JP4493544B2 - 釣り竿用の竿体 - Google Patents
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そして、竿先側竿体の竿尻端部を竿尻側竿体の竿先端部内に圧接させて竿先側竿体の抜け止め機能を有する合わせ部を形成するものであるが、竿先側竿体の竿尻端部等に荷重が集中することになるので、この部分にプリプレグを竿体の全長より短く裁断した補強パターンを巻きつけて強度を向上する構成を採っていた。
この補強パターンは、竿の軸線方向に強化繊維を引き揃えたもの、或るいは、竿の軸線方向に直交する円周方向に強化繊維を引き揃えたものに熱硬化性樹脂等を含浸させて形成したプリプレグで構成して設けたものが一般的である。
しかし、このような補強パターンを施した合わせ部であっても、釣り操作を行う状態で合わせ部に掛かる荷重は単純に下向き方向に作用するだけではなく、斜め方向に作用する力も加わるところから、この合わせ部において変形が起こる為に、竿の剛性が低下し、魚の引きに耐えて溜めを作る機能や釣り上げる際の竿の腰の強さ等が低下して、釣り時における自由な操作性を欠いていた。
一方、補強パターンとして、竿の軸線方向に対して強化繊維の方向を傾斜させた状態に引き揃えたプリプレグを裁断して使用するものがある(特許文献1参照)。
このような構成においては、その接触部分に作用する接触圧力に対しては対抗力を発揮するものであるが、その接触面に作用する接触圧力や剪断力は合わせ部における外周面より内側にも及ぶところとなる。
そして、その内側においては強化繊維を竿の軸線方向や円周方向に引き揃えただけのプリプレグで形成されているので、竿の軸線に対して傾斜する方向に作用する剪断力に対しては、十分には対抗できず、強度面で十分でないところがあった。
そうすると、小径竿体の竿尻端部等の合わせ部分に塑性変形が起こったり、強化繊維の剥離や竿体を構成する内側外側等の各層同士のズレ等が発生する等の問題があった。
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記竿体を複数層にプリプレグを重ね合わせて構成するとともに、前記複数層のうちの外側に位置する外側層における竿尻端部の外周面に竿体の全長より短い外側補強パターンを配置し、前記外側補強パターンを、竿軸線に対して所定傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成し内側に位置する内外側補強パターンと、竿の周方向に強化繊維群を引き揃えたプリプレグと柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグとを重ね合わせて形成し前記内外側補強パターンよりは外側に位置する外外側補強パターンとで構成し、前記柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグにおいては、前記柔軟性繊維を樹脂層表面より突出させて設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
つまり、内外側補強パターンと外外側補強パターンとを重ね合わせた状態は、一番外側に柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグが配置されており、その内側に竿の周方向に強化繊維群を引き揃えたプリプレグが配置されていることなる。この二つのプリプレグによって外外側補強パターンを構成している。更に、その外外側補強パターンの内側に竿軸線に対して所定傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成した内外側補強パターンが配置された状態となっている。
この構成においては、相手側面に直接圧接する柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグを通して外外側補強パターンに作用する剪断力に対しては、内外側補強パターンにおける竿軸線に対して所定傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群と竿軸線を挟んで対称に配置された強化繊維群とが対抗力を発揮して、受け止めることができる。
しかも、接触面を通して半径方向に働く荷重を受けて竿体が荷重に直交する方向に楕円状に広がろうとするその半径方向荷重に対しては、内外側補強パターンの円周方向に配置された強化繊維が対抗力を発揮することになる。
そして、一番外側に柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグを配置しているので、クロス状に配置した繊維が多方向からの接触荷重に対して対抗力を発揮するとともに、柔軟性繊維が樹脂層より突出する状態にあるので、柔軟性繊維で囲まれた部位に水分を溜める空間が形成されることになる。したがって、空間の形成によって相手側面との密着面積が少なくなっており、合わせ部に入り込んだ水分も前記空間に誘導されて溜まることになるので、竿先側竿体を竿尻側竿体より勢い良く引き出したとしても、合わせ部がきつく圧接して竿先側竿体を竿尻側竿体内に収納することができなくなる、所謂、固着現象を回避できることになる。
この結果、合わせ部分での塑性変形や強化繊維の剥離等が抑制できるとともに、固着現象も未然に回避することのできる腰の強い竿を提供できるに至った。
請求項1に係る発明に対する作用効果を奏するとともに、次ぎのような作用効果を奏する。
つまり、前記外外側補強パターンを前記内外側補強パターンの竿先端側に寄った位置に配置してあるので、竿先側竿体の竿尻端部に形成される合わせ部相当位置の竿先側に寄った位置によって時折見られる切断や亀裂の発生を抑制できることになる。しかも、外外側補強パターンを内外側補強パターンの竿先端より突出しない状態に形成してあるので、竿先側竿体を竿尻側竿体より引き出した状態で、一番外側に位置する外外側補強パターンが竿尻側竿体の竿先端からの突出を抑えることができ、美観の向上にも寄与する。
請求項1に係る発明に対する作用効果を奏するとともに、次ぎのような作用効果を奏する。
つまり、内側層としてのメインパターンの構成としては、周方向に強化繊維を配置したプリプレグを内側にし、竿軸線方向に強化繊維を配置したプリプレグを外側に位置させて重ね合わせているので、このメインパターンで竿体を楕円状に変形させる荷重に対しては内側の強化繊維で対抗力を発揮させ、竿の軸線方向に作用する引っ張り力に対しては竿軸線方向に配置した強化繊維で対抗力を発揮させて竿の内側においても、竿の円周方向と竿の軸線方向のいずれの方向に作用する力に対しても対抗力を有するものになる。
しかも、竿先側竿体の竿尻端部に直接接触する竿尻側竿体の竿先端部の内周面に口巻き用補強パターンを設けてある。この構成によって、前記竿尻端部より受ける剪断力に対して口巻き用補強パターンの傾斜姿勢に配置された強化繊維が対抗力を発揮する。
このように、内側層部分においても、メインパターンと口巻き補強パターンとを重合させた構成によって、その内側層と口巻き補強パターンとの協働でも多方向からの荷重に対する対抗力を高めることができた。
これによって、竿先端部の塑性変形や割れの発生等を阻止できる。
中間層として、竿の軸線方向に沿って強化繊維を引き揃えたプリプレグを配置してあるので、竿体の竿尻端部と竿先端部との間の中間竿部においては、主として、魚が針掛かりした場合の竿に作用する曲げモーメントに起因する竿の軸線方向に沿った引張力に対して、竿の軸線方向に沿って配置された強化繊維が対抗力を発揮して、曲げモーメントに基づく引張力に対する強度向上に寄与している。
外側層として、スリットテープを螺旋状に巻回したものを導入することによって、螺旋状に巻回されているテープ同士の隣接部分に間隙が形成されるところから、スリットテープを巻き終えて焼成処理する際に、樹脂層(マトリックス)から発生する空気等を、前記間隙部分を通して排出でき、焼成後樹脂層が固まった状態では、ボイド等の発生が抑制されている。
しかも、焼成後はテープ同士が接続されて一枚のメインパターンと同様に、一枚ものとしての機能を発揮することとなるので、周方向に配置された強化繊維が対抗力を発揮し、竿体の断面を楕円状に変形させる外力に対する対抗力を高めたものにできる。
8本組み等複数本の竿体を備えた振出式渓流竿Aに使用されている構成について説明する。
ここでは、主として、四番竿から元上までの中竿に使用される合わせ部構造について説明する。引き出される側を竿先側竿体1とし、竿先側竿体1を保持する側を竿尻側竿体2として説明する。図1(イ)に示すように、竿先側竿体1を竿尻側竿体2内に出退自在に保持するとともに、図1(ロ)で示すように、竿先側竿体1を引き出した状態で、前記竿先側竿体1の竿尻端部外周面1Aと竿尻側竿体2の竿先端部内周面2Aとを互いに圧接する状態で嵌合させて、竿先側竿体1の伸長状態を保持すべく構成してある。ここに、互いに圧接する竿先端部内周面2Aと竿尻端部外周面1Aとで合わせ部Bを構成してある。
このように巻回したものでは、第1メインパターン3Aと第2メインパターン3Bとで3プライ分の内側層を形成することになる。第1補強パターン5Aはその内側層の外側に位置することになる。
上記した第2補強パターン5Bを第3メインパターン3Cの竿尻端部に一体的に取り付けて、マンドレル6に既に巻回されている第2メインパターン3Bの上から巻回する。
そして、スリットテープ7を巻回した上から竿尻端部に第3補強パターン5Cを巻回する。
図3(へ)に示すように、第4補強パターン5Dの軸線方向に沿った長さは第3補強パターン5Cよりは短く、第3補強パターン5Cの竿先側に位置するように第4補強パターン5Dを巻回する。これによって、第3補強パターン5Cの竿尻側部分は表出することになる。
しかも、第4補強パターン5Dを合わせ部Bの竿先側の肩部分に設けてあるので、この部分の強度を向上させることができ、竿先側竿体1の合わせ部Bにおける竿先側端近傍に発生する「際折れ」と言われている竿の折損を回避できる。
したがって、このプリプレグ5cが合わせ部Bの表面に位置して、相手側の合わせ部Bを構成するプリプレグと圧接する状態となっても、亀の子状の凹部の存在によって、水分が介在しても水分は亀の子状の凹部に溜まるだけで圧接状態を強化する方向には作用せず、合わせ部の固着状態が緩和される。
この後は、焼成した後にマンドレル6を脱芯し、成形テープ9を剥離し、所定長さに竿材を裁断して所望の竿体を形成し、この後竿体表面に研磨処理を施して釣り竿用の竿体が出来上がる。
最初は、竿保持台10に取り付けた上記した8本組渓流竿Aを伸長状態で取り付けて、穂先竿Aaの先端に錘12を吊り下げ、渓流竿Aの撓み度(基準位置からの錘の高さ位置H)を測定した。その結果が次ぎの表1〜表6に示すものである。
テストする渓流竿Aの合わせ部Bに使用される補強パターン5の強化繊維cの配列方向としては、下記の表で示すように、竿軸線方向を挟んで±45°づつ傾斜させているプリプレグを重ね合わせたものを「90°」として表示し、竿軸線方向を挟んで±75°づつ傾斜させているプリプレグを重ね合わせたものを「150°」として表示し、強化繊維cを周方向に沿って引き揃えてあるものを「周方向」として表示して、下記のように測定結果を表わしている。
また、表1〜3までにおいては、「90°(i)」として(i)を付してあり、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(i)=302.3g、150°(i)=299.9g、周方向=302.3g
表1におけるQ1=45°と記載されている部分は、図4(イ)に示すように、竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を45°に設定した状態を示す。また、Q1=0°と記載されている部分は、図4(ロ)に示すように、竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を0°に設定した状態を示す。
また、表4,5においては、「90°(150°)(ii)」「90°(150°)(iii)」として(ii)、(iii)を付してあり、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(ii)=299.6g、90°(iii)=301.3g
150°(ii)=300.8g、150°(iii)=302.0g
周方向=301.6g
表4,5におけるQ1=45°又はQ1=0°と記載されている部分は、竿Aを竿ホルダー10Aに装着した状態で竿ホルダー10Aの上向き傾斜角Q1を45°又は0°に設定した状態を示す。
尚、ここでは、周方向にのみ強化繊維を配置してある従来品のテスト結果を併記してある。従来品は、周方向(従来品)と表記してある。一方、(i)については、これは竿の自重が次ぎのようなものを使用してテストを行ったことを示している。
90°(i)=302.3g、150°(i)=299.9g
150°(i)=525mm、90°(i)=570mm、周方向(従来品)=515mm
(1) 総じて、塑性変形は確認できなかった(塑性変形が現れているか否かを手早く知る方法としては、引き伸ばした渓流竿Aを平地に載置した状態で転がす方法を採ることができる。塑性変形が現出していれば、転がりが円滑さを欠くところから塑性変形の度合いを見て採ることができる)。
(2) 上記テスト結果では、穂先竿Aaの先端の撓み量が「90°(i)」において変化しているが、これはテスト後に検査して分かったことであるが、三番竿と四番竿の合わせ部Bの補強パターンでは、強化繊維cが互いに90°に交差する方向には設定されていなかったことが検出され、このことが原因になっていると思われる。
(3) 「90°(i)」と「150°(i)」とを比較した場合に、釣上角度Q2の違いにより「90°(i)」の方が小さな釣上角度になっている。これによって、「90°(i)」の方が曲がり難く、反発力が強いものとして評価できる。これは、竿自体の腰の強さを明示していると考えられる。この点については、表1〜3でも示すように、穂先竿Aaに錘12を吊り下げた状態での穂先先端の撓み量を比較してみると、「90°(i)」が一番小さくなっていることからも裏付けることができる。
(4) テスト後の外観状態を目視した状態では、「90°(i)」「150°(i)」ではクラック等の欠陥は生じてなかったが、「従来品」では釣上角度Q2が大きくなる程クラックの発生が顕著になることがわかる。
(5) 「周方向(従来品)」のものと、「90°(i)」「150°(i)」とを比較すると、「90°(i)」「150°(i)」の塑性変形度合いが極めて少ない点で、合わせ部Bでの変形が抑制されていることが認知できる。
(1) 本発明の構成は、振出竿式の渓流竿、鮎竿等だけでなく、並継式、又は、インロー継ぎ式釣り竿にも適用可能である。
(2) 本発明の特徴構成は、外側補強パターンを備えている点にある。したがって、その他の構成としては、竿体を構成する内側層と外側層とを備え、それらが、内側層としては、第1メインパターンだけで構成されているものでもよい。また、外側層としては、スリットテープではなく、前記したメインパターンと同様のシート状プリプレグで構成するものでもよい。
(3) 口巻き補助パターン4に、強化繊維cを周方向に配置した補強パターンを重ね合わせて、その補強パターンの上から上記した第1メインパターン5Aを巻回する構成をとってもよい。
1A 竿尻端部外周面
2 竿尻側竿体
2A 竿先端部内周面
3A 第1メインパターン
3B 第2メインパターン
3C 第3メインパターン
4 口巻き補助パターン
5 補強パターン
5C 内外側補強パターン
5B 外外側補強パターン
θ3 所定傾斜角
c 強化繊維
X 竿軸線
Claims (5)
- 竿先側竿体の竿尻端部外周面と竿尻側竿体の竿先端部内周面とを互いに圧接する状態で嵌合させて、竿先側竿体を伸長状態に保持すべく構成してある釣り竿用竿体であって、
前記竿体を複数層にプリプレグを重ね合わせて構成するとともに、前記複数層のうちの外側に位置する外側層における竿尻端部の外周面に竿体の全長より短い外側補強パターンを配置し、前記外側補強パターンを、竿軸線に対して所定傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグとを重ね合わせて構成した内側に位置する内外側補強パターンと、竿の周方向に強化繊維群を引き揃えたプリプレグと柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグとを重ね合わせて形成し前記内外側補強パターンより外側に位置する外外側補強パターンとで構成し、前記柔軟性繊維をクロス状に編み込んだプリプレグにおいては、前記柔軟性繊維を樹脂層表面より突出させて設けてある釣り竿用竿体。 - 前記外外側補強パターンを前記内外側補強パターンより軸線方向に沿った長さを短く裁断するとともに、前記外外側補強パターンを前記内外側補強パターンの竿先端側に寄った位置でかつ、その竿先端よりは竿先側に突出しない状態に設けてある請求項1記載の釣り竿用の竿体。
- 前記複数層のうちの内側に位置する内側層を、強化繊維群を竿の円周方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さに裁断した第1メインパターンと、強化繊維群を竿の軸線方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さで円周方向に沿った幅が前記第1メインパターンより大きな幅を備える第2メインパターンとを重ね合わせて構成し、前記第1メインパターンよりも更に内側に竿体の全長より短い口巻き用補強パターンを配置し、前記口巻き用補強パターンを、竿軸線に対して所定傾斜角に沿って引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグと、前記プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置された強化繊維群を有するプリプレグを重ね合わせて構成してある請求項1又は2記載の釣り竿用の竿体。
- 前記外側層と前記内側層との間に位置する中間層を、強化繊維群を竿の軸線方向に沿って引き揃えたプリプレグを竿体の全長に相当する長さに裁断した第3メインパターンで構成してある請求項3記載の釣り竿用の竿体。
- 前記外側層を、強化繊維群を竿の円周方向に沿って引き揃えたプリプレグを短幅のテープ状に裁断したスリットテープを、第3メインパターンの全長に亘って螺旋状に巻回して構成してある請求項4記載の釣り竿用の竿体。
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