JP2006187803A - ロボットシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】ロボットが教示経路に沿って移動するとともに、工具の駆動軸を制御して操作者が所望する加工経路上にレーザビームを移動させるロボットシステムを提供する。
【解決手段】複数の駆動軸を有するロボット1と、ロボット1の先端部に取り付けられ複数の駆動軸を有する工具3と、ロボット1および工具3の各駆動軸を制御するロボット制御装置と、工具3に接続されたレーザ発振器5とを備えるロボットシステムにおいて、ロボット1はロボットの駆動軸の駆動によって工具3を移動せしめ、工具3は工具の駆動軸の駆動によってレーザ発振器5から入射されるレーザビームを対象物へと照射し、ロボット制御装置2は、ロボット1の駆動軸と工具3の駆動軸とを同期して制御するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、駆動軸を備えた工具が取り付けられたロボットシステムに関し、特にレーザによる加工を行うロボットシステムに関する。
従来の技術として、ロボットアーム先端にミラー関節アームおよびレーザスキャナーを取り付けたレーザ加工装置があった(特許文献1参照)。これはロボットアームによりレーザスキャナーを移動させ、レーザスキャナーによりレーザビームを加工品表面上に案内するものである。その際に行われる3つの加工作業方式として、ロボットアームは移動させない「ストップ・アンド・ゴー」稼動と、ロボットアームとレーザスキャナー両方を移動させる「フライング・モーション」稼動と、ロボットアームだけを移動させる「モーションレス」稼動等の各機能が列挙されている。
一方、図20および図21に示すロボットシステムも公知である(特許文献2参照)。
特開2003−230975号公報(第4頁左第7行〜右第12行) 特開2004−174709号公報(第8頁第5行〜第9頁第2行)
図20はロボットアームの末端に置かれたレーザ加工ツールを有する6軸(F1〜F6)の産業用ロボットアームを示し、図21はマニピュレータ経路移動が重ね合わされた連続的加工経路を示す図である。
図20において、工具113はレーザ加工ツールであり、工作物114はレーザビーム115により加工される。従来装置111は、制御ユニット112.3を有し、その制御信号はフィールドバスなどの伝送媒体112.8により工具113および/またはロボット112に伝送される。制御ユニット112.3には、メモリユニット112.4と決定ユニット112.5と決定手段112.6と、プロセッサ手段112.7とが組込まれている。
図21はこの装置で工作物114の表面のレーザ彫刻のための、十字型の輪郭の形をした工具先端(TCP)の移動経路Bを概略的に示す。図21において、加工経路B上には、工具113が固定されるロボット112(図20)またはロボットアーム112.1の末端112.2の移動経路B’が重ねられている。特に、加工経路Bの進路に大きな変化のある領域である加工経路Bの角116において、ロボットの移動経路B’は、加工ジオメトリBと明らかに異なる進路B’を有する。加工の間中、ロボットの移動経路B’は、空間領域B”(図21において斜線が付けられている「移動度チューブ」)内にあり、これはすべての辺において移動経路B’を囲んでおり、加工経路Bからのその逸脱ΔBは3自由度工具113の最大移動振幅に対応する。
これ以前の公知の加工装置においては、マニピュレータ112の移動経路B’は予め定められた加工経路Bに対応しているため、加工経路Bの急激な方向転換がある領域116においては減速せざるを得ず、工作物114に対する加工時間が大きく増加してしまったが、この装置により、マニピュレータ112および工具113の組合されたリアルタイムの運動制御の結果として、ロボット軸の不活発な悪影響は予め定められた加工経路Bに対して所与の領域116においてそれらの移動B’が進むかまたは遅れ、おそらくそこから逸脱することで、補償される。その一方で、これらの領域116における加工経路Bは、より速い速度で規則的に行われ得る工具113の特有の動きにより、確実に追従される。
したがって、加工輪郭の困難な領域において、マニピュレータ112が、その経路移動B’の長さを低減し、これらの領域における加工経路Bの追従を工具113に任せることにより、加工プロセスは全体として、マニピュレータ112の不活発性により悪影響を受けることがない、というものである。
しかしながら、特許文献1の装置は、ロボットアームの構成やロボットアームおよびレーザスキャナーの制御に関しては具体的な説明や図示が何らなされておらず、単なる機能のみを列挙したものであり到底実現できない。
また、特許文献2の装置では、移動度チューブB”を決定するための最適化演算が必要である。そしてロボットアームは6自由度を持つために、何を最適化するのかが不明確であり(例えば、ロボットアームの移動距離を最小にするのか、姿勢変化量を最小にするのか、またはロボットアームの移動速度の変動を最小にするのか、など)到底実現ができない。
仮にロボットアームの移動距離を最小化する最適解を演算した場合、ロボットアームは操作者の意図した動作を保証することはできない。なぜならば、加工経路は保証されるとしても、ロボットアームの移動経路は最適値となるように指令生成されるからである。このようなシステムでは、ロボットの周辺装置との干渉などが発生するおそれがあるという問題があった。
本発明は、このような従来の装置が有していた問題を解決するものであり、ロボットが教示経路に沿って移動するとともに、工具の駆動軸を制御して操作者が所望する加工経路上にレーザビームを移動させるロボットシステムを提供することを目的としている。
本発明の請求項1記載のロボットシステムの発明は、ロボットシステムに係り、複数の駆動軸を有するロボットと、前記ロボットの先端部に取り付けられ複数の駆動軸を有する工具と、前記ロボットおよび前記工具の前記各駆動軸を制御するロボット制御装置と、前記工具に接続されたレーザ発振器とを備えるロボットシステムにおいて、前記ロボットは、前記ロボットの駆動軸の駆動によって前記工具を移動せしめ、前記工具は、前記工具の駆動軸の駆動によって前記レーザ発振器から入射されるレーザビームを対象物へと照射し、前記ロボット制御装置は、前記ロボットの駆動軸と前記工具の駆動軸とを同期して制御することを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のロボットシステムにおいて、前記工具が、前記レーザビームの経路上に配置され前記工具の駆動軸により前記レーザビームの進行方向に前後移動するレンズを備え、前記ロボット制御装置は、前記工具の駆動軸を駆動して前記レンズを動作させることにより前記レーザビームの焦点位置を制御することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1記載または2記載のロボットシステムにおいて、前記工具が、前記レーザビームの経路上に配置され前記工具の駆動軸により回転するミラーを備え、前記ロボット制御装置は、前記工具の駆動軸を駆動して前記ミラーを回転させることにより前記レーザビームの焦点位置を制御することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のロボットシステムにおいて、前記ロボットの制御点が、前記ミラーの駆動軸中心であり、前記ロボット制御装置は、前記ロボットの制御点位置を演算するロボット軸演算部と、前記ロボットの制御点位置および予め設定された前記レーザビームの焦点位置とから前記工具の駆動軸への動作指令を演算する工具軸演算部とを備えることを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項4記載のロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置が、前記ロボットの制御点位置および前記レーザビームの焦点位置を記録するユーザファイル格納部を備えることを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置が、前記レーザビームの照射を開始する開始命令と、照射を終了する終了命令とを備え、前記開始命令は、照射区間内の前記レーザビームの焦点位置の補間方法および移動速度を設定することを特徴とするものである。
請求項7記載の発明は、請求項6記載のロボットシステムにおいて、前記開始命令および前記終了命令の少なくとも一方が、前記レーザ発振器への出力指令値を指定された時間で第1の値から第2の値へと変化させることを特徴とするものである。
請求項8記載の発明は、請求項4記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、前記レーザビームの照射を開始する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記工具に固定されている座標系から見た前記レーザビームの焦点位置とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記レーザビームの照射開始位置を演算し、前記レーザビームの照射を終了する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記工具に固定されている座標系から見た前記レーザビームの焦点位置とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記レーザビームの照射終了位置を演算する位置演算部と、前記照射開始位置と、前記照射終了位置と、前記レーザビームの照射区間内の前記レーザビームの焦点位置の移動速度とから、前記照射区間のベクトルと制御周期回数を演算する制御周期回数演算部と、前記ロボット軸演算部で演算する前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た制御周期毎の前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記照射区間のベクトルと、前記制御周期回数と、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記照射開始位置とから、前記工具に固定されている座標系から見た制御周期毎の前記レーザビームの焦点位置を演算するレーザ位置指令生成部とを備え、前記ロボット軸演算部は、前記レーザビームの照射を開始する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記レーザビームの照射を終了する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記制御周期回数とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た制御周期毎の前記ロボットの制御点の位置・姿勢を演算することを特徴とするものである。
請求項9記載の発明は、請求項4記載または5記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、教示された2つの前記レーザビームの焦点位置と、指定された前記レーザビームの焦点位置を端点とする円弧の半径および前記円弧の角度から、2つの円弧と1つの直線との組み合わせからなる前記レーザビームの焦点位置の軌跡を生成することを特徴とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項9記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、指定された前記軌跡を含む面の傾きに従って前記軌跡を生成することを特徴とするものである。
請求項11記載の発明は、請求項9または10記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、前記教示された2つのレーザビームの焦点位置のうち、一方を端点とする第1の円弧の半径および前記第1の円弧の角度と、他方を端点とする第2の円弧の半径および前記第2の円弧の角度とから、2つの円弧と1つの直線の組み合わせからなる前記軌跡を生成することを特徴とするものである。
請求項12記載の発明は、請求項9〜11のいずれか1項記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、前記円弧を指定された方向へ向けることを特徴とするものである。
請求項13記載の発明は、請求項9〜12のいずれか1項記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、前記軌跡の開始点より前側に、前記開始点から指定された距離だけ離れた補助点を生成し、前記補助点と前記開始点とを結ぶ補助軌跡を前記軌跡に付加することを特徴とするものである。
請求項14記載の発明は、請求項9〜13のいずれか1項記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、前記軌跡の終了点より後側に、前記終了点から指定された距離だけ離れた補助点を生成し、前記補助点と前記終了点とを結ぶ補助軌跡を前記軌跡に付加することを特徴とするものである。
請求項15記載の発明は、請求項9〜14のいずれか1項記載のロボットシステムにおいて、 前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の半径および前記円弧の角度によって、生成する前記軌跡の形状を変化させることを特徴とするものである。
請求項16記載の発明は、請求項15記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の半径が0の時、生成する前記軌跡を1つの直線とすることを特徴とするものである。
請求項17記載の発明は、請求項15記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の角度が0°の時、生成する前記軌跡をコの字状とすることを特徴とするものである。
請求項18記載の発明は、請求項15記載のロボットシステムにおいて、前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の角度が360°以上の時、生成する前記軌跡を1つの円とすることを特徴とするものである。
本発明によれば、操作者が所望するとおりにロボットおよび工具先端の制御点を移動させることにより、周囲との干渉を確実に回避し、安全にロボットを利用するシステムを構築できるという格段の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の実施例のロボットシステム構成図を図1に示す。
図1において、ロボット1は、6つの関節を有しかつそれぞれがサーボモータにより駆動される機構を備えており、その先端部にレーザヘッド3を備えている。
ロボット制御装置2はロボット1、レーザ溶接装置5、レーザヘッド3とそれぞれ接続され、さらに、操作者がロボット1およびレーザヘッド3の教示や操作を行うためのペンダント4を備えている。レーザヘッド3とレーザ溶接装置5とはファイバー6にて接続されている。レーザ溶接装置5はレーザ発振器を内蔵しており、レーザ発振器が出力するレーザビームはファイバー6を介してレーザヘッド3へと入射される。レーザヘッド3は内部にミラー7(図2)を備えており、入射されたレーザビームはミラー7に当たって向きを変え対象物へと照射されることで溶接を行う。
図2は図1に示すレーザヘッド3内部の簡略図である。
図2において、ファイバー6を通じてレーザヘッド3へ入射されたレーザビームは、レーザヘッド3内のレンズを通って集光された後、ミラー7により対象物の方向へ向きを変え、焦点位置Wにて焦点を結ぶ。ミラー7は、図2に示す座標系のX軸回りの回転を行うサーボモータ(図示せず)とY軸回りの回転を行うサーボモータ(図示せず)とによって回転駆動する機構を備えている。
図3は図1に示すロボット制御装置2の制御ブロック図である。
但し、図3ではロボット制御装置2内の構成のうち本発明に係る部分のみを示しており、その他の部分は省略している。
図3において、ロボット制御装置2は、前述のロボット1(図1)のサーボモータを制御するロボットサーボアンプ21と、レーザヘッド3(図1)のサーボモータを制御するレーザヘッドサーボアンプ22とを備え、その他、ユーザファイル格納部23、命令解釈部24、ロボット軌跡演算部25、レーザ軌跡演算部26を備えている。
ユーザファイル格納部23は、操作者が作成するロボット1およびレーザヘッド3の動作プログラムやレーザ溶接に関するパラメータをファイルとして記録するところであり、動作プログラムの作成やパラメータの設定は操作者がペンダント4を操作して行うことができる。
命令解釈部24は、ユーザファイル格納部23に格納された動作プログラムやレーザ溶接のパラメータを読み出し、命令を解釈する。そして解釈した命令に従いロボット軌跡演算部25およびレーザ軌跡演算部26にそれぞれロボット動作命令、レーザヘッド動作命令を出力する。さらにレーザ溶接装置5へ指令を出力する。
ロボット軌跡演算部25は命令に従い軌跡演算を行いロボットサーボアンプ21に指令を出力してロボット1を動作させる。同様にレーザ軌跡演算部26は命令に従い軌跡演算を行いレーザヘッドサーボアンプ22に指令を出力してミラー7(図2)を動作させる。
続いて本発明によるレーザ溶接の具体例を各図を参照して説明する。
図4(a)は、ロボット1(図1)によりレーザヘッド3(図1)をP1からP2へと直線移動しながらミラー7(図2)を駆動することで溶接開始点W1から溶接終了点W2まで直線補間にて溶接を行う例を示している。
図4(b)にこの動作に対応する動作プログラムを示す。
図4(b)の動作プログラムにおいて、1行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP1へ直線的に動作させながら、レーザヘッド3内のミラー7を動作させる命令である。
制御点はミラー7の回転中心になるよう予め設定されている。この結果W1がレーザビームの焦点位置となる。
次の行の「CRLASON CSF#1」は溶接開始命令であり、CSF#1にて指定されるレーザ溶接開始条件ファイルの設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5(図1)を制御し、レーザ溶接をスタートさせる。レーザ溶接開始条件ファイルについては後述する(図5参照)。
3行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP2へ直線的に動作させながら、レーザヘッド3内のミラー7を動作させる命令である。この結果、点W1と点W2を結ぶ直線がレーザビームの焦点位置の軌跡となる。
4行目の「CRLASOF CEF#1」は溶接終了命令であり、CEF#1にて指定されるレーザ溶接終了条件ファイルの設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5を制御し、レーザ溶接を終了させる。レーザ溶接終了条件ファイルについては後述する(図6参照)。
本発明のロボットシステムにより図4のようなレーザ溶接を行うためには、まず、操作者は予めペンダント4(図1)によりロボット1およびレーザヘッド3を操作して所望の位置へと移動させ、その時のロボット1の各駆動軸およびレーザヘッド3内のミラー7の各駆動軸の位置を教示して図4(b)のような動作プログラムを作成し、ユーザファイル格納部23に記録しておく。
溶接作業実行時には操作者は再度ペンダント4を操作して動作プログラムを選択し、動作の開始を指令する。命令解釈部24では、動作プログラムに記述された命令を逐次1行ずつ読み込んで解釈を行い、レーザ溶接開始条件ファイルやレーザ溶接終了条件ファイルにて指定されている条件に基づいてロボット軌跡演算部25やレーザ軌跡演算部26に位置指令を出力し、レーザ溶接装置5を制御する。
図4の場合、ロボット軌跡演算部25ではレーザヘッド3内のミラー7がP1からP2に移動する間の軌跡の補間演算が行われる。この演算は周知の技術により行われ、所定の制御周期毎の位置指令値が演算される。
レーザ軌跡演算部26では制御周期毎のロボット1の制御点位置と溶接線の位置およびレーザ溶接開始条件ファイルによって指令される溶接速度から、ミラー7の回転角度を算出する。ロボット軌跡演算部25とレーザ軌跡演算部26は、演算により求めた位置指令をそれぞれサーボアンプ21、22に出力する。レーザ溶接が終了するとレーザ溶接終了条件ファイルの設定に従ってレーザ出力を停止する。
以上のように、ロボット制御装置2は、ロボットの制御点P1ではレーザビームの焦点位置が溶接開始点W1となり、ロボットの制御点P2ではレーザビームの焦点位置が溶接終了点W2となるように、ロボットの移動速度を制御する。
ここで、図5および図6に示すレーザ溶接条件ファイルの詳細について説明する。
図5は図3に示すロボット制御装置のレーザ溶接開始条件ファイルの例を示す図であり、図6は図3に示すロボット制御装置のレーザ溶接終了条件ファイルの例を示す図である。これらのレーザ溶接条件ファイルは、操作者がペンダント4を操作することでその画面上に表示される。さらに、操作者はペンダント4を操作して自在にレーザ溶接条件ファイルの設定を変更し、ユーザファイル格納部23に記録することができる。レーザ溶接条件ファイルは複数存在し、ファイル毎にユニークな番号にて識別される。操作者は各レーザ溶接条件ファイルについて各種の設定を行うことができる。図4の例では、CSF#1にてレーザ溶接条件ファイルの1番目を指定し、CEF#1にてレーザ溶接終了条件ファイルの1番目を指定している。
前述のようにCRLASON命令(図4(b))は溶接開始命令であり、オペランド(被演算子)にて図5に示すようなレーザ溶接開始条件ファイルを指定する。一方、CRLASOF命令(図4(b))は溶接終了命令であり、同じくオペランドにて図6に示すようなレーザ溶接終了条件ファイルを指定する。
レーザ軌跡演算部26(図3)は、CRLASON命令とCRLASOF命令とで挟まれた区間では、図5に示すようなレーザ溶接開始条件ファイルの「補間種類」の項目にて指定された補間方法に従って溶接点を演算する。前述の図4は「補間種類」にて直線補間を指定した例である。
また、CRLASON命令が実行されると、指定されたレーザ溶接開始条件ファイルに記載された溶接条件番号(図5の例だと12)がレーザ溶接装置5に出力される。レーザ溶接装置5(図1)には、溶接条件番号に対応した溶接条件(出力ワット数等)が予め登録されており、レーザ溶接装置5はその内容に従ってレーザビームの出力を行う。
同時に、レーザ溶接開始条件ファイルの「アナログ指令値1」で指定された値の電圧がレーザ溶接装置5に出力される。この出力電圧は「スロープタイマ」で指定された時間で、「アナログ指令値1」で指定された値から「アナログ指令値2」で指定された値へと上昇する。図7にこの様子を示す。
図7は図5に示すレーザ溶接開始条件ファイルによるレーザ溶接開始時におけるレーザ溶接装置への指令値の例を示す図で、最初「アナログ指令値1」で指定された値の電圧3.0Vがレーザ溶接装置5に出力され、「スロープタイマ」で指定された時間0.06秒の間に、アナログ指令値1で指定された電圧3.0Vから「アナログ指令値2」で指定された電圧7.0Vへと上昇する例が示されている。
逆に、CRLASOF命令が実行されると、レーザ溶接装置5に出力される電圧は、レーザ溶接終了条件ファイルの「スロープタイマ」で指定された時間で、「アナログ指令値1」で指定された値から「アナログ指令値2」で指定された値へと低下する。図8にこの様子を示す。
図8は図6に示すレーザ溶接終了条件ファイルによるレーザ溶接終了時におけるレーザ溶接装置への指令値の例を示す図で、最初「アナログ指令値1」で指定された電圧7.0Vが、レーザ溶接装置5に出力されていたのが、「スロープタイマ」で指定された時間0.05秒の間に、「アナログ指令値2」で指定された電圧4.0Vへと低下する例が示されている。
前述の図4は直線補間の例であるが、レーザ溶接開始条件ファイルの「補間種類」の項目により溶接線の補間方法を指定することができる。図9は「補間種類」にて円弧補間を指定した例である。図9(a)はロボット1によりレーザヘッド3がP3、P4、P5へと直線移動しながら溶接開始点W3から溶接終了点W5までW4を介して円弧補間にて溶接を行う様子を示したものである。図9(b)にこの動作に対応する動作プログラムを示す。
図9(b)の動作プログラムにおいて、1行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP3へ直線的に動作させ、レーザヘッド3内のミラー7を動作させる命令である。制御点はミラー7の回転中心になるよう予め設定されている。この結果W3がレーザビームの焦点位置となる。
次の行の「CRLASON CSF#2」は溶接開始命令であり、CSF#2にて指定されるレーザ溶接開始条件ファイルの設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5(図1)を制御し、レーザ溶接をスタートさせる。
円弧補間が指定された場合においては、3行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP4へ直線的に動作させながら、レーザヘッド3内のミラー7を動作させて、溶接軌跡(レーザビームの焦点位置の軌跡)が円弧補間となるようにする命令である。
同様に4行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP5へ直線的に動作させながら、レーザヘッド3内のミラー7を動作させて、溶接軌跡(レーザビームの焦点位置の軌跡)が円弧補間となるようにする命令である。この結果、点W3、W4、W5を結ぶ円弧がレーザビームの焦点位置の軌跡となる。
5行目の「CRLASOF CEF#2」は溶接終了命令であり、CEF#2にて指定されるレーザ溶接終了条件ファイルの設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5を制御し、レーザ溶接を終了させる。
また、レーザヘッド3を固定したまま、ミラー7のみを動作させて溶接を行うこともできる。図10(a)はレーザヘッド3内のミラー7の回転軸中心がP6に停止した状態で、ミラー7の回転のみによって溶接開始点W6から溶接終了点W7まで直線補間にて溶接を行う様子を示したものである。図10(b)にこの動作に対応する動作プログラムを示す。
図10(b)の動作プログラムにおいて、1行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP6へ直線的に動作させ、レーザヘッド3内のミラー7を動作させる命令である。制御点はミラー7の回転中心になるよう予め設定されている。この結果、点W6がレーザビームの焦点位置となる。
次の行の「CRLASON CSF#1」は溶接開始命令であり、CSF#1にて指定されるレーザ溶接開始条件ファイル(図5)の設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5(図1)を制御し、レーザ溶接をスタートさせる。
3行目の「MOVL」はロボット1の制御点をP6へ動作させながら(すなわち、移動なし)、レーザヘッド3内のミラー7を動作させる命令である。この結果、点W6と点W7を結ぶ直線がレーザビームの焦点位置の軌跡となる。
4行目の「CRLASOF CEF#1」は溶接終了命令であり、CEF#1にて指定されるレーザ溶接終了条件ファイル(図6)の設定に従ってレーザヘッド3およびレーザ溶接装置5を制御し、レーザ溶接を終了させる。
なお、溶接区間でない場合には、焦点位置Wの補間制御は行わない。つまり、レーザヘッド3内のサーボモータの教示位置から次の教示位置までは、均等に角度データを出力するように制御する。
続いて、ロボット軌跡演算部25とレーザ軌跡演算部26の詳細について、図に基づいて説明する。
図11は、溶接の教示位置とレーザヘッド3との位置関係の例を示す図である。溶接開始点W1教示の際は、ロボット1(図1)を操作してレーザヘッド3をP1に移動させた後、レーザヘッド3内のミラー7(図1)を操作してレーザビームLB1を溶接開始点W1に向ける。同様に、溶接終了点W2教示の際は、ロボット1を操作してレーザヘッド3をP2に移動させた後、レーザヘッド3内のミラー7を操作してレーザビームLB2を溶接終了点W2に向ける。レーザヘッド3には、ロボット1の制御点(図11においてはP1、P2)を原点とする座標系が設定されていて、溶接開始時の座標系を{L1}、溶接終了時の座標系を{L2}とする。
図11において、{R}はロボット座標系で、ロボット1のベース部を原点とする。以降では、この図11に示すような溶接開始点W1と溶接終了点W2を教示する場合を例として、ロボット軌跡演算部25とレーザ軌跡演算部26について説明する。
図12は、図3に示すロボット制御装置2のロボット軌跡演算部25とレーザ軌跡演算部26の詳細を示す図である。図に示すように、レーザ軌跡演算部26は、位置演算部31と制御周期回数演算部32とレーザ位置指令生成部33とから構成される。
位置演算部31は、ロボット座標系{R}から見た溶接開始時のレーザヘッド座標系{L1}の位置・姿勢R L1Tと、溶接開始時のレーザヘッド座標系{L1}から見た溶接開始点W1の位置L1W1とから、次式を用いてロボット座標系{R}から見た溶接開始点W1の位置RW1を出力する。
RW1=R L1T・L1W1 ・・・ (1)
また、位置演算部31は、ロボット座標系{R}から見た溶接終了時のレーザヘッド座標系{L2}の位置・姿勢R L2Tと、溶接終了時のレーザヘッド座標系{L2}から見た溶接終了点W2の位置L2W2とから、次式を用いてロボット座標系{R}から見た溶接終了点W2の位置RW2を出力する。
RW2=R L2T・L2W2 ・・・ (2)
制御周期回数演算部32は、式(1)、式(2)で演算した、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点W1の位置RW1と、ロボット座標系{R}から見た溶接終了点W2の位置RW2とから、溶接開始点W1から溶接終了点W2までのベクトルDを演算する。
また、図5に示すようなレーザ溶接開始条件ファイルによって指令される溶接速度Vを命令解釈部24から取得し、溶接開始点W1から溶接終了点W2に向かうまでの制御周期Δtの回数Nを次式で演算する。ここで、Δtは0より大きい実数であり、Nは0以上の整数とする。
N=|D|/(V・Δt) ・・・ (3)
レーザ位置指令生成部33は、ロボット座標系{R}から見た溶接開始点W1の位置RW1と、溶接開始点W1から溶接終了点W2までのベクトルDと、式(3)で演算した制御周期回数Nを入力とし、k回目の制御周期(kは整数、ただし0≦k≦N)におけるロボット座標系{R}から見た溶接点Wkの位置RWkを次式で演算する。
RWk=RW1+D・(k/N) ・・・ (4)
また、レーザ位置指令生成部33は、ロボット軌跡演算部25が演算する、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見たレーザヘッド座標系{Lk}の位置・姿勢R LkT(後述)と、式(4)で演算した、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見た溶接点Wkの位置RWkとから、次式を用いてk回目の制御周期におけるレーザヘッド座標系{Lk}から見た溶接点Wkの位置LkWkを出力する。
LkWk=Lk RT・RWk ・・・ (5)
一方、ロボット軌跡演算部25は、ロボット座標系{R}から見た溶接開始時のレーザヘッド座標系{L1}の位置・姿勢R L1Tと、ロボット座標系{R}から見た溶接終了時のレーザヘッド座標系{L2}の位置・姿勢R L2Tと、制御周期回数演算部32で式(3)により求めた制御周期回数Nとから、次式を用いてk回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見たレーザヘッド座標系{Lk}の位置・姿勢R LkTを出力する。
R LkT=R L1T+(R L2T−R L1T)・(k/N) ・・・(6)
ロボット軌跡演算部25の出力R LkT、レーザ位置指令生成部33の出力LkWkは、それぞれロボットサーボアンプ21、レーザヘッドサーボアンプ22に入力され、ロボットサーボアンプ21、レーザヘッドサーボアンプ22が、それぞれロボット1のサーボモータ、レーザヘッド3のサーボモータを動作させる。
このように、ロボット軌跡演算部25において、レーザ軌跡演算部26内の制御周期回数演算部32にて求めた制御周期回数Nを用いて、k回目の制御周期におけるロボット座標系{R}から見たレーザヘッド座標系{Lk}の位置・姿勢R LkTを求める、すなわちロボット1のサーボモータとレーザヘッド3のサーボモータとで同じ制御周期回数Nを用いるので、ロボット1のサーボモータとレーザヘッド3のサーボモータとが同時に起動・停止するようになり、溶接区間の移動時間がロボット1とレーザヘッド3のサーボモータとで同じになる。つまり、プレイバック時における溶接開始点W1から溶接終了点W2までの軌跡が教示したとおりになり、かつ溶接開始点W1および溶接終了点W2におけるレーザヘッド3の位置が教示したとおりになる。
続いて、レーザ軌跡演算部26の別の機能について、図に基づいて説明する。
図13は、レーザ軌跡演算部26で生成する、円弧と直線の組み合わせからなるレーザビームの焦点位置の軌跡を示す図である。図13において、第1の焦点位置41と第2の焦点位置42は、操作者がロボット1およびレーザヘッド3を操作してレーザビーム50を移動させ、実際に教示する点であり、第1の焦点位置41から第2の焦点位置42へ向う方向に溶接するものとする。
円弧半径43と円弧角度44は、それぞれ第1の焦点位置41と第2の焦点位置42とを結ぶ直線と連結して1つの軌跡をなす円弧の半径(図13中のR)と角度(図13中のα)である。
レーザビーム焦点軌跡47は、第1の焦点位置41をその端点とする第1の円弧と、第2の焦点位置42をその端点とする第2の円弧と、焦点位置41、42を結んだ軌跡であり、図13に示す第1の円弧のもう一方の端点(溶接開始点51)から第1の焦点位置41、第2の焦点位置42を経由して第2の円弧のもう一方の端点(溶接終了点52)までの区間を指す。
面角度45は、レーザビーム焦点軌跡47を含む平面を決定する角度であり、第1の焦点位置41と第2の焦点位置42とを結ぶ直線回りの角度で定義される(図13のβ)。レーザビーム焦点軌跡47を含む平面上に存在し、第1の焦点位置41から第2の焦点位置42に向かうベクトルに直交するベクトルが、レーザヘッド座標系49のZL軸と直交する場合には面角度45は0°とする。
前側距離46は、溶接開始点51における円弧の接線を外側に伸ばした方向に設けた補助点53と溶接開始点51との距離(図13中のL0)であり、接線のうち、補助点53から溶接開始点51までを補助軌跡48とする。補助軌跡48は、次に説明するように、レーザビーム焦点位置の軌跡が溶接開始点51を通るようにするための区間であるため溶接区間ではなく、この区間ではレーザビーム50の照射は行わない。
ここで、補助点53の役割について説明する。
多くの場合、レーザビーム焦点軌跡47以外の区間ではタクトタイムを上げるためにロボット1とレーザヘッド3のミラー7をレーザビーム焦点軌跡47の区間に比べて高速で移動させる。そのため、溶接開始点51への進入方向によっては、サーボ系の追従遅れ等の原因により、焦点軌跡が溶接開始点51を通過しない場合がある。こうした事態を防止するため補助点53を設け、補助点53を通過させるようにして、レーザビーム焦点軌跡47以外の区間のレーザビーム焦点位置の移動速度が高速であっても、レーザビーム焦点軌跡が溶接開始点51を通過するようにさせる。
以上、図13を用いて説明したように、レーザ軌跡演算部26は(図12)レーザビーム焦点軌跡47を生成するが、レーザビーム焦点軌跡47を生成するために必要な情報は、図14に示す設定画面で入力することができる。図14は、レーザ軌跡演算部26に関する設定を行う画面の例を示す図である。ここに示した設定項目は、操作者がペンダント4を操作することでその画面上に表示され、操作者が設定や変更を行い、ユーザファイル格納部23に記録することができる。
図14において、「レーザ溶接開始条件ファイル」、「レーザ溶接終了条件ファイル」については既に図5、図6を用いて説明した。ここでは前述の例と同様に、番号によってレーザ溶接条件ファイルを指定している。図14の例では、ともに1番目のファイルを指定している。
「円弧半径」、「円弧角度」、「見込み距離」、「面角度」は、それぞれ図13の円弧半径R、円弧角度α、前側距離L0、面角度βに相当する。「見込み軌跡速度」では、補助軌跡48の区間のレーザビーム焦点位置の移動速度を指定する。但し前述のように補助軌跡48の区間ではレーザビーム50の照射は行わない。
「ロボット位置(開始)」と「レーザヘッド焦点位置(開始)」には図13の第1の焦点位置41を、「ロボット位置(終了)」と「レーザヘッド焦点位置(終了)」には図13の第2の焦点位置42をそれぞれ登録する。
図13、図14を用いて説明したようにレーザ軌跡演算部26は、2つの教示点と、いくつかの形状に関するパラメータを元に円弧と直線の組み合わせからなるレーザビーム焦点軌跡を生成できるため、多数の教示点を必要とする方法と比較して軌跡の生成が格段に簡便になる。また、形状に関するパラメータを変更することで、大きさや形状の異なる様々なレーザビーム焦点軌跡を生成することができる。
図13の例では、レーザビーム焦点軌跡47以外の区間のレーザビーム焦点位置の移動速度が大きい場合でもレーザビーム焦点軌跡が溶接開始点51を通るようにするために補助点53を設けたが、レーザビーム焦点軌跡47以外の区間の移動速度が低速であったり、または高速であっても溶接開始点51を通過することが可能であったりする場合には、補助点53を設けずに、生成する軌跡を溶接開始点51から溶接終了点52までとしてもよい。
また、溶接終了点52に関しても、溶接終了点52通過後のレーザビーム焦点位置の移動速度や離脱方向によっては、レーザビーム焦点軌跡が溶接終了点52を通らない場合がある。その場合は、溶接終了点52側にも補助点を設ければよい。
また、図13の例では、レーザビーム焦点軌跡47を含む面の傾きを決定する面角度45(図13のβ)を設けたが、レーザビーム軌跡47を含む平面上に存在し、第1の焦点位置41から第2の焦点位置42に向かうベクトルに直交するベクトルが、常にレーザヘッド座標系49のZL軸と直交することを前提とするなら、面角度βの設定を省略してもよい。
さらに、図13、図14の例では、第1の焦点位置41側の円弧と第2の焦点位置42側の円弧に同一の円弧半径Rと円弧角度αを用いて大きさと形状が同じ円弧としていたが、第1の焦点位置41側と第2の焦点位置42側とで異なる円弧半径と円弧角度を用いて、両側で異なる大きさと形状の円弧を作成してもよい。
図15は、レーザ軌跡演算部26(図12)にて生成する円弧と直線の組み合わせからなるレーザビームの焦点位置の軌跡の別例を示す図で、図14に示す設定画面内の「円弧半径」の項目に負の値を設定した場合を示している。図15では、図13と円弧の向きが逆になっている。
通常では円弧半径が負の値をとることはありえないが、本実施例では円弧半径43の正負によって円弧の向きを指定するように決めることで、図14に示す設定画面に設定項目を別途追加することなく円弧の向きを直感的に設定できるようにしている。
図16は、レーザ軌跡演算部26(図12)にて、図14に示す設定画面で指定された円弧半径Rと円弧角度αとからレーザビーム焦点軌跡47の形状を決定する際のフローチャートである。
図16において、ステップS01は、円弧半径Rが0かどうかを判定し、円弧半径Rが0の場合は、ステップS02の1つの直線軌跡演算(後述、図17参照)に移行し、そうでない場合は、ステップS03に移行し、円弧角度αが0かどうかを判定する。
円弧角度αが0の場合は、ステップS04のコの字状の軌跡演算(後述、図18参照)に移行し、そうでない場合は、ステップS05に移行し、円弧角度αが360°以上かどうかを判定する。
円弧角度αが360°以上の場合は、ステップS06の1つの円軌跡演算(後述、図19参照)に移行する。そうでない場合は、ステップS07の円弧と直線の組み合わせからなる軌跡演算(前述、図13〜15参照)に移行する。
次に、ステップS02、S04、S06について説明する。
図17は、レーザ軌跡演算部26(図12)にて生成する1つの直線軌跡(ステップS02)を示す図である。図13において、円弧半径Rが0の場合、第1の焦点位置41や第2の焦点位置42を端点とする円弧が作成できない。直感的には、円弧の中心がそれぞれ第1の焦点位置41と第2の焦点位置42に吸収されたイメージとなる。従って、円弧半径Rが0の場合は、図17に示すように、1つの直線軌跡となる。この場合、円弧角度αや面角度βが設定されていても無視する。また、溶接開始点51と溶接終了点52は、それぞれ、第1の焦点位置41と第2の焦点位置42と同一点となる。
図18は、レーザ軌跡演算部26(図12)にて生成する、直交する3つの直線からなるコの字状の軌跡(ステップS04)を示す図である。図13において、円弧角度αが0の場合、第1の焦点位置41や第2の焦点位置42を端点とする円弧が作成できない。直感的には、円弧の中心は存在するが、円弧部分がなくなったイメージとなる。従って、円弧角度αが0の場合は、図18に示すように、直交する3つの直線軌跡となる。前述のように、円弧半径Rの正負の指定で、第1の焦点位置41や第2の焦点位置42を端点とする直線部分の向きが変わる。図18において、(a)は円弧半径Rが正の場合、(b)は円弧半径Rが負の場合である。
図19は、レーザ軌跡演算部26(図12)にて生成する、1つの円軌跡(ステップS06)を示す図である。図13において、円弧角度αが360°以上の場合、第1の焦点位置41を端点とする円弧が閉じた円となる。従って、円弧角度αが360°以上の場合は、図19に示すように、1つの円軌跡となる。円弧角度αが360°を越える分は円の軌跡を重ねればよい。第1の焦点位置41から第2の焦点位置42までの間にはレーザビーム焦点軌跡47が描かれないが、第2の焦点位置42は、レーザビーム焦点軌跡47を含む面を決めるために必要な教示点である。前述のように、円弧半径Rの正負で、円の向きが変わる。図19において、(a)は円弧半径Rが正の場合、(b)は円弧半径Rが負の場合である。
以上、図16〜図19を用いて説明したように、本発明によれば、形状に関する数種類のパラメータの設定によって円弧と直線の組み合わせ以外のレーザビーム焦点軌跡を生成することができるため、設定項目を図14の設定画面に別途追加することなく、直感的に設定することができる。
以上は、図2に示すようにレーザヘッド3がミラー7をX軸回りおよびY軸回りに回転させる2軸の駆動軸を備える場合について説明したが、この機構に図2に示すレンズをレーザビームの進行方向に沿って動かす軸を設け、その軸をレーザヘッドサーボアンプで駆動する機構を加えてもよい。このような機構にするとレンズを移動させることで状況に応じてレーザヘッド3から焦点位置Wまでの距離を様々に変更することが可能となり、本ロボットシステムを用いたレーザ溶接作業の自由度が向上する。
さらに、本発明はレーザ溶接に限らず、レーザによる切断などロボットを用いたレーザ加工用途に広く適用できることは言うまでもない。
本発明は、駆動軸を備える工具が取り付けられたロボットシステムに適用可能である。
本発明の実施例を示すロボットシステムの構成図である。 図1に示すレーザヘッドの構成図である。 図1に示すロボット制御装置のブロック図である。 図1に示すロボットシステムにおける直線補間の教示位置と溶接経路および動作プログラムの例を示す図である。 図3に示すロボット制御装置のレーザ溶接開始条件ファイルの例を示す図である。 図3に示すロボット制御装置のレーザ溶接終了条件ファイルの例を示す図である。 図5に示す開始条件ファイルによるレーザ溶接開始時におけるレーザ溶接装置への指令値の例を示す図である。 図6に示す終了条件ファイルによるレーザ溶接終了時におけるレーザ溶接装置への指令値の例を示す図である。 図1に示すロボットシステムにおける円弧補間の教示位置と溶接経路および動作プログラムの例を示す図である。 図1に示すロボットシステムにおける他の直線補間の教示位置と溶接経路および動作プログラムの例を示す図である。 溶接の教示位置とレーザヘッドの位置関係の例を示す図である。 図3に示すロボット制御装置のロボット軌跡演算部とレーザ軌跡演算部の詳細を示す図である。 レーザ軌跡演算部で生成する、円弧と直線の組み合わせからなるレーザビーム焦点軌跡を示す図である。 レーザ軌跡演算部に関する設定を行う画面の例を示す図である。 レーザ軌跡演算部で生成する円弧と直線の軌跡を示す図で、円弧半径が負の場合である。 レーザ軌跡演算部で円弧半径と円弧角度とからレーザビーム焦点軌跡の形状を決定するフローチャートである。 レーザ軌跡演算部で生成する1つの直線軌跡を示す図である。 レーザ軌跡演算部で生成するコの字状の軌跡を示す図である。 レーザ軌跡演算部で生成する1つの円軌跡を示す図である。 従来の工作物を加工する装置の構成図である。 図20に示す装置による加工経路を示す図である。
符号の説明
1 ロボット
2 ロボット制御装置
3 レーザヘッド
4 ペンダント
5 レーザ溶接装置
6 ファイバー
7 ミラー
21 ロボットサーボアンプ
22 レーザヘッドサーボアンプ
23 ユーザファイル格納部
24 命令解釈部
25 ロボット軌跡演算部
26 レーザ軌跡演算部
31 位置演算部
32 制御周期回数演算部
33 レーザ位置指令生成部
41 第1の焦点位置
42 第2の焦点位置
43 円弧半径
44 円弧角度
45 面角度
46 前側距離
47 レーザビーム焦点軌跡
48 補助軌跡
49 レーザヘッド座標系
50 レーザビーム
51 溶接開始点
52 溶接終了点
53 補助点

Claims (18)

  1. 複数の駆動軸を有するロボットと、前記ロボットの先端部に取り付けられ複数の駆動軸を有する工具と、前記ロボットおよび前記工具の前記各駆動軸を制御するロボット制御装置と、前記工具に接続されたレーザ発振器とを備えるロボットシステムにおいて、
    前記ロボットは、前記ロボットの駆動軸の駆動によって前記工具を移動せしめ、 前記工具は、前記工具の駆動軸の駆動によって前記レーザ発振器から入射されるレーザビームを対象物へと照射し、
    前記ロボット制御装置は、前記ロボットの駆動軸と前記工具の駆動軸とを同期して制御することを特徴とするロボットシステム。
  2. 前記工具は、前記レーザビームの経路上に配置され前記工具の駆動軸により前記レーザビームの進行方向に前後移動するレンズを備え、前記ロボット制御装置は、前記工具の駆動軸を駆動して前記レンズを動作させることにより前記レーザビームの焦点位置を制御することを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
  3. 前記工具は、前記レーザビームの経路上に配置され前記工具の駆動軸により回転するミラーを備え、前記ロボット制御装置は、前記工具の駆動軸を駆動して前記ミラーを回転させることにより前記レーザビームの焦点位置を制御することを特徴とする請求項1または2記載のロボットシステム。
  4. 前記ロボットの制御点は、前記ミラーの駆動軸中心であり、前記ロボット制御装置は、前記ロボットの制御点位置を演算するロボット軸演算部と、前記ロボットの制御点位置および予め設定された前記レーザビームの焦点位置とから前記工具の駆動軸への動作指令を演算する工具軸演算部とを備えることを特徴とする請求項3記載のロボットシステム。
  5. 前記ロボット制御装置は、前記ロボットの制御点位置および前記レーザビームの焦点位置を記録するユーザファイル格納部を備えることを特徴とする請求項4記載のロボットシステム。
  6. 前記ロボット制御装置は、前記レーザビームの照射を開始する開始命令と、照射を終了する終了命令とを備え、前記開始命令は、照射区間内の前記レーザビームの焦点位置の補間方法および移動速度を設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のロボットシステム。
  7. 前記開始命令および前記終了命令の少なくとも一方は、前記レーザ発振器への出力指令値を指定された時間で第1の値から第2の値へと変化させることを特徴とする請求項6記載のロボットシステム。
  8. 前記工具軸演算部は、前記レーザビームの照射を開始する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記工具に固定されている座標系から見た前記レーザビームの焦点位置とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記レーザビームの照射開始位置を演算し、前記レーザビームの照射を終了する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記工具に固定されている座標系から見た前記レーザビームの焦点位置とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記レーザビームの照射終了位置を演算する位置演算部と、
    前記照射開始位置と、前記照射終了位置と、前記レーザビームの照射区間内の前記レーザビームの焦点位置の移動速度とから、前記照射区間のベクトルと制御周期回数を演算する制御周期回数演算部と、
    前記ロボット軸演算部で演算する前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た制御周期毎の前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記照射区間のベクトルと、前記制御周期回数と、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記照射開始位置とから、前記工具に固定されている座標系から見た制御周期毎の前記レーザビームの焦点位置を演算するレーザ位置指令生成部とを備え、
    前記ロボット軸演算部は、前記レーザビームの照射を開始する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記レーザビームの照射を終了する点を教示する際の、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た前記ロボットの制御点の位置・姿勢と、前記制御周期回数とから、前記ロボットのベースに固定されている座標系から見た制御周期毎の前記ロボットの制御点の位置・姿勢を演算することを特徴とする請求項4記載のロボットシステム。
  9. 前記工具軸演算部は、教示された2つの前記レーザビームの焦点位置と、指定された前記レーザビームの焦点位置を端点とする円弧の半径および前記円弧の角度から、2つの円弧と1つの直線との組み合わせからなる前記レーザビームの焦点位置の軌跡を生成することを特徴とする請求項4記載または5記載のロボットシステム。
  10. 前記工具軸演算部は、指定された前記軌跡を含む面の傾きに従って前記軌跡を生成することを特徴とする請求項9記載のロボットシステム。
  11. 前記工具軸演算部は、前記教示された2つのレーザビームの焦点位置のうち、一方を端点とする第1の円弧の半径および前記第1の円弧の角度と、他方を端点とする第2の円弧の半径および前記第2の円弧の角度とから、2つの円弧と1つの直線の組み合わせからなる前記軌跡を生成することを特徴とする請求項9または10記載のロボットシステム。
  12. 前記工具軸演算部は、前記円弧を指定された方向へ向けることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載のロボットシステム。
  13. 前記工具軸演算部は、前記軌跡の開始点より前側に、前記開始点から指定された距離だけ離れた補助点を生成し、前記補助点と前記開始点とを結ぶ補助軌跡を前記軌跡に付加することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項記載のロボットシステム。
  14. 前記工具軸演算部は、前記軌跡の終了点より後側に、前記終了点から指定された距離だけ離れた補助点を生成し、前記補助点と前記終了点とを結ぶ補助軌跡を前記軌跡に付加することを特徴とする請求項9〜13のいずれか1項記載のロボットシステム。
  15. 前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の半径および前記円弧の角度によって、生成する前記軌跡の形状を変化させることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項記載のロボットシステム。
  16. 前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の半径が0の時、生成する前記軌跡を1つの直線とすることを特徴とする請求項15記載のロボットシステム。
  17. 前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の角度が0°の時、生成する前記軌跡をコの字状とすることを特徴とする請求項15記載のロボットシステム。
  18. 前記工具軸演算部は、指定された前記円弧の角度が360°以上の時、生成する前記軌跡を1つの円とすることを特徴とする請求項15記載のロボットシステム。
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