JP2006150272A - アルカリ性洗浄用電解水とその生成方法及び生成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 原水に電解質としてメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを添加し、この水溶液を有隔膜電解槽1で電気分解する。原水に電解質を添加した水溶液の電気伝導度を20〜80mS/mに調整し、電解槽1の両電極3,4間に流れる電気量を0.04〜0.3C/mlに調整する。
【選択図】 図13
Description
鉄をアルカリ性電解水で洗浄すると、図1に示した(データ1)に見られるように、塩化ナトリウムを電解質として生成したアルカリ性電解水に含有される塩素イオンの影響により、腐食してしまうことが確認されていた。そこで、上記特許文献2に記載の発明では、前述の如く金属腐食のし難い炭酸カリウムを電解質とし、電気分解にて得られたアルカリ性電解水(陰極水)の使用が好ましいことが確認された。一方、アルミニウムやアルミニウム合金のような非鉄金属はアルカリ性域で腐食しやすいという特性を持つ為、それら金属に対しては、炭酸カリウムの電気分解によって得られる中性から弱アルカリ性のアルカリ性電解水(陽極水)を洗浄剤とすることが良いということが、本出願人による先の特願2003−288379の出願によって確認された。
また、電解質として上述した炭酸カリウムを使用する場合、炭酸カリウムの溶解度は温度変化による変動が少ないという利点がある一方、溶解熱が非常に大きいため、自動溶解装置を使用した場合には、炭酸カリウムを投入した直後に、溶解熱が原因でタンク内温度が高温となる場合があった。タンク内温度が高温になることには、部品の劣化が激しくなり、且つ、生成装置が正常に動作しないという問題点が発生する。また、この対策として高温に耐え得る部品や材質の選定を行う必要があるが、耐熱性部品を使用することでコスト高に繋がるという問題点がさらに発生することになる。更には、高温状態でホースや配管内部に送られた飽和溶液は、液移動や時間経過に伴う温度低下の影響で再結晶し、ホースや配管が閉塞するという懸念事項があった。
一般に電解水は水道水を原水として使用する例が多いが、水道水にはカルシウムやマグネシウム等の金属イオンが多く含まれている地域が多いことが知られている。また、それらの金属イオンは洗浄効果を半減させることが知られており、一般に販売されている洗浄剤は、金属イオンを封鎖させる機能(キレート効果)を有するりん酸やEDTA等のキレート剤、エデト酸やアルミノケイ酸塩等の軟水化剤を混合させることで金属イオンによる洗浄効果半減を防いでいる。ところで、電解水を洗浄目的として使用する大きな必要性として環境問題が挙げられる。キレート剤や軟水化剤は、界面活性剤と同じく環境に悪影響を与える物質として知られており、電解水にこれら有害な物質を使用するということは、環境に対する影響を考えると好ましくない。そのため、カルシウムやマグネシウム等の金属イオンを除去する手段として、軟水器を設置することが必要となるという問題点がある。
カルシウム、マグネシウム等の金属イオンが多い場合、アルカリ性電解水生成時にスケールとなることが知られている。スケールはアルカリ性側で析出し、酸性側で溶解する。本来pHが中性である塩化ナトリウムを電解質として使用した場合、スケールは電気分解後にアルカリ性電解水が通過する配管や部品内(2次側)に付着する。しかし、塩化ナトリウムの電気分解ではアルカリ性電解水の生成と同時に酸性電解水が生成するため、アルカリ性電解水が通過する配管や部品内部に付着したスケールは極性反転によって酸性電解水が流れることで溶解し、結果としてスケールが付着しにくい状況にある。しかし炭酸カリウムを電解質として用いた場合、炭酸カリウム自体のpHがアルカリ性のため、2次側だけでなく電気分解前の配管や部品(1次側)にもスケールは付着する。また、炭酸カリウムを電気分解すると、陰極側からアルカリ性電解水が生成するものと同時に陽極側からは中性から弱アルカリ性の電解水が生成されるため、極性反転が行われても付着したスケールが溶解されることはなく、スケール付着量が増加して、最終的には配管が閉塞し、正常に作動しないという問題が発生する。そのため、炭酸カリウムを電解質とする場合は、食塩の時と比べて軟水器が必須となる。
メタ珪酸ナトリウムは塩化ナトリウムや炭酸カリウムと比較して電気伝導度が低い為、一定の電気量を与えるには水道水又は純水への添加濃度を増やす必要がある。しかし、添加濃度の増加に伴い生成されるアルカリ性電解水中の濃度も増加することになり、その結果、蒸発残留物が増加するという問題点がある。蒸発残留物が増加すると洗浄ワーク表面上にその結晶物が析出し、後工程へ悪影響をもたらしたり、イオン交換水を用いたリンスが必要となるなどの問題点が発生する。また、メタ珪酸ナトリウムはアルカリ性物質であるため、添加濃度が高い状態で生成する陽極水のpHもアルカリ性を示し、排水時のpH調整が困難となるという問題点が生じる。
本発明で使用した試験水は、電解質を炭酸カリウム、塩化ナトリウム又は珪酸ナトリウムとして、有隔膜電解を行うことにより陰極側に生成した電解水(陰極水)とした。
炭酸カリウム又は塩化ナトリウムを電解質として一定条件の下、有隔膜電解にて陰極側に生成した電解水(陰極水)のpHはどちらもpH11.7であった。珪酸ナトリウムを電解質とした場合は、添加濃度を70mS/mに調整し、0.3C/mlの電気量を与え有隔膜電解にて陰極側に生成したpH11.7の電解水(陰極水)を試験水とした。
腐食度の判断はJIS K0100(1990)に記載されている方法により、試験片の表面積1dm2に対する1日当たりの腐食減量のmg数(mdd)で表した。図1に示した(データ1)にメタ珪酸ナトリウム/炭酸カリウム/塩化ナトリウムの3種類の電解質を用いて有隔膜電解を行い、アルカリ側に生成した電解水(陰極水)を試験水として腐食度の確認をしたところ、メタ珪酸ナトリウムを用いて生成した試験水は炭酸カリウムを用いて生成した試験水と同様に腐食を起こしにくい水溶液であることが判った。
アルミニウム又はアルミニウム合金の腐食について目視確認したところ、図2に示した(データ2)に見られるように、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウムを電解質として有隔膜電解にて生成した高いアルカリ性域の電解水では、炭酸カリウムや塩化ナトリウムを電気分解して得られた陰極水と比較して腐食が抑制されることが判った。また、銅又は銅合金に対しては、全く腐食しないことがわかった。このデータより非鉄金属、特にアルミニウム又はアルミニウム合金の洗浄に、メタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを電解質として生成したアルカリ性電解水を用いることは、アルミニウム又はアルミニウム金属を腐食させずに洗浄できる有効な手段であることが判明した。
メタ珪酸ナトリウム及び炭酸カリウムの溶解熱について確認したところ、図3に示した(グラフ1)に見られるように、メタ珪酸ナトリウムを電解質として使用した場合、溶解時に吸熱することが判った。ここではメタ珪酸ナトリウム及び炭酸カリウムの溶解熱を比較することから、それぞれが完全に溶け切る濃度(10%)に調整したときの溶解熱を測定した。
図4(A)に示した(データ3)及び図4(B)に示した(グラフ2)に、硬水と軟水を使用した際の洗浄力に関するデータを記す。洗浄力の判断はJIS K3362(1998)に記載と同様の方法にてモデル汚こうを作成し、洗浄前のモデル汚れ片に付着している汚こう量αと洗浄後のモデル汚れ片に付着している汚こう量βとの差から、各洗浄力判定用水溶液の洗浄率Xを求めた。
メタ珪酸ナトリウムを電解質とした場合の洗浄効果について確認したところ、図5(A)に示した(データ4)及び図5(B)に示した(グラフ3)に見られるように、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウムの洗浄力は塩化ナトリウム又は炭酸カリウムを電解質とした場合と同程度又はそれ以上の洗浄効果を示した。
次に、各種電解質を硬水に溶解し有隔膜電解で生成したアルカリ性電解水を一日室温にて放置した時のスケール発生量を確認した。その結果、図6(A)に示した(データ5)及び図6(B)に示した(グラフ4)に見られるように、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウムは炭酸カリウム又は塩化ナトリウムを用いた際と比較してスケール発生量が少ないことが判った。この結果から、電解質に珪酸ナトリウムを使用することはスケール生成を少なくでき、配管や部品へのスケール付着量を少なくさせることが可能となることが判明した。
メタ珪酸ナトリウムを電解質として、有隔膜電解にて陰極側に生成した電解水(陰極水)と同じpHに調整したメタ珪酸ナトリウム水溶液との洗浄力について比較したところ、図10に示した(グラフ7−1)に見られるように、電解水の方が洗浄力が高いことが確認できた。
1A 陽極室
1B 陰極室
3,4 電極
7 電流センサ
8 電流可変回路
9 電源基板
10 制御基板
10T 操作基板
11 原水給水管
12 水量調節弁
13 流量検知センサ
14 電気伝導度検出センサ
15 電解質タンク
16 電解質添加ポンプ
Claims (4)
- 水道水又は純水から成る原水に対し、電解質としてメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを添加した水溶液を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側で生成されるアルカリ性洗浄用電解水であって、
上記水溶液の電気伝導度を20〜80mS/m(ミリジーメンス・パー・メートル)とすると共に、上記電解槽の陽陰両極間に0.04〜0.3C/ml(クーロン・パー・ミリリットル)の電気量を加えることによって生成されたアルカリ性洗浄用電解水。 - 水道水又は純水から成る原水に対し、電解質としてメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを添加した水溶液を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側で生成するアルカリ性洗浄用電解水の生成方法であって、
上記水溶液の電気伝導度を20〜80mS/mに調整し、上記電解槽の陽陰両極間に対して0.04〜0.3C/mlの電気量を加えることにより生成することを特徴とするアルカリ性洗浄用電解水の生成方法。 - 水道水又は純水から成る原水に対し、電解質としてメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを添加した水溶液を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側で生成するように構成したアルカリ性洗浄用電解水の生成装置であって、
上記原水の流量を調整可能にした水量調節弁と、
電解槽の陽陰両極間を流れる電流量を可変可能にした電流可変部と、
原水に上記のメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムから成る電解質を添加することができ、且つ、その添加量を調節可能に構成した電解質添加部と、
原水の単位時間当たりの流量を検出する流量検出部と、
電解質が添加された水溶液の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部と、
電解槽の陽陰両極間を流れる電流量を検出する電流量検出部と、
上記各検出部が検出した上記原水の流量と電気伝導度及び電流量の各データに従って、上記水量調節弁と電流可変部及び電解質添加部を夫々上記水溶液の電気伝導度が20〜80mS/mに、上記陽陰両極間に流れる電気量が0.04〜0.3C/mlとなるように制御する制御部と、によって構成したことを特徴とするアルカリ性洗浄用電解水の生成装置。 - 上記制御部に、手動操作に従って上記水量調節弁と電流可変部及び電解質添加部を調整して、上記水溶液の電気伝導度を20〜80mS/mに、上記陽陰両極間に流れる電気量を0.04〜0.3C/mlになるように調節することができる入力操作部を設けたことを特徴とする請求項3に記載のアルカリ性洗浄用電解水の生成装置。
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