JP5216972B2 - 常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、常圧カチオン可染性モノマー共重合量の多いポリエステルチップと、実質的に常圧カチオン可染性モノマーを共重合していないポリエステルチップをブレンドして紡糸することにより得られる、常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法に関する。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的特性が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物として広く利用されている。特にポリエチレンテレフタレートはその特性、価格の面から非常に幅広い用途で利用されている。
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、用途に応じて様々な改質がなされており、様々な成分を共重合させた共重合ポリエステルが広く知られている。中でもカチオン可染性を有する成分を共重合せしめたカチオン可染ポリエステルは衣料用途を中心に広く知られている。
このようなカチオン可染性ポリエステルを得るために通常用いられるポリエチレンテレフタレートは、通常例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させてテレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されており、この製造工程のいずれかの段階で共重合成分であるスルホイソフタル酸の金属塩に代表されるカチオン可染性モノマーを2〜3モル%共重合させてカチオン可染性ポリエステルを得て、これを高温・高圧下で染色する方法が採用されている(例えば特許文献1参照。)。
しかしながら、代表的なカチオン可染性モノマーである5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びその誘導体をはじめとする、一般的なカチオン可染性モノマーはイオン成分であることから、ポリエステルの重合段階において、イオン結合性分子間力が働き、溶融粘度が上昇してしまうため、高分子量のカチオン可染性ポリエステルを製造することは困難であり、溶融紡糸して得られた繊維の強度も低いという問題があった。
このような問題を解決するため、イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーを共重合する技術が開示されている(例えば特許文献2、3参照。)。イオン結合性分子間力の小さいカチオン可染モノマーとしては、5−スルホイソフタル酸テトラブトキシホスホニウムなどが例示されているが、これらのカチオン可染モノマー共重合ポリエステルは熱安定性が悪く、重合工程で使用する触媒の種類によってはポリエステルの品質が大きく左右されることは良く知られている。また、得られる糸の強度は、前述の5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びその誘導体を使用した場合よりは改善されるものの、使用する5−スルホイソフタル酸テトラブトキシホスホニウムは非常に高価であり、結果として得られるカチオン可染性ポリエステルのコストが大幅に増大するという問題があった。
また、従来の方法で得られるポリエステル繊維は、高温・高圧下でしか染色することができず、天然繊維やウレタン繊維などと交編、交織した後に染色すると、天然繊維、ウレタン繊維が脆化するという問題があった。これを常圧、100℃付近の温度で十分に染色しようとすると、スルホイソフタル酸の金属塩成分を多量に共重合させる必要があるが、この場合、スルホイソフタル酸の金属塩成分のイオン結合性分子間力による増粘効果から、ポリエステルの重合度を高くすることができず、溶融紡糸により得られるポリエステル繊維の強度が著しく低下し、さらに紡糸操業性が著しく悪化するという問題があった。
これらの問題を解決する方法として、スルホイソフタル酸の金属塩に加え、分子量が2000以上のポリエチレングリコールを共重合する方法、アジピン酸、セバシン酸などの直鎖炭化水素のジカルボン酸を共重合する方法、あるいはジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなグリコール成分を共重合する方法が提案されている(例えば特許文献4,5参照。)。
しかしながら、これらいずれの方法でも得られたポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の強度が低くなり、強いては得られる布帛の引き裂き強度が低下する、更には耐光堅牢度が低いなどの問題があった。
特公昭34−10497号公報 特開平1−162822号公報 特開2006−176628号公報 特開2002−284863号公報 特開2006−200064号公報
本発明の目的は、常圧下でのカチオン染色が可能で、且つ高強度で染色堅牢度の良好な常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法及びその製造方法によるポリエステル繊維を提供することである。
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエスルAと主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルBを、それぞれ下記要件を満たす状態で重合させた後、これらを混合して溶融紡糸することで得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法であり、ポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が、ポリエステル繊維を構成している全酸成分に対して4.5〜5.0モル%の割合であり、285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルAとポリエステルBの溶融粘度が、下記一般式(I)を満足することを特徴とする常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法であり、これにより上記の課題が解決できる。
(ポリエステルA)
スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、ポリエステルAを構成する全酸成分に対して10〜20モル%共重合している共重合ポリエステルであり、ポリエステルAに含有されているジエチレングリコールが5重量%以下であることを特徴とする共重合ポリエステル。
(ポリエステルB)
ポリエステルを構成する全繰り返し単位中エチレンテレフタレート成分が95モル%以上であり、固有粘度が0.50〜1.00dL/gの範囲にあるポリエステル。
0.8≦A/B≦2.5 (I)
[上記式中、A,Bはそれぞれ285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルA及びポリエステルBの溶融粘度を表す。]
本発明によれば、スルホイソフタル酸金属塩の共重合ポリエステルにより、常圧下でのカチオン染色が可能で、高強度且つ染色堅牢度の良好なカチオン可染性ポリエステル繊維を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の常圧カチオン可染性ポリエステル繊維を構成するポリエステルとは、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール成分とを重縮合反応せしめて得られるエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルからなるポリエスルAと、同じくエチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルBを、それぞれ下記要件を満たす状態で重合させた後、これらを混合して溶融紡糸することで得られるポリエステルである。ここで「主たる繰返し単位とする」とはポリエステルを構成する全繰り返し単位中80モル%以上がエチレンテレフタレート繰り返し単位からなることを示す。更に、285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエスルAとポリエステルBの溶融粘度が、下記一般式(I)を満足することを特徴とするカチオン可染性ポリエステル繊維であり、ポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が、該ポリエステル繊維中の全酸成分に対して3.0〜5.0モル%の割合であるポリエステル繊維である。
(ポリエステルA)
スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、ポリエステルAを構成する全酸成分に対して7〜20モル%共重合している共重合ポリエステルであり、ポリエステルAに含有されているジエチレングリコールが5重量%以下であることを特徴とする共重合ポリエステル。
(ポリエステルB)
ポリエステルを構成する全繰り返し単位中エチレンテレフタレート成分が95モル%以上であり、固有粘度が0.50〜1.00dL/gの範囲にあるポリエステル。
0.8≦A/B≦2.5 (I)
[上記式中、A,Bはそれぞれ285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルA及びポリエステルBの溶融粘度を表す。]
本発明で使用されるポリエステルAに共重合されるスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分としては、5−スルホイソフタル酸の金属塩(具体的にはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩)、5−スルホイソフタル酸の4級ホスホニウム塩、又は5−スルホイソフタル酸の4級アンモニウム塩が例示される。また、これらのエステル形成性誘導体も好ましく例示される。エステル形成性誘導体とは炭素数1〜6個の低級ジアルキルエステル、炭素数6〜8の低級ジアリールエステル又はジカルボン酸ハライド(ジカルボン酸クロライド、ジカルボン酸ブロマイド)を挙げる事ができる。具体的にはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジヘキシルエステル又はジフェニルエステルを挙げる事ができる。更に具体的な4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩としては、テトラメチルホスホニウム塩(若しくはテトラメチルアンモニウム塩)、テトラエチルホスホニウム塩(若しくはテトラエチルアンモニウム塩)、テトラプロピルホスホニウム塩(若しくはテトラプロピルアンモニウム塩)、テトラブチルホスホニウム塩(若しくはテトラブチルアンモニウム塩)、トリメチルベンジルホスホニウム塩(若しくはトリメチルベンジルアンモニウム塩)、トリエチルベンジルホスホニウム塩(若しくはトリエチルベンジルアンモニウム塩)又はトリブチルベンジルホスホニウム塩(若しくはトリブチルベンジルアンモニウム塩)を挙げる事ができる。これらの群の中では、熱安定性、コストなどの面から、5−スルホイソフタル酸の金属塩が好ましく例示され、特に、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩又はそのジメチルエステルである5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルのナトリウム塩が特に好ましく例示される。
また、本発明のポリエステルAに共重合されているスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の共重合量がポリエステルを構成する全酸成分に対して7モル%未満の場合、ブレンド紡糸する際のポリエステル繊維中のポリエステルAの混率を上げないと、ブレンド紡糸後のポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸を含有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量を所望の濃度にすることができない。従って、得られるポリエステル繊維の強度が不十分となる。一方、共重合量がポリエステルを構成する全酸成分に対して20モル%を越える場合は、ポリエステルAを溶融重合した後にチップ化することが困難になると共に、得られるポリエステル繊維をアルカリ減量加工した際にポリエステル繊維中のポリエステルA成分が溶出することで、十分なカチオン染着性が得られないため好ましくない。該共重合量は7モル%以上15モル%以下が好ましく、8モル%以上10モル%未満の範囲が更に好ましい。全酸成分とは当該5−スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を含むのはもちろんの事であるが、ポリエチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸及び他のジカルボン酸成分を含むものである。
さらに、本発明のポリエステルAに含有されるジエチレングリコール成分は5重量%以下である必要がある。含有量が5重量%を超えると、得られるポリエステル繊維の強度が低下するため好ましくない。ジエチレングリコール成分を5重量%以下にするためには、ジエチレングリコールを共重合成分として大量に用いない事はもちろんであるが、エステル化反応、エステル交換反応、重縮合反応及びそれらの一反応から次の反応へ移行するそれぞれの工程においてジエチレングリコールが副生するような条件を採用しない事に留意すべきである。 本発明で使用されるポリエステルBの固有粘度(溶媒:オルトクロロフェノール、測定温度:35℃)は0.50〜1.00dL/gである必要がある。固有粘度が0.50dL/g未満である場合、得られるポリエステル繊維の強度が不足し、一方、1.00dL/gを超える場合、溶融重合法に引続いて固相重合法によりポリエステルBを製造する必要があり、ポリエステルBの重縮合工程での生産コストが大幅に増大すると共に、ポリエステルBの溶融粘度が高くなることで、紡糸工程での曳糸性が悪化するため好ましくない。より好ましい固有粘度の範囲は0.60〜0.90dL/gである。
さらにポリエステルBはポリエステルを構成する全繰り返し単位中エチレンテレフタレート成分が95モル%以上である必要がある。95モル%未満の場合には得られるポリエステル繊維の強度が不足する場合がある。さらにポリエステルBは実質的にスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を含有しないことが好ましい。実質的にとは、例えば製造工程のコンタミなどにより誤って含まれてしまう場合、重量にして数百ppm以下であることを示す。ポリエステルB中にスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を含有していると固有粘度を上記の値にまで上げるのが困難になることがある。
本発明におけるポリエステルA及びポリエステルBの製造方法は特に限定されず、上記の要件を満たす限りにおいて、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールの直接重縮合反応させる、あるいはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールとをエステル交換反応させて低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることにより製造される。スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を共重合する方法についても通常知られている製造方法を用いる事ができる。また、一般に常圧カチオン可染性ポリエステルを製造する際は、ポリエステルの重合工程において副生するジエチレングリコール量を抑制するために少量のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加することが好ましい。この手法によりポリエステルA中のジエチレングリコール含有量を上記の範囲内にすることができる。
また、本発明におけるポリエステルA及びポリエステルBは、必要に応じて少量の添加剤、例えば酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを含んでいても良い。特に酸化防止剤、艶消し剤などは特に好ましく添加される。
本発明におけるポリエステルAとポリエステルBの溶融粘度の比は、下記一般式(I)の範囲にある必要がある。
0.8≦A/B≦2.5 (I)
[上記式中、A,Bはそれぞれ285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルA及びポリエステルBの溶融粘度を表す。]
A/Bが0.8未満の場合、ポリエステルAの分子量が著しく小さくなり、得られるポリエステル繊維の強度が十分なものが得られない。一方、A/Bが2.5を超えるとなると、紡糸工程でのポリエステルAとポリエステルBの均一混合、分散が十分なものではなくなる。故に、得られるポリエステル繊維中にポリエステルAとポリエステルBの大きな斑が発生することとなり、結果として得られるポリエステル繊維の強度が低下するため好ましくない。更にこの溶融粘度の比率を、上記の値の範囲を満たすためには、ポリエステルA、ポリエステルBとも上記の要件を満たすように重合を行い、他の溶融粘度変動に大きく影響を及ぼす恐れのある酸成分やグリコール成分を共重合したり、そのような特性を有する有機又は無機の化合物を配合しないことによって達成する事ができる。
その中でも、ポリエステルBの固有粘度の値を上記の範囲にすることは有力な手段の1つと考える事もできる。ポリエステルAはスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が共重合されているために、背景技術の欄にて説明したように低固有粘度であっても溶融粘度が上昇するため高固有粘度のポリエステル、例えば本発明のポリエステルBにおいて規定されているような固有粘度を0.5dL/g以上のポリエステルを製造する事が困難であった。そして、そのような比較的低固有粘度であっても高い溶融粘度を有するポリエステルAに対して上記式(I)を満たすように、ポリエステルBの溶融粘度を高めるには固有粘度を高めることが比較的容易に実施する事ができるからである。ポリエステルBの固有粘度を高めるには、溶融重合次いで固相重合を行なうことで実現する事ができる。また後述するようにポリエステルBの固有粘度を挙げる事は、ポリエステルAとポリエステルBをブレンドした後のポリエステルの固有粘度を高く保つ事ができ本発明の課題を解決する上で好ましい態様であると言える。
本発明における高強度常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法は、ポリエステルAとポリエステルBを混合した後にそのポリエステルを溶融紡糸する方法である。ブレンド後のポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が3.0モル%未満の場合、常圧カチオン染色後の染着が悪く、鮮明な発色を有するポリエステル繊維が得られないため好ましくない。一方、含有量が5.0モル%を越える場合、得られるポリエステル繊維の強度が低下し、紡糸工程での毛羽や断糸発生などの工程調子が著しく悪化するため好ましくない。上述のようにスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を共重合させたポリエステルAは、その固有粘度を上げる事が困難な場合がある。従って、スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸を共重合していない、且つ相対的に高い固有粘度のポリエステルBとブレンドすることでブレンド後のポリエステル中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ポリエステルの共重合量が多くても、比較的高い固有粘度を保つ事ができ、良好な常圧カチオン可染性と高い破断強度を同時に実現する事ができる。
本発明におけるカチオン可染性ポリエステル繊維の製糸方法は、上記の2種類のポリエステルチップをブレンドして紡糸する方法が採用される。すなわち、乾燥したポリエステルAからなるチップと乾燥したポリエステルBからなるチップを混合した後、270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られるポリエステル繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。またポリエステルAとポリエステルBのブレンド比については、ポリエステルA中に共重合されているスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の共重合率と、得られるポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有率を考慮すれば、容易に決定する事ができる。更に本発明の常圧カチオン可染性ポリエステル繊維は、常圧沸騰温度で1時間、浴比1:50で染色を行った時に、下記式(II)により求める染着率が95%以上であることが好ましい。そのためには上述した方法にて巻き取られた未延伸糸を、更に延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。また、紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無い。
染着率=(OD−OD)/OD ×100(%) (II)
[上記式中、ODは染色前の染液の576nmの吸光度、ODは染色後の染液の57
6nmの吸光度を表す。]





以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の分析項目などは、下記記載の方法により測定した。
(ア)ジエチレングリコール(DEG)含有量
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル組成物チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
(イ)溶融粘度
ポリエステル組成物チップを140℃、8時間乾燥させた後、285℃でフローテスター(株式会社島津製作所製(CFT−500D))を用いて測定した値から、剪断速度1000/sでの値を求めた。
(ウ)固有粘度
ポリエステル組成物チップを常圧98℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
(エ)ポリエステル繊維の引張強度(破断強度)、引張伸度(破断伸度)
JIS L1013:1999 8.5に記載の方法に準拠して測定を行い、破断強度3.0cN/dtex以上を合格とした。
(オ)カチオン可染性
CATHILON BLUE (CD−FRLH)0.2g/L、CD−FBLH0.2g/L(いずれも保土ヶ谷化学株式会社製のカチオン可染性染料)、硫酸ナトリウム3g/L、酢酸0.3g/Lの染色液中にて100℃で1時間、浴比1:50で染色を行い、次式により染着率を求めた。
染着率=(OD−OD)/OD
OD:染色前の染液の576nmの吸光度
OD:染色後の染液の576nmの吸光度
本発明では、染着率95%以上のものを可染性良好と判断した。
(カ)耐光堅牢度
44dtex/36フィラメントの常圧カチオン可染糸から筒編み資料を作成し、カチオン染料濃色にて染色し、JIS L0842記載の方法に準拠して測定した。評価は、変退色をブルースケールと比較して8段階で実施し、5級以上を合格とした。
(キ)スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸の定量
ポリマーサンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定して、そのスペクトルパターンから常法に従って、含有量を定量した。
[実施例1]
・ポリエステルAの製造
テレフタル酸ジメチル100重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(以下「SIPM」と記載)16.7重量部とエチレングリコール60重量部との混合物に、酢酸カルシウム0.063重量部、酢酸ナトリウム三水和物0.16重量部を添加し、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.25重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。該反応生成物にトリメリット酸チタン0.001重量部と艶消し剤として二酸化チタン0.35重量部を添加して、攪拌装置、窒素導入口、減圧口、及び蒸留装置を備えた反応容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下で重縮合反応を行った。溶融粘度が200Pa・sとなる攪拌電力に到達した時点で重縮合反応を終了させ、常法に従ってチップ化した。
・ポリエステルBの製造
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部との混合物に、酢酸カルシウム0.063重量部を添加し、140℃〜240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、リン酸トリメチル0.25重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。該反応生成物にトリメリット酸チタン0.001重量部と艶消し剤として二酸化チタン0.35重量部を添加して、攪拌装置、窒素導入口、減圧口、及び蒸留装置を備えた反応容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空下で重縮合反応を行った。溶融粘度が200Pa・sとなる攪拌電力に到達した時点で重縮合反応を終了させ、常法に従ってチップ化した。
・ポリエステル繊維の製造
ポリエステルAとポリエステルBのチップを160℃、4時間乾燥させた後、重量比でポリエステルA/ポリエステルB=0.33/1.0となるように連続的に押出機へ供給し、紡糸温度295℃で直接紡糸延伸機(スピンドロー)にて紡糸延伸を一段階で実施し、44dtex/36フィラメントのポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を用いて筒編みを作成し、70℃、20分間の精練により油剤を除去した後、上記の方法でカチオン染色性の評価を実施した。結果を表1に記載した。
[実施例2〜4、比較例1〜7]
実施例1において、ポリエステルAの製造方法における溶融粘度、SIPM共重合量、ポリエステルBの製造方法における固有粘度、ポリエステル繊維の製造方法におけるポリエステルA/ポリエステルB混合比を変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
[比較例8]
実施例1において、ポリエステルAの製造方法におけるSIPM共重合量を表1の通り変更したこと以外は実施例1と同様に実施したところ、ポリエステルAの重合縮合反応後にチップ化する工程でカッテング不良が多発し、ポリエステルAの良品チップを得ることができなかった。
[比較例9]
実施例1において、ポリエステルAの製造方法におけるSIPM共重合量を表1の通り変更し、ポリエステル繊維の製造方法においてポリエステルAのみを使用して紡糸したこと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
Figure 0005216972
本発明によれば、スルホイソフタル酸金属塩の共重合ポリエステルにより、常圧下でのカチオン染色が可能で、高強度且つ染色堅牢度の良好な常圧カチオン可染性ポリエステル繊維を提供することができる。その産業上の意義は大きい。

Claims (3)

  1. 主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルAと主たる繰返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエステルBを、それぞれ下記要件を満たす状態で重合させた後、これらを混合して溶融紡糸することで得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法であり、ポリエステル繊維中のスルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の含有量が、ポリエステル繊維を構成している全酸成分に対して4.5〜5.0モル%の割合であり、285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルAとポリエステルBの溶融粘度が、下記一般式(I)を満足することを特徴とする常圧カチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法。
    (ポリエステルA)
    スルホイソフタル酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が、ポリエステルAを構成する全酸成分に対して10〜20モル%共重合している共重合ポリエステルであり、ポリエステルAに含有されているジエチレングリコールが5重量%以下であることを特徴とする共重合ポリエステル。
    (ポリエステルB)
    ポリエステルを構成する全繰り返し単位中エチレンテレフタレート成分が95モル%以上であり、固有粘度が0.50〜1.00dL/gの範囲にあるポリエステル。
    0.8≦A/B≦2.5 (I)
    [上記式中、A、Bはそれぞれ285℃、剪断速度1000/sで測定したポリエステルA及びポリエステルBの溶融粘度を表す。]
  2. ポリエステルAの製造工程及びポリエステルBの製造工程において、トリメリット酸チタンが用いられることを特徴とする請求項1に記載のカチオン可染性ポリエステル繊維の製造方法。
  3. 常圧沸騰温度で1時間、浴比1:50で染色を行った時に、下記式(II)により求める染着率が95%以上であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法により得られる常圧カチオン可染性ポリエステル繊維。
    染着率=(OD−OD)/OD×100(%) (II)
    [上記式中、ODは染色前の染液の576nmの吸光度、ODは染色後の染液の576nmの吸光度を表す。]
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