JP2006288343A - 釣り竿用の竿体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 竿先側竿体1の竿尻端部位置の中間層に補強パターン5を配置し、補強パターン5を、竿軸線Xに対して第1傾斜角θ1に沿って引き揃え配置された強化繊維c群を有するプリプレグと、プリプレグの強化繊維c群と竿軸線Xに対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維c群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成してある。
【選択図】 図2
Description
そして、竿先側竿体の竿尻端部を竿尻側竿体の竿先側端部内に圧接させて竿先側竿体の抜け止め機能を有する合わせ部を形成するものであるが、竿先側竿体の竿尻端部等に荷重が集中することになるので、この部分にプリプレグを竿体の全長より短く裁断した補強パターンを巻きつけて強度を向上する構成を採っていた。
この補強パターンは、竿の軸線方向に強化繊維を引き揃えたもの、或るいは、竿の軸線方向に直交する円周方向に強化繊維を引き揃えたものに熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグで構成して設けたものが一般的である。
しかし、このような補強パターンを施した合わせ部であっても、釣り操作を行う状態で合わせ部に掛かる荷重は単純に下向き方向に作用するだけではなく、斜め方向に作用する力も加わるところから、この合わせ部において変形が起こるところから、竿の剛性が低下し、魚の引きに耐えて溜めを作る機能や釣り上げる際の竿の腰の強さ等が低下して、釣り時における自由な操作性を欠いていた。
一方、補強パターンとして、竿の軸線方向に対して強化繊維の方向を傾斜させた状態に引き揃えたプリプレグを裁断して使用するものがある(特許文献1参照)。
そうすると、竿先側竿体の竿尻端部等の合わせ部分に塑性変形が起こったり、強化繊維の剥離や竿体を構成する内側外側等の各層同士のズレ等が発生する等の問題があった。
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記竿尻端部又は前記竿先端部のうち少なくとも前記竿尻端部における外側層と内側層との間の中間に、前記竿体の全長より短い長さに裁断された補強パターンを配置し、前記補強パターンを、竿軸線に対して第1傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
つまり、強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する状態でかつ互いに竿軸線に対して対称に配置したプリプレグ同士を重ね合わせた補強パターンを中間に配置することによって、中間に作用する剪断力に対して対抗力を発揮する。
しかも、前記竿先側竿体の竿尻端部外周面と竿尻側竿体の竿先端部内周面とが圧接する合わせ部分に作用する剪断力に対しても中間に位置する補強パターンが踏ん張り力を発揮するところから、大きな塑性変形等が伝播することを阻止することができ、外側層と内側層との間に剥離が起こることを阻止できる。
この結果、合わせ部分での塑性変形や強化繊維の剥離等が抑制できるとともに、腰の強い竿を提供できるに至った。
請求項1に係る発明に対する作用効果を奏するとともに、次ぎのような作用効果を奏する。
つまり、内側層として円周方向に引き揃えた強化繊維群を有するので、相手側の竿先側竿体の竿尻端部から竿体を楕円状に押し広げる接触圧力を受けても、その円周方向の強化繊維が対抗力を発揮することができる。
しかも、竿先側竿体の竿尻端部に直接接触する竿尻側竿体の竿先端部の内周面に口巻き用補強パターンを設けてある。この構成によって、前記竿尻端部より受ける剪断力に対して口巻き用補強パターンの傾斜姿勢に配置された強化繊維が対抗力を発揮する。
これによって、竿先端部の塑性変形や割れの発生等を阻止できる。
つまり、メインパターンの構成としては、周方向に強化繊維を配置したプリプレグを内側にし、竿軸線方向に強化繊維を配置したプリプレグを外側に位置させて重ね合わせているので、このメインパターンで竿体を楕円状に変形させる荷重に対しては内側の強化繊維で対抗力を発揮させ、竿の軸線方向に作用する引っ張り力に対しては竿軸線方向に配置した強化繊維で対抗力を発揮させて竿の内側においても、竿の円周方向と竿の軸線方向のいずれの方向に作用する力に対しても対抗力を有するものになる。
しかも、メインパターンの竿先端部と竿尻端部との両端部には、強化繊維が竿の軸線方向に対して傾斜する状態で配置されたプリプレグからなる補強パターンが配置されているので、竿先端部と竿尻端部とにおいてはメインパターンと補強パターンとが重ね合わされた状態になっている。したがった、この竿先端部と竿尻端部では強化繊維の方向が、竿軸線方向、竿軸線方向に直交する円周方向、竿軸線方向に傾斜する交差方向となっているので、曲げ力や剪断力、引張力等の多方位荷重に対する対抗力を高めることができる。
このように、内側層部分においても、メインパターンと口巻き補強パターン、竿尻側の補強パターンとを重合させた構成によって、内側層単独でも多方向からの荷重に対する対抗力を高めることができた。
請求項3に係る発明における作用効果の項で記載したように、内側層部分においても、メインパターンと口巻き補強パターン、竿尻側の補強パターンとを重合させた構成によって、内側層単独でも多方向からの荷重に対する対抗力を高めることができる、とする作用効果を奏する。このような作用効果を奏する、メインパターンと口巻き補強パターン、竿尻側の補強パターンとを重合させて一体的にしたものを、その一体的な状態でマンドレルに巻き付けることができるので、製作上でも容易にできたものである。
8本組み等複数本の竿体を備えた振出式渓流竿Aに使用されている構成について説明する。
ここでは、主として、四番竿から元上までの中竿に使用される合わせ部構造について説明する。引き出される側を竿先側竿体1とし、竿先側竿体1を保持する側を竿尻側竿体2として説明する。図1(イ)に示すように、竿先側竿体1を竿尻側竿体2内に出退自在に保持するとともに、図1(ロ)で示すように、竿先側竿体1を引き出した状態で、前記竿先側竿体1の竿尻端部外周面1Aと竿尻側竿体2の竿先端部内周面2Aとを互いに圧接する状態で嵌合させて、竿先側竿体1の伸長状態を保持すべく構成してある。ここに、互いに圧接する竿先端部内周面2Aと竿尻端部外周面1Aとで合わせ部Bを構成してある。
このように巻回したものでは、第1メインパターン3Aと第2メインパターン3Bとで3プライ分の内側層を形成することになる。第1補強パターン5Aはその内側層の外側に位置することになる。
上記した第2補強パターン5Bを第3メインパターン3Cの竿尻端部に一体的に取り付けて、マンドレル6に既に巻回されている第2メインパターン3Bの上から巻回する。
そして、スリットテープ7を巻回した上から竿尻端部に第3補強パターン5Cを巻回する。
図3(へ)に示すように、第4補強パターン5Dの軸線方向に沿った長さは第3補強パターン5Cよりは短く、第3補強パターン5Cの竿先側に位置するように第4補強パターン5Dを巻回する。これによって、第3補強パターン5Cの竿尻側部分は表出することになる。
しかも、第4補強パターン5Dを合わせ部Bの竿先側の肩部分に設けてあるので、この部分の強度を向上させることができ、竿先側竿体1の合わせ部Bにおける竿先側端近傍に発生する「際折れ」と言われている竿の折損を回避できる。
したがって、このプリプレグ5cが合わせ部Bの表面に位置して、相手側の合わせ部Bを構成するプリプレグと圧接する状態となっても、亀の子状の凹部の存在によって、水分が介在しても水分は亀の子状の凹部に溜まるだけで圧接状態を強化する方向には作用せず、合わせ部の固着状態が緩和される。
この後は、焼成した後にマンドレル6を脱芯し、成形テープ9を剥離し、所定長さに竿材を裁断して所望の竿体を形成し、この後竿体表面に研磨処理を施して釣り竿用の竿体が出来上がる。
最初は、竿保持台10に取り付けた上記した8本組渓流竿Aを伸長状態で取り付けて、穂先竿Aaの先端に錘12を吊り下げ、渓流竿Aの撓み度(基準位置からの錘の高さ位置H)を測定した。その結果が次ぎの表1〜表6に示すものである。
テストする渓流竿Aの合わせ部Bに使用される補強パターン5の強化繊維cの配列方向としては、下記の表で示すように、竿軸線方向を挟んで±45°づつ傾斜させているプリプレグを重ね合わせたものを「90°」として表示し、竿軸線方向を挟んで±75°づつ傾斜させているプリプレグを重ね合わせたものを「150°」として表示し、強化繊維cを周方向に沿って引き揃えてあるものを「周方向」として表示して、下記のように測定結果を表わしている。
また、表1〜3までにおいては、「90°(i)」として(i)を付してあり、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(i)=302.3g、150°(i)=299.9g、周方向=302.3g
表1におけるQ1=45°と記載されている部分は、図4(イ)に示すように、竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を45°に設定した状態を示す。また、Q1=0°と記載されている部分は、図4(ロ)に示すように、竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を0°に設定した状態を示す。
つまり、竿ホルダー10Aの個体差の影響はなく、結果としては、「90°(i)」の高さHが一番高く、「周方向」の高さHが一番低い。このことは、「90°(i)」で合わせ部Bでの圧接状態に錘荷重を掛けても変形等が少ないことを示していると考えられ、「周方向」で合わせ部Bでの変形等が多く現れていると考えられる。
また、表4,5においては、「90°(150°)(ii)」「90°(150°)(iii)」として(ii)、(iii)を付してあり、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(ii)=299.6g、90°(iii)=301.3g
150°(ii)=300.8g、150°(iii)=302.0g
周方向=301.6g
表4,5におけるQ1=45°又はQ1=0°と記載されている部分は、前記したように竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を45°又は0°に設定した状態を示す。
尚、ここでは、周方向にのみ強化繊維を配置してある従来品のテスト結果を併記してある。従来品は、周方向(従来品)と表記してある。一方、(i)については、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(i)=302.3g、150°(i)=299.9g
150°(i)=525mm、90°(i)=570mm、周方向(従来品)=515mm
(1) 総じて、塑性変形は確認できなかった(塑性変形が現れているか否かを手早く知る方法としては、引き伸ばした渓流竿Aを平地に載置した状態で転がす方法を採ることができる。塑性変形が現出していれば、転がりが円滑さを欠くところから塑性変形の度合いを見て採ることができる)。
(2) 上記テスト結果では、穂先竿Aaの先端の撓み量が「90°(i)」において変化しているが、これはテスト後に検査して分かったことであるが、三番竿と四番竿の合わせ部Bの補強パターンでは、強化繊維cが互いに90°に交差する方向には設定されていなかったことが検出され、このことが原因になっていると思われる。
(3) 「90°(i)」と「150°(i)」とを比較した場合に、釣上角度Q2の違いにより「90°(i)」の方が小さな釣上角度になっている。これによって、「90°(i)」の方が曲がり難く、反発力が強いものとして評価できる。これは、竿自体の腰の強さを明示していると考えられる。この点については、表1〜3でも示すように、穂先竿Aaに錘12を吊り下げた状態での穂先先端の撓み量を比較すると、「90°(i)」が一番小さくなっていることからも裏付けることができる。
(4) テスト後の外観状態を目視した状態では、「90°(i)」「150°(i)」ではクラック等の欠陥は生じてなかったが、「従来品」では釣上角度Q2が大きくなる程クラックの発生が顕著になることがわかる。
(5) 「周方向(従来品)」のものと、「90°(i)」「150°(i)」とを比較すると、「90°(i)」「150°(i)」の塑性変形度合いが極めて少ない点で、合わせ部Bでの変形が抑制されていることが認知できる
(1) 本発明の構成は、振出竿式の渓流竿、鮎竿等だけでなく、並継式、又は、インロー継ぎ式釣り竿にも適用可能である。
(2) 補強プリプレグ5としては、竿尻端部における中間層だけでなく、竿先端部の中間層に設けてもよい。
(3) 口巻き補助パターン4に、強化繊維cを周方向に配置した補強パターンを重ね合わせて、その補強パターンの上から上記した第1メインパターン5Aを巻回する構成をとってもよい。
(4) 第4補強パターン5Dのプリプレグ5cを外側層の内側に設けてもよい。
1A 竿尻端部外周面
2 竿尻側竿体
2A 竿先端部内周面
3A 第1メインパターン
4 口巻き補助パターン
5 補強パターン
5A、5B 第1補強パターン
5B 第2補強パターン
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
c 強化繊維
X 竿軸線
Claims (4)
- 竿先側竿体の竿尻端部外周面と竿尻側竿体の竿先端部内周面とを互いに圧接する状態で嵌合させて、竿先側竿体を伸長状態に保持すべく構成してある釣り竿用竿体であって、
前記竿尻端部又は前記竿先端部のうち少なくとも前記竿尻端部における外側層と内側層との間の中間に、前記竿体の全長より短い長さに裁断された補強パターンを配置し、前記補強パターンを、竿軸線に対して第1傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成してある釣り竿用竿体。 - 前記内側層を、強化繊維群を竿の円周方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さに裁断した第1メインパターンで構成するとともに、前記内側層よりも更に内側に前記竿体の全長より短い口巻き用補強パターンを配置し、前記口巻き用補強パターンを、竿軸線に対して第4傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグを重ね合わせて構成してある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
- 前記内側層を、強化繊維群を竿の円周方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さに裁断した第1メインパターンと、強化繊維群を竿の軸線方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さで前記第1メインパターンより円周方向に沿った大きな幅に裁断した第2メインパターンとを重ね合わせ、前記第1メインパターンよりも更に内側に竿体の全長より短い口巻き用補強パターンを配置し、前記口巻き用補強パターンを、竿軸線に対して第4傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグを重ね合わせて構成してある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
- 強化繊維群を竿の円周方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さに裁断した第1メインパターンを、強化繊維群を竿の軸線方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さで前記第1メインパターンの円周方向に沿った幅より大きな幅に裁断した第2メインパターンの上に重ね合わせ配置するとともに、前記第1メインパターンの竿先端部の上に請求項2記載の口巻き用補強パターンを重ね合わせ、前記第2メインパターンの竿尻端部の外周面に請求項1記載の補強パターンを重ね合わせて配置し、前記した口巻き補強パターン、前記第1メインパターン、前記第2メインパターン、前記補強パターンを一体的に重合した重合体を前記口巻き補強パターンが最内側に位置する順番でマンドレルに巻回して竿体を形成する釣り竿用の竿体の製造方法。
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