JP2010059572A - 常圧カチオン可染性ポリエステル複合繊維 - Google Patents

常圧カチオン可染性ポリエステル複合繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】常圧下においてもカチオン染料による非常に優れた可染性を有し、かつ熱水への溶解物の溶出が抑制された、常圧カチオン可染ポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】主としてポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル成分Aを芯とし、主として共重合ポリブチレンテレフタレートからなるポリエステル成分Bを鞘とした芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル成分Bが、特定の有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルである、常圧カチオン染料可染性を有する芯鞘型複合繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、常圧下においてもカチオン染料による可染性を有し、かつ熱水への溶解物の溶出が抑制された、常圧カチオン可染ポリエステル複合繊維に関するものである。
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系繊維は、衣料用や産業資材用として広く使用されている。しかしながら衣料用繊維として使用した場合、ポリエステル繊維は、その化学的特性から分散染料、アゾイック染料でしか染色できないため、鮮明且つ深みのある色相が得られにくいという欠点があった。かかる欠点を解消する方法として、ポリエステルにスルホイソフタル酸の金属塩を2〜3モル%共重合する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかしながら、かかる方法によって得られるポリエステル繊維は、高温・高圧下でしか染色することができず、天然繊維やウレタン繊維などと交編、交織した後に染色すると、天然繊維、ウレタン繊維が脆化するという問題があった。これを常圧、100℃付近の温度で十分に染色しようとすれば、スルホイソフタル酸の金属塩を多量に共重合されることが必要となる。しかしこの場合、スルホン酸の金属塩基による増粘効果から、ポリエステルの重合度を高くすることができず、溶融紡糸にて得られるポリエステル繊維の強度が著しく低下し、さらに紡糸操業性が著しく悪化するという問題があった。
またポリエチレンテレフタレートに対して、かかるスルホイソフタル酸成分を共重合した場合、特にポリエチレンテレフタレートを構成する酸成分を基準として4モル%程度またはそれ以上共重合した際には、その親水性ゆえに熱水溶解性が高まり、プロセス上熱水を使用する必要のあるペレット化工程や染色工程で一部が溶解してしまう、という欠点があった。
一方、前述のスルホン酸の金属塩基による増粘効果によるポリエステル繊維の強度低下を解決するために、イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーを共重合する技術が開示されている(例えば、特許文献3、4参照。)。イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーとしては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩などが例示されているが、これらのカチオン可染モノマー共重合ポリエステルは熱安定性が悪く、常圧カチオン可染化させるため、共重合量を増加させようとしても、重合反応途中で熱分解が進行し、高分子量化させることが困難であった。さらに溶融紡糸する際の熱履歴による分解が大きく、結果として得られる糸の強度が弱くなるという欠点を有していた。
かかる問題を解決する方法として、スルホイソフタル酸の金属塩に加え、分子量が2000以上のポリエチレングリコールを共重合する方法、アジピン酸、セバシン酸などの直鎖炭化水素のジカルボン酸を共重合する方法、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分を共重合する方法が提案されている。(例えば、特許文献5、6参照。)
一方、耐光性の低下が少なく、且つ常圧可染性を出す方法としてアジピン酸、セバシン酸のような直鎖炭化水素のジカルボン酸、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分、また、平均分子量が400〜1000のポリアルキレングリコールをスルホイソフタル酸の金属塩と共重合する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
しかしながら、これらいずれの方法でも得られたポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の強度が低くなり、ひいては得られる布帛の引き裂き強度が低下する、更には染色堅牢度が低いなどの品質上の問題があった。
また、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエステルを鞘部に、95モル%以上がエチレンテレフタレートの繰返し単位からなるポリエステルを芯部に配した複合繊維が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。確かにこの方法では、鞘部の低強度を芯部で補強されるため、強度劣化を有る程度抑えることはできる。しかしながら、鞘部を構成する共重合ポリエステル中のスルホイソフタル酸成分の共重合量には、前述と同様の理由で限界があり、十分な染着性を得ることが困難であった。
特公昭34−010497号公報 特開昭62−089725号公報 特開平01−162822号公報 特開2006−176628号公報 特開2002−284863号公報 特開2006−200064号公報 特開2002−284863号公報 特開平07−126920号公報
本発明は上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、常圧下においてもカチオン染料による非常に優れた可染性を有し、かつ熱水への溶解物の溶出が抑制された、常圧カチオン可染ポリエステル複合繊維を提供するものである。
本発明者らは、かかる課題に鑑み検討を重ねた結果、本発明の目的は、次に表す芯鞘型複合型繊維によって達成されることを見出した。 すなわち本発明は、主としてポリエチレンテレフタレートからなり固有粘度が0.60dL/g以上のポリエステル成分Aを芯成分とし、主として共重合ポリブチレンテレフタレートからなり固有粘度が0.40dL/g以上のポリエステル成分Bを鞘成分とし、成分A:成分B=30:70〜70:30の重量比率の芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル成分Bが、下記化学式(1)で表される有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分を、ポリエステル成分Bを構成する全酸成分を基準として4〜12モル%共重合された共重合ポリブチレンテレフタレートである、常圧カチオン可染性芯鞘型複合繊維であり、当該発明によって上記本発明の目的を達成することができる。
Figure 2010059572
[上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xはアルカリ金属元素、4級ホスホニウム塩または4級アンモニウム塩を表す。]
本発明によれば、常圧下においてもカチオン染料による非常に優れた可染性を有しており、かつ熱水処理を行った際に熱水への溶解物の溶出が抑制された、常圧カチオン可染ポリエステル複合繊維を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分に使用されるポリエステル成分Aとは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルである。
上記ポリエチレンテレフタレートには、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、具体的には構成する全繰り返し単位あたり20モル%、好ましくは10モル%以内で他の成分が共重合されていてもよい。他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸成分を挙げることができる。さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸のような三官能性以上のポリカルボン酸を共重合成分として用いても良い。また、ジオール成分では、例えばトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール成分を挙げることができる。さらに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。なおポリエステル成分Aの固有粘度は0.60dL/g以上であることが必要である。固有粘度が0.60dL/g未満では得られる複合繊維の強度が低く、実用に適さない。
一方、本発明の芯鞘型複合繊維の鞘に使用されるポリエステル成分Bとは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、テトラメチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルである。
また上記ポリエステル成分Bには、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で他の成分が共重合されていてもよい。本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内とは、具体的には構成する全繰り返し単位あたり10モル%、好ましくは5モル%以内である。他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸成分を挙げることができる。さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸のような三官能性以上のポリカルボン酸を共重合成分として用いても良い。また、ジオール成分では、例えばトリメチレングリコール、エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール成分を挙げることができる。さらに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。
なおポリエステル成分Bの固有粘度は0.40dL/g以上であることが必要である。固有粘度が0.40dL/g未満では得られる複合繊維の強度が低く、実用に適さない。
該ポリエステル成分Bには、共重合成分として、下記化学式(1)で表される有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分が共重合されていることが必要である。
Figure 2010059572
[上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xはアルカリ金属元素、4級ホスホニウム塩または4級アンモニウム塩を表す。]
本発明で使用される有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分としては、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩)、5−スルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩、または5−スルホイソフタル酸の4級アンモニウム塩が例示される。また、これらのエステル形成性誘導体も好ましく例示される。これらの群の中では、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、4級ホスホニウム塩が例示される。4級ホスホニウム塩の4つある置換基は同一であっても異なっていても良い。上記化学式(1)で表される化合物の具体例としては、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸エチルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸テトラフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−スルホイソフタル酸ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、あるいはこれらイソフタル酸誘導体のジメチルエステル、が好ましく例示されるが、製造時の安定性やコストの面から特に5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩が特に好ましく用いられる。
またこれらの有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合使用しても良い。
本発明において、下記化学式(1)で表される有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分は、ポリエステル成分Bを構成する全酸成分を基準として4モル%以上12モル%以下共重合されている必要がある。共重合量が4モル%以下であると、常圧下での染色性は不十分であり、12モル%を超えると、重合度が低くなり、糸が脆化しやすくなる。共重合量は、5〜10モル%の範囲が好ましく、7〜10モル%の範囲がさらに好ましい。
Figure 2010059572
[上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xはアルカリ金属元素、4級ホスホニウム塩または4級アンモニウム塩を表す。]
本発明のポリエステル系常圧カチオン可染性芯鞘型複合繊維は、上記のポリエステル成分AおよびBが重量比率A:B=30:70〜70:30の範囲で、芯鞘型に紡糸された複合繊維である必要がある。ポリエステル成分Aが70重量%を越える場合は、常圧染色性が不十分となる一方、上記成分Aが30%未満の場合は、複合繊維としての強度が低下し、実用に適さない。ポリエステル成分AおよびBの重量比率は、45:65〜65:45の範囲が好ましく、40:60〜60:40の範囲が更に好ましい。
驚くべきことに、本発明で得られる芯鞘型複合繊維は、非常に優れた耐熱水溶解性を有している。本明細書の[背景技術]の項に記載のとおり、高いカチオン染色性を付与すべく、カチオン染色に寄与するスルホイソフタル酸成分を多量に共重合した場合、その親水性ゆえに熱水溶解性が高まり、熱水を使用するポリマーのペレット化工程や染色工程で一部が溶解してしまう。しかしながら本発明の芯鞘型複合繊維の鞘に用いるポリエステル成分Bは、ポリブチレンテレフタレートを主成分としているために結晶化度が高く、ポリエチレンテレフタレート対比親水性を大幅に低下させることが可能となり、ゆえに多量のスルホイソフタル酸成分を共重合しているにもかかわらず、100℃の沸騰水中で30分間熱処理した際の熱水への溶出物量は糸量1gあたり50mg以下、という低いレベルの溶出量が実現される。またポリブチレンテレフタレートを主成分としているために、ポリエチレンテレフタレート対比、単位重量あたりのエステル結合数が減少することも、多量のスルホイソフタル酸成分を共重合しているにもかかわらず、100℃の沸騰水中で30分間熱処理した際の熱水への溶出物量は糸量1gあたり50mg以下、という低いレベルの溶出量が実現できている要因である。
本発明に用いるポリエステル成分Aおよびポリエステル成分Bの製造方法については特に限定はなく、テレフタル酸をグリコール成分と直接エステル化せしめた後重合せしめる方法、またはテレフタル酸のエステル形成性誘導体をグリコール成分とエステル交換反応せしめた後重合せしめる方法のいずれを採用しても良い。ここでエステル形成性誘導体とは低級アルキルエステル、低級アリールエステル、酸ハライド物等を表す。上述のポリエステル成分A、ポリエステル成分Bの説明においても、「エステル形成性誘導体」とは上記で示したものと同じ化合物群を表す。また本発明に用いるポリエステル成分Aおよびポリエステル成分Bを重縮合する際の触媒としては、特に限定はなく一般的なポリエステル製造時に使用される触媒が採用される。具体的には重縮合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物等が好ましく用いられる。テレフタル酸のエステル形成性誘導体をグリコール成分とエステル交換反応せしめた後、重合せしめる方法を採用する場合は、エステル交換反応触媒としてチタン化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、ナトリウム化合物またはコバルト化合物等が好ましく用いられる。これらの重縮合触媒およびエステル交換触媒に用いる化合物は単一であっても複数種を用いてもよい。
本発明に用いられる有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分は、ポリエステル成分Bの重合反応が完了するまでの任意の段階で添加しても良いが、エステル系生成誘導体を用いてエステル交換反応を行う場合には、エステル交換反応の初期に、直接エステル化反応を行う場合には重合反応が開始される直前に添加されるのが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル成分Aおよびポリエステル成分Bには、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤または艶消剤等を含んでいてもよく、特に酸化チタンなどの艶消剤は好ましく添加される。
本発明のポリエステル系複合繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわちポリエステル成分Aとポリエステル成分Bとを、従来公知の芯鞘型複合紡糸用の紡糸口金を用い、溶融紡糸温度220〜280℃、好ましくは230〜280℃で複合重量比が前記割合となるように溶融紡出する。該吐出糸条に冷却風を吹付けて固化させた後に引取速度1000〜8000m/分、好ましくは2000〜6500m/分の速度で引き取り、一旦巻取ってから、または一旦巻取ることなく連続して、必要に応じて延伸・熱処理することにより得ることができる。なお、引取る際のローラーの数は特に限定されず、単独でも2以上の複数であってもよいが、通常は一対のローラー群を介して引き取られる。この際、第一のローラーと第二のローラーの回転速度(周速)は、紡糸安定性を損なわずかつ本発明の目的を阻害しない範囲内で異ならしめてもよいが、通常は同一速度とすることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等制限されるものではない。なお実施例中の分析項目などは、下記記載の方法により測定した。実施例中「部」は、特に断らない限り重量基準である。
(ア)固有粘度:
ポリエステル試料をオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)繊維の引張強度:
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
(ウ)カチオン可染性(染着率):
CATHILON BLUE CD−FRLH)0.5g/L、CD−FBLH0.5g/L(いずれも保土ヶ谷化学)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて100℃で1時間、浴比1:50で染色し、次式により染着率を求めた。このときの布帛に対する染料の重量比は5%である。(以下5%owfと表記する)
染色後の残液は、日立(株)製U−3010紫外分光光度計により、青色の吸収波長である576nmの吸光度を測定し、下記式から染着率を求めた。
染着率=(OD−OD)/OD
OD:染色前の染液の576nmの吸光度
OD:染色後の染液の576nmの吸光度
本発明では、染着率98%以上を常圧カチオン可染性良好と判断した。
(エ)熱水溶出性評価:
得られた芯鞘型複合繊維のメリヤス編地を作成し、その編地1gをアセトンで洗浄後、100gの沸騰した蒸留水中で30分間処理した。
処理水をガラスフィルター(柴田科学器械工業社製1Gフィルター)でろ過後、蒸発乾固させて残渣の重量を測定し、溶出量とした。
(オ)有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分の共重合量:
ポリエステルBの有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分の共重合量は、粒状のポリエステルサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体に形成し、それぞれのサンプルを蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)に供して、硫黄分を定量分析することにより求めた。得られた硫黄の重量から表1記載のようにモル量に換算した。
[参考例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部の混合物に、酢酸マンガン0.03重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.12重量部をエステル交換反応槽中に添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールをエステル交換反応槽外に留出させながらエステル交換反応を行った。その後、正リン酸0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後、エステル交換反応で得られた反応生成物に三酸化アンチモン0.05重量部を添加して重合容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、常法に従いチップ化し、固有粘度0.64dL/gのポリエステルを得た。結果を表1に示す。
[参考例2]
反応終了時間を早めた以外は参考例1と同様に行い、固有粘度0.55dL/gのポリエチレンテレフタレートを得た。結果を表1に示す。
得られた参考例1、参考例2のポリエチレンテレフタレートを複合繊維の芯成分に用いた。
[参考例3]
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル8.5重量部とテトラメチレングリコール77重量部の混合物に、酢酸マンガン0.03重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.12重量部をエステル交換反応槽中に添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールをエステル交換反応槽外に留出させながらエステル交換反応を行った。その後、正リン酸0.03重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
その後、エステル交換反応で得られた反応生成物に三酸化アンチモン0.05重量部と5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩14.5重量部と水酸化テトラエチルアンモニウム0.3重量部とトリエチルアミン0.003重量部を添加して重合容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行い、常法に従いチップ化して固有粘度0.56dL/gのポリエステルを得た。結果を表1に示した。
[参考例4〜12]
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルまたは5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩を、表1記載の含有率になるように実施した以外は参考例1と同様に行った。結果を表1に示した。得られた参考例4〜12の共重合ポリブチレンテレフタレートを複合繊維の鞘成分に用いた。
[実施例1]
参考例1で得られたポリエステル成分Aを芯、参考例3で得られたポリエステル成分Bを鞘とし、定法にしたがい芯鞘口金を用いて、紡糸温度285℃にて、紡糸速度2500m/minで巻取り、84dtex/24filの未延伸糸を得た。さらに、延伸ローラー温度80℃、延伸倍率1.6倍、スリットヒーター温度170℃にて延伸し、パーン形状に巻取り、芯鞘型の複合繊維を得た。得られた糸をメリヤス編みし、5%owfでの常圧カチオン可染性評価および熱水溶出試験を実施した。結果を表1に示した。
[実施例2〜7、比較例1,2,5,6]
参考例1で得られたポリエステル成分Aを芯、参考例3〜9で得られたポリエステル成分Bを鞘とし、実施例1と同様に芯鞘型複合繊維を製糸し、物性評価を行った。結果を表1に示した。
[比較例3,4,7,8]
表1記載のとおり、参考例1または2で得られたポリエステル成分Aを芯、参考例3、10〜12で得られたポリエステル成分Bを鞘とし、実施例1と同様に芯鞘型の複合繊維の製糸を試みたが、残念ながら製糸性が悪く、複合繊維は得られなかった。
Figure 2010059572
本発明で得られる芯鞘型複合繊維は、常圧下においてもカチオン染料による非常に優れた可染性を有し、かつ熱水への溶解物の溶出が抑制されている。このため、上記芯鞘型複合性繊維を衣料とし、特に高い染色性が要求されるファッション衣料やスポーツ衣料用途に優れた衣料を提供することができる。

Claims (4)

  1. 主としてポリエチレンテレフタレートからなり固有粘度が0.60dL/g以上のポリエステル成分Aを芯とし、主として共重合ポリブチレンテレフタレートからなり固有粘度が0.40dL/g以上のポリエステル成分Bを鞘とし、成分A:成分B=30:70〜70:30の重量比率の芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル成分Bが、下記化学式(1)で表される有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分を、ポリエステル成分Bを構成する全酸成分を基準として4〜12モル%共重合された共重合ポリブチレンテレフタレートである、常圧カチオン可染性芯鞘型複合繊維。
    Figure 2010059572
    [上記式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xはアルカリ金属元素、4級ホスホニウム塩または4級アンモニウム塩を表す。]
  2. 有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸である請求項1記載の芯鞘型複合繊維。
  3. 有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分が5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩である請求項1記載の芯鞘型複合繊維。
  4. 有機スルホン酸塩基含有芳香族ジカルボン酸成分として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸と5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム塩を混合使用する請求項1〜3のいずれか1項記載の芯鞘型複合繊維。
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