JP2009280002A - タイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラム - Google Patents

タイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能になるタイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】タイヤモデルの作成処理は、タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割(ステップ112)し、複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割し(ステップ114)、ベルトの構成部材であるコードの配列方向とタイヤの周方向とが成す角度が、少なくともタイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義する(ステップ118)処理を含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、タイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラムに係り、より詳しくは、有限要素法によりタイヤの性能を解析するためタイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラムに関する。
従来、タイヤの諸性能を有限要素法等の数値解析により予測することによって試作コストを削減したり深い物理的理解を得る試みがなされており、計算時間を短縮でき且つ精度良くタイヤ性能を数値解析するためのタイヤモデルの作成方法に関して様々な技術が提案されている(例えば特許文献1等参照)。
しかしながら、依然として正確に予測することが困難なタイヤの性能は数多く存在し、その一つにタイヤ転動中の力やモーメント挙動が挙げられる。特に、タイヤのスリップアングル(SA)が小さい領域の予測は、プライステアと呼ばれるタイヤを構成するベルトの構造に起因する力と、SAに対する力の立ち上がりの両方に精度が要求されるため、正確な予測が難しい。
特開2002−82998号公報
従来のタイヤのモデル化においては、SA0度における横方向力とモーメント、SAに対する横方向力やモーメントの感度を両方精度よく予測できるモデル化が困難であり、その原因は明確に判っていなかった。また、絶対値レベルでの解析精度を確保することはさらに困難であった。
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能なタイヤモデル作成方法、タイヤモデル作成装置、及びタイヤモデル作成プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のタイヤモデル作成方法は、タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割するステップと、前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割するステップと、前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義するステップと、を含む。
この発明によれば、タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割し、この複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割する。また、ベルトの構成部材であるコードの配列方向とタイヤの周方向とが成す角度が、少なくともタイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、複数のベルトの膜要素に対して角度を各々定義する。
これにより、従来のようにベルトを1枚のベルトにまとめてモデル化し、また、従来のようにコードの配列方向とタイヤの周方向とが成す角度をタイヤの幅方向に一様として定義してモデル化する場合と比較して、特に微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能になる。
なお、請求項2に記載したように、前記タイヤの構成部材であるカーカスを要素分割するステップと、圧縮時の剛性が引っ張り時の剛性よりも小さくなるような剛性特性を少なくとも前記カーカスの要素に定義するステップと、をさらに含むようにしてもよい。
また、請求項3に記載したように、前記タイヤの構成部材であるトレッドを要素分割するステップと、走行速度に応じて変化する剛性特性を前記トレッドの要素に定義するステップと、を含むようにしてもよい。
請求項4記載の発明のタイヤモデル作成装置は、タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割する第1の要素分割手段と、前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割する第2の要素分割手段と、前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義する定義手段と、を含む。
この発明によれば、特に微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能になる。
請求項5記載の発明のタイヤモデル作成プログラムは、タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割するステップと、前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割するステップと、前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させる。
この発明によれば、特に微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能になる。
本発明によれば、微小なSA下におけるタイヤの挙動を精度良くシミュレーションすることが可能になる、という効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、タイヤの挙動解析のための解析モデルの作成に本発明を適用したものである。
図1にはタイヤコードの解析モデルを作成すると共に作成した解析モデルを用いてタイヤの挙動シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤの性能を予測するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフレキシブルディスク(FD)が挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフレキシブルディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述するプログラムや処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。
また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらに、対応する装置を用いればよい。
また、パーソナルコンピュータの他に、ワークステーションやスーパーコンピュータをタイヤ解析に用いてもよいことは勿論である。
次に、本実施の形態の作用として、コンピュータ本体12で実行されるタイヤ性能解析プログラムの処理ルーチンについて図2に示すフローチャートを参照して説明する。
図2は、タイヤの挙動解析プログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、挙動解析の対象となるタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。例えば、コンピュータ本体12のハードディスクに、予め複数種類のタイヤのCADデータ(タイヤ形状、構造、材料等の設計データ)等の設計データを記憶しておき、挙動解析の対象となるタイヤの設計データを選択して読み込むことにより、挙動解析の対象となるタイヤを設定することができる。
なお、ステップ100における設定はタイヤ設計案に限定されるものではなく、現存するタイヤを解析する場合を含む。すなわち、現存するタイヤそのものを対象のモデルとして設定してもよい。
次のステップ102では、タイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤのタイヤモデルを作成する。このタイヤモデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとする。
従って、上記ステップ102で作成するタイヤモデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤ、及び路面(後述)等の対象物を小さな幾つかの(有限の)小部分、すなわち要素に分割することをいう。この要素ごとに計算を行い全ての要素について計算した後、全部の要素を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。
上記ステップ102のタイヤモデルの作成では、図3に示すタイヤモデル作成ルーチンが実行される。
図4には、一例として乗用車用タイヤのタイヤ断面の一例を示した。タイヤ20は、タイヤの骨格となるカーカス22を有している。このカーカス22は、ビード26により折り返されている。このカーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24に延長上にはビードゴム36が配置している。
また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置しており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置し、カーカス22のタイヤの軸方向外側にはサイドゴム34が配置している。なお、ベルト30は、本実施形態では2枚のベルト30A、30Bから構成されている。
このようなタイヤの性能解析をするためのタイヤモデルを作成するために、まずステップ112では、ベルト30A、30Bを図5(A)の破線で示す膜要素40A、40Bで要素分割する。ここで、膜要素とは、面方向にのみ力が作用する要素である。また、膜要素は、例えば三角形や四辺形等で定義することができる。
ステップ114では、ベルト30A、30Bの層間を図5(A)に示すようにソリッド要素42で要素分割する。ここで、ソリッド要素とは、厚みを有する立体で定義された要素であり、四面体や五面体、六面体等で定義することができる。
ステップ116では、その他の部分、例えばカーカス22やトレッドゴム32等を要素分割する。例えば、カーカス22を膜要素で定義し、カーカス22とベルト30Bとの間をソリッド要素で定義するようにしてもよい。また、トレッドゴム32はソリッド要素で要素分割する。
このように、本実施形態では、補強材である2枚のベルト30A、30Bの層間をソリッド要素で要素分割している。
通常のタイヤは、補強材として複数のベルトを備えた構成とされているが、従来タイヤをモデル化する際には、図5(B)に示すように、2枚のベルトを重ねて一つのベルトとみなし、一つの膜要素40で簡略化して定義してモデル化するのが通常であった。このため、要素数を削減することができるので解析の計算時間を短縮することはできるものの、高精度に解析するのが困難であった。
また、ベルトは複数本のスチールコード(以下、単にコードという)の表面をゴムで覆ってシート状としたものであり、図6(A)に示すように、上層のベルト30Aを構成するコードの配列方向44Aと下層のベルト30Bのコードの配列方向44Bとが異なるように配置するのが通常である。このため、同図(B)に示すように、ベルト30Aとベルト30Bとを重ねた場合、各ベルトの配列方向44A、44Bによって菱形形状が形成される。
そして、例えば図7(A)に示すベルト30が同図(B)に示す矢印A方向及びB方向に引っ張られた場合、ベルト30に対して矢印C1〜C4で示されるような方向に力が生じ、カップリング変形と呼ばれるねじれ変形が生じる。
本実施形態では、2枚のベルト30A、30Bを膜要素で定義すると共に、ベルトの層間をソリッド要素でモデル化しており、ベルト30A、30Bの配列方向に対しても定義してモデル化するため(詳細は後述)、微小なSAの領域、例えばSA0度の場合における上記のようなねじれ変形に対しても精度良くシミュレーションで再現することができる。
ステップ118では、ステップ112で要素分割したベルト30A、30Bの膜要素に対して、角度分布を定義する。ベルト30の剛性分布や異方性は、タイヤの周方向を0度とした場合におけるタイヤの周方向とコードの配列方向とが成す角度により定められる。図6(A)等では、タイヤ周方向とコードの配列方向とが成す角度が一定の場合について示しており、従来のベルトのモデル化では、図8の一点鎖線50で示すように、タイヤ幅方向におけるタイヤのセンター側からベルト端までの各位置の前記角度は一定であるものとしてモデル化するのが通常であった。
しかしながら、実際には、図8の実線52で示すように、タイヤの幅方向に沿ってセンター側からベルト端に向かうに従って、前記角度は大きくなるのが通常である。これは、タイヤの製法や加硫時のゴム流れ等に起因していると考えられる。
そこで、本実施形態では、図8の点線54で示すように、タイヤの幅方向に沿ってセンター側からベルト端に向かうに従って階段状(図8の例では4段)に変化する角度分布をベルト30A、30Bの膜要素に定義する。これにより、ベルトの剛性分布や異方性を精度良く再現されタイヤの解析精度を向上させることができる。
なお、図8の実線52のようにタイヤのセンター側からベルト端にかけて滑らかになるように角度分布をベルト30A、30Bの膜要素に定義することが好ましいが、本実施形態のように、タイヤの幅方向における複数の所定位置で角度が階段状に変化する角度分布をベルト30A、30Bの膜要素に定義するだけでも、タイヤの解析精度を向上させることができる。
ステップ120では、ボディプライとしてのカーカス22を要素分割した要素に非線形の剛性特性を定義する。図9(A)に示すように、ベルト30A、30Bを構成する各コードの配列方向44A、44Bによって形成される菱形形状(図中点線で示す)は、ベルト30A、30Bに加わる内圧や変形によって同図(B)に示すように、パンタグラフ状に変化する。同図(B)では、ベルト30A、30Bを構成する各コードの配列方向44A、44Bによって形成される実線で示す菱形形状60が図中矢印A方向(タイヤの周方向)に伸びると共に図中矢印B方向に縮むことにより点線で示す菱形形状60に変形する場合を示している。
このように、ベルト30A、30Bがタイヤ周方向に伸びるためには、ベルト30A、30Bがタイヤ幅方向に縮む必要がある。これは、ベルト30の下方に位置する、通常有機繊維で構成されるカーカス22にタイヤ幅方向に圧縮の力が加わることを意味する。また、特に有機繊維は引っ張り時と圧縮時とで剛性が異なる。従って、ベルト30A,30Bの変形を精度良く再現するためには、引っ張り時と圧縮時とで異なる剛性、すなわち非線形の剛性特性を少なくともカーカス22の要素に与える必要がある。なお、ベルト30A、30Bの要素に対してもカーカス22と同様に非線形の剛性特性を与えることがより好ましい。
このため、本実施形態では、例えば図10(A)の実線で示すような、引っ張り時と圧縮時とで歪み−応力特性が異なる非線形の剛性特性をカーカス22の要素に定義する。従来では、同図(A)の破線で示すように、線形の剛性特性をカーカスの要素に定義していたが、本実施形態のように非線形の剛性特性をカーカス22の要素に定義することにより、カーカス22やベルト30の変形を精度良く再現することができ、タイヤ性能の解析の精度を向上させることができる。
また、図10(B)に示すように、カーカス22の要素に定義する剛性特性として、引っ張り時及び圧縮時の剛性特性を曲線ではなく直線で表し且つ引っ張り時の剛性特性が従来と同様の剛性特性を用いてもよい。
ステップ122では、トレッドゴム32を要素分割した要素に動的な剛性特性を定義する。すなわち、走行速度に応じて変化する剛性特性を定義する。これは、ゴムの弾性率はタイヤが静止している状態と、タイヤが回転している状態とで異なり、走行速度によっても異なる、すなわちタイヤに加わる振動周波数によって異なるためである。なお、剛性特性として、例えば弾性率を用いることができるが、これに限られるものではない。
このように、トレッドゴム32の要素に対して動的な剛性特性を定義してモデル化することにより、路面と接触する部分であるトレッドゴム32の変形をより忠実に再現することができる。そして、トレッドゴム32とトレッドゴム32からベルト30を介してつながるカーカス22の剛性を前述のように適切に定義することにより、力とモーメントの両方の解析精度を向上させることができる。
ステップ124では、タイヤ20のその他の部分の剛性特性等を定義して本ルーチンを終了する。
なお、ステップ120、122については、従来と同様の処理としてもよい。すなわち、ステップ120については、カーカスの要素に線形の剛性特性を定義してもよく、ステップ122については、トレッドの要素に静的な剛性特性を定義してもよい。
このようにして、タイヤ20のタイヤモデルが作成される。図11には、作成されたタイヤモデルの一部断面図の一例を、図12には、作成されたタイヤモデルの斜視図の一例を示した。
上記のようにして作成したタイヤ20の有限要素モデル(解析モデル)を含むタイヤモデルを作成した後には、図2のステップ104へ進み、路面の設定すなわち路面モデルの作成と共に路面状態の入力がなされる。このステップ104では、路面をモデル化し、そのモデル化した路面を実際の路面状態に設定するために入力するものである。路面のモデル化は、路面形状を要素分割してモデル化し、路面の摩擦係数μを選択設定することで路面状態を入力する。例えば、路面状態により乾燥(DRY)、濡れ(WET)、氷上、雪上、非舗装等に対応する路面の摩擦係数μが存在するので、摩擦係数μについて適正な値を選択することで、実際の路面状態を再現させることができる。
なお、流体モデルを作成して、路面とタイヤモデルの間に設けても良い。流体モデルは、タイヤの一部(または全部)および接地面、タイヤが移動・変形する領域を含む流体領域を分割し、モデル化するものである。
このようにして、路面状態の入力がなされると、次のステップ106において、境界条件の設定がなされる。この境界条件とは、タイヤモデルに解析上すなわちタイヤの挙動をシミュレートする上で必要なものであり、タイヤモデルに付与する各種条件である。このステップ106の境界条件の設定では、まず、タイヤモデルには内圧を与えて、タイヤモデルに回転変位及び直進変位(変位は力、速度でも良い)の少なくとも一方と、予め定めた負荷荷重と、の少なくとも1つを与える。なお、路面との摩擦を考慮する場合は、回転変位(または力、速度でもよい)もしくは直進変位(または力、速度でもよい)のどちらか一方のみでよい。
次に、ステップ106までに作成されたり設定されたりした数値モデルをもとに、解析としてのタイヤモデルの変形計算を行う。すなわち、上記ステップ106で境界条件の設定が終了すると、ステップ108へ進み、タイヤモデルの変形計算を行う。このステップ108では、タイヤモデルおよび与えた境界条件より、有限要素法に基づいてタイヤモデルの変形計算を行う。この変形計算では、例えば公知の擬似転動解析手法の一例であるABAQUSによるSST解析を用いることにより、定常回転状態について解析することができる。
次のステップ110では、上述の計算結果を出力する。この計算結果とは、タイヤ変形時の物理量を採用する。具体的には、サイドのたわみ量や接地形状、接地圧分布、タイヤ中心に作用する横力、モーメント等である。
なお、計算結果の出力は、タイヤの接地部の形状や接地圧の分布、タイヤ中心に作用する力等の値または分布を可視化することを採用してもよい。これらは計算結果の値や変化量または変化率、力の向き(ベクトル)そして分布から導出することができ、それらをタイヤモデル周辺やパターン周辺と共に線図等で表せば、把握しやすく提示可能な可視化をすることができる。
このように、本実施形態では、2枚のベルト30A、30Bを膜要素で定義すると共に、ベルトの層間をソリッド要素でモデル化しており、ベルト30A、30Bの配列方向とタイヤの周方向とが成す角度に対しても、タイヤの幅方向の複数の位置で角度が異なるように定義してモデル化するため、例えば直進走行している場合でもプライステア等の影響により、微少なSAがついてしまうような場合におけるタイヤ性能の解析を精度良くシミュレーションすることができる。
また、カーカスの要素に非線形の剛性特性を定義し、トレッドの要素に動的な剛性特性を定義してモデル化しているため、より高精度にタイヤ性能の解析を行うことができる。
なお、前述した発明を解決するための課題は乗用車用タイヤにおいて顕著であり、乗用車用タイヤに本発明を適用することが特に有用であることから、本実施形態では乗用車用タイヤに本発明を適用した場合について説明したが、トラック・バス用タイヤ等の他のタイヤに適用可能であることは言うまでもない。
次に、本発明の実施例について説明する。
本発明者は、ラジアルタイヤを用いて以下に示すようなフォース&モーメント試験を行うと共に、シミュレーションを行い。実際のタイヤを用いた試験結果とシミュレーション結果とを比較した。
試験に用いたラジアルタイヤは、サイズが195/65/R15であり、構造は、カーカスプライ1枚、ベルト2枚、ナイロンで構成されタイヤ周方向に亘って設けられた補強層を備えた構造である。なお、ベルトとしては、ベルトの構成部材であるコードの配列方向とタイヤ幅方向とが成す角度が66度となるものを用いて、コードの配列方向が交錯するように2枚のベルトを重ね合わせたものを用いた。
このようなラジアルタイヤを用いたフォース&モーメント試験では、直径3.0mの鉄板表面を持つドラム試験機を用いて力とモーメントを計測した。なお、走行速度は30km/h、タイヤに付加する内圧は210kPaとした。また、ラジアルタイヤを装着するホイールとしては、リム幅がJATMA規定の標準サイズ、ここでは6Jのリム幅のホイールを用いた。
また、計測項目は、(A)SA0度の場合の横力、(B)SA0度の場合のモーメント、(C)SA0度からSA0.5度までの力の増分値、(D)SA0度からSA0.5度までのモーメントの増分値の4項目である。
また、タイヤモデルを作成するための条件1〜4を以下の表1に示すように設定した従来例1、実施例1〜5の各々について上記(A)〜(D)の項目をシミュレーションした。
なお、条件1は、「○」の場合は、2枚のベルトを膜要素で要素分割してモデル化すると共に、ベルト間をソリッド要素で要素分割してモデル化することであり、「×」の場合は、2枚のベルトを1枚のベルトにまとめて膜要素で要素分割してモデル化することである。
また、条件2は、ベルトを要素分割した膜要素に対してコードの配列方向とタイヤの周方向とが成す角度を定義することであり、「一様」の場合は、図8の一点鎖線50のように、タイヤの幅方向に対して角度が同一となるように角度をベルトの膜要素に定義することであり、「二段階」の場合は、タイヤの幅方向に対して角度が二段階に変化するように角度をベルトの膜要素に定義することであり、「四段階」の場合は、図8の点線54のように、タイヤの幅方向に対して角度が四段階に変化するように角度をベルトの膜要素に定義することである。
また、条件3は、カーカスを要素分割した要素に対して、例えば図10(A)、(B)に示すような非線形の剛性特性を定義することである。なお、本実施例では、圧縮時の剛性が引っ張り時の剛性の1/50となるような剛性特性を定義した。
また、条件4は、トレッドを要素分割した要素に対して、走行速度に応じて変化する剛性特性を定義することである。本実施例では、トレッドの要素に与える振動の周波数を50Hzとしたときのゴムの貯蔵弾性率を剛性特性として定義した。
なお、シミュレーションは、公知の擬似転動解析手法の一例であるABAQUSによるSST解析を用いて行った。
以下の表2には、上記表1のように設定した条件の従来例1、実施例1〜5の各々により(A)〜(D)の各項目をシミュレーションした結果と、前述したラジアルタイヤを用いて(A)〜(D)の各項目を実測した時の結果との比較結果を示した。なお、表中の数字は、実測値を100とした指数である。すなわち、100に近いほど精度が高いこととなる。

また、図13には、上記表2の結果を棒グラフで表わした。図13及び上記表2から明らかなように、条件1〜4を全て満たす実施例5が最も実測値に近いことが判った。また、条件1のみを満たす実施例1の場合でも、従来例1と比較して大幅に解析精度が向上しているのが判った。また、条件1を満たすと共に条件2が「二段階」の実施例2の場合でも、条件2を「一様」とした実施例1の場合と比較して解析精度が全体的に向上しているのが判った。
タイヤの性能予測を実施するためのパーソナルコンピュータの概略図である。 タイヤ性能解析プログラムのメインルーチンのフローチャートである。 タイヤモデル作成ルーチンのフローチャートである。 タイヤの一部断面図である。 (A)は本発明に係るタイヤモデルの一部断面図、(B)は従来例に係るタイヤモデルの一部断面図である。 (A)は2枚のベルトの平面図、(B)は2枚のベルトを重ね合わせた状態の平面図である。 (A)は2枚のベルトを重ね合わせた状態の斜視図、(B)は変形したベルトの斜視図である。 ベルトの要素に定義する角度分布を示す線図である。 (A)は2枚のベルトの配列方向を示す図、(B)は2枚のベルトを構成するコードによって形成された菱形形状の変形を示す図である。 (A)、(B)はカーカスの要素に定義する剛性特性の一例を示す図である。 作成されたタイヤモデルの一部断面図である。 作成されたタイヤモデルの斜視図である。 従来例及び実施例の比較結果を示すグラフである。
符号の説明
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
16 マウス

Claims (5)

  1. タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割するステップと、
    前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割するステップと、
    前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義するステップと、
    を含むタイヤモデル作成方法。
  2. 前記タイヤの構成部材であるカーカスを要素分割するステップと、
    圧縮時の剛性が引っ張り時の剛性よりも小さくなるような剛性特性を少なくとも前記カーカスの要素に定義するステップと、
    をさらに含む請求項1記載のタイヤモデル作成方法。
  3. 前記タイヤの構成部材であるトレッドを要素分割するステップと、
    走行速度に応じて変化する剛性特性を前記トレッドの要素に定義するステップと、
    を含む請求項1又は請求項2記載のタイヤモデル作成方法。
  4. タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割する第1の要素分割手段と、
    前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割する第2の要素分割手段と、
    前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義する定義手段と、
    を含むタイヤモデル作成装置。
  5. タイヤの構成部材である複数のベルトを膜要素で要素分割するステップと、
    前記複数のベルトの層間をソリッド要素で要素分割するステップと、
    前記ベルトの構成部材であるコードの配列方向と前記タイヤの周方向とが成す角度が、少なくとも前記タイヤの幅方向の複数の所定位置によって異なるように、前記複数のベルトの膜要素に対して前記角度を各々定義するステップと、
    を含む処理をコンピュータに実行させるタイヤモデル作成プログラム。
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