対向面が、テーパ角の一定なテーパ面となっていて、これらのテーパ面によってV溝が形成されている。さらに、可動プーリ片9の背面側に、可動プーリ片9を軸線方向に動作させるための油圧アクチュエータ10が設けられている。油圧アクチュエータ10は、可動プーリ片9に軸線方向の推力を与える油圧室33を有している。
このベルト式無段変速機1の駆動プーリ2が、発進クラッチやトルクコンバータなどを介して、動力源11に連結されている。動力源11は駆動輪(車輪)36に伝達するトルクを出力する機能を備えた動力装置であり、動力源11としては、エンジンやモータ・ジェネレータなどを用いることが可能である。さらに、エンジンとしては、内燃機関および外燃機関が挙げられるが、この実施例では、内燃機関、具体的には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが用いられている場合について説明する。以下、動力源11に代えてエンジン11と記す。また、セカンダリシャフト32が、デファレンシャル(図示せず)あるいはプロペラシャフト(図示せず)などを介して駆動輪36に連結されている。
上記のベルト4は、各プーリ2,3のV溝に挟み込まれる形状の多数の金属片を環状に配列し、それらの金属片をフープと称される環状の金属バンドによって結束して構成されている。したがって、ベルト4の全長はフープによって制限されるから、各プーリ2,3によってベルト4を挟み付けると、V溝の傾斜面(テーパ面)によってベルト4を半径方向で外側に押し出す向きの力が作用し、その結果、ベルト4に張力が加えられるとともに、ベルト4と各プーリ2,3との接触圧力が発生し、その接触圧力と摩擦係数とで決まる摩擦力によって、ベルト4と各プーリ2,3との間でトルクが伝達される。このようにベルト4を挟み付ける圧力が挟圧力であって、例えば、従動プーリ3側の油圧アクチュエータ10の油圧室33の油圧に応じて挟圧力が制御される。
これに対していずれか一方のプーリにおいてベルト4を挟み付ける圧力が相対的に増大し、あるいは低下すると、ベルト4の張力に抗してベルト4が当該一方のプーリで半径方向で外側に押し出され、あるいは反対に半径方向で内側に入り込み、同時に他方のプーリではベルト4が半径方向で内側に入り込み、あるいは半径方向で外側に押し出される。このような巻き掛け半径の変更が変速の実行であり、例えば、駆動プーリ2側の油圧アクチュエータ7の油圧室31に供給される圧油の流量を制御することにより、変速比が制御される。ベルト式無段変速機1の変速比は、プライマリシャフト30の回転数をセカンダリシャフト32の回転数で除した値である。
上記のベルト式無段変速機1における変速制御は、駆動プーリ2の溝幅を変化させて、ベルト4の各プーリ2,3に対する巻き掛け半径を変更することにより実行するように構成されている。そのための油圧制御回路34について説明すると、駆動プーリ2側の油圧アクチュエータ7の油圧室31には、油路35を介在させて、アップシフト制御弁12およびダウンシフト制御弁13が並列に接続されている。そのアップシフト制御弁12は、駆動プーリ2側の油圧アクチュエータ7の油圧室31に対する圧油の供給量を制御するバルブであって、ソレノイドバルブ14から出力される信号圧によって動作するように構成されている。具体的に説明すると、アップシフト制御弁12は、装置の全体の元圧であるライン圧PL、もしくは、ライン圧PLの補正圧が供給される入力ポート15と、前記油路35に接続され、かつ、入力ポート15に選択的に連通される出力ポート16と、デューティ比に応じた信号圧がソレノイドバルブ14から加えられることにより、図示しない弁体を動作させる信号圧ポート17とを備えている。
なお、符号18はスプリングであって、信号圧に対抗する方向に弾性力を、弁体に対して付与するように配置されている。したがって、ソレノイドバルブ14におけるデューティ比に応じて、油圧アクチュエータ7の油圧室31に供給される圧油の流量が制御される。また、ダウンシフト制御弁13は、油圧アクチュエータ7の油圧室31から排出される圧油の流量を制御するためのバルブであって、ソレノイドバルブ19から出力される信号圧によって動作するように構成されている。具体的に説明すると、ダウンシフト制御弁13は、油路35に接続された入力ポート20と、その入力ポート20に選択的に連通されるドレインポート21と、デューティ比に応じた信号圧がソレノイドバルブ19から加えられることにより、図示しない弁体を動作させる信号圧ポート22とを備えている。なお、符号23はスプリングであって、信号圧に対抗する方向の弾性力を弁体に対して付与するように配置されている。したがって、ソレノイドバルブ19におけるデューティ比に応じて、油圧アクチュエータ7の油圧室31から排出される圧油の流量が制御される。なお、油圧制御回路34は、油圧室33の油圧を制御する油路(図示せず)およびソレノイドバルブ(図示せず)などを有している。
そして、変速を制御する機能を有する電子制御装置(ECU)24が設けられている。この電子制御装置24は、マイクロコンピュータを主体として構成されたものであって、電子制御装置24には、アクセル開度、車速、ベルト式無段変速機1の入力回転数および出力回転数、エンジン回転数などの信号が入力される。そして、電子制御装置24においては、アクセル開度や車速、エンジン回転数などの入力データと、予め記憶しているデータなどとに基づいて演算を行って変速を判断するとともに、その変速判断に基づいて、ソレノイドバルブ14,19の通電状態を制御するためのデューティ比などを演算し、そのデューティ比に応じた制御信号を出力するように構成されている。また、この電子制御装置24は、油圧室33の油圧を制御するソレノイドバルブなどを制御することにより、前記従動プーリ3がベルト4を挟み付けてベルト式無段変速機1における伝達トルク容量を設定する挟圧力を制御するように構成されている。
したがって、上記のベルト式無段変速機1は、アクセル開度や車速などの車両の走行状態に基づいて目標変速比あるいは目標入力回転数(エンジン11もしくは駆動プーリ2の目標回転数)が設定され、実変速比や実入力回転数がその目標値に一致するように、電子制御装置24が制御信号をいずれかのソレノイドバルブ14,19に出力するように構成されている。そして、いずれかのソレノイドバルブ14,19が、入力されたデューティ比に応じた信号圧を出力することにより、アップシフト制御弁12から駆動プーリ2側の油圧アクチュエータ7に圧油が供給されてアップシフトが実行され、あるいはその油圧アクチュエータ7からダウンシフト制御弁13を介して圧油が排出させられてダウンシフトが実行される。なお、油圧室31に対する圧油の供給および圧油の排出を停止すると、変速比を略一定に制御することが可能である。
上記のベルト式無段変速機1の変速制御では、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を組み合わせて実行可能である。フィードバック制御は、目標入力回転数や目標変速比などの目標値と、実際の入力回転数や変速比などの実際値との偏差を求め、その偏差を小さく(少なく)するように、実際の入力回転数や変速比などの実際値を制御することである。これに対して、フィードフォワード制御は、油圧室31におけるオイルの供給量・排出量と、入力回転数や変速比との対応関係をモデルベースに基づいてデータ化しておき、そのモデルベース化されたオイル量と、変速比もしくは入力回転数との関係に基づいて、実入力回転数や実変速比が、目標入力回転数や目標変速比となるように、油圧室31におけるオイルの供給・排出量を制御することである。このフィードフォワード制御およびフィードバック制御に用いる制御量は、目標とする変速を達成するための制御指令信号であって、具体的には前記いずれかのソレノイドバルブ14,19に出力するデューティ比(%)である。
図1は、その変速制御の基本的な内容を説明するためのフローチャートであって、ステップS100では、基本目標入力回転数NINCおよびフィードフォワード(FF)制御用の目標入力回転数NINTSTAが算出される。まず、基本目標入力回転数NINCは、エンジン11とベルト式無段変速機1とを協調制御する際に、アクセル開度と車速とに基づいて算出される。より具体的には、アクセル開度とその時点の車速とに基づいて要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジン11の要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力するエンジン回転数が、マップを使用して求められる。こうして求められたエンジン回転数に対応するベルト式無段変速機1の入力回転数が、基本目標入力回転数NINCである。また、目標入力回転数NINTSTAは、基本目標入力回転数NINCをなまし処理して算出される。
目標入力回転数NINTSTAは、例えば次式により算出可能である。
NINTSTA(i)=NINTSTA(i−1)+K3×{NINC(i)− NINTSTA(i−1)}+K4 ・・・(1)
この実施例で説明する各式において、「(i)」は、制御ルーチンの実行周期における(i)番目の周期、つまり「今回」を意味し、「(i−1)」は「前回」を意味する。また、式(1)において、「K3」はなまし定数であり、「K4」はフィードバック係数である。なお、エンジン11の負荷は、上記の目標出力とエンジン回転数とに基づいて算出され、その目標出力を達成するようにエンジン11のスロットル開度が制御される。
NINTSTA(i)=NINTSTA(i−1)+K3×{NINC(i)− NINTSTA(i−1)}+K4 ・・・(1)
この実施例で説明する各式において、「(i)」は、制御ルーチンの実行周期における(i)番目の周期、つまり「今回」を意味し、「(i−1)」は「前回」を意味する。また、式(1)において、「K3」はなまし定数であり、「K4」はフィードバック係数である。なお、エンジン11の負荷は、上記の目標出力とエンジン回転数とに基づいて算出され、その目標出力を達成するようにエンジン11のスロットル開度が制御される。
このステップS100についで、フィードバック(FB)制御用の目標入力回転数NINTを算出する(ステップS101)。ここで、目標入力回転数NINTとして、前述の目標入力回転数NINTSTAまたは、目標入力回転数NINTSTAに対する応答遅れを考慮した目標入力回転数NINTNFFのいずれかが選択される。ここで、目標入力回転数NINTNFFは、例えば、次式により算出される。
NINTNFF(i)=NINTNFF(i−1)+{NINTSTA(i−K1)− NINTNFF(i−1)}×K2・・・(2)
NINTNFF(i)=NINTNFF(i−1)+{NINTSTA(i−K1)− NINTNFF(i−1)}×K2・・・(2)
上記の式(2)において、「K1」は、無駄時間に相当する係数もしくは補正値であり、「K2」は、なまし量を決定する時定数もしくは補正値である。さらに、上記の目標入力回転数NINTSTAまたは目標入力回転数NINTNFFのいずれかを選択する場合の判断は、フィードフォワード制御が禁止されているか否かによりおこなわれる。具体的には、フィードフォワード制御が禁止されている場合は、目標入力回転数NINTSTAが選択され、フィードフォワード制御が許可されている場合は、目標入力回転数NINTNFFが選択される。なお、フィードフォワード制御が禁止される条件としては、車両Veが低摩擦係数路を走行して駆動輪36がスリップする場合などが挙げられる。
上記のステップS101についで、実出力回転数NOUTのなまし補正回転数(遅れ補正なまし値)NOUTHOが算出される(ステップS102)。実出力回転数NOUTは、適宜のセンサによって検出されており、これをフィルタ処理することによりなまし補正回転数NOUTHOが求められる。なお、このなまし処理(フィルタ処理)は、検出信号に含まれるノイズ(外乱成分)を除去するための処理であるが、そのノイズの要因や程度は必ずしも一律ではないので、なまし係数(フィルタ処理の係数)はノイズ、あるいは外乱の要因や程度に応じて変更することが好ましい。
ついで、フィードフォワード制御用の目標変速比(γ)RATIOTが算出される(ステップS103)。このステップS103の具体的な処理を、図3のフローチャートに基づいて説明する。まず、従動プーリ3の実回転数、つまり、実出力回転数tNOUTが求められる(ステップS1)。このステップS1では、次式(3)を用いることが可能である。
tNOUT=NOUT(i) ・・・(3)
ここで、「t」は、「今回のルーチンにおける実出力回転数NOUT」以外の出力回転数を用いることが可能であることを意味する。つまり、ステップS1では、上記の式(3)で現在の実出力回転数NOUT(i)を用いることに代えて、所定時間後における実出力回転数を推定し、これを実出力回転数tNOUTとして用いることも可能である。この場合、実出力回転数tNOUTは、次式(4)を用いて算出可能である。
tNOUT=NOUT(i)+{NOUT(i)−NOUT(i−1)} ・・・(4)
式(4)において、
{NOUT(i)−NOUT(i−1)}
は実出力回転数の変化率を意味する。
tNOUT=NOUT(i) ・・・(3)
ここで、「t」は、「今回のルーチンにおける実出力回転数NOUT」以外の出力回転数を用いることが可能であることを意味する。つまり、ステップS1では、上記の式(3)で現在の実出力回転数NOUT(i)を用いることに代えて、所定時間後における実出力回転数を推定し、これを実出力回転数tNOUTとして用いることも可能である。この場合、実出力回転数tNOUTは、次式(4)を用いて算出可能である。
tNOUT=NOUT(i)+{NOUT(i)−NOUT(i−1)} ・・・(4)
式(4)において、
{NOUT(i)−NOUT(i−1)}
は実出力回転数の変化率を意味する。
さらに、実出力回転数tNOUTを求める場合に、実出力回転数の変化率として、なまし処理した値を用いることも可能であり、その一例を次式(5)に示す。
tNOUT=NOUT(i)+{NOUTHO(i)−NOUTHO(i−1)} ・・・(5)
この式(5)で用いる「NOUTHO」は、図3のステップS102で説明した「なまし補正回転数」である。このように、ステップS1では、式(3)ないし式(5)のいずれかを用いて、実出力回転数tNOUTを求めることが可能である。
tNOUT=NOUT(i)+{NOUTHO(i)−NOUTHO(i−1)} ・・・(5)
この式(5)で用いる「NOUTHO」は、図3のステップS102で説明した「なまし補正回転数」である。このように、ステップS1では、式(3)ないし式(5)のいずれかを用いて、実出力回転数tNOUTを求めることが可能である。
上記のステップS1についで、フィードフォワード制御用の目標変速比γ1(i)が求められる(ステップS2)。このステップS2においては、例えば次式を用いることが可能である。
γ1(i)={NIN(i)+DNINTSTA(i)}/tNOUT ・・・(6)
ここで、「NIN」は、駆動プーリ2の実回転数、つまり、実入力回転数であり、「DNINTSTA」は、前述した目標入力回転数NINTSTAの変化率である。言い換えれば、
式(6)の
NIN(i)+DNINTSTA(i)
により目標入力回転数が求められ、その目標入力回転数を実出力回転数tNOUTで除算することにより、目標変速比γ1(i)を求めている。この式(6)で用いるtNOUTとしては、式(3)ないし式(5)のいずれかで算出された値が選択される。
γ1(i)={NIN(i)+DNINTSTA(i)}/tNOUT ・・・(6)
ここで、「NIN」は、駆動プーリ2の実回転数、つまり、実入力回転数であり、「DNINTSTA」は、前述した目標入力回転数NINTSTAの変化率である。言い換えれば、
式(6)の
NIN(i)+DNINTSTA(i)
により目標入力回転数が求められ、その目標入力回転数を実出力回転数tNOUTで除算することにより、目標変速比γ1(i)を求めている。この式(6)で用いるtNOUTとしては、式(3)ないし式(5)のいずれかで算出された値が選択される。
上記のステップS2についで、ベルト式無段変速機1における現在の実変速比γ2(i)が次式(7)により求められ(ステップS3)、図3の制御ルーチンを終了する。
γ2(i)=NIN(i)/NOUT(i) ・・・(7)
また、ステップS3では、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ片6の軸線方向における位置WDXが求められる。すなわち変速比と可動プーリ片6の位置WDXとの関係は、可動プーリ片6の形状、ピストンの受圧面積、可動プーリ片6とプライマリシャフト30との間で生じる摩擦力等の条件に基づいて幾何学的に定まるので、変速比と可動プーリ片6の位置WDXとの関係を予めマップとして用意しておき、そのマップから、実変速比γ2(i)に対応する「可動プーリ片6の位置WDX」が求められる。可動プーリ片の位置を求めるマップについては後述する。
γ2(i)=NIN(i)/NOUT(i) ・・・(7)
また、ステップS3では、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ片6の軸線方向における位置WDXが求められる。すなわち変速比と可動プーリ片6の位置WDXとの関係は、可動プーリ片6の形状、ピストンの受圧面積、可動プーリ片6とプライマリシャフト30との間で生じる摩擦力等の条件に基づいて幾何学的に定まるので、変速比と可動プーリ片6の位置WDXとの関係を予めマップとして用意しておき、そのマップから、実変速比γ2(i)に対応する「可動プーリ片6の位置WDX」が求められる。可動プーリ片の位置を求めるマップについては後述する。
図2に示すベルト式無段変速機1は、各プーリ2,3に対するベルト4の巻き掛け半径に応じて変速比が設定されるから、上記のステップS103についで、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ片6の位置WDXが算出される(ステップS104)。ステップS104では、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ片6の位置WDXを、前述したマップから求める。また、前述した目標入力回転数NINTSTAは、最終的に到達するべき回転数として設定されるのではなく、時々刻々の目標値として設定されるから、その目標入力回転数NINTSTAに基づいて求められる目標変速比γ1(i)も、時々刻々変化する。したがって、可動プーリ片6の位置WDXも、時間毎の位置として求められる。そこで、次のステップS105では、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ片6の位置と、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ片6の位置との偏差に基づいて、可動プーリ片6の移動量、具体的には所定時間内における可動プーリ片6の移動量DXTが算出される。これは、可動プーリ片6の位置WDXの移動平均として求めることができる。
次に、実変速比γ2(i)を目標変速比γ1(i)に近づける制御を実行する場合において、所定時間内における可動プーリ片6の移動量DXTを実現するために必要な圧油の流量値QINが算出される(ステップS106)。具体的には、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ6の位置WDXと、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ6の位置WDXとの差に、油圧室31の油圧で動作するピストン(図示せず)の断面積(受圧面積)を乗算することにより、流量値QINが算出される。言い換えれば、アップシフトを実行する場合は、油圧室31に供給する圧油の流量(増加分の流量)が求められ、ダウンシフトを実行する場合は、油圧室31から排出する圧油の流量(減少分の流量)が求められる。
駆動プーリ2側の油圧アクチュエータ7の油圧室31に対する圧油の給排の制御は、図2に示すソレノイドバルブ14,19をデューティ制御することによって行われるが、そのデューティ比に応じた圧油の流量は、その流入口と流出口との差圧に関係するので、先ず、その差圧(駆動プーリ2におけるオイルの流入出差圧)SAATUが算出される(ステップS107)。これは、所定のモデルに基づく制御で得られたデータを用いればよい。そして、この差圧SAATUと前記流量値QINとの関係を示すマップに基づいて、フィードフォワード制御での制御量(FF制御量)DQSCFFTが算出される(ステップS108)。
なお、軸線方向における駆動プーリ2の目標位置と、実際の位置との偏差を解消するためのフィードバック制御も併せて実行されるので、その偏差とフィードバックゲインとに基づくいわゆるフィードバック制御量(FB制御量)DQSCFBが算出される(ステップS109)。そして、これらの算出された制御量DQSCFFTおよび制御量DQSCFBに基づいて、変速出力制御量(具体的には前記ソレノイドバルブ14,19のデューティ比)が算出される(ステップS110)。
このように、ベルト式無段変速機1では、図1に示すように、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた2自由度の制御を実行可能である。つぎに、図1および図3のフローチャートを実行して、可動プーリ片6の位置および移動量を求める場合に用いるマップの一例を、図4に基づいて説明する。この図4のマップが、図3のステップS3および図1のステップS104で用いられる。図4のマップには、変速比と、軸線方向における可動プーリ片との位置関係が示されている。縦軸に可動プーリ片の位置が示され、横軸には変速比が示されている。可動プーリ片が図4で上側に変位すると溝幅が拡大される。これに対して、可動プーリ片が図4で下側に変位すると溝幅が狭められる。横軸には、便宜上設定された基準位置である線分B1が示されており、線分B1上に変速比が示されている。そして、図4で右側に進むことにともない変速比が大きくなり、図4で左側に進むことにともない変速比が小さくなることを意味する。
そして、可動プーリ片の位置と変速比との関係を決定した特性線A1が示されている。この特性線A1は、変速比が大きくなることにともない、基準位置を示す線分B1に対する勾配が緩やかになる特性、つまり、変速比の変化量Δγに対する可動片の位置の変化量が大きくなる特性を有している。このため、変速比の変化量(変化率)Δγが同一である場合を想定すると、変速比の変化量に対応する可動プーリ片の位置の変化量は、大変速比側よりも小変速比側の方が大きくなる特性を有している。なお、この図4のマップはダウンシフト時およびアップシフト時の両方で用いられる。
まず、図4のマップに基づいて、ベルト式無段変速機1でダウンシフト制御を実行する場合を例として説明する。このダウンシフトの場合は、
実変速比γ2(i)<目標変速比γ1(i)
の関係にあり、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ片6の現在位置WDX2(i)と、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ片6の目標位置WDX1(i)との偏差に応じて、可動プーリ片6が移動される。つまり、現在位置WDX2(i)と目標位置WDX1(i)との偏差が、移動量DXT1に相当する。これに対して、比較例の制御に対応する可動プーリ片の移動量を説明する。比較例とは、目標入力回転数NINTSTAを用いてフィードフォワード制御を実行する場合に、1ルーチン前の目標変速比γ(i−1)に対応する可動プーリ片の位置WDX(i−1)と、現在の目標変速比速比γ(i)に対応する可動プーリ片の位置WDX(i)との偏差に基づいて、可動プーリ片の移動量を決定する制御である。比較例の制御でダウンシフトを実行する場合、
目標変速比γ(i−1)<目標変速比γ(i)
の関係にある。この比較例においては、位置WDX(i−1)と、位置WDX(i)との偏差が、移動量DXT2に相当する。
実変速比γ2(i)<目標変速比γ1(i)
の関係にあり、実変速比γ2(i)に対応する可動プーリ片6の現在位置WDX2(i)と、目標変速比γ1(i)に対応する可動プーリ片6の目標位置WDX1(i)との偏差に応じて、可動プーリ片6が移動される。つまり、現在位置WDX2(i)と目標位置WDX1(i)との偏差が、移動量DXT1に相当する。これに対して、比較例の制御に対応する可動プーリ片の移動量を説明する。比較例とは、目標入力回転数NINTSTAを用いてフィードフォワード制御を実行する場合に、1ルーチン前の目標変速比γ(i−1)に対応する可動プーリ片の位置WDX(i−1)と、現在の目標変速比速比γ(i)に対応する可動プーリ片の位置WDX(i)との偏差に基づいて、可動プーリ片の移動量を決定する制御である。比較例の制御でダウンシフトを実行する場合、
目標変速比γ(i−1)<目標変速比γ(i)
の関係にある。この比較例においては、位置WDX(i−1)と、位置WDX(i)との偏差が、移動量DXT2に相当する。
ここで、実施例における変速比の変化率Δγと、比較例における変速比の変化率Δγは同一であるが、
実変速比γ2(i)<目標変速比γ(i−1)
の関係にあり、
かつ、
目標変速比γ1(i)<目標変速比γ(i)
の関係にあれば、
特性線A1が前述した特性を有しているため、実施例の移動量DXT1は、比較例の移動量DXT2以上になることが分かる。言い換えれば、ダウンシフトを実行する場合に、実施例における圧油の流量QINは、比較例における圧油の流量QIN以上であることになる。
実変速比γ2(i)<目標変速比γ(i−1)
の関係にあり、
かつ、
目標変速比γ1(i)<目標変速比γ(i)
の関係にあれば、
特性線A1が前述した特性を有しているため、実施例の移動量DXT1は、比較例の移動量DXT2以上になることが分かる。言い換えれば、ダウンシフトを実行する場合に、実施例における圧油の流量QINは、比較例における圧油の流量QIN以上であることになる。
つぎに、実施例の制御でアップシフトを実行する場合について説明する。この場合、
実変速比γ2(i)>目標変速比γ1(i)
の関係でアップシフトが実行される。これに対して、比較例の制御でアップシフトを実行する場合は、
目標変速比γ(i−1)>目標変速比γ(i)の関係でアップシフトが実行される。このアップシフトを実行する場合も、
実変速比γ2(i)<目標変速比γ(i−1)
の関係にあり、
かつ、
目標変速比γ1(i)<目標変速比γ(i)
の関係にあれば、
特性線A1が前述した特性を有しているため、実施例における変速比の変更は、比較例における変速比の変更よりも、小さい変速比領域でおこなわれることになる。このため、アップシフト実行時に、実施例の移動量DXT1は、比較例の移動量DXT2以上になり、実施例における圧油の流量QINは、比較例における圧油の流量QIN以上になる。
実変速比γ2(i)>目標変速比γ1(i)
の関係でアップシフトが実行される。これに対して、比較例の制御でアップシフトを実行する場合は、
目標変速比γ(i−1)>目標変速比γ(i)の関係でアップシフトが実行される。このアップシフトを実行する場合も、
実変速比γ2(i)<目標変速比γ(i−1)
の関係にあり、
かつ、
目標変速比γ1(i)<目標変速比γ(i)
の関係にあれば、
特性線A1が前述した特性を有しているため、実施例における変速比の変更は、比較例における変速比の変更よりも、小さい変速比領域でおこなわれることになる。このため、アップシフト実行時に、実施例の移動量DXT1は、比較例の移動量DXT2以上になり、実施例における圧油の流量QINは、比較例における圧油の流量QIN以上になる。
つぎに、実施例の制御と比較例の制御との相違を、図5に示す入力回転数および圧油の流量およびフィードフォワード制御の制御量の観点から説明する。図5においては、基本目標入力回転数NINCが実線で示され、目標入力回転数NINTSTAが一点鎖線で示されている。この図5は、時刻t1でダウンシフト要求が生じて各入力回転数が上昇する場合を示している。すなわち、時刻t1以前においては、各入力回転数が略一致し、かつ、略一定となっている。時刻t1でアクセルペダルの踏み込み量が増加して、ダウンシフト要求が生じると、基本目標入力回転数NINCがステップ的に急上昇し、時刻t1以降は基本目標入力回転数NINCが略一定になっている。これに対して、前述した目標入力回転数NINTSTAは、時刻t1から所定の勾配で上昇し、時刻t6以降は、目標入力回転数NINTSTAと基本目標入力回転数NINCとが一致している。そして、時刻t1から時刻t6の間は、目標入力回転数NINTSTAは基本目標入力回転数NINCよりも低回転数となっている。つまり、目標入力回転数NINTSTAの上昇勾配は、基本目標入力回転数NINCの上昇勾配よりも緩やかである。
そして、ダウンシフトを実行する場合、前述したように、フィードフォワード制御用に対応する可動プーリ片の移動量は、実施例の制御の方が、比較例の制御よりも多くなる。つまり、オイル油圧室31から排出される圧油の流量QINは、実線で示す実施例の流量の方が、破線で示す比較例の流量よりも多くなる。まず、実施例について説明すると、時刻t1から時刻t2の間、圧油の排出量は略一定に制御され、時刻t2の後に、圧油の排出量が緩やかな勾配で減少する。ついで、圧油の排出量が時刻t5から急激に減少する。そして、時刻t6で目標入力回転数NINTSTAが基本目標入力回転数NINCと一致すると、時刻t7以降は圧油の排出が停止される。これに対して、比較例について説明すると、時刻t1から圧油の排出量が緩やかな勾配で減少する。ついで、圧油の排出量が時刻t4から急激に減少する。そして、時刻t6で目標入力回転数NINTSTAが基本目標入力回転数NINCと一致し、かつ、圧油の排出が停止される。そして、時刻t1から時刻t6までの間、実施例における圧油の排出量は、比較例における圧油の排出量よりも常時多い。
つぎに、フィードフォワード制御量(FF制御量)について説明する。フィードフォワード制御量とは、ソレノイドバルブ19に出力するデューティ比(%)であり、ここでは、ソレノイドバルブ19がノーマルオープン形式のソレノイドバルブであることを前提としている。つまり、制御量が多いほど、ソレノイドバルブ19から出力される信号圧が高くなり、油圧室31からダウンシフト制御弁13を経由して排出される圧油の流量が増加する。そして、実施例における圧油の排出量の方が、比較例における圧油の排出量よりも多くする必要があるため、ダウンシフト時におけるFF制御量は、実線で示す実施例の方が、破線で示す比較例よりも多くなる。
まず、実施例について説明すると、時刻t1から時刻t2の間、フィードフォワード制御量は略一定に制御され、時刻t2の後に、フィードフォワード制御量が緩やかな勾配で減少する。ついで、フィードフォワード制御量が時刻t5から急激に減少する。そして、時刻t6で目標入力回転数NINTSTAが基本目標入力回転数NINCと一致すると、時刻t7以降はフィードフォワード制御量が零%に制御される。これに対して、比較例について説明すると、時刻t1からフィードフォワード制御量が緩やかな勾配で減少する。ついでフィードフォワード制御量が時刻t4から急激に減少する。そして、時刻t6で目標入力回転数NINTSTAが基本目標入力回転数NINCと一致し、かつ、フィードフォワード制御量が零%になる。そして、時刻t1から時刻t6までの間、実施例におけるフィードフォワード制御量は、比較例におけるフィードフォワード制御量よりも常時多い。
さらに、実入力回転数NINについて説明すると、実施例に対応する実入力回転数NINは二点鎖線で示すように、時刻t1から時刻t2までの間、略一定で推移する。そして、時刻t2以降に緩やかな勾配で実入力回転数NINが上昇し、時刻t7以降は、実入力回転数NINが基本目標入力回転数NINCと一致している。これに対して、比較例における実入力回転数NIN(破線)について説明すると、時刻t1から時刻t3までの間、略一定で推移する。そして、時刻t3以降に緩やかな勾配で実入力回転数NINが上昇し、時刻t7以降も、実入力回転数NINが基本目標入力回転数NINCと一致することなく推移している。ここで、時刻t1から時刻t7まで間、比較例に相当する破線の実入力回転数NINは、実施例に相当する二点鎖線の実入力回転数NINよりも、常時、低回転数である。
上記の説明では、ベルト式無段変速機1でダウンシフトをおこなう場合について説明したが、アップシフトをおこなう場合におけるフィードフォワード制御用の目標変速比を、図3のようにして求め、その目標変速比に基づいて、図1のステップS105で可動プーリ片6の移動量を求め、かつ、ステップS106で油圧室31に供給される圧油の流量を求め、さらには、ステップS108でフィードフォワード制御量を求める制御を実行することも可能である。この場合、アップシフト制御に際して、目標入力回転数NINTSTAに基づいて、油圧室に供給する圧油の流量を求める比較例よりも、実施例のアップシフト制御の方が油圧室に供給される圧油の流量の方が多くなる。このように、実施例の制御を実行することにより、油圧室31に供給される圧油の流量、および油圧室31から排出される圧油の流量を可及的に増加することができ、基本目標入力回転数NINCに対する実入力回転数NINの追従性が向上する。
また、この実施例では、図3のステップS1において、所定時間後における実出力回転数を推定し、その推定された実入力回転数を用いてステップS2で目標変速比を求めることも可能であり、目標変速比の算出精度が向上する。さらに、実出力回転数の変化率をなまし処理した値を用いて、ステップS2で目標変速比を求めることも可能である。この場合は、駆動輪36のスリップによる実出力回転数の急激な変動などのノイズの影響を少なくすることができる。なお、従動プーリ3の油圧室33に供給・排出されるオイル量を制御することにより、ベルト式無段変速機1の変速比を制御することが可能に構成されているとともに、油圧室31の油圧を制御するソレノイドバルブなどを制御することにより、前記駆動プーリ2がベルト4を挟み付けてベルト式無段変速機1における伝達トルク容量を設定する挟圧力を制御するように構成されている車両についても、この実施例を適用可能である。この場合は、従動プーリ3の油圧室33に供給・排出されるオイル量を制御する場合のフィードフォワード制御量を、前述した実施例と同様にして求める。すなわち、図1のステップS103および図3のステップS1ないしステップS3のようにして目標変速比を求め、可動プーリ片9の現在位置および目標位置に基づいて、従動プーリ3の油圧室33に供給・排出されるオイルの流量を求めることが可能である。
この実施例において、動力源としては、エンジンまたはモータ・ジェネレータのいずれを用いてもよい。エンジンは、燃料の燃焼による熱エネルギを運動エネルギに変換する装置であり、モータ・ジェネレータは、電気エネルギを運動エネルギに変換する装置である。すなわち、エンジンとモータ・ジェネレータとでは、動力の発生原理が異なる。動力源としてモータ・ジェネレータを用いる場合、モータ・ジェネレータの運転効率は、モータ・ジェネレータに対する電力の供給状態などにより判断可能である。また、動力源として、エンジンおよびモータ・ジェネレータの両方を有するハイブリッド車においても、この実施例を適用可能である。
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS100およびステップS102が、この発明における入力回転数算出手段に相当し、ステップS104が、この発明における目標位置算出手段に相当し、ステップS103が、この発明における目標変速比算出手段に相当し、ステップS103およびステップS3が、この発明における現在位置算出手段に相当し、ステップS106が、この発明におけるオイル量算出手段に相当する。
また、エンジンおよびモータ・ジェネレータが、この発明における動力源に相当し、駆動プーリ2が、この発明における入力側プーリに相当し、従動プーリ3が、この発明における出力側プーリに相当し、可動プーリ片6,9が、この発明における可動片に相当し、油圧室31,33が、この発明における油圧室に相当し、基本目標入力回転数NINCが、この発明における第1の目標入力回転数に相当し、目標入力回転数NINTSTAが、この発明における仮目標入力回転数に相当し、目標入力回転数NINTNFFが、この発明における第2の目標入力回転数に相当し、実変速比γ2(i)が、この発明における「フィードフォワード制御を実行し、かつ、第2の目標入力回転数に基づいてフィードバック制御を実行した場合における実変速比」に相当し、図3のステップS3で求められる可動プーリ片6,9の位置DXTが、この発明における「現在の位置」に相当し、図3のステップS2で説明した実入力回転数NIN(i)が、この発明における「フィードフォワード制御を実行し、かつ、第2の目標入力回転数に基づいてフィードバック制御を実行した場合における実入力回転数」に相当し、「DNINTSTA(i)」が、この発明における「仮目標入力回転数の変化率」に相当する。
また、ステップS2において、
NIN(i)+DNINTSTA(i)
として求められる目標入力回転数が、この発明における第3の目標入力回転数に相当し、図3のステップS2で求められる目標変速比γ1(i)が、この発明における「第3の目標入力回転数を、第2の目標入力回転数に基づいてフィードバック制御を実行した場合における実出力回転数で除して求めた目標変速比」に相当する。さらに、ステップS104で求められる位置WDXが、この発明における「目標位置」に相当し、ステップS106で求める圧油の流量QINが、この発明における「油圧室のオイル量」に相当する。また、図4に示すマップが、この発明における「変速比と可動片の位置との関係を定めたマップ」に相当する。
NIN(i)+DNINTSTA(i)
として求められる目標入力回転数が、この発明における第3の目標入力回転数に相当し、図3のステップS2で求められる目標変速比γ1(i)が、この発明における「第3の目標入力回転数を、第2の目標入力回転数に基づいてフィードバック制御を実行した場合における実出力回転数で除して求めた目標変速比」に相当する。さらに、ステップS104で求められる位置WDXが、この発明における「目標位置」に相当し、ステップS106で求める圧油の流量QINが、この発明における「油圧室のオイル量」に相当する。また、図4に示すマップが、この発明における「変速比と可動片の位置との関係を定めたマップ」に相当する。
1…ベルト式無段変速機、 2…駆動プーリ、 3…従動プーリ、 4…ベルト、 6,9…可動プーリ片、 11…エンジン(モータ・ジェネレータ)、 31,33…油圧室。
Claims (3)
- 動力源の出力側にベルト式無段変速機が配置されており、このベルト式無段変速機が、環状のベルトが巻き掛けられる入力側プーリおよび出力側プーリと、前記入力側プーリおよび出力側プーリにおける前記ベルトの巻き掛け半径を制御するために、前記入力側プーリおよび出力側プーリに、それぞれ軸線方向に移動可能に設けられた可動片と、各プーリにおける可動片の動作を別々に制御する2つの油圧室とを有しており、いずれか一方のプーリに設けられた可動片を軸線方向に動作させて、各プーリにおける前記ベルトの巻き掛け半径を制御することにより、前記入力側プーリと前記出力側プーリとの変速比を制御することが可能であり、前記一方のプーリに対応する油圧室へのオイルの流入・流出量と変速比との対応関係から、目標変速比に基づいて前記油圧室のオイル量を制御することにより、前記一方のプーリにおける可動片の位置を制御するフィードフォワード制御と、目標入力回転数と実入力回転数との偏差に基づいて前記油圧室のオイル量を制御するフィードバック制御とを実行可能なベルト式無段変速機の変速制御装置において、
車速および加速要求および前記動力源の運転効率に基づいて、第1の目標入力回転数を求めるとともに、この第1の目標入力回転数をなまし処理することにより、前記フィードフォワード制御で用いることを想定した仮目標入力回転数を求め、この仮目標入力回転数に対する実入力回転数の制御の遅れを想定することにより、前記フィードバック制御で用いる第2の目標入力回転数を求める入力回転数算出手段と、
前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実変速比に基づいて、前記一方のプーリに設けられた可動片の軸線方向における現在の位置を求める現在位置算出手段と、
前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実入力回転数に、前記仮目標入力回転数の変化率を加えて第3の目標入力回転数を求め、その第3の目標入力回転数を、前記第2の目標入力回転数に基づいて前記フィードバック制御を実行した場合における実出力回転数で除して目標変速比を求める目標変速比算出手段と、
この目標変速比に対応する前記一方のプーリの可動片の軸線方向における目標位置を求める目標位置算出手段と、
前記可動片の現在位置と、前記可動片の目標位置との差に基づいて、前記フィードフォワード制御で制御される前記油圧室のオイル量を求めるオイル量算出手段と
を備えていることを特徴とするベルト式無段変速機の変速制御装置。 - 前記目標変速比算出手段は、前記第3の目標入力回転数を求める場合に用いる実出力回転数として、実出力回転数に実出力回転数の変化率を加えたものを用いる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の変速制御装置。
- 前記オイル量算出手段は、目標変速比と可動片の位置との関係を幾何学的に定めたマップに基づいて、前記オイル量を求める手段を含み、前記マップは、前記目標変速比が小さくなることにともない、変速比の変化量に対する可動片の位置の変化量が大きくなる特性を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト式無段変速機の変速制御装置。
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