JP2006348216A - 高分子複合体の製造方法および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の高分子複合体の製造方法は、無機粒子(A)のスラリーとポリマー(B)のラテックスとを水中で混合する高分子複合体の製造方法において、ポリマー(B)のラテックスが、無機粒子(A)のスラリーと反対の符号の表面電位を有する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した高分子複合体の製造方法により得られた高分子複合体と、ポリマー(B)と同種または異種のポリマー(B’)とを含有する。
【選択図】 なし
Description
ここで、混練法としては、二軸押出機のような混練装置を用いて無機粒子とポリマーとを混合する方法が知られている。重合法としては、ナイロン6とモンモリロナイトとの複合体を製造するin−situ重合法などが知られている。凝固法としては、ポリマーラテックスと無機粒子の水分散液(スラリー)を混合し、酸を添加して凝固する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
エル・チャン(L.Zhang)ら著、「ジャーナル オブ アプライドポリマーサイエンス(Journal of Applied Polymer Science)」、第78巻、2000年、p.1873
無機粒子の分散性は、混練装置を工夫することで改善することはできるが、設備費用が高くなる上に、複雑になるため、高度な経験と技能が必要になる。
また、無機粒子に表面処理をあらかじめ施して、無機粒子とポリマーとの間の親和性を高める方法も知られているが、経済的でない。
凝固法では、酸の添加によりpHが低くなるため、無機粒子の種類によってはイオン化して水相へ溶出し、ポリマー中に取り込めなくなることがある。そのため、複合化させる無機粒子の種類に制約を受ける。
以上のことから、充填材である無機粒子をポリマー中に均一にかつ簡便に分散でき、しかも無機粒子およびポリマーの種類の制限が少ない高分子複合体の製造方法が強く求められていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、無機粒子をポリマー中に均一にかつ簡便に分散でき、しかも無機粒子およびポリマーの種類の制限が少ない高分子複合体の製造方法を提供することを目的とする。さらには、無機粒子がポリマー中に均一にかつ簡便に分散した熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
ポリマー(B)のラテックスが、無機粒子(A)のスラリーと反対の符号の表面電位を有することを特徴とする。
本発明の高分子複合体の製造方法においては、さらに、電位調整剤(C)を混合することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した高分子複合体の製造方法により得られた高分子複合体と、ポリマー(B)と同種または異種のポリマー(B’)とを含有することを特徴とする。
また、酸を使用しないことにより、製造設備の腐食を防ぐことができる上に、凝固物を容易に洗浄できる。さらに、本発明の高分子複合体の製造方法では、全て湿式で実施するため、混合時の粘度が低く、乾式の混練法に比べて混合時の攪拌エネルギーが少ない。
無機粒子(A)のスラリーに含まれる無機粒子(A)としては、高分子複合体に求められる特性あるいは機能に応じて様々なものを使用できる。具体的な例としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、マイカ、層状ケイ酸塩などが挙げられ、これらを1種または2種以上を使用することができる。
無機粒子の表面には、目的に応じてあらかじめ表面処理を施しておいても構わない。例えば、無機粒子とポリマーの界面の親和性を高める目的で、カップリング剤等により無機粒子を表面処理しておいてもよい。
無機粒子を分散させる際に濡れ性が不足する場合には、必要に応じて、分散剤を添加してもよい。分散剤としては特に制限はなく、公知のものを使用できる。
また、無機粒子(A)のスラリーとしては、市販品をそのまま使用しても構わない。
ポリマー(B)としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、アクリルゴムなどのゴム成分や、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂のようなスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリビニルアセテート系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンなどを使用できる。
ポリマー(B)のラテックスの中でも、ラテックス粒子径の調整が容易であることから、乳化重合により得られたものが好ましい。乳化重合の方法としては特に制限はなく、公知の方法で行えばよい。
乳化剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性のいずれも使用できるが、表面電位を容易に調整できることから、アニオン性乳化剤あるいはカチオン性乳化剤が好ましい。乳化剤は、1種または2種以上を用いることができる。
両性乳化剤としては、炭素数12〜22の長鎖アルキル基または脂肪酸残基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシルメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどが例示される。
本発明の高分子複合体の製造方法では、最終的に得られる高分子複合体の性能を低下させない範囲で、水中に電位調整剤を添加することができる。電位調整剤を添加した場合には、水中で無機粒子とポリマーラテックスとを混合した際に、より容易に系全体を電位的に中和させることができる。
電位調整剤とは、無機粒子の表面電位とポリマーラテックスの表面電位との差を調整するものである。電位調整剤としては、例えば、乳化剤によって表面電位を調整した電位調整用ポリマーラテックス、高分子電解質等が挙げられる。
電位調整用ポリマーラテックスの乳化剤としては、ポリマー(B)のラテックスに使用したものと同じものが挙げられる。
カチオン性高分子電解質の具体例としては、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)およびその塩、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)およびその塩、ポリ(4−ビニルピリジン)およびその塩などが挙げられる。なお、カチオン性高分子電解質は、通常、ハロゲンイオン、酢酸イオン、過塩素酸塩イオンなどの負電荷(対イオン)を有することにより、電荷が中和されている。
アニオン性高分子電解質の具体例としては、ポリ(スチレンスルホン酸)およびその塩、ポリ(アクリル酸)およびその塩、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロペンスルホン酸)およびその塩、ポリ(ブタジエン−マレイン酸)およびその塩、ポリ(メタクリル酸)およびその共重合体等が挙げられる。
無機粒子(A)のスラリーとポリマー(B)のラテックスとの混合比については特に制限されないが、混合比によっては未凝集のラテックス、あるいはフリーの無機粒子が残存してしまう場合がある。その場合には、不経済になるばかりか、環境への負荷も高くなるため好ましくない。したがって、無機粒子(A)のスラリーとポリマー(B)のラテックスとの混合比は、それらの種類に応じて適宜選択することが好ましい。なお、混合比が不適切で、未凝集のラテックスあるいはフリーの無機粒子が残存した場合には、ポリマー(B)のラテックスの表面電位を見直したり、電位調整剤を添加したりして、系全体で電位的に中和することが好ましい。
また、無機粒子(A)のスラリーとポリマー(B)のラテックスとを混合する際には、必要に応じて、加熱してもよい、加熱温度としては、30〜150℃の範囲が好ましい。この範囲で加熱すれば、得られる高分子複合体の粒度を大きくでき、ハンドリング性が向上する。
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、安定剤、難燃剤、着色顔料、染料などの添加剤を添加しても構わない。
高分子複合体とポリマー(B’)との混合方法としては、混練法などの乾式法を採用できる。
この熱可塑性樹脂組成物は、上記高分子複合体を含有しているため、無機粒子(A)がポリマー(B)中に均一に分散している。その結果、無機粒子(A)の含有量を多くしても、例えば、ポリマー(B)およびポリマー(B’)が透明である場合には、熱可塑性樹脂組成物の透明性を高くすることができる。
(1)水酸化マグネシウムのスラリー<A−1>の調製
イオン交換水に1質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整したアルカリ性水溶液875gに、水酸化マグネシウム(堺化学社製MGZ−3、平均粒子径100nm)125gを添加した。これにより得られた混合液に15分間超音波を照射し、水中に均一に分散した水酸化マグネシウムのスラリー<A−1>を調製した。
この水酸化マグネシウムのスラリー<A−1>のゼータ電位(表面電位)を測定したところ、−22.6mV(pH10)であった。
攪拌装置、温度計、還流冷却器を備えた3リットル反応器に、イオン交換水170質量部、カチオン性乳化剤であるサニゾールB−50(花王(株)製,ベンジルトリアルキルアンモニウムイオン)2質量部を仕込み、攪拌しながら、75℃に加熱した。次いで、その反応器に、アクリロニトリル25質量部、スチレン75質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタンを0.4質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート0.4質量部を、それぞれ150分かけて添加した。添加終了後、さらに60分間反応を継続させた。その後、冷却して反応を完結させ、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−1>を得た。
このアクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体ラテックス<B−1>のゼータ電位を測定したところ、+42.9mV(pH10)であった。また、固形分濃度は28.0質量%であった。
イオン交換水1600質量部に1質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整したアルカリ性水溶液を得た。そのアルカリ性水溶液を攪拌しながら、水酸化マグネシウムスラリー<A−1>14質量部(固形分換算)と、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−1>86質量部(固形分換算)とを同時に室温で添加した。添加完了後さらに室温で1時間攪拌した。その結果、沈殿物が生成したので、これを濾過し、濾過物を80℃で48時間乾燥させて、高分子複合体<D−1>を得た。
この高分子複合体<D−1>を蛍光エックス線により分析したところ、水酸化マグネシウムの含有量が13.9質量%であった。なお、水酸化マグネシウムの含有量については表1に示す。
高分子複合体<D−1>71.94質量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体(ユーエムジー・エービーエス(株)製S201N)28.06質量部と、エチレンビスステアロアミド1質量部とをバンバリーミキサーにて溶融混練してペレット化して、熱可塑性樹脂組成物<E−1>を製造した。そして、この熱可塑性樹脂組成物<E−1>を圧縮成形して厚さ3mmのプレートを得た。
なお、この熱可塑性樹脂組成物<E−1>中の水酸化マグネシウム含有量は10質量%であった。
熱可塑性樹脂組成物中の無機粒子の分散性の指標として、プレートのヘイズを測定した。ヘイズは3回測定し、その平均値をヘイズ値とした。その結果を表2に示す。
無機粒子が均一に分散している場合には、光の散乱による曇りがないためヘイズ値は低くなるが、不均一に分散している場合は光の散乱による曇りが発生してヘイズ値が高くなる。
(5)アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>の調製
乳化剤として、サニゾールB−50の代わりに、アニオン性乳化剤である不飽和ロジン酸カリウム(荒川化学(株)製)2質量部を仕込んだ以外は実施例1の(2)と同様にして、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>を得た。
このアクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体ラテックス<B−2>のゼータ電位を測定したところ、−56.1mV(pH10)であった。また、固形分濃度は30.6質量%であった。
イオン交換水700gをビーカー中に添加し、マグネチックスターラーにて攪拌しながら、上記ビーカーに水酸化マグネシウムスラリー<A−1>14.0質量部(固形分換算)と、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>49.0質量部(固形分換算)とを同時に室温で添加し、さらにアクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−1>を37.0質量部(固形分換算)を添加した。添加完了後、さらに室温で1時間攪拌した。その結果、沈殿物が生成したので、これを濾過し、濾過物を80℃で48時間乾燥させて、高分子複合体<D−2>を得た。
この高分子複合体<D−2>を蛍光エックス線により分析したところ、水酸化マグネシウムの含有量が14質量%であった。
高分子複合体<D−2>71.43質量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体28.57質量部と、エチレンビスステアロアミド1質量部とをバンバリーミキサーにて溶融混練し、ペレット化して、熱可塑性樹脂組成物<E−2>を製造した。そして、この熱可塑性樹脂組成物<E−2>を圧縮成形して厚さ3mmのプレートを得て、ヘイズ値を測定した。その結果を表2に示す。
なお、この熱可塑性樹脂組成物<E−2>中の水酸化マグネシウム含有量は10質量%であった。
(8)高分子複合体<D−3>の製造
水酸化マグネシウムのスラリー<A−1>15質量部(固形分換算)と、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>85質量部(固形分換算)とを混合し、得られた混合液に10質量%希硫酸を10質量部添加して、90℃で凝固した後、濾過・洗浄・乾燥して、高分子複合体<D−3>を得た。
この高分子複合体<D−3>を蛍光エックス線により分析したところ、水酸化マグネシウムの含有量が0.2質量%であった。
(9)熱可塑性樹脂組成物<E−3>の製造
アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体90質量部、水酸化マグネシウム10質量部、エチレンビスステリン酸アミド1質量部をバンバリーミキサーにて溶融混練して熱可塑性樹脂組成物<E−3>を得た。そして、この熱可塑性樹脂組成物<E−3>を圧縮成形して厚さ3mmのプレートを得て、ヘイズ値を測定した。その結果を表2に示す。
(10)高分子複合体<D−4>の製造
アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>を32.7質量部(固形分換算)、溶媒として水700ml、無機粒子のスラリーとして20質量%のコロイド状二酸化珪素<A−2>(日産化学産業社製MP−1040、平均粒子径100nm、ゼータ電位:−60mV(pH10))を14質量部(固形分換算)、さらにアクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−1>を53.3質量部(固形分換算)添加し、15分間攪拌混合した。混合後の溶液を濾過し、濾過物を80℃で48時間乾燥させて、高分子複合体<D−4>を得た。
高分子複合体<D−4>72.46質量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)共重合体27.54質量部と、エチレンビスステアロアミド1質量部とをバンバリーミキサーにて溶融混練してペレット化して、熱可塑性樹脂組成物<E−4>を製造した。そして、この熱可塑性樹脂組成物<E−4>を圧縮成形して厚さ3mmのプレートを得て、ヘイズ値を測定した。その結果を表2に示す。
(12)高分子複合体<D−5>の製造
20質量%のコロイド状二酸化珪素14.0質量部(固形分換算)と、アクリロニトリル−スチレン共重合体ラテックス<B−2>86.0質量部(固形分換算)とを混合し、10質量%硫酸を添加し、90℃で凝固した後、濾過・洗浄・乾燥して、高分子複合体<D−5>を得た。
これに対し、無機粒子のスラリーと、そのスラリーと同符号の電位を有するポリマーのラテックスとを混合し、希硫酸を添加して得た比較例1の高分子複合体<D−3>および比較例3の高分子複合体<D−5>は、無機粒子の含有量が計算値よりも大幅に少なかった。これは希硫酸によって系のpHが低下し、無機粒子がイオン化したためと思われる。
これに対し、無機粒子とポリマーとをバンバリーミキサーにて溶融混練しただけの比較例2の熱可塑性樹脂組成物<E−3>は、無機粒子が不均一に分散しており、光の散乱による曇が発生したため、ヘイズ値が高かった。
Claims (3)
- 無機粒子(A)のスラリーとポリマー(B)のラテックスとを混合する高分子複合体の製造方法において、
ポリマー(B)のラテックスが、無機粒子(A)のスラリーと反対の符号の表面電位を有することを特徴とする高分子複合体の製造方法。 - さらに、電位調整剤(C)を混合することを特徴とする請求項1に記載の高分子複合体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の高分子複合体の製造方法により得られた高分子複合体と、ポリマー(B)と同種または異種のポリマー(B’)とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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