JP2006075007A - リグノセルロースの前処理方法及びエタノール製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リグノセルロース含有原料を、希硫酸中、140〜220℃、3〜20分間加水分解処理した後、該加水分解物を一次糖液と固形物に固液分離し、分離した固形物に対し、乾物換算で消石灰を0.5〜20質量%添加し、90〜150℃で10〜120分間加熱して石灰処理し、その後石灰処理した反応物にセルラーゼを加えて酵素加水分解処理し、二次糖液を得ることを特徴とするリグノセルロースの前処理方法。
【選択図】 図1
Description
リグノセルロース含有原料の一つである木質系バイオマスでは、先ず酸やアルカリでヘミセルロースを加水分解し、ヘミセルロース由来の糖を得る。ヘミセルロースを構成する糖は、主にキシロース、アラビノースといった五単糖とグルコース、ガラクトース、マンノースといった六単糖であり、これらの量比率は木質系バイオマスの種類によって異なる。
そこで、酸やアルカリに代わる方法として、酵素による加水分解が研究されてきたが、酵素を有効に働かせるための前処理は原料によって適切な方法を選定する必要がある。
酵素加水分解の前処理としてよく研究されている方法は、酸、アルカリ、熱水処理、爆砕を用いる方法である。前処理としては、いずれも効果があるが、一次加水分解として糖も得ようとする場合、アルカリ条件下では糖の分解が進みやすいため、酸、熱水処理、爆砕を用いた処理が有利である。その他に、原料に対する一次処理として、苛性ソーダ蒸煮、酸化条件下での石灰処理(例えば、非特許文献1〜3参照。)も報告されているが、ヘミセルロース由来の糖の収率は低い。
木材の中でも広葉樹を酸や爆砕で一次処理した後の残渣は、比較的容易に酵素で糖化されるが、針葉樹はリグニンを含む構造が広葉樹より強固なため、一次処理した後の残渣はそのままでは酵素加水分解率は低い。
国内で有効利用が望まれている廃建材は、スギ、ツガ、マツなどの針葉樹が主体であるため、針葉樹に対する前処理方法の確立は特に国内において重要である。
また、一次処理した残渣を酵素加水分解に供する前に二次処理を行い酵素加水分解率を高める方法も研究されている。例えば、オゾン、過酸化水素、亜塩素酸ナトリウムなどが報告されている。
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二次処理で用いる薬剤は、安価であること、次工程の発酵を阻害しないこと、リサイクル可能なことなどが望まれる。
また本発明のエタノール製造方法は、前述した本発明に係るリグノセルロースの前処理方法により得られた糖液を用いてエタノール発酵を行い、エタノールを製造することによって、低コストでエタノール収率の向上を達成することが可能となる。
図1は、本発明の方法の第1実施形態を示すフロー図である。本実施形態では、リグノセルロース含有原料として、廃建材、木材チップなどの木質系バイオマスを用い、これを希硫酸中で加水分解して一次糖液を得、分離した固形物に消石灰(Ca(OH)2)、以下、石灰と略記する。)を添加して石灰処理し、この反応物を酵素加水分解処理して二次糖液を得る工程を備えている。なお、リグノセルロース含有原料としては、前記木質系バイオマスに限定されるものではなく、例えば稲わら、籾殻、バガスなどの各種のリグノセルロース含有原料を用いることができる。
また、石灰は硫酸と沈殿を生じ、難溶性の石膏を生じるため、溶存塩による発酵阻害を低減する効果があるだけでなく、やや過剰に石灰を添加し、60℃で30分〜数時間程度保持することによって、加水分解液中に含まれるフルフラールやHMFなどの糖が過分解して生成したフラン類の大部分を分解、除去する効果を持つ。
中和に用いられる石灰は、塩類と沈殿を生じやすく、菌体への毒性も小さい。
石灰処理で用いた後の石灰は、全量を中和工程にリサイクルすることによって、反応で消費された分以外の石灰は無駄なく有効利用することができる。
また本実施形態のエタノール製造方法は、前記リグノセルロースの前処理方法により得られた糖液を用いてエタノール発酵を行い、エタノールを製造することによって、低コストでエタノール収率の向上を達成することが可能となる。
[共通条件]
<原料>
ボード用廃建材(スギ、ツガ、マツを主成分とする)。
<一次加水分解条件>
硫酸濃度1%、170℃、10分間。
<ろ過>
一次加水分解後、吸引ろ過で固液分離し、残渣を水でよく洗浄し、二次処理用の原料とした。
<二次処理>
後述する各実施例及び各比較例に記載の条件で石灰処理を行った。
<酵素加水分解>
セルラーゼ:ジェネンコア・インターナショナルジャパン・リミテッド社製、SPEZYME CEを石灰処理後に分離した残渣中の固形物1gに対して0.4g添加した。
反応器:200mL三角フラスコに、残渣を固形物として2.5g、緩衝液とイオン交換水を残渣の付着水分と合わせて50mLになるよう添加した。
pH:緩衝液として0.2N酢酸ナトリウムを添加してpH4.5に調整した。
温度:45℃。
撹拌:100rpmで振とう。
石灰処理の温度を次の実施例1〜2、比較例1〜3のように設定して前処理を行い、さらに酵素加水分解を行って、得られる二次糖液のグルコース収量を調べ、比較した。なお、石灰添加量は、残渣乾物に対する割合である。
・実施例1:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度100℃、処理時間30分とした。
・実施例2:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例1:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度150℃、処理時間30分とした。
・比較例2:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度180℃、処理時間30分とした。
・比較例3:石灰処理を行わず、残渣をそのまま酵素加水分解に供した。
酵素加水分解の経時変化を図1に、グルコースの回収量を表1に示す。
固形分の質量ロスを加味したグルコース収量(一次処理した固形分基準)は、一次処理のみの場合(比較例2)の20gに対し、添加量4%、121℃、30分間の石灰処理によって29gと45%増加した。しかし、150℃、180℃の各温度条件下では、一次処理のみの場合より収量は低下した。
石灰処理の石灰添加量を次の実施例1〜3、比較例1〜2のように設定して前処理を行い、さらに酵素加水分解を行って、得られる二次糖液のグルコース収量を調べ、比較した。
・実施例1:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度121℃、処理時間30分とした。
・実施例2:石灰処理条件を、石灰添加量8%、温度121℃、処理時間30分とした。
・実施例3:石灰処理条件を、石灰添加量12%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例1:石灰処理条件を、石灰添加量0%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例2:石灰処理を行わず、残渣をそのまま酵素加水分解に供した。
酵素加水分解の経時変化を図2に、グルコースの回収量を表2に示す。
石灰処理時に石灰を添加した場合(実施例1〜2)と苛性ソーダを添加した場合(比較例1〜2)のそれぞれの前処理を行い、さらに酵素加水分解を行って、得られる二次糖液のグルコース収量を調べ、比較した。
・実施例1:石灰処理条件を、石灰添加量4%、温度121℃、処理時間30分とした。
・実施例2:石灰処理条件を、石灰添加量8%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例1:石灰に代えて苛性ソーダを用い、処理条件を、苛性ソーダ添加量8%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例2:石灰に代えて苛性ソーダを用い、処理条件を、苛性ソーダ添加量12%、温度121℃、処理時間30分とした。
・比較例3:石灰処理を行わず、残渣をそのまま酵素加水分解に供した。
酵素加水分解の経時変化を図3に、グルコースの回収量を表3に示す。
実験3において実施例1の条件(石灰添加量4%、121℃、30分間)で石灰処理した二次処理物を一次糖液の中和に使用した。この中和は、発酵阻害物質の除去効果が出るpH10に達するまで行った。
原料1000gあたりの石灰使用量を表4に示す。なお、原料1000gに対する一次加水分解で得られる一次糖液は3200g、一次加水分解残渣は固形物として750gであった。
Claims (5)
- リグノセルロース含有原料を、希硫酸中、140〜220℃、3〜20分間加水分解処理した後、該加水分解物を一次糖液と固形物に固液分離し、分離した固形物に対し、乾物換算で消石灰を0.5〜20質量%添加し、90〜150℃で10〜120分間加熱して石灰処理し、その後石灰処理した反応物にセルラーゼを加えて酵素加水分解処理し、二次糖液を得ることを特徴とするリグノセルロースの前処理方法。
- 石灰処理した反応物を固液分離し、分離した消石灰を含む液体は希硫酸を含む前記一次糖液の中和に使用することを特徴とする請求項1に記載のリグノセルロースの前処理方法。
- 石灰処理した後に反応物を固液分離せず、該反応物を全て希硫酸を含む前記一次糖液の中和に使用することを特徴とする請求項1に記載のリグノセルロースの前処理方法。
- リグノセルロース含有原料が廃建材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリグノセルロースの前処理方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のリグノセルロースの前処理方法により得られた糖液を用いてエタノール発酵を行い、エタノールを製造することを特徴とするエタノール製造方法。
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