JP2004089016A - 廃建材の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃建材を原料とし、加水分解して得られる糖から、発酵によりエタノール及び有機酸を効率的に製造する方法の提供。
【解決手段】廃建材を前処理する工程と、前処理工程後に廃建材を加水分解して糖を生成する糖化工程と、糖から発酵により炭素数2乃至4のアルコール又は有機酸を得る発酵工程とを有するアルコール又は有機酸の製造方法において、前処理工程が、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
【選択図】 なし。
【解決手段】廃建材を前処理する工程と、前処理工程後に廃建材を加水分解して糖を生成する糖化工程と、糖から発酵により炭素数2乃至4のアルコール又は有機酸を得る発酵工程とを有するアルコール又は有機酸の製造方法において、前処理工程が、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃建材を用いて、アルコール又は有機酸を製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、廃建材を前処理することにより糖化工程における加水分解反応を促進させた、廃建材を用いたアルコール又は有機酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効利用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。特に、次世代自動車燃料としても注目されるエタノールをバイオマスから製造する技術に注目が集まっている。
収集したバイオマス原料を、加水分解等の糖化工程により糖類に分解した後、微生物による発酵によりエタノールや有機酸に変換して、エネルギーや化学原料として利用する研究が進められている。
【0003】
一般に、バイオマスからエタノール等を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。その他にも、バガスや稲わらのような草木系バイオマス、木材チップ等の木質系バイオマス等のセルロース系資源も原料として用いられている。
【0004】
上述のようなバイオマスの中で、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質は、本来の用途は食用資源である。これらの食用資源を長期的、安定的に工業用利用資源とすることは、今後生じる人口増加問題と拮抗するため好ましくない。従って、将来的に有用な資源と考えられるのは、草木系バイオマスや木質系バイオマスのようなセルロース系資源である。
【0005】
木質系バイオマスを用いて硫酸等の酸で加水分解し、糖からエタノール等の発酵製品を製造することは従来行われている。木材もこれに含まれるが、加工されていない木材チップが主な対象であった。
【0006】
しかしながら、木質系バイオマスには相当量の加工された木材が含まれているにもかかわらず、これらの加工木材はエタノール等の製造における原料としては有効に活用されていない。
また、一般にバイオマスからエタノール等を製造する場合、原料の収集が困難であるという問題点もある。
【0007】
上記のような問題点から、エタノール等製造の原料として、加工された木材を多く含む廃建材を用いることが有望であると考えられる。
現在、日本では年間約2400万トンの木質建材が生産されている。これらの木質建材は、建築や、家具等への加工に使用される際、全てが有効に使用されるわけではなく、端材等が大量に廃棄されている。また、建築物取り壊し後の建材や、使用後の家具等は有効利用されることなく、廃棄されることが多い。
このような廃建材は、大量に排出され、収集が容易であり、また資源の再利用という観点からもバイオマス資源として非常に有望である。
【0008】
木質建材の生産量を見ると、合板、パーティクルボード、ファイバーボードなど加工木材の割合は50%程度に達している。廃建材をエタノール等製造の原料として用いる場合、これら加工木材からより多くの糖を抽出することが発酵製品の収率を上げるうえでの課題となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、廃建材、特に加工木材を原料として用いた場合、加工されていない木材チップ等に比べて、糖化工程の加水分解反応にばらつきが生じたり、発酵阻害物質が溶出したりして、結果としてアルコールや有機酸の収率が悪くなるという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、廃建材を原料とし、加水分解して得られる糖から、発酵によりエタノール及び有機酸を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、廃建材中に含まれる接着剤、塗料、防腐剤等の不純物及び廃建材中の含水率に着目し、以下の知見を得た。
加水分解率はpHに依存するが、接着剤等の不純物が加水分解反応において酸と反応することにより、pHの上昇を引き起こし、加水分解反応を抑制する。また、廃建材中に接着剤や塗料等が含まれるため、酸が浸透しにくく、酸濃度の分布にばらつきが生じやすい。これらの要因により、糖の収率が低下したり、部分的な過分解によって発酵阻害物質であるフルフラール等の生産量が増加する。
【0012】
また、廃建材は、通常含水率が数%〜20%程度と乾燥している。このような含水率の低い基質を用いて加水分解反応を行う場合、酸が浸透するのに一定の時間を要する。また、熱移動や物質移動が円滑に行われないため、酸濃度及び温度の分布が均一にならず、結果的に加水分解率の低下を引き起こす。
【0013】
そこで、さらに糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含む前処理工程を設けることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、廃建材を前処理する工程と、前処理工程後に廃建材を加水分解して糖を生成する糖化工程と、糖から発酵により炭素数2乃至4のアルコール又は有機酸を得る発酵工程とを有するアルコール又は有機酸の製造方法において、前処理工程が、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において廃建材とは、木質廃棄物のうち廃棄木質建材のことであり、例として、製品に加工される際に出る端材のように有効に活用されないまま廃棄処分とされる製品製造工程残材、建築物を解体した後に廃棄される解体家屋残材、家具等に使用された後ごみとして廃棄される一般ゴミ木質廃棄物、廃パレット、廃梱包材等が挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法において、原料となる廃建材である廃棄木質建材としては、例えば、合板、集成材、製材品、ファイバーボード、パーティクルボード、薬品処理木材等が挙げられる。本発明の製造方法においては、これらの木質建材を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の製造方法に用いられる原料としては、上記のような木質建材のうち、合板、ファイバーボード、パーティクルボードのような加工木材が特に好ましい。このうち、特に生産量が多いのは合板であり、合板の中でも生産量の多い規格は、タイプI及びタイプIIである。
ここで、合板のタイプI及びタイプIIとは、合板の接着層の耐水性によってされた分類である。タイプIは、煮沸繰り返し試験又はスチーミング処理試験に合格したものである。煮沸繰り返し試験とは、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60℃±3℃で20時間乾燥し、さらに沸騰水中に4時間浸漬し、室温の水中で冷ました後、ぬれたままで行う接着力試験である。スチーミング処理試験とは、試験片を室温の水中に2時間浸漬した後、120℃±2℃で3時間水蒸気処理をし、これを室温の水中で冷ました後、ぬれたままの状態で行う接着力試験である。屋内で使用される構造用合板、コンクリート型枠用合板などにはタイプIが要求される。
タイプIIは、温冷水浸漬試験に合格したものである。温冷水浸漬試験とは、試験片を60±3℃の温水中に3時間浸漬した後、室温水中で冷まし、ぬれたままで行う接着力試験である。タイプIIの合板の使用場所は主に室内で、湿気が少し多い場所でもある程度使用に耐えるとされている。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる廃建材には、通常、接着剤、塗料、防腐剤等の不純物が含まれている。
接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共縮合樹脂等が挙げられる。木質建材のうち、例えば、合板には4〜10%、パーティクルボードには6〜12%の接着剤が含まれている。合板のうち、タイプIにはユリアメラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂等が、タイプIIにはユリア樹脂、メラミン樹脂等が主に用いられている。
塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ボイル油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、クレオソート油、フェノール類、CCA(クロム、銅、ヒ素の略である)が挙げられる。このうち、CCAについては、近年使用制限が進んでいるが、微量に含まれている場合がある。
染色剤としては、直接染料、酸性染料等が挙げられる。
漂白剤としては、例えば、塩素系、過酸化物系、水素化化合物系、硫黄化合物形のものが挙げられる。
【0018】
本発明の製造方法は、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材の前処理工程が、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とする。糖化工程における加水分解反応を促進することによって、酸の使用量に対しての加水分解率が向上し、糖の収率が上昇する。また、同程度の加水分解率を得るために使用する酸の量を削減することができる。
【0019】
蒸煮又はスチーミングにより加水分解反応が促進される理由としては、廃建材中に含まれる接着剤、塗料、防腐剤等を溶出して除去できることが挙げられる。上述したように、廃建材中に含まれる接着剤等は、pHの上昇により、糖化工程における加水分解反応を阻害するので、接着剤等を除去することは、糖の収率を向上させるうえで好ましいのである。これらの接着剤等は、水又はアルコール水溶液に対して可溶性であるものが多く、蒸煮又はスチーミングすることによって、一部を除去することができる。
【0020】
また、蒸煮又はスチーミングにより加水分解反応が促進される理由として、廃建材の含水率が増加することも挙げられる。上述したように、廃建材は含水率が数%〜20%程度と乾燥しており、酸の浸透に時間を要したり、酸濃度や温度が均一になりにくいため加水分解率が低下する。従って、含水率を増加させることは、加水分解反応を促進させ、糖の収率を向上させるために好ましい。
【0021】
本明細書において蒸煮とは、水又は水溶液を用いて、原料の廃建材を加熱することをいう。この際、水又はアルコール水溶液を用いることが好ましく、温水又は温エタノール水溶液を用いることがさらに好ましい。蒸煮工程に用いる温水又は温エタノール水溶液の容量としては、原料である廃建材の重量の1〜5倍の容量が好ましい。また、蒸煮時間は5〜60分が好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、前処理工程で蒸煮を行った後、蒸煮処理物を濾過により固液分離することが好ましい。これにより、蒸煮によって溶液に溶出した接着剤等の不純物を効果的に除去できるからである。濾過の方法としては例えば、自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
【0023】
本発明の製造方法において、蒸煮工程に用いる温水又は温エタノール水溶液の温度としては、80〜160℃であることが好ましく、さらに好ましくは、120〜130℃であることが望ましい。これは温度が80℃より低いと接着剤等の溶出が十分に行われず、また、含水率の増加に時間がかかるからであり、160℃より高いと必要な糖まで溶出してしまうことがあるからである。
【0024】
本発明の製造方法において、蒸煮工程で用いる温水、又は温エタノール水溶液のpHは、5〜10であることが好ましい。これは、pHが5より小さいと、酸加水分解が進行することがあり、必要な糖まで溶出されることがあるからであり、また、pHが高くなるほど接着剤等の除去効果は大きくなるが、pHが10より大きくなると、pHを調整するために使用するアルカリ、及び次の加水分解で使用する酸の消費量が増加しコストが高くなるからである。
【0025】
本明細書においてスチーミングとは、原料の廃建材を、大気圧以上の蒸気雰囲気下にさらすことをいう。圧力としては、1〜10kg/cm2(98〜980kPa)、特に2〜5kg/cm2(196〜490kPa)が好ましい。蒸気の温度は、100〜180℃、特に120〜150℃が好ましい。これは短時間で廃建材の含水率を均一に高めることができるからである。
【0026】
本発明の製造方法においては、前処理工程において、廃建材の含水率を50〜80%に調整することが好ましい。上述のように廃建材の含水率は、通常数%〜20%であり、これを増加させることにより、糖化工程の加水分解反応を促進させることができるからである。含水率が50%より小さいと、糖化工程において酸が浸透しにくく酸濃度が均一にならないため好ましくなく、80%より大きくするには糖濃度が低くなり、経済性が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
含水率は例えば以下の方法により測定する。すなわち、試料片を80〜110℃のエアバスで1昼夜または恒量になるまで乾燥し、前後の重量比から下記の式により含水率を求める。
含水率(%)=1−(乾燥後重量(g))/(乾燥前重量(g))
【0027】
本発明の製造方法において、糖化工程とは、前処理を行った廃建材を加水分解し、セルロースから単糖〜2糖程度までの糖に分解する工程をいう。加水分解法としては、従来公知の方法を用いることができるが、特に酸加水分解法が好ましく用いられる。酸加水分解法に用いる酸としては、硫酸を用いることが特に好ましい。
【0028】
本発明の製造方法において、発酵工程とは、糖化工程で得られた単糖〜2糖程度までの糖から微生物による発酵によってエタノールや有機酸を得る工程をいう。発酵に用いられる微生物としては、酵母や細菌が例として挙げられるが、遺伝子組み替え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組み替え微生物とは、エタノール等への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、エタノール等への発酵を可能にしたものである。この遺伝子組み替え微生物としては、例としてアルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法において、発酵工程で得られる発酵生産物は、炭素数2〜4のアルコール又は有機酸である。炭素数2〜4のアルコールとしては、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、エタノールが最も好ましい。有機酸としては、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、コハク酸等が挙げられ、乳酸が最も好ましい。
【0030】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料の含水率は10%であった。この原料の重量に対して5倍の容量の温水に浸し、126℃で10分間煮沸した(蒸煮工程)。次に、蒸煮処理物を吸引濾過により液と分離した(濾過工程)。蒸煮処理物の含水率は60%であった。
糖化工程;濾別した蒸煮処理物を、3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行い、糖を得た。
乾燥原料100gから得られた還元糖量(総還元糖収量)は12gであった。また、加水分解後、イオンクロマトグラフィー法により測定すると、加水分解液中のアンモニア性窒素含量は2000ppmであった。
【0032】
(比較例1)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料をそのまま次の糖化工程に使用した。
糖化工程;3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行い、糖を得た。
総還元糖収量は10gであった。
また、加水分解後、イオンクロマトグラフィー法により測定すると、加水分解液中のアンモニア性窒素含量は5000ppmであった。
【0033】
実施例1と比較例1を比較すると、前処理工程で蒸煮を行った実施例1において、総還元糖収量が20%向上した。このとき、加水分解液中のアンモニア性窒素の含量は、比較例1では5000ppmであったのに対して、実施例1では、2000ppmと減少していた。これは、原料のラワン合板中に含まれていたユリア樹脂のアンモニア成分が、蒸煮によって除去されたことを意味する。さらに、実施例1では、原料の含水率は、蒸煮を行うことによって10%から60%に向上した。従って、前処理工程で蒸煮を行うことにより、不純物を除去し、含水率を向上させることによって、糖化工程における加水分解反応を促進し、糖収量が向上することが明らかになった。
【0034】
(実施例2)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料の重量に対して5倍の容量の温水に浸し、126℃で10分間煮沸した(蒸煮工程)。次に、蒸煮処理物を吸引濾過により液と分離した(濾過工程)。
糖化工程;濾別した蒸煮処理物を、3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行った。この加水分解液を、Ca(OH)2を用いて、中性域に調整した。
発酵工程;中和した加水分解液に栄養塩を与え、アルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌を接種して、35℃、100r/minで40時間アルコール発酵を行った。この遺伝子組み替え大腸菌は、グルコース、マンノース、ガラクトース等の六炭糖及びキシロース、アラビノース等の五炭糖をエタノールに変換する能力を有する。還元糖100gあたりの得られたアルコール量をエタノール収量と表すと、エタノール収量は50gであった。
【0035】
(比較例2)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料をそのまま次の糖化工程に使用した。
糖化工程;3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行った。この加水分解液を、Ca(OH)2を用いて、中性域に調整した。
発酵工程;中和した加水分解液に栄養塩を与え、アルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌を接種して、35℃、100r/minで40時間アルコール発酵を行った。
還元糖100gあたりの得られたアルコール量をエタノール収量と表すと、エタノール収量は26gであった。
【0036】
実施例2と比較例2を比較すると、前処理工程で蒸煮を行った実施例2において、エタノール収量が約2倍に向上した。従って、前処理工程で蒸煮を行うことにより、糖化工程における加水分解反応を促進して、還元糖の量のみならず還元糖中の単糖の割合が向上したこと、及び発酵を阻害する不純物量が減少したことによって、発酵工程の収率が大幅に向上したことが明らかとなった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法を用いることにより、バイオマス原料として収集の容易な廃建材を用いて、蒸煮又はスチーミングの前処理を行うことにより、収率良く糖化を行い、糖から発酵によりエタノール及び有機酸を効率的に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃建材を用いて、アルコール又は有機酸を製造する方法に関するものである。さらに詳しくは、廃建材を前処理することにより糖化工程における加水分解反応を促進させた、廃建材を用いたアルコール又は有機酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化対策や、廃棄物の有効利用の観点から、植物資源を原料とするバイオマスの利用が注目されている。特に、次世代自動車燃料としても注目されるエタノールをバイオマスから製造する技術に注目が集まっている。
収集したバイオマス原料を、加水分解等の糖化工程により糖類に分解した後、微生物による発酵によりエタノールや有機酸に変換して、エネルギーや化学原料として利用する研究が進められている。
【0003】
一般に、バイオマスからエタノール等を製造するための原料としては、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質が多く用いられている。その他にも、バガスや稲わらのような草木系バイオマス、木材チップ等の木質系バイオマス等のセルロース系資源も原料として用いられている。
【0004】
上述のようなバイオマスの中で、サトウキビ等の糖質、トウモロコシ等のデンプン質は、本来の用途は食用資源である。これらの食用資源を長期的、安定的に工業用利用資源とすることは、今後生じる人口増加問題と拮抗するため好ましくない。従って、将来的に有用な資源と考えられるのは、草木系バイオマスや木質系バイオマスのようなセルロース系資源である。
【0005】
木質系バイオマスを用いて硫酸等の酸で加水分解し、糖からエタノール等の発酵製品を製造することは従来行われている。木材もこれに含まれるが、加工されていない木材チップが主な対象であった。
【0006】
しかしながら、木質系バイオマスには相当量の加工された木材が含まれているにもかかわらず、これらの加工木材はエタノール等の製造における原料としては有効に活用されていない。
また、一般にバイオマスからエタノール等を製造する場合、原料の収集が困難であるという問題点もある。
【0007】
上記のような問題点から、エタノール等製造の原料として、加工された木材を多く含む廃建材を用いることが有望であると考えられる。
現在、日本では年間約2400万トンの木質建材が生産されている。これらの木質建材は、建築や、家具等への加工に使用される際、全てが有効に使用されるわけではなく、端材等が大量に廃棄されている。また、建築物取り壊し後の建材や、使用後の家具等は有効利用されることなく、廃棄されることが多い。
このような廃建材は、大量に排出され、収集が容易であり、また資源の再利用という観点からもバイオマス資源として非常に有望である。
【0008】
木質建材の生産量を見ると、合板、パーティクルボード、ファイバーボードなど加工木材の割合は50%程度に達している。廃建材をエタノール等製造の原料として用いる場合、これら加工木材からより多くの糖を抽出することが発酵製品の収率を上げるうえでの課題となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、廃建材、特に加工木材を原料として用いた場合、加工されていない木材チップ等に比べて、糖化工程の加水分解反応にばらつきが生じたり、発酵阻害物質が溶出したりして、結果としてアルコールや有機酸の収率が悪くなるという問題があった。
【0010】
従って、本発明は、廃建材を原料とし、加水分解して得られる糖から、発酵によりエタノール及び有機酸を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、廃建材中に含まれる接着剤、塗料、防腐剤等の不純物及び廃建材中の含水率に着目し、以下の知見を得た。
加水分解率はpHに依存するが、接着剤等の不純物が加水分解反応において酸と反応することにより、pHの上昇を引き起こし、加水分解反応を抑制する。また、廃建材中に接着剤や塗料等が含まれるため、酸が浸透しにくく、酸濃度の分布にばらつきが生じやすい。これらの要因により、糖の収率が低下したり、部分的な過分解によって発酵阻害物質であるフルフラール等の生産量が増加する。
【0012】
また、廃建材は、通常含水率が数%〜20%程度と乾燥している。このような含水率の低い基質を用いて加水分解反応を行う場合、酸が浸透するのに一定の時間を要する。また、熱移動や物質移動が円滑に行われないため、酸濃度及び温度の分布が均一にならず、結果的に加水分解率の低下を引き起こす。
【0013】
そこで、さらに糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含む前処理工程を設けることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、廃建材を前処理する工程と、前処理工程後に廃建材を加水分解して糖を生成する糖化工程と、糖から発酵により炭素数2乃至4のアルコール又は有機酸を得る発酵工程とを有するアルコール又は有機酸の製造方法において、前処理工程が、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において廃建材とは、木質廃棄物のうち廃棄木質建材のことであり、例として、製品に加工される際に出る端材のように有効に活用されないまま廃棄処分とされる製品製造工程残材、建築物を解体した後に廃棄される解体家屋残材、家具等に使用された後ごみとして廃棄される一般ゴミ木質廃棄物、廃パレット、廃梱包材等が挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法において、原料となる廃建材である廃棄木質建材としては、例えば、合板、集成材、製材品、ファイバーボード、パーティクルボード、薬品処理木材等が挙げられる。本発明の製造方法においては、これらの木質建材を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の製造方法に用いられる原料としては、上記のような木質建材のうち、合板、ファイバーボード、パーティクルボードのような加工木材が特に好ましい。このうち、特に生産量が多いのは合板であり、合板の中でも生産量の多い規格は、タイプI及びタイプIIである。
ここで、合板のタイプI及びタイプIIとは、合板の接着層の耐水性によってされた分類である。タイプIは、煮沸繰り返し試験又はスチーミング処理試験に合格したものである。煮沸繰り返し試験とは、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60℃±3℃で20時間乾燥し、さらに沸騰水中に4時間浸漬し、室温の水中で冷ました後、ぬれたままで行う接着力試験である。スチーミング処理試験とは、試験片を室温の水中に2時間浸漬した後、120℃±2℃で3時間水蒸気処理をし、これを室温の水中で冷ました後、ぬれたままの状態で行う接着力試験である。屋内で使用される構造用合板、コンクリート型枠用合板などにはタイプIが要求される。
タイプIIは、温冷水浸漬試験に合格したものである。温冷水浸漬試験とは、試験片を60±3℃の温水中に3時間浸漬した後、室温水中で冷まし、ぬれたままで行う接着力試験である。タイプIIの合板の使用場所は主に室内で、湿気が少し多い場所でもある程度使用に耐えるとされている。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる廃建材には、通常、接着剤、塗料、防腐剤等の不純物が含まれている。
接着剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共縮合樹脂等が挙げられる。木質建材のうち、例えば、合板には4〜10%、パーティクルボードには6〜12%の接着剤が含まれている。合板のうち、タイプIにはユリアメラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂等が、タイプIIにはユリア樹脂、メラミン樹脂等が主に用いられている。
塗料としては、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ボイル油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、クレオソート油、フェノール類、CCA(クロム、銅、ヒ素の略である)が挙げられる。このうち、CCAについては、近年使用制限が進んでいるが、微量に含まれている場合がある。
染色剤としては、直接染料、酸性染料等が挙げられる。
漂白剤としては、例えば、塩素系、過酸化物系、水素化化合物系、硫黄化合物形のものが挙げられる。
【0018】
本発明の製造方法は、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材の前処理工程が、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とする。糖化工程における加水分解反応を促進することによって、酸の使用量に対しての加水分解率が向上し、糖の収率が上昇する。また、同程度の加水分解率を得るために使用する酸の量を削減することができる。
【0019】
蒸煮又はスチーミングにより加水分解反応が促進される理由としては、廃建材中に含まれる接着剤、塗料、防腐剤等を溶出して除去できることが挙げられる。上述したように、廃建材中に含まれる接着剤等は、pHの上昇により、糖化工程における加水分解反応を阻害するので、接着剤等を除去することは、糖の収率を向上させるうえで好ましいのである。これらの接着剤等は、水又はアルコール水溶液に対して可溶性であるものが多く、蒸煮又はスチーミングすることによって、一部を除去することができる。
【0020】
また、蒸煮又はスチーミングにより加水分解反応が促進される理由として、廃建材の含水率が増加することも挙げられる。上述したように、廃建材は含水率が数%〜20%程度と乾燥しており、酸の浸透に時間を要したり、酸濃度や温度が均一になりにくいため加水分解率が低下する。従って、含水率を増加させることは、加水分解反応を促進させ、糖の収率を向上させるために好ましい。
【0021】
本明細書において蒸煮とは、水又は水溶液を用いて、原料の廃建材を加熱することをいう。この際、水又はアルコール水溶液を用いることが好ましく、温水又は温エタノール水溶液を用いることがさらに好ましい。蒸煮工程に用いる温水又は温エタノール水溶液の容量としては、原料である廃建材の重量の1〜5倍の容量が好ましい。また、蒸煮時間は5〜60分が好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、前処理工程で蒸煮を行った後、蒸煮処理物を濾過により固液分離することが好ましい。これにより、蒸煮によって溶液に溶出した接着剤等の不純物を効果的に除去できるからである。濾過の方法としては例えば、自然濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過等が挙げられ、いずれの方法を用いてもよい。
【0023】
本発明の製造方法において、蒸煮工程に用いる温水又は温エタノール水溶液の温度としては、80〜160℃であることが好ましく、さらに好ましくは、120〜130℃であることが望ましい。これは温度が80℃より低いと接着剤等の溶出が十分に行われず、また、含水率の増加に時間がかかるからであり、160℃より高いと必要な糖まで溶出してしまうことがあるからである。
【0024】
本発明の製造方法において、蒸煮工程で用いる温水、又は温エタノール水溶液のpHは、5〜10であることが好ましい。これは、pHが5より小さいと、酸加水分解が進行することがあり、必要な糖まで溶出されることがあるからであり、また、pHが高くなるほど接着剤等の除去効果は大きくなるが、pHが10より大きくなると、pHを調整するために使用するアルカリ、及び次の加水分解で使用する酸の消費量が増加しコストが高くなるからである。
【0025】
本明細書においてスチーミングとは、原料の廃建材を、大気圧以上の蒸気雰囲気下にさらすことをいう。圧力としては、1〜10kg/cm2(98〜980kPa)、特に2〜5kg/cm2(196〜490kPa)が好ましい。蒸気の温度は、100〜180℃、特に120〜150℃が好ましい。これは短時間で廃建材の含水率を均一に高めることができるからである。
【0026】
本発明の製造方法においては、前処理工程において、廃建材の含水率を50〜80%に調整することが好ましい。上述のように廃建材の含水率は、通常数%〜20%であり、これを増加させることにより、糖化工程の加水分解反応を促進させることができるからである。含水率が50%より小さいと、糖化工程において酸が浸透しにくく酸濃度が均一にならないため好ましくなく、80%より大きくするには糖濃度が低くなり、経済性が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
含水率は例えば以下の方法により測定する。すなわち、試料片を80〜110℃のエアバスで1昼夜または恒量になるまで乾燥し、前後の重量比から下記の式により含水率を求める。
含水率(%)=1−(乾燥後重量(g))/(乾燥前重量(g))
【0027】
本発明の製造方法において、糖化工程とは、前処理を行った廃建材を加水分解し、セルロースから単糖〜2糖程度までの糖に分解する工程をいう。加水分解法としては、従来公知の方法を用いることができるが、特に酸加水分解法が好ましく用いられる。酸加水分解法に用いる酸としては、硫酸を用いることが特に好ましい。
【0028】
本発明の製造方法において、発酵工程とは、糖化工程で得られた単糖〜2糖程度までの糖から微生物による発酵によってエタノールや有機酸を得る工程をいう。発酵に用いられる微生物としては、酵母や細菌が例として挙げられるが、遺伝子組み替え微生物も好ましく用いられる。遺伝子組み替え微生物とは、エタノール等への変換に必要な酵素遺伝子を有していない微生物に、遺伝子工学技術によりこれら遺伝子を導入し、エタノール等への発酵を可能にしたものである。この遺伝子組み替え微生物としては、例としてアルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法において、発酵工程で得られる発酵生産物は、炭素数2〜4のアルコール又は有機酸である。炭素数2〜4のアルコールとしては、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられ、エタノールが最も好ましい。有機酸としては、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、コハク酸等が挙げられ、乳酸が最も好ましい。
【0030】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料の含水率は10%であった。この原料の重量に対して5倍の容量の温水に浸し、126℃で10分間煮沸した(蒸煮工程)。次に、蒸煮処理物を吸引濾過により液と分離した(濾過工程)。蒸煮処理物の含水率は60%であった。
糖化工程;濾別した蒸煮処理物を、3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行い、糖を得た。
乾燥原料100gから得られた還元糖量(総還元糖収量)は12gであった。また、加水分解後、イオンクロマトグラフィー法により測定すると、加水分解液中のアンモニア性窒素含量は2000ppmであった。
【0032】
(比較例1)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料をそのまま次の糖化工程に使用した。
糖化工程;3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行い、糖を得た。
総還元糖収量は10gであった。
また、加水分解後、イオンクロマトグラフィー法により測定すると、加水分解液中のアンモニア性窒素含量は5000ppmであった。
【0033】
実施例1と比較例1を比較すると、前処理工程で蒸煮を行った実施例1において、総還元糖収量が20%向上した。このとき、加水分解液中のアンモニア性窒素の含量は、比較例1では5000ppmであったのに対して、実施例1では、2000ppmと減少していた。これは、原料のラワン合板中に含まれていたユリア樹脂のアンモニア成分が、蒸煮によって除去されたことを意味する。さらに、実施例1では、原料の含水率は、蒸煮を行うことによって10%から60%に向上した。従って、前処理工程で蒸煮を行うことにより、不純物を除去し、含水率を向上させることによって、糖化工程における加水分解反応を促進し、糖収量が向上することが明らかになった。
【0034】
(実施例2)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料の重量に対して5倍の容量の温水に浸し、126℃で10分間煮沸した(蒸煮工程)。次に、蒸煮処理物を吸引濾過により液と分離した(濾過工程)。
糖化工程;濾別した蒸煮処理物を、3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行った。この加水分解液を、Ca(OH)2を用いて、中性域に調整した。
発酵工程;中和した加水分解液に栄養塩を与え、アルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌を接種して、35℃、100r/minで40時間アルコール発酵を行った。この遺伝子組み替え大腸菌は、グルコース、マンノース、ガラクトース等の六炭糖及びキシロース、アラビノース等の五炭糖をエタノールに変換する能力を有する。還元糖100gあたりの得られたアルコール量をエタノール収量と表すと、エタノール収量は50gであった。
【0035】
(比較例2)
前処理工程;ラワン合板タイプ2を平均粒子系1mmに粉砕した。この原料をそのまま次の糖化工程に使用した。
糖化工程;3質量%の硫酸を用い、150℃で10分間、加水分解反応を行った。この加水分解液を、Ca(OH)2を用いて、中性域に調整した。
発酵工程;中和した加水分解液に栄養塩を与え、アルコール発酵性を有する遺伝子組み替え大腸菌を接種して、35℃、100r/minで40時間アルコール発酵を行った。
還元糖100gあたりの得られたアルコール量をエタノール収量と表すと、エタノール収量は26gであった。
【0036】
実施例2と比較例2を比較すると、前処理工程で蒸煮を行った実施例2において、エタノール収量が約2倍に向上した。従って、前処理工程で蒸煮を行うことにより、糖化工程における加水分解反応を促進して、還元糖の量のみならず還元糖中の単糖の割合が向上したこと、及び発酵を阻害する不純物量が減少したことによって、発酵工程の収率が大幅に向上したことが明らかとなった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法を用いることにより、バイオマス原料として収集の容易な廃建材を用いて、蒸煮又はスチーミングの前処理を行うことにより、収率良く糖化を行い、糖から発酵によりエタノール及び有機酸を効率的に製造することができる。
Claims (9)
- 廃建材を前処理する工程と、前処理工程後に廃建材を加水分解して糖を生成する糖化工程と、糖から発酵により炭素数2乃至4のアルコール又は有機酸を得る発酵工程とを有するアルコール又は有機酸の製造方法において、前処理工程が、糖化工程における加水分解反応を促進させるために、廃建材を蒸煮又はスチーミングすることを含むことを特徴とするアルコール又は有機酸の製造方法。
- 加水分解反応の促進が、接着剤、塗料、防腐剤、染色剤及び漂白剤から選ばれる1種以上を除去することにより行われるものである請求項1に記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 加水分解反応の促進が、廃建材中の含水率を増加させることにより行われるものである請求項1又は2に記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 前処理工程が、温水又は温エタノール水溶液による蒸煮工程及び蒸煮処理物を固液分離する濾過工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 蒸煮工程で用いる温水又は温エタノール水溶液の温度が、80〜160℃であることを特徴とする請求項4に記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 蒸煮工程で用いる温水又は温エタノール水溶液のpHが5〜10であることを特徴とする請求項4又は5に記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- スチーミングが、大気圧以上の蒸気雰囲気下にさらすものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 前処理工程において、廃建材の含水率を50〜80%に調整することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
- 発酵工程の発酵生産物が、エタノール又は乳酸であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のアルコール又は有機酸の製造方法。
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