JP2012045975A - タイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法 - Google Patents

タイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タイヤの解析に用いる複数のタイヤモデルをより簡単、かつ、短時間に作成することができるタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法を提供することを課題とする。
【解決手段】有限個の要素と節点からなり、立体要素で構成される第1タイヤモデルを作成する第1モデル作成ステップと、第1タイヤモデルの立体要素に対応し、かつ、モデル空間において厚みを持たない構造要素で構成された部材モデルを作成する構造要素作成ステップと、第1タイヤモデルの設定された位置に、部材モデルを配置した第2タイヤモデルを作成する第2タイヤモデル作成ステップと、部材モデルの少なくとも厚さを含む設計変数の定義域を定める条件設定ステップと、を有することで、課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法に関する。
コンピュータを用いた解析によってタイヤの様々な性能を評価し、これに基づいてタイヤを設計する手法が提案され、実用化されてきている。例えば、特許文献1には、内部構造を含むタイヤ断面形状を表すタイヤ基本モデルを定めかつ、タイヤ性能評価用物理量を表す目的関数を定めると共に、転がり抵抗を低減させるためのゴム部材及び補強材の物性を決定する設計変数を定めかつ、ゴム部材及び補強材の物性、性能評価用物理量及びタイヤ寸度の少なくとも1つを制約する制約条件を定めるステップと、制約条件を考慮しながら目的関数の最適値を与える設計変数の値を求めるステップと、目的関数の最適値を与える設計変数に基づいてタイヤを設計するステップと、を含む空気入りタイヤの設計方法が記載されている。
また、特許文献2には、有限要素モデルを用いて、対象物の剛性、質量を変化させたときの制約性能、目的性能の変化の割合である剛性質量感度を求め、これに基づいて上記対象となる性能を制御する設計要因を考案して設定するとともに、上記設計要因を所定量だけ変化させた場合の制約性能、目的性能の変化の割合である設計要因感度を求め、この設計要因感度を設計変数として、上記制約性能を満たしながら目的性能を満たす最適な設計要因とその組み合わせを求める最適設計方法が記載されている。
特許第3686107号公報 特開2002−222216号公報
ここで、コンピュータによりタイヤモデルを作成し、適切な性能のタイヤを設計するためには、評価対象、設計対象のタイヤモデルの形状を異なる形状としたり、新たな構成を追加したりして、種々の構成のタイヤについて解析を行う。このように、評価対象、設計対象のタイヤの形状を異なる形状としたり、新たな構造を追加したりすると、解析を行うために、タイヤを構成する要素を追加、除去、あるいは再度分割しタイヤモデルを作成する必要があり、解析対象のタイヤモデルの作成に時間がかかる。
これに対して、特許文献1では、転がり抵抗の低減を目的として、各部の物性値を変化させて解析を行い、最適値を求めている。また、特許文献2には、タイヤ全体を板要素(シェル要素)のモデルとして解析を行い、剛性・質量の改良を目的として、設計要因の変化の割合を設計変数として最適化を行う方法が記載されている。しかしながら、タイヤの構造や形状を異なるものとした場合は、解析対象のタイヤの要素を再度分割してタイヤモデルを作成する必要がある。加えて、特許文献2のようにタイヤ全体を板要素にてモデル化してしまうと、解析の効率化が図れるが、各要素間で作用する力による影響を十分に解析することが困難である。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの解析に用いる複数のタイヤモデルをより簡単、かつ、短時間に作成することができるタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、有限個の要素と節点からなり、立体要素(ソリッド要素)で構成される第1タイヤモデルを作成する第1モデル作成ステップと、前記第1タイヤモデルの立体要素に対応し、かつ、モデル空間において厚みを無視できる構造要素で構成された部材モデルを作成する構造要素作成ステップと、前記第1タイヤモデルの予め設定された位置に、前記部材モデルを配置した第2タイヤモデルを作成する第2タイヤモデル作成ステップと、前記部材モデルの少なくとも厚さを含む設計変数の定義域を定める条件設定ステップと、を有することを特徴とする。
このようなタイヤモデル作成方法により、タイヤの解析に用いる複数のタイヤモデルをより簡単、かつ、短時間に作成することができる。
ここで、前記第2タイヤモデルは、それぞれタイヤモデルを構成する部材毎に材料モデルが対応付けられており、前記材料モデルは、弾性、粘弾性、異方性特性の少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、部材毎の材料特性をより適切にモデル化することができる。
また、前記部材モデルは、シート状部材であることが好ましい。これにより、より高い精度でモデルの作成を行うことができる。
また、前記条件設定ステップは、複数の構造要素からなるグループに分割し、前記グループ毎に設計変数を設定することが好ましい。これにより、より短時間でモデルの作成を行うことができる。
また、前記設計変数は、前記部材モデルの形状変数の定義を含むことが好ましい。これにより、より好適にタイヤモデルを作成することができる。
また、前記設計変数は、離散変数であることが好ましい。これにより、部材寸法など実際の製造条件(制約条件)を考慮したタイヤモデルを作成することができる。
また、前記部材モデルは、等方性材料であることが好ましい。これにより、ゴムシート等のモデルを好適に作成することができる。
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、上記のいずれかに記載のタイヤモデル作成方法でタイヤモデルを作成するステップと、解析対象のタイヤ性能を表す目的関数を設定するステップと、前記条件設定ステップで設定した条件に基づいて、設計変数を変化させてタイヤモデルの解析を繰り返し行う解析ステップと、前記解析ステップで解析した結果に基づいて、前記目標関数が最適となる設計変数を検出する評価ステップと、前記評価ステップで検出した設計変数に基づいてタイヤを設計する設計ステップと、を有することを特徴とする。
これにより、タイヤの解析に用いる複数のタイヤモデルをより簡単に作成することができ、短時間で複数のタイヤモデルを作成することができ、より適切なタイヤを短時間で設計することができる。
本発明のタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法は、タイヤの解析に用いる複数のタイヤモデルをより簡単に作成することができ、短時間で複数のタイヤモデルを作成することができる。
図1は、タイヤの子午断面図である。 図2は、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法を実行するシミュレーション装置を示す説明図である。 図3は、第1タイヤモデルの一例を示す斜視図である。 図4は、第1タイヤモデルの一例を示す子午断面図である。 図5は、部材モデルの一例を示す子午断面図である。 図6は、第2タイヤモデルの一例を示す子午断面図である。 図7は、タイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法の手順の一例を示すフロー図である。 図8は、タイヤモデルの解析及び評価の一例を説明するための説明図である。 図9は、タイヤモデルの評価結果の一例を示す表である。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の発明を実施するための形態(以下実施形態という)の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に説明する構造要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側を意味する。タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向を意味し、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側を意味する。タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周方向を意味する。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面を意味する。
図1は、タイヤの子午断面図である。図1に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。なお、タイヤ1のタイヤ径方向外側(路面との接地面側)には、キャップトレッド6が配置されている。タイヤ1は、母材であるゴムを、補強材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層をコード層という。
カーカス2は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
ベルト3の踏面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。
キャップトレッド6の踏面G側(トレッド面)には、図1に示すように、タイヤ周方向に延在する4本の溝7a、7b、7c、7dが形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、4本の溝7a、7b、7c、7dが形成されることで、キャップトレッド6は、溝7aよりのタイヤ幅方向外側の陸部11aと、溝7aと溝7bとの間の陸部11bと、溝7bと溝7cとの間の陸部11cと、溝7cと溝7dとの間の陸部11dと、溝7dよりのタイヤ幅方向外側の陸部11eとが形成される。陸部11cが、タイヤ赤道面Cを通る位置に形成されている。また、陸部11cには、溝7a、7b、7c、7dよりも溝幅が狭く、溝深さが浅い飾り溝12が形成されている。
また、タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。
次に、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法及びそれを用いるタイヤ設計方法を実行する装置について説明する。図2は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法、つまり、タイヤモデル作成方法及びそれを用いるタイヤ設計方法を実行するシミュレーション装置を示す説明図である。本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、図2に示すシミュレーション装置50によって実現できる。図2に示すように、シミュレーション装置50は、処理部52と記憶部54とで構成される。また、このシミュレーション装置50には、入出力装置51が電気的に接続されており、ここに備えられた入力手段53でタイヤモデルを構成するゴムの物性値や補強コードの物性値等のタイヤモデルの各種パラメータ、あるいは、解析における境界条件等を処理部52や記憶部54へ入力する。また、シミュレーション装置50は、入出力装置51の表示手段55に算出結果、入力結果等、種々の情報を表示させる。
ここで、入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、タイヤの変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、種々のタイヤのシミュレーション方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造物の変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、第1モデル作成部52aと、構造要素作成部52bと、第2モデル作成部52cと、条件設定部52dと、解析部52eと、評価部52fと、タイヤ設計部52gと、を含む。第1モデル作成部52aは、解析に供する第1タイヤモデルを作成して、記憶部54に格納する。ここで、図3は、第1タイヤモデルの一例を示す斜視図であり、図4は、第1タイヤモデルの一例を示す子午断面図である。なお、第1タイヤモデルは、有限個の要素と節点とで構成されたソリッド要素(立体要素)で構成され、演算可能な解析モデルである。つまり、第1タイヤモデルは、図3及び図4に示すように、タイヤを複数の3次元の要素に分割した第1タイヤモデルMaとなり、子午線断面が第1タイヤモデル60となる。なお、第1タイヤモデルMaと第1タイヤモデル60とは、異なる符号を付しているが同一のモデルであり、第1タイヤモデル60に示すような子午線断面の形状を周方向に展開することで、第1タイヤモデルMaのような、リング状のタイヤモデルとなる。また、図3及び図4に示す第1タイヤモデル60は、図1に示すタイヤと同様の形状であり、周方向に複数の種溝が形成されている。さらに、第1タイヤモデル(第1タイヤモデル60、Ma)を構成する複数の要素は、演算の対象となる要素であり、上述したように、ソリッド要素で構成される。
構造要素作成部52bは、解析に供する部材モデルを作成して、記憶部54に格納する。ここで、図5は、部材モデルの一例を示す子午断面図である。図5に示すように部材モデル62は、解析対象のモデルとしての厚みを備えない(力学的には厚みを持つ)要素で構成されたモデルである。例えば、部材モデル62は、シェル要素や、膜要素等、解析モデルとしての厚みを備えない(力学的には厚みを持つ)構造要素で作成される。なお、部材モデル62は、タイヤを構成するベルト、カーカス等のシート状部材のモデルとして用いることができる。なお、部材モデル62としては、ベルト、カーカスに限定されず、例えば、補強のための新規の挿入部材のモデルとしても用いることができる。
第2モデル作成部52cは、第1モデル作成部52aで作成された第1タイヤモデルと、構造要素作成部52bで作成した部材モデルとを記憶部54から読み出し、第1タイヤモデルに部材モデルを組み合わせて、第2タイヤモデルを作成し、記憶部54に格納する。ここで、図6は、第2タイヤモデルの一例を示す子午断面図である。第2モデル作成部52cは、図6に示すように、第1タイヤモデル60の所定の位置に部材モデル62を配置し、第2タイヤモデル64を作成する。なお、第2モデル作成部52cは、部材モデル62を第1タイヤモデル60に組み合わせる方法として、種々の方法を用いることができる。
条件設定部52dは、設計変数、設計変数の範囲(定義域)、変数の変化の規則、演算の境界条件、目的関数等の各種条件の設定を行う。なお、条件設定部52dは、これらの各種条件を、利用者が入力手段53から入力した数値等に基づいて作成、設定する。また、条件設定部52dは、部材モデルに対して、各種設計変数を設定し、設定した設計変数を種々の値に変更できるように設定する。また、条件設定部52dは、部材モデルの設計変数として、各部の厚みを含む。
解析部52eは、第2モデル作成部52cで作成したモデルを記憶部54から読み出し、条件設定部52dで設定した条件で解析を実行する。なお、タイヤモデルの解析としては、転動解析、接地解析等の、種々の解析を行うことができる。解析部52eは、設計変数を定義域の範囲で種々の値に変更して解析を繰り返し、設計変数を種々の値とした第2タイヤモデルの解析を行う。また、解析部52eは、解析した結果を評価部52fに送る。
評価部52fは、解析部52eで解析した結果に基づいて、定めた目的関数が最適となるようなタイヤの性能を探索する。ここで、評価対象、つまり目的関数としては、種々の性能を対象とすることができ、走行安定性や、騒音性能、操舵性、耐久性等の指標となる特性値に設定することができる。なお、目的関数は、解析結果で算出される物理量を直接対象としてもよいが、算出される物理量を演算して算出するようにしてもよい。タイヤ設計部52gは、評価部52fで算出した評価結果に基づいて、タイヤを設計する。具体的には、タイヤ設計部52gは、評価結果に基づいて、条件をみたす、また、最も適切なタイヤモデル及びその設計変数を決定し、その決定値に基づいてタイヤを設計する。
処理部52は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されている。解析時においては、第2モデル作成部52cが作成した解析モデルや入力データ等に基づいて、処理部52がプログラムを処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、記憶部54へ演算途中の数値を適宜格納し、また記憶部54へ格納した数値を取り出して演算を進める。処理部52は、同様にして、評価結果の算出、タイヤの設計の演算を行う。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。
ここで、表示手段55には、液晶表示装置やCRT(Cathode Ray Tube)等を使用することができる。また、タイヤモデルの作成の結果や、タイヤの設計結果、シミュレーションの条件等は、必要に応じて設けられた印刷機により、紙等の被記録媒体に出力することもできるので、表示手段55として印刷機を用いてもよい。ここで、記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、シミュレーション装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。
次に、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法を説明する。なお、本実施形態に係るタイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法は、上述したシミュレーション装置により実現できる。図7は、タイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法の手順の一例を示すフロー図である。
本実施形態に係るタイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法を実行するにあたり、図2に示すシミュレーション装置50は、ステップS12として、第1モデル作成部52aにより第1タイヤモデルを作成する。具体的には、上述したように、第1モデル作成部52aは、複数のソリッド要素で構成されたタイヤモデルを作成する。ここで、第1タイヤモデルは、コンピュータを用いて数値解析可能なモデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む。また、第1タイヤモデルを構成する要素は、例えば、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素で構成されうる。このようにして分割された要素は、解析の過程において、3次元モデルでは3次元座標や円筒座標を用いて逐一特定される。
シミュレーション装置50は、ステップS12で第1タイヤモデルを作成したら、ステップS14として、構造要素作成部52bにより構造要素を作成する。つまり、新たに配置する部材モデルを作成する。ここで、部材モデルも、コンピュータを用いて数値解析可能なモデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含むが、解析モデルとしての厚みを有さない要素で構成されている。部材モデルは、例えば、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、膜要素等で構成されている。部材モデルは、演算に用いる数値パラメータとしては、厚みを有するが、解析モデルとして、つまり、空間としては厚みを持たない。
シミュレーション装置50は、ステップS14で構造要素を作成したら、ステップS16として、第2モデル作成部52cにより、第2タイヤモデルを作成する。つまり、シミュレーション装置50は、ステップS12で作成した第1タイヤモデルの所定の位置にステップS14で作成した部材モデルを組み込んで、第2タイヤモデルを作成する。つまり、第2タイヤモデルは、ソリッド要素で構成された第1タイヤモデルと、シェル要素等、空間的に厚みを持たず、力学的には厚みを持つ要素で構成された部材モデルとを組み合わせたモデルである。
シミュレーション装置50は、ステップS16で第2タイヤモデルを作成したら、ステップS18として、条件設定部52dにより目的関数を設定する。ここで、目的関数とは、タイヤモデルの解析結果を評価する指標となる関数であり、タイヤの性能を表す関数である。シミュレーション装置50は、タイヤの解析結果を目的関数に基づいて算出することで、タイヤの性能を算出することができる。つまり、目的関数は、評価指標の関数である。
シミュレーション装置50は、ステップS18で目的関数を設定したら、ステップS20として、条件設定部52dにより解析条件を設定する。つまり、解析に必要な各種条件を設定する。なお、解析条件としては、解析に用いる境界条件、部材モデルの設計変数の設定、設計変数の範囲、第1タイヤモデルの設計変数、設計変数の範囲がある。なお第1タイヤモデルを構成するソリッド要素の位置関係は一定で維持される。また、シミュレーション装置50は、ステップS20で定義域の数値から初回の解析に用いる値を設計変数に対して設定する。また、シミュレーション装置50は、各種条件の1つとして、第2タイヤモデルを構成する各要素、各部材には、材料モデルを対応付ける。ここで、材料特性(材料モデルとして用いるパラメータ)としては、弾性、粘弾性、異方性等の特性の少なくとも1つを含めることが好ましい。これにより、より適切な設計を行うことができる。なお、材料モデルは、第1タイヤモデルの作成時や、部材モデルの作成時、第2タイヤモデルの作成時に各部材(または各要素)と対応付けてもよい。
シミュレーション装置50は、ステップS20で解析条件を設定したら、ステップS22として、解析を行う。なお、解析はステップS18、ステップS20で設定された条件にあった解析を行う。解析としては、上述したように各種解析を実行することができ、例えば接地解析、転動解析を行うことができる。具体的には、接地解析を行う場合は、解析手法は有限要素法(Finite Element Method:FEM)や、有限差分法(Finite Difference Method:FDM)や、境界要素法(Boundary Element Method:BEM)等を用いることで解析を実行できる。また、シミュレーション装置50は、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。
シミュレーション装置50は、ステップS22で解析処理を行ったら、ステップS24として、解析が終了であるかを判定する。つまり、解析を終了する条件(収束条件)を満たしているかを判定する。なお、収束条件は、種々の設定とすることができ、例えば設計変数を定義域の中の全ての値とした場合について解析を実行することを収束条件とすることができ、また、目的関数の算出結果が閾値を超えた場合を収束条件とすることもできる。
シミュレーション装置50は、ステップS24で、解析が終了ではない(ステップS24でNo)と判定したら、ステップS26として、条件設定部52dにより、設計変数の条件を変更する。つまり、シミュレーション装置50は、ステップS26として、部材モデルの設計変数を定義域の中で異なる値に変更、つまり、設計変数に対して設定する値を再設定する。なお、変更する設計変数としては、部材モデルの設計変数を対象とすることに加え、第1タイヤモデルの設計変数を変更してもよい。シミュレーション装置50は、その後ステップS22に進み、再び解析を行う。このように、シミュレーション装置50は、解析を終了すると判定するまで、設計変数を種々の値に変更して解析を繰り返す。これにより、部材モデルを種々のものとした場合のタイヤについて解析を行うことができる。
シミュレーション装置50は、ステップS24で、解析が終了である(ステップS24でYes)、つまり、収束条件を満たしていると判定したら、ステップS28として、評価部52fにより、解析結果を評価する。すなわち、最適化手法を用いて上記定義域内における最適設計変数の探索を行う。
シミュレーション装置50は、ステップS28で、解析結果を評価したら、ステップS30として、タイヤ設計部52gにより、タイヤを設計する。具体的には、シミュレーション装置50は、評価結果に基づいて、設定された条件を満たす最適な形状、構成、材料のタイヤモデルを抽出し、抽出したタイヤモデルに基づいてタイヤの設計を行う。シミュレーション装置50は、タイヤを設計したら、設計したタイヤの設計値を表示手段55に表示させ処理を終了する。
このように、本実施形態のタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法によれば、1つの第2タイヤモデルを作成し、作成した第2タイヤモデルの部材モデルの設計変数を異なる値とすることで、種々の部材を設けた場合についての解析を行うことができる。また、部材モデルの厚みを設計変数とすることで、第2タイヤモデルの要素の構成はそのままで、部材モデルの厚みを異なる厚みとした場合のタイヤについての解析を行うことができる。つまり、部材モデルの設計変数(厚さやヤング率)を変更することにより、第2タイヤモデルにおいて要素の追加・除去を含む再分割を行なうことなく、1つのタイヤモデルから各々の状態のタイヤについて解析を行うことができる。これにより、種々の構造のタイヤモデルを簡単に作成することができる。つまり、シート状の部材モデルの形状を変更する場合も、設計変数を変更すればよく、第2タイヤモデルを構成する要素の追加・削除および再分割が必要ないため、モデル変更が非常に容易となる。また、設計変数(厚さやヤング率)を略ゼロとすることで部材モデルを配置していないタイヤモデルについても解析を行うことが可能となり、例えば新規挿入部材による目的性能の変化を容易かつ好適に比較できる。
以上より、シート状の部材が変化した複数のタイヤモデルについての解析を短時間で、簡単に実行できるため、より適切なタイヤを短時間で設計することができる。
また、本実施形態のタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法は、部材として、厚さが薄い部材を用いる場合に好適である。これにより、例えば、基本タイヤ(第1タイヤモデル)のタイヤ性能(低燃費性能、運動性能、摩耗性能など)を向上させるために、どのような部材(部材モデル)を新たに配置すべきかをより簡単、かつ短時間に見出すこと(構造設計)ができる。
ここで、部材モデルの力学特性は、異方性の特性を有していても、等方性であっても良い。部材モデルを、異方性の特性を有する設定とすることで、補強材について好適に解析することができる。部材モデルを、等方性の特性を有する設定とすることで、ゴムシート、樹脂シートについて好適に解析することができる。
また、目的関数は、上述したように、タイヤ性能を表す物理量や、指数化した数値を用いることができる。また、目的関数は、数値の好ましい変化の方向、例えば、値が大きくなる、小さくなる、又は所定の値に近づく等のうち好ましい数値の変化の方向を、設定条件(例えば、最適化処理の条件、設計変数を設定する場合の指標)の1つとして、設定することが好ましい。
また、タイヤ設計方法は、解析結果に基づいて、最適化処理を行い、タイヤを設計することが好ましい。ここで、最適化でのタイヤ性能評価には、有限要素法などのシミュレーションを用いても良いし、応答局面(近似式)に代表される非線形関数を用いても良い。さらに、最適化手法としては、勾配情報を用いる数理計画法を用いても良いし、遺伝的アルゴリズムのような進化的手法を用いても良い。
また、タイヤモデル作成方法及びタイヤ設計方法は、部材モデルを複数の領域(グループ)に分割し、分割した領域毎に設計変数を設定、調整することが好ましい。これにより、所定のグループ毎に最適なパラメータを設定でき、要素毎に調整する場合よりも、設計変数の数を減らすことができ、計算量を低減し、設計にかかる時間、費用のコストを削減できる。また、例えば、ゴムシートのような、一定の幅を持った部材を想定した設計では、厚み、材料を細かく調整することは困難であるので、実際の製造等に沿ったタイヤモデルの作成、設計を行うことができる。
なお、この場合、同じ領域内の構造要素は同じ設計変数を用いることが好ましい。また、複数の設計変数が設定可能な場合は、一部の設計変数は同一とし、一部の設計変数は、要素毎に変化させてもよい。また、設計変数毎に、領域を設定するようにしてもよい。例えば、部材モデルの厚みが同じ値であっても、物性値(ヤング率等)を異なる値とすることもできる。
また、設計変数として、部材モデルの形状変数の定義を含んでもよい。このように、ベーシスベクトル法やモーフィングといった形状変数の定義方法と組み合わせることによって、形状設計と構造設計を同時に行うことができる。例えば、ベーシスベクトル法を組合せ、第2タイヤモデルの形状の形状変数の定義を設計変数とすることで、各モードにおける重み付け係数を設計変数として組合せて設定することができる。なお、設計変数には、第1タイヤモデルの形状の形状変数の定義も含めるようにしても良い。
また、設計変数は、離散変数とすることが好ましい。これにより、実際の製造に合わせたモデルの作成と、設計を行うことができる。つまり、実際の製造では、製造上の制約のため利用できる部材の物性値や厚さがあらかじめ定められている場合が多い。そのため、設計変数を、その値に合わせた離散的な変数とすることで、より適切な設計を行うことができる。
次に、実施例を用いて、本発明についてより詳細に説明する。ここで、図8は、タイヤモデルの解析及び評価の一例を説明するための説明図であり、図9は、タイヤモデルの評価結果の一例を示す表である。実施例では、挿入する部材モデルとして、ゴムシートを配置した場合とし、図8に示すように、ゴムシートを、AからAの7つの領域に分割し、ゴムシートのゲージ(厚み)を設計変数として、タイヤモデルの作成と、タイヤ設計を行った。なお、設計変数としてゴムシートのゲージは、0.0mm、1.0mm、2.0mmの3種類である。なお、ゴムシートのゲージが0mm、すなわちシートの無い状態の場合は、ゲージを1.0×10−6mmとしてモデル化した。
本実施例では、このようにゴムシートのゲージを変化させた場合に、操安性の指標となる横ばね定数と、ゴムシートの体積との関係が最適となるタイヤを設計した。なお、横ばね定数は、タイヤサイズを195/65R15とし、空気圧230kPaの空気入りタイヤを、接地荷重を4.2kNにて接地させたときの接地解析から算出した。なお、設計変数の設定、及び解析では、L18直交実験を行った。
L18直交実験で行ったゴムシートのゲージの設定を図9に示す。ここで、図9に示す剛性因子g1からg7は、それぞれ、領域Aから領域Aでのゴムシートのゲージである。なお、誤差とは、誤差因子(2水準)のことを示す。
また、評価では、L18直交実験で設計変数を種々の値として解析を行った結果に基づいて、設計変数に対する近似式を作成した。さらに、近似式を用い、遺伝的アルゴリズムによってゴムシートの体積ができるだけ少なくかつ横ばね定数が対基準比+10%以上となるようなパレート解を探索した。この結果、g1=2.0、g2=2.0、g3=2.0、g4=1.0、g5=1.0、g6=0.0、g7=0.0が解として算出された。また、この解の値を用いたタイヤモデルは、ゴムシートを配置していない(g1からg7が全て0である)場合と比較して、横ばね定数がおよそ15%向上した。
また、本実施例では、ゴムシートのゲージを代えた場合でも、1つの第2タイヤモデルで、解析を行うことができる。つまり、1つの第2タイヤモデルを用いることで、18種類のゴムシートのそれぞれを有するタイヤについて解析を行うことができる。ここで、本実施例では、1つのタイヤモデルを各要素に分割する時間、つまり1つの第2タイヤモデルを作成するのにおよそ3時間を要した。
ここで、ゴムシートをモデル上厚みがある部材、例えばソリッド要素として、タイヤモデルを作成する場合は、それぞれの場合について、タイヤモデルの要素を再分割する必要がある。そのため、18種類の解析を行うためには、18個のタイヤモデルを作成する必要がある。そのため、上記解析を行うためには、モデルの作成に18×3時間=54時間が必要となる。これに対して、本実施形態では、厚さを設計変数とすることにより、1つのタイヤモデルで解析ができるため、モデルの作成時間を51時間短縮することができる。
以上のように、本発明に係るタイヤモデル作成方法、及び、それを用いたタイヤ設計方法は、コンピュータを用いたタイヤモデルの作成及びタイヤの設計に用いることに適している。
1 タイヤ
50 シミュレーション装置
51 入出力装置
52 処理部
52a 第1モデル作成部
52b 構造要素作成部
52c 第2モデル作成部
52d 条件設定部
52e 解析部
52f 評価部
52g タイヤ設計部
53 入力手段
54 記憶部
55 表示手段
60 第1タイヤモデル
62 部材モデル
64 第2タイヤモデル

Claims (8)

  1. 有限個の要素と節点からなり、立体要素で構成される第1タイヤモデルを作成する第1モデル作成ステップと、
    前記第1タイヤモデルの立体要素に対応し、かつ力学的には厚みを持ちつつ、モデル空間において厚みを持たない構造要素で構成された部材モデルを作成する構造要素作成ステップと、
    前記第1タイヤモデルの予め設定された位置に、前記部材モデルを配置した第2タイヤモデルを作成する第2タイヤモデル作成ステップと、
    前記部材モデルの少なくとも厚さを含む設計変数の定義域を定める条件設定ステップと、を有することを特徴とするタイヤモデル作成方法。
  2. 前記第2タイヤモデルは、それぞれタイヤモデルを構成する部材毎に材料モデルが対応付けられており、
    前記材料モデルは、弾性(超弾性)、粘弾性、異方性特性の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤモデル作成方法。
  3. 前記部材モデルは、シート状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤモデル作成方法。
  4. 前記条件設定ステップは、複数の構造要素からなるグループに分割し、前記グループ毎に設計変数を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
  5. 前記設計変数は、前記部材モデルの形状変数の定義を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
  6. 前記設計変数は、離散変数であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
  7. 前記部材モデルは、等方性材料であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法でタイヤモデルを作成するステップと、
    解析対象のタイヤ性能を表す目的関数を設定するステップと、
    前記条件設定ステップで設定した条件に基づいて、設計変数を変化させてタイヤモデルの解析を繰り返し行う解析ステップと、
    前記解析ステップで解析した結果に基づいて、前記目標関数が最適となる設計変数を探索する評価ステップと、
    前記評価ステップで検出した最適となる設計変数に基づいてタイヤを設計する設計ステップと、を有することを特徴とするタイヤ設計方法。
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