JP2006009117A - 薄膜形成装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光量値のピーク近傍での電子銃の電力を正確に行って、薄膜の形成速度が極めて遅い場合でも、蒸着を正確かつ自動的に行って、製品の品質の確保と生産性の向上を図る。
【解決手段】薄膜が形成された被成膜体に所定の光を照射したときの透過又は反射した光量値が、予め設定した規準光量値が近似もしくは等しくなるように、加熱部の出力をフィードバック制御により調整する手順と、光量値が極大値または極小値近傍で予め設定したしきい値B2に達したときに、フィードバック制御を終了する手順と、フィードバック制御終了時点の出力を時間txだけ保持する手順と、時間tx内に光量値が極大値または極小値となっていない場合には、加熱部への出力をΔPwだけ増大する手順とを含む。
【選択図】図7

Description

本発明は、プラスチックまたはガラス素材等の表面上に薄膜を形成する装置に関し、特に、光学的性質の一定した薄膜を再現性良く形成可能であり、眼鏡レンズに反射防止膜を形成する際等に好ましく用いられるものに関する。
プラスチックやガラス等で形成されたレンズ等に薄膜を形成する際には、安定した品質で生産を行う必要があり、さらに、生産効率を上げるため、人手を要することなく全自動で薄膜形成(成膜)を行うのが望ましい。
これを実現するものとして、蒸着原料を電子銃によって蒸発させて、コートドームに保持したレンズに反射防止膜を堆積させる際に、光学式膜厚計によって時々刻々測定される反射光量値が所定の規準光量値に近似又は等しくなるように、電子銃に供給する電力を制御するものが知られている(例えば、特許文献1)。
特開2001−115260号
ところで、プラスチックやガラス等の素材へ蒸着を行う場合には、薄膜の形成速度が大きいほど生産性は向上するが、蒸着原料の種類や形成する薄膜の物性によっては薄膜の形成速度を極めて遅くせざるを得ない場合がある。
上記従来例では、薄膜の膜厚が成長するにつれて反射光量値は極小値と極大値の2つのピーク間で周期的に変動するが、各ピークの近傍では反射光量値の変化量が低減するので、フィードバック制御による電子銃の制御は難しいため、各ピークの近傍を除く所定の反射光量値範囲でのみ反射光量値に基づくフィードバック制御を行っていた。
このため、薄膜の形成速度が大きい場合、換言すれば、電子銃への供給電力が大きい場合には、ピーク近傍の所定の反射光量値でフィードバック制御を終了して、この時点の電力を保持すれば、蒸着原料の気化を維持して、反射光量値のピークを過ぎて再び所定の反射光量値範囲に戻ればフィードバック制御を再開することができる。
しかしながら、薄膜の形成速度が極めて低い場合では、電子銃への供給電力が小さいため、ピーク近傍の所定の反射光量値でフィードバック制御を終了し、この時点の電力を保持すると、液化していた蒸着原料が固化して蒸発が停止したり、あるいは、蒸着原料がわずかにチャージアップ(帯電)しただけで、電子銃のビームが蒸着原料に当たらなくなって蒸発が停止する場合が生じる。このため、フィードバック制御へ復帰することができず、薄膜の形成が一時的に中断することになり、薄膜の形成が行うことができない。つまり、薄膜の形成速度が極めて低い場合では、電子銃への供給電力が蒸着原料を気化させるのに必要な最低限の電力に設定しているため、蒸着原料の変化(液相→固相)が生じると、成膜の進行が停止する場合があった。
このため、前記従来の装置を用いて、薄膜の形成速度を極めて低くする場合には、管理者などの監視の下で薄膜の形成を行い、フィードバック制御が終了したピーク近傍では、手動で電子銃への供給電力を調整する必要があり、生産工程の自動化が行えず、製造コストが上昇する、という問題があった。
また、上記のような人手による監視では、フィードバック制御終了後のピーク近傍で薄膜の形成速度を一定に維持するのは難しく、例えば、上述のように蒸発が停止した場合、蒸発の再開までに時間がかかると、薄膜の形成速度が不均一になることから形成された薄膜の性能が低下する場合があった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、光量値のピーク近傍での電子銃の電力を正確に行って、薄膜の形成速度が極めて遅い場合でも、蒸着を正確かつ自動的に行って、製品の品質の確保と生産性の向上を図ることを目的とする。
本発明は、チャンバ内において成膜材料を加熱する加熱部を備えて、成膜材料を飛翔させて被成膜体表面に堆積させる薄膜形成手段と、薄膜が形成された被成膜体に所定の光を照射したときの透過又は反射した光量値を測定する光学式膜厚計と、前記光量値に基づいて前記成膜材料の飛翔量を制御する制御手段と、を備えた薄膜形成装置において、
前記制御手段は、前記測定した光量値と予め設定した規準光量値が近似もしくは等しくなるように、前記加熱部の出力をフィードバックにより制御するフィードバック制御部と、前記加熱部をオープンループにより制御するオープンループ制御部と、前記光量値の極大値と極小値の近傍で、それぞれフィードバック制御からオープンループ制御へ切り換えるしきい値を予め設定したしきい値設定部と、前記光量値がしきい値に達したときにフィードバック制御からオープンループ制御に切り換えるとともに、オープンループ制御部で所定の条件が成立したときにはオープンループ制御からフィードバック制御に切り換える制御切換部と、を備え、
前記オープンループ制御部は、前記光量値に基づいて、極大値または極小値を検出するピーク検出部と、フィードバック制御終了時点の出力を第1の時間だけ維持し、第1の時間が経過したときに前記極大値または極小値を検出できないときには、前記出力を増大させる出力補正部と、を有する。
また、第1の時間は、フィードバック制御終了時点から極大値または極小値を検出するであろう時間を、フィードバック制御終了時点の出力に基づいて予測する。
したがって、本発明によれば、光量値の極大値または極小値の近傍ではフィードバック制御を終了し、オープンループ制御により加熱部の制御を行い、第1の時間が経過するまではフィードバック制御終了時点の出力を維持し、第1の時間が経過した時点で光量値が極大値または極小値に達していなければ、出力を増大する補正を行うことで、極大値または極小値近傍で成膜材料の気化を促進でき、成膜を確実に行って薄膜の品質を確保しながら、薄膜形成の自動化を図って生産性を向上できる。
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態にかかる薄膜形成装置の構成を示す図である。以下図1を参照にしながら、一実施の形態を説明する。なお、この実施の形態は、被成膜体であるプラスチック製の眼鏡レンズに、薄膜として反射防止膜を形成する場合に本発明を適用した例を示す。
図1において、成膜室となる真空チャンバー1内には、上部に複数のレンズ2aを保持するとともに、所定の位置に薄膜の形成状況を検出するためのモニターガラス2bを保持するコートドーム2が設置される。真空チャンバー1の下部には、蒸発原料(成膜材料)4a、4bを収装するルツボ4、ルツボ4の蒸着原料4a、4bに電子ビームを当てて気化させる電子銃3、選択的に電子ビームを遮断するシャッター5、蒸着した薄膜の強度や膜質(緻密性など)を改善するためイオンビーム照射を行うイオン銃14、蒸着した薄膜の強度や膜質を改善するため、真空チャンバー1内にガスを充填するガス発生装置15等が設けられている。なお、シャッター5にはアクチュエータが設けられ、後述の制御装置12によって制御される。また、蒸着原料4a、4bは異なる種類の物質で、例えば、蒸着原料4aが無機物質で、蒸着原料4bが有機物質である。
上部のコートドーム2の近傍には、コートドーム2に保持された被成膜体としてのレンズ2aの温度を計測するための基板温度計6が設けられ、さらに、真空チャンバー1内の真空度を計測するための真空計7及び真空チャンバー1内を排気するための排気ユニット8が設けられている。また、コートドーム2に保持されたレンズ2aを加熱するためのヒータ9が設けられている。なお、ヒータ9はハロゲンヒータなどで構成される。
さらに、真空チャンバー1の外部上方には、コートドーム2の所定の位置に設定されたモニターガラス2bの反射率を測定する光学式膜厚計10が設けられている。光学式膜厚計10は膜厚モニター11を介して制御装置12に接続され、光学式膜厚計10からは光量データ(光量値)として、後述するように、照射光の光量に対する反射光の光量の比が出力される。なお、光学式膜厚計10及び膜厚モニター11の構成は、特開2001−115260号公報や特開2003−202404号公報の構成と同様である。
制御装置12は、CPUやメモリなどからなる演算部と、電子銃への供給電力をフィードバック制御するための基準光量値データ格納部13を備える。さらに、制御装置12にはキーボードやマウスなどで構成された入力部12aが接続されるとともに、上述の電子銃3、シャッター5、真空装置8、ヒータ9、イオン銃14、ガス発生装置15等の制御対象と、基板温度計6、真空計7、光学式膜厚計10(膜厚モニタ11)等のセンサが接続されており、制御装置12は、各センサからの入力等に基づいて上記制御対象を制御する。
すなわち、制御装置12は、真空計7の情報に基づいて真空装置8を制御し、真空チャンバー1内を所定の真空度にする。また、制御装置12は、基板温度計6の情報に基づいてヒータ9を制御して被成膜体であるレンズ2aを所定の温度にする。そして、制御装置12は、上記光学式膜厚計10で測定される上記モニターガラス2bに形成された薄膜の時々刻々の光学膜厚に依存する時々刻々の光量値が、基準光量値データ格納手段に格納されている値と等しくなるように、電子銃3に印加する電力(電流及び/又は電圧)を制御する。また、形成する薄膜の種類や気化させる蒸着原料4a、4bの種類に応じて、イオン銃14によるイオンビーム照射やガス発生装置15によるガスの充填を行う。
ここで、コートドーム2は、レンズ2aに反射防止膜等が蒸着されるように、レンズ2aを保持する保持手段である。そして、複数のレンズ2aが同時に蒸着できるよう、円形をしており、全てのレンズが同一品質の反射防止膜になるようにコートドーム2は所定の曲率を有している。
電子銃3は、ルツボ4に収納された蒸着原料(物質)4a、4bを蒸着原料4a、4bの溶融温度まで加熱することにより、蒸発させて、レンズ2a及びモニターガラス2bに蒸着原料(物質)を蒸着・堆積させて薄膜を形成する。
ルツボ4は、蒸着物質4a、4bを保持するために用いられる公知の容器である。電子銃3による蒸着物質の加熱により、蒸着物質が突沸しないように、ルツボ4は冷却されるか、材質として、熱伝導率が高い物質が好ましい。
シャッター5は、蒸着を開始するとき開き、または終了するときに閉じるように制御されるもので、薄膜の制御を行いやすくするものである。ヒータ9は、レンズ2aに蒸着される薄膜の密着性などの物性を出すため、レンズ2aを適切な温度に加熱する加熱手段である。
光学式膜厚計10は、表面に透明薄膜を形成した透明基体に光を照射すると、薄膜表面からの反射光と透明基体表面からの反射光とが両者の位相差によって干渉をおこす現象を利用したものである。すなわち、上記位相差が薄膜の屈折率及び光学膜厚によって変化し、干渉の状態が変化して反射光の光量が薄膜の屈折率及び光学膜厚に依存して変化する。なお、反射光が変化すれば必然的に透過光も変化するので、透過光の光量を計測することによっても同様のことができるが、以下では反射光を用いた場合を説明する。
光学式膜厚計10は、上記コートドーム2の中心部に保持されたモニターガラス2bに所定の波長の光を照射し、その反射光を測定する。モニターガラス2bに形成される薄膜は、各レンズ2aに形成される薄膜に依存しているとみることができるので、各レンズ2aに形成される薄膜を推測できる(再現できる)情報を得ることができる。
図2はモニタガラス2の表面に蒸着を施して薄膜を形成していく場合における反射光量の変化を示す図である。図中縦軸が光量値(相対値:単位;%)であり、横軸が蒸着時間である。蒸着する薄膜の物理的膜厚が厚い場合には、光量値は、薄膜の屈折率が一定の条件下、物理的膜厚が増すにしたがって、周期的に増減を繰り返す。この薄膜の屈折率と、薄膜の物理的膜厚に一義的に対応する光量値の変化を利用すれば、一義的に薄膜の測定または制御ができる。この場合、各周期Pk1〜Pk5における極大値と極小値との差を伸び量という。一般的には、伸び量L1、L2、L3…は、必ずしも互いに一致しないことが普通である。
ここで、光量値は上記特開2003−202404号公報の(1)式で求められるもので、ある時刻tにおける光量値Qtは、
Figure 2006009117
である。
ただし、Q0:初期設定光量
P(λ,t)=Rmonitor(d1,d2,……,dk(t), n0(λ),n1(λ), n2(λ),……,nk(λ))・T(λ)・X(λ)
P:光量の絶対値
T(λ):光学式膜厚計10内のフィルターの透過率
X(λ):光学式膜厚計10内の投光ランプの強度関数(S(λ))や反射鏡の反射率(Rmirror(λ))等の膜厚計10を構成する光学部品による関数で、一般に装置定数として扱うことができる
λ:光の波長
である。
図2では、時刻0から電子銃3への電力供給を開始して、蒸着を行った例を示しており、薄膜の成長に応じて光量値が増大し、まず最初の極大値であるピークPk1に達した後、上述の光の干渉により光量値は低減していき最初の極小値であるピークPk2に達する。その後、極大値と極小値を周期的に繰り返しながら膜厚が増大し、所定の膜厚となった時点で、電子銃3への電力の供給を停止するとともに、シャッタ5を閉鎖して蒸着原料4a、4bの蒸発を停止し、蒸着を終了する。
図3は本発明の要部となる制御の概要を示すグラフで、上記図2と同様に光量値と時間の関係を示している。
図3では、光量値の最小が20%、最大が70%であって、伸び量が50%である場合には、例えば、ピーク手前の5%の領域では後述するピーク制御を用い、光量値がそれ以外の領域でフィードバック制御(またはレート制御)を利用して薄膜形成の制御を行うものである。
つまり、この場合、極大値(70%)側では、薄膜の膜厚増大により光量値が所定のしきい値B2(65%)に達したらフィードバック制御からピーク制御へ切り換える。なお、ピーク制御からフィードバック制御への切り換えは、ピークPki(但し、iは自然数)の検出後、フィードバック制御に切り換える。また、ピークPkiの検出の一例としては、光量値が極大側の所定値(例えば、68%)以上または極小側の所定値(例えば、18%)以下で、光量値の変化量の符号が変化したときをピークとして判定する。
フィードバック制御を行う領域では、上記従来例の特開2001−115260号号公報と同様にして制御装置12は、光学式膜厚計10で測定されるモニターガラス2bに形成された薄膜からの時々刻々の光量値が、規準光量値データ格納部13に格納されている光量値と等しくなるように、電子銃3に印加する電力(電流または電圧あるいはデューティ比)を制御する。
一方、ピーク制御を行う領域では、フィードバック制御終了時点(例えば、光量値=B2)での電子銃3の出力(供給電力)に基づいて、ピークPkiに到達するであろうピーク検出予測時間txを、予め設定した基準光量値データから算出する。そして、このピーク検出予測時間txが経過するまでは、フィードバック制御が終了した時点B2の電力を維持して電子銃3に供給する。
ピーク検出予測時間tx内に、ピークPkiが検出された場合には、この時点の電力を維持して電子銃3に供給し、ピークPkiの検出時点からフィードバック制御に切り換え、次のピークPki+1に、向かう。
ピーク検出予測時間txを経過してもピークPkiを検出しない場合には、電子銃3への供給電力を所定値ΔPwだけ加算補正する。このとき、所定時間tyをセットしてピーク検出予測時間txを開花した時点から所定時間tyのカウントを開始する。
そして、電子銃3への供給電力をΔPwだけ加算補正したことで、蒸着原料4a、4bの蒸発が促進され、ピークPkiを検出した場合には、ピークPkiの検出時点からフィードバック制御へ切り換える。
一方、電子銃3への供給電力をΔPwだけ加算したも係わらず、所定時間tyを経過した場合には、再度所定値ΔPwだけ電子銃への供給電力を加算補正し、再度、所定時間tyの経過をカウントし、ピークの検出を行う。
そして、このΔPwの加算補正と、所定時間ty内のピーク検出を複数回(例えば、4回)繰り返す。
このように、ピークPkiの手前で光量値がしきい値B2(例えば、65%)以上またはB1(例えば、25%)以下になると、フィードバック制御からピーク制御に切り換えられ、ピーク制御ではピーク検出予測時間tx内にピークPkiが検出されなければ、電子銃3への供給電力を所定値ΔPwずつ段階的に加算補正する。そして、ピークPkiが検出されると、検出時点からフィードバック制御に切り換えて、次のピークへ向かうのである。
次に、制御装置12で行われる反射防止膜を形成する際の蒸着制御の一例について、以下に詳述する。
まず、最初にレンズ2a及びモニターガラス2bに規準の成膜を行う。
予めコートドーム2にレンズ2a及びモニターガラス2bをセットし、ルツボ4に蒸着原料4a、4bをセットしておき、真空装置8を起動して、真空チャンバー1内を所定の真空度にし、ヒーター9を作動させてレンズ2a、モニターガラス2bを所定の温度にする。この後、電子銃3に印加する電力の制御を開始して蒸着を開始する。
蒸着膜の成膜が開始されるのは、シャッター5が開いてからである。よって、シャッター5が開いた時点を0にとり、その後の経過時刻をt(秒)とする。一般には、シャッター5が開くと、光学式膜厚計10の光量が変化し始める。ただし、現実には、時として、この光量の変化の開始が、遅れる場合がある。このような場合には、所定時間経過後に強制的に電子銃3に所定の電力を印加して制御を開始することができる。
最初に、電子銃3の出力等の諸条件を最良の成膜を行うことができる条件に設定し、規準の成膜を行う。この規準の成膜は、結果的に所望の反射防止膜が形成される成膜である。したがって、装置の種々の条件が良好の場合には電子銃への印加電力を一定にするだけでよい場合もある。また、場合によっては、熟練者の経験とカンによって種々の条件を制御しながらの成膜を開始する場合もある。
上記規準の成膜において、成膜の過程における時刻t(秒)に対する光学式膜厚計10の光量値L(%)を、所定のサンプリング間隔Tsmp(秒)に従って、随時、メモリなどへ記録していき、時刻と光量が対になった光量値データを作成する。上記の光量値データを基準光量値データとし、規準光量値データ格納部13に格納する。
以上の基準の成膜処理が終了すると、図4に示すフローチャートに基づいて、蒸着制御が行われる。
このフローチャートは、入力部12a等からの開始指令があったときに実行されるものである。なお、真空装置8、ヒータ9は予め作動させておく。
まず、ステップS1では、電子銃3に供給する電力(以下、電流を制御する例を示す)を予め設定した初期値に設定するとともに、電力の供給を開始する。同時に、シャッター5を開放する。また、設定された膜の種類、つまり、蒸着原料4a、4bの種類や蒸着条件等に基づいて、イオンビーム照射やガスの充填を併用する場合では、イオン銃14やガス発生装置15を作動させる。
そして、ステップS2では、初回のピークPkへ向けて成膜を行うに当たり、フィードバック制御の開始条件が成立したか否かを判定する。このフィードバック制御開始条件は、例えば、所定時間経過後に光量値を検出し、光量値が所定値(例えば、B1)に達していれば開始条件の成立を判定する。すなわち、蒸着原料4a、4bの気化が円滑に進行しているか否かを判定すればよい。
フィードバック制御の開始条件が成立した場合には、各1/4λ層の位置を示す番号iを、初回であるのでi=1としてから、ステップS3に進み、i番目の1/4λ層の成膜を行う。この1/4λ層は、例えば、図2において、成膜開始(時刻=0)からピークPk1までが第1の1/4λ層であり、ピークPk1からPk2までが第2の1/4λ層となり、以降同様に膜厚の成長とともに番号iが増大していく。番号iは、フィードバック制御の制御回数i回目を示し、初期値は1である。
次に、ステップS4では、次のように電子銃3の電流値をフィードバックにより制御する。
まず、シャッター5を開放してからの時刻ti-1(実時刻)における光量をLi-1(実測値=実光量)とし、このLi-1に等しい規準光量値Ls(=Li-1)を、基準光量値データ格納部13の基準光量値データから検索する。同一の値がない場合には、近似値を算出する。そして、この光量値Lsに対応する時刻ts(基準時刻)を基準光量値データから算出する。
次に、実時刻ti-1から制御間隔Δt(秒)後の時刻tiに対応する光量値(実測値=実光量)をLiとする。また、基準データから、規準時刻ts’(=ts +Δt)に対応する規準光量Ls’を得る。このとき、
ΔLi≡Li−Li-1
ΔLsi≡Ls’−Ls
とし、ここで、
Ri≡L−ΔLi/ΔLsi
あるいは、
Ri≡(Ls’−Li)/(Ls’−Ls)
とする。図5、図6は実光量の変化と規準光量の時間に対する変化をそれぞれ表したものである。
上記Riに対して、さらに、次のような変換を行う。
Qi≡kRi|Ri|
ここで、kは、任意の定数である。この光量値Qiに対して、PID制御(比例、積分、微分制御)を行い、随時、電子銃パワー値Piを決定する。以下に、電子銃パワー値Piを決定するPID制御式を示す。
Pi≡Pi-1+Kp・Qi+Ki・ΣQi+Kd・detQi
ここで、Kp、Ki、Kdは、それぞれ、任意の定数である。
また、
Figure 2006009117
detQi≡Qi−Qi-1である。以上の制御を制御間隔Δti(秒)毎に行う。
ただし、上記の制御間隔Δti(秒)は、一致率(Ri)に応じて変化させる。一般には、一致率が高い(Riが0に近い)ほど制御間隔Δtiを大きくとる。なお、Riに対して、PID制御(比例、積分、微分制御)を行ない、随時、電子銃パワー値Piを決定することが可能であるが、次の式、
Qi≡kRi|Ri|
に変換して、ΔLsi 及びΔLiの値が近似している場合において、適度な電子銃3の電流値が設定することもできる。
このように、光量値がピーク検出直後またはしきい値B1以上、B2以下の範囲ではPID制御によるフィードバック制御を行い、実光量が基準光量値データに一致または近似するように、電子銃3の電力を制御する。
次に、ステップS5では、予め設定した成膜条件が完了したか否かを判定する。この成膜条件の判定は、予め設定した膜厚に達したか否かを、フィードバック制御の回数を示す番号i(つまり、1/4λ層の形成回数)が、所定値に達したか否かを判定することで行われる。成膜条件が終了していなければ、次の1/4λ層を形成するため、ステップS6に進む一方、成膜条件を満たしていればステップS19の終了処理へ進む。
次に、ステップS6では、実光量値が、図2、図3で示したフィードバック制御終了のしきい値B1またはB2に達したか否かを判定する。これら終了のしきい値B1またはB2に達した場合には、ステップS7へ進んでフィードバック制御を終了するとともに、ピーク制御へ移行する。一方、実光量値がピーク検出直後またはしきい値B1、B2の範囲内であればステップS4に戻ってフィードバック制御を継続する。なお、この判定に用いるしきい値B1、B2は、前回のピークPki−1の値に応じて切り換える。つまり、前回のピークPki−1が極大値であればしきい値B1を用い、前回のピークPki−1が極小値であればしきい値B2を用いる。
ステップS8では、フィードバック制御終了時点の電子銃3への供給電力を維持してピーク制御を開始する。
ステップS9では、現在の電子銃3の電力でピークPkiに到達するピーク検出予測時間txを算出する。このピーク検出予測時間txの算出は、フィードバック制御終了時点の実光量値の変化量ΔLi(図5参照)に対応する時間Δtiから算出する。
次に、ステップS10では、上記より求めたピーク検出予測時間txをタイマTm1にセットして、タイマTm1のカウントを開始する。
そして、ステップS11〜S12では、ピーク検出予測時間txが経過するのを待つとともに、ピークPkiの検出を行う。なお、ピーク検出は上述の通り、実光量値の変化量の符号に基づいて行う。そして、ピーク検出予測時間tx内にピークPkiを検出した場合には正常に成膜が進行しているので、ステップS18へ進んで、i=i+1としてからステップS3に戻り、ピーク制御からフィードバック制御への移行を行って、次の1/4λ層の形成を開始する。
一方、ピーク検出予測時間txを経過してもピーク検出ができなかった場合には、ステップS13へ進んで、電子銃3への供給電力(ここでは、電流値)を所定の増分値ΔPwだけ増大補正する(図7参照)。
そして、ステップS14で、所定の監視時間ty(例えば10秒)をタイマTm2にセットする。なお、所定時間tyの値は、増大補正を行う電流値の増分値ΔPwの大きさに応じて適宜設定すればよい。
ステップS15〜S16では、タイマTm2のカウントを行って、所定時間tyが経過するのを監視しながら、上述のピーク検出を行う。この所定時間ty内にピークPkiが検出された場合には、上記と同様にステップS18に進んで、ピーク制御からフィードバック制御への移行を行い、次の1/4λ層の形成に進む。
一方、所定時間tyが経過してもピークPkiが検出されない場合には、ステップS17に進む。
ステップS17では、電力の増大補正の回数が所定回数(例えば5回)に達したか否かを判定し、所定回数に達していなければ、増大補正の回数をインクリメントした後、ステップS13へ戻って、再度供給電力の増大補正を行うとともに、所定時間tyの経過を監視する。
一方、電力の増大補正の回数が所定回数に達した場合には、所定回数まで電力の増大補正を行ったにもかかわらず、成膜の進行が見られないため、蒸発原料4a、4b等に問題が生じたと推測できるため、ステップS19に進んで、蒸着制御の終了処理を行う。
ステップS19では、成膜条件が完了した場合等で、蒸着制御の終了処理を行う。この終了処理は、シャッタ5を閉鎖するとともに、電子銃3を停止させ、また、イオン銃14、ガス発生装置15を作動させた場合には、これらも停止させる。
以上の制御により、第1回目のフィードバック制御が開始された後は、図3で示すように、次のピークPkiの直前で、光量値がしきい値B1またはB2に達すると、ピーク制御に移行する。
ピーク制御では、フィードバック制御終了時点の電力を維持するとともに、この電力を維持した状態で、ピークPkiに達するピーク検出予測時間txを求めて、この時間tx内にピークPkiを検出したか否かを判定する。
ピーク検出予測時間tx経過後にピークPkiを検出していれば、正常に成膜が進行しているので、再びフィードバック制御を再開する。
一方、ピーク検出予測時間txが経過してもピークPkiが検出されない場合には、段階的に電力(電流値)の増大補正が行われる。この例について、図7を参照しながら説明する。
時間t0で、光量値が極大側のしきい値B2に達すると、フィードバック制御を終了して、ピーク制御が開始される。ピーク検出予定時間txが経過した時間t1では、ピークPkiが検出されていないので、フィードバック制御終了時点の電力に所定の増分値ΔPwが加算されて電子銃3への電力の増大補正が行われる。増大補正後は、電子銃3の出力増大により蒸着原料4a、4bの気化が促進される。そして、増大補正後の所定時間tyの期間でピークPkiの検出を監視し、この所定時間ty内の時間t2では、ピークPkiが検出されると、ピーク制御からフィードバック制御へ移行する。
ピーク制御の期間では、成膜の進行が遅れると、段階的に電力の増大補正がオープンループで行われる。このため、電子銃3への供給電力は理想的な値よりも大きくなる場合が多い。しかし、ピーク制御が終了すると光量値に基づくフィードバック制御へ移行することで、供給電力は理想的な値へ向けて減少補正されるので、電力が過剰になることはない。
また、図7の一点鎖線で示すように、第1回目の電力の増大補正後、所定時間tyが経過してもピークPkiが検出されない場合には、所定回数を上限として電力の増大補正が繰り返して行われるので、前記課題でも述べたように、薄膜の形成速度(蒸着速度)を極めて遅くせざるを得ない場合(蒸着原料4a、4bの飛翔量が極めて小さい場合)に、蒸着原料の変化(液相→固相)や蒸着原料のチャージアップ(帯電)が生じても、オープンループ制御により徐々に電子銃3の電力が増大補正されるので、蒸着速度が極めて遅い場合であっても確実に成膜を行うことができ、また、前記従来例のように人手を要することがないので、品質の高い薄膜を低コストで提供することが可能となる。
特に、本発明によれば、蒸着速度が極めて遅く、かつ、蒸着回数毎に伸び量のバラツキが大きい薄膜を形成する際に有効である。
蒸着回数毎で実伸び量の違いが大きくなる場合は、蒸着物質の屈折率の変化が大きくなる(不安定である)ときである。蒸着物質の屈折率の変化が大きいと、薄膜の形状が大幅に変化するため、フィードバック制御の制御精度が落ちる。そのため、フィードバック制御範囲は、蒸着開始直後、あるいは、ピークPki検出直後からの伸び量が狭くなる。このような条件では、前記従来例の場合、電子銃3の出力を極めて低くすると、フィードバック制御を行わないピークの近傍において、蒸着原料4a、4bの気化が停止することが多かった。
そこで、本発明のように、ピークPki直前のしきい値B1、B2から、オープンループ制御により徐々に供給電力を増大補正するとともに、ピークPkiの検出を行うことで、伸び量のバラツキにかかわらず、正確な成膜を自動化できるのである。また、フィードバック制御終了時点の電力からピーク検出予測時間txを算出するようにしたので、蒸着回数毎で実伸び量の違いが大きくなる場合であっても、ピーク検出の予測を正確に行うことができるのである。
ここで、蒸着速度を極めて遅くする必要のある蒸着原料について説明する。
蒸着にて形成する薄膜が、プラスチックレンズの多層反射防止膜の場合、反射防止膜中の一層が二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ニオブの無機物質うちの少なくとも一つを蒸着原料4aとし、有機ケイ素化合物またはケイ素非含有有機化合物のうちの少なくとも一つを蒸着原料4bとしたハイブリッド層である場合、電子銃3への供給電力を2種類の蒸着原料4a、4bが安定して気化可能な最低限の値として、極めて遅い速度で成膜を実施する。
このような蒸着原料4a、4bを、プラスチックのレンズ2aに蒸着させる場合、上記制御により極めて遅い蒸着速度(通常(無機物質のみの反射防止膜)の速度の2〜3倍)で成膜を行う。本制御により、電子銃3の出力を蒸着原料4a、4bが気化可能な最低限の値に設定しても、フィードバック制御が終了した後は、ピーク制御により電子銃3の出力をオープンループで制御することで蒸着原料4a、4bを確実に気化させて、かつ、人手を要することなく自動的に蒸着を行うことができる。
そして、上述のような無機物質と有機物質からなるハイブリッド層は、極めて遅い蒸着速度で処理を行うことで、初めて耐衝撃性、密着性、耐擦傷性に優れた反射防止膜をレンズ2aに形成することができる。
また、上述のような蒸着原料4a、4bを蒸着させる際には、イオンビーム照射やガス(例えば、酸素ガスとアルゴンガスなど)の充填を行うことで、密着性や耐擦傷性をさらに向上させることが可能となる。
なお、上記実施形態において、ピーク制御における、電子銃3の電力の増大補正を段階的に行ったが、単位時間当たりの増分値により電力を徐々に増大させ、所定時間tyが経過するたびに、単位時間当たりの増分値を増大させても良いし、あるいは、図8に示すように、第1回目の増大補正ではΔPwだけ段階的に電力の増大を行い、所定時間tyが経過してもピークPkiが検出されない場合には、単位時間当たりの増分値により徐々に電力を増大させてもよい。
また、上記実施形態において、電子銃3の出力を制御するに当たり、電流を制御したが電圧やデューティ比で制御を行っても良い。
また、上記実施形態においては、電子銃3により蒸着原料4a、4bの気化を行う例を示したが、蒸着原料4a、4bを加熱するヒータなどを用いるものであっても良い。
以上のように、本発明によれば、蒸着速度の大小にかかわらず、正確な成膜を自動的に行うことができるので、レンズの反射防止膜を形成する蒸着装置に適用することができる。
本発明の実施形態を示す薄膜形成装置の概略を示すブロック図。 薄膜形成の進行に応じた光学式膜厚計の出力(光量値)と時間の関係を示すグラフ。 薄膜形成の進行に応じた光学式膜厚計の出力(光量値)と制御範囲及び時間の関係を示すグラフ。 制御装置で行われる蒸着制御の一例を示すフローチャート。 実光量値と時間の関係を示すグラフ。 基準光量値と時間の関係を示すグラフ。 光量値と電流の関係を示すグラフで、極大側の要部拡大図。 他の光量値と電流の関係を示すグラフで、極大側の要部拡大図。
符号の説明
1 真空チャンバ
2 コートドーム
2a レンズ
2b モニタガラス
3 電子銃
4a、4b 蒸着原料
5 シャッタ
8 真空装置
10 光学式膜厚計
12 制御装置

Claims (8)

  1. チャンバ内において成膜材料を加熱する加熱部を備えて、成膜材料を飛翔させて被成膜体表面に堆積させる薄膜形成手段と、
    薄膜が形成された被成膜体に所定の光を照射したときの透過又は反射した光量値を測定する光学式膜厚計と、
    前記光量値に基づいて前記成膜材料の飛翔量を制御する制御手段と、を備えた薄膜形成装置において、
    前記制御手段は、
    前記測定した光量値と予め設定した規準光量値が近似もしくは等しくなるように、前記加熱部の出力をフィードバックにより制御するフィードバック制御部と、
    前記加熱部をオープンループにより制御するオープンループ制御部と、
    前記光量値の極大値と極小値の近傍で、それぞれフィードバック制御からオープンループ制御へ切り換えるしきい値を予め設定したしきい値設定部と、
    前記光量値がしきい値に達したときにフィードバック制御からオープンループ制御に切り換えるとともに、オープンループ制御部で所定の条件が成立したときにはオープンループ制御からフィードバック制御に切り換える制御切換部と、を備え、
    前記オープンループ制御部は、
    前記光量値に基づいて、極大値または極小値を検出するピーク検出部と、
    フィードバック制御終了時点の出力を第1の時間だけ維持し、第1の時間が経過したときに前記極大値または極小値を検出できないときには、前記出力を増大させる出力補正部と、を有することを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 前記出力補正部は、前記フィードバック制御終了時点の出力に基づいて、フィードバック制御終了時点から極大値または極小値を検出するであろう時間を前記第1の時間として予測するピーク検出時間予測部を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
  3. 前記出力補正部は、前記第1の時間が経過した後に前記極大値または極小値を検出できないときには、第2の所定時間内で前記極大値または極小値の検出を判定し、第2の所定時間が経過する度に極大値または極小値が検出されないときには、前記出力を所定の増分値ずつ増大させることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
  4. 前記オープンループ制御部は、前記第1の時間が経過した後に前記光量値の極大値または極小値の検出を判定した時点を所定条件の成立とし、前記制御切換部はオープンループ制御からフィードバック制御に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
  5. チャンバ内において成膜材料を加熱する加熱部の出力を制御して、成膜材料を飛翔させて被成膜体表面に堆積させる薄膜形成方法であって、
    薄膜が形成された被成膜体に所定の光を照射したときの透過又は反射した光量値が、予め設定した規準光量値が近似もしくは等しくなるように、前記加熱部の出力をフィードバック制御により調整する手順と、
    前記光量値が極大値または極小値近傍で予め設定したしきい値に達したときに、フィードバック制御を終了する手順と、
    前記フィードバック制御終了時点の出力を第1の時間だけ保持する手順と、
    前記第1の時間内に前記光量値が極大値または極小値となったか否かを判定する手順と、
    前記第1の時間が経過したときに光量値が極大値または極小値となっていない場合には、前記出力を増大する手順と、を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
  6. 前記第1の時間は、前記フィードバック制御終了時点の出力に基づいて、フィードバック制御終了時点から極大値または極小値を検出するであろう時間を予測したものであることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成方法。
  7. 前記出力を増大する手順は、第2の所定時間内で前記極大値または極小値の検出を判定し、第2の所定時間が経過する間に極大値または極小値が検出されないときには、出力を所定の増分値ずつ増大させることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成方法。
  8. 前記光量値の極大値または極小値の検出を判定した時点から、前記フィードバック制御に切り換えることを特徴とする請求項5に記載の薄膜形成方法。
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