JP2006137285A - ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】S12で前輪アンチスキッド作動中と判定し、S14,S15で前輪増圧中と判定する間、S16でタイマTimeZoatsuに10カウントをセットし、S14,S15で前輪減圧、保圧中と判定する場合、S17でTimeZoatsuをデクリメントする。S18でTimeZoatsu=0になる設定時間経過までは増圧中と見なして、マスターシリンダ液圧検出値Pmcと補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmch(前回値)とからPmch=0.2×Pmc+0.8×Pmch(前回値)により今回の補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求め、S18でTimeZoatsu=0になるとき増圧終了と見なして、Pmch=0.5×Pmc+0.5×Pmch(前回値)により今回の補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求め、S24での目標減速度Gtの演算に用いる。
【選択図】図4
Description
つまり、ブレーキペダルの踏み込みに応動するマスターシリンダからの液圧を車輪のホイールシリンダへ供給するブレーキ液圧回路中に、上記の電子制御に際して閉じる遮断弁を挿置し、マスターシリンダのリザーバ内における作動液を媒体として吐出するポンプ、これを駆動する電動モータ、およびポンプからの作動液を蓄圧するアキュムレータで構成された圧力源を設ける。
上記の電子制御に際しては、上記の遮断弁を閉じた状態で、上記圧力源のアキュムレータ内圧を用いて増圧弁を介しホイールシリンダ内のブレーキ液圧を増圧したり、減圧弁を介しホイールシリンダ内のブレーキ液圧を減圧することにより、マスターシリンダ液圧とは別個にブレーキ液圧を電子制御し得るようにしたものである。
かかるストロークシミュレータを不要にし、コスト上の不利益を回避する一手法としては、或る車輪を制動するブレーキ系はマスターシリンダ液圧を直接用いるブレーキ系とすると共に電子制御も可能なブレーキ系とし、他の車輪を制動するブレーキ系は当該車輪を別の圧力源からの液圧により電子制御可能に制動し得るようなブレーキ系となすことが考えられる。
そして後者の電子制御ブレーキ系の目標制動力は、マスターシリンダの操作状況(マスターシリンダ液圧やマスターシリンダストローク量)から求めた目標減速度を主ブレーキ系との共働により達成するような値に決定し、実制動力がこの目標制動力となるよう制御する。
具体的には、主ブレーキ系のアンチスキッド制御によるブレーキ液圧の減圧、保圧は、ブレーキ液のマスターシリンダ側への還流によりマスターシリンダ液圧を増大させ、マスターシリンダ(ブレーキペダル)ストロークを低下させるように作用し、アンチスキッド制御によるブレーキ液圧の増圧は逆に、マスターシリンダからのブレーキ液の消費によりマスターシリンダ液圧を低下させ、マスターシリンダ(ブレーキペダル)ストロークを増大させるように作用する。
従って、マスターシリンダ液圧検出値およびマスターシリンダストローク検出値をそのまま用いて目標減速度を求め、これを上記のように電子制御ブレーキ系の制動力制御に用いると、マスターシリンダ液圧やマスターシリンダストローク量の変化がアンチスキッド制御の影響を受けて発生したものである場合、運転者の制動操作と関係のない制動力変化が発生して運転者を戸惑わせることになる。
アンチスキッド制御の影響を受けて発生したマスターシリンダ液圧やマスターシリンダストローク量の変化による制動力変化を回避して前記の問題を解消することが考えられる。
なお、かかる波形を小さくするには、目標減速度を単純な一時遅れのフィルタに通過させた後に制動力制御に用いることも考えられるが、このフィルタは運転者による制動操作に対しても目標制動力を遅延させることとなり、素早い制動操作があった時に制動力制御の応答遅れが問題となる。
先ず前提となるブレーキ液圧制御装置を説明するに、これは、
制動操作に応動してストロークすることによりブレーキ元圧を発生するブレーキ元圧発生手段を有し、該手段からのブレーキ元圧により或る車輪を制動する主ブレーキ系と、
別の圧力源からの液圧により他の車輪を制動し、該車輪のブレーキ液圧を、前記ブレーキ元圧発生手段のストロークおよびブレーキ元圧の少なくとも一方に基づいて求めた目標減速度が、前記主ブレーキ系による車輪制動力との共働により達成されるよう決定する電子制御ブレーキ系とを具え、
前記主ブレーキ系に係わる車輪の制動スリップを、該車輪に係わるブレーキ液圧の上昇制限により抑制するアンチスキッド制御装置を設けたものとする。
主ブレーキ系のアンチスキッド制御によるブレーキ液圧変動に伴うブレーキ元圧発生手段のストローク変動分およびブレーキ元圧変動分を排除して目標減速度を求め得ることとなり、制動力がこれらストローク変動分およびブレーキ元圧変動分による波形をもったものになるのを回避することができるのは勿論のこと、
それに加えて、上記のアンチスキッド制御中に運転者による制動操作変化があった時は、この制動操作変化を考慮した目標減速度の求め直しが行われることとなって、運転者の制動操作変化に応じた制動力変化を生じさせることができ、前記の違和感を払拭することができる。
図1は、本発明のー実施例になるブレーキ液圧制御装置を示し、1は、運転者が踏み込んで制動操作力を付与するブレーキペダル、2は、ブレーキペダル1からの制動操作力を入力されるマスターシリンダである。
ブレーキペダル1からの制動操作力は、負圧式や、正圧式や、油圧式を可とする倍力装置(図示せず)を介して倍力下にマスターシリンダ2へ入力する。
よってマスターシリンダ2は、本発明におけるブレーキ元圧発生手段に相当する。
マスターシリンダ2の2個の液圧出口2L,2Rから左右前輪ブレーキユニット(ドラムブレーキやディスクブレーキ等)3FL,3FRまで左右前輪ブレーキ配管4L,4Rを延在させて設け、これら独立した2系統は、マスターシリンダ液圧Pmcを元圧とする左右前輪ブレーキ液圧Pfl,Pfrにより対応する前輪を個々に制動する前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5を構成する。
モータ10により駆動されるポンプ8,9は、プランジャポンプやギヤポンプ等の任意のものとすることができ、これらポンプ8,9の吸入ポートを吸入回路11L,11Rによりリザーバ12に接続すると共にこれら吸入回路11L,11R中に流入弁13L,13Rを挿置する。
ポンプ8,9の吐出ポートは吐出回路14L,14Rにより左右後輪ブレーキユニット3RL,3RRに接続すると共に流出弁15L,15Rを介してリザーバ12に接続し、吐出回路14L,14R中には増圧弁16L,16Rを挿置する。
増圧弁16L,16Rおよび左右後輪ブレーキユニット3RL,3RR間における吐出回路14L,14Rの回路部分は、減圧弁17L,17Rを介してポンプ8,9の吸入ポート(吸入回路11L,11R)に接続し、ポンプ8,9の吸入ポート(吸入回路11L,11R)には更にアキュムレータ18L,18Rを接続する。
吐出回路14L,14Rへの作動液は、流出弁15L,15Rが閉じた状態で開状態の増圧弁16L,16Rを経由し左右後輪ブレーキユニット3RL,3RRに向かい、ブレーキ液圧Prl,Prrを発生させて左右後輪を制動するものとする。
ここで左右後輪ブレーキ液圧Prl,Prrは、それぞれの吸入回路11L,11Rおよび吐出回路14L,14Rに係わる弁の後述する電子制御により任意に制御することができ、これがため吸入回路11L,11R、吐出回路14L,14R、およびこれら回路に係わる弁は、本発明における左右後輪ブレーキ系(電子制御ブレーキ系)19を構成すると共に、左右後輪ブレーキ系(電子制御ブレーキ系)のアンチスキッド制御装置を構成する。
当該アンチスキッド制御を可能にするため前輪ブレーキ配管4L,4R中に増圧弁21L,21Rを挿置すると共に、これら増圧弁21L,21Rと左右前輪ブレーキユニット3FL,3FRとの間における配管部分に減圧弁22L,22Rを接続する。
増圧弁21L,21Rを開き、減圧弁22L,22Rを閉じることで、マスターシリンダ液圧Pmcを元圧として左右前輪ブレーキ液圧Pfl,Pfrを上昇させることができ、増圧弁21L,21Rを閉じ、減圧弁22L,22Rも閉じることで左右前輪ブレーキ液圧Pfl,Pfrを保圧することができ、増圧弁21L,21Rを閉じ、減圧弁22L,22Rを開くことで、左右前輪ブレーキ液圧Pfl,Pfrを一部排除により低下させることができる。
これらポンプ24L,24Rは共通なモータ25により駆動するものとする。
車両の制動を希望して運転者がブレーキペダル1を踏み込むと、マスターシリンダ液圧Pmcが発生し、これが開状態の増圧弁21L,21Rを経て左右前輪ブレーキユニット3FL,3FRに向かうことにより、減圧弁22L,22Rの閉状態と相まって左右前輪ブレーキ液圧Pfl,Pfrが発生し、これら液圧により左右前輪を制動することができる。
回路14L,14Rへのブレーキ液は、流出弁15L,15Rの閉状態と相まって開状態の増圧弁16L,16Rを経て左右後輪ブレーキユニット3RL,3RRに向かい、減圧弁17L,17Rの閉状態の相まって左右前輪ブレーキ液圧Prl,Prrを発生させ、これら液圧により左右後輪を制動することができる。
マスターシリンダ2のストロークSssを検出するストロークセンサ32からの信号と、
マスターシリンダ液圧Pmcを検出する圧力センサ33L,33Rからの信号と、
左右後輪ブレーキ液圧Prl,Prrを検出する圧力センサ34L,34Rからの信号と、
左前輪の車輪速(周速)Vwflを検出する左前輪速センサ35からの信号と、
右前輪の車輪速(周速)Vwfrを検出する右前輪速センサ36からの信号と、
左後輪の車輪速(周速)Vwrlを検出する左後輪速センサ37からの信号と、
右後輪の車輪速(周速)Vwrrを検出する右後輪速センサ38からの信号とをそれぞれ入力する。
まずアンチスキッド制御演算部41について説明するに、これは、車輪速センサ35〜38で検出した車輪速Vwfl,Vwfr,Vwrl,Vwrrを基に周知の方法で車体速を演算し、この車体速と各輪の車輪速とから各輪の制動スリップ率を演算する。
アンチスキッド制御演算部41は更に、車輪ごとに、制動スリップ率が設定値を超える時よりアンチスキッドサイクル(保圧、減圧、増圧)を開始し、制動スリップ率が、最大制動力発生用の理想スリップ率となるよう個々のブレーキ液圧を制御すべく、保圧、減圧、増圧指令をABS制御指令として対応する前輪制動力制御部44(弁21L,21R,22L,22Rで構成)および後輪目標制動力演算部43に供給する。
またアンチスキッド制御演算部41は、前記増圧中であればこのことを示すようにABS制御モードABSMODE=0とし、前記保圧中であればこのことを示すようにABS制御モードABSMODE=1とし、前記減圧中であればこのことを示すようにABS制御モードABSMODE=2として、このABS制御モードABSMODEを目標減速度演算部42へ向け出力する。
後輪目標制動力演算部43は、マスターシリンダ液圧Pmcから前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5による前輪制動力を求め、この前輪制動力との共働により上記の目標減速度Gtを達成するのに必要な後輪ブレーキ系(電子制御ブレーキ系)19の後輪目標制動力を求め、これを後輪制動力指令値として後輪制動力制御部(弁13L,13R,15L,15R,16L,16R,17L,17Rで構成)へ供給する。
図3はメインルーチンで、先ずステップS1において車輪速Vwfl,Vwfr,Vwrl,Vwrrを読み込み、次のステップS2において、これら車輪速を基にアンチスキッド制御演算(図2のアンチスキッド制御演算部41に相当)を行い、ステップS3において、ステップS2での演算結果に基づくアンチスキッド制御用の前輪制動力制御を行う。
先ずステップS11において、センサ33L,33Rにより検出したマスターシリンダ液圧Pmcおよびその前回値Pmcz1を読み込む。
ステップS12では前記のアンチスキッド作動フラグFABSをチェックし、FABS=1(アンチスキッド作動中)か否かを判定する。
Pmch=0.8×Pmc+0.2×Pmch(前回値)
これにより、当該前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のアンチスキッド非作動中はアンチスキッド制御による前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧変動に伴うマスターシリンダ液圧変動分がない事実に呼応し、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcに重きをおいて補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求めることができる。
ステップS14において、前記アンチスキッド制御モードABSMODEのうち右前輪に係わるアンチスキッド制御モードABSMODE(FR)が0であるか否かを、つまり、右前輪ブレーキ液圧がアンチスキッド制御による増圧中か否かを判定し、また、
ステップS15において、アンチスキッド制御モードABSMODEのうち左前輪に係わるアンチスキッド制御モードABSMODE(FL)が0であるか否かを、つまり、左前輪ブレーキ液圧がアンチスキッド制御による増圧中か否かを判定する。
ステップS14で右前輪アンチスキッド制御モードABSMODE(FR)が0以外(1または2)、つまり、右前輪ブレーキ液圧が増圧を終了してアンチスキッド制御による保圧中や減圧中であると判定し、且つ、ステップS15で左前輪アンチスキッド制御モードABSMODE(FL)が0以外(1または2)、つまり、左前輪ブレーキ液圧が増圧を終了してアンチスキッド制御による保圧中や減圧中であると判定する場合、ステップS17において増圧終了タイマTimeZoatsuを1カウントずつの減算によりデクリメントし、左右前輪の少なくとも一方がアンチスキッド制御により増圧されている状態からこれら左右前輪がともにアンチスキッド制御により保圧や減圧に切り替わってからの経過時間を計測する。
この設定時間が経過した時にアンチスキッド(ABS)による増圧が終了したと見なして制御をステップS19に進め、ここで、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcと、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)との間における重み付けを0.5:0.5とし、次式の演算により今回の補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求める。
Pmch=0.5×Pmc+0.5×Pmch(前回値)
ステップS20では、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)と、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの偏差が設定値(例えば0.01Mpa)未満になった時をもって、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5がアンチスキッド制御中に増圧を終了され、左右前輪がともに減圧または保圧されているとし、制御をステップS19に進める。
ステップS22では、前回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcz1と今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの差の絶対値abs(Pmcz1−Pmc)、つまりマスターシリンダ液圧の時間変化率がアンチスキッド制御による変化率の範囲(例えば0.1Mpa)を外れて大きくなった時をもって、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5がアンチスキッド制御中に増圧を終了され、左右前輪がともに減圧または保圧されているとして制御をステップS19に進める。
Pmch=0.2×Pmc+0.8×Pmch(前回値)
ステップS23で、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcと、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)との間における重み付けを0.2:0.8とすることで、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5がアンチスキッド制御により増圧されている間は、ステップS19での減圧、保圧中における場合の重み付け0.5:0.5よりも、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcから補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求める時の補正量が大きくされる(フィルタが強くされる)こととなる。
このようにした理由は、アンチスキッド制御による前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧変動に伴うマスターシリンダ液圧変動が減圧時や保圧時に比べて増圧時の方が大きくなるためである。
かように目標減速度Gtを求めた後は図4のステップS5において前記した通り、前輪制動力との共働により当該目標減速度Gtを達成するのに必要な後輪目標制動力を演算し、ステップS6において、ステップS5での演算結果に基づく後輪制動力制御を行う。
前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のアンチスキッド制御によるブレーキ液圧変動に伴うマスターシリンダ液圧変動分を排除して目標減速度Gtを求めることとなり、制動力がこのマスターシリンダ液圧変動分による波形をもったものになるのを回避することができるのは勿論のこと、
上記のアンチスキッド制御中に運転者による制動操作変化があった時は、この制動操作変化を考慮した目標減速度Gtの求め直しが行われることとなって、運転者の制動操作変化に応じた制動力変化を生じさせることができ、運転者が制動操作と違う制動力の発生に戸惑う事態を回避することができる。
アンチスキッド(ABS)制御による前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧変動に伴うマスターシリンダ液圧の変動が、減圧、保圧時よりも増圧時に大きくなる事実に符合して、かかる増圧時にも上記の作用効果を確実に達成することができる。
増圧の終了後から設定時間(TimeZoatsu=10)が経過した時(ステップS18)、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)と今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの偏差が設定値未満になった時(ステップS20)、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcが設定値未満になった時(ステップS21)、または、マスターシリンダ液圧検出値Pmcの変化率がアンチスキッド制御による変化率の範囲を外れた時(ステップS22)に終了するようにしたから、
アンチスキッド制御による増圧時の検出値補正制御(ステップS23)は、今回の補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchと、その前回値Pmch(前回値)との間における乖離が大きく、ステップS14およびステップS15での増圧終了判定時では未だ誤差要因を多く含んでいることころながら、ステップS18およびステップS20〜ステップS22での判定後に至って初めてステップS23での増圧時の検出値補正制御を終了し、減圧、補圧時の検出値補正制御(ステップS19)に切り替えることにより、減圧、補圧時の検出値補正制御(ステップS19)を高精度なものにすることができる。
本実施例においては、先ずステップS11において、センサ33L,33Rにより検出したマスターシリンダ液圧Pmcおよびその前回値Pmcz1を読み込むと共に、マスターシリンダ液圧の変化傾向を表すa=Pmcz1−Pmcを求める。
ステップS12では前記のアンチスキッド作動フラグFABSをチェックし、FABS=1(アンチスキッド作動中)か否かを判定する。
ステップS12でFABS=1であると判定するアンチスキッド(ABS)作動中は、
ステップS14において、前記アンチスキッド制御モードABSMODEが0であるか否かを、つまり、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧がアンチスキッド制御による増圧中か否かを判定する。
マスターシリンダ液圧Pmcが増圧している場合、ステップS32において、a(=Pmcz1−Pmc)および-0.03Mpaのうち大きい方の値max(a, -0.03Mpa)をマスターシリンダ液圧補正量aとする。
マスターシリンダ液圧が減圧または保圧状態である場合、ステップS33において、a(=Pmcz1−Pmc)および0.003Mpaのうち小さい方の値min(a, 0.03Mpa)をマスターシリンダ液圧補正量aとする。
ステップS34では、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを、
Pmch=Pmch(前回値)+a
の演算により求める。
ステップS14で前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧がアンチスキッド制御による増圧を終了してアンチスキッド制御による保圧中や減圧中であると判定する場合、ステップS17において増圧終了タイマTimeZoatsuを1カウントずつの減算によりデクリメントし、前輪がアンチスキッド制御により増圧されている状態からアンチスキッド制御により保圧や減圧に切り替わってからの経過時間を計測する。
この設定時間が経過した時にアンチスキッド(ABS)による増圧が終了したと見なして制御をステップS35に進め、ここで、前記のa(=Pmcz1−Pmc)が負値か否かを、つまり、マスターシリンダ液圧Pmcが増圧しているか、減圧または保圧状態かをチェックする。
マスターシリンダ液圧が減圧または保圧状態である場合、ステップS37において、a(=Pmcz1−Pmc)および0.002Mpaのうち小さい方の値min(a, 0.02Mpa)をマスターシリンダ液圧補正量aとする。
そしてステップS34で、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを、
Pmch=Pmch(前回値)+a
の演算により求める。
ここで、マスターシリンダ液圧検出値Pmcから補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求めるときの補正量aは、マスターシリンダ液圧上昇(a<0)中の補正量(ステップS36)の方がマスターシリンダ液圧低下(a>0)中の補正量(ステップS37)よりも大きい(フィルタが強くされる)。
このようにした理由は、アンチスキッド制御中であっても、これによる増圧が行われていなければ(減圧、保圧中なら)、マスターシリンダ液圧の低下は運転者の制動操作変化に基づくものであると考えられ、このマスターシリンダ液圧低下中は補正量aを小さくして運転者の制動操作が補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchに反映されるようにするのがよいためである。
ステップS20では、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)と、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの偏差が設定値(例えば0.01Mpa)未満になった時をもって、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5がアンチスキッド制御中に増圧を終了され、減圧または保圧されているとし、制御をステップS35に進める。
ステップS22では、前回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcz1と今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの差の絶対値abs(Pmcz1−Pmc)、つまりマスターシリンダ液圧の時間変化率がアンチスキッド制御による変化率の範囲(例えば0.1Mpa)を外れて大きくなった時をもって、前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5がアンチスキッド制御中に増圧を終了され、減圧または保圧されているとして制御をステップS35に進める。
マスターシリンダ液圧が減圧または保圧状態である場合、ステップS40において、a(=Pmcz1−Pmc)および0.002Mpaのうち小さい方の値min(a, 0.02Mpa)をマスターシリンダ液圧補正量aとする。
そしてステップS34で、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを、
Pmch=Pmch(前回値)+a
の演算により求める。
ここで、マスターシリンダ液圧検出値Pmcから補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchを求めるときの補正量aは、マスターシリンダ液圧低下(a>0)中の補正量(ステップS40)の方がマスターシリンダ液圧増大(a<0)中の補正量(ステップS39)よりも大きい(フィルタが強くされる)。
このようにした理由は、アンチスキッド制御中であっても、これによる減圧、保圧が行われていなければ(増圧中なら)、マスターシリンダ液圧の上昇は運転者の制動操作変化に基づくものであると考えられ、このマスターシリンダ液圧上昇中は補正量aを小さくして運転者の制動操作が補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchに反映されるようにするのがよいためである。
かように目標減速度Gtを求めた後は図4のステップS5において前記した通り、前輪制動力との共働により当該目標減速度Gtを達成するのに必要な後輪目標制動力を演算し、ステップS6において、ステップS5での演算結果に基づく後輪制動力制御を行う。
前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のアンチスキッド制御によるブレーキ液圧変動に伴うマスターシリンダ液圧変動分を排除して目標減速度Gtを求めることとなり、制動力がこのマスターシリンダ液圧変動分による波形をもったものになるのを回避することができるのは勿論のこと、
上記のアンチスキッド制御中に運転者による制動操作変化があった時は、この制動操作変化を考慮した目標減速度Gtの求め直しが行われることとなって、運転者の制動操作変化に応じた制動力変化を生じさせることができ、運転者が制動操作と違う制動力の発生に戸惑う事態を回避することができる。
アンチスキッド(ABS)制御により前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧が増圧されている場合、マスターシリンダ液圧が低下している間の補正量(ステップS40)が、マスターシリンダ液圧上昇中の補正量(ステップS39)よりも大きくし、
アンチスキッド(ABS)制御により前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧が減圧、保圧されている場合、マスターシリンダ液圧上昇中の補正量(ステップS36)が、マスターシリンダ液圧低下中の補正量よりも大きくたから、
アンチスキッド制御中に運転者による制動操作変化があった時も、この制動操作変化を考慮して目標減速度Gtが求められることとなって、運転者の制動操作変化に応じた制動力変化を生じさせることができ、運転者が制動操作と違う制動力の発生に戸惑う事態を回避することができる。
増圧の終了後から設定時間(TimeZoatsu=10)が経過した時(ステップS18)、補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchの前回値Pmch(前回値)と今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcとの偏差が設定値未満になった時(ステップS20)、今回のマスターシリンダ液圧検出値Pmcが設定値未満になった時(ステップS21)、または、マスターシリンダ液圧検出値Pmcの変化率がアンチスキッド制御による変化率の範囲を外れた時(ステップS22)に終了するようにしたから、
アンチスキッド制御による増圧時の検出値補正制御(ステップS38〜ステップS40)は、今回の補正済マスターシリンダ液圧検出値Pmchと、その前回値Pmch(前回値)との間における乖離が大きく、ステップS14での増圧終了判定時では未だ誤差要因を多く含んでいることころながら、ステップS18およびステップS20〜ステップS22での判定後に至って初めてステップS39およびステップS40での増圧時の検出値補正制御を終了し、減圧、補圧時の検出値補正制御(ステップS36およびステップS37)に切り替えることにより、減圧、補圧時の検出値補正制御(ステップS36およびステップS37)を高精度なものにすることができる。
ただし、マスターシリンダストローク量検出値Sssを用いる場合、図6のステップS35はマスターシリンダストローク量検出値Sssの増大変化時に制御をステップS36へ進め、マスターシリンダストローク量検出値Sssの減少変化時に制御をステップS37へ進めるようなプログラムとし、
ステップS38はマスターシリンダストローク量検出値Sssの増大変化時に制御をステップS40へ進め、マスターシリンダストローク量検出値Sssの減少変化時に制御をステップS39へ進めるようなプログラムとする。
特には図示しなかったが、アンチスキッド(ABS)制御により前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5のブレーキ液圧が増圧されている場合の前記したマスターシリンダ液圧検出値やマスターシリンダストローク量検出値の補正制御を、
マスターシリンダPmcが所定値以上であり、または、マスターシリンダ液圧Pmcおよび対応するブレーキ液圧間の圧力差が所定値以上であり、或いは、マスターシリンダストローク量Sssが所定値以上である時で、
前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5を成す複数系統のうちの少なくとも1系統がアンチスキッド制御により所定時間以上、または所定量以上増圧されている時に行わせるよう構成するのがよい。
アンチスキッド制御中、マスターシリンダ液圧Pmcが十分高ければ、ポンプ24L,24Rによる配管4L,4Rへのブレーキ液の還流量よりも、マスターシリンダ2からブレーキユニット3FL,3FRへの液流量の方が多い。
従って、左右前輪に対して1輪でもアンチスキッド制御による増圧が行われていれば、マスターシリンダ液圧Pmcは低下傾向となり、マスターシリンダストローク量Sssは増大傾向となる。
これがためアンチスキッド制御中は、マスターシリンダ液圧Pmcの低下およびマスターシリンダストローク量Sssの増大がアンチスキッド制御の影響による変動分を含んだものであり、この影響を排除して目標減速度Gtを正確に求めるためには、これらマスターシリンダ液圧Pmcの低下およびマスターシリンダストローク量Sssの増大を確実に抑制するような検出値の補正が必要であるが、
アンチスキッド制御中の増圧によるマスターシリンダ液圧Pmcの低下およびマスターシリンダストローク量Sssの増大が発生するのは、ポンプ24L,24Rによる配管4L,4Rへのブレーキ液の還流量よりも、マスターシリンダ2からブレーキユニット3FL,3FRへの液流量の方が多い場合であるから、
前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)5を成す複数系統のうちの少なくとも1系統がアンチスキッド制御により所定時間以上、または所定量以上増圧されている時に増圧時検出値補正制御を行わせることとした。
また同様の理由から、マスターシリンダPmcが所定値以上であり、マスターシリンダ液圧Pmcおよび対応するブレーキ液圧間の圧力差が所定値以上であり、マスターシリンダストローク量Sssが所定値以上であることをも、増圧時検出値補正制御を行わせることの条件とするのがよい。
或いは、左前輪ブレーキユニット3FLおよび右後輪ブレーキユニット3RRに係わるブレーキ系をマスターシリンダ液圧Pmcに応動する主ブレーキ系とし、右前輪ブレーキユニット3FRおよび左後輪ブレーキユニット3RLに係わるブレーキ系を電子制御ブレーキ系としてもよいこと勿論である。
2 マスターシリンダ(ブレーキ元圧発生手段)
3FL,3FR 左右前輪ブレーキユニット
3RL,3RR 左右後輪ブレーキユニット
4L,4R 前輪ブレーキ配管
5 前輪ブレーキ系(主ブレーキ系)
7 別の圧力源
8,9 ポンプ
10 モータ
11L,11R 吸入回路
12 リザーバ
13L,13R 流入弁
14L,14R 吐出回路
15L,15R 流出弁
16L,16R 増圧弁
17L,17R 減圧弁
18L,18R アキュムレータ
19 左右後輪ブレーキ系(電子制御ブレーキ系)
21L,21R 増圧弁
22L,22R 減圧弁
23L,23R アキュムレータ
24L,24R ポンプ
25 モータ
31 コントローラ
32 ストロークセンサ
33L,33R,34L,34R 圧力センサ
35 左前輪速センサ
36 右前輪速センサ
37 左後輪速センサ
38 右後輪速センサ
41 アンチスキッド制御演算部
42 目標減速度演算部
43 後輪目標制動力演算部
Claims (5)
- 制動操作に応動してストロークすることによりブレーキ元圧を発生するブレーキ元圧発生手段を有し、該手段からのブレーキ元圧により或る車輪を制動する主ブレーキ系と、
別の圧力源からの液圧により他の車輪を制動し、該車輪の制動力を、前記ブレーキ元圧発生手段のストロークおよびブレーキ元圧の少なくとも一方に基づいて求めた目標減速度が、前記主ブレーキ系による車輪制動力との共働により達成されるよう決定する電子制御ブレーキ系とを具え、
前記主ブレーキ系に係わる車輪の制動スリップを、該車輪に係わるブレーキ液圧の上昇制限により抑制するアンチスキッド制御装置を設けたブレーキ液圧制御装置において、
前記アンチスキッド制御装置の作動中、アンチスキッド制御による主ブレーキ系のブレーキ液圧変動に伴う前記ブレーキ元圧発生手段のストローク変動分およびブレーキ元圧変動分を前記ブレーキ元圧発生手段のストローク検出値およびブレーキ元圧検出値から除去した補正済ストローク検出値および補正済ブレーキ元圧検出値を前記目標減速度の演算に用いるよう構成したことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。 - 請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記ブレーキ元圧発生手段のストローク検出値およびブレーキ元圧検出値から前記補正済ストローク検出値および補正済ブレーキ元圧検出値を求める場合の補正量は、
アンチスキッド制御により主ブレーキ系のブレーキ液圧が増圧されている間の補正量が、アンチスキッド制御により主ブレーキ系のブレーキ液圧が減圧、保圧されている間の補正量よりも大きいものであることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。 - 請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記ブレーキ元圧発生手段のストローク検出値およびブレーキ元圧検出値から前記補正済ストローク検出値および補正済ブレーキ元圧検出値を求める場合の補正量は、
アンチスキッド制御により主ブレーキ系のブレーキ液圧が増圧されている場合、前記ブレーキ元圧が低下している間の補正量が、該ブレーキ元圧が上昇している間の補正量よりも大きく、また、前記ストロークが増大している間の補正量が、該ストロークが低下している間の補正量よりも大きいものであり、
アンチスキッド制御により主ブレーキ系のブレーキ液圧が減圧、保圧されている場合、前記ブレーキ元圧が上昇している間の補正量が、該ブレーキ元圧が低下している間の補正量よりも大きく、また、前記ストロークが増大している間の補正量が、該ストロークが低下している間の補正量よりも大きいものであることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。 - 請求項2または3に記載のブレーキ液圧制御装置において、
アンチスキッド制御による増圧時の前記検出値補正制御を、
前記増圧の終了後から設定時間が経過した時、補正済検出値の前回値と今回の検出値との偏差が設定値未満になった時、今回の検出値が設定値未満になった時、または、検出値の変化率がアンチスキッド制御による変化率の範囲を外れた時に終了するよう構成したことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。 - 主ブレーキ系が複数系統よりなり、前記アンチスキッド制御装置がこれら系統を個々にアンチスキッド制御するものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
アンチスキッド制御により主ブレーキ系のブレーキ液圧が増圧されている場合の前記検出値補正制御を、
前記ブレーキ元圧が所定値以上であり、または、該ブレーキ元圧および対応するブレーキ液圧間の圧力差が所定値以上であり、或いは、前記ブレーキ元圧発生手段のストロークが所定値以上である時で、
前記複数系統のうちの少なくとも1系統がアンチスキッド制御により所定時間以上、または所定量以上増圧されている時に行わせるよう構成したことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
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