JP2006124605A - アルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法 - Google Patents

アルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱安定性が良好で、紡糸時の糸切れがなく、糸強度の高いアルカリ溶解性繊維や分割型複合繊維を得るのに好適なアルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法を提供する。
【解決手段】 スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、全酸成分に対して0.5〜5モル%共重合しているポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し、ポリエーテル化合物を5〜50質量部含有するポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂中のポリエーテル化合物の数平均分子量が1000以上、8000未満であり、かつ、このポリエーテル化合物とポリアルキレンテレフタレートとの結合数が1.7モル%以上であるアルカリ易溶性ポリエステル樹脂。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱安定性に優れたアルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、紡糸時の熱劣化が少ないため、操業性よく糸強度の高いアルカリ易溶性繊維や分割型複合繊維を得るのに好適なアルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法に関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、優れた機械的特性と化学的特性を有するため、 衣料用、産業用等の繊維のほか、磁気テープ用、コンデンサー用等のフィルムあるいはボトル等の成形物用として広く用いられている。
その中で、スルホイソフタル酸金属塩及びその誘導体を高比率で共重合したり、スルホイソフタル酸金属塩及びその誘導体とポリアルキレングリコールを添加、又は共重合したアルカリ易溶性ポリエステルは古くから知られており、これらのアルカリ溶解成分とアルカリ難溶成分との複合糸をアルカリ溶出処理することにより、極細繊維を得る手法が数多く提案されている(特許文献1、2)。
また、アルカリ易溶性ポリエステルを単独で製糸することも検討されている。例えば、ナトリウムスルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを含む共重合ポリエチレンテレフタレートからなるアルカリ易溶性繊維と他のアルカリ難溶性繊維から構成される混繊糸を布帛とした後、アルカリ性水溶液で処理することにより、布帛のドレープ性、表面タッチを改良する方法が提案されている(特許文献3)。
しかし、これらのアルカリ易溶性ポリエステル樹脂は、熱安定性が悪く、溶融紡糸時に熱劣化を起こし、糸強度が低下したり、紡糸時に糸切れが多発する場合があった。
特開昭56−9442号公報 特開平1−162825号公報 特開昭64−26747号公報
本発明は、上記の問題を解決し、熱安定性が良好で、紡糸時の糸切れがなく、糸強度の高いアルカリ易溶性繊維や分割型複合繊維を得るのに好適なアルカリ易溶性ポリエステル樹脂とその製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は次の構成を有するものである。
(1)スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、全酸成分に対して0.5〜5モル%共重合しているポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し、ポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体を、5〜50質量部含有するポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂中のポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体の数平均分子量が1000以上、8000未満であり、かつ、このポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体全体とポリアルキレンテレフタレートとの結合数が1.7モル%以上であることを特徴とするアルカリ易溶性ポリエステル樹脂。
(2)上記(1)記載のアルカリ易溶性ポリエステル樹脂を製造するに際し、ポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体として、数平均分子量が4000以上、15000未満の成分60〜99質量%と、数平均分子量が100以上、4000未満の成分40〜1質量%とを混合して使用することを特徴とするアルカリ易溶性ポリエステル樹脂の製造方法。
本発明によれば、熱安定性が良好で、紡糸時の糸切れがなく、糸強度の高いアルカリ易溶性繊維や分割型複合繊維を得るのに好適なアルカリ易溶性ポリエステル樹脂が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアルカリ易溶性ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル樹脂と称することがある。)を構成するポリアルキレンテレフタレートは、主としてアルキレングリコールとテレフタル酸から構成されており、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール(EG)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられるが、中でもEGが好ましい。
上記のポリアルキレンテレフタレートには、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、全酸成分に対して0.5〜5モル%共重合していることが必要であり、共重合量は1〜4モル%であることが好ましく、1.5〜3モル%であることがさらに好ましい。
スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸は、共重合することによってポリエステル樹脂のアルカリ溶解性を向上させる効果があり、具体的には5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIP)等のスルホン酸塩基を有するイソフタル酸が挙げられる。
スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の共重合割合が0.5モル%より少ないと、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。また、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が5モル%を超えると、重合時にポリマーの溶融粘度が上がり、重合度が十分に上がらず、糸強度が低下するため好ましくない。
なお、ポリアルキレンテレフタレートには、本発明の効果を損なわない範囲で次のような成分を共重合してもよい。酸成分としては、イソフタル酸、(無水)フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、(無水)コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、炭素数20〜60のダイマー酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、メサコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸や、(無水)トリメリット酸、トリメシン酸、(無水)ピロメリット酸等の多官能カルボン酸を挙げることができる。また、アルコール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド、あるいはプロピレンオキシド付加物等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコール等を挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し、ポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体(以下、両者を併せてPOEと称することがある。)を5〜50質量部含有していることが必要であり、その含有量は6〜30質量部であることが好ましく、7〜20質量部であることがさらに好ましい。
ここでいうPOEとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などが挙げられるが、中でもPEG、PTMGが好ましい。
POEの含有量が、ポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し5質量部より少ないと、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。また、POEの含有量がポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し50質量部を超えると、 POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中のPOEの数平均分子量が1000以上、8000未満であることが必要であり、2000以上、7000未満であることが好ましく、3000以上、6000未満であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂中のPOEの数平均分子量が1000未満になると、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。また、ポリエステル樹脂中のPOEの数平均分子量が8000以上になると、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。
また、本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布のピークトップの分子量が4000以上、15000未満であることが好ましい。ポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布のピークトップの分子量が4000未満になると、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下することがあるため好ましくない。また、ポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布のピークトップの分子量が15000以上になると、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりすることがあるため好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布の形状は、図1に示すような高分子量側のピークと別に低分子量側にもやや小さいピークが見られる二山型、図2に示すような一つのピークの低分子量側にショルダーピークが見られるショルダー型、図3に示すような分布の幅の広いピークが一つ見られる幅広型などがあるが、この中でも二山型ないしショルダー型が好ましい。
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、POEとポリアルキレンテレフタレートとの結合数が1.7モル%以上であることが必要であり、1.7〜3.7モル%であることが好ましい。POEのポリアルキレンテレフタレートとの結合数が1.7モル%より小さいと、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。
POEのポリアルキレンテレフタレートとの結合数とは、POEのアルキレンオキサイド(RO)単位100部に対し、アルキレンテレフタレートと共重合している末端のROが何部存在するかを意味し、1H−NMRで測定することができる。すなわち、1H−NMRチャートにおいて、ポリアルキレンテレフタレートのテレフタル酸残基(又は5−スルホイソフタル酸残基)とエステル結合を形成しているPOEの末端ROのメチレンプロトンaと、a以外のROのメチレンプロトンbとの積分値の比から求めることができる。具体的には下記式(1)により計算できる。
ポリアルキレンテレフタレートとの結合数(モル%)=a/(a+b)×100 …(1)
ただし、エステル結合を形成している末端ROの1プロトン当たりの積分値をa、a以外のROの1プロトン当たりの積分値をbとする。
POEとポリアルキレンテレフタレートとの結合数が多い程、POEとポリアルキレンテレフタレートとの共重合度合いが高いことを意味している。反対に、POEとポリアルキレンテレフタレートとの結合数が少ない程、POEとポリアルキレンテレフタレートとの共重合度合いが低いことを意味し、樹脂の熱安定性が低下する。
本発明のポリエステル樹脂は、例えば次のような方法により製造することができる。
テレフタル酸とジオールを直接エステル化させるか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとジオールをエステル交換させてポリエステルオリゴマーを合成し、これにPOEを添加し、攪拌混合した後、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのメチルエステル化物あるいはEGエステル化物を添加し、重縮合反応を行う。
上記の製法において、POEとして、数平均分子量が4000以上、15000未満の成分(POE−A)60〜99質量%と、数平均分子量が100以上、4000未満の成分(POE−B)40〜1質量%とを混合して使用することが好ましい。方法としては、エステル化反応後のオリゴマーに、POE−AとPOE−Bを別々に投入する方法や、POE−AとPOE−Bを混合したPOEを予め作液し、この混合液をオリゴマーに投入する方法がある。何れの場合もオリゴマーに投入した後、15分以上溶融状態で混合を行ってから重縮合反応を行うことが好ましい。
POE−Aの数平均分子量は、4000以上、15000未満であることが好ましく、
5000以上、12000未満であることがより好ましく、6000以上、9000未満であることがさらに好ましい。POE−Aの数平均分子量が4000未満になると、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。また、POE−Aの数平均分子量が15000以上になると、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。
POE−Aは、POE全体の60〜99質量%含有していることが好ましく、70〜
99質量%であることがより好ましく、80〜98質量%であることがさらに好ましく、90〜98質量%であることが最も好ましい。POE−Aの含有量が60質量%より少ないと、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。また、POE−Aの含有量が99質量%を超えると、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。
次に、POE−Bの数平均分子量は、100以上、4000未満であることが好ましく、200以上、3000未満であることがより好ましく、400以上、2000未満であることがさらに好ましい。POE−Bの数平均分子量が4000以上もしくは100未満になると、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。なお、本発明においては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等もPOEに含まれる。
POE−Bは、POE全体の40〜1質量%含有していることが好ましく、30〜1質量%であることがより好ましく、20〜2質量%であることがさらに好ましく、10〜2質量%であることが最も好ましい。POE−Bの含有量が1質量%より少ないと、POEとポリアルキレンテレフタレートとの相溶性が低下し、紡糸時に糸切れが多発したり、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれて糸強度が低下したりするため好ましくない。また、POE−Bの含有量が40質量%を超えると、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下するため好ましくない。
重縮合反応は、通常、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、コバルト等の金属化合物の存在下で、0.12〜12hPa程度の減圧下、250〜290℃の温度で、極限粘度が0.7以上となるまで行うことが好ましい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系化合物のような酸化防止剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐候性改良剤、難燃剤、制電剤、抗菌剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有させてもよい。
POEを含有しているポリエステル樹脂は、一般に紡糸時の糸切れや糸強度の低下が問題となる。
ポリエステル樹脂において、OH末端のROは熱安定性が低く、これに比べてポリアルキレンテレフタレートと結合したROの方が熱安定性が高いと考えられる。したがって、POEとポリアルキレンテレフタレートとの結合数を1.7モル%以上とし、POEのOH末端をより少なくすることによって熱安定性が向上する。
また、POEの分子量が高いと、アルカリ易溶性は優れるが、POEとポリアルキレンテレフタレートとの溶融粘度のムラが大きくなるため、重合中に相分離しやすく、均一に混ざらない。そのためPOEのOH末端とポリアルキレンテレフタレートとが反応し難く、OH末端が残るため熱安定性が低くなり、糸強度が低下する。また、均一でないため紡糸時に糸切れが多発する場合がある。一方、POEの分子量が低いと熱安定性の低さや糸切れの問題はないが、ポリエステル樹脂のアルカリ溶解性が低下する。
そこで、本発明のように、アルカリ易溶性を付与するために添加する分子量の高いPOEに、分子量の低いものが一定量存在することで、これが相溶化剤として働き、分子量の高いPOEについても重合中に相分離しないため、POEとポリアルキレンテレフタレートとの溶融粘度のムラが発生しないものと推定される。その結果、アルカリ易溶性ポリエステル樹脂の熱安定性や糸切れの問題を改善することが可能となる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、特性値等の測定及び評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
フェノール/四塩化エタン(1/1、質量比)を溶媒として、温度20.0度で測定した溶液粘度から求めた。
(b)アルカリ減量速度
アルカリ易溶性ポリエステル樹脂を常法によりペレット化、乾燥した後、吐出孔を48個有する紡糸口金を用い、紡糸温度295℃で紡糸し、冷却、油剤付与を行いながら、1500m/分の速度で捲き取り、未延伸糸を得た。これを延伸倍率2.8、ロールヒータ温度80℃、プレートヒータ温度150℃、延伸速度600m/分の条件で延伸した後、巻き取り、75デシテックス/48フィラメントの延伸糸を得た。
この延伸糸を筒編みし、浴比1:50、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液70℃で20分間減量処理を行い、次式により求めた。
減量速度(質量%/分)=(A−B)/A×100/20
A:筒編み地の減量前の質量(g)、B:筒編み地の減量後の質量(g)
アルカリ減量速度が5質量%/分以上の繊維を合格とした。
(c)糸切れ回数
ポリエステル樹脂を(b)に記載した方法で1時間連続で溶融紡糸した際の糸切れの回数を数えた。
糸切れが1回も発生しなかったもの:○
糸切れが発生したもの:×
(d)極限粘度保持率(IV保持率)
ドライエアーを5L/分で流通させた容積27Lの箱形熱処理乾燥機の中に、極限粘度がIV0であるポリエステル樹脂のペレットを2g入れ、120℃で45分間結晶化処理した後、150℃で10時間熱処理を行い、極限粘度IV1を測定した。次式によりIV保持率を求めた。
IV保持率(%)=IV1/IV0×100
IV保持率90%以上のポリエステル樹脂を合格とした。
(e)POEのポリアルキレンテレフタレートとの結合数(POEの反応率)。
ポリエステル樹脂を重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容積比1/13の混合溶媒に溶解し、NMR装置(日本電子社製LA−400型)で測定温度50℃にて1H−NMR測定した。得られたチャートの積分値から、前述した方法により求めた。
(f)重合後のポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布
ポリエステル樹脂をメタノール−KOH液でアルカリ分解し、テレフタル酸で中和した後、ろ過した分解液を濃縮してポリエステル樹脂からPOEを分離した。これをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、GPC装置(Waters2690)にて測定して、ポリスチレン換算平均分子量を求めた。検出器にはRI検出器(Waters2414)を使用した。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)オリゴマーの存在するエステル化反応缶にテレフタル酸(TPA)とEGとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPa、滞留時間8時間の条件でエステル化反応を行い、反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
このPETオリゴマー53.3kgを重縮合反応缶に移送し、平均分子量6500のポリエチレングリコール(POE−A)を6.03kg(POE全体に対して92質量%となる量)、平均分子量400のPEG(POE−B)を0.52kg(POE全体に対して8質量%となる量、かつ、POE全体が、生成するポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し、13.6質量部となる量)添加し、60分間攪拌混合した。
その後、三酸化アンチモンを19.2g(全酸成分1モルに対して3×10-4モルとなる量)、5−ナトリウムイソフタル酸のメチルエステル(SIPM)を1.60kg(全酸成分に対してSIPMが2.0モル%となる量)添加し、重縮合反応缶内の温度を30分間で275℃に上昇し、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で、攪拌しながら3時間重縮合反応を行い、常法により払い出してペレット化した。
(実施例2〜6、比較例1〜7)
POEの種類、含有量、SIPMの添加量を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られたポリエステル樹脂の評価結果等を表1に示す。なお、表1中に記載のPOEの反応率とは、POEのポリアルキレンテレフタレートとの結合数のことである。
表1から明らかなように、実施例1〜6で得られたアルカリ易溶性ポリエステル樹脂は、いずれも極限粘度が0.7以上であり、またIV保持率が90%以上と熱安定性が良好で、紡糸時の糸切れがなく、アルカリ減量速度も5質量%/分以上と、アルカリ易溶性ポリエステル樹脂として優れた特性を有していた。
一方、比較例1は、POEの反応率(POEのポリアルキレンテレフタレートとの結合数)が1.7モル%以上とならなかったため、IV保持率が90%以上とならず、熱安定性の低いポリエステル樹脂となった。さらに、紡糸時に糸切れが発生した。
次に、比較例2は、ポリエステル樹脂中のPOEの数平均分子量が8000以上となったため、POEの反応率が1.7モル%以上とならなかった。そのため、IV保持率が90%以上とならず、熱安定性の低いポリエステル樹脂となった。さらに、紡糸時に糸切れが発生した。
また、比較例3は、ポリエステル樹脂中のPOEの数平均分子量が1000未満となったため、アルカリ減量速度が5質量%/分以上とならず、アルカリ溶解性の低いポリエステル樹脂となった。
比較例4は、SIPMを5モル%以上添加したため、極限粘度が0.7以上とならなかった。そのため糸強度が低下し、紡糸時に糸切れが発生した。
次に、比較例5は、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を添加しなかったため、アルカリ減量速度が5質量%/分以上とならず、アルカリ溶解性の低いポリエステル樹脂となった。
また、比較例6は、POEをポリアルキレンテレフタレート100質量部に対して50質量部を超えて添加したため、IV保持率が90%以上とならず、熱安定性の低いポリエステル樹脂となった。そのため、紡糸時に糸切れが発生した。
さらに、比較例7は、POEの添加量がポリアルキレンテレフタレート100質量部に対して5質量部より少なかったため、アルカリ減量速度が5質量%/分以上とならず、アルカリ溶解性の低いポリエステル樹脂となった。
本発明のポリエステル樹脂中のPOEの分子量分布の一例を示す二山型のGPCチャートを模式的に表したグラフである。グラフの横軸は分子量(左側が高分子量側)、縦軸は頻度である。 同上の他の例を示すショルダー型のGPCチャートを模式的に表したグラフである。グラフの横軸は分子量(左側が高分子量側)、縦軸は頻度である。 同上のさらに他の例を示す幅広型のGPCチャートを模式的に表したグラフである。グラフの横軸は分子量(左側が高分子量側)、縦軸は頻度である。

Claims (2)

  1. スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、全酸成分に対して0.5〜5モル%共重合しているポリアルキレンテレフタレート100質量部に対し、ポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体を、5〜50質量部含有するポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂中のポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体の数平均分子量が1000以上、8000未満であり、かつ、このポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体全体とポリアルキレンテレフタレートとの結合数が1.7モル%以上であることを特徴とするアルカリ易溶性ポリエステル樹脂。
  2. 請求項1記載のアルカリ易溶性ポリエステル樹脂を製造するに際し、ポリエーテル化合物又はポリエーテル化合物誘導体として、数平均分子量が4000以上、15000未満の成分60〜99質量%と、数平均分子量が100以上、4000未満の成分40〜1質量%とを混合して使用することを特徴とするアルカリ易溶性ポリエステル樹脂の製造方法。

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