JP2006210403A - 積層型コモンモードチョークコイルアレイ及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 一方のコモンモードチョークコイルから発生する磁束が他のコモンモードチョークコイルに与える影響を十分に小さくしたと共に、製造が容易である積層型コモンモードチョークコイルアレイ及び製造方法を提供すること。
【解決手段】 複数の非磁性絶縁材シート23a〜23dを積層し、非磁性絶縁材シート23a〜23dの各別のものに巻回状態に形成された各内部導体31〜34によって2組のコモンモードチョークコイルが形成されている非磁性絶縁材料層23と、第1及び第2磁性材料層22、24とを有し、非磁性絶縁材料層23は、2組のコモンモードチョークコイルにおける巻回部の中心位置と両外側位置とに、それぞれ非磁性絶縁材料層23の積層方向にわたって形成された磁性コア部41〜44を備え、磁性コア部41〜44が、磁性材料によって形成されると共に、非磁性絶縁材シート23a〜23dよりも高い透磁率を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子機器に侵入するコモンモードノイズを除去する積層型コモンモードチョークコイルアレイ及び製造方法に関する。
従来より、パーソナルコンピュータやその周辺機器で採用されているUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)及びLVDS(Low Voltage Differential Signaling)といった高速の差動伝送方式のラインに流れるコモンモードノイズを除去するために、積層型コモンモードチョークコイルが使用されている。
この積層型コモンモードチョークコイルは、複数の非磁性絶縁材シートの表面に導体を形成し、これを積層することによって形成された2つ以上のコイルを磁気的に組み合わせたコイルのことであり、電流の伝導方向におけるノーマルモードの成分には影響を与えないようにしてコモンモードの成分のみを除去するように構成したものである。
このような積層型コモンモードチョークコイルにおいて、1つの積層体に複数のコモンモードチョークコイルをアレイ状に配置した積層型コモンモードチョークコイルアレイがある。例えば、2組のコイル導体によって構成されるコモンモードチョークコイルを平面視で互いに隣り合うように配置し、それぞれのコイル導体の内周側領域と互いに隣り合うコイル導体の境界部を除く外周側領域とに磁路形成用の磁性体を設けることによって、コモンモードチョークコイルで発生する磁束を磁性体に集中させた積層型コモンモードチョークコイルアレイが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この積層型コモンモードチョークコイルアレイによれば、隣接する他のコモンモードチョークコイルへ向かう成分を減少させ、2組のコモンモードチョークコイル間に発生するクロストークを低減させることができる。ここで、このコモンモードチョークコイルアレイでは、ポリイミド樹脂からなる絶縁体層において磁性体を設ける該当箇所にフォトリソグラフィー法などで貫通孔を形成し、この貫通孔にポリイミド樹脂とフェライト粉末とを混合した混合材料を充填することで形成されている。
一方、例えばNi−Zn−Cu系フェライトやZn−Cu系フェライトのように、近い組成の組み合わせのもので形成した磁性材シートや非磁性絶縁材シートを貼り合わせて一体焼成した積層型コモンモードチョークコイルが提案されている。この積層型コモンモードチョークコイルによれば、近い組成の組み合わせにすることによって、焼成時のソリや剥離、クラックを抑制することができる。
特開2003−217932号公報(図1)
しかしながら、上記従来の積層型コモンモードチョークコイルアレイにおいては、以下の問題がある。すなわち、フォトリソグラフィー法などで形成した貫通孔にポリイミド樹脂とフェライト粉末とを混合した混合材料を充填することによって磁路形成用の磁性体を設けているが、混合材料の透磁率はフェライト粉末の透磁率よりも小さくなる。これにより、コモンモードチョークコイルで発生する磁束を十分に磁路形成用の磁性体に集中させることが困難となり、2組のコモンモードチョークコイル間に発生するクロストークが十分に低減できないという問題がある。また、フォトリソグラフィー法を用いて貫通孔を形成しているので、製造プロセスが複雑であるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、一方のコモンモードチョークコイルから発生する磁束が他のコモンモードチョークコイルに与える影響を十分に小さくしたと共に、製造が容易である積層型コモンモードチョークコイルアレイ及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかる積層型コモンモードチョークコイルアレイは、セラミックス材料によって形成された複数の非磁性絶縁材シートを積層し、これら非磁性絶縁材シートの各別のものに巻回状態に形成された複数の内部導体によって2組のコモンモードチョークコイルが形成されている非磁性絶縁材料層と、セラミックス材料によって形成されて該非磁性絶縁材料層の積層方向の両端外面側に配置された磁性材料層と、を有する積層型コモンモードチョークコイルアレイであって、前記2組のコモンモードチョークコイルが、前記積層方向に対する直交方向で互いに隣接するように配置され、前記非磁性絶縁材料層は、前記各コモンモードチョークコイルにおける前記内部導体の巻回部の中心位置と、前記2組のコモンモードチョークコイルの隣接方向の境界部を除く両外側位置とに、それぞれ前記非磁性絶縁材料層の積層方向にわたって形成された磁性コア部を備え、該磁性コア部が、磁性材料によって形成されると共に、前記非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有することを特徴とする。
この発明によれば、コモンモード時において各コモンモードチョークコイルで磁気結合による磁束が発生するが、発生する磁束は非磁性材シートよりも透磁率の高い磁性コア部に集中する。ここで、磁性コア部が、2組のコモンモードチョークコイルにおける内部導体の巻回部の中心位置と、境界部を除く両外側位置とでそれぞれ非磁性絶縁材料層の積層方向にわたって形成されており、2組のコモンモードチョークコイルが隣接する境界部に形成されていないことで、磁気結合による磁束のうちの隣接する他のコモンモードチョークコイルに向かう成分が低減される。この際、磁性コア部が磁性材料によって構成されており、十分に高い透磁率を有しているので、発生する磁束が隣り合う他のコモンモードチョークコイルに与える影響を十分に低減し、効果的にクロストークを削減できる。また、コモンモードチョークコイルをより狭い間隔で複数配置することができ、積層型コモンモードチョークコイルアレイの小型化が図れる。
また、本発明にかかる積層型コモンモードチョークコイルアレイは、前記磁性コア部が、焼成時の拡散によって形成されていることが好ましい。
この発明によれば、非磁性絶縁材シート上の巻回部の中心位置と境界部を除く両外側位置とに非磁性絶縁材シートと異なる材料組成を有する材料層を形成して焼成することで、非磁性絶縁材シートと材料層との間で拡散が発生する。この際、非磁性絶縁材シート及び材料層の材料組成を適宜選択することによって拡散後に磁性材料によって構成された磁性コア部が形成される。したがって、積層型コモンモードチョークコイルアレイの製造が容易となる。
また、本発明にかかる積層型コモンモードチョークコイルアレイは、前記磁性材料層の積層方向外面側に、前記非磁性絶縁材シートによって構成された被覆層が設けられていることが好ましい。
この発明によれば、磁性材料層の積層方向外面側に非磁性絶縁材料層に用いられている非磁性絶縁材シートによって構成された被覆層を設けることによって、積層体の側面に2組のコモンモードチョークコイルにそれぞれ接続される外部電極を形成するときに、メッキの張出しを抑制することができる。
また、本発明にかかる積層型コモンモードチョークコイルアレイの製造方法は、セラミックス材料によって形成された複数の非磁性絶縁材シートが積層され、これら非磁性絶縁材シートの各別のものに巻回状態に形成された複数の内部導体によって2組のコモンモードチョークコイルが形成されている非磁性絶縁材料層と、セラミックス材料によって形成されて該非磁性絶縁材料層の積層方向の両端外面側に配置された磁性材料層とを一体焼成する積層型コモンモードチョークコイルアレイの製造方法であって、前記2組のコモンモードチョークコイルを、前記積層方向に対する直交方向で互いに隣接するように配置し、前記非磁性絶縁材シート上に、前記各コモンモードチョークコイルにおける前記内部導体の巻回部の中心位置と、前記2組のコモンモードチョークコイルの隣接方向の境界部を除く両外側位置とに、磁性材料によって構成されるコア材料層を形成し、前記非磁性絶縁材料層と前記磁性材料層とを積層して一体的に焼成し、前記非磁性絶縁材シートと前記コア材料層とを拡散させることによって、前記中心位置と前記外側位置とでそれぞれ前記積層方向にわたって前記非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有する磁性コア部を形成することを特徴とする。
この発明によれば、非磁性絶縁材シート上の各コモンモードチョークコイルにおける内部導体巻回部の中心位置と、両外側位置とに非磁性絶縁材シートと異なる材料組成を有するコア材料層を形成して焼成することで、非磁性絶縁材シートとコア材料層との間で拡散が発生する。この拡散によって、コア材料層を形成した領域近傍には、主に非磁性絶縁材シートの材料組成とコア材料層の材料組成との中間の材料組成を有する拡散材料領域が形成される。この際、非磁性絶縁材シート及びコア材料層の材料組成を適宜選択することによって、非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有する磁性コア部が拡散領域として形成される。ここで、この磁性コア部は、磁性材料によって形成されているため、上述したように十分に高い透磁率を有することとなる。
以上より、上述と同様に、磁気結合による磁束のうちの隣接する他のコモンモードチョークコイルに向かう成分を低減される。したがって、発生する磁束が隣り合う他のコモンモードチョークコイルに与える影響を十分に低減し、効果的にクロストークを削減できると共に、コモンモードチョークコイルをより狭い間隔で複数配置して積層型コモンモードチョークコイルアレイを小型化できる。
また、非磁性絶縁材シートに印刷などでコア材料層を形成した後、一体焼成することによって磁性コア部が形成されるので、貫通孔を形成して磁性材を充填することと比較して製造が容易である。したがって、製造コストを削減することができる。
本発明の積層型コモンモードチョークコイルアレイ及び製造方法によれば、コモンモードチョークコイルで発生した磁束を、十分に透磁率の高い磁性材料によって構成された磁性コア部に集中させるので、発生する磁束が隣り合う他のコモンモードチョークコイルに与える影響を十分に低減し、効果的にクロストークを削減できる。したがって、コモンモードチョークコイルをより狭い間隔で複数配置することができ、積層型コモンモードチョークコイルアレイの小型化が図れる。
また、焼成による拡散で磁性コア部が形成されるため、貫通孔を形成して磁性材を充填することと比較して製造が容易であり、製造コストの削減が図れる。
以下、本発明による積層型コモンモードチョークコイルアレイの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図1は本実施形態における積層型コモンモードチョークコイルアレイの分解斜視図、図2は図1の完成状態を示す積層型コモンモードチョークコイルアレイの外観斜視図、図3は図1の積層型コモンモードチョークコイルアレイのA−A矢視断面図である。
図1及び図2において、積層型コモンモードチョークコイルアレイ10は、複数枚の非磁性絶縁材シート及び磁性材シートを積層して一体化した構成となっている。また、ほぼ直方体形状の積層体とした積層型コモンモードチョークコイルアレイ10の対向する2側面には、後述する2組のコモンモードチョークコイルに引出電極を介して接続されている8つの外部電極11〜18が分配して設けられている。
図1に示す構成例では、積層体とした積層型コモンモードチョークコイルアレイ10の上から順に、第1被覆層21、第1磁性材料層22、非磁性絶縁材料層23、第2磁性材料層24、第2被覆層25を配置している。
第1及び第2被覆層21、25は、それぞれが1層の非磁性材シートによって構成されており、表1に示すセラミックス材料Aが用いられている。このセラミックス材料Aの材料組成を見ると、NiO(酸化ニッケル)を混合せず、ZnO(酸化スズ)が40mol%、CuO(酸化銅)が10mol%、Fe(酸化鉄)が50mol%となっている。
なお、第1及び第2被覆層21、25を形成する非磁性絶縁材シートの積層数については、図1に示す1層に限定されることはなく、必要に応じて適宜変更することができる。
Figure 2006210403
ここで、表1は、NiOの混合比とZnOの混合比との和を40mol%としてNiOの混合比を変更したときの比透磁率を示している。また、セラミックス材料A〜Cは、900℃で焼成させるために、Biを0.1〜1重量%含有させている。
第1及び第2磁性材料層22、24は、それぞれ上面側から磁性材シート22a〜22e及び磁性材シート24a〜24eを5層に積層した構成とされ、表1に示すセラミックス材料Dが用いられている。このセラミックス材料Dの材料組成を見ると、NiO(酸化ニッケル)が10mol%、ZnOが30mol%、CuOが10mol%、Feが50mol%となっている。
なお、第1及び第2磁性材料層22、24については、上述した7層に限定されることはなく、磁性材料の種類や厚みに応じて適宜変更することができる。
非磁性絶縁材料層23は、上面側から非磁性絶縁材シート23a〜23dの順に4層に積層した構成とされ、上述した第1及び第2被覆層21、25と同様にセラミックス材料Aが用いられている。
なお、非磁性絶縁材シート23aの積層方向上面側や非磁性絶縁材シート23dの積層方向下面側には、他の非磁性絶縁材シートを諸条件に応じて設けてもよい。
さて、上述した4層の非磁性絶縁材シート23a〜23dには、それぞれの上面に渦巻状導体31a及び導体経路31bで構成される第1内部導体31と、渦巻状導体32a及び導体経路32bで構成される第2内部導体32と、渦巻状導体33a及び導体経路33bで構成される第3内部導体33と、渦巻状導体34a及び導体経路34bで構成される第4内部導体34とが設けられている。
なお、これら第1から第4内部導体31〜34は、例えば銀などの導電体を印刷や転写などの周知の手法により形成したものである。
このうち、渦巻状導体31aは、非磁性絶縁材シート23bの上面に形成され、1ターン以上の渦巻状となっている。そして、渦巻状導体31aの一方の端部、すなわち渦巻きの外側となる端部には、外部電極12に接続される引出電極31cが形成されている。また、渦巻状導体31aの他方の端部、すなわち渦巻きの内側となる端部は、非磁性絶縁材シート23aを貫通するように設けられたスルーホールH1を介して、非磁性絶縁材シート23aの上面に形成されている導体経路31bと電気的に接続されている。
また、導体経路31bは、非磁性絶縁材シート23aの上面に形成されている。そして、導体経路31bの一端には、スルーホールH1が設けられており、他端には、外部電極11に接続される引出電極31dが形成されている。このように、渦巻状導体31aと導体経路31bとがスルーホールH1を介して電気的に接続されることで、上下に分離した状態でスパイラル巻きとした、いわゆる上下分離型スパイラル巻きの上側となる第1コイル導体31が構成される。
そして、渦巻状導体32aは、上述した渦巻状導体31aと同様に、非磁性絶縁材シート23cの上面に形成され、1ターン以上の渦巻状となっている。そして、渦巻状導体32aの一方の端部、すなわち渦巻きの外側となる端部には、外部電極14に接続される引出電極32cが形成されている。また、渦巻状導体32aの他方の端部、すなわち渦巻きの内側となる端部には、非磁性絶縁材シート23cを貫通するスルーホールH2が形成されている。なお、渦巻状導体32aは、上面視において渦巻状導体31aと重なると共に、その渦巻き方向が同方向となるように形成されている。
また、導体経路32bは、非磁性絶縁材シート23dの上面に形成されている。そして、導体経路32bの一端は、スルーホールH2を介して渦巻状導体32aと電気的に接続されており、他端には、外部電極13と電気的に接続される引出電極32dが形成されている。このように、渦巻状導体32aと導体経路32bとがスルーホールH2を介して電気的に接続されることで、上下分離型スパイラル巻きの下側となる第2コイル導体32が構成される。そして、第1及び第2コイル導体31、32によって、1組のコモンモードチョークコイルが形成される。
さらに、渦巻状導体33aは、渦巻状導体31aと重ならないように非磁性絶縁材シート23bの上面に形成され、1ターン以上の渦巻状となっている。そして、渦巻状導体33aの一方の端部、すなわち渦巻きの外側となる端部には、外部電極18に接続される引出電極33cが形成されている。また、渦巻状導体33aの他方の端部、すなわち渦巻きの内側となる端部は、非磁性絶縁材シート23aを貫通するように設けられたスルーホールH3を介して、非磁性絶縁材シート23aの上面に形成されている導体経路33bと電気的に接続されている。
また、導体経路33bは、非磁性絶縁材シート23aの上面に形成されている。そして、導体経路33bの一端には、スルーホールH3が設けられており、他端には、外部電極17に接続される引出電極33dが形成されている。このように、渦巻状導体33aと導体経路33bとがスルーホールH3を介して電気的に接続されることで、上下に分離した状態でスパイラル巻きとした、上下分離型スパイラル巻きの上側となる第3コイル導体33が構成される。
そして、渦巻状導体34aは、上述した渦巻状導体33aと同様に、渦巻状導体32aと重ならないように非磁性絶縁材シート23cの上面に形成され、1ターン以上の渦巻状となっている。そして、渦巻状導体34aの一方の端部、すなわち渦巻きの外側となる端部には、外部電極16に接続される引出電極34cが形成されている。また、渦巻状導体34aの他方の端部、すなわち渦巻きの内側となる端部には、非磁性絶縁材シート23cを貫通するスルーホールH4が形成されている。なお、渦巻状導体34aは、上面視において渦巻状導体33aと重なると共に、その渦巻き方向が同方向となるように形成されている。
また、導体経路34bは、非磁性絶縁材シート23dの上面に形成されている。そして、導体経路34bの一端は、スルーホールH4を介して渦巻状導体34aと電気的に接続されており、他端には、外部電極15と電気的に接続される引出電極34dが形成されている。このように、渦巻状導体34aと導体経路34bとがスルーホールH4を介して電気的に接続されることで、上下分離型スパイラル巻きの下側となる第4コイル導体34が構成される。そして、第3及び第4コイル導体33、34によって、他の1組のコモンモードチョークコイルが形成される。
ここで、第1及び第2内部導体31、32によって構成されるコモンモードチョークコイルと、第3及び第4内部導体33、34によって構成されるコモンモードチョークコイルとは、非磁性絶縁材料層23の積層方向に対する直交方向で配置されることになる。
また、第1内部導体31の導体長と第2内部導体32の導体長とが同じで、かつ、第1内部導体31のうち磁気結合に寄与する導体長と、第2内部導体32のうち磁気結合に寄与する導体長とが同じとされている。
また、第3内部導体33の導体長と第4内部導体34の導体長とが同じで、かつ、第3内部導体33のうち磁気結合に寄与する導体長と、第4内部導体34のうち磁気結合に寄与する導体長とが同じとされている。
また、非磁性絶縁材シート23a〜23dにわたって、第1及び第2内部導体31、32によって構成されるコモンモードチョークコイルの巻回部の中心位置と重なる領域にそれぞれ磁性コア部41が設けられ、第3及び第4内部導体33、34によって構成されるコモンモードチョークコイルの巻回部の中心位置と重なる領域にそれぞれ磁性コア部42が設けられている。また、2組のコモンモードチョークコイルの隣接方向の境界部を除く外側位置と重なる領域にそれぞれ磁性コア部43、44が設けられている。
これら磁性コア部41〜44は、第1及び第2磁性材料層22、24と同様に、表1に示すセラミックス材料Dによって主に形成されている。
ここで、磁性コア部41〜44は、図4及び図5に示すように、非磁性絶縁材シート23b、23c上の巻回部の中心位置及び巻回部の境界部を除く外側位置に表1に示すセラミックス材料Fを印刷や転写などの周知の手法によりコア材料層51〜58形成し、第1被覆層21、第1磁性材料層22、非磁性絶縁材料層23、第2磁性材料層24、第2被覆層25を積層して一体的に焼成して形成したときに、セラミックス材料Aとセラミックス材料Fとが互いに非磁性絶縁材シートの面内方向及び積層方向に拡散することによって形成されたものである。このセラミックス材料Fの材料組成は、NiOが17mol%、ZnOが23mol%、CuOが10mol%、Feが50mol%となっている。
以上のように構成された本発明の積層型コモンモードチョークコイルアレイ10について、以下にその製造方法を説明する。
まず、NiO、ZnO、CuO、Feを出発原料とし、表1に示すように、これらを各々0:40:10:50(モル比)の割合で湿式混合後、870℃で仮焼し、セラミックス材料AであるZn0.4Cu0.1FeOの非磁性絶縁材料を得た。また、同様にNiO、ZnO、CuO、Feを出発原料とし、表1に示すように、10:30:10:50(モル比)の割合で湿式混合後、870℃で仮焼し、セラミックス材料DであるNi0.1Zn0.3Cu0.1FeOの磁性材料を得た。さらに、NiO、ZnO、CuO、Feを出発原料とし、表1に示すように、17:23:10:50(モル比)の割合で湿式混合後、870℃で仮焼し、セラミックス材料FであるNi0.17Zn0.23Cu0.1FeOの磁性材料を得た。得られた非磁性絶縁材料または磁性材料を湿式にて48時間粉砕することで、平均粒径が1μmの非磁性絶縁材料または磁性材料を得た。
次に、上記セラミックス材料Aにポリビニルブチラールなどのバインダを非磁性絶縁材料に対して8.4wt%加えて混練し、ペイントを調整する。このペイントでドクターブレード法により厚み10〜50μmのセラミックス材料Aのグリーンシートを作成した。また、同様に厚み10〜50μmのセラミックス材料Dのグリーンシートを作成した。これらセラミックス材料A、Dのグリーンシートは、所定の形状(例えば、矩形状)とされている。また、同様にセラミックス材料Fにポリビニルブチラールなどのバインダを混練し、スラリー状としたものを所望の粘度に調整して印刷ペーストを作成した。
そして、図4及び図5に示すように、非磁性絶縁シート23a、23cの所定位置に、レーザ、パンチングなどの周知の手法を用いて穴あけ加工を施し、スルーホールH1〜H4を設ける。
次に、非磁性絶縁材シート23b、23cの上面に、それぞれ1ターン以上の渦巻状導体31a〜34aを、印刷や転写などの周知の手法を用いて互いに短絡しないように形成し、非磁性絶縁材シート23a、23dの上面に、それぞれ導体経路31b〜34bを、同様に形成する。
このとき、渦巻状導体31aの一端には引出電極31cが、導体経路31bの一端には引出電極31dが、渦巻状導体32aの一端には引出電極32cが、導体経路32bの一端には引出電極32dが、渦巻状導体33aの一端には引出電極33cが、導体経路33bの一端には引出電極33dが、渦巻状導体34aの一端には引出電極34cが、導体経路34bの一端には引出電極34dが、それぞれ一体に連続して形成されている。
また、スルーホールH1〜H4には、スルーホールを設けた磁性材料または非磁性絶縁材料に形成される導体と一体的に連続するように、銀などの導電材料が充填される。なお、スルーホールを介して接続される非磁性絶縁材料側の導体とは、導体側に図示しない凸状の電極部を設けるなどしてスルーホールの導電体に接触させ、電気的に接続されるようになっている。
次に、非磁性絶縁材シート23b、23cの上面であって、巻回部の中心位置及び境界部を除く外側位置にそれぞれセラミックス材料Fの印刷ペーストで構成されたコア材料層51〜58を印刷や転写などの周知の手法により形成する。
その後、非磁性絶縁材シート23a〜23dを積層して非磁性絶縁材料層23を形成すると共に、この非磁性絶縁材料層23を挟み込むように第1及び第2磁性材料層21、22を積層する。これにより、渦巻状導体31aと導体経路31bとが、スルーホールH1を介して電気的に接続され、渦巻状導体32aと導体経路32bとが、スルーホールH2を介して電気的に接続され、渦巻状導体33aと導体経路33bとが、スルーホールH3を介して電気的に接続され、渦巻状導体34aと導体経路34bとが、スルーホールH4を介して電気的に接続される。このとき、第1及び第2内部導体31、32は、それぞれの有効長さが同じとされ、第3及び第4内部導体33、34は、それぞれの有効長さが同じとされている。
そして、このようにして形成された積層体を大気中で900℃、2時間焼成することで、非磁性絶縁材シートの面内方向及び積層体の積層方向において、セラミックス材料Aとセラミックス材料Fとが拡散する。これにより、セラミックス材料Aとセラミックス材料Fとの中間の組成を有し、主にセラミックス材料Dによって構成された磁性コア部41〜44が形成される。
最後に、積層体の対向する両側面に露出した引出電極31c、31d、32c、32d、33c、33d、34c、34dに接続されて、銀などの導電体からなる外部電極11〜18をそれぞれ形成し、上述した構成の積層型コモンモードチョークコイルアレイを製造する。
なお、上述したコモンモードチョークコイルアレイ10は、各非磁性絶縁材料に対し所定のピッチで複数組の内部導体を形成して積層してもよく、この場合、ダイシングなどで切断することにより、上述した積層体を同時に多数製造することができる。
また、外部電極11〜18は、必要に応じて銀などの導電体の上面にメッキ処理を施してもよい。
以上のように構成された積層型コモンモードチョークコイルアレイ10のコモンモード時における磁気結合について、図6及び図7を用いて説明する。
まず、第1及び第2内部導体31、32が、互いに影響しあって磁気結合する。ここで、磁気結合による磁束は、透磁率の高い箇所に集中する。すなわち、第1及び第2内部導体31、32の磁気結合による磁束は、矢印Z1に示すように、磁性コア部41、43に集中することになる。また、第3及び第4内部導体33、34が、互いに影響しあって磁気結合する。このとき、磁気結合による磁束は、上述と同様に、矢印Z2に示すように、磁性コア部42、44に集中することになる。
このように構成された積層型コモンモードチョークコイルアレイ10及び製造方法によれば、2組のコモンモードチョークコイルの一方で発生した磁束が、他の内部導体に与える影響を低減でき、クロストークが効果的に削減できる。ここで、磁性コア部41〜44は焼成時の拡散によって形成されているので、例えば非磁性絶縁材料層としてポリイミド樹脂を用い、磁性コア部にポリイミド樹脂とフェライト粉末とを混合した混合材料を用いることと比較して、磁性材料単体から構成されることで高い透磁率を得ることができるので、クロストークの削減効果が大きい。したがって、2組のコモンモードチョークコイルをより狭い間隔で配置することができ、積層型コモンモードチョークコイルアレイの小型化が図れる。
また、第1から第4内部導体31〜34と同様に、コア材料層51〜58を印刷や転写などで形成して一体的に焼成することによって磁性コア部41〜44が形成されるので、製造が容易であると共に製造コストの削減が可能である。
また、非磁性絶縁材料層23を構成する非磁性絶縁材シート23a〜23dに用いられているセラミックス材料Aによって形成された第1及び第2被覆層21、25を設けることで、外部電極11〜18をメッキによって形成するときにおけるメッキ張出しを抑制することができる。
次に、本発明の積層型コモンモードチョークコイルアレイを、実施例による具体的に説明する。
表2に示すように、非磁性絶縁材シート及びコア材料層のセラミックス材料を組み合わせて、実施例1〜10及び比較例1、2の積層型コモンモードチョークコイルアレイを製造した。そして、拡散によって形成された磁性コア部の比透磁率が1より大きく、磁性コア部に磁束を十分に集中させることができる場合を○、そうでない場合を×として判定した。なお、磁性材料層は、表1に示すセラミックス材料D〜Gのうちのいずれかを用いている。
Figure 2006210403
表2に示すように、非磁性絶縁材シートとコア材料層との中間の組成を有するセラミックス材料の比透磁率が1より大きくなるように、非磁性絶縁材シートとコア材料層とのセラミックス材料をそれぞれ選択することで、非磁性絶縁材シートとコア材料層との拡散によって非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有する磁性コア部が形成され、磁束を十分に集中させることができることを確認した。
ところで、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
例えば、上記実施形態において、各セラミックス材料の材料組成は、コモンモードチョークコイルアレイの特性に応じて適宜変更してもよい。
また、上記実施形態においてコア材料層が非磁性絶縁材料層の中央の2つの非磁性絶縁材シートに形成されているが、すべての非磁性絶縁材シートにコア材料層を形成してもよい。
また、上記実施形態において各内部導体は、上下分離型スパイラル巻きのコイルを用いたが、これに限らず、バイファイラ巻きや、8の字巻きなどであってもよい。また、3つ以上の内部導体によって構成されたコモンモードチョークコイルであってもよい。このようにしても、一方のコモンモードチョークコイルで発生した磁束が、他方のコモンモードチョークコイルに与える影響を低減できる。
本発明の第1の実施形態における積層型コモンモードチョークコイルアレイを示す分解斜視図である。 図1の積層型コモンモードチョークコイルアレイを示す外観斜視図である。 図1のA−A矢視断面図である。 図1の積層型コモンモードチョークコイルアレイの焼成前の状態を示す分解斜視図である。 図4のB−B矢視断面図である。 図1の積層型コモンモードチョークコイルアレイの磁気結合の様子を示す分解斜視図である。 図6のC−C矢視断面図である。
符号の説明
10 積層型コモンモードチョークコイルアレイ
11〜18 外部電極
21 第1被覆層
22 第1磁性材料層
23 非磁性絶縁材料層
23a〜23d 非磁性絶縁材シート
24 第2磁性材料層
25 第2被覆層
31 第1内部導体
32 第2内部導体
33 第3内部導体
34 第4内部導体
41〜44 磁性コア部
51〜58 コア材料層

Claims (4)

  1. セラミックス材料によって形成された複数の非磁性絶縁材シートを積層し、これら非磁性絶縁材シートの各別のものに巻回状態に形成された複数の内部導体によって2組のコモンモードチョークコイルが形成されている非磁性絶縁材料層と、セラミックス材料によって形成されて該非磁性絶縁材料層の積層方向の両端外面側に配置された磁性材料層と、を有する積層型コモンモードチョークコイルアレイであって、
    前記2組のコモンモードチョークコイルが、前記積層方向に対する直交方向で互いに隣接するように配置され、
    前記非磁性絶縁材料層は、前記各コモンモードチョークコイルにおける前記内部導体の巻回部の中心位置と、前記2組のコモンモードチョークコイルの隣接方向の境界部を除く両外側位置とに、それぞれ前記非磁性絶縁材料層の積層方向にわたって形成された磁性コア部を備え、
    該磁性コア部が、磁性材料によって形成されると共に、前記非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有することを特徴とする積層型コモンモードチョークコイルアレイ。
  2. 前記磁性コア部が、焼成時の拡散によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型コモンモードチョークコイルアレイ。
  3. 前記磁性材料層の積層方向外面側に、前記非磁性絶縁材シートによって構成された被覆層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型コモンモードチョークコイルアレイ。
  4. セラミックス材料によって形成された複数の非磁性絶縁材シートが積層され、これら非磁性絶縁材シートの各別のものに巻回状態に形成された複数の内部導体によって2組のコモンモードチョークコイルが形成されている非磁性絶縁材料層と、セラミックス材料によって形成されて該非磁性絶縁材料層の積層方向の両端外面側に配置された磁性材料層とを一体焼成する積層型コモンモードチョークコイルアレイの製造方法であって、
    前記2組のコモンモードチョークコイルを、前記積層方向に対する直交方向で互いに隣接するように配置し、
    前記非磁性絶縁材シート上に、前記各コモンモードチョークコイルにおける前記内部導体の巻回部の中心位置と、前記2組のコモンモードチョークコイルの隣接方向の境界部を除く両外側位置とに、磁性材料によって構成されるコア材料層を形成し、
    前記非磁性絶縁材料層と前記磁性材料層とを積層して一体的に焼成し、前記非磁性絶縁材シートと前記コア材料層とを拡散させることによって、前記中心位置と前記外側位置とでそれぞれ前記積層方向にわたって前記非磁性絶縁材シートよりも高い透磁率を有する磁性コア部を形成することを特徴とする積層型コモンモードチョークコイルアレイの製造方法。
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