JP2006214052A - 繊維構造物及びその製造方法、並びにフィラー固着繊維の製造方法 - Google Patents

繊維構造物及びその製造方法、並びにフィラー固着繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維の性質を保持したまま、繊維表面にフィラーを有効に固着したフィラー固着繊維を含み、繊維表面に固着されたフィラーの脱落を防止し、フィラーの比表面積の減少を抑制することができる繊維構造物及びその製造方法、並びにフィラー固着繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維と、その表面のバインダー樹脂を含有する繊維構造物であって、前記バインダー樹脂は、湿熱ゲル化樹脂であり、前記繊維構造物は、湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化した膜状に拡がったゲル化物によって複数本の繊維を被覆した膜状繊維集束部、及び繊維同士の交点において膜状に拡がったゲル化物により接着している膜状繊維接着部のうち少なくとも一部を含んでいる繊維構造物。
【選択図】 図3

Description

本発明は、フィラーを繊維表面に固着したフィラー固着繊維及びフィラー固着繊維を有する繊維構造物に関する。
従来から、繊維の表面にフィラーを付着させる方法として、不織布の表面に乾式法で粒子を担持させた後、繊維の軟化点以上の温度に加熱して粒子を付着させる方法が提案されている(特許文献1)。さらに、粒子を含有する水分散溶液に、シート状またはブロック繊維成型物を含浸、圧搾後、繊維の融点乃至融点より60℃を超えない温度で加熱して粒子を付着させる方法が提案されている(特許文献2)。
そして、従来からフィラーを繊維表面に付着した繊維製品は、様々な用途に使用されている。例えば、研磨や清浄化を目的とする繊維や布は、清浄化を目的とする繊維として、歯間を磨くフィラメント繊維(デンタルフロス)が一般的に良く知られている。また工業用途としては、レンズ、半導体、金属、プラスチック、セラミック、ガラスなど様々な分野で研磨布又は研磨紙が使用されている。さらに家庭用又は業務用キッチンなどにおいても研磨布は使用されている。
また、揮発性有機化合物(以下、VOCと略称する)の吸入によるシックハウス症候群等のアレルギー症状の発生が増加しているため、VOCガス等の有害ガスを吸着するガス吸着材が要望されている。前記ガス吸着材としては、例えば特許文献3に、VOCガス全般に対して吸着効果を有するガス吸着シートが提案されている。特許文献3に提案されたガス吸着シートは、2枚のシート材の間に活性炭粒子を挟持させ固定化させるとともに、前記シート材のうち少なくとも一方のシート材に吸着剤粒子を固定化させている。吸着剤粒子の固定化方法としては、(1)バインダー樹脂溶液に吸着剤粒子を混合して一方のシート材にコーティングし、その上に他方のシート材を重ねる方法や、(2)予め一方のシート材にホットメルト剤等をコーティングし、その上に吸着剤粒子を散布し、更にその上に、他方のシート材を重ねる方法等が例示されている。
さらに、工場廃水等を浄化する水質浄化材として、繊維状の活性炭、すなわち活性炭素繊維を用いた様々な水質浄化材が提案されている(例えば特許文献4等)。しかし、活性炭素繊維を用いた水質浄化材では、使用中に活性炭素繊維を構成する活性炭が脱落して、浄化性能が劣化するおそれがある。更に、浄化後の液体中に脱落した活性炭が混入するおそれがある。他方、活性炭粒子等の有機物吸着性粒子を、不溶性のバインダーを介してシート状部材に固着させた水質浄化フィルターが、特許文献5に提案されている。
特開平7−268767号公報 特公昭51−22557号公報 特開2000−246827号公報 特開平9−234365号公報 特開平9−201583号公報
しかし、前記特許文献1〜2のように、繊維を軟化点又は融点以上の温度に加熱すると、繊維は収縮して硬くなり、しかも軟化点程度では粒子を繊維に有効に固着させることはできず、融点以上の温度にする必要があり、このようにすると繊維形態を保てなくなる問題もあった。さらに、繊維は収縮して硬くなり、ひいては不織布にしたときに収縮を伴って不織布形態を保てなくなる問題があった。
また、前記特許文献3に提案されたガス吸着シートにおける前記(1)の固定化方法では、吸着剤粒子がバインダー樹脂溶液に埋没してしまい、充分なガス吸着効果が得られなくなるおそれがあった。また、前記(2)の固定化方法では、ホットメルト剤と吸着剤粒子との接触面積が少ないため、吸着剤粒子が脱落するおそれがあった。さらに、特許文献3に提案されたガス吸着シートは、通気性を高めるために、前記2枚のシート材のうち、少なくとも一方に多孔質シート材を使用しているが、前記2枚のシート材の間に活性炭粒子を挟持させる際、活性炭粒子が脱落しないように、活性炭粒子の粒径を多孔質シート材の最大孔径より大きくする必要があった。そのため、活性炭粒子には、100μm〜1000μmの粒径のものが使用されており、活性炭粒子の比表面積が小さいために充分なガス吸着効果が得られなくなるおそれがあった。
前記特許文献5に提案された水質浄化フィルターでは、粉粒体状の水質浄化材がバインダーに埋没してしまい、粒子の比表面積が減少して、充分な浄化性能が得られなくなるおそれがあった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、本来の繊維の性質を保持したまま、繊維表面にフィラーを有効に固着したフィラー固着繊維を含み、繊維表面に固着されたフィラーの脱落を防止し、フィラーの比表面積の減少を抑制することができる、研磨材、ガス吸着材、水質浄化材など様々な用途に有用な繊維構造物及びその製造方法、並びにフィラー固着繊維の製造方法を提供する。
本発明の繊維構造物は、繊維と、その表面のバインダー樹脂を含有する繊維構造物であって、前記バインダー樹脂は、湿熱ゲル化樹脂であり、前記繊維構造物は、湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化した膜状に拡がったゲル化物によって複数本の繊維を被覆した膜状繊維集束部、及び繊維同士の交点において膜状に拡がったゲル化物により接着している膜状繊維接着部のうち少なくとも一部を含むことを特徴とする。
本発明のフィラー固着繊維の製造方法は、繊維と、その表面のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に固着されたフィラーを含むフィラー固着繊維の製造方法であって、前記繊維及び前記バインダー樹脂が湿熱ゲル化繊維であり、前記湿熱ゲル化繊維を、前記フィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で繊維を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させたゲル化物によって前記フィラーを繊維表面に固着することを特徴とする。
本発明の繊維構造物の製造方法は、繊維と、その表面のバインダー樹脂を含有する繊維構造物の製造方法であって、前記繊維と前記バインダー樹脂を含有する被処理繊維構造物に、水分を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で被処理繊維構造物を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させることを特徴とする。
本発明のフィラー固着繊維を含有する繊維構造物の製造方法は、繊維と、その表面のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に固着されたフィラーを含むフィラー固着繊維を含有する繊維構造物の製造方法であって、前記繊維と前記バインダー樹脂を含有する被処理繊維構造物に、前記フィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で被処理繊維構造物を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させたゲル化物によって前記フィラーを繊維表面に固着することを特徴とする。
本発明の繊維構造物は、面圧をかけなくても、膜状に拡がったゲル化物によって被覆された膜状繊維集束部、及び繊維同士の交点において膜状に拡がったゲル化物により接着している膜状繊維接着部のうち少なくとも一部を含んでいるので、膜状繊維集束部で繊維構造物の強度を上げる役目を果たし、膜状繊維接着部を含む部分では適度な通気性を保持する役目を果たし、強度と通気性のバランスのよい繊維構造物を得ることができる。さらに、面圧をかけていないので、本来の繊維構造物の持つ嵩高性及び柔軟性等を低下させることが少ない。
前記繊維構造物がフィラーを含む場合、繊維表面にフィラーがゲル化物によって固着しているので、フィラーが容易に脱落することなく、繊維表面に露出した状態で固着することができる。また、本発明の繊維構造物は、機能性を有するフィラーがゲル化物によって繊維表面に有効に固着されるので、繊維構造物本来の性能を維持しており、従来から繊維構造物が使用されている用途に、さらに機能性を付与した繊維構造物を提供することができる。さらに、膜状のゲル化物にフィラーが固着するので、フィラーの固着面積が増大されてフィラーの機能性をより発揮することができる。
本発明のフィラー固着繊維及び繊維構造物の製造方法によれば、繊維構造物へ水分又は水分とフィラーを付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で繊維を接触させてスチーム処理(以下、「パッドスチーマー法」という)を施すので、繊維構造物に面圧がかかることなく、フィラーをゲル化物によって繊維表面に有効に固着することができ、少量のフィラーでも優れた効果を発揮することができる。また、パッドスチーマー法によれば、ゲル加工と同時に乾燥工程の予備処理的な役目も果たし、乾燥工程の効率化も図ることができる。
本発明の繊維構造物において、湿熱ゲル化樹脂とは、水分存在下で、加熱することによってゲル化し得る樹脂のことをいう。ゲル化し得る樹脂とは、50℃以上の温度でゲル化膨潤しゲル化物となって繊維構造物の構成繊維を固定可能な樹脂のことを示す。本発明でいうゲル化物とは、湿熱ゲル化樹脂が湿熱によってゲル化したのち固化した樹脂(固化物)のことを示す。本発明の繊維構造物は、そのゲル化物が均一かつ高流動化して膜状のゲル化物を形成している。膜状のゲル化物は、湿熱ゲル化樹脂がゲル化して高流動化し、複数本の繊維を被覆するように流動して固化することによって、複数本の繊維が束状になって連結し、膜状繊維集束部が形成される。また、繊維同士の交点においても、膜状に拡がったゲル化物により接着した膜状繊維接着部が形成される。本発明の繊維構造物は、膜状繊維集束部及び膜状繊維接着部のうち少なくとも一部を含んでいればよく、両方が存在するとその強度及び通気性が高く、好ましい。膜状繊維集束部及び/又は膜状繊維接着部は、後述するパッドスチーマー法を用いて、スチーム処理温度等を調整することにより、その形状等を調整することができる。
前記膜状繊維集束部において集束された繊維の本数は、5〜60本である集束部を含むことが好ましい。より好ましい繊維本数は、5〜40本である。繊維本数が5本未満であると、強度不足になる場合があり、繊維本数が60本を越えると、集束部が密になり、風合いが硬くなったり、通気性が悪くなったりする場合がある。なお、前記膜状繊維集束部において集束された繊維本数は、例えば、繊維構造物の繊維断面を走査電子顕微鏡を用いて50〜200倍に拡大することにより確認することができる。
本発明の繊維構造物がフィラーを含む場合は、そのゲル化物によってフィラーが繊維表面に固着される。また、フィラーは、前記膜状繊維集束部及び/又は膜状繊維接着部においても固着されていることが好ましい。フィラーの固着面積が増大するからである。
前記湿熱ゲル化樹脂の好ましいゲル化温度は、50℃以上である。より好ましいゲル化温度は、80℃以上である。50℃未満でゲル化し得る樹脂を用いると、ゲル加工の際、ロール等への粘着が激しくなって繊維構造物の生産が難しくなるか、夏場や高温環境下での使用ができなくなる場合がある。なお、「ゲル加工」とは、湿熱ゲル化樹脂をゲル化させる加工のことをいう。
前記湿熱ゲル化樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であることが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂は、湿熱によってゲル化でき、他の繊維及び/又は他の熱可塑性合成繊維成分を変質させないからである。
エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とは、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を鹸化することによって得られる樹脂であり、その鹸化度は95%以上が好ましい。より好ましい鹸化度は、98%以上である。また、好ましいエチレン含有率は、20モル%以上である。好ましいエチレン含有率は、50モル%以下である。より好ましいエチレン含有率は、25モル%以上である。より好ましいエチレン含有率は、45モル%以下である。鹸化度が95%未満ではゲル加工の際、ロール等への粘着により繊維構造物の生産が難しくなる場合がある。また、エチレン含有率が20モル%未満の場合も同様に、ゲル加工の際、ロール等への粘着により繊維構造物の生産が難しくなる場合がある。一方、エチレン含有率が50モル%を超えると、湿熱ゲル化温度が高くなり、加工温度を融点近傍まで上げざるを得なくなり、その結果、繊維構造物の寸法安定性に悪影響を及ぼす場合がある。
湿熱ゲル化樹脂の形態は、パウダー状、チップ状、繊維状等が挙げられる。特に、湿熱ゲル化樹脂は、繊維状であることが好ましい。繊維状の湿熱ゲル化樹脂(以下、「湿熱ゲル化繊維」という)としては、湿熱ゲル化樹脂を含む繊維か、又は湿熱ゲル化樹脂繊維成分と、他の熱可塑性合成繊維成分とを含む複合繊維(以下、「湿熱ゲル化複合繊維」という。)を用いる。これにより、他の繊維又は少なくとも他の熱可塑性合成繊維成分は、繊維の形態を保ち、かつ湿熱ゲル化樹脂がゲル化されてゲル化物を形成する。フィラーを含む場合は、フィラーを固着させるバインダーとしての作用機能を発揮する。そして、フィラーは、湿熱ゲル化樹脂繊維成分又は繊維の表面に接着された湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化したゲル化物によって固着されている。好ましくは、フィラーは露出して固着されている。また、湿熱ゲル化樹脂繊維成分又は繊維の表面に接着された湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化したゲル化物によって、湿熱ゲル化繊維同士及び/又は他の繊維は接着されている。
本発明の繊維構造物は、前記繊維及び前記バインダー樹脂を含むものである。本発明の繊維構造物は、糸、繊維束、繊維塊、不織布、織編物、ネット等の繊維により形成されたものをいう。特に、不織布は、加工性が高いため、様々な用途へ適用することができる。前記不織布の形態としては、特に限定されるものではなく、その用途、固着するフィラーの大きさ等を考慮し、適宜選択される。不織布の製法としては、例えば、ニードルパンチ法、水流交絡法、エアレイド法、スパンボンド法、メルトブロー法、湿式法などが挙げられる。
前記繊維及び前記バインダー樹脂の好ましい組み合わせとしては、
(I)湿熱ゲル化樹脂繊維成分と他の熱可塑性合成繊維成分とを含む複合繊維、
(II)前記複合繊維と他の繊維を混合したもの、
(III)前記複合繊維と湿熱ゲル化樹脂を混合したもの、及び
(IV)湿熱ゲル化樹脂と他の繊維を混合したもの
から選ばれる少なくとも一つが挙げられる(以下、「形態(I)〜(IV)」という。)。前記形態(I)は、「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化樹脂繊維成分とし、「繊維」を他の熱可塑性合成繊維成分とした湿熱ゲル化複合繊維である。前記形態(II)は、「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化複合繊維とし、「繊維」を他の繊維としこれを混合したものである。前記形態(III)は、「繊維」を湿熱ゲル化複合繊維とし、さらに「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化樹脂としこれを混合したものである。前記形態(IV)は、「バインダー樹脂」を前記湿熱ゲル化複合繊維以外の形態を採る湿熱ゲル化樹脂(例えば、湿熱ゲル化樹脂単独の繊維、パウダー状、チップ状)とし、「繊維」を他の繊維としこれを混合したものである。
前記形態(I)〜(III)に用いられる湿熱ゲル化複合繊維は、湿熱ゲル化樹脂繊維成分が露出しているかまたは部分的に区分されている複合繊維であることが好ましい。その複合形状は、同心円芯鞘型、偏心芯鞘型、並列型、分割型、海島型等を指す。特に同心円芯鞘型は、湿熱ゲル化樹脂繊維成分が流動化しやすい点で好ましい。フィラーを含む場合は、フィラーが繊維表面に固着しやすいので好ましい。また、その断面形状は、円形、中空、異型、楕円形、星形、偏平形等いずれであってもよいが、繊維製造の容易さから円形であることが好ましい。分割型複合繊維はあらかじめ高圧水流等を噴射して部分的に分割しておくのが好ましい。このようにすると、分割された湿熱ゲル化樹脂繊維成分は、湿熱処理によりゲル化し、ゲル化物を形成して他の繊維の表面に付着し、フィラーを固着する。すなわち、バインダーとして機能する。
前記湿熱ゲル化複合繊維に占める湿熱ゲル化樹脂繊維成分の割合は、10mass%以上90mass%以下の範囲内であることが好ましい。より好ましい湿熱ゲル化樹脂繊維成分の含有量は、30mass%以上である。より好ましい湿熱ゲル化樹脂繊維成分の含有量は、70mass%以下である。湿熱ゲル化樹脂繊維成分の含有量が10mass%未満であると、ゲル化物自体が少なく、フィラーが固着しにくくなる傾向にある。湿熱ゲル化樹脂繊維成分の含有量が90mass%を超えると、複合繊維の繊維形成性が低下する傾向にある。
前記湿熱ゲル化複合繊維における他の熱可塑性合成繊維成分は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等いかなるものであってもよいが、好ましくはポリオレフィンである。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン等がある。湿熱ゲル化樹脂繊維成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を使用した場合、溶融紡糸による複合繊維(コンジュゲート繊維)を形成しやすい。
また、他の熱可塑性合成繊維成分として、湿熱ゲル化樹脂繊維成分をゲル化させる温度よりも高い融点を有する熱可塑性合成繊維成分を用いることが好ましい。他の熱可塑性合成繊維成分がゲル化物を形成させる温度よりも低い融点を有する熱可塑性合成繊維成分であると、他の熱可塑性合成繊維成分自体が溶融して硬くなる傾向にあり、例えば不織布にしたときに収縮を伴って不均一になることがある。
前記湿熱ゲル化複合繊維が繊維構造物に占める割合は、膜状のゲル化物を形成するか、又はフィラーを固着することができる量であれば特に限定されないが、ゲル化物によって繊維を固着する及び/又はフィラーを有効に固着するのに要する複合繊維の割合は、10mass%以上であることが好ましい。より好ましい複合繊維の割合は、30mass%以上である。さらに好ましい複合繊維の割合は、50mass%以上である。例えば、繊維構造物において、複合繊維を含むウェブが両表面に存在し、内部に他の繊維が存在している場合、複合繊維を含むウェブにおける含有量のことを指す。
前記形態(III)では、前記湿熱ゲル化複合繊維に、さらに湿熱ゲル化樹脂を含有させて複合繊維の表面にゲル化物を形成させることも可能である。これにより、フィラーの固着効果をより向上させることができる。
前記形態(II)または前記形態(IV)に用いられる他の繊維としては、レーヨン等の化学繊維、コットン、麻、ウール等の天然繊維等、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を単独又は複数成分とする合成繊維等、任意なものを選択して使用できる。
前記形態(IV)において、湿熱ゲル化樹脂は、繊維構造物に対して1mass%以上90mass%以下の範囲内で含有させるのが好ましい。より好ましい含有量は、3mass%以上である。より好ましい含有量は、70mass%以下である。湿熱ゲル化樹脂の含有量が1mass%未満であると、ゲル化物によって他の繊維を接着することが困難となるか、あるいはフィラーを固着しにくくなる傾向にある。湿熱ゲル化樹脂の含有量が90mass%を超えると、繊維形状が消失してフィルム状になるか、あるいはフィラーがゲル化物に埋没することがある。
本発明でいうフィラーとは、粒子状、短繊維状など、繊維構造物の内部に保持することができる形状のものであれば特に限定されない。例えば、フィラーとしては、無機フィラーであることが好ましい。無機フィラーであれば、研磨剤として用いた場合、研磨作用が大きいからである。前記無機フィラーとしては、アルミナ、シリカ、トリポリ、ダイヤモンド、コランダム、エメリー、ガーネット、フリント、合成ダイヤ、窒化硼素、炭化珪素、炭化硼素、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、ケイ酸コロイド、炭素、グラファイト、ゼオライト及び二酸化チタン、カオリン、クレイなどを挙げることができる。これらの粒子は適宜混合して使用することもできる。
前記フィラーとしては、有機フィラーも用いることができる。有機フィラーとしては、例えば、スチレン系,アクリル系,メタクリル系,メラミン系,フェノール系,エポキシ系,フッ素系,シリコーン系,ポリエステル系,ポリオレフィン系などの樹脂が挙げられる。
前記フィラーがガス吸着性フィラー及び/又は有機物吸着性フィラーの場合、空気中の気体物質を吸着する機能を有するものであれば特に限定されないが、活性炭粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性白土、層状リン酸塩等の多孔質粒子、これらの多孔質粒子に化学吸着剤を担持させた多孔質粒子等が好ましい。多孔質粒子の中では、活性炭粒子が特に好ましい。
前記フィラーがイオン交換性フィラーの場合、活性炭,ゼオライト,シリカゲル,活性白土,層状リン酸塩等の多孔質粒子にアルカリ性物質や酸性物質を含ませた多孔質粒子、及びスチレン系,アクリル系,メタクリル系などのカチオン交換樹脂、スチレン系,アクリル系などのアニオン交換樹脂等の有機高分子系イオン交換樹脂などを用いることができる。
さらに前記研磨剤、ガス吸着性粒子及び有機物吸着性粒子以外にも、例えば乾燥剤としてのシリカゲル等、光触媒として二酸化チタン等、抗菌剤としての銀イオン,亜鉛イオン,銅イオン等の抗菌性金属イオンを担持したゼオライト,リン酸ジルコニウム,ハイドロキシアパタイト等、蓄熱剤や吸発熱剤などをマイクロカプセル化したフィラー、ウイルス吸着/分解剤、消臭剤、導電剤、制電剤、調湿剤、防虫剤、防カビ剤、難燃剤等の機能性フィラーを1又は2以上用いることができる。
前記フィラーが粒子状である場合、その平均粒子径は、0.01〜1000μmの範囲であることが好ましい。より好ましい平均粒子径は、0.1μm以上であり、さらにより好ましくは1μm以上である。より好ましい平均粒子径は、80μm以下であり、さらにより好ましくは、50μm以下である。平均粒子径が0.01μm未満では、フィラーがゲル化物に埋没することがある。一方、平均粒子径が1000μmを超える場合は、フィラーの比表面積が小さくなり、フィラーの機能性が十分に発揮できない場合がある。特にフィラーの平均粒子径が100μm以下の場合は、比表面積が大きくなるので少量のフィラーでも充分な機能を発揮することができ、好ましい。
前記フィラーが短繊維状である場合、その繊維長または繊維断面長のうち大きい方の長さ(以下、短繊維長さという)は、0.1〜1000μmの範囲であることが好ましい。より好ましい短繊維長さは、10μm以上である。より好ましい短繊維長さは、500μm以下である。その繊維長は、上記範囲を満たすとともに繊維構造物の繊維長に対して30%程度であることが好ましい。短繊維長さが0.1μm未満では、フィラーがゲル化物に埋没することがある。一方、短繊維長さが1000μmを超える場合は、繊維長が長いため、分散液に均一に分散せず、またフィラーの比表面積が小さくなり、フィラーの機能性が十分に発揮できない場合がある。
前記繊維構造物は、フィラーの機能性を効率良く発揮させるために、フィラーの固着量が繊維構造物1m2あたり2g以上であることが好ましく、10g以上であることがより好ましく、20g以上であることが特に好ましい。また、フィラーの固着量の上限は繊維構造物に対して5倍程度が好ましい。
前記繊維構造物は、その片面或いは両面に、他のシートを積層してもよい。他のシートを積層する場合、例えば水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与する前に積層しても良いし、水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与した後に積層しても良い。水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与した後に積層する場合は、湿熱処理前に積層しても良いし、湿熱処理後乾燥前に積層しても良いし、湿熱処理後乾燥後に積層しても良い。例えば、水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与する前の繊維構造物の片面に他のシートを積層した場合、他のシートの機能を付与することができ、例えば成型性、接着性を向上させることができる。例えば、本発明の繊維構造物に液体を含ませるような研磨不織布として使用する場合、フィラー固着繊維が両表面にウェブ状に存在し、内部に親水性繊維を存在させることが好ましい。前記親水性繊維は、レーヨン繊維、コットン繊維及びパルプから選ばれる少なくとも一つの繊維であることが好ましい。水、界面活性剤、洗浄剤等の液体を付与して研磨する際に、水分の保持性が高いからである。
また、水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与する前の繊維構造物の両面に他のシートを積層した場合、例えばフィラーの固着が不十分であったときでもフィラーの脱落を抑制したり、用途によりフィラーの色を隠蔽する効果を与えたり、フィラーの脱落を抑制することで製造工程の清掃作業の効率化が図れる場合もある。さらに、他のシートの機能を付与することができ、例えば成型性、接着性を向上させることができる。例えば、ガス吸着材や水質浄化フィルターなどフィラーの脱落やフィラーの色が懸念される用途において好ましい。
水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与した後の繊維構造物についても、前述と同じ理由により、その片面あるいは両面に、他のシートを積層することができる。より好ましい積層の形態は、例えば、水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与した後の繊維構造物の両面に、熱接着性繊維を含んだシートを熱処理により一体化したものである。水溶液あるいはフィラー分散溶液を付与する際、水溶液あるいはフィラー分散溶液に浸漬することにより他のシートが汚れることを防ぐことができ、フィラーの脱落を防ぐこともできる。
他のシートとしては、例えば、スパンボンドや水流交絡不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布やフィルムなどが挙げられる。他のシートの目付は、15〜300g/m2であることが好ましく、20〜100g/m2であることがより好ましい。
本発明の一実施形態として、例えばフィラーとしてガス吸着性フィラーを用いたガス吸着材は、不織布に限定されず、前記フィラー固着繊維を複数束ねて形成された繊維束をガス吸着部とするガス吸着モジュールとしてもよい。また前記フィラー固着繊維の集合物を円筒状に巻きつけたものや、プリーツ状に成形したものを、ガス吸着フィルターとして用いることもできる。またフィラーとして有機物吸着性フィラーを用いた水質浄化材は、不織布に限定されず、前記フィラー固着繊維を複数束ねて形成された繊維束を有機物吸着部とする水質浄化モジュールとしてもよい。また前記フィラー固着繊維の集合物を円筒状に巻きつけたものや、プリーツ状に成形したものを、水質浄化フィルターとして用いることもできる。
次に、本発明の繊維構造物の製造方法について説明する。本発明におけるスチーム処理は、蒸気雰囲気で施される。前記湿熱処理とは、バインダー樹脂を付与した繊維、湿熱ゲル化繊維成分を含む繊維、又はこれらの繊維を含む処理前の繊維構造物(以下、「被処理物」という)に、水溶液またはフィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を付与した後に、所定の水分率に調整後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で繊維構造物を接触させる方法(以下、「パッドスチーマー法」という)のことを示す。パッドスチーマー法によれば、蒸気吹き出し口より吐出された蒸気が直接繊維構造物に接触することなく、蒸気雰囲気中でスチーム処理できるので、湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化することにより、均一なゲル化物を形成することができる。また、連続運転をする上においても都合がよい。更に、パッドスチーマー法であれば、温度のコントロールが容易なので、均一な膜状のゲル化物を形成することもできる。フィラーを含む場合は、フィラーの機能を維持したままで、ゲル化物によってフィラーを繊維表面に固着することができる。パッドスチーマー法であれば、スチーム処理温度、処理時間等を調整することにより、様々な状態のゲル化物を形成することができ、面圧を加えることなくゲル化物を膜状に広げることも可能である。パッドスチーマーは、目的に応じて繊維構造物の強度や通気度などをコントロールすることができるので、例えば、繊維形状を維持したゲル化樹脂上のフィラーの固着が不充分な場合は、パッドスチーマーの温度を上げてやればゲル化樹脂の流動性が良くなり、様々な形の膜状に拡がったゲル化物を形成させて、フィラーの固着を強固にすることができる。また、かかる方法によれば、パッドスチーマーを使用しているので、ゲル加工と同時に乾燥工程の予備処理的な役目も果たし、乾燥工程の効率化を図ることができる。
前記被処理物には、親水処理を施してもよい。親水処理を施すと、被処理物が疎水性繊維を含む場合に、被処理物を略均一に水分を付与することができる。その結果、湿熱ゲル化樹脂の周囲に略均一に水分が存在して、略均一に湿熱ゲル化することができる。フィラーを含む場合は、フィラーが固着しやすくなる。親水処理としては、界面活性剤処理、コロナ放電法やグロー放電法、プラズマ処理法、電子線照射法、紫外線照射法、γ線照射法、フォトン法、フレーム法、フッ素処理法、グラフト処理法、及びスルホン化処理法等が挙げられる。
前記繊維構造物の好ましい目付の範囲は、10〜1000g/m2であり、より好ましい目付の範囲は、20〜200g/m2であり、更に好ましい目付の範囲は、30〜100g/m2である。目付が10g/m2未満であると、固着されるフィラーの量が少なくなり、充分な機能を発揮できない場合がある。目付が1000g/m2を超えると、フィラーを付与する際に、フィラーが繊維構造物の内部に入り込みにくくなり、フィラーの固着量が少なくなることがある。
前記繊維構造物において他の繊維構造物を積層する場合、例えば、水溶液又はフィラー分散溶液を接触させる前に積層してもよいし、水溶液又はフィラー分散溶液を接触させた後、積層してもよい。フィラー分散溶液を接触させた後に、他の繊維構造物を積層した方が、フィラーの脱落を防ぐことができる点で好ましい。
前記被処理物に水分を付与する場合は、被処理物に付与する水分の割合が(以下、「水分率」という)、20mass%〜1500mass%であることが好ましい。より好ましい水分率は、30mass%以上である。より好ましい水分率は、1000mass%以下である。さらにより好ましい水分率は、40mass%以上である。さらにより好ましい水分率は、900mass%以下である。水分率が20mass%未満であると、湿熱ゲル化が充分に起こらないことがある。一方、水分率が1500mass%を超えると、湿熱処理が繊維構造物の表面と内部との間で均一に行われず、湿熱ゲル化の度合いが不均一となる傾向にある。なお、水分の付与方法としては、スプレー、水槽への浸漬等公知の方法で行うことができる。
前記被処理物にフィラー分散溶液を付与する場合は、被処理物に付与するフィラー分散液の割合が(以下、「ピックアップ率」という)、20mass%〜1500mass%であることが好ましい。より好ましいピックアップ率は、30mass%以上である。より好ましいピックアップ率は、1000mass%以下である。さらにより好ましいピックアップ率は、40mass%以上である。さらにより好ましいピックアップ率は、900mass%以下である。ピックアップ率が20mass%未満であると、湿熱ゲル化が充分に起こらないことがある。一方、ピックアップ率が1500mass%を超えると、湿熱処理が繊維構造物の表面と内部との間で均一に行われず、湿熱ゲル化の度合いが不均一となる傾向にある。水分の付与方法としては、スプレー、水槽への浸漬等公知の方法で行うことができる。
前記フィラー分散溶液のフィラー濃度は、使用する繊維又は繊維構造物の目付、フィラーの固着量、フィラー分散溶液の温度及び粘度等により適宜設定すればよい。好ましいフィラー濃度は、0.1〜75mass%であり、より好ましくは1〜50mass%である。フィラー濃度が0.1mass%未満であると、フィラーの機能を充分に発揮されない場合があり、フィラー濃度が75mass%を超えると、均一に付着されない場合がある。
前記パッドスチーマー法におけるスチーム処理温度は、湿熱ゲル化樹脂又は湿熱ゲル化樹脂繊維成分のゲル化温度以上融点−20℃以下であることが好ましい。より好ましい湿熱処理温度は80〜120℃であり、さらにより好ましくは90〜110℃である。最も好ましい湿熱処理温度は95〜105℃である。湿熱処理温度がゲル化する温度未満であると、ゲル化が起こらず、フィラーの固着が充分になされない場合があり、湿熱ゲル化樹脂の融点−20℃を超えると、湿熱ゲル化樹脂の融点に近くなるため、繊維構造物にしたときに収縮を引き起こすことがある。
前記パッドスチーマー法は、蒸気吹き出し口より吐出された蒸気が直接繊維構造物に接触することなく、蒸気雰囲気中でスチーム処理できるので、均一に湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化することができ好ましい。
前記スチーム処理を施した繊維構造物は、そのまま乾燥処理を行ってもよいし、一旦水洗を行った後、乾燥処理を行ってもよいし、一旦乾燥させた後水洗を行いその後で乾燥処理を行ってもよい。水洗を行う場合は、一旦乾燥させた後、水洗を行いその後で乾燥処理を行う方が、フィラーの固着量が多くなるので都合がよい。
前記乾燥処理温度は、繊維及び繊維構造物が乾燥する温度であれば、特に限定されない。また、この乾燥処理時においては、必要に応じて繊維構造物を、幅方向(機台に垂直な方向)に拡幅しながら乾燥処理を行ってもよい。繊維構造物を幅方向に拡幅することにより、目付の調整、及び長さ方向と幅方向の寸法安定性等が付与することができる。
なお、本発明のフィラー固着繊維及び繊維構造物は、前記パッドスチーマー法により湿熱処理されるが、前記パッドスチーマー法を繰り返し行っても良いし、他の湿熱処理、例えば、繊維又は繊維構造物に加熱したフィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を接触させる方法(以下、「加熱液接触法」という)、フィラー分散溶液を付与した後加熱体に接触させる方法(以下、「加熱体接触法」という)などを組み合わせてもよい。また、繊維構造物のフィラーの脱落をさらに抑えるために、前記加熱液接触法により湿熱処理した後、ロール等で圧縮処理をしてもよい。
次に、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態においては、不織布を用いた場合について説明する。
図1A〜Cは、本発明の一実施形態におけるフィラー固着繊維の断面図である。図1Aは、ポリプロピレンを芯成分2とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を鞘成分1とした複合繊維5であって、鞘成分1はバインダー樹脂として機能し、鞘成分1の中にフィラー3を固着させた例である。図1Bは、ポリプロピレンを芯成分2とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を鞘成分1とした複合繊維6であって、鞘成分6の外側にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂をバインダー4として付着させ、このバインダー4中にフィラー3を混合させた例である。図1Cは、ポリプロピレン8とエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂7を多分割に配置した複合繊維9とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂7はバインダー樹脂として機能し、その周辺部内にフィラー3を固着させた例である。
図2は、本発明の一実施形態における3層構造の不織布の断面図で、外側にポリエステル繊維とPP/PE芯鞘型複合繊維とを混綿した繊維11,11を配置し、内側にフィラー固着繊維層12を配置させた例である。
図3は、本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の製造方法の一例工程図である。繊維31(又は不織布31)を、槽32内の水溶液またはフィラー(例えばガス吸着性フィラー)を含む又はフィラー(例えばガス吸着性フィラー)とガス吸着性化合物を含むフィラー分散溶液33に含浸し、絞りロール34で絞り、下から蒸気が噴き出し室内に蒸気が均一に充満しているパッドスチーマー35でスチーム処理し、必要により乾燥、水洗、脱水処理(図示せず)したものを、乾燥機41で乾燥させて巻き取り機39で巻き取る。なお、パッドスチーマー35でスチーム処理する際、繊維31(又は不織布31)には、噴き出した蒸気は直接当たらない。
図4〜6は、本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)とその構成繊維にガス吸着フィラーが固着している状態を示す。このうち、図4は不織布を示す走査電子顕微鏡平面写真(倍率200)、図5は同断面写真(倍率200)、図6は同不織布表面の繊維表面拡大写真(倍率2000)である。
図7、8は、本発明の別の一実施形態における不織布(ガス吸着材)とその構成繊維にガス吸着性化合物が固着している状態を示す。このうち、図7は不織布を示す走査電子顕微鏡平面写真(倍率100)、図7は同断面写真(倍率100)である。
本発明の繊維構造物をガス吸着材として用いて、評価した。
[実施例1]
ガス吸着材として以下のものを準備した。
(不織布原反の作製)
鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH、エチレン含有量38モル%、融点176℃)であり、芯成分がポリプロピレン(PP、融点161℃)であり、EVOH:PPが50:50の割合(容積比)である芯鞘型複合繊維(繊度2.8dtex、繊維長51mm)を準備した。
前記芯鞘型複合繊維をセミランダムカード機で開繊し、目付50g/m2のカードウェブを作製した。次いで、前記カードウェブを90メッシュの平織り支持体に載置し、前記カードウェブの幅方向に一列にオリフィス(径:0.12mm、ピッチ:0.6mm)が配置されたノズルから前記カードウェブに向けて水流を水圧3MPaで噴射した後、更に水圧4MPaで噴射した。続いて、前記カードウェブを裏返して、前記ノズルから水圧4MPaで水流を噴射して、実施例1〜5に使用される水流交絡不織布原反を作製した。
(ガス吸着性フィラーの準備)
ガス吸着性フィラーとしては、活性炭粒子:「クラレコール PL−D」(クラレケミカル製、ヤシガラ炭、平均粒子径40〜50μm)を使用した。
(ガス吸着性化合物の準備)
ガス吸着性化合物として、ポリアリルアミン10mass%水溶液を使用した。
(ガス吸着性フィラー固着繊維を含有する不織布の作製)
前記水流交絡不織布原反を、16mass%の前記活性炭粒子を含むフィラー分散溶液(20℃)に浸漬し、マングルロールの絞り圧力でピックアップ率を調整した。なお、ここでいうピックアップ率とは、繊維構造物の質量に対して付着しているフィラー分散溶液質量(水分の質量とガス吸着性フィラーの質量とガス吸着性化合物の質量とを合わせた質量)に百を乗じた値である。次いで、フィラー分散溶液を含浸させた前記不織布原反を、不織布原反付近の温度が100℃になるように調整したスチームを充満させたパッドスチーマー内で、湿熱処理を行った。パッドスチーマー内の滞留時間は20秒であった。次に、熱風循環式の乾燥機内に通して乾燥させ、水洗槽で水洗を行った後、温度140℃に調整したテンター方式の乾燥機内で乾燥させ、本発明の実施例である実施例1の不織布(ガス吸着材)を得た。
[実施例2]
実施例1に使用される水流交絡不織布原反を、16mass%の前記活性炭粒子と前記ガス吸着性化合物1mass%を含む水分散液(20℃)に浸漬し、マングルロールの絞り圧力でピックアップ率を調整した以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製し、実施例2の不織布(ガス吸着材)を得た。
[実施例3]
テンター方式の乾燥機内で、拡幅しながら乾燥させた以外は、実施例2と同様の方法で不織布を作製し、実施例3の不織布(ガス吸着材)を得た。
[実施例4]
1.45dtex×38mmのポリエステル繊維(東レ株式会社製、商品名「403」)を70%と、2.2dtex×51mmのPP/PE芯鞘型複合繊維(大和紡績株式会社製、商品名「NBF(H)」)30%を使用して30g/m2の水流交絡不織布を作製した。実施例3の不織布(ガス吸着材)の上下に前記水流交絡不織布を載置し、135℃の熱処理温度のヒートエンボスロール加工を施し、実施例4の不織布(ガス吸着材)を得た。
[比較例1]
自己架橋型アクリル酸エステルエマルジョン(日本カーバイド工業製、商品名「ニカゾールFX−555A」)を15mass%と、前記活性炭粒子を10mass%含有した配合液を準備した。次に、前記配合液に前述した実施例1に使用される水流交絡不織布原反と同じ不織布原反を浸漬し、マングルロールで絞り、熱風乾燥機を用いて温度140℃、処理時間15分で乾燥させるとともに硬化させ、活性炭粒子の固着量が38g/m2のケミカルボンド不織布(比較例1)を得た。
[比較例2]
比較例2として、表面に消臭剤が固着された2枚のスパンボンド不織布間に、活性炭粒子がホットメルト剤で固着されたVOCガス吸着シート(旭化成せんい製、商品名「セミアV」、目付134g/m2、活性炭粒子の固着量約40g/m2)を用意した。
表1に、実施例1〜4及び比較例1,2の不織布(ガス吸着材)について、不織布原反の目付、活性炭粒子及びガス吸着性化合物の固着量、活性炭粒子及びガス吸着性化合物の固着率及び不織布(ガス吸着材)の目付を示した。
[VOCガス吸着試験方法−1]
実施例1〜5のシートを、それぞれ縦28cm×横17.6cmの大きさ(B5サイズ)に切断し、容量が5リットルの公害分析用バッグ(商品名「テドラーバッグ」)に入れ、表2〜4に示す初期濃度となるように空気と調合された各VOCガスを注入した。そして、注入時点を開始時間とし、経時毎にガス検知管でバッグ内の各VOCガスの濃度を測定した。結果を表2〜4に示す。なお、表2〜4において、「ND」とは、各VOCガスの濃度が、それぞれ使用したガス検知管の測定限界(ホルムアルデヒド・・0.05ppm,トルエン・・0.5ppm,キシレン・・2ppm,エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン・・1ppm)未満となった場合を示す。
[VOCガス吸着試験方法−2]
比較例1及び比較例2のシートを、それぞれ縦10cm×横10cmの大きさに切断し、容量が5リットルの公害分析用バッグ(商品名「テドラーバッグ」)に入れ、表3に示す初期濃度となるように空気と調合された各VOCガスを注入した。そして、注入時点を開始時間とし、経時毎にガス検知管でバッグ内の各VOCガスの濃度を測定した。結果を表3に示す。なお、表3において、「ND」とは、各VOCガスの濃度が、それぞれ使用したガス検知管の測定限界(トルエン・・0.5ppm,キシレン・・2ppm)未満となった場合を示す。
[結果]
表2に示すとおり、実施例2〜4の不織布を使用した場合は、アセトアルデヒドガスの濃度減少速度が速く、ガスの吸着性能が向上した。また、表3に示すように実施例2の不織布は、VOCガスの中でも除去しにくいアセトアルデヒドガスに対して、濃度減少速度が速く、優れた効果を発揮している。また、表4に示すように、従来除去しにくかったVOCガスが低濃度の場合でも、実施例2〜4の不織布を使用した場合は、VOCガスを充分に除去している。これは、実施例2〜4の不織布中のガス吸着性フィラーが、繊維の表面に固着された湿熱ゲル化したゲル化物によって固着されているため、ガス吸着性フィラーが表面に露出した状態で固着されているので、ガス吸着性フィラーの比表面積の減少が抑制されたことによるものと考えられる。なお、実施例2〜4の不織布は、繊維形状を保持しており、ゲル加工時に不織布が収縮することはなかった。
[実施例5]
実施例1に使用される水流交絡不織布原反を、水(20℃)に浸漬し、マングルロールの絞り圧力でピックアップ率を調整した。次いで、水溶液を含浸させた前記不織布原反を、不織布原反付近の温度が100℃になるように調整したスチームを充満させたパッドスチーマー内で、湿熱処理を行った。パッドスチーマー内の滞留時間は20秒であった。次に、熱風循環式の乾燥機内に通して乾燥させ、水洗槽で水洗を行った後、温度140℃に調整したテンター方式の乾燥機内で乾燥させ、本発明の実施例である実施例5の不織布を得た。
尚、実施例5の不織布は、膜状に拡がったゲル化物により覆われた膜状繊維集束部と、繊維同士の交点において膜状に拡がったゲル化物により接着している膜状繊維接着部とを含んでいた。また、走査電子顕微鏡で100倍に拡大した断面写真で膜状繊維集束部を確認すると、膜状繊維集束部における繊維本数が、5〜60本の集束部は、7個確認することができた。
本発明のフィラー固着繊維及び繊維構造物は、歯間を磨くフィラメント繊維(デンタルフロス)、工業用研磨材として、レンズ、半導体、金属、プラスチック、セラミック、ガラスなど様々な分野の研磨材、家庭用又は業務用キッチンなどで使用する研磨材、有害ガスなどを吸着するガス吸着材、抗菌材、消臭材、イオン交換材、汚水処理用材、吸油材、金属吸着材、電池セパレータ用不織材、導電性材、制電性(帯電防止)材、調湿,除湿(結露防止)材、吸音,防音材、蓄熱材、吸発熱材、防虫,防カビ材、抗ウイルス材、育苗材、芳香材、磁性材、遠赤外線材などに有用である。例えば、ガス吸着材、抗ウイルス材は、医療用のガウン、衣料、家庭用、車輌用等の内装材、建材の養生シート、壁紙、カーテン、マット、カーペット、マスク、空調用などのフィルター、ワイパー等に使用することができる。
本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)を構成するフィラー固着繊維の断面図である。 本発明の一実施形態における3層構造の不織布の断面図である。 本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の製造方法の一例工程図である。 本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の走査電子顕微鏡平面写真(倍率200倍)である。 本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の走査電子顕微鏡断面写真(倍率200倍)である。 本発明の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の走査電子顕微鏡平面写真(倍率2000倍)である。 本発明の別の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の走査電子顕微鏡平面写真(倍率100倍)である。 本発明の別の一実施形態における不織布(ガス吸着材)の走査電子顕微鏡断面写真(倍率100倍)である。
符号の説明
1 鞘成分
2 芯成分
3 フィラー
4 バインダー
5,6,9 複合繊維
7 エチレン−ビニルアルコール共重合体
8 ポリプロピレン
11 繊維層
12 ガス吸着性フィラー固着繊維層
21 膜状繊維集束部
22 膜状繊維接着部
31 繊維(または不織布)
32 槽
33 水溶液またはフィラー分散溶液
34 絞りロール
35 パッドスチーマー
39 巻き取り機
41 乾燥機

Claims (16)

  1. 繊維と、その表面のバインダー樹脂を含有する繊維構造物であって、
    前記バインダー樹脂は、湿熱ゲル化樹脂であり、
    前記繊維構造物は、湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化した膜状に拡がったゲル化物によって複数本の繊維を被覆した膜状繊維集束部、及び繊維同士の交点において膜状に拡がったゲル化物により接着している膜状繊維接着部のうち少なくとも一部を含むことを特徴とする繊維構造物。
  2. 前記膜状繊維集束部は、その繊維本数が5〜60本である集束部を含む、請求項1に記載の繊維構造物。
  3. 前記繊維構造物は、繊維と、その表面のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に固着されたフィラーを含むフィラー固着繊維を含有する繊維構造物であり、
    前記フィラーは、前記湿熱ゲル化樹脂がゲル化したゲル化物によって固着されている請求項1または2に記載の繊維構造物。
  4. 前記フィラーが粒子であり、その平均粒子径が0.01〜1000μmの範囲である、請求項3に記載の繊維構造物。
  5. 前記湿熱ゲル化樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂である、請求項1に記載の繊維構造物。
  6. 前記繊維及び前記バインダー樹脂は、
    (I)湿熱ゲル化樹脂成分と他の熱可塑性合成繊維成分とを含む複合繊維、
    (II)前記複合繊維と他の繊維を混合したもの、
    (III)前記複合繊維と湿熱ゲル化樹脂を混合したもの、及び
    (IV)湿熱ゲル化樹脂と他の繊維を混合したもの
    から選ばれる少なくとも一つの組み合わせを有する、請求項1に記載の繊維構造物。
  7. 前記繊維及び前記バインダー樹脂は、バインダー樹脂を鞘成分とし、他の熱可塑性合成繊維成分を芯成分とした、鞘芯型の湿熱ゲル化複合繊維である、請求項6記載の繊維構造物。
  8. 前記湿熱ゲル化複合繊維は、繊維構造物中に30mass%以上含んで成る、請求項7に記載の繊維構造物。
  9. 前記繊維構造物は、不織布である、請求項1に記載の繊維構造物。
  10. 繊維と、その表面のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に固着されたフィラーを含むフィラー固着繊維の製造方法であって、
    前記繊維及び前記バインダー樹脂が湿熱ゲル化繊維であり、
    前記湿熱ゲル化繊維を、前記フィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で繊維を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させたゲル化物によって前記フィラーを繊維表面に固着することを特徴とするフィラー固着繊維の製造方法。
  11. 前記スチーム処理温度は、80〜120℃である、請求項10に記載のフィラー固着繊維の製造方法。
  12. 前記スチーム処理温度は、90〜110℃である、請求項10に記載のフィラー固着繊維の製造方法。
  13. 繊維と、その表面のバインダー樹脂を含有する繊維構造物の製造方法であって、
    前記繊維と前記バインダー樹脂を含有する被処理繊維構造物に、水分を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で被処理繊維構造物を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させることを特徴とする繊維構造物の製造方法。
  14. 繊維と、その表面のバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂に固着されたフィラーを含むフィラー固着繊維を含有する繊維構造物の製造方法であって、
    前記繊維と前記バインダー樹脂を含有する被処理繊維構造物に、前記フィラーを溶液に分散させたフィラー分散溶液を付与した後、湿熱ゲル化樹脂がゲル化する温度以上にスチームを充満させたチャンバー内で被処理繊維構造物を接触させてスチーム処理を施し、前記湿熱ゲル化樹脂をゲル化させたゲル化物によって前記フィラーを繊維表面に固着することを特徴とする繊維構造物の製造方法。
  15. 前記スチーム処理温度は、80〜120℃である、請求項13または14に記載の繊維構造物の製造方法。
  16. 前記スチーム処理温度は、90〜110℃である、請求項13または14に記載の繊維構造物の製造方法。
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