JP2006050986A - 飲料用の香料安定保持剤及び飲料用の乳化香料製剤 - Google Patents

飲料用の香料安定保持剤及び飲料用の乳化香料製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 飲料中に香料を安定して保持できると共に、飲料に嗜好性の高い混濁を付与できる飲料用の香料安定保持剤を提供する。
【解決手段】 本発明の飲料用の香料安定保持剤は、平均重合度3〜10のポリグリセリンと、炭素数2〜18の脂肪酸とをエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなり、20℃における屈折率が1.450〜1.465であり、かつ水酸基価が15mgKOH/g以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、飲料に香料を安定して保持するために使用される飲料用の香料安定保持剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、水性の飲料中に、油溶性である香料を安定して保持させるために、比重調整剤としての機能を発揮すると共に、飲料に混濁を付与する混濁剤としての機能をも発揮する飲料用の香料安定保持剤に関する。
さらに、本発明は、この香料安定保持剤を含有する飲料用の乳化香料製剤にも関する。
通常、飲料の製造に当たって、その嗜好性を高めるために香料が用いられている。香料は油溶性成分よりなるため、水性材料よりなる飲料中に、直接には含有させることはできない。そこで、一般的には、予め、乳化剤を使用して香料を水に乳化した状態とした後、水性材料への添加を行っている。しかし、香料の比重が水の比重よりも小さいため、香料のみを通常の乳化剤によって乳化した乳化香料製剤として飲料へ添加する場合には、飲料の保存中に、いわゆる、オイルオフを生じたり、ネックリング(飲料の保存時に、液面に浮遊した物質がビンの首の壁面にリング状に付着すること)を生ずることがある。
このような現象を解消又は低減するため、比重調整剤を添加して、香料の比重を、飲料の比重よりも0.015〜0.02程度小さくなるように調整した後、乳化香料製剤とし、飲料に添加する方法が採用されている(特許文献1)。
このような比重調整剤は、一般に、大きい比重を有し、かつ飲料を摂取する人に対して安全であることが要求される。比重調整剤としては、これまで、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB:CAS27216-37-1)が一般的に用いられてきた(非特許文献1)。SAIBは、酢酸及びイソ酪酸が約2:6の比でエステル化されたショ糖であり、ほとんど無色、無味であり、比重(25℃において)は1.146と大きく、飲料に添加される香料をよく溶解するという機能を有する。
飲料は、適度な混濁を伴うことによって、見た目の美味しさが引き出され、売れ行きに影響を与えると言われている。混濁は、飲料中の油相と水相との屈折率の差が大きい場合に、光の屈折散乱によって引き起こされる。
このような混濁に関連して、SAIBは、その屈折率(20℃において)が1.454であり、水の屈折率(20℃において)1.330に比して大きく、適度な混濁を与えることができるため、良好な混濁剤としても作用する。(非特許文献2)
しかし、SAIBは、室温において約20000Pa.sという非常に高い粘度を有するため、純粋な形で使用することが困難である。そのため、使用に当たっては、1)60℃以上の高温に加熱して流動性を得る、2)エタノールを添加して流動性を得る、3)テルペン油を添加して流動性を得る等の手段が必要である。これらの手段を利用する場合、例えば、1)では、香料が、一般に、容易に揮発する性質を有することを考慮すると、60℃以上に加熱した状態のSAIBへの香料の混合は、非常に困難である;2)では、エタノールの添加は、非アルコール系飲料での使用には不向きである;また、3)では、テルペン油が酸化され易いことに加え、テルペン油自体、強い芳香を有するために、系統の違う香料を使用する場合には、利用できない等の問題がある。(特許文献2)
また、SAIB、香料、水及び乳化剤を混合して得られた乳化香料製剤を使用する場合、SAIBが沈殿することがある。(特許文献1)
このため、SAIB、香料、水及び乳化剤に加えて、さらに、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)を用いてSAIBに流動性を与え、沈殿が起こり難い製剤処方とすることが提案されている。(特許文献1)
この場合にも、MCTはSAIBに比して屈折率が低く、これらを混合して得られる乳化香料製剤の屈折率は低下することになり、このような乳化香料製剤を添加しても、飲料に、嗜好性の高い混濁を付与することができないとの問題がある。このような問題の解消のため、さらに、エレミ、ダンマル及びロジンの如き混濁剤を別途に添加して、混濁を生じさせる必要があった。
また、低級脂肪酸をグリセリンと反応させることによって得られるエステル、又は低級アルコールをクエン酸と反応させることによって得られるエステルを用いて、SAIBの流動性を増大させる方法が開示されている。(特許文献2)
しかし、これらのエステル類は、一般の油脂に比較して水溶性が高く、乳化後に一部が水相に分布し、乳化に好ましくない影響を与える。
さらに、SAIBを使用せず、脂肪酸のポリグリセリンエステルを用いて、飲料内に香料を安定保持させる方法が開示されている。(特許文献3)
しかし、使用される脂肪酸のポリグリセリンエステルは、ポリグリセリンの水酸基の一部を脂肪酸でエステル化した化合物に限られ、この化合物は苦味が強く、用途に制限があった。
日高 徹 「食品用乳化剤 第2版」 幸書房 1991年 p25,26,91 Eastman Chemical Company 技術資料貼ochSustane SAIB (Sucrose Acetate Isobutyrate) Food Grade, Kosher Product Data Sheet"http://www.eastman.com/ProductCatSQ/techdatasheet.asp?productid=913&familyGMN=71001090 特開平11-178551号公報 特開2002-112748号公報 米国特許第4,093,750号明細書
本発明の目的は、上記の従来の技術における問題を解消し、現在、一般的に比重調整剤として使用されているSAIBと共に使用され、又はSAIBを使用することなく単独で使用されて、飲料に添加される香料を、安定して飲料中に保持することを可能にする比重調整剤として作用すると共に、飲料に適度な混濁を付与する混濁剤としても作用する飲料用の香料安定保持剤を提供することである。
また、本発明の目的は、このような香料安定保持剤を使用して調製した乳化香料製剤を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルが、上記目的の達成に適していることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の目的は次のようにして達成される。
(1)本発明の飲料用の香料安定保持剤は、平均重合度3〜10のポリグリセリンと、炭素数2〜18(以後、単に「C2〜18」と表示する)の脂肪酸とをエステルして得られるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなり、20℃における屈折率が1.450〜1.465であり、かつ水酸基価が15mgKOH/g以下である。
(2)前記(1)において、20℃における屈折率が1.454以上である。
(3)前記(1)又は(2)において、20℃における屈折率が1.462以下である。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、水酸基価が10mgKOH/g以下である。
(5)前記(4)において、水酸基価が4mgKOH/g以下である。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかにおいて、C2〜18脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸よりなる群から選ばれる1又は2以上のものである。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかにおいて、5g(I2)/100g以下のヨウ素価を有するものである。
(8)本発明の飲料用乳化香料製剤は、香料、比重調整剤、水及び乳化剤を含有するものであって、前記比重調整剤として、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤を使用するものである。
(9)前記(8)において、比重調整剤として、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤を、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルを併用したものである。
本発明の飲料用の香料安定保持剤は、平均重合度3〜10のポリグリセリンと、C2〜18の脂肪酸とをエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなり、20℃における屈折率が1.450〜1.465であり、かつ水酸基価が15mgKOH/g以下である。このような本発明の飲料用の香料安定保持剤は、比重が比較的大きいため、SAIBと共に使用され、又はSAIBを使用することなく単独で使用されて、飲料中に香料を安定して保持する比重調整剤として作用する。また、本発明の飲料用の香料安定保持剤は、飲料の製造に使用される際、飲料の味を変化させることはなく、特に、ほとんど苦味を呈することがない。さらに、本発明の飲料用の香料安定保持剤は、飲料に混濁を付与する混濁剤としても作用する。
本発明の香料安定保持剤において、20℃における屈折率の下限が1.454以上である場合、及び20℃における屈折率の上限が1.462以下である場合、これらの香料安定保持剤を使用して製造される飲料に付与される混濁は、飲料製品にとって極めて良好なものである。
本発明の香料安定保持剤において、水酸基価が10mgKOH/g以下である場合には、本発明の香料安定保持剤は、飲料中で使用されても、実質的に苦味を呈することはない。
本発明の香料安定保持剤において、水酸基価が4mgKOH/g以下である場合には、本発明の香料安定保持剤は、飲料中で使用されても、全く苦味を呈することはない。
SAIBが存在する場合には、本発明の香料安定保持剤は、SAIBの流動性を改善するように作用し、SAIBの粘度を下げて、作業性を改善する。このような香料安定保持剤が、比重調整剤の一部として配合された乳化香料製剤は、飲料に添加された時点で、香料が安定して保持され、かつ、嗜好性の高い混濁が付与された飲料を提供することができる。
また、本発明の香料安定保持剤は、乳化香料製剤の調製における比重調整剤として単独で使用される場合においても、飲料中における香料の安定した保持及び飲料中における良好な混濁を提供できるため、高価なSAIBの使用を回避することが可能である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明の飲料用の香料安定保持剤について説明する。
ポリグリセリンは、グリセリン重合体の総称であり、その代表的な構造は、グリセリンの第1級水酸基同士が脱水縮合した下記の一般式で示される直鎖状重合体として表される。
一般式
Figure 2006050986
ポリグリセリンには、この他に、グリセリンの第1級水酸基と第2級水酸基とが脱水縮合した分岐構造物、又は分子内の水酸基同士が脱水縮合した環状構造物などの異性体がある。これら三者の比率は、直鎖状重合体が主成分であるが、製造法や重合度によって差がある。
工業的には、グリセリンの脱水縮合反応、又はグリセリン蒸留残分からの回収によって得られたポリグリセリンが食品用途に使用され、エピクロルヒドリンやグリシドールなどから誘導された高純度品は、分析試薬的な用途に限られて製造されている。ここで、グリセリン蒸留残分からの回収による場合は、ジグリセリンの製造が主であり、従って、大部分のポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応により製造されている。
グリセリンの脱水縮合反応は、逐次的な分子間脱水縮合であり、このような反応で得られるポリグリセリンは、反応条件によって、様々な重合度及び異性体の混合比を有する。従って、ポリグリセリンの重合度は、水酸基価の測定値から算出した平均重合度で表される。ポリグリセリンとしては、平均重合度3〜10のポリグリセリンを使用することができる。
実用的なポリグリセリンは、このような複雑な混合物として提供される。例えば、一般的にヘキサグリセリンと称されるポリグリセリンは、グリセリンから重合度9のノナグリセリンまでの単量体及び重縮合物を含み、その重縮合物においては、前記のような異性体を含む。
本発明の香料安定保持剤は、このようなポリグリセリンと、C2〜18の脂肪酸とをエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルにより構成される。
ここで、香料安定保持剤中にポリグリセリン脂肪酸エステルの部分エステルが多く存在すると、香料安定保持剤が異味、特に苦味を呈してしまうため、食品における使用が制限されてしまう。従って、本発明の香料安定保持剤中のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの水酸基の少なくとも95%以上がエステル化されているものが良く、ポリグリセリンの水酸基の全てが脂肪酸によってエステル化されたポリグリセリン脂肪酸フルエステルが最も好ましい。
具体的には、香料安定保持剤の水酸基価(mgKOH/g)を、ほとんど苦味を呈さない程度である15mgKOH/g以下とする必要があり、実質的に苦味を呈さない程度である10mgKOH/g以下とすることがより好ましく、全く苦味を呈さない4mgKOH/g以下とすることが最も好ましい。
ポリグリセリンとエステル化する脂肪酸は、炭素原子2〜18個を含有するものであり、かつ食品用途に適したものであれば利用可能である。具体的な例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられ、これらの1又は2以上を使用することができる。乳化香料製剤の酸化安定性という観点からは、脂肪酸は飽和脂肪酸がより好ましく、特に、カプリル酸及び/又はカプリン酸が好ましい。
従って、本発明の香料安定保持剤は、5g(I2)/100g以下のヨウ素価を有するものであることが好ましく、さらに好ましくは、3g(I2)/100g以下である。
本発明の飲料用の香料安定保持剤は、エステル部を構成する脂肪酸の組成に関連して屈折率が変化する。
飲料の分野では、比重調整剤に香料を溶解して比重を調整した後、得られた油相に、水及び乳化剤、必要であれば乳化安定剤を加えて乳化香料製剤を調製し、この乳化香料製剤を、飲料を構成する水性材料に添加して飲料とする際、飲料に嗜好性の高い混濁が付与されることが要求される。混濁は、水と油性成分との屈折率の差に関連しており、その差が大きいほど顕著な混濁を与える傾向がある。
従って、本発明の香料安定保持剤の混濁剤としての機能について、SAIBに比して著しく屈折率が低いことは望ましくなく、実用的には、その下限として、20℃における屈折率が1.450以上であることが望ましく、好ましくは、20℃における屈折率は1.454以上であることが好ましい。一方、上限は、20℃における屈折率が1.465以下であることが望ましく、特に1.462以下であることが好ましい。このように、20℃における屈折率が1.450〜1.465の範囲内にあることによって、飲料製品にとって好適な懸濁を提供できる。
本発明の飲料用の香料安定保持剤は比重0.90〜1.15を有しており、香料を含有する乳化香料製剤の比重を、水の比重に近い飲料製品の比重よりもわずかに(0.015〜0.02)小さいものに調整するための比重調整剤として好適である。
本発明の香料安定保持剤を用いて製造される飲料としては、柑橘系のフレーバーを持つ飲料が挙げられる。柑橘油(シトラス類)系の香料としては、天然香料、調合香料のいずれをも使用できる。柑橘油としては、例えば、ミカン油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ユズ油、夏ミカン油等がある。これらは単独で使用され、あるいは2以上を組合せて使用されてもよい。また、これら柑橘油は、該柑橘油に含有されるテルペンの一部又は全部を除去したものも使用される。
一方、本発明の香料安定保持剤、又はSAIBとの混合物は、ほとんど無味、無臭であり、風味の面で他に影響を与えない。従って、上記のような柑橘系飲料に限らず、他の香料にも適用することが可能である。
次に、本発明の飲料用の香料安定保持剤の製造方法について説明する。
構成脂肪酸が炭素数6以上(C6〜)のものであるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる香料安定保持剤は、まず、ポリグリセリンと、1又は2以上のC6〜脂肪酸とを混合した後、エステル反応を行い、その後、触媒の除去、脱色及び脱臭等の精製処理を行うことにより製造される。
また、構成脂肪酸が炭素数6未満(C<6)のものであるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる香料安定保持剤は、まず、ポリグリセリンと、C<6脂肪酸無水物とを混合し、少量の触媒(例えば、酢酸ナトリウム)を添加してエステル化を行い、反応後、触媒及び副生した酸を、常法(例えば、減圧蒸留及び水洗)に従って除去することにより製造される。
さらに、構成脂肪酸が炭素数6以上及び6未満のものの両方よりなるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる香料安定保持剤は、まず、ポリグリセリンとC6〜脂肪酸との混合物を反応させて部分エステルを得た後、さらに、得られた部分エステルにC<6脂肪酸無水物を混合してエステル化させることにより製造される。
次に、本発明の飲料用の乳化香料製剤について説明する。
本発明の飲料用の乳化香料製剤は、香料、比重調整剤、水及び乳化剤を含有するものであり、比重調整剤として、先に説明した本発明の飲料用の香料安定保持剤を使用する。そして、比重調整剤の一部として、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルを併用することもできる。
本発明の飲料用の香料安定保持剤は、比重調整剤であるSAIBと併用して使用される際には、SAIBの流動性を改善する作用をも発揮する。SAIBの流動性改善効果及びSAIBの使用量の低減を考慮すると、本発明の香料安定保持剤は、乳化香料製剤中の比重調整剤の全質量に対して10〜100%の範囲で使用することが好ましい。ここで、比重調整剤の全質量に対して100%とは、SAIB等の比重調整剤を使用せず、本発明の飲料用の香料安定保持剤のみを比重調整剤として使用することを意味する。
次に、本発明の飲料用の乳化香料製剤の調製について説明する。
乳化香料製剤の調製にあたっては、香料に、比重調整剤として本発明の香料安定保持剤を加えた後、適切な乳化剤、必要であれば乳化安定剤及び水を加え、ホモミキサーにて強力に撹拌、乳化して、安定化した乳化香料製剤を得る。上記の如く、比重調整剤の一部としてSAIBを使用することもできる。この場合にも、安定した乳化香料製剤が得られる。必要であれば、高圧ホモジナイザー等を使用して、均一に乳化させ、安定な乳化香料製剤を得ることもできる。
本発明の乳化香料製剤の調製に使用できる乳化剤としては、従来技術において使用されている乳化剤、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン等が挙げられる。また、乳化安定剤としては、デンプン分解物等、デンプン、加工デンプン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム等が挙げられる。乳化安定剤として、アラビアガムを用いることが特に望ましい。
乳化香料製剤には、必要に応じて、従来技術において一般的に使用されている天然色素類(β−カロチン、パプリカ色素、アナトー色素、クロロフィル等)、脂溶性ビタミン類(肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンB2 酪酸エステル、天然ビタミンE混合物等)、多価アルコール類(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、デキストリン、水飴、ショ糖、オリゴ糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース等の糖類)、酸味料(クエン酸、クエン酸ナトリウム等)、酸化防止剤(ビタミンC等)を適宜添加することができる。
本発明の乳化香料製剤の飲料への添加量は、使用目的、混濁及び香りの強弱などを考慮して決定され、好ましくは0.01〜0.5質量%、さらに好ましくは0.05〜0.2質量%で使用される。
前述のように、香料を含む乳化製剤は油溶性であり、飲料は水溶性であるため、これらを混合する際には撹拌装置を使用する。このような装置としては、高圧ホモジナイザーが好適である。これは、液体中に他の液体粒子を細かく分散させて均一なエマルジョンを得る装置であり、混合液を、バネを利用した弁などを通して、極めて狭い空間に、高圧(50〜300kg/cm2)で噴出させて、強い剪断作用によって乳化させる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
飲料用の香料安定保持剤の製造
1)香料安定保持剤Gの製造
平均重合度6の市販ポリグリセリン(含水率約10%)194.2g(0.35モル)、カプリル酸405.8g(2.81モル)を、四つ口フラスコ(容積:1L)に充填し、キシレン50mlを加えて、窒素気流下、230℃において加熱、撹拌し、Dean Stark水分離器を用いて、還流するキシレンと共に留出する水を分離しながら、18時間反応させた。
得られた反応混合物を冷却した後、減圧下(5mmHg)、130℃において、キシレンを完全に留去し、再び冷却した後、活性白土6g、活性炭6gを加え、減圧下(5mmHg)、105℃において1時間撹拌することによって脱色処理を行った。
脱色処理した反応混合物を冷却した後、濾過によって白土及び活性炭を除去して、脱色反応混合物を得た。得られた脱色反応混合物に水蒸気を吹き込みながら、減圧下(2mmHg)、220℃において1時間処理することによって未反応の脂肪酸を除去し、目的とするポリグリセリンのカプリル酸エステルよりなる香料安定保持剤G 450.2gを得た。ポリグリセリンカプリル酸エステルの収率は約85%であった。
2)香料安定保持剤Kの製造
平均重合度10の市販ポリグリセリン(含水率約10%)200g(0.24モル)を、四つ口フラスコ(容積:1L)に充填し、キシレン200mlを加えて、窒素気流下、140℃において加熱、撹拌し、Dean Stark水分離器を用いて、還流するキシレンと共に留出する水約20mlを除去した。ポリグリセリン中の水を十分に除去した後、還流するキシレン約100mlを除去し、続いて、冷却し、無水酢酸338.1g(3.31モル)及び酢酸ナトリウム0.2gを加え、窒素気流下にて撹拌しながら、徐々に昇温した。約95℃から急激な発熱が始まるため、その後は、温度をコントロールして反応系を130℃に保ち、還流しながら、4時間反応させた。
反応器内の内容物を分液ロート(1L)に移し、各回水約300mlにて5回洗浄した。水相が中性であることを確認した後、油相を四つ口フラスコ(1L)に移し、減圧下(5mmHg)、130℃において、キシレン及び酢酸を完全に留去し、再び冷却した後、活性白土3g及び活性炭3gを添加し、減圧下(5mmHg)、105℃において1時間撹拌することによって脱色処理を行った。脱色処理した内容物を冷却した後、濾過によって白土及び活性炭を除去し、目的とするポリグリセリンの酢酸エステルよりなる香料安定保持剤K 262.6gを得た。ポリグリセリン酢酸エステルの収率は約87%であった。
3)香料安定保持剤Oの製造
平均重合度10の市販ポリグリセリン(含水率約10%)250g(0.3モル)及びカプリル酸108.2g(0.75モル)を、四つ口フラスコ(1L)に充填し、キシレン50mlを加えて、窒素気流下、230℃において加熱、撹拌し、Dean Stark水分離器を用いて、還流するキシレンと共に留出する水を分離しながら、反応を8時間行った。
冷却後、無水酢酸334.6g(3.28モル)及び酢酸ナトリウム0.25gを加え、窒素気流下にて撹拌しながら、徐々に昇温した。約95℃から急激な発熱が始まるため、その後は、温度をコントロールして反応系を130℃に保ち、還流しながら、4時間反応させた。
反応器内の内容物を分液ロート(1L)に移し、各回水約300mlにて5回洗浄した。水相が中性であることを確認した後、油相を四つ口フラスコ(1L)に移し、減圧下(5mmHg)、130℃において、キシレン及び酢酸を完全に留去し、再び冷却した後、活性白土4g及び活性炭4gを添加し、減圧下(5mmHg)、105℃において1時間撹拌することによって脱色処理を行った。脱色処理した内容物を冷却した後、濾過によって白土及び活性炭を除去し、目的とするポリグリセリンの酢酸エステルよりなる香料安定保持剤O 356.0gを得た。ポリグリセリン酢酸エステルの収率は約83%であった。
実施例1-1)〜1-3)において得られた香料安定保持剤及びこれら実施例の操作法と同様にして得た他の香料安定保持剤の特性値を表1に示す。
表1において略号A〜Qにて示す香料安定保持剤について、香料安定保持剤G、K及びOは、それぞれ、上記実施例1-1)、実施例1-2)及び実施例1-3)で製造したものであり、香料安定保持剤A、B、C、D、E、F、H、I、L、M及びNは、実施例1-1)と同様の操作法に従って製造したもの、香料安定保持剤J、P及びQは、実施例1-3)と同様の操作法に従って製造したものである。
表1において特性として示した酸価、けん化価、水酸基価、ヨウ素価、比重及び屈折率は、それぞれ、下記の基準法に従って測定したものである。
測定法
酸価:基準油脂分析試験法2.3.1-1996
けん化価:基準油脂分析試験法2.3.2.1-1996
水酸基価:基準油脂分析試験法2.3.6.2-1996
ヨウ素価:基準油脂分析試験法3.3.3-1996
比重:基準油脂分析試験法2.2.2-1996
屈折率:基準油脂分析試験法2.2.3-1996
なお、表中の水酸基価の欄で示す苦味に関連する符号は、下記の意味を有する。
◎:苦味が全く認められない。
○:苦味が実質的に認められない。
△:苦味がほとんど認められない。
×:苦い味がする。
Figure 2006050986
乳化香料製剤の調製及びこの乳化香料製剤を使用した飲料の調製
1)乳化香料製剤の調製
ビーカー(容積:200ml)に、SAIB(イーストマンケミカル社製)23.5g、表1に示す本発明の香料安定保持剤A 61.3g及びオレンジ油15.0gを充填し、混合して、油相を調製した。
別のビーカー(容積:2L)に、アラビアガム250g及び水650gを充填し、混合した後、上記の如く調製しておいた油相を加え、ホモミキサーにて7500rpmで30分間撹拌した。さらに、高圧ホモジナイザーを使用し、150kg/cm2の条件で処理して、乳化香料製剤1を得た。
2)乳化香料製剤の調製
ビーカー(200ml)に、表1に示す本発明の香料安定保持剤K 23.8g、本発明の香料安定保持剤M 61.2g及びオレンジ油15.0gを充填し、混合した。以後は、上記1)と同様に操作を行い、乳化香料製剤11を得た。
3)飲料の調製
グラニュー糖100gにクエン酸2gを添加した後、水を加えて、全量を1000gとした。これに、乳化香料製剤1g(0.1%)を加えて攪拌した後、透明瓶に充填して、80℃にて20分間殺菌し、冷却して飲料を得た。
表2に、実施例2-1)及び-2)において得られた乳化香料製剤(それぞれ、番号「1」及び「11」で示される)、及び実施例2-1)及び-2)と同様の操作法に従って調製した他の乳化香料製剤(番号「2」〜「10」及び「12」〜「17」で示される)の組成を示す。
これらの乳化香料製剤を使用して、実施例2-3)に記載した操作法に従って飲料を調製し、混濁を目視にて確認した後、室温にて3ヶ月保存し、経時変化を観察した。調製した飲料の混濁及び安定性に関する評価結果を、表2に併せて示している。
Figure 2006050986
比較例
比較のため、下記のようにして乳化香料製剤を調製した。
1)ビーカー(200ml)に、SAIB(イーストマンケミカル社製)46.3g及びMCT(日清オイリオ社製)38.7g及びオレンジ油15.0gを充填し、混合して、油相を調製した。
別に、ビーカー(2L)に、アラビアガム250g及び水650gを充填し、混合した後、上記の如く調製しておいた油相を添加し、ホモミキサーにて7500rpmで30分間撹拌した。さらに、高圧ホモジナイザーを使用して、150kg/cm2の条件で処理して、乳化香料製剤を得た(比較例1)。
2)ビーカー(200ml)に、SAIB 23.8g及びオレンジ油15.0gを充填し、混合して、油相を調製した。以後は、上記1)と同様に操作して、乳化香料製剤を得た(比較例2)。
上記1)及び2)において得られた乳化香料製剤を使用して、下記のようにして、飲料を調製した。
グラニュー糖100gにクエン酸2gを添加した後、水を加えて、全量を1000gとした。これに、乳化香料製剤1g(0.1%)を加えて攪拌した後、透明瓶に充填し、80℃で20分間殺菌し、冷却して飲料を得た。
表3に、上記比較例の1)及び2)で得られた乳化香料製剤の組成を示す。
これらの乳化香料製剤を使用して、上記実施例2の3)に記載した操作法に従って飲料を調製し、混濁を目視にて確認した後、室温にて3ヶ月保存し、経時変化を観察した。調製した飲料の混濁及び安定性に関する評価結果を、表3に併せて示している。
Figure 2006050986
上記の実施例及び比較例において、香料安定保持剤及び/又は比重調整剤(例えば、SAIB)及び香料を含む乳化香料製剤の比重は、いずれのケースにおいてもほぼ同じであり、かつ、飲料への香料添加量が同じとなるように処方を調整した。
表2及び表3の結果を検討すると、比較例1から明らかなように、乳化香料製剤の調製においてSAIBの流動性の改善剤としてMCTを使用した場合には、これを含む飲料では良好な混濁を得ることができず、また、香料の比重調整剤としてSAIBのみを使用して調製した乳化香料製剤では、これを含有する飲料において、保存後に沈殿が発生した(比較例2)。
これに対して、比重調整剤として、本発明の香料安定保持剤を使用して調製した乳化香料製剤を含有する飲料では、単独使用又はSAIBとの併用に限らず、いずれも、飲料に良好な混濁を付与すると共に、保存安定性も良好であることが明確に認められた。
また、表2の番号11、15、16及び17で示す乳化香料製剤と比較例2との比較から、本発明による香料安定保持剤は、従来技術において香料の比重調整剤として広く使用されていたSAIBの代用物として、他に補助剤を使用することなく単独で使用できることが明らかであり、SAIBを単独で使用した場合に認められる沈殿物の発生の虞れがない。さらに、表2の番号13及び14で示す乳化香料製剤と比較例1の乳化香料製剤との比較から、本発明の香料安定保持剤は、SAIBの流動性改善剤として、MCTの代わりに使用できるだけでなく、混濁剤としても機能できることが認められた。
本発明の香料安定保持剤は、無味、無臭であるため、各種の香料を、水性材料中に安定して保持することができ、広く食品分野に使用される。また、本発明の香料安定保持剤は、嗜好性の高い混濁を付与することができるため、特に、このような混濁が求められる飲料の分野において使用される。

Claims (9)

  1. 平均重合度3〜10のポリグリセリンと、炭素数2〜18の脂肪酸とをエステル化して得られるポリグリセリン脂肪酸エステルよりなる香料安定保持剤であって、20℃における屈折率が1.450〜1.465であり、かつ水酸基価が15mgKOH/g以下であることを特徴とする飲料用の香料安定保持剤。
  2. 20℃における屈折率が1.454以上であることを特徴とする請求項1記載の飲料用の香料安定保持剤。
  3. 20℃における屈折率が1.462以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の飲料用の香料安定保持剤。
  4. 水酸基価が10mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤。
  5. 水酸基価が4mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項4記載の飲料用の香料安定保持剤。
  6. 炭素数2〜18の脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸よりなる群から選ばれる1又は2以上のものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤。
  7. 5g(I2)/100g以下のヨウ素価を有するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤。
  8. 香料、比重調整剤、水及び乳化剤を含有する飲料用の乳化香料製剤において、前記比重調整剤として、請求項1〜7のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤の1又は2以上を使用したことを特徴とする飲料用の乳化香料製剤。
  9. 比重調整剤として、請求項1〜7のいずれかに記載の飲料用の香料安定保持剤を、ショ糖酢酸イソ酪酸エステルと併用したことを特徴とする請求項8記載の飲料用の乳化香料製剤。
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