本発明は、タイヤがホイールのリムに嵌合する過程の予測、及び周方向に不均一な領域を有する回転体の解析に関する。
従来タイヤは、試作品を走行試験や耐久試験等に供して得られた結果を基に、さらに改良を加えて試作品を作製するという繰返しによって開発されていた。このような開発手法は、試作と試験との繰返しになるので、開発効率が悪いという問題点があった。この問題点を解決するために、近年では数値解析を用いたコンピュータシミュレーションによって、試作品を製造しなくともタイヤの性能を予測することができる手法が提案され、実用化されている。
タイヤの性能を予測するにあたっては、タイヤをホイールに装着した状態で、タイヤの諸性能を予測するシミュレーションが用いられる。例えば、特許文献1には、タイヤのビード幅を狭めてからタイヤのビード部をホイールのリムに嵌合させるステップを含むシミュレーション方法が開示されている。
ところで、タイヤのリム組み性能等を評価するため、タイヤとホイールとの嵌合過程を評価する必要がある。タイヤとホイールとの嵌合過程を評価するにあたっては、外観を目視する他、X線CT(Computer Tomography)スキャン等によって断層写真を撮影する方法もある。しかし、これらはあくまで観察にとどまるため、ビード部とリムとの接触部における接触圧力の分布等の物理情報や、断面各部における応力やひずみの状態を知ることはできない。
かかる問題点を解決する手法としては、例えば有限要素法等の解析手法を用いたコンピュータシミュレーションにより、ビード部とリムとの嵌合過程を予測し、評価する方法がある。しかし、上記特許文献1に開示されているシミュレーション方法は、タイヤとホイールとを嵌合させたタイヤ/ホイール組立体の性能を予測するためには有効であるが、タイヤのビード部がホイールのリムに嵌合するときの過程を予測するためには不十分である。
また、回転体であるタイヤに発生するフラットスポット等のように、周方向に対して、形状、応力あるいはひずみ等が不均一な領域を有する回転体の応力分布や転動状態を解析したいという要請もある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤのビード部とホイールのリムとの嵌合過程を精度よく予測すること、周方向に不均一な領域を有する回転体の解析を精度よく実行することのうち、少なくとも一つを達成できるタイヤの嵌合過程予測方法、タイヤの嵌合過程予測用コンピュータプログラム、解析モデル、及び回転体の解析方法、並びに回転体の解析用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、ホイールのリムにタイヤのビード部を嵌合させるにあたり、前記タイヤと、前記ホイールが備える前記リムとを複数の微小要素に分割し、かつ前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部と前記リムとの嵌合に関係する解析パラメータを、他の領域における前記解析パラメータと異ならせたタイヤモデルとリムモデルとを作成する手順と、前記リムモデルの幅方向内側へ前記タイヤモデルのビード部を組み込む手順と、前記タイヤモデルのビード部を前記リムモデルへ嵌合させる手順と、を含むことを特徴とする。
このタイヤの嵌合過程予測方法は、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータを、他の領域における解析パラメータと異ならせる。これによって、ビード部をリムに嵌合させる解析を実行する前に、解析に用いる解析モデルに、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域とを予め設ける。このようにして作成した解析モデルを用いて嵌合過程を解析することにより、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記解析パラメータは、前記ビード部と前記リムとの間の摩擦係数であることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記解析パラメータは、前記ビード部のビードコアの弾性率であることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記解析パラメータは、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の弾性率であることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、ホイールのリムにタイヤのビード部を嵌合させるにあたり、前記タイヤと、前記ホイールが備える前記リムとを複数の微小要素に分割し、かつ前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部又は前記リムの少なくとも一方の形状を、他の領域における形状と異ならせたタイヤモデルとリムモデルとを作成する手順と、前記リムモデルの幅方向内側へ前記タイヤモデルのビード部を組み込む手順と、前記タイヤモデルのビード部を前記リムモデルへ嵌合させる手順と、を含むことを特徴とする。
このタイヤの嵌合過程予測方法は、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部又はリムの少なくとも一方の形状を、他の領域における形状と異ならせる。これによって、ビード部をリムに嵌合させる解析を実行する前に、解析に用いる解析モデルに、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域とを予め設ける。このようにして作成した解析モデルを用いて嵌合過程を解析することにより、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の厚さを、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異ならせたことを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部のビードコアの厚さを、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異ならせたことを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記リムの表面であって、前記ビード部と前記リムとが嵌合する面に、前記リムの径方向外側へ突出する突出部を設けたことを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、さらに、前記ビード部のビードコアの弾性率を、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異ならせたことを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、さらに、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の弾性率を、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異ならせたことを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記リムモデルには、嵌合時において前記ビード部が乗り越えるハンプを設けることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部と前記リムとが嵌合するときに、前記タイヤモデルに内圧を負荷することを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、ホイールのリムにタイヤのビード部を嵌合させるにあたり、前記タイヤと、前記ホイールが備える前記リムとを複数の微小要素に分割して、タイヤモデルとリムモデルとを作成する手順と、前記タイヤモデルのビード部を前記リムモデルへ組み込む手順と、前記タイヤモデルのビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧を、前記ビード部の他の領域に負荷する内圧と異ならせて前記ビード部に内圧を負荷することにより、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順と、を含むことを特徴とする。
このタイヤの嵌合過程予測方法は、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧が、他の領域に負荷する内圧とは異なるようにした状態で、前記内圧を増加させながらビード部とリムとを嵌合させる。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、タイヤのビード部とホイールのリムとの嵌合過程を精度よく予測できる。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順においては、前記タイヤモデルの赤道面に対して対向配置される2個のビード部のうち、一方のビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧を、前記一方のビード部の他の領域に負荷する内圧及び他方のビード部に負荷する内圧と異ならせることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順においては、前記ビード部が前記リムモデルに嵌合した後に、前記ビード部全体に対して同一の内圧を負荷することを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、ホイールのリムにタイヤのビード部を嵌合させるにあたり、前記タイヤと、前記ホイールが備える前記リムとを複数の微小要素に分割して、タイヤモデルとリムモデルとを作成する手順と、前記タイヤモデルのビード部を前記リムモデルへ組み込む手順と、前記タイヤモデルのビード部の周方向における少なくとも一部の領域で、前記ビード部が嵌合しようとする動きを妨げながら、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順と、を含むことを特徴とする。
このタイヤの嵌合過程予測方法は、嵌合過程においては、ビード部に負荷する内圧を周方向で一定とするとともに、抵抗力や外力等の力や圧力、あるいは強制変位等をビード部の周方向における少なくとも一部に付与することによって、ビード部の嵌合を妨げるようにする。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、タイヤのビード部とホイールのリムとの嵌合過程を精度よく予測できる。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順においては、前記タイヤモデルのビード部の周方向における少なくとも一部の領域に、前記ビード部が嵌合しようとする動きを妨げる強制変位を与えることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順においては、前記タイヤモデルのビード部の周方向における少なくとも一部の領域に、前記ビード部が嵌合しようとする動きを妨げる力又は圧力若しくは応力を与えることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記ビード部を前記リムモデルに嵌合させる手順においては、前記タイヤモデルの赤道面に対して対向配置される2個のビード部のうち、一方のビード部の周方向における少なくとも一部の領域で、前記ビード部が嵌合しようとする動きを妨げることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記リムモデルには、嵌合時において前記ビード部が乗り越えるハンプを設けることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記タイヤモデルと前記リムモデルとを作成する手順においては、前記タイヤモデルのビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部と前記リムとの嵌合に関係する解析パラメータを、他の領域における前記解析パラメータと異ならせることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、前記タイヤの嵌合過程予測方法において、前記タイヤモデルと前記リムモデルとを作成する手順においては、前記タイヤモデルのビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部又は前記リムの少なくとも一方の形状を、他の領域における形状と異ならせることを特徴とする。
次の本発明に係るタイヤの嵌合過程予測用コンピュータプログラムは、前記タイヤの嵌合過程予測方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。これによって、前記タイヤの嵌合過程予測方法を、コンピュータを用いて実現できる。
次の本発明に係る解析モデルは、タイヤと、ホイールが備えるリムとを複数の微小要素に分割し、かつ前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部と前記リムとの嵌合に関係する解析パラメータが、他の領域における前記解析パラメータと異なることを特徴とする。
この解析モデルは、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータが、他の領域における解析パラメータと異なる。これによって、この解析モデルは、ビード部をリムに嵌合させる解析を実行する前に、解析に用いる解析モデルに、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域とを予め備える。この解析モデルを用いて嵌合過程を解析すると、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記解析パラメータは、前記ビード部と前記リムとの間の摩擦係数であることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記解析パラメータは、前記ビード部のビードコアの弾性率であることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記解析パラメータは、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の弾性率であることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、タイヤと、ホイールが備えるリムとを複数の微小要素に分割し、かつ前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域においては、前記ビード部又は前記リムの少なくとも一方の形状が、他の領域における形状と異なることを特徴とする。
この解析モデルは、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部又はリムの少なくとも一方の形状が、他の領域における形状と異なる。これによって、この解析モデルは、ビード部をリムに嵌合させる解析を実行する前に、解析に用いる解析モデルに、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域とを予め備える。この解析モデルを用いて嵌合過程を解析すると、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の厚さが、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異なることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記ビード部のビードコアの厚さが、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異なることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記リムの表面であって、前記ビード部と前記リムとが嵌合する面に、前記リムの径方向外側へ突出する突出部を有することを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、さらに、前記ビード部のビードコアの弾性率が、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異なることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、さらに、前記ビード部のビードコアよりも前記ビード部の径方向内側に存在するゴム及びゴム引き補強層の弾性率が、前記ビード部又は前記リムの周方向における少なくとも一部の領域と、他の領域とで異なることを特徴とする。
次の本発明に係る解析モデルは、前記解析モデルにおいて、前記リムは、嵌合時に前記ビード部が乗り越えるハンプを備えることを特徴とする。
次の本発明に係る回転体の解析方法は、回転体を複数の微小要素に分割して、回転体モデルを作成する手順と、前記回転体モデルの周方向における少なくとも一部の領域における解析条件を、前記回転体の周方向における他の領域における解析条件と異ならせる手順と、を含むことを特徴とする。
この回転体の解析方法は、回転体モデルの周方向の少なくとも一箇所の解析条件を、他の領域の解析条件とは異ならせる。これによって、周方向に不均一な領域を有する回転体の解析を精度よく実行することができる。
次の本発明に係る回転体の解析用コンピュータプログラムは、回転体を複数の微小要素に分割して、回転体モデルを作成する手順と、前記回転体モデルの周方向における少なくとも一部の領域における解析条件を、前記回転体の周方向における他の領域における解析条件と異ならせる手順と、を含むことを特徴とする。これによって、前記回転体の解析方法を、コンピュータを用いて実現できる。
本発明によれば、タイヤのビード部とホイールのリムとの嵌合過程を精度よく予測すること、周方向に不均一な領域を有する回転体の解析を精度よく実行することのうち、少なくとも一つを達成できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に説明する実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本発明は、タイヤとホイールとの嵌合過程を予測する場合であれば、タイヤの種類は問わず適用できるが、特に空気入りタイヤをホイールに嵌合させる場合の嵌合過程を予測する場合に好適である。
実施例1は、タイヤをホイールのリムに嵌合させるときの過程を予測するにあたり、ビード部等の周方向における少なくとも一部に、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータが他の領域と異なる領域を設ける点に特徴がある。すなわち、ビード部とリムとが嵌合しにくい領域と嵌合しやすい領域とを予め設けた解析モデルを用いて、タイヤをホイールのリムに嵌合させるときの過程を予測するものである。なお、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、コンピュータを用いた数値シミュレーションによって実現できる。
例えば、上記特許文献1等に開示される従来の手法では、タイヤをホイールに装着した状態で、タイヤの諸性能を評価するために用いられる。このため、タイヤとホイールとを嵌合させる過程は特に考慮されておらず、ビード部やリムは、周方向に対して同一の摩擦係数や弾性率等に設定されていた。また、周方向に対しては、ビード部やリムの形状も一定であった。実際のタイヤのビード部は、ゴム引き補強層やビードコア等の重なり部分が存在すること等によって、周方向に対して剛性や形状が異なる部分が存在する。
また、タイヤをホイールに嵌合させる場合、タイヤのビード部に潤滑材を塗布するが、潤滑材の塗布が均一でない場合には、ビード部とリムとの間の摩擦係数が、周方向において異なる場合がある。実際のタイヤとホイールとを嵌合させると、このような不均一な部分が嵌合過程に影響を与えるが、従来技術では、この影響を考慮することができず、実際の嵌合過程を予測することは困難であった。そこで、本発明者はこの点に着目し、次に説明する手順によってタイヤがホイールのリムに嵌合する過程を精度よく予測することとした。まず、タイヤ及びホイールについて簡単に説明する。
図1は、タイヤ及びホイールのリムを、その中心軸を含む子午面で切った断面を示す一部断面図である。まず、タイヤについて説明する。キャップトレッド2は、タイヤ1の路面接地部に配置されており、カーカス6、ベルト5又はブレーカの外側を覆うゴム層である。キャップトレッド2は、路面等からの衝撃や外傷からカーカス6やベルト5を保護するとともに、摩耗寿命を延長する役目を持っている。
アンダトレッド3は、キャップトレッド2とベルト5との間に配置されるゴム層で、発熱性、接着性等を向上させる目的で用いられる。サイドトレッド4は、サイドウォール部の最も外側に配置されて外からの傷がカーカス6に達するのを防止するとともに、ラジアルタイヤの場合には、車軸からの駆動力を路面に伝える補助的役割も担っている。
ベルト5は、キャップトレッド2とカーカス6との間に配置されたゴム引きコード層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト5は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。カーカス6はタイヤ1の骨格をなすゴム引きコード層である。カーカス6は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐える構造を持っている。
ビード部9は、内圧によって発生するカーカス6のコード張力を支えているスチールワイヤの束であるビードコア7を、硬質ゴムで固めたリングである。ビード部9は、タイヤ1をホイールのリムに固定させる役割を果たす他、カーカス6、ベルト5及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。ビードフィラー8は、カーカス6をビードコア7の周囲に巻き込む際に生ずる空間へ充填するゴムである。カーカス6をビードコア7に固定するとともに、その部分の形状を整え、ビード部9全体の剛性を高める。次にホイールについて説明する。
ホイール110は、タイヤ1のビード部9と嵌合するリム111を備える。リム111には、嵌合したタイヤ1のビード部9がリム111から外れないように、ハンプ113が設けられる。ハンプ113は、リム111からホイール110の径方向外側へ突出する突起であり、タイヤ1のビード部9が内側へ移動する動きを抑止する。なお、ビード部9がリム111へ嵌合する際には、ビード部9がハンプ113を乗り越える。次に、タイヤのビード部とホイールのリムとが嵌合する過程を説明する。
図2−1、図2−2は、タイヤのビード部とホイールのリムとが嵌合する過程を示す説明図である。図2−3は、ビード部とリムとの嵌合不良状態を示す説明図である。タイヤのビード部9がホイール110のリム111に嵌合する場合、図2−1に示すように、まずビード部9の一部(図2−1のAで示す部分)がリム111に嵌合する。この部分が最も嵌合しやすい部分である。そして、嵌合した部分から徐々に周囲が嵌合し(図2−1のBで示す部分)、最後に、ビード部9又はリム111の最も嵌合しにくい部分(図2−1、図2−2のCで示す部分)が嵌合する。嵌合不良の例としては、図2−3に示すように、例えば、ビード部9のトゥがリム111のハンプ113に乗り上げたような状態がある。次に、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法を実現する嵌合過程予測装置について説明する。
図3、図4は、実施例1に係る嵌合過程予測装置を示す装置構成図である。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法は、図3に示す嵌合過程予測装置50によって実現できる。図3に示すように、この嵌合過程予測装置50は、処理部52と記憶部54とで構成される。また、この嵌合過程予測装置50には、入出力装置51が接続されており、ここに備えられた入力手段53でタイヤモデルを構成するゴムや繊維材料等の物性値やホイールを構成する材料の物性値、あるいは予測計算における境界条件等を処理部52や記憶部54へ入力する。
ここで、入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。また、図4に示すように、処理部52は、タイヤモデルやリムモデルを作成するモデル作成部52mと、タイヤモデルのビード部をリムモデルへ嵌合させる嵌合部52sと、得られたタイヤ/ホイール組立体モデルを用いてタイヤ等の性能を予測する解析部52pとを有している。
記憶部54には、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52を構成するモデル作成部52m、嵌合部52s及び解析部52pの機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、メモリ及びCPUにより構成されている。タイヤの嵌合過程を予測する際には、設定されたタイヤモデル及び入力データに基づいて、処理部52が前記プログラムを当該処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、適宜記憶部54へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を進める。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアにより、モデル作成部52m、嵌合部52s及び解析部52pの機能を実現するものであってもよい。予測結果は、入出力装置の表示手段55に表示される。
ここで、表示手段55には、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等を使用することができる。また、予測結果は、必要に応じて設けられたプリンタに出力することもできる。また、記憶部54は、処理部52に内蔵されるものであっても、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。このように、上記嵌合過程予測装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。次に、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法について説明する。なお、次の説明においては、適宜図1〜図4を参照されたい。
図5は、実施例1に係るタイヤの嵌合過程予測方法の手順を示すフローチャートである。ここでは、上述した嵌合過程予測装置50を用いて、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法を実現する例を説明する。また、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、タイヤをリムに嵌合させる過程を予測する解析手法として、有限要素法(Finite Element Method:FEM)を使用する。
なお、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、境界要素法(Boundary Element Method:BEM)、有限差分法(Finite Differences Method:FDM)等も使用できる。嵌合過程を予測する対象のタイヤ、ホイール、あるいは境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することができる。解析手法に有限要素法を用いる場合、本発明は陽解法、陰解法問わずに適用できるが、本発明は、特に収束計算を行わない陽解法によって嵌合過程を予測する場合に好適である。なお、この実施例においては、三次元解析を実行することになるので、次に説明する解析モデルも三次元のものを作成する。
図6−1は、タイヤを微小要素に分割して作成したタイヤモデルの一例を示す斜視図である。図6−2は、ホイールを微小要素に分割して作成したホイールモデルの一例を示す斜視図である。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法を実行するにあたっては、まず、有限要素法等の解析手法によって解析できるように、嵌合過程予測装置50が備えるモデル作成部52mが、前記解析手法に適したタイヤの解析モデル(以下タイヤモデル)20及びホイールの解析モデル(以下ホイールモデル)10を作成する(ステップS101)。なお、ホイールモデルは、少なくともリムが解析モデル化されていればよい。すなわち、解析モデル作成手順においては、少なくともリムの解析モデル(以下リムモデル)を作成する。
例えば、解析手法として有限要素法を使用する場合、図6−1に示すように、タイヤを有限個の微小要素、すなわち有限要素法に基づく微小要素201、202・・・20n等に分割する。これによって、タイヤモデル20を作成することができる。同様に、図6−2に示すように、ホイールを有限個の微小要素、すなわち有限要素法に基づく微小要素101、102・・・10n等に分割する。これによって、ホイールモデル10を作成することができる。
図6−3は、リムモデルの一例を示す説明図である。図6−3に示すように、リムを有限個の微小要素、すなわち有限要素法に基づく微小要素10n-1、10n、10n+1・・・等に分割する。これによって作成されたリムモデル11は、図6−3に示すように、第1リム151、第2リム152、ハンプ13及びウェル14が有限個の微小要素に分割され、モデル化される。これにより、リムの有限要素モデル、すなわちリムモデル11を作成することができる。ここで、第1リム152、第2リム152は、ホイールが備える2個のリムを区別するための便宜上の称呼である。以下の説明においては、必要に応じて第1リム152、第2リム152をまとめて、リム15ともいう。
この実施例において、リムモデル11は、変形体としてモデル化されているが、剛体としてモデル化してもよい。また、ホイールのリムを変形体としてモデル化する場合、例えば、リムの変形を考慮する必要のある箇所は変形体としてモデル化し、他の部分は剛体としてモデル化してもよい。解析の目的に応じて適宜好ましいモデルを選択して作成する。
有限要素法に基づく微小要素とは、例えば二次元平面においては、2節点のシェル及び膜、剛体要素や、三角形及び四角形の連続体要素、三次元においては、四面体要素、五面体要素、六面体要素等を含む連続体要素や、三角形、四角形要素等のシェル及び膜要素等を用いることができる。これらの要素は特に限定されるものではなく、一般的な有限要素法に用いられている要素を用いることができる。このようにして分割された微小要素は、解析の過程においては、三次元座標を用いて逐一特定される。
図7、図8は、実施例1に係るタイヤモデルにおける解析パラメータの設定を示す説明図である。図9、図10は、実施例1に係るタイヤモデルの周方向位置における解析パラメータを示す説明図である。なお、図7の例は、図9の表示に対応し、図8の例は、図10の表示に対応する。
この実施例においては、周方向における少なくとも一部に、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータが他の領域とは異なる領域を設定し、タイヤモデル20やリムモデル11を作成する。ここで、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータ(以下嵌合解析パラメータという)とは、ビード部とリムとの嵌合特性に影響を与えるパラメータのうち、ビード部やリムの形状を規定するパラメータを除いたものをいう。嵌合解析パラメータには、例えば、ビード部とリムとの間の摩擦係数といった物理量や、ビードコアの弾性率といった材料の物性値が該当する。解析パラメータとして用いる摩擦係数は、通常静止摩擦係数を用いるが、その他滑り速度依存性を持った摩擦係数や、接触圧依存性を持った摩擦係数等を用いてもよい。
次の説明では、嵌合解析パラメータとして、ビード部とリムとの間の静止摩擦係数μを用いる。この実施例においては、図7に示すように、中心角βの範囲(図7のBHで示す領域)におけるタイヤモデル20のビード部21とリムモデル11との間の静止摩擦係数μ2を、中心角(2π−β)の範囲(図7のBLで示す領域)における静止摩擦係数μ1よりも高くしている。なお、図7、図8に示すリムモデル11、11aは、リムの最も直径の大きい部分の輪郭を示している。
すなわち、このタイヤモデル20及びリムモデル11では、嵌合解析パラメータである静止摩擦係数を、ビード部等の周方向における少なくとも一部において、他の領域と異なるように設定する。図7に示す例では、ビード部等の周方向における一箇所(図7のBHで示す領域)で、他の領域と静止摩擦係数を異ならせている。このように、周方向の一箇所で、嵌合解析パラメータ(静止摩擦係数)を異ならせると、解析モデルを簡略化でき、計算速度も向上する。ここで、中心角は、タイヤモデル20あるいはリムモデル11の回転軸Yを中心とした場合の中心角である。
このようにすれば、ビード部21等の周方向において、前記静止摩擦係数が他よりも高い高摩擦係数領域BHは嵌合しにくくなる。その結果、前記静止摩擦係数が低い低摩擦係数領域BLから順に嵌合し、高摩擦係数領域BHが最後に嵌合する。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。
高摩擦係数領域BHと低摩擦係数領域BLとのビード部等の周方向における割合は、低摩擦係数領域BLの割合の方を大きくすることが好ましい。例えば、図8、図10に示すタイヤモデル20a、リムモデル11aでは、周方向の2箇所に高摩擦係数領域(BH1、BH2)を設けている。この場合、高摩擦係数領域(BH1、BH2)は、中心角で(β1+β2)となり、低摩擦係数領域(BL1、BL2)は、中心角で(2π−(β1+β2))となる。この場合、(β1+β2)≠(2π−(β1+β2))となるようにする。すなわち、図10に示すように、ビード部等の周方向に、高摩擦係数領域BH1、BH2が出現する間隔は、Δθ1、Δθ2となる(Δθ1≠Δθ2)。このようにすれば、実際の嵌合過程を再現できるようになる。
ここで、周方向において、嵌合解析パラメータが他の領域と異なる領域を複数設ける場合、嵌合解析パラメータが異なる領域は、周方向に不等間隔で現れるようにすることが好ましい。すなわち、ビード部又はリムの周方向における嵌合解析パラメータの分布に偏りを持たせることが好ましい。例えば、図8、図10に示す例では、高摩擦係数領域BH1と高摩擦係数領域BH2とが、回転軸Yの周りを反時計回りに中心角α1の間隔で、また時計回りにα2の間隔で設けられている。ここで、α2>α1なので、高摩擦係数領域BH1と高摩擦係数領域BH2とは、周方向に不等間隔で現れることになる。
実際のタイヤとリムとの嵌合においては、嵌合しにくい領域が局所的(例えば一箇所)に現れることが一般的である。しかし、嵌合解析パラメータが異なる領域、例えば、高摩擦係数領域が周方向に等間隔で現れると、ビード部及びリムの周方向に、嵌合しにくい領域が等間隔で現れることになる。その結果、全体として嵌合しにくくなるのみで、実際の嵌合過程を正確に再現できなくなる。嵌合解析パラメータが異なる領域を周方向に不等間隔で現れるようにすれば、かかる問題を解決して、嵌合過程を精度よく再現できる。
嵌合解析パラメータに前記静止摩擦係数μを用いる場合、低摩擦係数領域BLから高摩擦係数領域BHまでは、静止摩擦係数μを徐々に変化させることが好ましい。このようにすると、解析時間を短縮することができる。また、ビード部等の周方向において、高摩擦係数領域BHにおける静止摩擦係数μ2と低摩擦係数領域BLにおける静止摩擦係数μ1との差は、0.001以上1.0以下の範囲とすること好ましく、より好ましい範囲は、0.1以上0.5以下である。これによって、実際の嵌合状態をより正確に再現できる。
嵌合解析パラメータには、ビード部とリムとの間の静止摩擦係数の他、ビードコアの弾性率や、ビードコアよりもタイヤの径方向内側のゴム及びゴム引き補強層の弾性率を用いることもできる。すなわち、ビード部等の周方向において、少なくとも一部の領域におけるビードコアや前記ゴム等の弾性率は、他の領域の弾性率と異なるように設定してもよい。かかる場合、局所的に、少なくとも一箇所の前記弾性率を他の領域よりも大きくすることが好ましい。このようにすれば、前記弾性率の高い領域が嵌合しにくくなるので、前記弾性率の低い領域から徐々に嵌合することになり、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。なお、前記弾性率を他の領域よりも大きくする領域の割合や、出現間隔は、上記静止摩擦係数の場合と同様である。また、周方向における少なくとも一部の領域における静止摩擦係数を他の領域における静止摩擦係数よりも高くする手法と、周方向における少なくとも一部の領域におけるビードコア等の弾性率が、他の領域におけるビードコア等の弾性率よりも高くする手法とを組み合わせてもよい。
図11は、リムモデルにタイヤモデルのビード部を組み入れた状態を示す説明図である。なお、図11に示すリムモデル11は、図6−3に示すリムモデル11と同じ物であるが、図11においては簡略化して表している。リムモデル11、タイヤモデル20を作成したら(ステップS101)、嵌合過程予測装置50の嵌合部52sは、モデル作成部52mが作成したタイヤモデル20のビード部21を、リムモデル11の幅方向内側に組み入れる(ステップS102)。ここで、幅方向とは、リム(リムモデル)の中心軸(回転軸)と平行な方向をいう。このリムモデル11は、ハンプ13を備えるので、ビード部21は、ハンプ13に対してリムモデル11の幅方向内側まで組み入れることになる。なお、このリムモデル11にように、ハンプ13もモデル化することにより、より実際のタイヤ及びホイールに近い状態で嵌合過程を予測できる。特に、タイヤのビード部がハンプを乗り越えられないような嵌合不良を予測するような場合に好ましい。なお、リムモデル11には、ハンプ13を設けなくてもよい。この場合は、嵌合不良状態を予測するような場合に好適である。
ビード部21をリムモデル11内に組み入れるにあたっては、例えば、次のような方法を用いることができる。まず、リム15の中心軸YWとビード部21の中心軸YTとを一致させるとともに、予めリム半径rRを正規のビード半径rBよりも小さく、かつビード幅Wをリム幅Jよりも予め小さく設定して、リム15とビード部21とを対向配置する。次に、リム半径rRを正規の大きさとすることにより、ビード部21をリムモデル11内に組み入れる。なお、規定のリム半径は、規定のビード半径よりも大きい。また、第1リム151と第2リム152とを分割するとともに、リム幅を正規のビード幅Wよりも大きく設定する。そして、ビード部21の外側に第1リム151と第2リム152とを配置して、嵌合時には、リム幅を正規のリム幅Jに変更してもよい。このようにすれば、リムモデル11内にビード部21を組み入れる際の計算の収束性を向上させて、計算時間を短縮できるので好ましい。
タイヤモデル20のビード部21を、リムモデル11内に組み入れたら(ステップS102)、嵌合部52sは、タイヤモデル20のビード部21を、リムモデル11の第1及び第2リム151、152へ嵌合させる(ステップS103)。ビード部21を、第1及び第2リム151、152へ嵌合させるときに、タイヤモデル20の嵌合部52sにおいては、内圧Piを負荷してもよい。これにより、実際の嵌合過程をより正確に予測できる。また、内圧Piは、徐々に増加させることが好ましい。これによって、ビード部21と第1及び第2リム151、152との嵌合圧力を予測し、評価することができるので、好ましい。ここで、嵌合圧力とは、ビード部がリムに完全に嵌合したときの内圧をいう。
また、嵌合の途中で、嵌合解析パラメータの大きさを変更してもよい。例えば、嵌合解析パラメータに、ビード部とリムとの間の静止摩擦係数を用いる場合、嵌合初期においては、ビード部等の周方向で均一とし、その後、周方向の少なくとも一部の静止摩擦係数を変更する。例えば、周方向の少なくとも一部の静止摩擦係数を、他の領域の静止摩擦係数よりも大きく設定する。このようにすれば、嵌合の初期における計算時間を短くできるので、全体として計算時間を短縮できる。また、嵌合初期においては、その嵌合初期経過後に対して、静止摩擦係数の大きさも小さくしてもよい。このようにすれば、さらに計算時間を短縮できる。さらに、嵌合終盤においては、嵌合終盤に至るまでよりも静止摩擦係数を大きく、かつ周方向に対して均一に設定してもよい。これによって、嵌合不良状態を保持することができる。なお、このときの静止摩擦係数は、嵌合不良状態を保持できる程度まで大きくする。
リムモデル11の第1及び第2リム151、152へ嵌合させたら(ステップS103)、その結果を嵌合過程予測装置50の表示手段55に表示させたり、印刷手段によりその結果を出力したりして、嵌合状態を評価する(ステップS104)。例えば、X線CTスキャン等の実験では得られなかった、嵌合過程におけるビード部−リム間における接触圧力分布のような物理情報や、タイヤの回転軸を含む子午断面内における応力やひずみの状態等を得ることができる。これによって、嵌合圧力を評価したり、不均一、不完全な嵌合状態を再現したりすることができる。
(変形例)
上記実施例1は、ビード部等の周方向における少なくとも一部の領域は、嵌合解析パラメータが他の領域の嵌合解析パラメータとは異なるようにするが、この変形例においては、ビード部等の周方向における一部の領域は、ビード部又はリムの少なくとも一方の形状が、他の領域とは異なるようにする点が異なる。他の構成は上記実施例と同様である。以下の説明では、適宜図1〜図11を参照されたい。
この変形例では、ビード部又はリムの少なくとも一方は、ビード部とリムとが接触する領域において、周方向における少なくとも一部の形状が、他の領域の形状とは異なるように設定して、タイヤモデルやリムモデルを作成する。すなわち、ビード部又はリムの少なくとも一方は、周方向の少なくとも一部に形状が不均一である領域を備える。このようにすることで、ビード部とリムとが嵌合しやすい領域から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を再現できる。なお、この変形例においては、ビード部とリムとの静止摩擦係数は、周方向で一定とする。
図12、図13は、ビード部の断面図である。ビード部又はリムの少なくとも一方の形状に、周方向における不均一性を与えるために、例えば、タイヤモデル20のビード部21におけるビードコア22よりもビード部21の径方向内側、すなわちリム側のゴム及びゴム引き補強層の厚さtを、ビード部等の周方向において不均一とする。これは、ビードコア22よりもビード部21の径方向内側におけるゴム及びゴム引き補強層の厚さtが他の領域よりも大きい領域を、少なくとも周方向の一部に設けることで実現できる。
図14は、実施例1の変形例に係るタイヤモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。例えば、図14に示すタイヤモデル20cでは、中心角βの範囲(図14のBHで示す領域)におけるタイヤモデル20cのビード部21cは、ビードコア22よりもビード部21cの径方向内側におけるゴム及びゴム引き補強層の厚さtが、周方向における他の領域よりも大きく設定されている。
図12に示すように、ゴム及びゴム引き補強層の厚さtは、ビードコア22の幅(すなわち、タイヤの回転軸Yと平行な方向における大きさ)WBの中間部における、ビードコア22とビードベース22Bとの距離である(図12参照)。図13に示すように、ビードコア22が六角形である場合には、タイヤの回転軸Yと平行な方向において、ビードコア22の最も寸法が大きい部分の距離をビードコア22の幅WBとする。そして、ビードコア22の幅WBの中間部における、ビードコア22とビードベース22Bとの距離が、ゴム及びゴム引き補強層の厚さtとなる。
すなわち、このタイヤモデル20cでは、ビード部21cの形状を、ビード部等の周方向における少なくとも一部において、周方向における他の領域と異なるように設定する。このようにすれば、ビード部21c等の周方向において、前記ゴム及びゴム引き補強層の厚さtが他の領域よりも大きい領域BHは嵌合しにくくなる。その結果、前記ゴム層及びゴム引き補強層の厚さtが領域BHよりも小さく、かつ前記ゴム層等の厚さが一定の領域BLから順に嵌合する。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。なお、ビード部21cに、周方向において、他の領域と形状が異なる領域を複数設ける場合には、上記実施例で説明したように、形状が異なる領域は不等間隔で現れるようにする(以下同様)。
ビードコア22よりもビード部21の径方向内側におけるゴム及びゴム引き補強層の厚さtを変更するにあたっては、少なくとも一部のゴム引き補強層の枚数を変更してもよい。また、ゴム及びゴム引き補強層の最も厚い部分の厚さt1と、最も薄い部分の厚さt0との比t1/t0は、1.1以下とすることが好ましい。t1/t0が1.1を超えると、実際の嵌合状態とは異なるものになってしまうからである。
図15は、実施例1の変形例に係るタイヤモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。図15に示すタイヤモデル20dでは、中心角βの範囲におけるタイヤモデル20dのビードコア22(図12等)の厚さを、周方向で不均一にしている。より具体的には、タイヤモデル20dの中心角βの範囲においては、ビードコア22の厚さtB1が、周方向における他の領域におけるビードコア22の厚さtB2よりも大きく設定されている。これにより、タイヤモデル20dの中心角βの範囲におけるビードコアの剛性が、その他の範囲よりも大きくなる。
これによって、ビード部21の形状に、周方向において不均一性を与えることができる。その結果、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所(ビードコア半径が周方向における他の領域よりも大きい領域)から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。
ここで、ビードコア22の厚さとは、図12に示すような長方形のビードコアである場合、ビード部21の径方向(Z方向)における寸法がビードコア22の厚さtBとなる。また、図13に示すように、ビードコア22が六角形である場合には、ビード部21の径方向(Z方向)において、ビードコア22の最も寸法が大きい部分の距離がビードコア22の厚さtBとなる。
図16は、実施例1の変形例に係るホイールモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。図16に示すホイールモデル10は、リムモデル11の形状に、周方向での不均一性を付与したものである。図16に示すリムモデル11は、リムの表面であって、ビード部と前記リムとが嵌合する面の少なくとも一部に、リムモデル11の径方向外側に突出する突出部11tを備える。この突出部11tが設けられる領域は嵌合しにくくなる。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所(突出部11tがない領域)から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。
突出部11tは、図16に示すリムモデル11のように、径方向外側へ突出する突起物を設けてもよいし、リムを部分的に径方向外側へ膨出させてもよい。このようにすることにより、意図的に嵌合不良状態を作り出すことができる。また、突出部11tを、解析の過程で取り除いてもよい。
さらに、ビード部等の周方向における少なくとも一部の領域は、ビードコアの弾性率や、ビードコアよりもタイヤの径方向内側のゴム及びゴム引き補強層の弾性率が、他の領域と異ならせてもよい。かかる場合、局所的に少なくとも一箇所の前記弾性率を他の領域よりも大きくすることが好ましい。このようにすれば、さらに実際に近い嵌合過程を再現できる。
以上、この実施例及びその変形例では、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部とリムとの嵌合に関係する解析パラメータを、他の領域における解析パラメータと異ならせる。あるいは、ビード部又はリムの周方向における少なくとも一部の領域においては、ビード部又はリムの少なくとも一方の形状を、他の領域における形状と異ならせる。これによって、ビード部をリムに嵌合させる解析を実行する前に、解析に用いる解析モデルに、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域とを予め設ける。このようにして作成した解析モデルを用いて嵌合過程を解析することにより、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。なお、この実施例及び変形例と同様の構成を備えるものは、この実施例及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。また、この実施例及び変形例で開示した構成は、以下の実施例においても適用することができる。
実施例2は、実施例1とほぼ同様の構成であるが、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に、タイヤの内部から負荷する圧力(内圧)が、他の領域で負荷する内圧とは異なるようにして、ビード部に負荷する内圧を周方向に不均一とした状態で、前記内圧を増加させながらビード部とリムとを嵌合させる点が異なる。他の構成は実施例1と同様である。
図17−1、図17−2、図17−3は、実施例2に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。図18−1、図18−2は、実施例2に係るタイヤモデルにおける内圧の設定手法を示す説明図である。図19は、内圧の負荷方法を示す説明図である。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、まずタイヤモデル20やリムモデル11を作成する(図5のステップS101)。
ここで作成するタイヤモデル20やリムモデル11は、タイヤやリムを微小要素に分割して作成したものであり、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向においては、嵌合解析パラメータは一定としてある。なお、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向における少なくとも一部の領域で、嵌合解析パラメータを他の領域と異ならせてもよい。タイヤモデル20やリムモデル11を作成したら(ステップS101)、タイヤモデル20のビード部21を、リムモデル11内に組み入れる(図5のステップS102)。
タイヤモデル20のビード部21をリムモデル11に嵌合させるにあたっては、少なくともビード部21にタイヤモデル20の内部INから内圧を負荷して嵌合させる(図5のステップS103)。ここで、内圧とは、タイヤの内部から負荷する圧力をいう。ビード部21に内圧を負荷するにあたっては、ビード部21の周方向における少なくとも一部の領域に、他とは内圧が異なる領域を設定する。
図17−1に示すように、ビード部21のCで示す領域に負荷する内圧をP2とし、ビード部21のAで示す領域に負荷する内圧をP1とする。ビード部21に負荷する内圧が高い領域の方が、相対的に内圧が低い領域よりもリムモデル11に嵌合しやすくなる。この実施例では、P1>P2として、ビード部21のCで示す領域が、ビード部21のAで示す領域よりもリムモデル11に嵌合しにくくしてある。
図17−1に示す例では、ビード部21のAで示す領域が最も嵌合しやすくなるので、まずビード部21のAで示す領域からリムモデル11に嵌合し始める。そして、嵌合した領域から徐々にビード部21のBで示す領域がリムモデル11に嵌合し、最後に、ビード部21のCで示す領域がリムモデル11に嵌合する。この例では、ビード部21のCで示す領域が最も嵌合しにくくなる。
このように、タイヤモデル20のビード部21に負荷する内圧をビード部21の周方向で異ならせ、不均一とすることで、ビード部21にリムモデル11と嵌合しやすい領域及び嵌合しにくい領域を作り出すことができる。その結果、タイヤモデル20のビード部21とリムモデル11とを嵌合させる際には、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。ここで、ハンプ13は、リムモデル11の左右のリムのうち、いずれか一方に設けるようにしてもよい(以下の実施例でも同様)。
この実施例では、中心角βの領域(図18−1のCLで示す領域)におけるタイヤモデル20のビード部21に負荷する内圧P2を、中心角(2π−β)の範囲(図18−1のCHで示す領域)におけるタイヤモデル20のビード部21に負荷する内圧P1よりも低くしている。このように、ビード部21の周方向の一箇所に内圧の異なる領域を設けることにより、解析モデルを変更することなしに嵌合過程を容易に再現することが可能となり、解析に要する時間を短縮することができる。
これによって、ビード部21の周方向において、ビード部21に負荷される内圧が他よりも低い低内圧領域CLは嵌合しにくくなる。その結果、ビード部21に負荷される内圧が高い高内圧領域CHから順に嵌合し、低内圧領域CLが最後に嵌合する。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。
また、図18−2に示すように、ビード部21の周方向における複数箇所(図18−2の例では2箇所)に低内圧領域(CL1、CL2)を設けてもよい。この場合、低内圧領域(CL1、CL2)は、中心角で(β1+β2)となり、高内圧領域(CH1、CH2)は、中心角で(2π−(β1+β2))となる。
ビード部21の周方向において、内圧が他とは異なる領域を複数設ける場合、内圧が異なる領域は、ビード部21の周方向に不等間隔で現れるようにすることが好ましい。すなわち、ビード部21の周方向における内圧の分布に偏りを持たせることが好ましい。例えば、図18−2に示す例では、低内圧領域CL1とCL2とが、回転軸Yの周りを反時計回りに中心角α1の間隔で、また時計回りにα2の間隔で設けられている。ここで、α2>α1なので、低内圧領域CL1とCL2とは、ビード部21の周方向に不等間隔で現れることになる。
実際のタイヤとリムとの嵌合においては、嵌合しにくい領域が局所的(例えば一箇所)に現れることが一般的である。しかし、ビード部21に負荷する内圧が他よりも低い領域がビード部21の周方向に等間隔で現れると、ビード部21及びリムモデル11の周方向に、嵌合しにくい領域が等間隔で現れることになる。その結果、全体として嵌合しにくくなるのみで、実際の嵌合過程を正確に再現できなくなる。ビード部21に負荷する内圧が異なる(低い)領域を周方向に不等間隔で現れるようにすれば、かかる問題を解決して、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、内圧の高い領域から内圧の低い領域へ、ビード部21に負荷する内圧を徐々に変化させてもよい。このようにすれば、ビード部21に負荷される内圧がビード部21の周方向に対して連続的に変化するので、内圧の変化が不連続であることに起因する嵌合の再現精度の低下を抑制することができる。
また、最大の内圧Pmaxと最小の内圧Pminとの比Pmax/Pminは、1.2以上とすることが好ましい。これは、Pmax/Pminをある程度の大きさとしておかないと、嵌合しやすい領域と嵌合しにくい領域との差が十分に生じない結果、実際の嵌合過程を再現できないおそれがあるからである。また、Pmax/Pminが大きすぎる場合も、内圧が大きい領域の影響が大きすぎて実際の嵌合過程を再現できないおそれがある。したがって、Pmax/Pminは5.0以下とすることが好ましい。なお、この実施例において、タイヤモデル20のビード部21に負荷する内圧P1、P2は、変化率ΔP1、ΔP2を時間tの経過によらず一定として、0から直線的に増加させる(図19参照)。ただし、Pmax/Pminが1.2以上5.0以下の範囲を維持していれば、変化率ΔP1、ΔP2を時間tの経過とともに変化させてもよい。
また、実際の嵌合状態をより精度よく再現するという観点からは、ビード部21に負荷する内圧を高くする領域は、ビード部21に負荷する内圧を低くする領域よりも多くすることが好ましい。この場合、ビード部21に負荷する内圧を高くする領域は、ビード部21の周方向において半分以上(中心角でπ以上)とすることが好ましい。なお、図18−2に示すように、ビード部21の周方向に低内圧領域を複数箇所設ける場合には、(β1+β2)<(2π−(β1+β2))かつ(2π−(β1+β2))≧πとなるようにする。
図17−2は、ビード部21がリムモデル11に嵌合した状態を示している。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、ビード部21の嵌合シミュレーションが終了した後に、すべてのビード部21に負荷する内圧を同じ大きさとして完全に嵌合させている。すなわち、P1=P2=Pc(一定値)としている。これによって、ビード部21がリムモデル11に完全に嵌合したタイヤ/ホイール組立体モデルが得られるので、引き続いて転動シミュレーション等を実行する場合には好ましい。
図17−3は、ビード部21に対する内圧を所定の値まで上昇させた後、上昇させた値で負荷を停止することによって、嵌合不良が発生した状態を保持する例を示している。図19に示す時刻t=tsで、図17−3のAで示す領域は、ビード21がリムモデル11に嵌合しているが、図17−3のCで示す領域には嵌合不良が発生して、ビード21がリムモデル11に嵌合していない。このとき、Aで示す領域におけるビード部21に負荷されている内圧P1はPaであり、また、Bで示す領域におけるビード部21に負荷されている内圧P2はPbである(P1>P2)。この状態で、すなわちP1=Pa、P2=Pbの状態で内圧P1、P2の負荷を停止すると、嵌合不良の状態を保持することができる。これによって、嵌合不良が発生した状態を容易に再現することができる。
図20、図21は、タイヤの赤道面に対して対向するタイヤのビード間において、ビード部に負荷する内圧を異ならせる手法を示す説明図である。タイヤモデル20の赤道面HPに対しては、第1ビード部21Sと第2ビード部21Rとが対向して配置される。ここで、便宜上、第1ビード部21Sは、タイヤを車両に取り付けた状態において、車両外側Sに配置されるビード部であり、第2ビード部21Rは、タイヤを車両に取り付けた状態において、車両内側Rに配置されるビード部であるものとする。また、赤道面HPとは、タイヤの回転軸(Y軸)に対して直交し、かつタイヤの幅方向(前記Y軸と平行な方向)における中央部にある面をいう(図1参照)。
この実施形態に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、第1ビード部21S又は第2ビード部21Rのうちいずれか一方のビード部の少なくとも一部の領域に負荷する内圧は、他の領域と異ならせる(この実施例では低くする)。一般に用いられるタイヤとリムでは、赤道面HPに対して一方のビード部(例えば第2ビード部21R)が先に嵌合し、その後前記ビード部とは異なるビード部(例えば第1ビード部21S)が嵌合しやすい領域から嵌合し始め、最後に最も嵌合しにくい領域が嵌合する。この手法によれば、実際のタイヤにおける嵌合状態と極めて近い状態を再現できる。ここで、リムモデル11のハンプ13は、車両外側S又は車両内側Rのどちらか一方に設けてもよいが、先に嵌合させる側のリムについて、どちらか一方のハンプ13を他方のハンプ13よりも小さくしたり、どちらか一方のハンプ13そのものを無くしてもよい。
図20に示す例では、第1ビード部21SのCで示す領域に負荷する内圧P2_Sを、第2ビード部21Rに負荷する内圧P1_R、P2_R、及び第1ビード部21SのAで示す領域に負荷する内圧P1_Sよりも低くする。ここで、P1_R=P2_R=P1_Sとしてある。これによって、第1ビード部21SのCで示す領域は、他の領域と比較してリムモデル11と嵌合しにくくなるため、この領域が最後に嵌合する。これによって、実際のタイヤとリムとが嵌合する過程を精度よく再現することができる。
この実施形態に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、第2ビード部21Rに負荷する内圧P1_R、P2_Rと、第1ビード部21SのAで示す領域に負荷する内圧P1_Sとを異ならせてもよい。例えば、第2ビード21Rに負荷する内圧の最小値を、第1ビード21Sに負荷する内圧の最大値よりも大きくしてもよい。例えば、P1_R=P2_R>P1_Sとする。一般に用いられるタイヤでは、赤道面HPに対して一方のビード部(例えば第2ビード部21R)が先に嵌合するため、上記のようにビード部に負荷する内圧を設定すれば、この現象をより精度よく再現することができる。
図21に示す例は、ビード部に負荷する内圧を周方向に対して一定とし、かつ赤道面HPに対して対向するビード部間では、ビード部に負荷する内圧を異ならせる。そして、内圧が低い方のビード部では、周方向の少なくとも一部における嵌合解析パラメータ(例えばビード部とリムとの間の摩擦係数、実施例1参照)を、他の領域とは異ならせる。
第1ビード部21Sの周方向に対して一定の大きさの内圧P_Sを負荷し、また、第2ビード部21Rの周方向に対して一定の大きさの内圧P_Rを負荷する。ここで、赤道面HPに対して一方のビード部を他方よりも先に嵌合させるため、この実施例では、内圧P_R>P_Sとしている。これによって、第2ビード部21Rの方が第1ビード部21Sよりも嵌合しやすくしてある。そして、第1ビード部21Sの周方向における少なくとも一部(この例では図21のCで示す領域)における静止摩擦係数μを、他の領域(図21のA、Bで示す領域)よりも大きくしてある。これによって、タイヤモデル20をリムモデル11に嵌合させる際には、第2ビード部21Rから嵌合を開始し、第1ビード部21SのCで示す領域が最後に嵌合するので、実際の嵌合の過程を精度よく再現できる。
以上、この実施例では、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧が、他の領域に負荷する内圧とは異なるようにした状態で、前記内圧を増加させながらビード部とリムとを嵌合させる。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。そして、従来の実験では得られなかった、嵌合過程におけるタイヤ−リム間の接触圧力分布等の物理情報や、タイヤやリムの子午断面各部における応力、ひずみの状態を得ることができる。その結果、嵌合圧力(ビード部がリムに完全に嵌合したときの内圧)の評価や、不均一な嵌合状態を再現することができる。また、解析パラメータや形状を周方向に不均一としたタイヤモデルやリムモデルを作成するには手間を要するが、内圧を部分的に変更することは容易にできるので、解析の手間を軽減することができる。
なお、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向における少なくとも一部で、嵌合解析パラメータを他の領域と異ならせるとともに、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧を他の領域に負荷する内圧とは異ならせて、ビード部とリムとを嵌合させてもよい。例えば、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に負荷する内圧を、他の領域に負荷する内圧よりも低くするとともに、他の領域よりも内圧を低くした領域の静止摩擦係数を他の領域よりも高く設定する。このようにすれば、嵌合しにくい領域と嵌合しやすい領域との差をより顕著にすることができ、シミュレーションの効率を向上させることができる。
実施例3は、実施例2とほぼ同様の構成であるが、嵌合過程においては、ビード部に負荷する内圧を周方向で一定とするとともに、抵抗力や外力等の力や圧力、あるいは強制変位その他をビード部の周方向における少なくとも一部に付与することによって、ビード部の嵌合を妨げる点が異なる。他の構成は、上記実施例2と同様である。
図22−1、図22−2は、実施例3に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。図23−1、図23−2は、この実施例に係るタイヤモデルにおける解析条件の設定手法を示す説明図である。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、まずタイヤモデル20やリムモデル11を作成する(図5のステップS101)。ここで作成するタイヤモデル20やリムモデル11は、タイヤやリムを微小要素に分割して作成したものであり、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向においては、嵌合解析パラメータは一定としてある。なお、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向における少なくとも一部で、嵌合解析パラメータを他の領域と異ならせてもよい。タイヤモデル20やリムモデル11を作成したら(ステップS101)、タイヤモデル20のビード部21を、リムモデル11内に組み入れる(図5のステップS102)。
タイヤモデル20のビード部21をリムモデル11に嵌合させるにあたって、この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、図22−1に示すように、ビード部21の周方向に対して同じ大きさの内圧Pcを負荷する。すなわち、図22−1のA、B、Cで示す領域は、すべて同じ大きさの内圧Pcが負荷される。
一方、ビード部21の周方向における少なくとも一部の領域(図22−1に示すCで示す領域)には、嵌合しようとするビード部21の動きを妨げるために、抵抗力Fが与えられる。なお、ビード部21が嵌合しようとする動きを妨げるためには、前記抵抗力の他、や外力のような力の他、圧力や応力、強制変位を与えてもよい。
前記抵抗力Fは、ビード部21の外側OUTからタイヤモデル20の内部INに向かって与えられる。この実施例に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、ビード部21が嵌合しようとする動きを妨げるように、ビード部21の少なくとも一部に抵抗力Fを与えながら、タイヤモデル20のビード部21をリムモデル11に嵌合させる(図5のステップS103)。
これによって、ビード部21は、抵抗力Fが与えられない領域(図22−1のAで示す領域)から嵌合し始め、図22−1のBで示す領域が次に嵌合し、最後に抵抗力Fが付与されている領域(図22−1のCで示す領域)が嵌合する。その結果、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。なお、嵌合のシミュレーションが終了した後には、抵抗力Fや強制変位を解除してもよい。これによって、ビード部21がリムモデル11に完全に嵌合したタイヤ/ホイール組立体モデルが得られるので、引き続いて転動シミュレーション等を実行する場合には好ましい。
また、抵抗力Fや強制変位を与えたままにしておくことにより、図22−2に示すように、嵌合不良状態を再現することもできる。実施例2においても、ビード部に負荷する内圧を、ビード部の周方向に対して不均一とした状態を保持しておくことによって、嵌合不良状態を再現することもできる。実施例2においては、ビード部に負荷する内圧が嵌合不良の状態に影響を与えるおそれがあるが、強制変位によれば内圧の影響を排除することができるので、より実際の嵌合不良に近い状態を再現できる。
このように、実施例3に係るタイヤの嵌合過程予測方法では、従来の実験では得られなかった、嵌合過程におけるタイヤ−リム間の接触圧力分布等の物理情報や、タイヤやリムの子午断面各部における応力、ひずみの状態を得ることができる。その結果、嵌合圧力(ビード部がリムに完全に嵌合したときの内圧)の評価や、不均一な嵌合状態を再現することができる。
この実施例では、中心角βの領域(図23−1のBHで示す領域)におけるタイヤモデル20のビード部21に、抵抗力や強制変位を付与する。そして、中心角(2π−β)の範囲(図23−1のBLで示す領域)におけるタイヤモデル20のビード部21には、抵抗力や強制変位を付与しない。このように、ビード部21の周方向の一箇所に抵抗力や強制変位を付与することにより、解析モデルを変更することなしに嵌合過程を容易に再現することが可能となり、解析に要する時間を短縮することができる。
これによって、ビード部21の周方向において、ビード部21に抵抗力や強制変位が付与される領域BHは嵌合しにくくなる。その結果、ビード部21に抵抗力や強制変位が付与されない領域BLから順に嵌合し、ビード部21に抵抗力や強制変位が付与される領域BHが最後に嵌合する。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現することができる。
また、図23−2に示すように、ビード部21の周方向における複数箇所(図23−2の例では2箇所)に、抵抗力や強制変位を付与する領域(BH1、BH2)を設けてもよい。この場合、抵抗力や強制変位を付与する領域(BH1、BH2)は、中心角で(β1+β2)となり、抵抗力や強制変位を付与しない領域(BL1、BL2)は、中心角で(2π−(β1+β2))となる。
ビード部21の周方向において、抵抗力や強制変位を付与する領域を複数設ける場合、当該領域は、ビード部21の周方向に不等間隔で現れるようにすることが好ましい。すなわち、ビード部21の周方向における抵抗力や強制変位の分布に偏りを持たせることが好ましい。例えば、図23−2に示す例では、抵抗力や強制変位を付与する領域BH1とBH2とが、回転軸Yの周りを反時計回りに中心角α1の間隔で、また時計回りにα2の間隔で設けられている。ここで、α2>α1なので、抵抗力や強制変位を付与する領域BH1とBH2とは、ビード部21の周方向に不等間隔で現れることになる。
実際のタイヤとリムとの嵌合においては、嵌合しにくい領域が局所的(例えば一箇所)に現れることが一般的である。しかし、抵抗力や強制変位を付与する領域が周方向に等間隔で現れると、ビード部21及びリムモデル11の周方向に、嵌合しにくい領域が等間隔で現れることになる。その結果、全体として嵌合しにくくなるのみで、実際の嵌合過程を正確に再現できなくなる。抵抗力や強制変位をビード部21に付与する領域を周方向に不等間隔で現れるようにすれば、かかる問題を解決して、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。
図24は、ビード部の嵌合を妨げる外力を付与する方法を示す概念図である。タイヤモデル20のビード部21に負荷される内圧P(=Pc)は、タイヤモデル20の内部IN側におけるビード部21の表面における節点D1〜D5に負荷される。抵抗力Fは、内圧Pが負荷されている節点D1〜D5に対して、ビード部21が嵌合しようとする動きを妨げるように付与する。例えば、抵抗力Fの分力が、内圧Pの負荷方向とは反対方向の成分を持つように抵抗力Fを付与する。図24に示す例では、内圧Pの負荷方向とは反対方向に抵抗力Fを付与している。強制変位や圧力を付与する場合も、抵抗力Fを付与する場合と同様である。
抵抗力や強制変位は、ビード部21とリムモデル11(図22−1参照)との接触に関わる節点以外の節点に付与することが好ましい。このようにすれば、抵抗力や強制変位を付与することによってビード部21とリムモデル11との接触に関わる節点が受ける影響を最小限に抑えて、ビード部21とリムモデル11との接触状態や嵌合過程を精度よく再現することができる。ビード部21とリムモデル11との接触に関わる節点以外の節点は、例えば、上述したタイヤモデル20の内部IN側におけるビード部21の表面における節点D1〜D5があげられる。また、ビードコア27の節点Dbに抵抗力や強制変位を付与してもよいし、その他の部材の節点に付与してもよい。また、上記実施例2で説明したように、タイヤの赤道面に対して対向する2個のビード部のうちいずれか一方のビード部の、少なくとも一部の領域に抵抗力や強制変位等を付与してもよい。
以上、この実施例では、嵌合過程においては、ビード部に負荷する内圧を周方向で一定とするとともに、抵抗力や外力等の力や圧力、あるいは強制変位等をビード部の周方向における少なくとも一部に付与することによって、ビード部の嵌合を妨げるようにする。これによって、実際のタイヤとホイールとを嵌合させる場合のように、ビード部とリムとの嵌合しやすい箇所から徐々に嵌合するので、実際の嵌合過程を精度よく再現できる。そして、従来の実験では得ることが困難であった、嵌合過程におけるタイヤ−リム間の接触圧力分布等の物理情報や、タイヤやリムの子午断面各部における応力、ひずみの状態を得ることができる。その結果、嵌合圧力(ビード部がリムに完全に嵌合したときの内圧)の評価や、不均一な嵌合状態を再現することができる。また、解析パラメータや形状を周方向に不均一としたタイヤモデルやリムモデルを作成するには手間を要するが、リム部に対して部分的に抵抗力や強制変位等を与えることは容易なので、解析の手間を軽減することができる。
なお、タイヤモデル20やリムモデル11の周方向における少なくとも一部で、嵌合解析パラメータを他の領域と異ならせるとともに、嵌合過程においては、ビード部に負荷する内圧を周方向で一定とするとともに、強制変位等をビード部の周方向における少なくとも一部に付与することによって、ビード部の嵌合を妨げるようにしてもよい。例えば、ビード部の周方向における少なくとも一部の領域に嵌合しようとするビード部の動きを妨げるような強制変位を与えるとともに、強制変位を与えた領域の静止摩擦係数を他の領域よりも高く設定する。このようにすれば、嵌合しにくい領域と嵌合しやすい領域との差をより顕著にすることができ、シミュレーションの効率を向上させることができる。
実施例4に係る回転体の解析方法は、回転体モデルの周方向の少なくとも一箇所に、内圧や抵抗力、物性値その他の解析条件が、他とは異なる領域を設ける点に特徴がある。この実施例では、回転体としてタイヤを用いるとともに、タイヤのフラットスポットに関して前記解析手法を適用した例を説明する。
図25−1、図25−2は、タイヤに発生するフラットスポットの説明図である。図26−1、図26−2は、実施例4に係るタイヤの解析方法及びタイヤモデルを示す説明図である。フラットスポットは、例えば長期間にわたって停車している場合のように、タイヤ1の特定の領域が路面Lに所定の期間接しているような場合に発生する。タイヤ1が路面Lに接地する領域(接地面)は、垂直荷重Wの影響によって変形し、路面Lにあわせて平らな形状となる。この形状が走行開始後も元に戻らないと、フラットスポットFSとなる(図25−1、図25−2)。タイヤ1にフラットスポットFSが発生すると、タイヤ1の周方向に対して形状の不均一が生ずることになるので、タイヤ1の転動時にはフラットスポットFSが振動等の原因となる。
この実施例では、フラットスポットFSが発生したタイヤに対して、フラットスポットFSが発生している領域における応力やひずみの状態や転動シミュレーション等を実行する際に、タイヤモデル20の周方向の少なくとも一箇所に、内圧や抵抗力等が他とは異なる領域を設ける。図26−1に示す例では、タイヤモデル20の周方向において、フラットスポットFSが発生している領域に負荷する内圧P2を、他の領域(すなわち、フラットスポットFSが発生していない領域)に負荷する内圧P1よりも小さくする。これによって、タイヤモデル20の表面に、擬似的にフラットスポットFSを作ることができる。
また、図26−2に示す例では、タイヤモデル20の周方向において、タイヤモデル20に負荷する内圧Pcを一定とするとともに、フラットスポットFSが発生している領域の節点Dfには、強制変位Qを付与する。この場合、外力や圧力を付与してもよい。図26−2に示す例では、強制変位Qを付与する領域はタイヤモデル20の表面に存在する節点であるが、タイヤモデル20の表面における応力やひずみの状態を評価する場合には、強制変位Q等の影響を低減するため、タイヤモデル20の内部における節点に強制変位Q等を付与してもよい。
この実施例では、上記手法によりフラットスポットFSが発生している領域に残留する変形や内力を再現できるので、実際にフラットスポットFSが発生したことによる状態を精度よく再現できる。なお、実施例4では、フラットスポットに着目したが、実施例4に係る、タイヤモデルの周方向の少なくとも一箇所に、内圧や抵抗力等が他とは異なる領域を設ける手法の適用対象はこれに限られるものではない。
以上、この実施例では、回転体モデルの周方向の少なくとも一つの領域における解析条件を、他の領域における解析条件とは異ならせる。これによって、例えばフラットスポットが発生したタイヤのように、周方向に対して、形状、応力、ひずみ、材料物性その他に関して何らかの不均一な領域を有する回転体の解析を精度よく実行することができる。
以上のように、本発明に係るタイヤの嵌合過程予測方法、タイヤの嵌合過程予測用コンピュータプログラム、解析モデル、及び回転体の解析方法、並びに回転体の解析用コンピュータプログラムは、シミュレーションに有用であり、特に、タイヤとホイールとの嵌合過程を予測することに適している。
タイヤ及びホイールのリムを、その中心軸を含む子午面で切った断面を示す一部断面図である。
タイヤのビード部とホイールのリムとが嵌合する過程を示す説明図である。
タイヤのビード部とホイールのリムとが嵌合する過程を示す説明図である。
ビード部とリムとの嵌合不良状態を示す説明図である。
実施例1に係る嵌合過程予測装置を示す装置構成図である。
実施例1に係る嵌合過程予測装置を示す装置構成図である。
実施例1に係るタイヤの嵌合過程予測方法の手順を示すフローチャートである。
タイヤを微小要素に分割して作成したタイヤモデルの一例を示す斜視図である。
ホイールを微小要素に分割して作成したホイールモデルの一例を示す斜視図である。
リムモデルの一例を示す説明図である。
実施例1に係るタイヤモデルにおける解析パラメータの設定を示す説明図である。
実施例1に係るタイヤモデルにおける解析パラメータの設定を示す説明図である。
実施例1に係るタイヤモデルの周方向位置における解析パラメータを示す説明図である。
実施例1に係るタイヤモデルの周方向位置における解析パラメータを示す説明図である。
リムモデルにタイヤモデルのビード部を組み入れた状態を示す説明図である。
ビード部の断面図である。
ビード部の断面図である。
実施例1の変形例に係るタイヤモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。
実施例1の変形例に係るタイヤモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。
実施例1の変形例に係るホイールモデルにおける形状の設定例を示す説明図である。
実施例2に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。
実施例2に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。
実施例2に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。
実施例2に係るタイヤモデルにおける内圧の設定手法を示す説明図である。
実施例2に係るタイヤモデルにおける内圧の設定手法を示す説明図である。
内圧の負荷方法を示す説明図である。
タイヤの赤道面に対して対向するタイヤのビード間において、ビード部に負荷する内圧を異ならせる手法を示す説明図である。
タイヤの赤道面に対して対向するタイヤのビード間において、ビード部に負荷する内圧を異ならせる手法を示す説明図である。
実施例3に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。
実施例3に係るタイヤの嵌合過程予測方法を説明する概念図である。
この実施例に係るタイヤモデルにおける解析条件の設定手法を示す説明図である。
この実施例に係るタイヤモデルにおける解析条件の設定手法を示す説明図である。
ビード部の嵌合を妨げる外力を付与する方法を示す概念図である。
タイヤに発生するフラットスポットの説明図である。
タイヤに発生するフラットスポットの説明図である。
実施例4に係るタイヤの解析方法及びタイヤモデルを示す説明図である。
実施例4に係るタイヤの解析方法及びタイヤモデルを示す説明図である。
符号の説明
1 タイヤ
2 キャップトレッド
3 アンダトレッド
4 サイドトレッド
5 ベルト
6 カーカス
7 ビードワイヤ
8 ビードフィラー
9 ビード部
10 ホイールモデル
11、11a、11b リムモデル
11t 突出部
15 リム
20、20a、20b、20c、20d タイヤモデル
21、21c ビード部
22 ビードコア
22B ビードベース
50 嵌合過程予測装置