JP2002146211A - 高分子ナノ複合材料およびその製造方法 - Google Patents

高分子ナノ複合材料およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子ナノ複合材料およびその製造方法を提
供すること。 【解決手段】 本発明は高分子ナノ複合材料およびその
製造方法に関するものである。正電性の高分子電解質、
ケイ酸塩粘土などの層状無機材料および負電性の表面を
含む高分子ラテックスが「凝固」することにより高分子
ナノ複合材料を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状の無機材料/
高分子電解質/高分子材料からなる高分子ナノ複合材料
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ナノ複合材料は、基質中に粒径が1〜1
00nmの粒子が分散した複合材料である。とくに、ナ
ノ複合材料は、粘土などの層状で、有機材料を含んでお
り、粒径が小さく、高比率の可視半径(visual radiu
s)を有する粒子による補強構造およびイオン結合とい
った特質を有している。その結果、この材料は、高強
度、高剛性、高耐熱性、低吸湿性、低透過性を有し、何
度も再利用することができる。このナノ分散高分子/粘
土複合材料の市販品は、現在、車両部品および空気遮断
ラップ用フィルム(air-blocking wrapping film)に用
いられる宇部興産(株)製の材料(1990年)と、車
両部品およびエンジニアプラスチックに用いられるユニ
チカ(株)製の材料(1996年)のみである。
【0003】ナノ複合材料を製造する従来の方法には、
(1)インサイチュ(In-Situ)重合、(2)混練、
(3)凝固および沈殿などがあった。現在、ナイロン6
ナノ複合材料がインサイチュ重合により商品化されてい
る。しかしながら、この方法は複雑であり、すべての高
分子材料に適しているとはいえない。さらに、混練は、
容易で便利ではあるが、設備がかなり高価であり、複雑
で高レベルの経験が必要であるので、商品化されていな
い。
【0004】凝固および沈殿については、アプライド
クレイ サイエンス(Applied ClayScience)15巻
(1999)1〜9頁などほとんどの研究において、層
状無機材料の再凝固を防ぐことが困難であることが示さ
れている。スペシャル ラバープロダクト(Special Ru
bber Product)19巻、2nd、6〜9頁1997に開
示されるスチレンブタジエンゴム(SBR)を例にあげ
ると、現在の製造方法について以下のように述べられて
いる。
【0005】(1)ラテックス法:粘土を水中でよく攪
拌して分散させ、ゴムラテックスと酸化防止剤を加えて
均一に混合し、この混合液に希釈塩酸を加えて凝固させ
た。それを水洗いして乾燥させたのち、粘土/SBRナ
ノ複合材料が得られた。粘土の格子面間隔は純粘土の
0.98nmから1.46nmに膨張した。このこと
は、粘土の層間に高分子材料が挿入されることにより、
層間ナノ複合材料が形成されることを示している。
【0006】(2)溶液法:有機粘土を加えることによ
り粘土を改質し、得られた粘土をトルエン中でよく攪拌
して分散させた。それから、ゴムのトルエン溶液を加え
て、この混合液をよく攪拌して均一な混合液にした。こ
れを乾燥させて沈殿させたのち、粘土/SBRナノ複合
材料が得られた。粘土の格子面間隔は純粘土の0.98
nmから有機的に改質されたのち1.90nmに膨張し
た。溶解、乾燥および沈殿処理後のナノ複合材料の格子
面間隔は1.90nmから4.16nmへとさらに膨張
した。このことは、高分子材料からなる多層が、粘土層
に挿入されることにより、ナノ複合材料の分散層が形成
されることを示している。それにもかかわらず、本方法
は大量のトルエン溶剤を用いるので、製造コストの増加
を招くとともに環境問題を生じている。
【0007】したがって、いかに容易かつ効果的に層状
無機材料自体の凝固を防ぐかが、凝固および沈殿の最大
の突破口である。本発明は、複数の電荷を有する高分子
電解質を用いて層状無機材料の凝固を防ぐことにより、
この問題を解決する。同時に、高分子電解質を層状無機
材料と高分子ラテックスとのあいだの凝固剤として用い
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上により、本発明
は、高分子ナノ複合材料を容易に製造することができる
「凝固」法を提供することを目的とする。
【0009】本発明は、液相(liquid form)で、また
は少量の有機溶剤を加えることにより、高分子ナノ複合
材料を製造するための方法を提供することをほかの目的
とする。
【0010】また、本発明は、高分子電解質を有する高
分子ナノ複合材料を提供することをほかの目的とする。
【0011】さらに、本発明は、層状無機材料/高分子
電解質/高分子ラテックスナノ複合材料およびその製造
方法を提供することをほかの目的とする。高分子電解質
は、層状無機材料および高分子ラテックスの電荷と反対
の電荷を有する。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め、本発明は、粘土溶液などといった層状無機材料と高
分子ラテックスとの凝固において、粘土と反対の電荷を
有する高分子電解質を導入する。この粘土を水中全体に
分散させてから、高分子電解質を加えて集積させる。粘
土/高分子電解質複合材料の余分な電荷を反対の電荷を
有する高分子ラテックスと結合させる。凝固により、充
分に分散した層状無機材料/高分子電解質/高分子ラテ
ックスからなるナノ複合材料が生成する。
【0013】本発明の高分子ナノ複合材料の製造方法
は、(a)粘土などの層状無機材料と高分子電解質とを
水溶液中で結合させて混合液を生成する工程(高分子電
解質は粘土と反対の余分の電荷を含み、この電荷により
高分子電解質が粘土上に吸着する)と;(b)工程
(a)の混合液を高分子ラテックスに加える工程(高分
子量ラテックスは高分子電解質と反対の電荷を含み、凝
固により、層状無機材料/高分子電解質/高分子ラテッ
クスの複合材料が生成される)と、からなる。
【0014】本発明の高分子ナノ複合材料は、(a)高
分子基質と;(b)前記高分子基質中に分散する層状無
機材料と;(c)前記層状無機材料と反対の電荷を含
み、前記層状無機材料に吸着する高分子電解質とからな
る。
【0015】従来技術と比較して、本発明は以下の特徴
を有する。
【0016】(1)ラテックス法と比較して、本発明で
は、高分子電解質を導入することにより凝固過程を導
く。この高分子電解質が、粘土および高分子ラテックス
と反対の電荷を有することにより、粘土、高分子ラテッ
クスおよび高分子電解質が結合する。その結果得られた
ナノ複合材料は付加的な装置や材料を必要としない。
【0017】(2)溶液法と比較して、本発明では、大
量の有機溶剤を使用しなくてもよく、設備投資、材料費
を含む製造コストを低減することができ、さらには、環
境問題の発生を防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】前記した本発明の目的、特徴およ
び長所をより一層明瞭にするため、以下に本発明の好ま
しい実施の形態をあげ、図を参照しながら、さらに詳し
く説明する。
【0019】層状無機材料(以下は粘土に関するもので
あるが、本発明を限定するものではない)の水溶液を高
分子ラテックスと混合することにより、粘土と高分子と
を結合させて凝固させようとしても、高分子ラテックス
および粘土が有する負電荷により、両者を結合、凝固さ
せることはできない。本発明では、粘土の水溶液と高分
子ラテックスとを混合する工程において、陽イオン高分
子電解質(CPE)などの負電荷を有する高分子電解質
を導入する。充分に分散した粘土をまず高分子電解質と
結合させる。高分子電解質の電荷量は、粘土が有する電
荷よりもはるかに大きいので、粘土/CPEの錯体は余
分な正電荷を有することになる。それから、前記錯体の
余分な電荷を反対の電荷を有する高分子ラテックス粒子
と結合させる。凝固により、充分に分散した粘土/高分
子電解質/高分子からなるナノ複合材料が生成する。
【0020】本発明で用いる粘土は、水中で負電荷を有
する層状ケイ酸塩であることが好ましい。陽イオン交換
能が30〜200ミリ当量/100gである粘土が好ま
しい。適した粘土としては、スメクタイト粘土(smecti
te clay)、バーミキュライト(vermiculite)、ハロイ
サイト(halloysite)、セリサイト(sericite)、フッ
化マイカなどがあげられる。前記スメクタイト粘土とし
ては、モンモリロナイト(montmorillonite)、サポナ
イト(saponite)、ベイデルライト(beidellite)、ノ
ントロナイト(nontronite)、ヘクトライト(hectorit
e)、ステベンサイト(stevensite)などがあげられ
る。前記フッ化マイカは、タルク65〜90重量%なら
びにフッ化ケイ素、フッ化ナトリウムおよびフッ化リチ
ウムのうちの少なくとも1種10〜35重量%からなる
混合物を結合、加熱することにより合成することができ
る。
【0021】高分子電解質は、複数の同じ電荷を有する
官能基を備える高分子である。本発明で用いられる高分
子電解質は、陽イオン高分子電解質であることが好まし
い。通常、陽イオン高分子電解質は、ハロゲンイオン、
酢酸イオン、過塩素酸塩イオンなどといった相対する負
電荷を含むことにより、電荷を中和する。適した陽イオ
ン高分子電解質としては、ポリ(塩化ジアリルジメチル
アンモニウム)、ポリ(4−ビニルピリジン)などがあ
げられる。
【0022】本発明における高分子ラテックスのラテッ
クス粒子の環境は、負電荷をともなうので、余分な正電
荷を有する粘土/CPE錯体と結合したときに、両者間
のクローン力により凝固が生じる。適した高分子ラテッ
クスとしては、スチレン−ブタジエンゴム、イソピペリ
レンゴム(isopiperylene rubber)、ブタジエンゴム、
アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴムなどのゴム
ラテックスがあげられる。さらに、ポリ塩化ビニル(P
VC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)、ポリウレタン(PU)などのほかの
高分子ラテックスを用いることもできる。
【0023】本発明の製造方法によれば、まず、粘土と
高分子電解質とを「非凝固」の状態で結合させる。前記
高分子電解質は前記粘土上に吸着する。このことを達成
するためには、粘土を水中に充分に分散させ、高分子電
解質溶液にこの粘土溶液を攪拌しながらゆっくりと加え
ることにより、凝固することを防ぐ。本発明において
は、高分子電解質の総電荷数が粘土の1〜10倍である
ことが好ましい。それから、粘土/高分子電解質混合溶
液を高分子ラテックスに加える。充分に攪拌して遠心分
離したのち、この混合液を水洗し、乾燥させることによ
り、粘土/高分子電解質/高分子からなるナノ複合材料
を製造することができる。
【0024】前記の方法により得られるナノ複合材料
は、(a)60〜99重量%の高分子基質と、(b)前
記高分子基質中に充分に分散した0.5〜30重量%の
層状粘土と、(c)前記粘土と反対の電荷を有し、前記
粘土上に吸着した0.5〜30重量%の高分子電解質と
からなる。錯体中の層状粘土の格子面間隔は2.0nm
以上であり、4.0nm以上であるか、または、完全に
剥離することが好ましい。
【0025】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明について詳細に
説明するが、このことは本発明を限定するものではな
く、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と
領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えること
ができる。
【0026】実施例で用いた材料は以下のとおりであ
る。 A.陽イオン高分子電解質(CPE) 分子量が100000〜200000である20重量%
のポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム) B.粘土 クニピアF 陽イオン交換能CEC=115ミリ当量/100g 比表面積(BET比表面積)A=750m2/g C.SBRラテックス 粒径:約68nm ゼータ電位:−31mV負電荷付き、固体濃度(solid
concentration)約65重量% D.アクリル(PMMA) 固体濃度約65重量% E.CaCl2溶液 2.0重量%濃度の溶液
【0027】比較例1:粘土/SBR混合物の製造 未処理のクニピアFを水に加えて、濃度を0.5重量%
に調整し、充分に分散した粘土溶液Aを製造した。SB
Rラテックスに水を加えて固体濃度を2.35重量%に
調整し、ラテックスBを製造した。異なる量の粘土溶液
Aを一定量のSBRラテックスBに注ぎ、この混合物を
よく攪拌して均一なラテックスを製造した。それから、
CaCl2溶液を数滴加えて沈殿物を生成させた。この
沈殿物を遠心分離機で分離したのち、水洗いして乾燥さ
せた。その結果、粘土含量が異なる複数の粘土/SBR
混合物を得た。
【0028】その組成を表1に記載する。X線回折チャ
ート(図1)より、粘土の量にかかわらず、角度2θが
約5.5°のときに、吸収ピーク(absorbent peak)が
明らかに存在することが分かる。図1は、粘土/SBR
混合物のX線回折を示しており、(a)はCCS−11
0(粘土量/SBR量=25重量%)、(b)はCCS
−111(粘土量/SBR量=12.8重量%)、
(c)はCCS−112(粘土量/SBR量=6.4重
量%)、(d)はCCS−113(粘土量/SBR量=
2.7重量%)、(e)はCCS−114(粘土量/S
BR量=6.4重量%)、(f)はCCS−115(粘
土量/SBR量=1.0重量%)、(g)はCCS−1
16(粘土量/SBR量=0.7重量%)である。
【0029】粘土の量が増加するにつれて、吸収ピーク
の強度も増加する(CCS−110〜CCS−11
6)。粘土の格子面間隔は約1.6nmである。しか
し、純粘土のX線回折チャート(図2)は角度2θが
7.0°のときに吸収ピークを示す(格子面間隔は1.
2nmと計算された)。図2は、粘土/CPE混合物の
X線回折を示しており、(a)は純粘土(クニピア
F)、(b)はCCH−01(粘土/CPE)である。
両者を比較すると、粘土/SBR混合物の格子面間隔は
明らかに開いていない。
【0030】
【表1】
【0031】注:(1)粘土/水は、純粘土(クニピア
F)を水中に加えて十分に分散させた0.5重量%の水
溶液である。(2)SBR溶液は、高濃度のSBRラテ
ックスを水中に加えて製造した固体濃度が2.35重量
%の溶液である。(3)CaCl2溶液の濃度は2.0
重量%である。(4)粘土量/SBR量はSBR重量に
対する粘土の重量比である。
【0032】実施例1:粘土/高分子電解質/SBRナ
ノ複合材料の製造 (a)粘土/高分子電解質溶液の製造 クニピアF5gを水1000g中に均一に分散させて粘
土製造用の溶液Aを、CPEを用いて2重量%の高分子
電解質溶液Bをそれぞれ製造した。一定量の粘土溶液A
を高分子電解質溶液Bに加えて、粘土/高分子電解質溶
液Cを製造した。高分子電解質の電荷の総モル数は粘土
の電荷(すなわち、イオン交換能)の5倍または7倍で
あった。溶液Cの一部を遠心分離機でろ過し、乾燥させ
た。得られた粘土の格子面間隔をX線回折により測定し
た。その結果、CPEを粘土に組み入れたのち、粘土の
格子面間隔は1.22nmから2.10nmに拡大した
(図2)。このことは陽イオン高分子電解質が粘土層に
挿入されたことを示している。
【0033】(b)粘土/高分子電解質/SBRナノ複
合材料の製造 得られた粘土/高分子電解質溶液Cを、攪拌中のSBR
ラテックスに、表2および表3に示された組成により、
加えた。つぎに、得られた均一なラテックスを高速遠心
分離機で分離し、水洗し、乾燥させて、粘土含量の異な
る複数のナノ複合材料を製造した。
【0034】X線回折チャート(図3および図4)によ
り、粘土含量が10重量%未満の場合(表2の試料CC
S−95、CCS−94、CCS−93;表3の試料C
CS−103、CCS−104、CCS−106)、角
度2θが2〜10°のあいだであるときには、明らかな
吸収ピークが存在しないことが示された。
【0035】図3は、粘土/CPE/SBRナノ複合材
料のX線回折を示しており、CPE/粘土の総電荷比は
5であり、(a)はCCS−95(粘土量/SBR量=
1.7重量%)、(b)はCCS−94(粘土量/SB
R量=2.4重量%)、(c)はCCS−93(粘土量
/SBR量=5.1重量%)である。図4は、粘土/C
PE/SBRナノ複合材料のX線回折を示しており、C
PE/粘土の総電荷比は7であり、(a)はCCS−1
06(粘土量/SBR量=1.0重量%、(b)はCC
S−105(粘土量/SBR量=1.6重量%、(c)
はCCS−104(粘土量/SBR量=2.3重量
%)、(d)はCCS−103(粘土量/SBR量=
4.8重量%)である。
【0036】このことにより、ほとんどの粘土層が完全
に開き、SBR基質中に均一に分散していることが分か
る。換言すると、このことは高分子電解質の存在により
SBR中の粘土の分散を実際に改良できることを示して
いる。
【0037】一方、粘土含量が増加する場合(表2のC
CS−92、CCS−91、CCS−90;表3のCC
S−102、CCS−101、CCS−100)、図5
および図6により、角度2θが4.0〜4.3°のあい
だ(図5)および3.2〜4.1°のあいだ(図6)で
あるときに弱い吸収ピークが存在することが示された。
図5は、粘土/CPE/SBRナノ複合材料のX線回折
を示しており、CPE/粘土の総電荷比は5であり、
(a)はCCS−92(粘土量/SBR量=10.2重
量%)、(b)はCCS−91(粘土量/SBR量=1
7.0重量%)、(c)はCCS−90(粘土量/SB
R量=34.0重量%)である。図6は、粘土/CPE
/SBRナノ複合材料のX線回折を示しており、CPE
/粘土の総電荷比は7であり、(a)はCCS−102
(粘土量/SBR量=9.7重量%)、(b)はCCS
−101(粘土量/SBR量=16.2重量%)、
(c)はCCS−100(粘土量/SBR量=32.3
重量%)である。
【0038】粘土含量が増加するにつれて、吸収ピーク
の強度も増加する。本実施例の吸収ピークの位置を比較
例1と比較すると、本実施例の粘土の格子面間隔が比較
例1の粘土の格子面間隔よりも大きいことが分かる。
【0039】また、本実施例および比較例1における粘
土含量が同じであるとき、本実施例のピーク強度の方が
明らかに小さいことより、格子の挿入によって分離した
粘土の小部分がなお存在することも分かる。図5と図6
とを比較すると、高分子電解質の電荷のモル総数は、粘
土の電荷のモル総数の5倍であるが、後者は7倍以上で
ある。図6の吸収ピークは明らかでない。このことは、
高分子電解質がSBR中の粘土の分散を促進することが
できることを示している。
【0040】
【表2】
【0041】注:(1)CCH−01(1/5)溶液
は、0.5重量%の粘土溶液を2.0重量%のCPE溶
液(実施例1の溶液C)中に均一に分散させることによ
り製造した。そのうち、粘土の濃度は0.40重量%で
あり、CPEの濃度は0.37重量%である。(2)S
BRラテックスは、高濃度のSBRラテックスに水を加
えて製造した固体含量が2.35重量%のラテックスで
ある。(3)粘土量/SBR量はSBR重量に対する粘
土の重量比である。
【0042】
【表3】
【0043】注:(1)CCH−02(1/7)溶液
は、0.5重量%の均一な粘土溶液を2.0重量%のC
PE溶液(実施例1の溶液C)に均一に分散させること
により製造した。粘土の濃度は0.38重量%、CPE
の濃度は0.49重量%である。(2)SBRラテック
スは、高濃度のSBRラテックスに水を加えて製造した
固体含量が2.35重量%のラテックスである。(3)
粘土量/SBR量は、SBR重量に対する粘土の重量比
である。
【0044】比較例2:粘土/アクリル混合物の製造 未処理のクニピアFを水に加え、濃度を調整して0.5
重量%の充分に分散した粘土溶液Aを製造した。アクリ
ルラテックスに水を加えて固体濃度を2.6重量%に調
整することによりラテックスBを製造した。異なる量の
粘土溶液Aを一定量のアクリルラテックスBに注入し、
この混合物を完全に攪拌して均一なラテックスを製造し
た。それから、数滴のCaCl2溶液を加えて沈殿物を
生成させた。この沈殿物を遠心分離機により分離してか
ら、水洗し、乾燥させた。その結果、粘土含量の異なる
複数の粘土/アクリル混合物を得た。その組成を表4に
記載する。
【0045】X線回折チャート(図7)より、粘土含量
にかかわらず、角度2θが約6.6〜7.2°のあいだ
であるときに明らかな吸収ピークが存在することが分か
る。図7は、粘土/アクリル混合物のX線回折チャート
を示しており、(a)はCCM−30(粘土量/PMM
A量=23.1重量%)、(b)はCCM−31(粘土
量/PMMA量=11.5重量%)、(c)はCCM−
32(粘土量/PMMA量=5.8重量%)、(d)は
CCM−33(粘土量/PMMA量=2.5重量%)、
(e)はCCM−34(粘土量/PMMA量=1.5重
量%)、(f)はCCM−35(粘土量/PMMA量=
0.9重量%)、(g)はCCM−36(粘土量/PM
MA量=0.6重量%)である。
【0046】粘土の格子面間隔は約1.2nmである。
粘土量が増加するにつれて、吸収ピークの強度も増加す
る(CCS−30〜CCS−36)。しかしながら、純
粘土のX線回折チャート(図2)は、角度2θが7.0
°であるときに吸収ピークを現す(格子面間隔は1.2
nmと計算された)。両者を比較すると、粘土/アクリ
ル混合物の格子面間隔は明らかには開いていないことが
分かる。
【0047】
【表4】
【0048】注:(1)粘土/水溶液は、純粘土クニピ
アFを水中に加えて充分に分散させた0.5重量%溶液
である。(2)PMMA溶液は、水を高濃度のPMMA
ラテックスに加えて、固体含量を2.60重量%に調整
することにより製造した。(3)CaCl2溶液の濃度
は2.0重量%である。(4)粘土量/PMMA量は、
PMMA重量に対する粘土の重量比である。
【0049】実施例2:粘土/高分子電解質/PMMA
ナノ複合材料の製造 実施例1と同じ手順を行い、表5および表6に示す粘土
/高分子電解質の組成物を一定量のPMMAラテックス
に加えた。それから、この混合物を攪拌して均一なラテ
ックスを製造した。遠心分離機によって分離したのち、
水洗し、乾燥させて、粘土の濃度が異なる複数のナノ粘
土/PMMA複合材料を得た。
【0050】X線回折チャート(図8および図9)は、
粘土含量が10重量%未満である場合(図5のCCM−
24、CCM−25、CCM−26;表6のCCM−4
4、CCM−45、CCM−46など)、角度2θが2
〜10°のあいだであるときに明らかな吸収ピークが存
在しないことを示している。
【0051】図8は、粘土/CPE/PMMAナノ複合
材料のX線回折を示しており、CPE/粘土の総電荷比
は5であり、(a)はCCM−26(粘土量/PMMA
量=0.9重量%)、(b)はCCM−25(粘土量/
PMMA量=1.5重量%)、(c)はCCM−24
(粘土量/PMMA量=2.2重量%)である。図9
は、粘土/CPE/PMMAナノ複合材料のX線回折を
示しており、(a)はCCM−46(粘土量/PMMA
量=0.9重量%)、(b)はCCM−45(粘土量/
PMMA量=1.5重量%)、(c)はCCM−44
(粘土量/PMMA量=2.0重量%)である。
【0052】このことより、ほとんどの粘土層は完全に
開いており、PMMA基質中に均一に分散していること
が分かる。換言すると、このことは高分子電解質の存在
によりPMMA中の粘土の分散を実際に改良できること
を示している。一方、粘土含量が増加する場合(表5の
CCM−22、CCM−21、CCM−20;表6のC
CM−42、CCM−41、CCM−40)、図10お
よび図11により、角度2θが3.5〜4.2°のあい
だ(図10)および3.6〜4.0°のあいだ(図1
1)であるときに弱い吸収ピークが存在することが示さ
れた。
【0053】図10は、粘土/CPE/PMMAナノ複
合材料のX線回折チャートを示しており、CPE/粘土
の総電荷比は5であり、(a)はCCM−22(粘土量
/PMMA量=9.2重量%)、(b)はCCM−21
(粘土量/PMMA量=15.4重量%)、(c)はC
CM−20(粘土量/PMMA量=30.8重量%)で
ある。図11は、粘土/CPE/PMMAナノ複合材料
のX線回折チャートを示しており、CPE/粘土の総電
荷比は7であり、(a)はCCM−42(粘土量/PM
MA量=8.8重量%、(b)はCCM−41(粘土量
/PMMA量=14.6重量%)、(c)はCCM−4
0(粘土量/PMMA量=29.2重量%)である。粘
土含量が増加するにつれて、吸収ピークの強度も増加す
る。
【0054】本実施例の吸収ピークの位置を比較例2と
比較すると、本実施例の粘土の格子面間隔が比較例2に
おける粘土の格子面間隔よりも大きいことが分かる。ま
た、本実施例および比較例2における粘土含量が同じで
あるときに、本実施例のピーク強度の方が明らかに小さ
いことより、格子の挿入によって分離した粘土が小部分
がなお存在することも分かる。図10と図11とを比較
すると、高分子電解質の電荷のモル総数は、粘土の電荷
のモル総数の5倍であるが、後者は7倍大きい。その吸
収ピークは明らかでない。このことは、高分子電解質が
PMMA中の粘土の分散を促進することができることを
示している。
【0055】
【表5】
【0056】注:(1)CCH−01(1/5)溶液
は、0.5重量%の均一な粘土溶液を2.0重量%のC
PE溶液(実施例1の溶液C)に均一に分散させること
により製造した。粘土の濃度は0.40重量%、CPE
の濃度は0.37重量%、CPE/粘土の総電荷比は5
である。(2)PMMAラテックスは、水を高濃度のP
MMAラテックスに加えて生成した固体含量が2.60
重量%のラテックスである。(3)粘土量/PMMA量
は、PMMA重量に対する粘土の重量比である。
【0057】
【表6】
【0058】注:(1)CCH−02(1/7)溶液
は、0.5重量%の均一な粘土溶液を2.0重量%のC
PE溶液(実施例1の溶液C)に均一に分散させること
により製造した。粘土の濃度は0.38重量%、CPE
の濃度は0.49重量%、CPE/粘土の総電荷比は7
である。(2)PMMAラテックスは、水を高濃度のP
MMAラテックスに加えて製造した固体含量が2.60
重量%のラテックスである。(3)粘土量/PMMA量
は、PMMA重量に対する粘土の重量比である。
【0059】前記の結果は、高分子電解質(CPE)を
用いることにより、本発明のナノ複合材料の「凝固」を
達成できること示している。
【0060】本発明の好ましい実施例を前述のとおり開
示したが、これらは決して本発明を限定するものではな
く、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と
領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えること
ができ、したがって本発明の保護範囲は、特許請求の範
囲で指定した内容を基準とする。
【0061】
【発明の効果】本発明では、層状無機材料上に、反対の
電荷を有する高分子電解質が吸着した層状無機材料を使
用するので、層状無機材料が高分子基質中に高度に分散
した高分子ナノ複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粘土/SBR混合物のX線回折を示すチャート
である。
【図2】粘土/CPE混合物のX線回折を示すチャート
である。
【図3】粘土/CPE/SBRからなるナノ複合材料の
X線回折を示すチャートである。
【図4】粘土/CPE/SBRナノ複合材料のX線回折
を示すチャートである。
【図5】粘土/CPE/SBRナノ複合材料のX線回折
を示すチャートである。
【図6】粘土/CPE/SBRナノ複合材料のX線回折
を示すチャートである。
【図7】粘土/アクリル混合物のX線回折を示すチャー
トである。
【図8】粘土/CPE/PMMAナノ複合材料のX線回
折を示すチャートである。
【図9】粘土/CPE/PMMAナノ複合材料のX線回
折を示すチャートである。
【図10】粘土/CPE/PMMAナノ複合材料のX線
回折を示すチャートである。
【図11】粘土/CPE/PMMAナノ複合材料のX線
回折を示すチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 39:00) C08L 39:00) Fターム(参考) 4F070 AA05 AA06 AA07 AA08 AA18 AA22 AA32 AA53 AC27 AC74 AE14 FA05 FA13 4J002 AC011 AC031 AC071 AC081 BC021 BD031 BG061 BJ002 CK021 DM006 FA016 FD206 FD312

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子基質60〜99重量%と、前記高
    分子基質に均一に被覆された層状無機材料0.5〜30
    重量%と、前記層状無機材料と反対の電荷を有し、前記
    層状無機材料上に吸着した高分子電解質0.5〜30重
    量%とからなる高分子ナノ複合材料。
  2. 【請求項2】 前記高分子基質が、スチレンブタジエン
    ゴム、イソピペリレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロ
    ニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ポリ塩化ビニル、
    ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートおよびポリウ
    レタンからなる群から選ばれた1種または2種以上であ
    る請求項1記載の高分子ナノ複合材料。
  3. 【請求項3】 前記高分子基質の原料が高分子ラテック
    スである請求項2記載の高分子ナノ複合材料。
  4. 【請求項4】 前記高分子ラテックスがスチレンブタジ
    エンゴムラテックスまたはアクリルラテックスである請
    求項3記載の高分子ナノ複合材料。
  5. 【請求項5】 前記層状無機材料が粘土であり、その陽
    イオン交換能が30〜200ミリ当量/100gである
    請求項1記載の高分子ナノ複合材料。
  6. 【請求項6】 前記層状無機材料が、スメクタイト粘
    土、バーミキュライト、ハロイサイト、セリサイトおよ
    びフッ化マイカからなる群より選ばれた請求項5記載の
    高分子ナノ複合材料。
  7. 【請求項7】 前記スメクタイト粘土が、モンモリロナ
    イト、サポナイト、ベイデルライト、ノントロナイト、
    ヘクトライトおよびステベンサイトからなる群より選ば
    れた請求項6記載の高分子ナノ複合材料。
  8. 【請求項8】 前記高分子電解質が、陽イオン高分子電
    解質である請求項1記載の高分子ナノ複合材料。
  9. 【請求項9】 前記陽イオン高分子電解質が、ポリ(塩
    化ジアリルジメチルアンモニウム)およびポリ(4−ビ
    ニルピリジン)からなる群より選ばれる1種または2種
    以上である請求項8記載の高分子ナノ複合材料。
  10. 【請求項10】 前記高分子電解質の総電荷モル数が、
    前記層状無機材料の1〜10倍である請求項9記載の高
    分子ナノ複合材料。
  11. 【請求項11】 (a)層状無機材料の溶液と、前記層
    状無機材料と反対かつそれ以上の電荷を有する高分子電
    解質の溶液とを混合して混合溶液を得、前記層状無機材
    料上に前記高分子電解質を吸着させる工程と、(b)前
    記混合溶液と、前記高分子電解質と反対の電荷を有する
    高分子ラテックスとを混合し、凝固させることにより、
    層状無機材料/高分子電解質/高分子ナノ複合材料を得
    る工程とからなる高分子ナノ複合材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記溶液が有機溶剤を含む請求項11
    記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記高分子ラテックスが、スチレンブ
    タジエンゴム、イソピペリレンゴム、ブタジエンゴム、
    アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ポリ塩化
    ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートおよ
    びポリウレタンからなる群より選ばれた1種または2種
    以上のラテックスである請求項11記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記高分子ラテックスがスチレンブタ
    ジエンゴムラテックスまたはアクリルラテックスである
    請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記層状無機材料が粘土であり、その
    陽イオン交換能が30〜200ミリ当量/100gであ
    る請求項11記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記層状無機材料が、スメクタイト粘
    土、バーミキュライト、ハロイサイト、セリサイトおよ
    びフッ化マイカからなる群より選ばれた請求項15記載
    の方法。
  17. 【請求項17】 前記スメクタイト粘土が、モンモリロ
    ナイト、サポナイト、ベイデルライト、ノントロナイ
    ト、ヘクトライトおよびステベンサイトからなる群より
    選ばれた請求項16記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記高分子電解質が陽イオン高分子電
    解質である請求項11記載の方法。
  19. 【請求項19】 前記陽イオン高分子電解質が、ポリ
    (塩化ジアリルジメチルアンモニウム)およびポリ(4
    −ビニルピリジン)からなる群より選ばれた1種または
    2種以上である請求項18記載の方法。
  20. 【請求項20】 前記高分子電解質の総電荷モル数が、
    前記層状無機材料の1〜10倍である請求項19記載の
    方法。
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