JP2006206557A - アルコール誘発性疾病予防、治療剤及びその製造方法 - Google Patents

アルコール誘発性疾病予防、治療剤及びその製造方法 Download PDF

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稔弘 野原
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嘉次郎 中島
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律 山崎
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Abstract

【課題】 これまで注目されなかったクズの花や蕾(以下葛花という)を原料とした、ヒトの病気の予防又は治療に有効な予防、治療剤を得ることを目的とする。
【解決手段】 葛花乾燥物の抽出エキスからなるアルコール誘発性疾病予防、治療剤であって、
(イ)葛花乾燥物を水と低級アルコールのいずれか一方又は両方からなる溶剤で抽出する工程、
(ロ)この抽出液又はその濃縮液をカラムクロマトグラフィーにより分画する工程、
(ハ)アルコール誘発性疾病予防又は治療効果を示す画分を回収する工程、及び
(ニ)この回収した画分を濃縮乾燥する工程
により製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、葛花を原料としたアルコール誘発性疾病、特にアルコール誘発性消化器疾病及び循環器系疾病の予防、治療剤及びその製造方法に関するものである。
マメ科の大形蔓性の多年草で、東アジアや東南アジアを中心として広く分布しているクズの根、いわゆる葛根は昔から漢方薬として利用されている。
しかしながら、このクズの花や蕾すなわち葛花は、清酒を目的として用いられていたが、その有効成分を効率よく分離するための適切な手段が見出されなかったため、各種疾病の治療剤としての系統的研究は行われておらず、葛花抽出物についてマウス血中のアルコール、アセトアルデヒド、ケトンの濃度を低下させること(非特許文献1参照)、ヒト血中のアセトアルデヒドの消失を促進すること(非特許文献2参照)が報告されているにすぎない。
一方、葛根については、その中に含まれている成分が血流コレステロールを減少させたり、冠動脈性心疾患の危険性を軽減したり、血液脂質プロフィルを調節する作用を有すること(特許文献1参照)や、葛根粉末を主成分とした骨粗鬆症治療剤や、これに果糖を配合して、二日酔症状の予防及び治療用に用いること(特許文献2参照)が提案されている。
特開平11−221048号公報(特許請求の範囲その他) 特開平7−196524号公報(特許請求の範囲その他) 「薬学雑誌」、日本薬学会、1989年、第109巻、p.424 「日本薬学会第121年会講演要旨集」、2001年、p.
本発明は、これまで注目されなかったクズの花や蕾(以下葛花という)を原料とした、ヒトの病気の予防又は治療に有効な予防、治療剤を得ることを目的としてなされたものである。
本発明者らは、葛花に含まれる成分の、ヒトの中枢器官に対する作用について種々研究を重ねた結果、葛花の乾燥物を水又は低級アルコール類あるいはこれらの混合物で抽出したエキスが、アルコールにより誘因された各種疾病、特に消化器系又は循環器系疾病に対し優れた予防、治療効果を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、葛花乾燥物の抽出エキスからなるアルコール誘発性疾病予防、治療剤、及び
(イ)葛花乾燥物を水と低級アルコールのいずれか一方又は両方からなる溶剤で抽出する工程、
(ロ)この抽出液又はその濃縮液をカラムクロマトグラフィーにより分画する工程、
(ハ)アルコール誘発性疾病予防又は治療効果を示す画分を回収する工程、及び
(ニ)この回収した画分を濃縮乾燥する工程
を含むことを特徴とするアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法を提供するものである。
次に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のアルコール誘発性疾病予防、治療剤(以下単に本発明治療剤という)は、葛花すなわちクズの花や蕾を乾燥したものを原料として用いて得られるが、このクズは、マメ科の大形蔓性の多年草であって、東アジアや東南アジアを中心にして広く分布している。
本発明の原料としては、クズの中のどのような種のものを用いてもよく、制限はないが、特にプエラリア・ロバータ(Pueraria lobata)又はプエラリア・トムソニイ(Pueraria thomsonii)が好適である。
本発明の治療剤は、このクズの花又は蕾を乾燥したのち、これを抽出した抽出エキスからなっている。この抽出の際に用いる溶剤としては水のみでもよいが、薬理作用の大きい抽出エキスを得るには低級アルコール例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールの単独又はこれと水との混合物、特に濃度70%以上のエタノール水溶液を用いるのがよい。
この抽出エキスは、所望ならばその溶液状のものをそのまま用いることができるが、抽出エキスを濃縮、乾燥して白色粉末状にしたものが、製剤しやすい点で好ましい。
このようにして得られる葛花には、イリソリドン、バイオカニンA、ゲニステイン、グリシテイン、テクトリゲニンのようなイソフラボノイド又はその配糖体や、カッカサポニンI、ソヤサポニンI、カイカサポニンIIIのようなトリテルペノイドサポニン又はそのアグリコンなどの活性物質が含まれている。
本発明の治療剤は、原料の葛花乾燥物から、以下に示す(イ)〜(ニ)の工程を経て調製することができる。
(イ)葛花乾燥物を水と低級アルコールのいずれか一方又は両方からなる溶剤で抽出する工程、
(ロ)この抽出液又はその濃縮液をカラムクロマトグラフィーにより分画する工程、
(ハ)アルコール誘発性疾病予防又は治療効果を示す画分を回収する工程、及び
(ニ)この回収した画分を濃縮乾燥する工程。
上記の(イ)工程における溶剤としては、水又は低級アルコール例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールが用いられる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
好ましい溶剤は、水単独又はエタノール濃度30%以下の水とエタノールとの混合物である。この(イ)工程は、葛花乾燥物の質量に対して10〜50倍量の溶剤を加え、温度60〜95℃に加熱しながら1〜2時間抽出処理することによって行われる。
このようにして、淡黄色の抽出液が得られるが、これは所望に応じ300メッシュ又はそれよりも細かい篩目の金網でろ過して固形物を除去したのち、次工程に付する。
次に(ロ)工程は、クロマトグラフィーにより分画して活性成分を含む画分を得る工程である。この場合、前工程で得た抽出液をそのまま処理してもよいが、多量の抽出溶剤を用いた場合は、所望により1/2〜1/10の量になるまで濃縮したのち処理することもできる。
このクロマトグラフィーによる画分は通常の分画クロマトグラフィーの場合と同様に、充てん剤を詰めたカラムに抽出液を通したのち、溶離液を通して展開し、溶出することによって行うことができる。
この際、充てん剤としては、通常の全多孔性アルミナ、全多孔性シリカゲル保持体、表面多孔性シリカゲル保持体などの吸着用又は逆相分離用充てん剤、イオン交換体も用いることができるが、特に分取クロマトグラフィー用充てん剤として調製された吸着用、逆相用又は分配用充てん剤が好適である。
このようなものとしては、例えば関東化学社試薬事業本部から商品名「Li Chroprep Si40」として市販されている全多孔性シリカゲル、商品名「Li Chroprep RP−8」として市販されている逆相用全多孔性化学結合型シリカゲル、商品名「Li Chroprep D10L」として市販されている分配用全多孔性化学結合型シリカゲル、日本ウォーターズリミテッド社から商品名「PREP−PAKSilica」として市販されている吸着用全多孔性シリカゲル、ローム・アンド・ハース社から商品名「アンバーライトXAD16HP」として市販されている吸着分離体、三菱化学社より商品名「ダイヤイオンHP20」として市販されている吸着分離体、和光純薬社から商品名「Wakogel 100C18」として市販されているオクタデシルシリル化シリカゲルのようなシリル化シリカゲル系逆相分離剤やスチレン−ジビニルベンゼン共重合体系吸着剤、ポリスチレン系イオン交換体、トリフェニルメチルメタクリレート系吸着剤などが好適である。
(ロ)工程は、これらの充てん剤を詰めたカラムに、(イ)工程で得た抽出液又はその濃縮液を通して、活性物質を充てん剤に吸着させたのち、展開させ、溶出させる。この際の移動相すなわち展開及び溶出させるための溶剤としては、エタノール単独又は濃度70%以上のエタノール水溶液が好ましい。この際の移動相流速としては、50〜500ml/分の範囲内が選ばれる。
このようにして、カラムから溶出してくる液を、例えばフラクションコレクターを用いて分取し、所要の画分を得る。
次いで、(ハ)工程において、このようにして得た画分について、アルコール誘発性疾病に対する予防、治療効果の試験を行い、効果を示す画分を回収する。
(ニ)工程においては、このようにして回収した活性を示す画分から、必要に応じろ過又は遠心分離して不溶分を除去したのち、減圧下で濃縮し、その濃縮液を噴霧乾燥する。この際の濃縮は、噴霧乾燥を容易にするために行うのであるから、場合によっては省略することもできる。また、噴霧乾燥の代りに凍結乾燥することもできる。
このようにして、所望のアルコール誘発性疾病予防、治療剤が褐色粉末として得られる。
本発明の治療剤は、これに経口用賦形剤を配合し、常法に従って調製することにより、経口用製剤とすることができる。この製剤の剤形としては、液剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、丸剤などがある。
この際に用いる賦形剤としては、例えばヨウ化ナトリウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、タルク、ホウ酸などの無機系賦形剤、ブドウ糖、乳糖、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、塩化ベンザルコニウム、シロップ、レモン油、ユーカリ油、エタノールなどの有機系賦形剤を挙げることができる。
本発明の治療剤は、体重1kg当り10〜500mgを1日2〜3回に分けて投与するが、この投与量は症状の軽重に応じて適宜増減することが必要である。
このようにして、本発明の治療剤を投与することにより、アルコールにより誘発された各種疾病、特に消化器系疾病及び循環器系疾病を効果的に予防又は治療することができる。
本発明によれば、これまで適切な経口投与手段がなく、また中枢作用に対する影響が知られていなかったため利用されていなかった葛花を原料として、アルコール誘発性疾病に対し、優れた予防薬あるいは治療効果を有するアルコール誘発性疾病患者のための治療薬が提供される。
次に、実施例により、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
乾燥した葛花(Pueraria lobata Ohwi)3kgに水60リットルを加え、90℃で1時間かき混ぜながら抽出した後、金網を通してろ過し、さらに高速遠心分離して抽出液を調製した。予めエタノール、次いで水を用いてステンレス鋼管に充てんした吸着樹脂(ローム・アンド・ハース社製、商品名「アンバーライトXAD16HP」)に負荷させて目的物質を吸着させ、水洗後、エタノールで目的物質を溶離した。
目的画分を約70μmの間隔で精ろ過した後、減圧下で約1/3量まで濃縮、当該濃縮液を噴霧乾燥することにより、アルコール誘発性疾病予防、治療剤96gを褐色粉末として回収した。
この物質50mgに水25mlを加え溶解し、さらにメタノールを加え50mlとした溶液をろ過しその10μlを高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略す)で定量したところ、カッカライド43.3%含有することが確認された。
また、このメタノール抽出液を薄層クロマトグラフィー(以下TLCと略す)で分析したところ、トリテルペノイドサポニンのスポットが確認された。
乾燥した葛花(Pueraria lobata Ohwi)3kgに20%エタノール60リットルを加え、85℃で1時間かき混ぜながら抽出した後、金網を通してろ過し、さらに高速遠心分離して抽出液を調製した。予めアルコール、次いで水でステンレス鋼管に充てんした吸着樹脂(三菱化学社製、商品名「ダイヤイオンHP20」)に負荷させて目的物質を吸着させ、水洗後、エタノールで目的物質を溶離した。
目的画分を約70μmの間隔で精ろ過した後、減圧下で約1/3量まで濃縮、当該濃縮液を噴霧乾燥することにより、アルコール誘発性疾病予防、治療剤約170gを褐色粉末として回収した。
この物質50mgにメタノール5mlを加え溶解し、さらにメタノールを加え50mlとした溶液をろ過しその10μlをHPLCで定量するとカッカライド43.1%含有することが確認された。
また、このメタノール抽出液をTLCで分析したところ、トリテルペノイドサポニンのスポットが確認された。
乾燥した葛花(Pueraria lobata Ohwi)2kgに10%エタノール40リットルを加え、90℃で1時間かき混ぜながら抽出した後、金網を通してろ過し、さらに高速遠心分離して抽出液を調製した。次に、この抽出液を予めエタノール、次いで10%エタノールでステンレス鋼管に充てんしたオクタデシルシリル化シリカゲルに負荷させて目的物質を吸着させ、80%エタノールで目的物質を溶離した。
目的画分を約70μmの間隔で精ろ過した後、減圧下で約1/3量まで濃縮したのち、当該濃縮液を噴霧乾燥することにより、アルコール誘発性疾病予防、治療剤約61gを褐色粉末として回収した。
この物質50mgに水25mlを加え溶解し、さらにメタノールを加え50mlとした溶液をろ過し、その10μlをHPLCで定量したところ、カッカライド46.2%含有することが確認された。
また、このメタノール抽出液をTLCで分析したところ、トリテルペノイドサポニンのスポットが確認された。
乾燥した葛花(Pueraria thunbergiana Benth)2kgに10%エタノール40リットルを加え、90℃で2時間かき混ぜながら抽出した後、金網を通してろ過し、さらに高速遠心分離して抽出液を調製した。この抽出液を予めエタノール、次いで水でステンレス鋼管に充てんした実施例1で用いたのと同じ吸着樹脂に負荷させて目的物質を吸着させ、エタノールで目的物質を溶離した。
目的画分を約70μmの間隔で精ろ過した後、減圧下で約1/3量まで濃縮し、この濃縮液を噴霧乾燥することにより、アルコール誘発性疾病予防、治療剤約101gを褐色粉末として回収した。
この物質50mgに水25mlを加え溶解し、さらにメタノールを加え50mlとした溶液をろ過し、その10μlをHPLCで定量したところ、テクトリジン13.1%、テクトリゲニン7‐O‐キシロシルグルコサイド14.8%を含有することが確認された。
また、このメタノール抽出液をTLCで分析したところ、トリテルペノイドサポニンのスポットが確認された。
乾燥した葛花(Pueraria thunbergiana Benth)150kgに20倍量の熱湯を加え、95℃で2時間かき混ぜながら抽出した後、金網を通してろ過し、抽出液を濃縮し、その濃縮物を噴霧乾燥することにより、約40kgの乾燥エキスを得た。次いで、このエキス末40kgを7倍量の温湯で再溶解し、不溶部を高速遠心分離で除き、先ずエタノール、次いで水でステンレス鋼管に充てんした実施例2で用いたのと同じ吸着樹脂に負荷させて目的物質を吸着させ、水洗後、薄めたエタノール約600リットルで目的物質を溶離した。
目的画分を約70μmで精ろ過した後、減圧下で約1/3量まで濃縮し、この濃縮液を噴霧乾燥することにより、アルコール誘発性疾病予防、治療剤約6.1kgを褐色粉末として回収した。
この物質50mgに水25mlを加えて溶解し、さらにメタノールを加えて、全量50mlとしたのち、ろ過して不溶分を除去した。このろ液の10μlをHPLCで定量したところ、テクトリジン11.6%、テクトリゲニン‐O‐キシロシルグリコシド12.5%を含有することが確認された。
また、このメタノール抽出液をTLCで分析したところ、トリテルペノイドサポニンのスポットが確認された。
実施例1で回収したアルコール誘発性疾病予防、治療剤を用いて、アルコール誘発性代謝異常症に対する治療効果を以下のとおり試験した。
ddY系7週令雄性マウスにアルコール誘発性疾病予防、治療剤1g/kgを経口的に投与し、その60分後に50%エタノール5g/kgを経口投与した。エタノール投与4時間後に頚椎脱臼により屠殺し採血を行った。採血した血液は遠心分離(3000r.p.m.×10分)後血清を分離し、血清中のトリグリセリド、尿素窒素を定量し対照群と比較した。トリグリセリドの定量は酵素法で、尿素窒素の定量はウレアーゼインドフェノール法で行った。
なお、アルコール誘発性疾病予防、治療剤は1%アラビアゴムを溶媒として懸濁し、対照群はこの治療剤の代わりに1%アラビアゴム液を、正常群はこの治療剤及びエタノールの代わりに1%アラビアゴム液及び精製水を体重10g当り0.1mlの割合で投与した。その結果を表1に示す。
Figure 2006206557
アルコールの投与により血清中のトリグリセリド及び尿素窒素は正常値に比べて有意な上昇が認められた。治療剤で前処置すると、このような上昇したトリグリセリド及び尿素窒素を有意に抑制した。
これらの結果から、本発明治療剤はアルコールによる代謝異常の中でもトリグリセリドや尿素窒素の上昇を改善することが分った。すなわち、本発明治療剤はアルコールによる高トリグリセライド血症、及び高尿素窒素血症の改善作用を有することが確認された。
実施例2で回収したアルコール誘発性疾病予防、治療剤を用いて、アルコール誘発性肝障害による高血糖症に対する治療効果を以下のとおり試験した。
1夜絶食したddY系7週令雄性マウスに上記治療剤を腹腔内に投与し、その30分後に25%エタノール5g/kgを腹腔内投与した。エタノール投与18時間後に頚椎脱臼により屠殺し採血を行った。採血した血液は遠心分離(3000r.p.m.×10分)後血清を分離し、血清中のグルコースを定量し対照群と比較した。
グルコースの定量は酵素法にて行った。また、治療剤及びエタノールは生理食塩液に溶解し、対照群は治療剤の代わりに生理食塩液を、正常群は治療剤及びエタノールの代わりに生理食塩液を投与した。なお、治療剤は体重10g当り0.1mlの割合で投与した。その結果を表2に示す。
Figure 2006206557
アルコールの投与により肝機能のマーカーである血清AST/ALTの上昇が認められ、肝障害が示唆された際に、血清グルコースについても正常値に比べ有意な上昇が認められた。アルコール誘発性疾病予防、治療剤で前処置すると、このようなグルコースの上昇を抑制する傾向がみられた。特に治療剤200mg/kgの前処置では対照群に比べて有意差が認められた。
以上の結果より、本発明のアルコール誘発性疾病予防、治療剤はアルコール誘発性肝障害による高血糖を改善することが分る。
実施例3で回収したアルコール誘発性疾病予防、治療剤を用いて、塩酸とエタノールにより誘発された胃粘膜損傷に対する治療効果を以下のとおり試験した。
24時間絶食させたSD(Sprague−Dawley)系6週令雄性ラットへ葛花抽出物を投与し、1時間後に150mM/60%エタノールを1ml/ラットの割合で経口投与した。塩酸/エタノール投与1時間後にエーテルで致死させ胃を摘出した。摘出した胃は2%ホルマリン10mlで固定した後、大湾に沿って切開し10倍の実体顕微鏡下で個々の胃における胃粘膜損傷の長さの総和を計測し、対照群と比較した。
なお、治療剤はツイーン80(Tween80)と1%カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMC−Naと略す)(1:19)の混合液に懸濁し、体重100g当り0.5mlの割合で投与し、また対照群は1%CMC−Naのみを投与した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2006206557
この表から、治療剤の投与により用量依存的に塩酸/エタノール胃粘膜損傷を抑制する傾向が認められた。以上の結果、本発明のアルコール誘発性疾病予防、治療剤は塩酸/エタノール胃粘膜損傷に対する抑制作用を示していることから、胃粘膜保護作用を示すことが分る。
実施例4で回収したアルコール誘発性疾病予防、治療剤を用いて、マウス急性アルコール性中毒に対する予防効果を以下のとおり試験した。
16時間絶食させたddY系6週令雄性マウスへ治療剤を腹腔内投与し、30分後に25%エタノール7.5g/kgを腹腔内投与した。エタノール投与後24時間後のマウスの生死の有無を確認し、生存率を算出し、対照群と比較した。なお、治療剤は生理食塩液に溶解し体重10g当り0.1mlの割合で投与した。また対照群は治療剤の代わりに生理食塩液を投与した。
得られた結果を表4に示す。
Figure 2006206557
この表に示すように、エタノール7.5g/kgの投与24時間後の生存率は7.5%で92.5%の死亡が確認された。一方、本発明治療剤12.5mg/kg〜200mg/kgで前処理すると、用量依存的に生存率の上昇がみられた。
特に100mg/kg及び200mg/kg投与群では有意差が認められた。
以上の結果、本発明治療剤はアルコールによる致死を低下させ、急性アルコール中毒を軽減することが分る。
以上のほか、本発明治療剤は、次のような薬理効果を有する。
参考例1
実施例1で回収した本発明治療剤を用いて高脂血症上昇抑制試験を行った。
ICR系6週令雄性マウスを実験に使用した。マウス30匹を3群に分け、第1群には普通食を、第2群及び第3群へは高脂肪食並びにこの高脂肪食へ本発明治療剤を0.4%添加した飼料を1か月間摂取させ、最終日に2時間絶食させた後、頚椎脱臼にて屠殺し、血液採取後血清を分離した後、インドメタシン5×10−9molを含むPBSで希釈後、分離した血清をAmprep C2カラムに付し、妨害物質を除去し蟻酸メチルでトロンボキサンB2(TXB2)を抽出後、血清TXB2濃度をELSIA法(Cayman製)により定量した。
上記の高脂肪食は、コレステロール2%、コール酸1%、カゼイン20%、ショ糖49%、硬化油(コーン油)12%、セルロース4%、ビタミン及びミネラル4%、乾燥魚粉8%の組成からなる。
得られた結果を表5に示す。
Figure 2006206557
この表から分るように、高脂肪食の長期摂取でTXB2は有意に上昇し、本発明治療剤の投与によりこの上昇は有意に抑制される。
トロンボキサンB2はトロンボキサンA2は半減期が極めて短く不安定であるため、生体内のこの物質の量を知る為には、その代謝産物であるトロンボキサンB2を定量することによって推量できる。トロンボキサンA2は血液凝固を促進し血栓形成を誘発する物質であり、血清中のトロンボキサンA2含量を低下させることが血栓形成の予防につながる。
したがって、代謝産物トロンボキサンB2含量の低下はトロンボキサンA2含量の低下を意味し、血栓形成の低下とみなすことができる。
以上の点を考慮すると上述のデータは高脂肪食の長期摂取により高トロンボキサン血症を生じ、血栓形成促進が誘発されるのに対し、本発明治療剤の併用によりトロンボキサンB2濃度が低下し血栓形成が抑制されたものと考えられる。
以上の結果から、本発明治療剤は高トロンボキサン血症を予防し血栓の形成を予防改善することができることが分る。
参考例2
実施例1で回収した本発明治療剤を用いて、消化管輸送能に対する作用を以下のとおり試験した。
16時間絶食したddY系6週令雄性マウスへ本発明治療剤を投与し、5分後に5%炭素末を経口投与した。5%炭素末投与20分後に屠殺し、小腸を摘出し全小腸に対する炭素末の移動長である消化管輸送率を算出した。なお、本発明治療剤はツイーン80(Tween80)と5%アラビアゴム(1:19)の混液に、炭素末は5%アラビアゴム溶液にそれぞれ懸濁し、体重10g当り0.1mlの割合で経口投与した。また、対照群は溶媒のみを投与した。
得られた結果を表6に示す。
Figure 2006206557
この表から、本発明治療剤は25mg/kg及び100mg/kgの用量で、非投与群に比べて消化管輸送能を有意に促進することが分る。
参考例3
実施例1で回収した本発明治療剤を用いてL−dopaにより消化管輸送能低下の賦活作用についての試験を次のようにして行った。
8−16時間絶食したddY系6週令雄性マウスを実験に使用した。L−dopa300mg/kgを皮下投与し、30分後に5%アラビアゴムに懸濁した5%炭素末を体重10g当り0.1mlの割合で経口投与した。炭素末投与20分後に頚椎脱臼にて屠殺し、全小腸に対する炭素末の移動長である消化管輸送率を算出した。被検薬物はツイーン80(Tween 80)と5%アラビアゴム(1:19)の混液に懸濁し、5%炭素末投与5分前に経口投与した。なお、対照群は溶媒のみを投与した。
得られた結果を表7に示す。
Figure 2006206557
L−dopaによる消化管輸送能の低下したマウスにおいても本発明治療剤は50mg/kgの用量で低下した輸送能を98.54%まで回復し、100mg/kgにおいては正常よりもさらに46.2%まで促進させ、正常マウスの輸送能促進作用が確認された。
以上の結果から、本発明治療剤に消化管輸送能の促進作用が認められるとともに、消化管運動機能低下も改善することから、消化管運動賦活作用が認められた。
本発明治療剤は、アルコール誘発性の消化器系及び循環器系の疾病患者の治療剤として有用であり、またその他の疾病治療患者に対しても有効であるので、種々の医薬として利用することができる。

Claims (15)

  1. 葛花乾燥物の抽出エキスからなるアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  2. 葛花乾燥物がプエラリア・ロバータ(Pueraria lobata)又はプエラリア・トムソニイ(Pueraria thomsonii)に由来する葛花乾燥物である請求項1記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  3. 抽出エキスが水及び低級アルコールの中から選ばれた少なくとも1種の溶剤による抽出エキスである請求項1又は2記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  4. 低級アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールの中から選ばれた少なくとも1種である請求項3記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  5. イソフラボノイド、トリテルペノイドサポニン及びそれらの配糖体の中から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  6. イソフラボノイドがイリソリドン、バイオカニンA、ゲニステイン、グリシテイン又はテクトリゲニン及びそれらの配糖体である請求項5記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  7. トリテルペノイドサポニンがカッカサポニンI、ソヤサポニンI、カイカサポニンIII又はそれらのアグリコンである請求項5記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  8. アルコール誘発性疾患がアルコール誘発性消化器系疾患である請求項1ないし7のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  9. アルコール誘発性疾患が循環器系疾患である請求項1ないし7のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤。
  10. (イ)葛花乾燥物を水と低級アルコールのいずれか一方又は両方からなる溶剤で抽出する工程、
    (ロ)この抽出液又はその濃縮液をカラムクロマトグラフィーにより分画する工程、
    (ハ)アルコール誘発性疾病予防又は治療効果を示す画分を回収する工程、及び
    (ニ)この回収した画分を濃縮乾燥する工程
    を含むことを特徴とするアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
  11. (イ)工程における溶剤が水及び低級アルコールの中から選ばれた少なくとも1種である請求項10記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
  12. (イ)工程を葛花乾燥物に対し10〜50倍体積量の溶剤を用い、抽出温度60〜95℃、抽出時間1〜2時間で行う請求項10又は11記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
  13. (ロ)工程をスチレン−ジビニルベンゼン共重合体系吸着剤、ポリスチレン系イオン交換体、トリフェニルメチルメタクリレート系吸着剤又はシリル化シリカゲル系逆相分離剤を充填したカラムを用いて行う請求項10ないし12のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
  14. (ロ)工程を溶出剤としてエタノール又は濃度70%以上のエタノール水溶液を用いて行う請求項10ないし13のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
  15. (ニ)工程を減圧濃縮後、噴霧又は凍結乾燥することによって行う請求項10ないし14のいずれかに記載のアルコール誘発性疾病予防、治療剤の製造方法。
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