JP2006206660A - ハイドロタルサイトサスペンション、ポリマーブレンド組成物及び熱入れゴム組成物 - Google Patents

ハイドロタルサイトサスペンション、ポリマーブレンド組成物及び熱入れゴム組成物 Download PDF

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【課題】 微細なハイドロタルサイト粉末の安定な水分散体(サスペンション)、及び、これを利用した、不飽和ニトリル−共役ジエンゴム及び塩化ビニル樹脂を含有してなる熱安定性の良いポリマーブレンド組成物を提供すること。
【解決手段】 ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜20重量部及び水からなるハイドロタルサイト濃度5〜40重量%のハイドロタルサイトサスペンション、並びに、該サスペンション、不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合して凝固し、次いで乾燥してなり、前記不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス中のゴム、及び、前記塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂の混合割合が重量比で90/10〜40/60であるポリマーブレンド組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明はハイドロタルサイトの水分散体(サスペンション)、並びに、これを不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスと混合することによって得られるポリマーブレンド組成物、及び、これに熱を加えて得られる熱入れゴム組成物に関する。
アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの不飽和ニトリル−共役ジエンゴム(ニトリルゴム)は、優れた耐油性を有するため、自動車用の各種ホース、ワイヤーやケーブルのジャケット等に広く使用されている。しかし、ニトリルゴムは、主鎖に含まれる共役ジエン由来の炭素−炭素二重結合がオゾンによって劣化を受けやすく、耐オゾン性に劣るという欠点がある。このニトリルゴムの耐オゾン性を改良するために、従来より塩化ビニル樹脂をブレンドすることが行われてきた。実際に耐オゾン性を向上させるためには、ニトリルゴムと塩化ビニル樹脂をブラベンダやバンバリーミキサなどの混合機で混練して熱を加え、塩化ビニル樹脂を融解させてニトリルゴム中に均一に分散させる「熱入れ」工程を行う必要がある。しかし、塩化ビニル樹脂は熱的に不安定な樹脂であり、比較的低い温度(塩化ビニル樹脂の軟化点付近)からでも脱塩素化反応を起こして着色し、やがてニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂の混合相(ポリマー相)が劣化し始める。ニトリルゴム/塩化ビニル樹脂混合物(以下、「ポリマーブレンド組成物」と記すことがある。)の熱安定性の改善は成形品の性能にとって重要であるばかりでなく、着色などによる規格外れ製品の発生を減じて製造コストを低減させるためにも重要である。そのため、熱入れ工程時の着色やポリマー相の劣化を防ぐ目的で、有効な熱安定剤を配合することが必須である。
従来、ポリマーブレンド組成物の熱安定剤として錫系安定剤及びカルシウム/亜鉛系熱安定剤が広く使用されてきた。しかし、錫系熱安定剤は、熱安定化性能は強いが、重金属を含んでいて毒性の問題が大きく存在する。一方、カルシウム/亜鉛系熱安定剤は毒性は小さいものの、錫系安定剤に比して熱安定化性能が小さいという欠点がある。カルシウム/亜鉛系熱安定剤の熱安定性の不足を補うために、ホスファイトやエポキシ化合物等の熱安定助剤を併用することが試みられているが、高温の熱処理を必要とする熱入れには依然として熱安定化性能が不十分であった。
一方、ジエン系重合体含有塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性の改良にハイドロタルサイトを用いる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、本研究者らが検討したところによると、ロールを用いてドライ状態で塩化ビニル樹脂とアクリロニトリル−ブタジエンゴム及びハイドロタルサイトを混合したのでは、微細な無機粉末のハイドロタルサイトを均一に分散させることができないため、高温の熱処理を必要とする熱入れには熱安定化性能が不十分であった。
また、特許文献2は、塩化ビニル樹脂を熱安定剤で予備コーティングしてからアクリロニトリル−ブタジエンゴムとブレンドし、次いで熱及び圧力を適用する製造方法を提案しているが、この方法を用いても、熱入れ工程での熱安定化効果は不十分である。
特開平4−202453号公報 特表2000−503711号公報
本発明の目的は、微細なハイドロタルサイト粉末の安定な水分散体(サスペンション)、及び、これを利用した、不飽和ニトリル−共役ジエンゴム及び塩化ビニル樹脂を含有してなる、塩化ビニル樹脂が溶融する温度でも熱安定性の良いポリマーブレンド組成物、並びに、これに熱を加えてなる、顕著に秀でた耐オゾン性を有する成形品を与える熱入れゴム組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、予め特定割合のハイドロタルサイト、界面活性剤、分散剤及び水からなる安定に均一分散したハイドロタルサイトサスペンションを調製しておき、これと不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスとを混合して凝固、乾燥することにより上記目的が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記1〜7が提供される。
1. ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜20重量部及び水からなるハイドロタルサイト濃度5〜40重量%のハイドロタルサイトサスペンション。
2.ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜20重量部及び水150〜1900重量部を容器駆動ミル、媒体撹拌ミル又はコロイドミルで混合することを特徴とするハイドロタルサイトサスペンションの製造方法。
3. 上記1記載のハイドロタルサイトサスペンション、不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合して凝固し、次いで乾燥してなり、
前記不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス中のゴム、及び、前記塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂の混合割合が、重量比で90/10〜40/60であるポリマーブレンド組成物。
4. 上記3記載のポリマーブレンド組成物を130〜230℃で混練してなる熱入れゴム組成物。
5. 前記ハイドロタルサイトの量が、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対して0.01〜10重量部である上記3記載のポリマーブレンド組成物。
6. さらに架橋剤を、前記ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部含有してなる上記3又は5記載のポリマーブレンド組成物。
7. さらに架橋剤を、前記ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部含有してなる上記4記載の熱入れゴム組成物。
本発明により、微細なハイドロタルサイト粉末の安定な水分散体(サスペンション)、及び、これを利用した、不飽和ニトリル−共役ジエンゴム及び塩化ビニル樹脂を含有してなる、塩化ビニル樹脂が溶融する温度でも熱安定性の良いポリマーブレンド組成物、並びに、これに熱を加えてなる、顕著に秀でた耐オゾン性を有する成形品を与える熱入れゴム組成物が提供される。
本発明のハイドロタルサイトサスペンションは、ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜5重量部及び水からなり、ハイドロタルサイトの濃度が5〜40重量%であることを特徴とする。また、本発明のポリマーブレンド組成物は、前記ハイドロタルサイトサスペンション、不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合して凝固し、次いで乾燥してなり、前記ニトリルゴムラテックス中のゴム、及び、前記塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂の混合割合が、重量比で90/10〜40/60のものである。
本発明に用いるハイドロタルサイトは、一般式〔Mg1−x Al(OH) 〔(COx/2 ・mH0〕 で表わされる不定比化合物で、プラスに荷電した基本層〔Mg1−x Al(OH) と、マイナスに荷電した中間層〔(COx/2 ・mH0〕 とからなる層状の結晶構造を有する無機物質である。ここで、Xは0より大きく、0.33以下の範囲の数である。天然品は、MgAl(OH)16CO・4HOとして得られ、合成品は、主としてMg4.5 Al(OH)13CO・3.5HOの形のものが市販されている。合成方法としては、例えば特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公昭61−174270号公報などに記載の公知の方法を例示することができる。
また、ハイドロタルサイトは、前記ハイドロタルサイト中のMgの一部をZnで置換したZn変性型や、ハイドロタルサイトと過塩素酸とを水中で任意の比率で反応させてハイドロタルサイト中のCOの一部または全部をClOに置換した過塩素酸一部導入型または過塩素酸導入型のものを用いてもよい。
ハイドロタルサイトの代表的な市販品の例として、協和化学工業社製のアルカマイザー1、アルカマイザー4、アルカマイザー5等を挙げることができる。
前記ハイドロタルサイトは、微細粒子が凝集した粒子形態をとることが多く、平均粒径は、通常、0.01〜50μm、好ましくは0.01〜5μmである。
本発明においてハイドロタルサイトは、平均粒径が好ましくは0.01〜2μm、より好ましくは0.01〜1.5μmの比較的微細なものが好適である。ハイドロタルサイトの平均粒径が上記範囲にあると、ハイドロタルサイトサスペンションは均一で安定なので、ポリマーブレンド組成物の熱安定性を十分に向上することができる。
ハイドロタルサイトサスペンション調製に必要な第一の成分である界面活性剤は、水系に用いられる界面活性剤であれば限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックスや塩化ビニル樹脂ラテックスにアニオン性界面活性剤が用いられている場合、それらラテックスの安定性の観点からアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤の例としては、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウムなどのカルボン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸金属塩類;ラウリルリン酸、ノニルフェノールエーテルリン酸エステル、セチルエーテルリン酸エステルナトリウム塩などのリン酸エステル類;アクリル酸系オリゴマー、スチレンスルホン酸系オリゴマー、マレイン酸系オリゴマー、ポリイソプレンスルホン酸系オリゴマーなどの重合型アニオン性界面活性剤類;などが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンエーテル類;ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンエステル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテートなどのソルビタンエステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノジオレートなどのポリオキシエチレンソルビタンエステル類;ラウリン酸ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンステアrン酸アミドなどのアルカノールアミド類;ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコールなどのポリエチレグリコール類;などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤の例としては、ステアリルアミンアセテートなどの脂肪族アミン類;ラウリルベタインなどの脂肪族ベタイン類;セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
両性界面活性剤の例としては、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;N−アルキル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油アルキルベタインなどのベタイン型両性海面活性剤;などが挙げられる。
本発明のハイドロタルサイトサスペンションにおける界面活性剤の含有量は、ハイドロタルサイト100重量部に対して3〜20重量部、好ましくは4〜15重量部、特に好ましくは5〜10重量部である。界面活性剤の配合量が少なすぎるとハイドロタルサイトサスペンションの分散安定性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎるとハイドロタルサイトサスペンションを用いた操作を行う時に泡立ちする可能性がある。
ハイドロタルサイトサスペンション調製に必要な第二の成分である分散剤は、水に溶解又は分散して水の粘度を上昇させる分散安定剤であれば限定されない。かかる分散剤の例としては、ゼラチン、カゼインなどの動物性保護コロイド;メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロポキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロースなどの繊維素誘導体;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウムなどのポリアクリル酸系保護コロイド;ベントナイトなどの含水アルミニウムケイ酸塩;活性白土などの鉱物性粘着剤;などが挙げられる。これらの分散剤は単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでもヒドロキシアルキルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルアルコール及び含水アルミニウムケイ酸塩が好ましく用いられる。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、アルキル基がメチル基またはエチル基であることが好ましい。また、平均分子量は好ましくは10,000〜5,000,000、より好ましくは20,000〜3,000,000、特に好ましくは50,000〜2,000,000である。微結晶セルロースとしては、結晶化度が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上で、平均粒子径が好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下のものである。ポリビニルアルコールとしては、鹸化度が好ましくは60〜99%、より好ましくは70〜99%、特に好ましくは80〜99%であり、平均分子量が好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは20,000〜300,000である。
本発明のハイドロタルサイトサスペンションにおける分散剤の含有量は、ハイドロタルサイト100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。分散剤の配合量が少なすぎるとハイドロタルサイトサスペンションの分散安定性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎるとハイドロタルサイトサスペンションの粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる可能性がある。
また、本発明のハイドロタルサイトサスペンションのハイドロタルサイト濃度は、5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%である。ハイドロタルサイト濃度が低すぎると熱安定性の高いポリマーブレンド組成物や熱入れゴム組成物を得るのに必要な該サスペンションの量が多くなりすぎて取扱いが困難になるおそれがあり、逆に、ハイドロタルサイト濃度が高すぎると該サスペンションの粘度が高くなりすぎて取扱いが困難になる可能性がある。
本発明のハイドロタルサイトサスペンションには、必要に応じて塩化ビニル樹脂用熱安定剤(ハイドロタルサイトを除く)、熱安定助剤、可塑剤、消泡剤などの任意の添加剤を配合してもよい。
塩化ビニル樹脂用熱安定剤としては、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、イソデカン酸などの脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、鉛塩などの脂肪酸金属塩;ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、モノジメチルスズステアロキシエチルメルカプチド、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビスブチルマレート、ジブチルスズラウレート、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズ−β−メルカプトプロピオネート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレートなどの有機スズ化合物;鉛白、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛などの鉛化合物;などが挙げられる。
塩化ビニル樹脂用熱安定助剤としては、トリアルキルホスファイト、アルキルアリールホスファイト、トリアリールホスファイトなどのホスファイト化合物;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;などが挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル;塩素化パラフィン;ポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルなどのエポキシ化合物;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン酸エステル;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル;などが挙げられる。
本発明のハイドロタルサイトサスペンションを調製するには、ハイドロタルサイト100重量部に対し、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜5重量部及び必要に応じて加えられる上記の任意添加剤を水150〜1900重量部、好ましくは200〜900重量部と共に、機械的剪断作用のある混合機で混合する。水の使用量が上記範囲であると、混合機の剪断作用をハイドロタルサイトの粉末集合体に有効に働かすことができる。
機械的剪断作用のある混合機は、微細なハイドロタルサイト粉末の集合体を衝撃や摩擦により解しながら水媒体に分散させる機能を有する混合機で、例えば、媒体遊星ミル、転動ボールミル、振動ボールミル等の容器駆動ミル;ビーズミル、サンドミル、タワーミル、流通管式ミル、撹拌槽式ミルアニュラー型ミル等の媒体撹拌ミル;オーダーバーガーミル、プレミエールミル等のコロイドミル;などが例示される。
混合機でハイドロタルサイトサスペンションを調製する際の各成分の添加順序に特に限定はない。
本発明に用いる不飽和ニトリル−共役ジエンゴム(以下、「ニトリルゴム」又は「ゴム」と記すことがある。)のラテックスは、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共役ジエン単量体とを共重合して得られるニトリルゴムのラテックスである。本発明においてニトリルゴムラテックスは、平均粒径が好ましくは0.03〜2μm、より好ましくは0.05〜0.3μmのニトリルゴム粒子が、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%の濃度で沈降せずに分散している水分散液である。
前記ニトリルゴムのα、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が上記範囲にあると成形品は耐油性と耐寒性とを兼ね備えることができる。
α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。
共役ジエン単量体としては、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能な共役ジエン含有化合物であれば限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数4〜12の共役ジエン含有化合物が好ましく挙げられ、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。
前記ニトリルゴムは、さらに、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体及び共役ジエン単量体と共重合可能なその他の単量体を、全単量体単位に占める割合で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下含有してもよい。このようなその他の単量体としては、非共役ジエン単量体、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル系単量体、フッ素含有ビニル単量体、α、β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのエステル、α、β−エチレン性不飽和多価カルボン酸並びにそのモノエステル、多価エステル及びその無水物、架橋性単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
非共役ジエン単量体は、炭素数が5〜12のものが好ましく、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが例示される。α−オレフィンは、炭素数が2〜12のものが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。フッ素含有ビニル単量体としては、例えば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
α、β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル(アクリル酸エチル及びメタクリル酸エチルの意。以下同様。)、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。α、β−エチレン性不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸モノエステルとしては、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチルなどが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸多価エステルとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。α、β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
架橋性単量体としては、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;などの多官能エチレン性不飽和単量体のほか、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミドなどの自己架橋性単量体などが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、例えば、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
前記ニトリルゴムのラテックスを製造する方法としては、前記の平均粒径を有するニトリルゴム粒子の安定な水分散液が提供される方法であれば限定されないが、乳化重合による方法が好ましい。乳化重合、中でも、前記の単量体をアニオン性界面活性剤及び水溶性の重合開始剤を用いて水媒体中で行うラジカル重合によると、粒径分布がシャープで平均粒径が好ましくは0.03〜2μm、より好ましくは0.05〜0.3μmのゴム粒子が安定に分散したニトリルゴムラテックスが直接得られるので好ましい。アニオン性界面活性剤としては前記ハイドロタルサイトサスペンションの説明で例示したものが使用される。
別の重合法による例としては、溶液重合により前記の単量体をアルカリ金属などの重合開始剤を用いて有機溶媒中でアニオン重合してニトリルゴム含有有機溶媒溶液を得た後、水及び界面活性剤を加えて加温して有機溶媒を留去し、媒体を水に置換することによりラテックスを得ることができる。
ニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜180、特に好ましくは30〜150である。ムーニー粘度がこの範囲にあると、ポリマーブレンド組成物の加工性は良好である。
本発明に用いる塩化ビニル樹脂ラテックスは、塩化ビニル樹脂(以下、「樹脂」と略すことがある。)、すなわち、塩化ビニル単独重合体、又は、塩化ビニル及びこれと共重合し得る単量体との共重合体の、平均粒径が好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜2μmの粒子が、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは30〜50重量%の濃度で沈降せずに分散している水分散液である。共重合体の場合の樹脂中の塩化ビニル単量体単位の含有量は、50重量%以上が好ましく、75重量%以上がより好ましい。
塩化ビニルと共重合し得る単量体としては、上記のニトリルゴムにおける、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体及び共役ジエン単量体と共重合可能なその他の単量体として挙げたのと同様のα−オレフィン単量体、芳香族系単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのエステル、α、β−エチレン性不飽和多価カルボン酸並びにそのモノエステル、多価エステル及びその無水物に加え、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミド;N−置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルセチルエーテルなどのビニルエーテル単量体;塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物;並びに、上記ニトリルゴムの主単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリルなどを挙げることができる。
塩化ビニル樹脂ラテックスの製造方法としては、前記の平均粒径を有する樹脂粒子の安定な水分散液を与える製造方法であれば限定されないが、ラジカル重合による公知の乳化重合、播種乳化重合又は微細懸濁重合による方法が好ましく挙げられる。
乳化重合によると、粒径分布がシャープで平均粒径が好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmの樹脂粒子が安定に分散した塩化ビニル樹脂ラテックスが得られる。
播種乳化重合では、乳化重合により得られた樹脂粒子を種子として、水媒体中でこれを単量体の重合により肥大化させるので、通常、肥大化された粒子のモードを0.9〜1.3μmに持つ大きなシャープなピークと、副生粒子のモードを0.1〜0.3μmに持つ小さなシャープなピークを有する粒径分布の樹脂粒子のラテックスが得られる。
微細懸濁重合では、媒体となる水、単量体、油溶性重合開始剤、アニオン性界面活性剤及び乳化助剤を二段式高圧ポンプ、コロイドミル、振動攪拌機などのホモジナイザにかけて乳化液滴を調製して緩やかな攪拌下でラジカル重合するので、通常、粒径分布が0.05〜約2μmにわたるブロードな山形で、平均粒径が0.8〜1.2μmである球形の一次粒子を含有するラテックスが得られる。アニオン性界面活性剤としては上記ハイドロタルサイトサスペンションで例示したものが使用される。また、乳化助剤としては、脂肪族高級アルコール;塩素化パラフィン、ソルビタントリエステルなどが使用される。
塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K6721規定の比粘度法による換算値で600〜2,000が好ましく、800〜1,800がより好ましい。平均重合度が上記範囲にあると成形品は耐オゾン性とゴム弾性とを兼ね備えたものとなる。
本発明のポリマーブレンド組成物は、前記のハイドロタルサイトサスペンション、ニトリルゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合して凝固し、次いで乾燥することによって調製される。
ハイドロタルサイトサスペンション、ニトリルゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者間の混合順序は限定されず、また、三者のいずれかが又はいずれもが分割されて三者間で順不動に混合されてもよい。次工程の凝固に進む段階では、三者のいずれもが全量混合されてエマルション混合物が形成されていることが必要である。
ニトリルゴムラテックス中のゴム、及び、塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂の混合割合は、重量比で90/10〜40/60であり、好ましくは70/30〜50/50である。ニトリルゴムの割合が少なすぎると成形品は弾性に欠けるものとなるおそれがあり、逆に、多すぎると成形品は耐オゾン性に劣る可能性がある。
前記エマルション混合物におけるハイドロタルサイト(ハイドロタルサイトサスペンション中の純分)の量は、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対して好ましくは0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.1〜5重量部である。ハイドロタルサイトの量が上記範囲にあるとポリマーブレンド組成物は熱安定性に優れ、かつ、製造コストの低いものとなる。
前記エマルション混合物を調製するための混合装置に限定はないが、調製後にハイドロタルサイトが沈降しないよう混合槽の下層をポンピングできる撹拌機、循環ポンプなどを有する装置が好ましい。
前記エマルション混合物を凝固させるにはエマルション混合物中に凝固剤を添加する。凝固剤としては、通常、ラテックスの凝固に使用される電解質が限定されずに使用される。かかる電解質の例としては、無機塩類、鉱酸類、有機酸類などが挙げられる。無機塩類としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩;などが挙げられる。鉱酸類としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、炭酸などが挙げられる。有機酸類としては酢酸などが挙げられる。なかでも、塩化カルシウム及び硫酸アルミニウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物に溶解して使用する。凝固剤溶液の濃度は、通常、5〜70重量%、好ましくは20〜50重量%である。凝固剤(純分)の添加量は限定されないが、ニトリルゴムラテックス中のゴム、塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂、及び、ハイドロタルサイトサスペンション中のハイドロタルサイトの合計100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、2〜5重量部がより好ましい。
凝固によりニトリルゴム、塩化ビニル樹脂及びハイドロタルサイトが共沈して生成する均一混合物のクラムはろ過、遠心分離等により固液分離され、乾燥される。乾燥方法に限定はないが、バンド乾燥、棚段乾燥、真空乾燥、押出し乾燥などが挙げられ、含水率が好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下になるまで乾燥される。含水率が上記範囲にあるとポリマーブレンド組成物の加工性は良好である。また、乾燥温度は50〜200℃が好ましく、80〜180℃がより好ましい。乾燥温度が上記範囲にあると乾燥生産性が良く、かつ、ニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂の混合相(ポリマー相)が劣化しない。
こうして得られる本発明のポリマーブレンド組成物は、ハイドロタルサイトが塩化ビニル樹脂及びニトリルゴムの微細な粒子間に均一に分散しているため、熱的に不安定な箇所が局在しないので、熱安定性が顕著に良好である。
高度な耐オゾン性のニーズに応えるためには、上記ポリマーブレンド組成物中の塩化ビニル樹脂を融解させて、二トリルゴム中に均一に分散させる必要がある。塩化ビニル樹脂を融解させて二トリルゴム中に均一に分散させるためには、上記ポリマーブレンド組成物を好ましくは130〜230℃で、より好ましくは160〜210℃で混練する「熱入れ」操作を行う。混練時間は、好ましくは1〜10分、より好ましくは4〜6分である。混練温度が低すぎたり、混練時間が短かすぎたりすると塩化ビニル樹脂粒子が溶融しないおそれがあり、混練温度が高すぎたり、混練時間が長すぎたりするとポリマー相が劣化する可能性がる。こうして熱入れしてなる本発明の熱入れゴム組成物は、塩化ビニル樹脂が溶融して重合体分子レベルでニトリルゴム分子と均一に混合されているので、耐オゾン性が良好な成形品を与えることができる。
熱入れ操作のための混合機としては、通常、ゴム工業でゴム組成物を混練するために使用される、加熱可能な混合機であれば限定されないが、ブラベンダ、バンバリーミキサ、ロール機などが好ましく使用される。
前記熱入れ操作の際に、必要に応じて熱安定性をさらに向上させるために、塩化ビニル樹脂用の前記の熱安定剤又は熱安定助剤を添加することができる。熱安定剤又は熱安定助剤の使用量は、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部である。
また、熱入れ操作の際に、必要に応じて老化防止剤を添加することができる。老化防止剤を添加することにより、特にニトリルゴムについて、熱入れ工程時、熱入れゴム組成物の長期保存時、成形後の長期経過時等における劣化防止に有効である。老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などが好ましい。老化防止剤の使用量は、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明のポリマーブレンド組成物及び熱入れゴム組成物には、ニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他のゴムや樹脂を、これら組成物の調製時に含有させてもよい。これらのゴムあるいは樹脂の含有量は、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対し、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。これらその他のゴム等の含有量が多すぎると、成形品の耐油性、耐寒性または耐オゾン性が劣るおそれがある。
本発明のポリマーブレンド組成物及び熱入れゴム組成物には、通常、架橋剤を配合して架橋性の組成物とし、成形及び架橋を可能にする。架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機過酸化物、ポリアミン系架橋剤などが挙げられる。
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄などの硫黄;4,4’−ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、高分子多硫化物など有機硫黄化合物;などが挙げられる。
有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類などが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。ジアシルパーオキサイドとして、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどが挙げられる。パーオキシエステルとして、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
ポリアミン系架橋剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物であって、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素がアミノ基又はヒドラジド構造、すなわち−CONHNHで表される構造に置換されたものである。ポリアミン系架橋剤としては、脂肪族多価アミン類、芳香族多価アミン類、ヒドラジド構造を2つ以上有する化合物などが挙げられる。脂肪族多価アミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などが挙げられる。芳香族多価アミン類としては、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシジフェニルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などが挙げられる。ヒドラジド構造を2つ以上有する化合物としては、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類により異なるが、前記ゴム100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.3〜7重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。架橋剤の使用量が少なすぎると成形品の圧縮永久歪みが大きくなるおそれがあり、多すぎるとゴム弾性に劣る可能性がある。
硫黄系架橋剤を用いる場合は、通常、架橋促進剤を併用する。架橋促進剤としては、亜鉛華、スルフェンアミド系架橋促進剤、グアニジン系架橋促進剤、チアゾール系架橋促進剤、チウラム系架橋促進剤、ジチオ酸塩系架橋促進剤などが挙げられる。架橋促進剤の使用量は特に限定されず、架橋物の用途、要求性能、硫黄架橋剤の種類、架橋促進剤の種類などに応じて決めればよい。
有機過酸化物を用いる場合は、通常、架橋助剤を併用する。架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。これらは、クレー、炭酸カルシウム、シリカなどに分散させ、ポリマーアロイの加工性を改良したものを使用してもよい。架橋助剤の使用量は特に限定されず、架橋物の用途、要求性能、架橋剤の種類、架橋助剤の種類などに応じて決めればよい。
本発明のポリマーブレンド組成物及び熱入れゴム組成物には、その他必要に応じて補強剤(カーボンブラック、シリカ等)、充填剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を含有させてもよい。
本発明のポリマーブレンド組成物又は熱入れゴム組成物を用いて成形品を得るには、所望の成形品形状に応じた成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロール機等により成形を行うが、通常、形状を固定化するために架橋して架橋物とする。予め成形した後に架橋しても、成形と架橋を同時に行ってもよい。成形温度は、好ましくは10〜200℃、より好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、好ましくは1分〜5時間、より好ましくは2分〜1時間である。
また、成形品の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても、内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
本発明のポリマーブレンド組成物は、顕著に秀でた熱安定性を有しているため、熱入れ操作時の混練(好ましくは130〜230℃)を経ても、着色やポリマー相の劣化が抑えられる。さらにそれらを熱入れしてなる熱入れゴム組成物は、耐油性及び耐オゾン性に優れる。そのため、ホース、ベルト、シール及びロールなどの材料として好適に用いられる。具体的には、燃料ホース、タイミングベルト、パッキン、オイルシール、OAロール、自動車内装部材、燃料系のシール、ガスケットなどの材料として好適である。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は、特に断わりのない限り重量基準である。
試験、評価は下記によった。
(1)ゴムのムーニー粘度
ニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、JIS K 6300に準じて測定した。
(2)塩化ビニル樹脂の平均重合度
塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K6721規定の比粘度法に準じて測定した。
(3)ゴムラテックス粒子の平均粒径
粒経測定器(N4 Plus サブミクロン粒度分布測定装置、コールター社製)を用いて、単分散モード分析を行った測定値をゴムラテックス粒子の平均粒経とした。
(4)塩化ビニル樹脂粒子及びハイドロタルサイトの平均粒径
塩化ビニル樹脂ラテックスは水で希釈し、また、ハイドロタルサイト粉末は水に添加して、28kHzの超音波振盪器に1分かけ、0.5重量%の分散液を調製した後、レーザ回折散乱法による粒径測定器(SALD2000J、島津製作所社製)にかけて得られる体積基準の累積粒径分布における累積50%相当粒径を平均粒径とした。
(5)ハイドロタルサイトサスペンションの分散安定性
ハイドロタルサイトサスペンションの分散安定性は、調整したハイドロタルサイトサスペンションを室温下にて24時間静置した後のハイドロタルサイトサスペンションの状態を目視によって次の基準で評価した。
○:ハイドロタルサイトと水が分離せず均一な状態を保っている。
△:ハイドロタルサイトと水が分離している。または、ハイドロタルサイト
サスペンションが粘土状となり流動状態にない。
×:ハイドロタルサイトが液表面に浮き、サスペンション化されていない。
(6)ポリマーブレンド組成物の熱安定性
ポリマーブレンド組成物の熱安定性は、色相と表面肌との二つの試験から評価した。色相は、熱入れ操作を行って得た熱入れゴム組成物のポリマー相(ニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂の混合相)の色相を肉眼で観察した。表面肌は、シート状の熱入れゴム組成物の表面肌を肉眼で観察した。
(7)耐オゾン性
JIS K6259に準じて、40℃、オゾン濃度50pphm、40%伸長で、24時間及び144時間後の状態を次の基準で評価した。
試験片(試験シート)の作製については、先ず、50℃に加温したバンバリーミキサで、熱入れゴム組成物100部、加硫促進剤の酸化亜鉛5部及びステアリン酸1部、補強剤のカーボンブラック(SRFカーボン、東海カーボン社製)60部、並びに、可塑剤のアルキルスルホン酸フェニルエステル(メザモール、バイエル社製)20部を5分間混練した後、50℃に加温したロール機に移して加硫剤の硫黄0.5部、加硫促進剤のテトラメチルイウラムジスルフィド(ノクセラーTT、大内新興化学社製)1.5部及びN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学社製)1.5部を加えて5分間混練して成形用ゴム組成物を調製した。次いで該組成物を160℃、20分間のプレスによって成形、一次架橋して厚み2mm、縦150mm、横150mmのシートを得、これを試験片に用いた。
クラックが小さいほど、また、クラック数が少ないほど耐オゾン性に優れる。
NC:クラックの発生が認められない。
A1、B3、C2等:アルファベットはクラック数を表し、Aに比べてBが
多く、Bに比べてCが多い。数字が大きいほどクラックの大きさが大きい。
Cut:クラックが大きくなり、試験シートが切断された
(製造例1)ニトリルゴムラテックスの製造
攪拌機付き反応器に、水180部、ロジン酸カリウム4部、及び、連鎖移動剤のt−ドデシルメルカプタン0.5部を仕込んで気相を窒素置換、減圧脱気した後、アクリロニトリル35部及び1,3−ブタジエン65部を仕込み、撹拌しつつ内容物を30℃にし、重合開始剤である過硫酸カリウム0.3部を添加して乳化重合を開始した。その後、重合添加率90%の時点で硫酸ヒドロキシルアミン0.3部を添加して反応を停止し、ニトリルゴムラテックスを得た。ラテックス中のニトリルゴム粒子含有量は32%で、ゴム粒子の平均粒径は0.15μmであった。同ラテックスのサンプルを塩化カルシウムで凝固し、ろ過、洗浄、乾燥して得たニトリルゴムのアクリロニトリル単量体単位は33%、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は63であった。
(製造例2)塩化ビニル樹脂ラテックスの製造
攪拌機付耐圧反応器に、水120部、ラウリル硫酸ナトリウム0.8部、ラウリルアルコール1部、ラウロイルパーオキサイド0.04部を仕込んで窒素置換、減圧脱気した後、塩化ビニル100部を仕込んで攪拌、混合した。この混合物をホモジナイザで均質化した後、別の脱気された耐圧反応器に移し、ジャケットより加温して58℃にて微細懸濁重合を開始した。重合転化率が90%に達した後、未反応単量体を放出した。得られた塩化ビニル樹脂ラテックスの樹脂濃度は40%、樹脂粒子の平均粒径は1.0μmであった。少量採取したサンプルを乾燥して測定した樹脂の平均重合度は1,000であった。
(実施例1)
ハイドロタルサイト(アルカマイザー1、協和化学社製、平均粒径0.5μm)100部、直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(テイカパワーLN2450、テイカ社製)7.5部、含水アルミニウムケイ酸塩(オスモスN、白石工業社製)5部及び水387.5部をボールミルで8時間混合してから取り出した。濃度は20%であった。該サスペンションの分散安定性を試験した結果を表1に記す。
(実施例2〜4、比較例1〜3)
表1に記す成分及び量を用いて実施例1と同様にしてハイドロタルサイトサスペンションを調製した。それらの分散安定性の試験結果を表1に記す。
Figure 2006206660
表1が示すように、本発明が規定するハイドロタルサイトサスペンションは分散安定性が極めて良好であった(実施例1〜4)。これに対して、界面活性剤や分散剤の配合量又はハイドロタルサイト濃度が規定外であると、分散安定性の低いサスペンションとなった(比較例1〜3)。
(実施例5)
塩化ビニル樹脂ラテックス75部(塩化ビニル樹脂に換算すると30部)と、実施例1で調製したハイドロタルサイトサスペンション1.5部(ハイドロタルサイトに換算すると0.3部)とをよく混合しておき、これにニトリルゴムラテックス218.75部(ニトリルゴムに換算すると70部)を注ぎ入れて混合した。次いで、このエマルション混合物に撹拌下で塩化カルシウム3.5部を添加して凝固し、ろ別してから真空乾燥機に入れ、60℃にて水分含有率1%以下になるまで乾燥してポリマーブレンド組成物を得た。
ポリマーブレンド組成物をブラベンダにて200℃に昇温するまで5分間混練して熱入れゴム組成物を得た後、50℃に加温したロール機に移し、5分間混練した後、引出して熱入れゴム組成物を厚さ2mmのシート状にした。
ポリマーブレンド組成物の熱安定性について、ロール機にてシート出しした直後の熱入れゴム組成物の色相と、シートの表面肌を評価した。また、成形用ゴム組成物を用いて圧縮成形して得た試験シートについて耐オゾン性試験を行った。結果を表2に記す。
(比較例4)
ニトリルゴムラテックス100部を撹拌しつつ、これに塩化カルシウム3.5部を添加して凝固し、ろ別してから真空乾燥機に入れ、60℃にて水分含有率1%以下になるまで乾燥して、ニトリルゴム乾燥クラムを得た。一方、塩化ビニル樹脂ラテックスの一部を噴霧乾燥機で熱風入り口温度150℃、熱風出口温度55℃の条件で乾燥して水分含有率0.3%の塩化ビニル樹脂粉末を得た。
ヘンシェルミキサに塩化ビニル樹脂粉末30部及びハイドロタルサイト0.3部を入れ、撹拌して70〜80℃として5分間混合した後、ブラベンダに移してニトリルゴム乾燥クラム70部を加えて200℃に昇温するまで5分間混練して熱入れゴム組成物を得た後、50℃に加温したロール機に移し、5分間混練した後、引出して熱入れゴム組成物を厚さ2mmのシート状にした。実施例5と同様の試験を行った結果を表1に記す。
(比較例5)
比較例4において、ハイドロタルサイト、塩化ビニル樹脂粉末及びニトリルゴム乾燥クラムの比較例4における混合操作に代えて、ロール機でニトリルゴム乾燥クラム及びハイドロタルサイトを70℃で5分間混合した後、ブラベンダに移して塩化ビニル樹脂粉末を加えて200℃に昇温するまで5分間混練する操作を採った他は、総て比較例4と同様に行った。実施例5と同様の試験を行った結果を表2に記す。
(比較例6)
比較例4において、ハイドロタルサイト、塩化ビニル樹脂粉末及びニトリルゴム乾燥クラムの比較例4における混合操作に代えて、ロール機でニトリルゴム乾燥クラム及び塩化ビニル樹脂粉末を70℃で5分間混合した後、ブラベンダに移してハイドロタルサイトを加えて200℃に昇温するまで5分間混練する操作を採った他は総て比較例4と同様に行った。実施例5と同様の試験を行った結果を表2に記す。
(比較例7)
実施例5において、ハイドロタルサイトサスペンションを使用せず、塩化ビニル樹脂ラテックス及びニトリルゴムラテックスの混合後にカルシウム/亜鉛系熱安定剤(SC−71、旭電化工業社製)0.3部を添加して混合した他は、総て実施例5と同様に行った。実施例5と同様の試験を行った結果を表2に記す。
Figure 2006206660
表2が示すように、ハイドロタルサイトサスペンション、ニトリルゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合したエマルション混合物は、凝固(共沈)、真空乾燥を経てから200℃で溶融混練されると、ポリマー相の色相が黄色ないし淡黄色の淡い色であり、シート表面は平滑で熱安定性の優れた熱入れゴム組成物になり、また、該組成物の成形品は耐オゾン性が顕著に優れていた(実施例5)。
一方、ハイドロタルサイト、ニトリルゴム及び塩化ビニル樹脂の三者をドライブレンドした組成物は、その混合順序如何によらず、200℃で溶融混練されると色調が橙色、茶色ないし褐色であり、また、シート表面は祖面で、いずれも熱安定性の劣る組成物となった。また、それらを用いた成形品はいずれも耐オゾン性が劣った(比較例4〜6)。
ハイドロタルサイトサスペンションを添加せずに、ニトリルゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの混合物にカルシウム/亜鉛系熱安定剤を添加して凝固し、乾燥、200℃混練した場合は、成形品の耐オゾン性は良好であったが、該組成物は熱安定性に劣った(比較例7)。

Claims (7)

  1. ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜20重量部及び水からなるハイドロタルサイト濃度5〜40重量%のハイドロタルサイトサスペンション。
  2. ハイドロタルサイト100重量部、界面活性剤3〜20重量部、分散剤0.1〜20重量部及び水150〜1900重量部を容器駆動ミル、媒体撹拌ミル又はコロイドミルで混合することを特徴とするハイドロタルサイトサスペンションの製造方法。
  3. 請求項1記載のハイドロタルサイトサスペンション、不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス及び塩化ビニル樹脂ラテックスの三者を混合して凝固し、次いで乾燥してなり、
    前記不飽和ニトリル−共役ジエンゴムラテックス中のゴム、及び、前記塩化ビニル樹脂ラテックス中の樹脂の混合割合が、重量比で90/10〜40/60であるポリマーブレンド組成物。
  4. 請求項3記載のポリマーブレンド組成物を130〜230℃で混練してなる熱入れゴム組成物。
  5. 前記ハイドロタルサイトの量が、前記ゴム及び前記樹脂の合計100重量部に対して0.01〜10重量部である請求項3記載のポリマーブレンド組成物。
  6. さらに架橋剤を、前記ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部含有してなる請求項3又は5記載のポリマーブレンド組成物。
  7. さらに架橋剤を、前記ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部含有してなる請求項4記載の熱入れゴム組成物。

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