JP2010222596A - 光学薄膜の成膜方法および成膜装置 - Google Patents

光学薄膜の成膜方法および成膜装置 Download PDF

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Abstract

【課題】制御が複雑となる反復計算を用いることなく、また、真空蒸着にありがちな成膜速度変動等の影響を受けることなく、光学膜厚を制御しながら屈折率を高精度に制御し、厳しい仕様が求められる光学素子を安定して製造する。
【解決手段】まず、成膜しようとする薄膜の物理膜厚に対するモニタ光の目標光量変化を予め設定する(S1)。次に、薄膜の成膜を開始し(S2)、成膜途中で薄膜の物理膜厚を検知する(S3)。同時に、S3で検知した物理膜厚でのモニタ光の光量を検知する(S4)。そして、S3で検知した物理膜厚におけるS4でのモニタ光の検知光量と、S1で予め設定されたその物理膜厚における目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が予め設定された目標光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら薄膜を成膜する(S5)。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学式膜厚計にてモニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する光学薄膜の成膜方法および成膜装置に関するものである。
図13は、真空蒸着法で光学薄膜を成膜する場合の、従来の一般的な成膜装置(真空蒸着装置)の概略の構成を示す断面図である。真空蒸着法では、まず、真空槽1内の回転ドーム2上に基板3(またはプリズム等)を配置し、真空槽1の内部を高真空に排気した後、電子銃4から引き出した電子線を蒸着材料の入ったルツボ5上に収束させることによって材料を蒸発させ、基板3上に薄膜を形成する。その際、回転ドーム2の中心付近に設置された水晶膜厚モニタ6によって、成膜速度を制御する。また、同じく回転ドーム2のほぼ中心位置に設置された光学式膜厚モニタ7によって、蒸着材料が付着するモニタガラスを透過または反射するモニタ光の光量を検知し、このモニタ光量に基づき各層の光学膜厚を監視する。光学膜厚が設定値に達すると、その時点でシャッタ8を閉じて現在の層の成膜を停止し、次層の成膜を行う。
ここで、光学膜厚のモニタリングに用いるモニタ光の波長をλ(nm)としたとき、検知されるモニタ光の光量は、膜の光学膜厚nd(n:屈折率、d:物理膜厚)の増加とともに周期的に変化する。具体的には、モニタ光量の周期的な変化における極値は、λ/4、λ/2、3λ/4、・・・と、λ/4の周期で現れる。光学薄膜(特に多層膜)の真空蒸着においては、この周期的に現れる極値を利用して、光学膜厚を測定、制御している。最も一般的な制御の方法としては、図14に示すように、未蒸着時のモニタ光量と成膜開始後に現れる極値での光量との差Aに対する、極値から目標膜厚における光量までの変化量Bとの比B/Aを確認しながら光学膜厚を制御する。なお、図14の縦軸の光量は、未蒸着時のモニタ光量を基準としたときの相対光量を示しており、ここでは、未蒸着時のモニタ光量を例えば20%として示している。
ところで、真空蒸着による成膜においては、微妙な成膜速度の変化や、成膜開始後に輻射で加熱されて壁から発生するアウトガスなどに起因する真空度の変化によって、膜の屈折率が変化してしまう場合がある。このような場合、光学膜厚ndに対する光量変化については、極値の光量は変化するが周期は変化しないため、上述のB/Aを検知していれば、屈折率が上がった分は膜厚が薄くなり、光学膜厚は一定に保たれる。このようにB/Aに基づいて光学膜厚を制御しながら成膜を行うことにより、中心波長(ピーク波長)でかなり精度の高いミラーを実現することができる。
しかしながら、40〜60%付近の決められた反射率に合わせる必要のあるハーフミラーや、規格の厳しい反射防止膜、反射帯域幅の再現性が重要なダイクロイック膜などでは、屈折率の変動によって特性不良が発生してしまう。例えばハーフミラーでは、多層膜の反射率や反射帯域幅の変化による50%値波長(カットオフ波長)の変動といった特性不良が発生する。
また、光学膜厚がモニタ波長のλ/4に満たないような薄い膜厚の制御においては、極値が現れず、前述のB/Aに基づく制御ができないため、単層のテストなどで求めた屈折率から計算される成膜膜厚に対する予想光量を目標値として成膜せざるを得ない。このため、例えば目標値を60%とした場合には、図15に示すように、屈折率だけではなく光学膜厚にも誤差が生じてしまい、製品の特性に大きな変動が生じてしまう。
また、水晶膜厚モニタ6(図13参照)から得られる膜厚値により成膜を制御する方法もあるが、この方法でも、屈折率が変動した場合(例えば屈折率が高く変化した場合)には、物理膜厚を合わせた場合でも光学膜厚は厚くなってしまう。
このような製品の特性に大きな影響を及ぼす屈折率の変動を抑えるための方法として、例えばイオンアシスト成膜がある。このイオンアシスト成膜によれば、成膜装置内に設置したイオン銃9(図13参照)から加速した酸素イオンやアルゴンイオンの照射によって膜の緻密度を上げ、光学特性の温度変化に対する安定性を向上させると同時に、成膜時の屈折率の再現性を向上させることができる。
イオンアシスト成膜では、イオンを照射することによって膜の緻密度が向上し、それに伴って屈折率も上昇していく傾向を示す。このとき、SiO2などの一般的な蒸着材料においては、イオンアシストの出力がある一定量に達すると屈折率が上昇しなくなるため、そのように出力が一定量以上となるイオン銃条件で成膜することにより、成膜真空度や成膜速度などが多少変動しても、安定した屈折率で成膜することができる。
しかしながら、Al23やその混合物のような蒸着材料においては、イオンアシスト成膜では、屈折率の安定性は不十分である。なぜなら、上記の蒸着材料においては、イオンアシスト出力を上げると屈折率は上昇するが、膜の吸収も増加するため、吸収が発生しない出力、すなわち屈折率が出力に対して変化する領域で成膜を行わざるを得ず、そのためバッチごとの屈折率変動が大きい。
これまでの検討の結果、成膜される薄膜の屈折率が変化する要因としては、成膜真空度、成膜速度、イオンアシスト成膜時はイオン銃の出力(ビーム電流、ビーム電圧)であることが分かっている。これらの要因による各バッチや各層での屈折率の変動を最小限に抑えるべく、昨今では成膜装置の電子銃やイオン銃の電源、自動圧力制御装置が改良されてきており、これによって多少の改善はされてきている。しかし、仕様の厳しい製品については、上記のような変動要因によって大きな影響を受けている。
そこで、成膜時の屈折率や膜厚の変動による多層膜特性の変動を低減するための方法が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1では、成膜装置内の2箇所に光学式膜厚モニタを設けている。そして、各モニタにおけるモニタ光の透過率または反射率の時間変化(光量変化)から成膜速度または屈折率を算出し、その結果に基づいて、電子銃条件やイオンアシスト条件、または成膜真空度などの成膜条件をフィードバック制御することにより、ドーム上の膜厚分布や屈折率分布を例えば均一にしている。
特開2005−121699号公報
ところが、特許文献1の成膜方法では、以下の問題が生ずる。まず、ルツボの冷却状態や電子ビーム径などの変動によって成膜レートが変動しやすい真空蒸着においては、モニタ光の光量変化から算出される値(例えば屈折率)が成膜速度の微妙な変化によって大きな影響を受け、大きな誤差を生じてしまう可能性が高い。また、光学膜厚がλ/4になった時点では、光学膜厚と物理膜厚とから演算によって屈折率を一義的に求めることができるが、光学膜厚がλ/4に満たないような薄い膜厚では、屈折率を解析的に求めることはできず、屈折率と物理膜厚とを可変パラメータとした反復計算を行う必要があり、制御が複雑になると同時に、物理膜厚が非常に薄い場合には、算出値(屈折率)に大きな誤差が生じてしまう。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、制御が複雑となる反復計算を用いることなく、また、真空蒸着にありがちな成膜速度変動等の影響を受けることなく、光学膜厚を制御しながら屈折率を高精度に制御することができ、これによって、厳しい仕様が求められる光学素子を安定して製造することができる光学薄膜の成膜方法と成膜装置とを提供することにある。
本発明の光学薄膜の成膜方法は、光学式膜厚計にてモニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する光学薄膜の成膜方法であって、前記薄膜の物理膜厚に対する前記モニタ光の目標となる光量変化を予め設定する設定工程と、成膜途中で前記薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知工程と、前記物理膜厚での前記モニタ光の光量を検知するモニタ光量検知工程と、前記物理膜厚における前記モニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対する前記モニタ光の光量変化が予め設定された前記目標となる光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜する成膜条件変更工程とを有していることを特徴としている。
本発明の光学薄膜の成膜方法において、前記成膜条件変更工程では、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後さらに増大する物理膜厚における前記モニタ光の光量と予め設定された目標光量との差が所定範囲内に収まるように、前記成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜してもよい。
本発明の光学薄膜の成膜方法において、前記成膜条件変更工程では、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に応じた変化量だけ成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜してもよい。
本発明の光学薄膜の成膜方法において、前記成膜条件は、イオンアシスト成膜によって前記薄膜を成膜する際のイオン銃の加速電圧、前記イオン銃のイオン電流、成膜速度、成膜真空度の少なくともいずれかであってもよい。
本発明の光学薄膜の成膜方法は、前記薄膜を複数種類の成膜材料の中から選択して複数層成膜するときに、前記成膜材料の各種類ごとに前記設定工程を行い、各層の成膜ごとに、前記物理膜厚検知工程、前記モニタ光量検知工程、前記成膜条件変更工程の各工程を行ってもよい。
本発明の光学薄膜の成膜装置は、光学式膜厚計にてモニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する光学薄膜の成膜装置であって、前記薄膜の物理膜厚に対する前記モニタ光の目標となる光量変化を予め設定するための設定手段と、成膜途中で前記薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知計と、前記薄膜の成膜条件を変更する成膜条件変更手段とを備え、前記光学式膜厚計は、前記物理膜厚検知計にて検知された物理膜厚での前記モニタ光の光量を検知し、前記成膜条件変更手段は、検知された前記物理膜厚における前記モニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対する前記モニタ光の光量変化が予め設定された前記目標となる光量変化に追従するように、成膜条件を変更することを特徴としている。
本発明によれば、成膜速度の変動や真空度の変動があっても、物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が目標となる光量変化に近づくので、成膜される薄膜の屈折率をほぼ一定に保つことができる。したがって、薄膜の屈折率の変動が許容されにくい、厳しい仕様が求められる光学素子を製造する場合でも、そのような光学素子を安定して製造することが可能となる。しかも、本発明では、光学式膜厚計を用いて薄膜を成膜するので、成膜される薄膜の屈折率のみならず、光学膜厚も一定に保つことができる。
また、実際に薄膜の屈折率を求めることなく、薄膜の屈折率の変動を抑えることができるので、例えば、光学膜厚が薄い膜厚のときでも、反復計算によって屈折率を求めてその都度成膜条件を変更する制御に比べて、制御が容易であり、しかも、反復計算のときに生ずるような計算上の誤差の問題を全く考慮する必要もない。
したがって、本発明によれば、制御が複雑となる反復計算を用いることなく、また、真空蒸着にありがちな成膜速度変動等の影響を受けることなく、薄膜の屈折率および光学膜厚を高精度に制御して、厳しい仕様の光学素子を安定して製造することができる。
本発明の光学薄膜の成膜方法の大まかな流れを示すフローチャートである。 本発明の光学薄膜の成膜装置の概略の構成を示す説明図である。 上記成膜装置の光学式膜厚モニタの概略の構成を示す説明図である。 物理膜厚とモニタ光量との関係を示す説明図である。 成膜材料をTiO2とした場合の物理膜厚とモニタ光の目標光量との関係を示す説明図である。 成膜材料をM3とした場合の物理膜厚とモニタ光の目標光量との関係を示す説明図である。 成膜材料をSiO2とした場合の物理膜厚とモニタ光の目標光量との関係を示す説明図である。 成膜材料をAl23とした場合の物理膜厚とモニタ光の目標光量との関係を示す説明図である。 比較例1の反射防止膜の分光特性を示す説明図である。 比較例2のダイクロイック膜の分光特性を示す説明図である。 実施例1の反射防止膜の分光特性を示す説明図である。 実施例2のダイクロイック膜の分光特性を示す説明図である。 従来の成膜装置の概略の構成を示す断面図である。 光学膜厚とモニタ光量との関係を示す説明図である。 薄い膜厚の制御において光学薄膜に誤差が生じる様子を説明するための説明図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、従来技術で説明した構成と同一の構成については同一の部材番号を付記し、この中でも本発明と特に関連のある構成について説明を加えながら、本発明について説明する。
〔成膜装置について〕
図2は、本発明の光学薄膜の成膜装置の概略の構成を示す説明図である。この成膜装置は、真空槽1と、回転ドーム2と、電子銃4と、ルツボ5と、水晶膜厚モニタ6(物理膜厚検知計)と、光学式膜厚モニタ7(光学式膜厚計)と、シャッタ8と、イオン銃9と、排気ポンプ10と、制御PC(personal computer)11と、イオン銃コントローラ12と、電子銃コントローラ13と、マスフローコントローラ14とを備えている。
図3は、光学式膜厚モニタ7の概略の構成を示す説明図である。光学式膜厚モニタ7は、発光部7aと、受光部7bと、例えば白板ガラス(屈折率1.52)で構成されるモニタガラス7cとを有して構成されている。発光部7aから出射され、モニタガラス7cの成膜面にて反射されるモニタ光を受光部7bにて受光することで、その光量を検知することができる。なお、発光部7aから出射され、モニタガラス7cの成膜面を透過するモニタ光を受光部7bにて受光することで、その光量を検知するようにしてもよい。
制御PC11は、装置の各部を制御する制御手段であるとともに、成膜される薄膜の物理膜厚に対する上記モニタ光の目標となる光量変化を予め設定するための設定手段である。このような設定手段は、例えば、上記の目標光量変化、すなわち、物理膜厚ごとの目標光量を入力するための入力部と、入力された値を記憶する記憶部とで構成可能である。なお、制御PC11は、記録媒体のデータを読み取る読取部をさらに備えた構成でもよい。つまり、物理膜厚に対する目標光量変化を表すデータを記録した記録媒体を読取部にセットして上記データを読み取り、それを記憶部に記憶させることで、物理膜厚に対する目標光量変化を予め設定する設定手段を構成してもよい。
また、水晶膜厚モニタ6にて検知される薄膜の物理膜厚の情報、および光学式膜厚モニタ7にて検知されるモニタ光量の情報は、制御PC11に送られる。これにより、制御PC11は、実際に検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と、その物理膜厚での予め設定された目標光量との差を算出することができる。制御PC11は、上記の差に基づき、イオン銃コントローラ12、電子銃コントローラ13およびマスフローコントローラ14を制御している。また、制御PC11は、上記のモニタ光量に基づいてシャッタ8の開閉も制御しており、これによって薄膜の光学膜厚を制御することができる。
イオン銃コントローラ12は、制御PC11からの制御信号に基づき、例えばイオンアシスト成膜によって薄膜を成膜する際のイオン銃9の加速電圧(出力電圧)やイオン銃9のイオン電流を制御する。電子銃コントローラ13は、制御PC11からの制御信号に基づき、電子銃4の出力を制御する。これにより、ルツボ5内の蒸発材料の蒸発速度を調整し、成膜速度を調整することができる。マスフローコントローラ14は、制御PC11からの制御信号に基づき、ガスボンベ15(例えば酸素ボンベ)から真空槽1へ導入するガスの流量を制御する。これにより、成膜真空度、すなわち、成膜時の真空槽1内の真空度を調整することができる。
以上のことから、制御PC11、イオン銃コントローラ12、電子銃コントローラ13、およびマスフローコントローラ14は、成膜時のイオン銃9の加速電圧やイオン電流、成膜速度、成膜真空度の少なくともいずれかの成膜条件を変更する成膜条件変更手段を構成していると言える。
〔成膜方法について〕
次に、上記の成膜装置を用いて光学薄膜を成膜する方法について、まず、その大まかな流れを図1のフローチャートおよび図4に基づいて説明する。図4は、物理膜厚とモニタ光量との関係を示す説明図である。
なお、以下では、屈折率を一定としたときの物理膜厚に対するモニタ光の理想的な光量およびその光量変化のことを目標光量および目標光量変化とも称し、目標とする物理膜厚に対するモニタ光の理想的な光量のことを目標値とも称するが、これらの用語は使い分けるものとする。
まず、制御PC11にて、図4の破線で示す光量変化、すなわち、成膜しようとする薄膜の物理膜厚に対するモニタ光の目標光量変化を予め設定する(S1;設定工程)。このとき、複数種類の成膜材料の中から選択して薄膜を複数層成膜する場合には、成膜材料の各種類ごとに上記の設定を行う。なお、目標光量変化の設定の詳細については後述する。また、このとき、成膜材料ごとに、目標とする物理膜厚に対するモニタ光量(目標値)も予め設定しておく。図4では、例えば成膜開始直後のモニタ光量を基準とし、これを20%としたときに、60%に相当するモニタ光量を目標値としている。
次に、薄膜の成膜を開始する(S2)。すなわち、真空槽1内の回転ドーム2上に基板3(またはプリズム等)を配置し、真空槽1の内部を排気ポンプ10によって高真空に排気した後、電子銃4から引き出した電子線を蒸着材料の入ったルツボ5上に収束させることによって材料を蒸発させ、基板3上に薄膜を形成する。そして、水晶膜厚モニタ6により、成膜途中で薄膜の物理膜厚を検知する(S3;物理膜厚検知工程)。同時に、S3で検知した物理膜厚でのモニタ光の光量を光学式膜厚モニタ7にて検知する(S4;モニタ光量検知工程)。
制御PC11は、S3で検知した物理膜厚におけるS4でのモニタ光の検知光量と、S1で予め設定されたその物理膜厚における目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が予め設定された目標光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら薄膜を成膜するフィードバック制御を行う(S5;成膜条件変更工程)。なお、モニタ光の光量変化が目標光量変化に追従するとは、その後増大するどの物理膜厚においても、モニタ光量と目標光量との差が所定範囲内に収まるような、モニタ光量の変化の仕方を指す。また、上記の所定範囲とは、屈折率の変動を許容できる範囲に対応しており、例えば図4のa%の範囲、すなわち、目標光量±a/2の光量範囲を想定することができる。なお、成膜条件の変更の詳細については後述する。
その後、制御PC11は、光学式膜厚モニタ7にて検知されるモニタ光量が目標値に達したか否かを判断し、達するまでS2〜S5の工程を繰り返す(S6)。図4の太い実線は、制御PC11の上記の制御に基づき、モニタ光量が目標値に達するまで成膜されたときの物理膜厚に対するモニタ光量の実際の変化を示している。
S6にて、モニタ光量が目標値に達していると判断した場合は、別の蒸着材料で次層の成膜を開始し、全ての層の成膜が完了するまで、S2〜S6の工程を繰り返す(S7)。
〔目標光量変化の設定について〕
次に、上記したS1での目標光量変化の設定の詳細について説明する。
例えば、図5は、成膜材料をTiO2とした場合の、物理膜厚とモニタ光の目標光量との関係(以下、理想曲線とも称する)を示している。また、図6〜図8は、成膜材料をそれぞれM3、SiO2、Al23とした場合の理想曲線を示している。なお、M3とは、Al23とLa23とからなるメルク社製サブスタンスM3を指す。このように成膜材料ごとに理想曲線は異なるので、複数種類の成膜材料を用いて複数層の成膜を行う場合は、制御PC11にて、成膜材料ごとに物理膜厚と目標光量との関係を入力し(または記録媒体から読み取り)、記憶部に記憶させることになる。
なお、屈折率を一定とした場合、図5〜図8で示したような、物理膜厚と目標光量との関係は、理論計算や実績値、経験値に基づいて、予め求めることができる。例えば、理論計算に基づく場合は、以下のようにして、物理膜厚に対する目標光量を求めることができる。
成膜される薄膜に吸収がないと仮定した場合、モニタガラス7c(図3参照)の成膜面の反射率Rは、数1式で表すことができる(「光学薄膜の基礎理論」、小檜山光信、オプトロニクス社、p.57参照)。
Figure 2010222596
ただし、
0:真空の屈折率
m:モニタガラスの屈折率
λ :モニタ光の波長(nm)
:膜の屈折率
:膜の物理膜厚(nm)
である。
数1式より、膜の屈折率nを一定としたときの反射率Rを演算することができる。ちなみに、反射率Rは、物理膜厚dに対して周期的に変化する。また、屈折率nが一定のときの光量(目標光量)は、反射率Rと発光部7aの発光光量との積で求めることができる。よって、最終的に物理膜厚dに対する目標光量を求めることができる。
なお、正確には、成膜されないモニタガラス7cの上面(成膜面とは反対側の面)の反射率R0も考慮する必要がある。このとき、反射率R0は、数2式で示される。
Figure 2010222596
よって、多重反射を考慮した、モニタガラス7cの両面からの反射率Rtotal は、数3式で示される。
Figure 2010222596
したがって、正確には、上記の反射率Rtotal を用いることにより、最終的に物理膜厚dに対する目標光量を求めることができる。
〔成膜条件の変更について〕
次に、上記したS5における成膜条件の変更の詳細について説明する。
まず、予め、成膜条件の変更に伴う屈折率の変化の傾向を確認しておく。例えば、成膜開始前に予めテストコートなどを行うことにより、イオン銃9の出力(加速電圧、イオン電流)、成膜真空度、成膜速度などの成膜条件(パラメータ)を変化させたときの屈折率の変化の傾向、すなわち、屈折率の変化の方向(屈折率が増大するのか減少するのか)や変化量を把握することができる。例えば、表1は、成膜条件によって屈折率が変化しやすいAl23について、イオン銃9の条件(加速電圧、イオン電流)と屈折率との関係を調べた結果を示している。
Figure 2010222596
表1より、加速電圧およびイオン電流を増加させると屈折率も増加し、反対に、加速電圧およびイオン電流を減少させると屈折率も減少する傾向にあることがわかる。
また、成膜真空度については、真空度が高い(圧力が低い)場合には屈折率が増加し、真空度が低い(圧力が高い)場合には屈折率が減少する傾向にある。また、成膜速度については、蒸着材料や成膜条件、イオンアシストの有無によって異なるため、一概には言えないが、イオンアシストを使用しない場合には、成膜速度を上げると屈折率が増加し、成膜速度を下げると屈折率が減少するものが多い。
このようなことから、上述したS5の工程においては、実際に検知した物理膜厚におけるモニタ光量(実光量)が目標光量よりも大きい場合は、屈折率が増加傾向にあることから、逆に屈折率を減少させる方向に成膜条件を変更し(例えば加速電圧、イオン電流、成膜真空度のいずれかを減少させ)、実光量が目標光量よりも小さい場合は、屈折率が減少傾向にあることから、逆に屈折率を増加させる方向に成膜条件を変更する(例えば加速電圧、イオン電流、成膜真空度のいずれかを増加させる)ことにより、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化を、予め設定された目標光量変化に追従させることができる。
このとき、表1などに基づき、モニタ光量と目標光量との差に応じた各パラメータの変化量を予め設定しておき、実際に検知されたモニタ光量と目標光量との差に対応する変化量だけ各パラメータを変更することで、その後の物理膜厚に対するモニタ光量と目標光量との差を所定範囲内に収めることができる。
例えば、成膜条件としてイオン銃9の加速電圧を考えた場合、加速電圧が300Vのときに、モニタ光量と目標光量との差(ただしモニタ光量≧目標光量とする)が1%以内であれば、加速電圧を10Vだけ下げ、上記の差が1%よりも大きく2%以内であれば、加速電圧を20Vだけ下げ、上記の差が2%よりも大きく3%以内であれば、加速電圧を30Vだけ下げる、というようにモニタ光量と目標光量との差に応じた加速電圧の変化量を予め定めておく。そして、実際に検知されたモニタ光量と目標光量との差が例えば1.5%であれば、加速電圧を現在の300Vから20Vだけ下げて280Vに変更する。これにより、その後の物理膜厚に対するモニタ光量と目標光量との差を所定範囲内に収めることができる。
なお、各パラメータの変更に対して、モニタ光量の変化の反応が時間的に早すぎたり遅すぎたりして、モニタ光量の変化が目標光量の変化に対してうまく追従しない場合がある。この場合は、成膜条件をさらに修正することによって、モニタ光量の変化を目標光量の変化に追従させることができる。
例えば、ある物理膜厚d1(nm)でのモニタ光量と目標光量との差がP%であり、モニタ光量を目標光量に近づける方向に成膜条件を変更(例えば加速電圧をE1(V)からE2(V)に減少)したにもかかわらず、その後の物理膜厚d2(nm)でのモニタ光量と目標光量との差がQ%に増大した場合(すなわちQ>P)、制御PC11は、加速電圧E2をさらに|E1−E2|以上減少させた加速電圧E3(V)に変更することで、モニタ光量の変化を目標光量の変化にうまく追従させることができる。
このように、成膜途中の物理膜厚でのモニタ光量と目標光量との差、および予め設定されたフィードバック制御のパラメータの変化量とに基づいて、例えばイオン銃9に対する新たな出力値を制御PC11からイオン銃コントローラ12に出力し、成膜条件を随時変更していくことにより、その後の物理膜厚におけるモニタ光量の変化を目標光量の変化に追従させることができる。
〔比較例について〕
次に、本発明の実施例について説明する前に、先に比較例について比較例1、2として説明する。なお、以下の比較例1、2では、物理膜厚に対するモニタ光の光量変化を監視せず、光学式膜厚モニタ7で検知されるモニタ光量に基づいて光学膜厚を制御しながら成膜を行っている。
(比較例1)
比較例1では、BK7からなる基板上に反射防止膜をイオンアシスト蒸着にて成膜した。表2は、比較例1の反射防止膜の設計膜厚および設計特性を示している。この反射防止膜は、設計主波長をλ0とし、光学膜厚をnd(nm)として、基板側から第1層目がM3(nd=0.32λ0)、第2層目がTiO2(nd=0.14λ0)、第3層目がM3(nd=0.11λ0)、第4層目がTiO2(nd=0.63λ0)、第5層目がSiO2(nd=0.25λ0)の5層で構成されている。
Figure 2010222596
なお、各成膜材料の成膜条件は、以下の通りである。すなわち、M3については、成膜真空度:1.8×10-2Pa、成膜速度:0.4nm/s、イオン銃出力(加速電圧−イオン電流):250V−250mAである。TiO2については、成膜真空度:2.0×10-2Pa、成膜速度:0.3nm/s、イオン銃出力:1200V−900mAである。SiO2については、成膜真空度:1.6×10-2Pa、成膜速度:0.8nm/s、イオン銃出力:900V−900mAである。
また、図9は、設計値と実際に成膜した上記反射防止膜の分光特性を示している。同図に示すように、実際の成膜では、反射特性、特に短波長側の反射率に大きな変動が見られた。薄膜設計ソフトによるシミュレーションや蒸着ログデータの解析などから、M3の屈折率が1.83に対して1.81〜1.85と±0.02程度変動しており、また、その屈折率変動により、光学膜厚制御にてピークが発生しない第3層目のM3の物理膜厚が±1.2nm程度変動し、屈折率変動が物理膜厚の変動に最も大きく影響していることが示唆された。なお、このときの第3層以外の各層の物理膜厚の変動量は0.2〜0.4nm程度であり、TiO2およびSiO2の屈折率変動は、±0.002程度と良好であった。なお、図9の実測値1、2の分光特性は、M3の屈折率が設計値から±0.02変動している場合に相当する。
M3の屈折率の変動には、前述のイオンアシスト出力が上げられないことが影響しており、M3がAl23とLa23との混合物であるため、これらの物質の沸点が異なることからくる組成比率の違いも影響している。また、第1層目のM3については、モニタ光量の極値と目標値との比率を用いることにより、光学膜厚を一定に保つことができる。これに対して、第3層目のM3については、設計上の膜厚が薄いため、光学モニタ制御では極値が現れない。そのため、前述したような、ある光量で成膜を止めるという制御を行っているので、膜厚(光学膜厚、物理膜厚)の変動が大きい。屈折率1.83に対して±0.01(0.5%)程度の変動で、光学膜厚を合わせることができれば、物理膜厚は設計値に対して±0.2nm程度しか変動しない。しかし、上記のような原因で、第3層目のM3の物理膜厚については、実際に±1.2nmもの大きな変動が発生している。
(比較例2)
比較例2では、ダイクロイックミラーを作製した。すなわち、BK7からなる基板上にダイクロイック膜をイオンアシスト蒸着にて成膜した。なお、ダイクロイック膜は、入射光のある帯域は透過し、ある帯域は反射する特性を持つ。表3は、上記ダイクロイック膜の設計膜厚および設計特性を示している。上記ダイクロイック膜は、基板側から第1層目をTiO2(nd=0.25λ0)、第2層目以降をAl23(nd=0.50λ0)とTiO2(nd=0.50λ0)との周期層とし、空気に接する第31層目をTiO2(nd=0.25λ0)として構成されている。
Figure 2010222596
なお、各成膜材料の成膜条件は、以下の通りである。すなわち、Al23については、成膜真空度:1.8×10-2Pa、成膜速度:0.4nm/s、イオン銃出力:250V−250mAである。TiO2については、成膜真空度:2.0×10-2Pa、成膜速度:0.3nm/s、イオン銃出力:1200V−900mAである。
また、図10は、設計値と実際に成膜した上記ダイクロイック膜の分光特性(長波長側のみ)を示している。なお、縦軸の反射率は、ミラーに対して垂直入射時の反射率を示している。また、図10では、Al23の光学膜厚を一定のまま屈折率のみをn=1.62を基準(設計値)として、±0.02だけ変化させたときの特性変動(実測値1、2)をそれぞれ示している。
Al23の屈折率変動の影響によって、反射率の50%値を示す波長(カットオフ波長)は最大で5nm程度変動してしまうことが分かる。ダイクロイックミラーをディスプレイの色分解光学系などで使用する際には、下記のようなカットオフ波長の変動はディスプレイの色バランスの変動要因となるために厳しく管理する必要があるが、こういったカットオフ波長を制御する際においても、光学膜厚の制御のみでは不十分であることが分かる。
〔実施例について〕
次に、本発明の実施例について、実施例1、2として説明する。
(実施例1)
実施例1では、本発明の成膜方法によって反射防止膜を成膜した。つまり、物理膜厚に対するモニタ光の光量変化を監視しつつ、フィードバック制御により成膜条件を変更しながら反射防止膜を成膜した。なお、設計膜厚および設計特性については、比較例1と同様である。
実施例1では、フィードバック制御を行うパラメータをイオンアシスト出力とし、加速電圧およびイオン電流を同調して変化させた。つまり、イオンアシスト出力以外は、比較例1と同じ成膜条件とした。また、極値が発現する層については、モニタ光量が変化しにくいコート開始直後や極値付近では、フィードバック制御が困難であるため、コート開始後、物理膜厚に対するモニタ光量の変化が初期光量から5%以上変化した後(例えば初期光量を20%とするとモニタ光量が25%まで変化した後)からフィードバック制御を開始し、最初に発現する極値の5%手前までフィードバック制御を行った。
図11は、設計値と実際に成膜した実施例1の反射防止膜の分光特性を示している。本発明の成膜方法を用いた結果、M3について、屈折率の変動を1.83±0.01に抑えられることが各種の解析等から分かった。この結果、図11に示すように、反射特性の変動は比較例1に比べて明らかに低減されていることが分かる。なお、図11の実測値1、2の分光特性は、M3の屈折率が設計値から±0.01変動している場合に相当する。
(実施例2)
実施例2では、上述した本発明の成膜方法によってダイクロイック膜を成膜した。なお、ダイクロイック膜の設計膜厚および設計特性については、比較例2と同様である。また、実施例2においても、実施例1と同様に、フィードバック制御を行うパラメータをイオンアシスト出力とし、加速電圧およびイオン電流を同調して変化させた。つまり、イオンアシスト出力以外は、比較例2と同じ成膜条件とした。また、極値が発現する層については、モニタ光量が変化しにくいコート開始直後や極値付近では、フィードバック制御が困難であるため、コート開始後、物理膜厚に対するモニタ光量の変化が初期光量から5%以上変化した後(例えば初期光量を20%とするとモニタ光量が25%まで変化した後)からフィードバック制御を開始し、最初に発現する極値の5%手前までフィードバック制御を行った。
図12は、設計値と実際に成膜した実施例2のダイクロイック膜の分光特性(特に長波長側)を示している。本発明の成膜方法を用いた結果、Al23について、屈折率の変動を1.62±0.01に抑えられることが各種の解析等から分かった。この結果、図12に示すように、反射特性の変動は比較例2に比べて明らかに低減されていることが分かる。なお、図12の実測値1、2の分光特性は、Al23の屈折率が設計値から±0.01変動している場合に相当する。
〔まとめ〕
以上のように、光学式膜厚計(光学式膜厚モニタ7)にて、モニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する、本発明の光学薄膜の成膜方法は、薄膜の物理膜厚に対するモニタ光の目標となる光量変化を予め設定する設定工程と、成膜途中で薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知工程と、検知した物理膜厚でのモニタ光の光量を検知するモニタ光量検知工程と、検知した物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が予め設定された目標光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら薄膜を成膜する成膜条件変更工程とを有している。
真空蒸着で薄膜を成膜する際、成膜速度の変動や真空度の変動によって薄膜の屈折率が変動すると、その薄膜の物理膜厚に対するモニタ光量も変動する。ここで、屈折率を一定とした場合、薄膜の物理膜厚と、その物理膜厚で検知されるモニタ光の理想的な光量(目標光量)との関係は、上述したように理論計算や実績値、経験値に基づいて、予め求めることができる。
本発明では、そのような、物理膜厚に対するモニタ光の目標となる光量変化を予め設定しておき、成膜途中の物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が予め設定された目標となる光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら薄膜を成膜する。これにより、上記した成膜速度の変動等があっても、モニタ光の光量変化が目標となる光量変化に近づくので、成膜される薄膜の屈折率をほぼ一定に保つことができる。したがって、薄膜の屈折率の変動が許容されにくい、厳しい仕様が求められる光学素子を製造する場合でも、そのような光学素子を安定して製造することが可能となる。しかも、本発明では、光学式膜厚モニタ7を用いて薄膜を成膜するので、成膜される薄膜の屈折率のみならず、光学膜厚も一定に保つことができる。
また、本発明では、上記のように薄膜の物理膜厚に対するモニタ光の光量を監視することにより、実際に薄膜の屈折率を求めることなく、薄膜の屈折率の変動を抑えることができる。したがって、例えば、光学膜厚がλ0/4(λ0;設計主波長)に満たないような薄い膜厚のときに、反復計算によって屈折率を求めてその都度成膜条件を変更する制御に比べて、制御が容易であり、しかも、反復計算のときに生ずるような計算上の誤差の問題を全く考慮する必要もない。
以上のことから、本発明によれば、制御が複雑となる反復計算を用いることなく、また、真空蒸着にありがちな成膜速度変動等の影響を受けることなく、薄膜の屈折率および光学膜厚を高精度に制御して、厳しい仕様の光学素子を安定して製造することができると言える。
また、成膜条件変更工程では、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後さらに増大する物理膜厚におけるモニタ光の光量と予め設定された目標光量との差が所定範囲内に収まるように、成膜条件を変更しながら薄膜を成膜してもよい。
ここで、上記の所定範囲とは、屈折率の変動を許容できる範囲に対応している。このようにモニタ光量と目標光量との差が所定範囲内に収まるように成膜条件を変更しながら薄膜を成膜することにより、成膜速度の変動等があっても、物理膜厚の増大に伴うモニタ光の光量変化が理想的な光量変化に確実に追従し、屈折率がほぼ一定の薄膜を確実に成膜することができる。
特に、成膜条件変更工程では、モニタ光量と目標光量との差に応じた成膜条件の変化量を予め設定しておき、実際に検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と目標光量との差に応じた変化量だけ成膜条件を変更しながら薄膜を成膜してもよい。これにより、物理膜厚に対するモニタ光量と目標光量との差を確実に所定範囲内に収めることができ、物理膜厚に対するモニタ光の光量変化を目標光量変化に確実に追従させることができる。
また、上記の成膜条件は、イオンアシスト成膜によって薄膜を成膜する際のイオン銃9の加速電圧、イオン銃9のイオン電流、成膜速度、成膜真空度の少なくともいずれかであってもよい。成膜条件変更工程にて上記した少なくともいずれかの成膜条件を変更することにより、モニタ光の光量変化を理想的な光量変化に容易に追従させることができ、これによって薄膜の屈折率の変動を容易に抑えることができる。
また、薄膜を複数種類の成膜材料の中から選択して複数層成膜するときには、成膜材料の各種類ごとに上記の設定工程を行い、各層の成膜ごとに、物理膜厚検知工程、モニタ光量検知工程、成膜条件変更工程の各工程を行ってもよい。この場合、薄膜を複数層成膜する場合でも、各層の成膜ごとに、物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が理想的な光量変化に追従するので、各層ごとに、薄膜の屈折率をほぼ一定に保つことができる。したがって、薄膜を複数層成膜して光学素子を得る場合でも、所望の光学特性の光学素子を安定して製造することができる。
また、以上のことから、光学式膜厚計(光学式膜厚モニタ7)にて、モニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する、本発明の光学薄膜の成膜装置は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明の光学薄膜の成膜装置は、薄膜の物理膜厚に対するモニタ光の目標となる光量変化を予め設定するための設定手段(制御PC11)と、成膜途中で薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知計(水晶膜厚モニタ6)と、薄膜の成膜条件を変更する成膜条件変更手段(制御PC11、イオン銃コントローラ12、電子銃コントローラ13、およびマスフローコントローラ14)とを備えている。そして、光学式膜厚計は、物理膜厚検知計にて検知された物理膜厚でのモニタ光の光量を検知し、成膜条件変更手段は、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対するモニタ光の光量変化が予め設定された目標光量変化に追従するように、成膜条件を変更する。
このとき、成膜条件変更手段は、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後さらに増大する物理膜厚におけるモニタ光の光量と予め設定された目標光量との差が所定範囲内に収まるように、成膜条件を変更してもよい。また、成膜条件変更手段は、イオンアシスト成膜によって薄膜を成膜する際のイオン銃9の加速電圧、イオン銃9のイオン電流、成膜速度、成膜真空度の少なくともいずれかの成膜条件を変更してもよい。
本発明の光学薄膜の成膜方法および成膜装置は、成膜される薄膜の屈折率の変動が許容されにくい、厳しい仕様が求められる光学素子の製造に利用可能である。
6 水晶膜厚モニタ(物理膜厚検知計)
7 光学式膜厚モニタ(光学膜厚検知計)
11 制御PC(設定手段、成膜条件変更手段)
12 イオン銃コントローラ(成膜条件変更手段)
13 電子銃コントローラ(成膜条件変更手段)
14 マスフローコントローラ(成膜条件変更手段)

Claims (6)

  1. 光学式膜厚計にてモニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する光学薄膜の成膜方法であって、
    前記薄膜の物理膜厚に対する前記モニタ光の目標となる光量変化を予め設定する設定工程と、
    成膜途中で前記薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知工程と、
    前記物理膜厚での前記モニタ光の光量を検知するモニタ光量検知工程と、
    前記物理膜厚における前記モニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対する前記モニタ光の光量変化が予め設定された前記目標となる光量変化に追従するように、成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜する成膜条件変更工程とを有していることを特徴とする光学薄膜の成膜方法。
  2. 前記成膜条件変更工程では、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後さらに増大する物理膜厚における前記モニタ光の光量と予め設定された目標光量との差が所定範囲内に収まるように、成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜することを特徴とする請求項1に記載の光学薄膜の成膜方法。
  3. 前記成膜条件変更工程では、検知された物理膜厚におけるモニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に応じた変化量だけ成膜条件を変更しながら前記薄膜を成膜することを特徴とする請求項1または2に記載の光学薄膜の成膜方法。
  4. 前記成膜条件は、イオンアシスト成膜によって前記薄膜を成膜する際のイオン銃の加速電圧、前記イオン銃のイオン電流、成膜速度、成膜真空度の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学薄膜の成膜方法。
  5. 前記薄膜を複数種類の成膜材料の中から選択して複数層成膜するときに、前記成膜材料の各種類ごとに前記設定工程を行い、
    各層の成膜ごとに、前記物理膜厚検知工程、前記モニタ光量検知工程、前記成膜条件変更工程の各工程を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学薄膜の成膜方法。
  6. 光学式膜厚計にてモニタ光の光量を検知しながら薄膜を成膜する光学薄膜の成膜装置であって、
    前記薄膜の物理膜厚に対する前記モニタ光の目標となる光量変化を予め設定するための設定手段と、
    成膜途中で前記薄膜の物理膜厚を検知する物理膜厚検知計と、
    前記薄膜の成膜条件を変更する成膜条件変更手段とを備え、
    前記光学式膜厚計は、前記物理膜厚検知計にて検知された物理膜厚での前記モニタ光の光量を検知し、
    前記成膜条件変更手段は、検知された前記物理膜厚における前記モニタ光の検知光量と予め設定された目標光量との差に基づき、その後の物理膜厚に対する前記モニタ光の光量変化が予め設定された前記目標となる光量変化に追従するように、成膜条件を変更することを特徴とする光学薄膜の成膜装置。
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