JP2004201599A - 廃建材からの糖の製造システムおよび製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃建材を原料とし、酸加水分解を効率的に行い、糖を収率良く製造するための製造システム、該製造システムを用いる糖の製造方法、および該製造システムを用いて得られた糖から発酵によりアルコールまたは有機酸を製造する方法を提供すること。
【解決手段】廃建材を原料として糖を製造する製造システムであって、廃建材を加水分解する加水分解装置と、前記加水分解装置に酸液を導入するための酸液ポンプと、前記加水分解装置から導出される加水分解懸濁液を貯蔵するための加水分解液タンクと、前記加水分解液タンク内の加水分解懸濁液のpHを測定するためのpHセンサーとを備えることを特徴とする糖の製造システム。前記製造システムを用いることを特徴とする廃建材を原料とする糖の製造方法。前記糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】廃建材を原料として糖を製造する製造システムであって、廃建材を加水分解する加水分解装置と、前記加水分解装置に酸液を導入するための酸液ポンプと、前記加水分解装置から導出される加水分解懸濁液を貯蔵するための加水分解液タンクと、前記加水分解液タンク内の加水分解懸濁液のpHを測定するためのpHセンサーとを備えることを特徴とする糖の製造システム。前記製造システムを用いることを特徴とする廃建材を原料とする糖の製造方法。前記糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃建材を原料とする糖の製造システムおよび該製造システムを用いる糖の製造方法に関するものである。また、該製造システムを用いて製造した糖を原料とするアルコールまたは有機酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効利用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。特に、次世代自動車燃料としても注目されるエタノールをバイオマスから製造する技術に注目が集まっている。
収集したバイオマス原料を、加水分解等の糖化により糖類に分解した後、微生物による発酵によりエタノールに変換して、エネルギーや化学原料として利用する研究が進められている。
【0003】
一般に、バイオマスからエタノール等を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。その他にも、バガスや稲わらのような草木系バイオマス、木材チップ等の木質系バイオマス等のセルロース系資源も原料として用いられている。
【0004】
上述のようなバイオマスの中で、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質は、本来の用途は食用資源である。これらの食用資源を長期的、安定的に工業用利用資源とすることは、今後生じる人口増加問題と拮抗するため好ましくない。従って、将来的に有用な資源と考えられるのは、草木系バイオマスや木質系バイオマスのようなセルロース系資源である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
木質系バイオマスを用いて硫酸等の酸で加水分解し、糖からエタノール等の発酵製品を製造することは従来行われている。木材もこれに含まれるが、加工されていない木材チップが主な対象であった。
しかしながら、木質系バイオマスには相当量の加工された木材が含まれているにもかかわらず、これらの加工木材はエタノール等の製造における原料としては有効に活用されていない。
また、一般にバイオマスからエタノール等を製造する場合、原料の収集が困難であるという問題点もある。
【0006】
上記のような問題点から、エタノール等製造の原料として、加工された木材を多く含む廃建材を用いることが有望であると考えられる。
現在、日本では年間約2400万トンの木質建材が生産されている。これらの木質建材は、建築や、家具等への加工に使用される際、全てが有効に使用されるわけではなく、端材等が大量に廃棄されている。また、建築物取り壊し後の建材や、使用後の家具等は有効利用されることなく、廃棄されることが多い。
このような廃建材は、大量に排出され、収集が容易であり、また資源の再利用という観点からもバイオマス資源として非常に有望である。
【0007】
木質建材の生産量を見ると、合板、パーティクルボード、ファイバーボードなど加工木材の割合は50%程度に達している。廃建材をエタノール等製造の原料として用いる場合、これら加工木材に含まれるセルロース分を酸加水分解することにより糖を得る工程を効率的に行う必要がある。
【0008】
【非特許文献1】
越島著、「セルロース資源」、学会出版センター、1991年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、廃建材、特に加工木材を原料として用いた場合、加工されていない木材チップ等を原料とする場合に比べて、酸加水分解による糖化工程での糖の収率が低下するという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、廃建材を原料とし、酸加水分解を効率的に行い、糖を収率良く製造するための製造システム、該製造システムを用いる糖の製造方法、および該製造システムを用いて得られた糖から発酵によりアルコールまたは有機酸を製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、酸加水分解工程における反応液のpHに着目し、以下の検討を行った。
加水分解率はpHに依存するが、廃建材、特に加工木材には、接着剤、塗料等の不純物が含まれているため、これらの不純物が加水分解反応において酸と反応することにより、pHの上昇を引き起こし加水分解反応を抑制していることが推定された。
そこで、不純物によるpHの上昇を予測して使用する酸を増量することも検討したが、酸を過剰に使用すると生成した糖の過分解が起こり、かえって糖の収率は低下してしまうことがわかった。
特に、廃建材原料中の加工木材の比率は不明であることが多く、原料の廃建材中に含有される不純物量をもとに、使用する酸の量を適切に決定することは非常に困難である。
そこで、さらに検討を重ねた結果、加水分解装置から導出される加水分解懸濁液のpHを測定し、その測定値によって酸液を加水分解装置へ導入する量を調節することによって、前記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第一の発明は、廃建材を原料として糖を製造する製造システムであって、廃建材を加水分解する加水分解装置と、前記加水分解装置に酸液を導入するための酸液ポンプと、前記加水分解装置から導出される加水分解懸濁液を貯蔵するための加水分解液タンクと、前記加水分解液タンク内の加水分解液のpHを測定するためのpHセンサーとを備えることを特徴とするアルコールまたは有機酸の製造システムである。
本発明の第2の発明は、前記製造システムを用いることを特徴とする廃建材を原料とする糖の製造方法である。
また、本発明の第3の発明は、前記糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。なお、この実施形態は本発明の要旨を説明するためのものであり、特に断りのない限り本発明を限定するものではない。
【0014】
図1は、本発明に係るアルコールまたは有機酸の製造システムの一実施形態を示した模式図である。図1に示すように、本発明の製造システム1は、廃建材を糖に加水分解するための加水分解装置10と、酸液を加水分解装置10に供給するための酸液ポンプ20と、加水分解装置10から導出される加水分解懸濁液を貯液するための加水分解液タンク15と、加水分解液タンク15内の液のpHを測定するためのpHセンサー30とから概略構成されている。
【0015】
加水分解装置10には、原料となる廃建材を貯蔵し、加水分解装置10に供給するための原料タンク11が接続されている。また、酸液ポンプ20に接続して、加水分解装置10に供給する酸液を貯液するための酸液タンク12が設けられている。
pHセンサー30と酸液ポンプ20との間には、電気配線を介して酸液量制御装置35が備えられている。
また、加水分解液タンク15に接続して、加水分解懸濁液を固液分離するための濾過装置40が設けられており、この濾過装置40には、濾過装置40から得られた濾液である糖液を貯蔵して次工程に供給するための糖液タンク41と、濾過残渣を貯蔵するための濾過残渣タンク42とがそれぞれ接続されている。
さらに、濾過残渣タンク42には、濾過残渣供給量制御装置43を介して、濾過残渣を加水分解装置10に再供給するための濾過残渣供給装置44が設けられている。また、濾過残渣供給量制御装置43は、電気配線によりpHセンサー30と接続されている。
【0016】
原料タンク11は、原料である廃建材を加水分解装置10へ供給するためのタンクである。原料タンク11に廃建材を配し、加水分解装置10の反応器に導入する。
本明細書に記載する廃建材としては、廃棄木質建材、廃パレット、廃梱包材等が挙げられる。廃棄木質建材の例として、製品に加工される際に出る端材のように有効に活用されないまま廃棄処分とされる製品製造工程残材、建築物を解体した後に廃棄される解体家屋残材、家具等に使用された後ごみとして廃棄される一般ゴミ木質廃棄物等が挙げられる。
【0017】
別の観点からは、廃棄木質建材としては、例えば、合板、集成材、製材品、ファイバーボード、パーティクルボード、薬品処理木材等が挙げられる。こららのうち、合板、ファイバーボード、パーティクルボードのような加工木材が特に好ましい。このうち、特に生産量が多いのは合板であり、合板の中でも生産量の多い規格は、タイプI及びタイプIIである。
ここで、合板のタイプI及びタイプIIとは、合板の接着層の耐水性によってされた分類である。タイプIは、煮沸繰り返し試験又はスチーミング処理試験に合格したものである。煮沸繰り返し試験とは、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60℃±3℃で20時間乾燥し、さらに沸騰水中に4時間浸漬し、室温の水中で冷ました後、ぬれたままで行う接着力試験である。スチーミング処理試験とは、試験片を室温の水中に2時間浸漬した後、120℃±2℃で3時間水蒸気処理をし、これを室温の水中で冷ました後、ぬれたままの状態で行う接着力試験である。屋内で使用される構造用合板、コンクリート型枠用合板などにはタイプIが要求される。
タイプIIは、温冷水浸漬試験に合格したものである。温冷水浸漬試験とは、試験片を60±3℃の温水中に3時間浸漬した後、室温水中で冷まし、ぬれたままで行う接着力試験である。タイプIIの合板の使用場所は主に室内で、湿気が少し多い場所でもある程度使用に耐えるとされている。
本発明の製造方法においては、これらの木質建材を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の製造方法に用いられる廃建材には、通常、接着剤、塗料、防腐剤等の不純物が含まれている。
接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共縮合樹脂等が挙げられる。木質建材のうち、例えば、合板には4〜10%、パーティクルボードには6〜12%の接着剤が含まれている。合板のうち、タイプIにはユリアメラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂等が、タイプIIにはユリア樹脂、メラミン樹脂等が主に用いられている。
塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ボイル油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、クレオソート油、フェノール類、CCA(クロム、銅、ヒ素の略である)が挙げられる。このうち、CCAについては、近年使用制限が進んでいるが、微量に含まれている場合がある。
染色剤としては、直接染料、酸性染料等が挙げられる。
漂白剤としては、例えば、塩素系、過酸化物系、水素化化合物系、硫黄化合物形のものが挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる廃建材は、加水分解装置10での反応に適した状態にするべく前処理してから原料タンク11へ配されることが好ましい。かかる前処理方法としては、例えば、粉砕、蒸煮、爆砕等物理的処理や、酸、アルカリ等の化学的処理が挙げられる。
【0020】
酸液タンク12は、加水分解装置10へ供給する酸液を貯液するためのタンクである。酸液は酸液タンク12に配され、酸液ポンプ20を経て加水分解装置10の反応器に導入される。加水分解反応に用いられる酸液としては、例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液等が挙げられ、特に硫酸水溶液が好ましく用いられる。
酸液ポンプ20は、酸液タンク12に貯液されている酸液を加水分解装置10へ導入するためのポンプである。かかるポンプとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ダイヤフラムポンプ、ペリスタポンプ等を用いることができる。
【0021】
加水分解装置10は、原料タンク11から導入された原料の廃建材中のセルロース分を糖に加水分解するための装置である。
加水分解装置10としては、従来公知の装置を用いることができ、例えば、連続式加水分解装置、バッチ式加水分解装置等を用いることができる。
本実施形態においては、加水分解装置10として、連続式加水分解装置が採用されている。連続式加水分解装置とは、反応器を一定の反応条件に保ちつつ原料及び酸液を少量ずつ連続的に供給し、反応器内で加水分解反応を行いながら、一方で加水分解懸濁液を少量ずつ連続的に排出させる装置である。連続式加水分解装置を用いると、一定条件下で反応を行うことができるため、反応温度の昇温時間等による反応のばらつきを防ぐことができ、また、1つの反応容器で大量の原料を続けて処理することができるため、量産に好適であり、コストを削減することもできる。
【0022】
加水分解液タンク15は、加水分解装置10から導出される加水分解懸濁液を貯液するためのタンクである。この加水分解液タンク15内の液のpHを測定するために、pHセンサー30が設けられている。
また、pHセンサー30には、pH測定値を電気信号として受信する酸液量制御装置35が接続されている。酸液量制御装置35は、電気信号として受信したpH測定値によって、加水分解装置10に供給する酸液量を調整する機能を備えており、酸液供給量を酸液ポンプ20へ電気信号として送信することができる。
【0023】
濾過装置40は、加水分解液タンク15から導出された加水分解懸濁液を固液分離するための装置である。固液分離することにより、加水分解により生成した糖が含まれる糖溶液である濾液と、加水分解されていない未反応のセルロース分が含まれる固体である濾過残渣とに分離することができる。
濾過装置40としては、例えば、自然濾過装置、吸引濾過装置、加圧濾過装置、遠心濾過装置等が挙げられ、いずれの装置を用いてもよい。
【0024】
糖液タンク41は、濾過装置40に接続して設けられ、濾過装置40により濾過を行い固液分離した後の濾液、すなわち、加水分解により生成した糖が含まれる糖液を貯蔵するためのタンクであり、さらに次の装置に糖液を供給するためのものである。ここで次の装置とは、糖液が、後述するようにアルコール又は有機酸を製造するための原料となる場合に、発酵によりアルコール又は有機酸を製造するための装置、又は発酵に適した状態にするべく前処理を行うための装置等を示している。
【0025】
濾過残渣タンク42は、濾過装置40に接続して設けられ、濾過装置40により濾過を行い固液分離した後の濾過残渣を貯蔵するためのタンクである。
この濾過残渣タンク42には濾過残渣供給量制御装置43が接続されている。濾過残渣供給量制御装置43は、pHセンサー30に電気配線により接続されており、pH測定値を電気信号として受信して、その値によって調整した量の濾過残渣を濾過残渣供給装置44へと供給する機能を備えている。ここで、濾過残渣供給装置44へ供給された残りの濾過残渣は、例えば、埋め立てや焼却処理等の廃棄処理を行うことができる。
【0026】
濾過残渣供給装置44は、濾過残渣供給量制御装置43により分配されて再供給用とされた濾過残渣、すなわち、加水分解されていない未反応のセルロース分が含まれる固体を加水分解装置10に再供給するための装置である。
濾過残渣供給装置44としては、固体成分を反応器に導入するために用いられる公知の装置を用いることができ、例えば、ベルトコンベアー、スクリューコンベアー等を用いることができる。濾過残渣供給装置44を用いることにより、濾過残渣を連続的に加水分解装置10に再供給することができる。
なお、濾過残渣供給装置44に原料供給タンク11を接続して、原料供給タンク11から供給される原料と再供給される濾過残渣とを混合してから濾過残渣供給装置44により加水分解装置10に供給するように構成してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の糖の製造システム1を用いた糖の製造方法を説明する。
まず、廃建材原料を原料タンク11に導入する。好ましくは、廃建材原料を、上述のように加水分解装置10での反応に適した状態にするべく前処理した後、原料タンク11に配する。そして、原料タンク11より、セルロースを含む廃建材原料を加水分解装置10に導入する。
一方、酸液タンク12から酸液ポンプ20を経て、酸液を加水分解装置10に併せて供給し、廃建材原料の酸加水分解を行う。反応開始時に導入される酸液の濃度は、硫酸水溶液の場合、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。また、加水分解反応時の、酸液と廃建材原料との比率(質量比)は、硫酸水溶液:廃建材原料として表すと好ましくは1:1〜5:1、さらに好ましくは、1:1〜3:1である。反応温度は、好ましくは、120〜220℃、さらに好ましくは、150〜180℃である。圧力は、好ましくは、0.2〜2.5MPa、さらに0.5〜1.0MPaであることが好ましい。また、反応時間は、5〜60分、さらに10〜30分であることが好ましい。
【0028】
次に、加水分解装置10から加水分解液タンク15へ、加水分解懸濁液の一部を導出する。そして、加水分解液タンク15内の液のpHをpHセンサー30によって測定し、該測定値を電気信号として酸液量制御装置35に送信する。
pHの測定は、本来、加水分解装置10内の反応液に対して行うことが好ましいが、通常加水分解装置内は100℃以上の高温であり、大気圧以上の圧力で反応を行うことが多いため、直接反応液のpHを測定することは困難である。従って、加水分解液を加水分解装置10から加水分解液タンク15へ導出し、該加水分解タンク15内にてpH測定を行うことが好適な方法である。
【0029】
酸液量制御装置35は、pH測定値を受信し、その測定値によって酸液ポンプ20から加水分解装置10へ導入する酸液量を決定し、該導入酸液量を電気信号として酸液ポンプ20へ送信する。
加水分解装置10内の反応液のpHは、0〜1.0であることが好ましい。pHが0より小さいと、生成した糖の過分解が進行するため糖の収率が低下し、1.0より大きいと、十分に加水分解反応が進行しないためである。
【0030】
上記のように、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の値の範囲に調整するために、酸液量制御装置35は、加水分解液タンク15内の液のpHが所定の上限値より大きい場合は導入酸液量を増量し、所定の下限値より小さい場合は導入酸液量を減量する指令を送信する。pHの所定の上限値としては、2.0が好ましく、さらに1.0がより好ましい。所定の下限値としては、0が好ましく、さらに0.5がより好ましい。
具体的には、加水分解液タンク15内の液のpHが1.0より大きい場合は、導入酸液量を、反応開始時に導入した酸液量(以下、標準酸液量という。)に対して10〜100質量%増量し、さらに、pHが2.0より大きい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して100〜200質量%増量することが好ましい。また、加水分解液タンク15内の液のpHが0.5より小さい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して10〜30質量%減量し、さらに、pHが0より小さい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して30〜60質量%減量することが好ましい。
このように、pH測定値によって供給する酸液の量を調整することにより、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の範囲に保つことができ、加水分解率が上昇し糖の収率を上昇させることができる。
【0031】
次いで、加水分解液タンク15から加水分解懸濁液を濾過装置40へ導入する。この濾過装置40を用いて、遠心濾過、加圧濾過等の方法により濾過して、加水分解懸濁液の固液を分離する。これにより得られた濾液、すなわち加水分解装置10において生成した糖を含む糖液を糖液タンク41へと導入する。この糖液は糖液タンク41に貯蔵され、さらに、後述するようなアルコールまたは有機酸の製造のための装置へと供給される。
一方、濾過装置40で得られた濾過残渣は濾過残渣タンク42に導入される。さらに、濾過残渣は、濾過残渣タンク42から濾過残渣供給量制御装置43へと導出される。
【0032】
濾過残渣供給量制御装置43は、pHセンサー30におけるpH測定値を電気信号として受信し、その値によって濾過残渣供給装置44へ供給する濾過残渣量と、排出する濾過残渣量を調整して、濾過残渣を分配し、濾過残渣供給装置44へ供給する。すなわち、加水分解液タンク15内の液のpHが所望の値よりも大きい場合は、酸加水分解が十分に進行しておらず濾過残渣中に未反応のセルロース分が残存していると考えられるため、濾過残渣供給装置44へ供給する濾過残渣を増量し、小さい場合は濾過残渣量を減量する。具体的には、加水分解液タンク15内の液のpHが1.0より大きい場合は再供給する濾過残渣量を全濾過残渣に対して50〜70質量%とし、さらに、pHが2.0より大きい場合は70〜100質量%とすることが好ましい。また、加水分解液タンク15内の液のpHが0.5より小さい場合は再供給する濾過残渣量を全濾過残渣に対して0〜20質量%とし、さらに、pHが0より小さい場合は0質量%とすることが好ましい。
【0033】
次いで、濾過残渣供給量制御装置43から導入された濾過残渣を、濾過残渣供給装置44を用いて、加水分解装置10に再供給する。これにより、濾過残渣中に含まれる未反応のセルロース分を加水分解し、糖の収率を向上させることができる。
また、加水分解装置10に再供給する濾過残渣は、新たに原料タンク11から供給される未反応のセルロース分を含む新規の廃建材原料と共に加水分解装置10に導入されることが好ましい。これは、新規のバイオマス原料と濾過残渣をより均一に混合することで装置内での反応のむらが少なくなるからである。濾過残渣のうち、濾過残渣供給装置44に提供しない残りについては、廃棄処理してもよいし、燃焼させて燃料として使用することもできる。
【0034】
以上のように、本実施形態の糖の製造システム1および該製造システムを用いる製造方法によると、加水分解装置10から導出された加水分解懸濁液のpHを測定し、その値によって酸液ポンプ20から加水分解装置10へ供給する酸液の量を調整することにより、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の値の範囲に維持することができ、得られる糖の収率を向上させることができる。また、一定量の糖を得るために必要とする酸液の量を減量して低コストに製造を行うことができる。
また、本実施形態の糖の製造システム1および該製造システムを用いる製造方法によると、加水分解装置10から導出された加水分解懸濁液のpHを測定し、その値によって濾過残渣供給装置44から加水分解装置10へ再供給する濾過残渣の量を調整するため、未反応のセルロース分が含まれる濾過残渣に対して効率的に再度反応を行うことができ、糖の収率が向上する。
【0035】
なお、本実施形態では、pHの測定値による酸液量または濾過残渣供給量の調整を酸液量制御装置35または濾過残渣供給量制御装置43を用いて行ったが、酸液量または濾過残渣供給量の調整は、これらの制御装置によらず手動で行ってもよい。
また、本実施形態では濾過残渣供給装置44を設けたが、該濾過残渣供給装置は省略することができ、濾過残渣の全量を廃棄処理または燃料として使用することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では加水分解装置10として連続式加水分解装置を採用したが、この他に、バッチ式加水分解装置を採用することもできる。バッチ式加水分解装置とは、1回の反応ごとに反応器内に原料となる廃建材と、必要な酸液とを導入した後加熱等を行って、反応器内に一定時間原料を滞留させることにより加水分解を行った後、加水分解懸濁液を反応器外へ導出させる装置である。
バッチ式加水分解装置を採用した場合も、加水分解液タンク15に導出された液のpHを測定することにより、原料である廃建材の不純物の含量を推定して次のバッチに使用する酸液の量を決定することができるため、本発明の製造システムおよび製造方法を好適に用いることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の発明である、上述の糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法について説明する。
上述したような本発明の糖の製造システムを用いて得られた糖の溶液を、発酵工程により発酵させて、アルコール又は有機酸を製造する。
このとき、糖溶液を発酵工程に適した状態にするべく前処理するための発酵前処理工程を、発酵工程の前に設けてもよい。発酵前処理としては、例えば、pH調整、加熱処理、減圧処理等が挙げられる。
【0038】
本発明のアルコール又は有機酸の製造方法において、発酵工程とは、発酵前処理工程で得られた単糖〜2糖程度までの糖が含まれる糖溶液から、微生物による発酵によってアルコールや有機酸を得る工程をいう。発酵に用いられる微生物としては、酵母や細菌が例として挙げられるが、遺伝子組み換え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組み換え微生物とは、アルコール等への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、アルコール等への発酵を可能にしたものである。この遺伝子組み換え微生物としては、例としてアルコール発酵性を有する遺伝子組み換え大腸菌等が挙げられる。
発酵工程において製造されたアルコール又は有機酸は、必要に応じて分離精製処理される。精製法としては、公知の方法、例えば、蒸留等を用いることができる。
【0039】
本発明のアルコール又は有機酸の製造システム及び製造方法において、製造されるアルコールは、炭素数2〜4のアルコールであり、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、エタノールが最も好ましい。また、製造される有機酸としては、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、コハク酸等が挙げられ、乳酸が最も好ましい。
【0040】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の試験例、実施例および比較例において、回収糖量とは、溶液中のグルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノースの合計量を示す。回収糖量は、液体クロマトグラフィーにおいて分離カラムとしてBIO−RAD製HPX−87Pを用いて測定した。
[試験例]
(目的)
この試験は、各種建材を原料として酸加水分解を行った場合、使用する硫酸量および反応後のpHが、糖の収量に及ぼす影響を調べる目的で実施した。
(加水分解および糖収量の測定)
本試験例では、原料の建材として、桧、杉、栂、ラワン合板(タイプII)、パーティクルボードおよびMDF(中密度木材繊維集積板)の6種類を用いた。上記の各建材原料150gを、各種濃度の硫酸水溶液450gを用い、150℃で10分間加水分解反応を行った。この加水分解反応液のpHを測定した。
得られた加水分解懸濁液をヌッチェにより濾過して、生成した糖を含む濾液を回収し、濾液中の回収糖量を測定した。
得られた結果を表1に示す。また、使用した硫酸量と回収糖量との関係を図2に、反応液のpHと回収糖量との関係を図3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(結果および考察)
図2からわかるように、同じ温度および反応時間で酸加水分解を行った場合、原料とした木材の種類によって、最大の回収糖量を得るために必要な硫酸量が異なる。ラワン合板、パーティクルボード、およびMDFのような加工木材においては、接着剤等の不純物が含まれているため、桧、杉、および栂の場合と比較して、最大の回収糖量を得るために必要な硫酸量が多くなることが明らかとなった。従って、原料としてこれらの木材の混合比率が不明である廃建材を用いる場合には、最大回収糖量を得るための硫酸量の設定が困難になると考えられる。
また、木材種にかかわらず、最大回収糖量が得られる量以上の硫酸を使用した場合、回収糖量が減少した。すなわち、使用する酸液の量を一定量以上にすると、生成した糖の過分解がおこるため、かえって糖の収率が低下することがわかった。
一方、図3からわかるように、使用する木材種にかかわらず、最大の回収糖量が得られた場合のpHは、一定範囲にあり、およそ0.5〜1.0の範囲内であった。従って、糖の収率を向上させるためには、反応液のpHを一定範囲内になるよう調整することが有効であると考えられる。
【0043】
[実施例1]
(1)原料準備:
杉(1400g)、ラワン合板(300g)、パーティクルボード(300g)を混合した後、平均粒子径が1mmになるように粉砕して廃建材原料(2000g)とした。これを切り出しホッパーに配し、切り出しホッパーの下部から加水分解反応の1バッチごとに、100gずつを切り出して、加水分解反応の反応器内に投入した。
(2)加水分解(第1バッチ):
1バッチ目の加水分解では、上記の廃建材原料100gを、4gの濃硫酸(第1バッチで添加した濃硫酸量を以下標準酸量という。)、を添加した硫酸水溶液300g(1.3質量%)を用い、150℃で10分間加水分解反応を行った。
(3)pHおよび回収糖量の測定(第1バッチ):
(2)で得られた反応液である加水分解懸濁液を反応器から排出し、pHを測定した。また、得られた加水分解懸濁液をヌッチェにより濾過して、生成した糖を含む濾液を回収し、濾液中の回収糖量を測定した。
(4)第2〜第20バッチ
各バッチの加水分解反応において使用する濃硫酸添加量を、前バッチで得られた加水分解懸濁液のpHの値によって以下のように定めた。
(a)pHが0.7〜1.0の範囲である場合、前バッチと同量。
(b)pHが0.7より小さい場合、標準酸量に対して20質量%減量。
(c)pHが1.0より大きい場合、標準酸量に対して20〜50%増量。
上記のように定めた硫酸量を使用して、(2)と同様に加水分解反応を行った後、(3)と同様に加水分解液のpHを測定し、さらに回収糖量を測定した。この操作を第2バッチから第20バッチまで繰り返して行った。
第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は84gで、合計糖収量は267gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
[比較例1]
pH測定値に関わらず濃硫酸添加量を各バッチ4g(硫酸濃度1.3質量%)に固定したこと以外は実施例1と同様にして、第1〜第20バッチの加水分解反応を行った。第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は80gで、合計糖収量は212gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表3に示す。
【0046】
[比較例2]
pH測定値に関わらず濃硫酸添加量を各バッチ6g(硫酸濃度2.0質量%)に固定したこと以外は実施例1と同様にして、第1〜第20バッチの加水分解反応を行った。
第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は120gで、合計糖収量は264gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例1と比較例1を比較すると、ほぼ同量の硫酸を使用した場合、バッチごとにpHを測定し、各バッチの硫酸使用量を調整した実施例1の場合の方が、糖の収量が約25%上昇した。
また、実施例1と比較例2を比較すると、ほぼ同量の糖収量を得るために使用する硫酸量は、約30%削減できることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の糖の製造システムおよび製造方法を用いると、廃建材を原料として、酸加水分解を効率的に行い、高収率で糖を製造することができる。また、この糖の製造システムを用いて製造された糖を原料とすることにより、効率的にアルコールまたは有機酸の製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる糖の製造システムの一例を表した模式図である。
【図2】試験例の各種木材の酸加水分解における硫酸量と回収糖量との関係を表すグラフである。
【図3】試験例の各種木材の酸加水分解における反応液のpHと回収糖量との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
1・・糖の製造システム、10・・加水分解装置、11・・原料タンク、12・・酸液タンク、15・・加水分解液タンク、20・・酸液ポンプ、30・・pHセンサー、35・・酸液量制御装置、40・・濾過装置、41・・糖液タンク、42・・濾過残渣タンク、43・・濾過残渣供給量制御装置、44・・濾過残渣供給装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃建材を原料とする糖の製造システムおよび該製造システムを用いる糖の製造方法に関するものである。また、該製造システムを用いて製造した糖を原料とするアルコールまたは有機酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効利用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。特に、次世代自動車燃料としても注目されるエタノールをバイオマスから製造する技術に注目が集まっている。
収集したバイオマス原料を、加水分解等の糖化により糖類に分解した後、微生物による発酵によりエタノールに変換して、エネルギーや化学原料として利用する研究が進められている。
【0003】
一般に、バイオマスからエタノール等を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。その他にも、バガスや稲わらのような草木系バイオマス、木材チップ等の木質系バイオマス等のセルロース系資源も原料として用いられている。
【0004】
上述のようなバイオマスの中で、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質は、本来の用途は食用資源である。これらの食用資源を長期的、安定的に工業用利用資源とすることは、今後生じる人口増加問題と拮抗するため好ましくない。従って、将来的に有用な資源と考えられるのは、草木系バイオマスや木質系バイオマスのようなセルロース系資源である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
木質系バイオマスを用いて硫酸等の酸で加水分解し、糖からエタノール等の発酵製品を製造することは従来行われている。木材もこれに含まれるが、加工されていない木材チップが主な対象であった。
しかしながら、木質系バイオマスには相当量の加工された木材が含まれているにもかかわらず、これらの加工木材はエタノール等の製造における原料としては有効に活用されていない。
また、一般にバイオマスからエタノール等を製造する場合、原料の収集が困難であるという問題点もある。
【0006】
上記のような問題点から、エタノール等製造の原料として、加工された木材を多く含む廃建材を用いることが有望であると考えられる。
現在、日本では年間約2400万トンの木質建材が生産されている。これらの木質建材は、建築や、家具等への加工に使用される際、全てが有効に使用されるわけではなく、端材等が大量に廃棄されている。また、建築物取り壊し後の建材や、使用後の家具等は有効利用されることなく、廃棄されることが多い。
このような廃建材は、大量に排出され、収集が容易であり、また資源の再利用という観点からもバイオマス資源として非常に有望である。
【0007】
木質建材の生産量を見ると、合板、パーティクルボード、ファイバーボードなど加工木材の割合は50%程度に達している。廃建材をエタノール等製造の原料として用いる場合、これら加工木材に含まれるセルロース分を酸加水分解することにより糖を得る工程を効率的に行う必要がある。
【0008】
【非特許文献1】
越島著、「セルロース資源」、学会出版センター、1991年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、廃建材、特に加工木材を原料として用いた場合、加工されていない木材チップ等を原料とする場合に比べて、酸加水分解による糖化工程での糖の収率が低下するという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、廃建材を原料とし、酸加水分解を効率的に行い、糖を収率良く製造するための製造システム、該製造システムを用いる糖の製造方法、および該製造システムを用いて得られた糖から発酵によりアルコールまたは有機酸を製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、酸加水分解工程における反応液のpHに着目し、以下の検討を行った。
加水分解率はpHに依存するが、廃建材、特に加工木材には、接着剤、塗料等の不純物が含まれているため、これらの不純物が加水分解反応において酸と反応することにより、pHの上昇を引き起こし加水分解反応を抑制していることが推定された。
そこで、不純物によるpHの上昇を予測して使用する酸を増量することも検討したが、酸を過剰に使用すると生成した糖の過分解が起こり、かえって糖の収率は低下してしまうことがわかった。
特に、廃建材原料中の加工木材の比率は不明であることが多く、原料の廃建材中に含有される不純物量をもとに、使用する酸の量を適切に決定することは非常に困難である。
そこで、さらに検討を重ねた結果、加水分解装置から導出される加水分解懸濁液のpHを測定し、その測定値によって酸液を加水分解装置へ導入する量を調節することによって、前記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の第一の発明は、廃建材を原料として糖を製造する製造システムであって、廃建材を加水分解する加水分解装置と、前記加水分解装置に酸液を導入するための酸液ポンプと、前記加水分解装置から導出される加水分解懸濁液を貯蔵するための加水分解液タンクと、前記加水分解液タンク内の加水分解液のpHを測定するためのpHセンサーとを備えることを特徴とするアルコールまたは有機酸の製造システムである。
本発明の第2の発明は、前記製造システムを用いることを特徴とする廃建材を原料とする糖の製造方法である。
また、本発明の第3の発明は、前記糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。なお、この実施形態は本発明の要旨を説明するためのものであり、特に断りのない限り本発明を限定するものではない。
【0014】
図1は、本発明に係るアルコールまたは有機酸の製造システムの一実施形態を示した模式図である。図1に示すように、本発明の製造システム1は、廃建材を糖に加水分解するための加水分解装置10と、酸液を加水分解装置10に供給するための酸液ポンプ20と、加水分解装置10から導出される加水分解懸濁液を貯液するための加水分解液タンク15と、加水分解液タンク15内の液のpHを測定するためのpHセンサー30とから概略構成されている。
【0015】
加水分解装置10には、原料となる廃建材を貯蔵し、加水分解装置10に供給するための原料タンク11が接続されている。また、酸液ポンプ20に接続して、加水分解装置10に供給する酸液を貯液するための酸液タンク12が設けられている。
pHセンサー30と酸液ポンプ20との間には、電気配線を介して酸液量制御装置35が備えられている。
また、加水分解液タンク15に接続して、加水分解懸濁液を固液分離するための濾過装置40が設けられており、この濾過装置40には、濾過装置40から得られた濾液である糖液を貯蔵して次工程に供給するための糖液タンク41と、濾過残渣を貯蔵するための濾過残渣タンク42とがそれぞれ接続されている。
さらに、濾過残渣タンク42には、濾過残渣供給量制御装置43を介して、濾過残渣を加水分解装置10に再供給するための濾過残渣供給装置44が設けられている。また、濾過残渣供給量制御装置43は、電気配線によりpHセンサー30と接続されている。
【0016】
原料タンク11は、原料である廃建材を加水分解装置10へ供給するためのタンクである。原料タンク11に廃建材を配し、加水分解装置10の反応器に導入する。
本明細書に記載する廃建材としては、廃棄木質建材、廃パレット、廃梱包材等が挙げられる。廃棄木質建材の例として、製品に加工される際に出る端材のように有効に活用されないまま廃棄処分とされる製品製造工程残材、建築物を解体した後に廃棄される解体家屋残材、家具等に使用された後ごみとして廃棄される一般ゴミ木質廃棄物等が挙げられる。
【0017】
別の観点からは、廃棄木質建材としては、例えば、合板、集成材、製材品、ファイバーボード、パーティクルボード、薬品処理木材等が挙げられる。こららのうち、合板、ファイバーボード、パーティクルボードのような加工木材が特に好ましい。このうち、特に生産量が多いのは合板であり、合板の中でも生産量の多い規格は、タイプI及びタイプIIである。
ここで、合板のタイプI及びタイプIIとは、合板の接着層の耐水性によってされた分類である。タイプIは、煮沸繰り返し試験又はスチーミング処理試験に合格したものである。煮沸繰り返し試験とは、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60℃±3℃で20時間乾燥し、さらに沸騰水中に4時間浸漬し、室温の水中で冷ました後、ぬれたままで行う接着力試験である。スチーミング処理試験とは、試験片を室温の水中に2時間浸漬した後、120℃±2℃で3時間水蒸気処理をし、これを室温の水中で冷ました後、ぬれたままの状態で行う接着力試験である。屋内で使用される構造用合板、コンクリート型枠用合板などにはタイプIが要求される。
タイプIIは、温冷水浸漬試験に合格したものである。温冷水浸漬試験とは、試験片を60±3℃の温水中に3時間浸漬した後、室温水中で冷まし、ぬれたままで行う接着力試験である。タイプIIの合板の使用場所は主に室内で、湿気が少し多い場所でもある程度使用に耐えるとされている。
本発明の製造方法においては、これらの木質建材を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の製造方法に用いられる廃建材には、通常、接着剤、塗料、防腐剤等の不純物が含まれている。
接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共縮合樹脂等が挙げられる。木質建材のうち、例えば、合板には4〜10%、パーティクルボードには6〜12%の接着剤が含まれている。合板のうち、タイプIにはユリアメラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂等が、タイプIIにはユリア樹脂、メラミン樹脂等が主に用いられている。
塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ボイル油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、クレオソート油、フェノール類、CCA(クロム、銅、ヒ素の略である)が挙げられる。このうち、CCAについては、近年使用制限が進んでいるが、微量に含まれている場合がある。
染色剤としては、直接染料、酸性染料等が挙げられる。
漂白剤としては、例えば、塩素系、過酸化物系、水素化化合物系、硫黄化合物形のものが挙げられる。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる廃建材は、加水分解装置10での反応に適した状態にするべく前処理してから原料タンク11へ配されることが好ましい。かかる前処理方法としては、例えば、粉砕、蒸煮、爆砕等物理的処理や、酸、アルカリ等の化学的処理が挙げられる。
【0020】
酸液タンク12は、加水分解装置10へ供給する酸液を貯液するためのタンクである。酸液は酸液タンク12に配され、酸液ポンプ20を経て加水分解装置10の反応器に導入される。加水分解反応に用いられる酸液としては、例えば、塩酸水溶液、硫酸水溶液等が挙げられ、特に硫酸水溶液が好ましく用いられる。
酸液ポンプ20は、酸液タンク12に貯液されている酸液を加水分解装置10へ導入するためのポンプである。かかるポンプとしては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ダイヤフラムポンプ、ペリスタポンプ等を用いることができる。
【0021】
加水分解装置10は、原料タンク11から導入された原料の廃建材中のセルロース分を糖に加水分解するための装置である。
加水分解装置10としては、従来公知の装置を用いることができ、例えば、連続式加水分解装置、バッチ式加水分解装置等を用いることができる。
本実施形態においては、加水分解装置10として、連続式加水分解装置が採用されている。連続式加水分解装置とは、反応器を一定の反応条件に保ちつつ原料及び酸液を少量ずつ連続的に供給し、反応器内で加水分解反応を行いながら、一方で加水分解懸濁液を少量ずつ連続的に排出させる装置である。連続式加水分解装置を用いると、一定条件下で反応を行うことができるため、反応温度の昇温時間等による反応のばらつきを防ぐことができ、また、1つの反応容器で大量の原料を続けて処理することができるため、量産に好適であり、コストを削減することもできる。
【0022】
加水分解液タンク15は、加水分解装置10から導出される加水分解懸濁液を貯液するためのタンクである。この加水分解液タンク15内の液のpHを測定するために、pHセンサー30が設けられている。
また、pHセンサー30には、pH測定値を電気信号として受信する酸液量制御装置35が接続されている。酸液量制御装置35は、電気信号として受信したpH測定値によって、加水分解装置10に供給する酸液量を調整する機能を備えており、酸液供給量を酸液ポンプ20へ電気信号として送信することができる。
【0023】
濾過装置40は、加水分解液タンク15から導出された加水分解懸濁液を固液分離するための装置である。固液分離することにより、加水分解により生成した糖が含まれる糖溶液である濾液と、加水分解されていない未反応のセルロース分が含まれる固体である濾過残渣とに分離することができる。
濾過装置40としては、例えば、自然濾過装置、吸引濾過装置、加圧濾過装置、遠心濾過装置等が挙げられ、いずれの装置を用いてもよい。
【0024】
糖液タンク41は、濾過装置40に接続して設けられ、濾過装置40により濾過を行い固液分離した後の濾液、すなわち、加水分解により生成した糖が含まれる糖液を貯蔵するためのタンクであり、さらに次の装置に糖液を供給するためのものである。ここで次の装置とは、糖液が、後述するようにアルコール又は有機酸を製造するための原料となる場合に、発酵によりアルコール又は有機酸を製造するための装置、又は発酵に適した状態にするべく前処理を行うための装置等を示している。
【0025】
濾過残渣タンク42は、濾過装置40に接続して設けられ、濾過装置40により濾過を行い固液分離した後の濾過残渣を貯蔵するためのタンクである。
この濾過残渣タンク42には濾過残渣供給量制御装置43が接続されている。濾過残渣供給量制御装置43は、pHセンサー30に電気配線により接続されており、pH測定値を電気信号として受信して、その値によって調整した量の濾過残渣を濾過残渣供給装置44へと供給する機能を備えている。ここで、濾過残渣供給装置44へ供給された残りの濾過残渣は、例えば、埋め立てや焼却処理等の廃棄処理を行うことができる。
【0026】
濾過残渣供給装置44は、濾過残渣供給量制御装置43により分配されて再供給用とされた濾過残渣、すなわち、加水分解されていない未反応のセルロース分が含まれる固体を加水分解装置10に再供給するための装置である。
濾過残渣供給装置44としては、固体成分を反応器に導入するために用いられる公知の装置を用いることができ、例えば、ベルトコンベアー、スクリューコンベアー等を用いることができる。濾過残渣供給装置44を用いることにより、濾過残渣を連続的に加水分解装置10に再供給することができる。
なお、濾過残渣供給装置44に原料供給タンク11を接続して、原料供給タンク11から供給される原料と再供給される濾過残渣とを混合してから濾過残渣供給装置44により加水分解装置10に供給するように構成してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の糖の製造システム1を用いた糖の製造方法を説明する。
まず、廃建材原料を原料タンク11に導入する。好ましくは、廃建材原料を、上述のように加水分解装置10での反応に適した状態にするべく前処理した後、原料タンク11に配する。そして、原料タンク11より、セルロースを含む廃建材原料を加水分解装置10に導入する。
一方、酸液タンク12から酸液ポンプ20を経て、酸液を加水分解装置10に併せて供給し、廃建材原料の酸加水分解を行う。反応開始時に導入される酸液の濃度は、硫酸水溶液の場合、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。また、加水分解反応時の、酸液と廃建材原料との比率(質量比)は、硫酸水溶液:廃建材原料として表すと好ましくは1:1〜5:1、さらに好ましくは、1:1〜3:1である。反応温度は、好ましくは、120〜220℃、さらに好ましくは、150〜180℃である。圧力は、好ましくは、0.2〜2.5MPa、さらに0.5〜1.0MPaであることが好ましい。また、反応時間は、5〜60分、さらに10〜30分であることが好ましい。
【0028】
次に、加水分解装置10から加水分解液タンク15へ、加水分解懸濁液の一部を導出する。そして、加水分解液タンク15内の液のpHをpHセンサー30によって測定し、該測定値を電気信号として酸液量制御装置35に送信する。
pHの測定は、本来、加水分解装置10内の反応液に対して行うことが好ましいが、通常加水分解装置内は100℃以上の高温であり、大気圧以上の圧力で反応を行うことが多いため、直接反応液のpHを測定することは困難である。従って、加水分解液を加水分解装置10から加水分解液タンク15へ導出し、該加水分解タンク15内にてpH測定を行うことが好適な方法である。
【0029】
酸液量制御装置35は、pH測定値を受信し、その測定値によって酸液ポンプ20から加水分解装置10へ導入する酸液量を決定し、該導入酸液量を電気信号として酸液ポンプ20へ送信する。
加水分解装置10内の反応液のpHは、0〜1.0であることが好ましい。pHが0より小さいと、生成した糖の過分解が進行するため糖の収率が低下し、1.0より大きいと、十分に加水分解反応が進行しないためである。
【0030】
上記のように、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の値の範囲に調整するために、酸液量制御装置35は、加水分解液タンク15内の液のpHが所定の上限値より大きい場合は導入酸液量を増量し、所定の下限値より小さい場合は導入酸液量を減量する指令を送信する。pHの所定の上限値としては、2.0が好ましく、さらに1.0がより好ましい。所定の下限値としては、0が好ましく、さらに0.5がより好ましい。
具体的には、加水分解液タンク15内の液のpHが1.0より大きい場合は、導入酸液量を、反応開始時に導入した酸液量(以下、標準酸液量という。)に対して10〜100質量%増量し、さらに、pHが2.0より大きい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して100〜200質量%増量することが好ましい。また、加水分解液タンク15内の液のpHが0.5より小さい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して10〜30質量%減量し、さらに、pHが0より小さい場合は導入酸液量を標準酸液量に対して30〜60質量%減量することが好ましい。
このように、pH測定値によって供給する酸液の量を調整することにより、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の範囲に保つことができ、加水分解率が上昇し糖の収率を上昇させることができる。
【0031】
次いで、加水分解液タンク15から加水分解懸濁液を濾過装置40へ導入する。この濾過装置40を用いて、遠心濾過、加圧濾過等の方法により濾過して、加水分解懸濁液の固液を分離する。これにより得られた濾液、すなわち加水分解装置10において生成した糖を含む糖液を糖液タンク41へと導入する。この糖液は糖液タンク41に貯蔵され、さらに、後述するようなアルコールまたは有機酸の製造のための装置へと供給される。
一方、濾過装置40で得られた濾過残渣は濾過残渣タンク42に導入される。さらに、濾過残渣は、濾過残渣タンク42から濾過残渣供給量制御装置43へと導出される。
【0032】
濾過残渣供給量制御装置43は、pHセンサー30におけるpH測定値を電気信号として受信し、その値によって濾過残渣供給装置44へ供給する濾過残渣量と、排出する濾過残渣量を調整して、濾過残渣を分配し、濾過残渣供給装置44へ供給する。すなわち、加水分解液タンク15内の液のpHが所望の値よりも大きい場合は、酸加水分解が十分に進行しておらず濾過残渣中に未反応のセルロース分が残存していると考えられるため、濾過残渣供給装置44へ供給する濾過残渣を増量し、小さい場合は濾過残渣量を減量する。具体的には、加水分解液タンク15内の液のpHが1.0より大きい場合は再供給する濾過残渣量を全濾過残渣に対して50〜70質量%とし、さらに、pHが2.0より大きい場合は70〜100質量%とすることが好ましい。また、加水分解液タンク15内の液のpHが0.5より小さい場合は再供給する濾過残渣量を全濾過残渣に対して0〜20質量%とし、さらに、pHが0より小さい場合は0質量%とすることが好ましい。
【0033】
次いで、濾過残渣供給量制御装置43から導入された濾過残渣を、濾過残渣供給装置44を用いて、加水分解装置10に再供給する。これにより、濾過残渣中に含まれる未反応のセルロース分を加水分解し、糖の収率を向上させることができる。
また、加水分解装置10に再供給する濾過残渣は、新たに原料タンク11から供給される未反応のセルロース分を含む新規の廃建材原料と共に加水分解装置10に導入されることが好ましい。これは、新規のバイオマス原料と濾過残渣をより均一に混合することで装置内での反応のむらが少なくなるからである。濾過残渣のうち、濾過残渣供給装置44に提供しない残りについては、廃棄処理してもよいし、燃焼させて燃料として使用することもできる。
【0034】
以上のように、本実施形態の糖の製造システム1および該製造システムを用いる製造方法によると、加水分解装置10から導出された加水分解懸濁液のpHを測定し、その値によって酸液ポンプ20から加水分解装置10へ供給する酸液の量を調整することにより、加水分解装置10内の反応液のpHを所望の値の範囲に維持することができ、得られる糖の収率を向上させることができる。また、一定量の糖を得るために必要とする酸液の量を減量して低コストに製造を行うことができる。
また、本実施形態の糖の製造システム1および該製造システムを用いる製造方法によると、加水分解装置10から導出された加水分解懸濁液のpHを測定し、その値によって濾過残渣供給装置44から加水分解装置10へ再供給する濾過残渣の量を調整するため、未反応のセルロース分が含まれる濾過残渣に対して効率的に再度反応を行うことができ、糖の収率が向上する。
【0035】
なお、本実施形態では、pHの測定値による酸液量または濾過残渣供給量の調整を酸液量制御装置35または濾過残渣供給量制御装置43を用いて行ったが、酸液量または濾過残渣供給量の調整は、これらの制御装置によらず手動で行ってもよい。
また、本実施形態では濾過残渣供給装置44を設けたが、該濾過残渣供給装置は省略することができ、濾過残渣の全量を廃棄処理または燃料として使用することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では加水分解装置10として連続式加水分解装置を採用したが、この他に、バッチ式加水分解装置を採用することもできる。バッチ式加水分解装置とは、1回の反応ごとに反応器内に原料となる廃建材と、必要な酸液とを導入した後加熱等を行って、反応器内に一定時間原料を滞留させることにより加水分解を行った後、加水分解懸濁液を反応器外へ導出させる装置である。
バッチ式加水分解装置を採用した場合も、加水分解液タンク15に導出された液のpHを測定することにより、原料である廃建材の不純物の含量を推定して次のバッチに使用する酸液の量を決定することができるため、本発明の製造システムおよび製造方法を好適に用いることができる。
【0037】
次に、本発明の第3の発明である、上述の糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法について説明する。
上述したような本発明の糖の製造システムを用いて得られた糖の溶液を、発酵工程により発酵させて、アルコール又は有機酸を製造する。
このとき、糖溶液を発酵工程に適した状態にするべく前処理するための発酵前処理工程を、発酵工程の前に設けてもよい。発酵前処理としては、例えば、pH調整、加熱処理、減圧処理等が挙げられる。
【0038】
本発明のアルコール又は有機酸の製造方法において、発酵工程とは、発酵前処理工程で得られた単糖〜2糖程度までの糖が含まれる糖溶液から、微生物による発酵によってアルコールや有機酸を得る工程をいう。発酵に用いられる微生物としては、酵母や細菌が例として挙げられるが、遺伝子組み換え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組み換え微生物とは、アルコール等への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、アルコール等への発酵を可能にしたものである。この遺伝子組み換え微生物としては、例としてアルコール発酵性を有する遺伝子組み換え大腸菌等が挙げられる。
発酵工程において製造されたアルコール又は有機酸は、必要に応じて分離精製処理される。精製法としては、公知の方法、例えば、蒸留等を用いることができる。
【0039】
本発明のアルコール又は有機酸の製造システム及び製造方法において、製造されるアルコールは、炭素数2〜4のアルコールであり、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、エタノールが最も好ましい。また、製造される有機酸としては、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、コハク酸等が挙げられ、乳酸が最も好ましい。
【0040】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の試験例、実施例および比較例において、回収糖量とは、溶液中のグルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノースの合計量を示す。回収糖量は、液体クロマトグラフィーにおいて分離カラムとしてBIO−RAD製HPX−87Pを用いて測定した。
[試験例]
(目的)
この試験は、各種建材を原料として酸加水分解を行った場合、使用する硫酸量および反応後のpHが、糖の収量に及ぼす影響を調べる目的で実施した。
(加水分解および糖収量の測定)
本試験例では、原料の建材として、桧、杉、栂、ラワン合板(タイプII)、パーティクルボードおよびMDF(中密度木材繊維集積板)の6種類を用いた。上記の各建材原料150gを、各種濃度の硫酸水溶液450gを用い、150℃で10分間加水分解反応を行った。この加水分解反応液のpHを測定した。
得られた加水分解懸濁液をヌッチェにより濾過して、生成した糖を含む濾液を回収し、濾液中の回収糖量を測定した。
得られた結果を表1に示す。また、使用した硫酸量と回収糖量との関係を図2に、反応液のpHと回収糖量との関係を図3に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(結果および考察)
図2からわかるように、同じ温度および反応時間で酸加水分解を行った場合、原料とした木材の種類によって、最大の回収糖量を得るために必要な硫酸量が異なる。ラワン合板、パーティクルボード、およびMDFのような加工木材においては、接着剤等の不純物が含まれているため、桧、杉、および栂の場合と比較して、最大の回収糖量を得るために必要な硫酸量が多くなることが明らかとなった。従って、原料としてこれらの木材の混合比率が不明である廃建材を用いる場合には、最大回収糖量を得るための硫酸量の設定が困難になると考えられる。
また、木材種にかかわらず、最大回収糖量が得られる量以上の硫酸を使用した場合、回収糖量が減少した。すなわち、使用する酸液の量を一定量以上にすると、生成した糖の過分解がおこるため、かえって糖の収率が低下することがわかった。
一方、図3からわかるように、使用する木材種にかかわらず、最大の回収糖量が得られた場合のpHは、一定範囲にあり、およそ0.5〜1.0の範囲内であった。従って、糖の収率を向上させるためには、反応液のpHを一定範囲内になるよう調整することが有効であると考えられる。
【0043】
[実施例1]
(1)原料準備:
杉(1400g)、ラワン合板(300g)、パーティクルボード(300g)を混合した後、平均粒子径が1mmになるように粉砕して廃建材原料(2000g)とした。これを切り出しホッパーに配し、切り出しホッパーの下部から加水分解反応の1バッチごとに、100gずつを切り出して、加水分解反応の反応器内に投入した。
(2)加水分解(第1バッチ):
1バッチ目の加水分解では、上記の廃建材原料100gを、4gの濃硫酸(第1バッチで添加した濃硫酸量を以下標準酸量という。)、を添加した硫酸水溶液300g(1.3質量%)を用い、150℃で10分間加水分解反応を行った。
(3)pHおよび回収糖量の測定(第1バッチ):
(2)で得られた反応液である加水分解懸濁液を反応器から排出し、pHを測定した。また、得られた加水分解懸濁液をヌッチェにより濾過して、生成した糖を含む濾液を回収し、濾液中の回収糖量を測定した。
(4)第2〜第20バッチ
各バッチの加水分解反応において使用する濃硫酸添加量を、前バッチで得られた加水分解懸濁液のpHの値によって以下のように定めた。
(a)pHが0.7〜1.0の範囲である場合、前バッチと同量。
(b)pHが0.7より小さい場合、標準酸量に対して20質量%減量。
(c)pHが1.0より大きい場合、標準酸量に対して20〜50%増量。
上記のように定めた硫酸量を使用して、(2)と同様に加水分解反応を行った後、(3)と同様に加水分解液のpHを測定し、さらに回収糖量を測定した。この操作を第2バッチから第20バッチまで繰り返して行った。
第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は84gで、合計糖収量は267gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
[比較例1]
pH測定値に関わらず濃硫酸添加量を各バッチ4g(硫酸濃度1.3質量%)に固定したこと以外は実施例1と同様にして、第1〜第20バッチの加水分解反応を行った。第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は80gで、合計糖収量は212gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表3に示す。
【0046】
[比較例2]
pH測定値に関わらず濃硫酸添加量を各バッチ6g(硫酸濃度2.0質量%)に固定したこと以外は実施例1と同様にして、第1〜第20バッチの加水分解反応を行った。
第1〜第20バッチの合計硫酸添加量は120gで、合計糖収量は264gであった。
バッチごとの硫酸添加量、硫酸濃度、反応後のpH、糖の収量、さらに第1〜第20バッチの合計硫酸添加量、合計糖収量を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
実施例1と比較例1を比較すると、ほぼ同量の硫酸を使用した場合、バッチごとにpHを測定し、各バッチの硫酸使用量を調整した実施例1の場合の方が、糖の収量が約25%上昇した。
また、実施例1と比較例2を比較すると、ほぼ同量の糖収量を得るために使用する硫酸量は、約30%削減できることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の糖の製造システムおよび製造方法を用いると、廃建材を原料として、酸加水分解を効率的に行い、高収率で糖を製造することができる。また、この糖の製造システムを用いて製造された糖を原料とすることにより、効率的にアルコールまたは有機酸の製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる糖の製造システムの一例を表した模式図である。
【図2】試験例の各種木材の酸加水分解における硫酸量と回収糖量との関係を表すグラフである。
【図3】試験例の各種木材の酸加水分解における反応液のpHと回収糖量との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
1・・糖の製造システム、10・・加水分解装置、11・・原料タンク、12・・酸液タンク、15・・加水分解液タンク、20・・酸液ポンプ、30・・pHセンサー、35・・酸液量制御装置、40・・濾過装置、41・・糖液タンク、42・・濾過残渣タンク、43・・濾過残渣供給量制御装置、44・・濾過残渣供給装置
Claims (6)
- 廃建材を原料として糖を製造する製造システムであって、廃建材を加水分解する加水分解装置と、前記加水分解装置に酸液を導入するための酸液ポンプと、前記加水分解装置から導出される加水分解懸濁液を貯蔵するための加水分解液タンクと、前記加水分解液タンク内の加水分解懸濁液のpHを測定するためのpHセンサーとを備えることを特徴とする糖の製造システム。
- さらに、前記pHセンサーにより測定したpH測定値を電気信号として受信し、該pH測定値によって前記酸液ポンプから前記加水分解装置へ導入する酸液の量を調整する酸液量制御装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の糖の製造システム。
- さらに、前記加水分解液タンクから導出される加水分解液を濾過して固液分離する濾過装置と、前記濾過装置で得られた濾過残渣を前記加水分解装置に再供給する濾過残渣供給装置とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の糖の製造システム。
- さらに、前記pHセンサーにより測定したpH測定値を電気信号として受信し、該pH測定値によって前記濾過残渣供給装置から前記加水分解装置に再供給する濾過残渣量を調整する濾過残渣供給量制御装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の糖の製造システム。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の製造システムを用いることを特徴とする廃建材を原料とする糖の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の糖の製造システムを用いて得られた糖を、発酵させてアルコールまたは有機酸を製造することを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
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