JP6123159B2 - 構造体断面形状作成方法、構造体断面形状決定方法、構造体製造方法、構造体断面形状決定装置、及びプログラム - Google Patents
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Description
ところで、今日、コンピュータ等による数値計算の高速処理の向上により、最適な製品性能を得るための数値計算による最適設計手法が種々提案されている。これによると、上記問題を解決し、効率よく最適設計を行うことができるとされている。しかし、構造体であるタイヤは、タイヤ断面形状の規定方法の複雑さに起因して上記最適設計手法が十分に活かされ難いといった問題があった。
このように、上述の最適形状設計方法では、実用的なタイヤ性能を有するようにタイヤ断面形状を定めてタイヤを設計することが難しい場合がある。
このような問題は、例えば、飛行機の翼やタービンブレードのような流体抵抗を適正に制御することが望まれる構造体や自動車のエンジンにおけるシリンダヘッドやピストン等の耐久性能を維持・向上しつつ摩擦損失の低減や軽量化が望まれる構造体、さらには、ゴルフクラブヘッドのような応力の集中を抑制する構造体の開発においても同様の問題を有する。
当該方法は、
コンピュータが、基準とする参照タイヤ断面形状を有する参照タイヤモデルを作成する工程と、
前記コンピュータが、前記参照タイヤモデルの参照タイヤ断面形状に対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する工程と、
前記コンピュータが、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する工程と、を有する。
当該方法は、
コンピュータが、基準とする参照タイヤ断面形状を有する参照タイヤモデルを作成する工程と、
前記コンピュータが、前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する工程と、
前記コンピュータが、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する工程と、
前記コンピュータが、前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行タイヤモデルを作成し、この作成した前記試行タイヤモデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行うことにより、前記試行断面形状の性能評価を行う工程と、
前記コンピュータが、前記設計寸法パラメータの寸法の変更と前記重み強度の値の変更を行なって前記性能評価を行うことにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索して、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定する工程と、を有する。
前記構造体断面形状決定方法によって決定されたタイヤ断面形状の外周面の形状に基いてタイヤ金型の内面形状を決定し作製する工程と、
未加硫タイヤを、作製した前記タイヤ金型を用いて未加流タイヤの加硫を行うことにより、タイヤを製造する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法である。
当該プログラムは、
コンピュータの演算部に、基準とする参照タイヤ断面形状の参照タイヤモデルを作成させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定させ、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行わせることにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行タイヤモデルを作成させ、この作成した前記試行タイヤモデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行わせることにより、前記試行断面形状の性能評価を行わせる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記設計寸法パラメータにおける寸法の変更と前記重み強度の値の変更を行わせて前記性能評価を行わせることにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索させて、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定させる手順と、を有する。
当該装置は、
基準とする参照タイヤ断面形状の参照タイヤモデルを作成する第1モデル作成部と、
前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する設定部と、
前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する試行断面形状作成部と、
前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行モデルを作成する第2モデル作成部と、
作成した前記試行モデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行うことにより、前記試行断面形状の性能評価を行う評価部と、
前記重み付け加算に用いる重み強度の値を変更して前記試行断面形状の前記性能評価を行うことにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索して、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定する決定部と、を有する。
なお、本発明でいう「構造体断面形状」等で用いる「断面」には、例えば、構造体が、同一の断面形状で延在する長尺状の構造体である場合、長手方向と直交する方向の面で切断した断面が含まれる。また、この「断面」には、構造体が、タイヤのような同一の断面形状が回転軸の周りに回転して形成されるような回転体形状の構造体である場合、回転軸を含む平面で切断した断面形状が連続して続くような断面が含まれる。さらに、この「断面」には、長尺状の構造体や回転体形状の構造体の他、3次元構造体を任意の位置で切断した断面形状の断面も含まれる。
図1は、本実施形態のタイヤ断面形状決定方法を行い、最適なタイヤ断面形状を決定するタイヤ断面形状決定装置(以降、装置という)10のブロック図である。装置10は、基準とする参照タイヤ断面形状を有する参照タイヤモデルを用いて、タイヤ性能の評価値を目標値にすることができる最適なタイヤ断面形状を決定することができる。装置10は、コンピュータで構成される装置本体12と、装置本体12に接続された入力操作デバイス32(マウス、キーボード)および出力装置34(プリンタ、ディスプレイ)を含む。装置本体12は、CPU14、ROM、RAM等のメモリ16、入出力部18と、を含む。入出力部18は、入力操作デバイス32および出力装置34と接続されている。装置10は、メモリ16に記憶されたプログラムを起動することによって、タイヤ断面形状を決定するための処理モジュール19を形成する。
本実施形態では、装置10は、最適なタイヤ断面形状を探索するためにタイヤの試行断面形状を複数作成するとき、参照タイヤモデルのタイヤ断面形状に対して、第1領域と第2領域を設定する。第1領域は、タイヤ断面形状の設計寸法パラメータを用いてタイヤ断面形状を定める領域であり、第2領域は、基底断面形状を用いて断面形状を定める領域である。基底断面形状とは、参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状をいう。装置10は、タイヤ断面形状の中の第1領域と第2領域を、タイヤ断面形状を変更する領域として設定する。すなわち、第1領域については予め設定される寸法範囲内の寸法を用いることにより、第2領域については予め設定される重み付け範囲内の重み強度の値を用いて基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、第1領域及び第2領域を含む試行断面形状を作成する。したがって、固有振動モードから得られるタイヤ断面の変形形状に、基底断面形状として含めたくない変形部分があるとしても、この部分を第2領域に設定せず、例えば寸法を変更することができる第1領域に含めて試行断面形状を作成することができる。したがって、タイヤ断面形状の最適化のためにタイヤ断面形状を第1領域及び第2領域に区別して設定して効率よく最適化することができる。さらに、タイヤ断面形状を第1領域及び第2領域として設定して最適化したタイヤ断面形状を効率よく見つけ出すことができる。以下、装置10について詳細に説明する。
ここで、評価部28で行われるタイヤ性能の評価は、公知の有限要素法(FEM)等の構造解析手法によって行なわれる。したがって、第1モデル作成部20及び第2モデル作成部26で作成される参照タイヤモデル、試行タイヤモデルを含むタイヤモデルは、FEMモデル等の構造解析モデルである。以降では、タイヤモデルはFEMモデルを例として説明し、評価部28で行う計算は、有限要素法に基くシミュレーション計算である。しかし、タイヤモデルは、FEMモデル以外の公知のモデルであってもよい。
ここで、タイヤ断面形状は、タイヤ加硫用金型によって規定されるインモールドタイヤ断面形状、あるいは、JATMA等で規定されてリムにタイヤを装着したときのタイヤデフレート時のタイヤ断面形状である。タイヤデフレート時のタイヤ断面形状は、インモールドタイヤ断面形状と略一致する。あるいは、タイヤデフレート時のタイヤ断面形状は、インモールドタイヤ断面形状との間で、ある一定の操作をして互いに変換できる形状である。すなわち、装置10によって取得される最適なタイヤ断面形状は、タイヤ加硫用金型によって規定されるインモールドタイヤ断面形状、または、タイヤデフレート時のタイヤ断面形状であるので、取得したタイヤ断面形状からインモールドタイヤ断面形状を取得することができ、これに基いてタイヤ加硫用金型を容易に作製することができる。したがって、作製したタイヤ加硫用金型を用いて未加流タイヤの加硫を行うことにより、最適なタイヤ断面形状を有するタイヤを効率よく製造することができる。
具体的には、第1モデル作成部20は、基準とする参照タイヤ断面形状の情報が入力操作デバイス32により入力されて、参照タイヤ断面形状の情報を取得する。あるいは第1モデル作成部20は、メモリ16あるいは図示されない記録装置から呼び出されて基準とする参照タイヤ断面形状の情報を取得する。さらに、第1モデル作成部20は、FEMモデルである参照タイヤモデルの節点及び要素に関する情報と、参照タイヤモデルの材料定数に関する情報を作成し統合する。これにより、参照タイヤモデルが作成される。なお、参照タイヤ断面形状の情報は、タイヤのベルト部材、カーカス部材、トレッド部材、サイド部材、スティフナー部材やビード部材等のタイヤ構成部材の配置位置を定める位置座標と、各タイヤ構成部材に対応した密度、ヤング率、せん断剛性、ポアソン比等の材料定数の値を含む。図2は、参照タイヤモデルのセンターラインから右半分のタイヤ断面を示す図である。
また、図3(c)に示すように、第1領域RAと第2領域RBが互いに接するように設定されてもよい。このように、第1領域及び第2領域の設定は、自在に行われる。
複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状のうち、どの変形形状を第2領域における基底断面形状として設定するかについては、例えば、出力装置34に画面表示された変形形状を、オペレータが確認しながら、入力操作デバイス16による入力指示による取捨選択によって行われる。
設定部22は、設定された第1領域及び第2領域の情報と、第1領域において変数として用いる設計寸法パラメータの範囲を表す寸法範囲の情報と、第2領域において変数として用いる重み強度の値の範囲を表す重み付け範囲の情報とを、メモリ16に記憶する。
試行断面形状作成部24は、第1領域及び第2領域のタイヤ断面形状を組み合わせ、さらに、第1領域及び第2領域の設定されない領域がある場合、この領域に対応する参照タイヤ断面形状を組み合わせて、試行断面形状を作成する。
試行断面形状作成部24は、作成した第1領域及び第2領域を含む試行断面形状の情報をメモリ16に記憶させる。
評価部28は、入力操作デバイス32等により予め設定されたタイヤ性能に関する評価値を、シミュレーションによる数値計算によって算出する。評価部28は、例えば固有振動数、縦ばね定数、横ばね定数、前後ばね定数、転がり抵抗、ベルト間における層間剪断歪み、摩耗予測値、あるいは、スティフナー部材の所定位置における応力分布や応力歪みの値、さらには、タイヤが地面に接地したときの接地圧力の値等をシミュレーションによる数値計算によって算出する。これらの具体的な計算は、周知の方法であるので説明は省略される。
評価部28は、決定部30により順次変更される設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値に基いて作成される試行タイヤモデルを用いてがシミュレーション計算を繰り返し行う。
具体的には、決定部30は、試行断面形状を予め設定された回数作成するまで、設計寸法パラメータの寸法及び重み付け加算に用いる重み強度の値のそれぞれを設定される範囲内で変更しながら、評価部28にタイヤ性能の評価を行わせたのち、決定部30は、この複数の試行断面形状毎のタイヤ性能の評価値に基づいて、タイヤ断面形状の設計空間を、曲面近似関数を用いて応答曲面関数として定める。この応答曲面関数は、設計寸法パラメータ及び重み強度を設計変数とする。すなわち、応答曲面関数は、基底断面形状を第1領域のタイヤ断面形状を定める設計寸法パラメータと第2領域の重み付け加算に用いる重み強度を設計変数として、タイヤ性能の評価値を、曲面近似関数を用いて表したものである。ここで、曲面近似関数は、チェビシェフの直交多項式やn次多項式等の関数が挙げられる。
本実施形態では、上記設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値が一定の大きさずつ大きくあるいは小さくなるように変更されるが、この他に、上記寸法及び値がランダムに変更されてもよい。また、公知の実験計画法例えば、直交表L81により設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値について水準を振り、この値を割り付けることで、試行断面形状を作成することができる。また、試行断面形状作成部24は、決定部30が多目的遺伝的アルゴリズムの手法を用いてタイヤ断面形状の最適化を行うこともできる。
また、決定部30は、最適な評価値が得られない場合、得られた評価値の中で最適な状態に最も近い評価値を持つタイヤ断面形状の情報を基底断面形状設定部12に戻してもよい。基底断面形状設定部12は、このタイヤ断面形状の情報を、参照タイヤ断面形状の情報として、再度、最適なタイヤの断面形状を求めることができる。
本実施形態では、このような試行断面形状を持ったタイヤモデルが、タイヤモデル作成部26において作成され、評価部28においてタイヤ性能の評価が行われ、最終的に、決定部30において最適なタイヤの断面形状が決定される。
図6は、本実施形態のタイヤの断面形状の決定方法の処理のフローを示す図である。
まず、装置10は、メモリ16に記憶されているプログラムを呼び出して起動することにより、処理モジュール19を形成する。
第1領域は、試行断面形状作成部24において作成するタイヤ断面形状の設計寸法パラメータを用いてタイヤ断面形状を定める領域である。第2領域は、基底断面形状を用いてタイヤ断面形状を定める領域である。基底断面形状は、参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面の形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状をいう。
設定部22は、参照タイヤモデルの固有値解析を行って、固有値解析における1次、2次、3次、・・・等の複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を求め、基底断面形状として複数設定する。基底断面形状は、固有値解析を行った参照タイヤモデルのタイヤ断面形状であるので、複数設定した基底断面形状のそれぞれは、共通した節点及び要素を持っており、共通した節点における位置座標が基底断面形状毎に異なっている。このとき設定される基底断面形状の変形の大きさは正規化されている。複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状のうち、どの変形形状を基底断面形状として設定するかについては、例えば、出力装置34に画面表示された変形形状を、オペレータが確認しながら、入力操作デバイス16による入力指示による取捨選択によって行われる。こうして、第2領域における基底断面形状が設定される。
一方、第2の領域における試行断面形状を作成するために、試行断面形状作成部24は、設定された基底断面形状の変形部分に対して決定部30で定められた重み強度を用いた重み付け加算を行う。すなわち、第2の領域における試行断面形状を作成するために、試行断面形状作成部24は、複数の基底断面形状の節点の、参照タイヤモデルの対応する節点からの位置座標の差分(変位)に重み強度を乗算して加算することにより、第2領域における試行断面形状を作成する。
試行断面形状作成部24は、第1領域における試行断面形状に、第2領域における試行断面形状の変形部分、すなわち、第2領域における試行断面形状の節点の位置座標と参照タイヤモデルの対応する節点の位置座標との差分を加算して、第1領域及び第2領域を含む試行断面形状を作成する(ステップS30)。試行断面形状のうち、第1領域及び第2領域のいずれにも設定されない領域がある場合、参照タイヤモデルにおける該当する領域の形状が用いられる。
上記設計寸法パラメータ及び重み強度については、後述するように、設定された寸法範囲及び重み付け範囲の中で、決定部30が値を順次変更する。
試行断面形状作成部24は、作成した第1領域及び第2領域を含む試行断面形状の情報をメモリ16に記憶させる。
こうして、変更された寸法及び重み強度の値を用いて、ステップS30〜50が繰り返される。
ステップS50における判定が肯定である場合、決定部30は、タイヤ性能の評価結果に基づいて、最適な試行断面形状を探索する(ステップS70)。具体的には、特開2002−15010号公報に記載されるように、設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値を設計変数としてタイヤ性能の評価結果である評価値を表す関数で、チェビシェフの直交多項式を用いた曲面近似関数が応答曲面関数として作成される。
こうして作成された応答曲面関数における評価値が、設計変数の設定された範囲において、最大値あるいは最小値となり、また入力された値と一致あるいは許容範囲内で一致するような、設計変数の値を求める。
本実施形態は、ステップS60において設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値を変更するとき、一定の大きさで設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値を逐次変化して設定された全範囲をカバーするが、実験計画法、例えばL81等の直交表を用いて設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値を設定する場合、設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値を予め割り付け、この割り付けに応じて設計寸法パラメータの寸法及び重み強度の値が設定される。また、評決定部30は多目的遺伝的アルゴリズムを用いてタイヤ断面形状の最適化を行うこともできる。
本実施形態では、タイヤの試行断面形状を複数作成してタイヤ性能の評価を行うことにより、応答曲面関数を求め、この応答曲面関数を用いて、タイヤ性能の評価が設定された条件を満足する最適な試行断面形状を探索する。この他に、タイヤの試行断面形状を変えながらタイヤ性能を評価し、その評価結果に応じて試行断面形状を逐次変更しながら、タイヤ性能の評価が設定された条件を満足する最適な試行断面形状を探索することもできる。
(A)コンピュータのCPU14に、基準とする参照構造体断面形状の参照構造体モデルを作成させる手順と、
(B)CPU14に、前記参照構造体モデルに対して、前記参照構造体断面形状の設計寸法パラメータを用いて構造体断面形状を定める第1領域と、前記参照構造体断面形状を有する構造体の複数の固有振動モードのうち構造体断面の形状が変形する複数の固有振動モードの、構造体断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を用いて構造体断面形状を定める第2領域を設定させ、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定させる手順と、
(C)CPU14に、前記第1領域については前記寸法範囲内の前記寸法を用いさせることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を用いさせて前記基底断面形状の重み付け加算を行わせることにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成させる手順と、
(D)CPU14に、前記試行断面形状を構造体断面形状とする試行構造体モデルを作成させ、この作成した前記試行構造体モデルを用いて構造体の性能のシミュレーションを行わせることにより、前記試行断面形状の性能評価を行わせる手順と、
(E)CPU14に、前記設計寸法パラメータにおける寸法の変更と前記重み強度の値の変更を行わせて前記性能評価を行わせることにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索させて、前記性能評価に適合した構造体断面形状を決定させる手順と、を有する。
このプログラムは、インターネット等の電気回線を通じてコンピュータに転送されてメモリ16に記憶保持されてもよい。また、このプログラムは、CD−ROM等のコンピュータが読み込み可能なnon-transitoryの記録媒体等に記録されてもよい。
本実施形態の方法の効果を確認するために、225/50R18のタイヤのタイヤ断面形状を用いて、このタイヤのタイヤ断面形状の最適化を行った。評価するタイヤ性能は、転がり抵抗と耐偏摩耗特性である。転がり抵抗は、試行タイヤモデルを地面剛体モデル上に走行させるシミュレーションを行って算出した。このときのシミュレーション試験条件として、空気圧を210kPaとし、転動速度を80km/時とし、負荷荷重を4.5kNとした。また、耐偏摩耗特性については、試行タイヤモデルを地面剛体モデル上に走行させるシミュレーションを行って算出した。空気圧を210kPaとし、転動速度を80km/時とし、負荷荷重を4.5kNとしたときの地面剛体モデルと接する試行ダイヤモデルの接地圧と摩擦特性から偏摩耗形態及び摩耗速度を調べて偏摩耗を予測して耐偏摩耗特性を調べた。転がり抵抗の値は参照タイヤモデルにおける転がり抵抗の値を基準(100)とし、値が大きいほど転がり抵抗が小さくなるように指数化した。一方、耐偏摩耗特性は、10000km走行後のトレッド部の予測される摩耗量について、センター部のセンターライン上の位置とショルダー部の特定の位置の間でどの程度差が生じるか、摩耗量の差分を調べ、参照タイヤモデルにおける上記摩耗量の差分を基準(100)とし、この差分が小さいほど耐偏摩耗が優れているように指数化した。
このようなタイヤ断面形状により、従来例の最適化したタイヤ断面形状の転がり抵抗の指数は105であり、実施例の最適化したタイヤ断面形状の転がり抵抗の指数も105であった。一方、従来例の最適化したタイヤ断面形状の耐偏摩耗特性の指数は96であり、実施例の最適化したタイヤ断面形状の耐偏摩耗特性の指数は110であった。これより、本実施形態の方法は、効率よく、すなわち他のタイヤ性能の犠牲を払うことなく、目標とするタイヤ性能を効率よく最適化するタイヤ断面形状を決定することができる。
12 本体部
14 CPU
16 メモリ
18 入出力部
19 処理モジュール
20 第1モデル作成部
22 設定部
24 試行断面形状作成部
26 第2モデル作成部
28 評価部
30 決定部
32 入力操作デバイス
34 出力装置
Claims (9)
- タイヤ断面形状を、コンピュータを用いて作成する構造体断面形状作成方法であって、
コンピュータが、基準とする参照タイヤ断面形状を有する参照タイヤモデルを作成する工程と、
前記コンピュータが、前記参照タイヤモデルの参照タイヤ断面形状に対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する工程と、
前記コンピュータが、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する工程と、を有することを特徴とする構造体断面形状作成方法。 - 前記固有振動モードは、前記参照タイヤモデルの固有値解析を行うことにより得られる、請求項1に記載の構造体断面形状作成方法。
- 前記寸法範囲内の寸法を用いてタイヤ断面形状のうち前記第1領域を作成した後、前記第1領域の作成したタイヤ断面形状に、前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を用いて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことで作成される前記第2領域のタイヤ断面形状を付加することにより、前記試行断面形状が作成される、請求項1または2に記載の構造体断面形状作成方法。
- 前記第1領域と前記第2領域は重複する、請求項3に記載の構造体断面形状作成方法。
- タイヤ断面形状を、コンピュータを用いて決定する構造体断面形状決定方法であって、
コンピュータが、基準とする参照タイヤ断面形状を有する参照タイヤモデルを作成する工程と、
前記コンピュータが、前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する工程と、
前記コンピュータが、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する工程と、
前記コンピュータが、前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行タイヤモデルを作成し、この作成した前記試行タイヤモデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行うことにより、前記試行断面形状の性能評価を行う工程と、
前記コンピュータが、前記設計寸法パラメータの寸法の変更と前記重み強度の値の変更を行なって前記性能評価を行うことにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索して、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定する工程と、を有することを特徴とする構造体断面形状決定方法。 - 前記タイヤ断面は、前記タイヤのタイヤ回転軸を含む平面で切断したときのタイヤ断面である、請求項5に記載の構造体断面形状決定方法。
- 請求項6に記載の構造体断面形状決定方法によって決定されたタイヤ断面形状の外周面の形状に基いてタイヤ金型の内面形状を決定し作製する工程と、
未加硫タイヤを、作製した前記タイヤ金型を用いて未加流タイヤの加硫を行うことにより、タイヤを製造する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法。 - タイヤ断面形状を作成する構造体断面形状作成方法を、コンピュータに実行させる、コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
コンピュータの演算部に、基準とする参照タイヤ断面形状の参照タイヤモデルを作成させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定させ、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行わせることにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成させる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行タイヤモデルを作成させ、この作成した前記試行タイヤモデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行わせることにより、前記試行断面形状の性能評価を行わせる手順と、
前記コンピュータの前記演算部に、前記設計寸法パラメータにおける寸法の変更と前記重み強度の値の変更を行わせて前記性能評価を行わせることにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索させて、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定させる手順と、を有することを特徴とするプログラム。 - タイヤ断面形状を決定する構造体断面形状決定装置であって、
基準とする参照タイヤ断面形状の参照タイヤモデルを作成する第1モデル作成部と、
前記参照タイヤモデルに対して、前記参照タイヤ断面形状の設計寸法パラメータの寸法を変化可能にし、該変化可能な設計寸法パラメータの寸法を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第1領域と、前記参照タイヤ断面形状を有するタイヤの複数の固有振動モードのうちタイヤ断面形状が変形する複数の固有振動モードの、タイヤ断面内の変形形状を基底断面形状としたとき、前記基底断面形状を少なくとも用いてタイヤ断面形状の少なくとも一部を定めるための第2領域と、を設定し、さらに、前記設計寸法パラメータの寸法を変化させる寸法範囲と、前記基底断面形状の重み付け加算を行うための重み強度の値を変化させる重み付け範囲を設定する設定部と、
前記第1領域については前記寸法範囲内で前記寸法を変化させることにより、前記第2領域については前記重み付け範囲内の前記重み強度の値を変化させて前記基底断面形状の重み付け加算を行うことにより、前記第1領域及び前記第2領域を含む試行断面形状を作成する試行断面形状作成部と、
前記試行断面形状をタイヤ断面形状とする試行モデルを作成する第2モデル作成部と、
作成した前記試行モデルを用いてタイヤの性能のシミュレーションを行うことにより、前記試行断面形状の性能評価を行う評価部と、
前記重み付け加算に用いる重み強度の値を変更して前記試行断面形状の前記性能評価を行うことにより、前記性能評価の結果が予め設定された条件を満足する試行断面形状を探索して、前記性能評価に適合したタイヤ断面形状を決定する決定部と、を有することを特徴とする構造体断面形状決定装置。
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