JP2005533154A - ハロゲン化マグネシウムの向上した溶解度並びに触媒及びこれらを使用した重合方法 - Google Patents

ハロゲン化マグネシウムの向上した溶解度並びに触媒及びこれらを使用した重合方法 Download PDF

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Abstract

ハロゲン化マグネシウムの溶解度を増大させるための方法であって、電子供与溶媒を準備し、該溶媒とハロゲン化マグネシウムとを接触させ、そして電子供与体化合物を与えてハロゲン化マグネシウム組成物を形成させることを含むものを提供する。この組成物は、該電子供与溶媒の沸点まで低下しない該溶媒への溶解度を特徴とする。また、ハロゲン化マグネシウム組成物と遷移金属化合物とを混合した生成物を含む重合用触媒先駆物質組成物も提供する。このような先駆物質から製造された活性な触媒及びこのような触媒を使用した重合方法も開示する。

Description

発明の分野
本発明は、ハロゲン化マグネシウム組成物、それから作られた触媒、ハロゲン化マグネシウムの溶解度を増大させる方法、ハロゲン化マグネシウム組成物及び触媒を作る方法、並びに重合方法に関する。
発明の背景
MgCl2の様々な電子供与媒体の溶液は、産業においてオレフィン重合用触媒の製造のための用途が見出されている。多くの場合、これらの溶液は、オレフィン重合の触媒作用に広く受け入れられることが分かっているMg−Ti触媒先駆物質を形成させるために、エーテル、ケトン及びエステルを使用する。既知の先駆物質は、塩化マグネシウム及び塩化チタンを溶媒に溶解させ、次いで過剰の溶媒を蒸発又は蒸留することによって得られてきた。テトラヒドロフラン(THF)は、蒸発及び溶媒回収を促進させるそのMgCl2とTiClxの両方との配位特性及びその比較的低い沸点のために、特に有用な溶媒であることが分かっている。得られた乾燥触媒先駆物質は、オレフィン重合において活性な組成物を生成させるために、助触媒、典型的にはアルキルアルミニウム化合物で処理される。
このような触媒先駆物質の産業的重合方法への使用は、MgCl2の溶媒への溶解度を利用する。アルカリ土類金属のハロゲン化物は、典型的には炭化水素溶媒に不溶である。しかしながら、ある種の配位性電子供与媒体へのその溶解度は、産業上の用途にとっては適度に高い。例えば、MgCl2のテトラヒドロフラン(THF)への溶解度は、−25℃で約0.2Mから30℃で約0.7Mに増大する。先駆物質のバッチ製造当たりに得られ得る先駆物質の量は、MgCl2の溶解度によって制限される。
しかしながら、興味深いことに、さらに高温ではMgCl2のこのような供与媒体への溶解度は低下する。例えば、THFの沸点(65℃)ではMgCl2の溶解度は大気圧で約0.4Mにすぎない。このような溶解度の低下は、先駆物質の乾燥プロセスを困難にする。というのは、加熱による溶媒の除去は、典型的には、溶媒の沸点近くで最も効果的に実行されるからである。先駆物質溶液中でのMgCl2濃度が望ましくないレベルにまで低下するのを防止するために、乾燥プロセスは、低温及び減圧で実施される。不運にも、これらの条件下での溶媒の除去は、さらに時間を必要とし且つ効果が小さく、それによってバッチ処理能力を低下させる。
また、高温でのMgCl2の溶解度の低下は、このような温度で溶解度の限界を超えたときに反応器の壁及び配管に沈殿したMgCl2の厚い外皮の形成をも生じさせる。
これらの理由のために、改善した溶解度を有する触媒先駆物質系を重合方法において使用するに至った。また、その溶解度を増大させる方法及びMgCl2の溶解度プロフィルを温度の関数として変化させる方法も有用であろう。従って、より高い溶解度又は温度と共に低下しない溶解度を有するハロゲン化マグネシウム触媒成分及びこのような触媒成分を使用する方法並びにそれらから作られた触媒も有用であろう。
発明の要約
いくつかの具体例では、(1)電子供与溶媒を準備し、該電子供与溶媒とハロゲン化マグネシウムとを接触させ、及び(2)電子供与体化合物を与えてハロゲン化マグネシウム組成物を形成させることを含むハロゲン化マグネシウムの溶解度を増大させるための方法であって、該組成物が該溶媒の沸点まで温度の関数として低下しない該ハロゲン化マグネシウムの該溶媒への溶解度を特徴とするものを提供する。
その他の具体例では、ハロゲン化マグネシウム、電子供与溶媒及び電子供与体化合物を含む重合用触媒成分であって、該組成物が電子供与溶媒の沸点まで温度の関数として低下しない電子供与溶媒への溶解度を特徴とするものを提供する。
さらに別の具体例では、触媒を作る方法を開示する。このような具体例では、その方法は、マグネシウム含有組成物を形成させ、該マグネシウム含有組成物と遷移金属化合物とを接触させて触媒先駆物質を形成させ、そして該触媒先駆物質と助触媒とを接触させることを含む。マグネシウム含有組成物は、ハロゲン化マグネシウム、電子供与溶媒及び電子供与体化合物を含み、そしてこれは、電子供与溶媒の沸点まで温度の関数として低下しない電子供与溶媒への溶解度を特徴とする。
さらに別の具体例は、ハロゲン化マグネシウムを含むマグネシウム含有組成物と、電子供与溶媒と、電子供与体化合物との反応生成物を含む触媒の存在下に少なくとも1種のオレフィン単量体を反応させることを含む重合体の製造方法を提供する。マグネシウム含有組成物は、電子供与媒体の沸点まで温度の関数として低下しない電子供与媒体への溶解度を特徴とする。また、触媒組成物は、遷移金属化合物であってその遷移金属がチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択されるものと、助触媒組成物とを含む。
上記のいくつかの具体例では、組成物は、他の電子供与体化合物を実質的に含まず、そして電子供与体化合物対ハロゲン化マグネシウムのモル比は1.9以下である。いくつかの具体例では、電子供与体化合物対ハロゲン化マグネシウムの比は約1.75未満であるが、一方で電子供与体化合物対ハロゲン化マグネシウムの比は約0.1〜約0.5未満の範囲にある。
ここで説明されるいくつかの方法、触媒先駆物質、触媒成分及び触媒では、ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム又はそれらの組み合わせである。電子供与体化合物は、1〜約25個の炭素原子を有する線状、分岐、置換又は非置換の脂肪族又は芳香族アルコールであることができる。代表的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−ドデカノール、シクロヘキサノール及びジ−t−ブチルフェノールが挙げられる。
溶媒は、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択される。いくつかの具体例では、溶媒は、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択される。溶媒として好適な代表的なアルキルエステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸エチル及びそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。溶媒として使用するのに好適なエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びそれらの2種以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンチルメチルケトン、3−ブロム−4−ヘプタノン、2−クロルシクロペンタノン、アリルメチルケトン及びそれらの組み合わせが挙げられる。勿論、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族若しくは環状エーテル又は脂肪族ケトンである第2電子供与溶媒を含有する混合溶媒をいくつかの具体例で使用することができる。ここで説明されるいくつかの具体例では、ハロゲン化マグネシウム組成物の溶媒への溶解度は、約0.7モル/リットル以上である。
特定の具体例では、ハロゲン化マグネシウムは塩化マグネシウムであり、アルコールはエタノール又はイソプロパノールであり、アルコール対マグネシウムのモル比は約0.1〜約1.1であり、ハロゲン化マグネシウム又はハロゲン化マグネシウム組成物の溶媒への溶解度は約0.8〜2.5モルMgCl2/リットルの間にある。
いくつかの具体例は、次式:
Mg(ED)rCl2[S]q
(式中、rは0以上1.9未満であり、qは0以上4未満である。)
の組成式を含む触媒成分を提供する。
ここで説明するいくつかの触媒先駆物質は、溶媒の沸点まで温度と共に低下しない溶媒への溶解度を有するマグネシウム含有触媒成分と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択される遷移金属を含む第2成分との反応生成物又は混合物を含む組成物を包含する。このような第2成分のいくつかの代表例としては、次式:Ti(ORab(式中、RはR'又はCOR'であり、ここで、R'は、それぞれC1〜C14脂肪族炭化水素基又はC6〜C14芳香族炭化水素基であり、それぞれのXはそれぞれCl、Br又はIであり、aは0又は1であり、bは2〜4であり、そしてa+b=3又は4である。)を有する少なくとも1種のチタン化合物が挙げられる。いくつかの具体例では、少なくとも1種のチタン化合物は、TiCl4、TiCl3又はアルミニウム還元TiCl3のようなハロゲン化チタンを含むが、これらに限定されない。
ある種の具体例では、触媒先駆物質組成物は、次式:
[Mg(ED)rmTi(OR)np[S]q
(式中、EDは、1〜約25個の炭素原子を有する線状又は分岐アルコールを含み、XはそれぞれCl、Br又はIであり、Sは、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択され、mは0.5〜56の範囲にあり、nは0、1又は2であり、pは4〜116の範囲にあり、qは2〜85の範囲にあり、そしてrは0.1〜1.9の範囲にある。)
の組成式を含む。
いくつかの具体例は、触媒先駆物質と助触媒の反応生成物である触媒を提供する。他の具体例は、触媒をルイス酸で変性させることをさらに含む。いくつかの好適なルイス酸は、次式:
* gMX3-g
(式中、R*は、R*1又はOR*1であり、ここで、R*1は、1〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素又は6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、MはAl又はBであり、XはCl、Br又はIであり、そしてgは0〜3の範囲にある。)
を有する。代表的な塩化物ベースのルイス酸としては、塩化トリ−n−ヘキシルアルミニウム、塩化トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化トリメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化トリイソブチルアルミニウム、塩化トリ−n−ブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化エトキシアルミニウム、二塩化フェニルアルミニウム及び二塩化フェノキシアルミニウムが挙げられる。代表的な臭素含有ルイス酸としては、臭化ジエチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、二臭化メチルアルミニウム、臭化ジイソブチルアルミニウム、二臭化イソブチルアルミニウム、二臭化エトキシアルミニウム、二臭化フェニルアルミニウム及び二臭化フェノキシアルミニウムが挙げられる。沃化物ベースのルイス酸としては、沃化ジエチルアルミニウム、二沃化エチルアルミニウム、沃化トリメチルアルミニウム、二沃化メチルアルミニウム、沃化ジイソブチルアルミニウム、二沃化イソブチルアルミニウム、二沃化エトキシアルミニウム、二沃化フェニルアルミニウム及び二沃化フェノキシアルミニウムが挙げられる。
その他の好適なルイス酸としては、三塩化硼素、三臭化硼素、二塩化エチル硼素、二塩化エトキシ硼素、塩化ジエトキシ硼素、二塩化フェニル硼素、二塩化フェノキシ硼素、塩化ジフェノキシ硼素、(C613)BCl2又は(C613O)BCl2が挙げられる。
さらに別の好適なルイス酸又は助触媒は、次式:
AlX’d(R”)ce
(式中、X'はCl又はOR'''であり、R”及びR'''は、それぞれC1〜C14飽和炭化水素基であり、dは0〜1.5であり、eは0又は1であり、そしてc+d+e=3である。)
に従う。代表的なこのような活性剤としては、Al(CH33、Al(C253、Al(C252Cl、Al(i−C493、Al(C251.5Cl1.5、Al(i−C492H、Al(C6133、Al(C8173、Al(C252H、Al(C252(OC25)が挙げられる。いくつかの具体例では、1種以上の活性剤は、1モルの遷移金属化合物当たり約1〜約400モルの活性剤を範囲とする活性剤対遷移金属化合物比で存在する。いくつかの具体例では、活性剤対遷移金属化合物比は、1モルの遷移金属化合物当たり約4、約10、約15又は約60モルの活性剤である。
ここで説明するいくつかの重合方法は、約0.88〜約0.98g/cm3の範囲の密度を有する重合体を与える。いくつかの重合体は、約90モル%以上のエチレン及び約10モル%以下の1種以上の共単量体を有する。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の3つの具体例についてのMgCl2溶液のTHFへの溶解度の挙動をアルコール含有量及び溶液温度の関数として例示したものである。
図2は、本発明のいくつかの具体例のTHFへの溶解度プロフィルを温度、MgCl2濃度及びアルコール:Mg比の関数として例示したものである。
図3は、代表的なハロゲン化マグネシウム含有触媒成分の構造を例示したものである。
図4は、本発明の触媒成分の具体例についての熱重量分析(TGA)の挙動を例示したものである。
本発明の具体例の説明
本発明の具体例は、電子供与溶媒を準備し、ハロゲン化マグネシウムと該溶媒とを接触させ、そして電子供与体化合物を与えてハロゲン化マグネシウム組成物を形成させることを含むハロゲン化マグネシウムの溶解度を増大させるための方法であって、該組成物が溶媒の沸点まで温度の関数として低下しない該溶媒への溶解度を特徴とするものを提供する。温度の上昇と共に低下しない溶解度を有する触媒成分を提供する。このような触媒成分を取り込んだ触媒先駆物質を提供する本発明の具体例を開示する。また、このような化合物を作る方法並びに重合用触媒及びこのような触媒を使用した重合方法も開示する。
次の説明では、ここで開示する全ての数字は、それに関して用語「約」又は「ほぼ」を使用するか否かに関わらず、近似値とする。これらは、1%、2%、5%まで又は時として10〜20%ずつ変化し得る。下限値RL及び上限値RUを有する数値範囲を開示するときには、常に該範囲内に含まれる任意の数Rを具体的に開示する。特に、該範囲内の次の数Rを特に開示する:R=RL+k*(RU−RL)(ここで、kは、1%刻みで1%〜100%の可変範囲である。即ち、kは、1%、2%、3%、4%、5%・・・50%、51%、52%・・・95%、96%、97%、98%、99%又は100%である)。さらに、上に定義されるような2つの数字Rによって定義される任意の数値範囲も具体的に開示する。
本明細書において使用するときに、「電子供与体化合物」とは、ハロゲン化マグネシウムの電子供与溶媒への溶解度を、該溶解度が電子供与媒体の沸点までいかなる温度間隔でも低下しないように改変させる化合物をいう。本明細書で使用するときに、「電子供与体化合物」には、以下に定義されるような「溶媒」は含まれない(このような溶媒が電子供与特性を有するときでさえも)。代表的な電子供与体化合物としては、アルコール、チオール、弱供与性アミン及びホスフィンが挙げられる。本明細書で使用するときに、用語「他の電子供与体化合物を実質的に含まない」とは、ここで定義されるような他の「電子供与体化合物」が通常このような化合物の溶媒等級の供給物中の不純物として見出されるレベル以上の濃度で存在しないことを意味する。従って、電子供与特性を持つ溶媒と「電子供与体化合物」とを有する組成物は「他の電子供与体化合物を実質的に含まない」とみなされる。いくつかの具体例では、「〜を実質的に含まない」とは、1重量%、0.1重量%、0.01重量%又は0.001重量%未満を意味する。
有用な溶媒としては、任意のエーテル、ケトン又はエステル化合物が挙げられる。このような溶媒は電子供与特性を有するが、ここにいう「溶媒」には、「電子供与体化合物」として上に定義されたような化合物は含まれない。従って、「他の電子供与体化合物を実質的に含まない」組成物は1種以上の「溶媒」を含み得る。
ここで使用するときに、用語「エーテル」は、式R−O−R'(ここで、R及びR'は置換又は非置換のヒドロカルビル基である。)の任意の化合物と定義される。場合によっては、R及びR'は同一である。代表的な対称エーテルは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びジ−n−ブチルエーテルであるが、これらに限定されない。代表的な非対称エーテルとしては、エチルイソプロピルエーテル及びメチルブチルエーテルが挙げられる。好適な置換エーテルの例としては、例えば、メチルアリルエーテル及びエチルビニルエーテルが挙げられる。さらに別の具体例では、R及びR'は、飽和又は不飽和であってよい縮合環を形成し得る。このような化合物の一例はテトラヒドロフランである。このような別の好適な環状エーテルは2−メチルテトラヒドロフランである。具体的に列挙した化合物は、好適なタイプの化合物の単なる例示である。しかしながら、エーテルR−O−R'官能基を有する任意の化合物が想定される。
ここで使用するときに、用語「ケトン」とは、式R(C=O)R'を有する任意の化合物を示すものとする。R及びR'は、エーテルについて上記したように、それぞれ置換又は非置換のヒドロカルビル基であることができる。代表的なケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンチルメチルケトンである。また、3−ブロム−4−ヘプタノン又は2−クロルシクロペンタノンのようなハロゲン化ケトンも好適である。他の好適なケトンは、アリルメチルケトンのように、不飽和基のような他の官能基を含み得る。これらの化合物のそれぞれは、式R(C=O)R'(ここで、該分子のカルボニル基の炭素原子は2個の他の炭素原子への結合を形成する。)と一致する。
有用なエステルとしては、一般式R(C=O)OR'の任意の化合物が挙げられる。このような化合物では、そのカルボニル基の炭素原子が炭素原子への一方の結合及び酸素原子への他方の結合を形成する。R及びR'は、それぞれ置換又は非置換のヒドロカルビル基から選択され、且つ、同一でも異なっていてもよい。いくつかの具体例では、エステルとしては、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。また、環状エステル、飽和エステル及びハロゲン化エステルもこの群に含まれる。代表的なエステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル及び安息香酸エチルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的に列挙した化合物は、好適なタイプの化合物の単なる例示である。一般式R(C=O)OR'官能性を満たす任意の化合物が想定される。
一般に、溶媒は、マグネシウムの第1配位環境に対して大過剰で与えられる。いくつかの具体例では、溶媒対マグネシウムの比は約100〜1であり、他の具体例では、その比は、さらに大きくてもよい。さらに別の具体例では、溶媒は、1モルのマグネシウム当たり少なくとも約1.0、少なくとも約2.0、少なくとも約5.0、少なくとも約10又は少なくとも約20モルの溶媒の比で存在する。いくつかの具体例では、2種以上の溶媒が使用できる。
ハロゲン化マグネシウムと任意の好適な溶媒との接触は、ハロゲン化マグネシウムと溶媒とを直接混合させることによって達成される。いくつかの具体例では、ハロゲン化マグネシウムは塩化マグネシウムである。しかしながら、臭化マグネシウム及び沃化マグネシウムも使用できる。有用なハロゲン化物源は、MgCl2、MgBr2、MgI2のようなハロゲン化マグネシウム又はMgClI、MgClBr及びMgBrIのような混合ハロゲン化マグネシウムである。いくつかの具体例では、ハロゲン化マグネシウムは、無水の形で溶媒に添加される。他の具体例では、ハロゲン化マグネシウムは、水和された形で添加される。
電子供与体化合物は、溶媒とハロゲン化マグネシウムとの混合物に任意の好適な手段で添加される。好ましくは、電子供与体化合物は、混合物に直接添加される。いくつかの具体例では、電子供与体化合物は、アルコール、チオール、弱供与性アミン又は弱供与性ホスフィンである。アルコールは、一般式ROHを有する任意の1種の化学化合物であることができる。Rは、任意の置換又は非置換ヒドロカルビル基であることができる。いくつかの具体例では、アルコールは、約1〜約25個の炭素原子を有する脂肪族アルコールである。いくつかの具体例では、アルコールは、単座アルコールである。ここで使用するときに、用語「単座アルコール」とは、R基が、その置換により溶液の状態でマグネシウム原子に配位する1個より多いヒドロキシル(OH)官能基を有する分子を生じないように与えられ得るものをいう。代表的な当該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールを挙げることができる。また、2−エチルヘキサノール又は1−ドデカノールのような長鎖脂肪族基を含有するアルコールもハロゲン化マグネシウムの溶解度が温度と共に増大する溶液を形成させる。また、それ以上の炭素原子を有するアルコールも有用である。また、アルコールは、シクロヘキサノールのような環状アルコール又はフェノールのような芳香族アルコールであることもできる。
ある種の具体例では、電子供与体化合物対ハロゲン化マグネシウムの比は1.9以下である。いくつかの具体例では、アルコール対マグネシウムのモル比は、約1.75未満、1.5未満、1.0未満、0.75未満、0.5未満、約0.4未満又は約0.25未満である。さらに別の具体例では、電子供与体対マグネシウムのモル比は約0.1である。他の具体例では、そのモル比は、1.9以上、例えば、約2.0、約2.1、約2.2、約2.5及び約3.0であることができる。
溶媒以外の1種の少量の電子供与体化合物を溶媒とハロゲン化マグネシウムとを含有する混合物に添加すると、溶解度が温度と共に増大し、しかも溶媒の沸点での溶解度が電子供与体化合物が存在しないハロゲン化マグネシウム/電子供与体付加物の溶解度よりも比較的高いマグネシウム含有組成物が生じる。また、この溶解度も追加の種類の電子供与体化合物を有する同等のハロゲン化マグネシウム/電子供与体付加物の溶解度よりも高い。これは、1種の少量の電子供与体をハロゲン化マグネシウムの存在下に溶媒に添加すると、溶解性種の重合体付加物への転化が抑制されるためであると考えられる。いくつかの具体例では、この溶解性種は、次式:
MgXx(ED)yz
(式中、xは一般に2であり、これはマグネシウムの酸化状態を満足し、yは4未満であり、そしてx+y+zは6以下である。)
に従う。いくつかの具体例では、yは、約0.5、0.75、1、1.5、1.75、1.9又はそれ以下である。いくつかの他の具体例では、yは、約0.1、0.25、0.3又は0.4である。このような種は、一般に、溶媒の沸点まで温度と共に増大する溶媒への溶解度を有する。溶媒がTHFである場合には、該溶液のハロゲン化マグネシウム濃度は、電子供与体化合物(具体的には、該電子供与体化合物はアルコールである)を有しない同等の溶液よりも5倍まで高くてよい。
図1は、塩化マグネシウム溶液のテトラヒドロフラン及びアルコールへの溶解度プロフィルを温度の関数として例示するものである。図1に例示するように、アルコールを有しない組成物は、一般に、約30℃で1リットル当たり約0.5モルのマグネシウムから1リットル当たり最大約0.65モル未満のマグネシウムまで増大するハロゲン化マグネシウムの溶解度を有する。30℃以上では、その溶解度は、溶媒の沸点に到達するまでに徐々に低下する。対照的に、エタノールのようなアルコールが添加された混合物は、温度が溶媒の沸点まで上昇したときに低下しないハロゲン化マグネシウムの溶解度を有する。例えば、約0.5のエタノール対マグネシウムの比を有する混合物は、15℃でのマグネシウムの溶解度が約0.75モル/リットルであることを示す。塩化マグネシウムの溶解度は、温度が約30℃まで上昇したときに増大するが、この場合に溶液のマグネシウム濃度は約1.75モル/リットルである。温度が30℃以上に増大するときに、その溶解度は、沸点に到達するまで実質的に一定の状態を維持する。
また、図1は、約1のアルコール対マグネシウムの比を有する混合物の溶解度の挙動も例示している。25℃では、溶液中に存在するマグネシウムの濃度は、約0.5モル/リットルである。しかしながら、この濃度は、温度が約55℃に達する時に約2モル/リットルまで増大し且つ溶媒の沸点まで実質的に一定な状態を維持する。また、2モルのアルコール対マグネシウムの比を有する試料も、マグネシウムの溶解度が沸点まで温度の関数として増大することを示している(この場合には、その値は1リットル当たり約1.75モルのマグネシウムである。)。
図2は、異なる量の添加されたアルコールを含有するいくつかの混合物の溶解度プロフィルを例示している。図2のデータのぞれぞれの点は、塩化マグネシウムの全てがTHFに溶解したときに所望の濃度を達成させるのに必要な塩化マグネシウムの量を添加することによって生じた。そのときに、一部分のアルコールを添加して所望のアルコール:マグネシウム比を与え、そして該混合物を組成物が溶解するまで加熱した。次いで、この溶液を沈殿が形成し始めるまでゆっくりと冷却した。沈殿が形成し始める温度を図2においてy軸として記録した。従って、図2は、アルコールの存在下に異なる濃度の塩化マグネシウム溶液を調製するのに必要な温度を示している。例えば、データセット210は、異なる濃度のエタノールの存在下で溶媒がTHFである場合に塩化マグネシウムが約0.75Mである溶液を達成させるのに必要な温度を例示している。0.25のアルコール対マグネシウム比で調製された混合物では、溶液のマグネシウム濃度は、わずか5℃で約0.75Mである。0.5のアルコール対塩化マグネシウム比で調製された混合物は、約15℃で0.75Mのマグネシウム濃度に達するが、1.0の比を有する混合物は、約33℃で0.75Mに達する。混合物を1.5又は2.0モルのアルコール対塩化マグネシウム比を有するように調製する場合には、この溶媒は、約47℃及び53℃でそれぞれ約0.75Mのマグネシウム濃度に達する。従って、データセット210は、より高いアルコール:マグネシウム比を有する混合物が溶解性の少ない傾向にあることを示している。
従って、図2は、アルコール対塩化マグネシウムの小さい比が高濃度の溶解マグネシウムを有する溶液を生じさせることを例示している。ROH/MgCl2比の増大に伴う溶解度の低下は、少量の添加されたROHが重合体MgCl2(THF)2付加物の形成を阻害し、そして大量のROHの添加又は追加のアルコールが該溶液をそれ以上のROHを含有する溶解性の低い付加物に至らせることを示唆している。使用されるROH/Mg比は、達成され得る最大の溶解度及び必要な温度を決定する。図2のデータセット220〜260は、所定のアルコール:マグネシウム比に関して、温度を上昇させると、溶解できるマグネシウムの量が増加することを示している。例えば、0.5のアルコール:マグネシウムモル比を有する溶液は、約15℃で約0.75Mのマグネシウム溶液濃度を有するが、約20℃では1.0Mのマグネシウム溶液濃度が得られ得る。線230は、約23℃で同一の溶液が約1.25モル/リットルの塩化マグネシウムを溶解できることを示している。また、図2は、塩化マグネシウムのこのような溶液への溶解度も30℃以上の温度に対して増大することも示している。例えば、1のアルコール対マグネシウムのモル比を有する溶液は、約35℃の温度で塩化マグネシウムの溶解度が約0.75Mであるが、約41℃では溶解度が約1Mに増大することを示している。線230〜260のデータは、THFの沸点に達するに従い溶解度が増大し続けることを示している。高いアルコール:マグネシウム比を有する溶液も同様の挙動を示す。
これらの種の溶液中での性質は、様々な特徴付けの方法によって明らかにされる。NMR研究により、THF溶液中でMgCl2に配位した電子供与体は迅速に平衡状態になり、そして個々の長寿命の種は存在しないことが示される。MgCl2及びMg当たり2当量のエタノール(EtOH)を含有するTHF溶液上の気相は、MgCl2を含有しない同一のEtOH/THF溶液上の気相よりも有意に少ないアルコールを含有する。これは、エタノールが該溶液中のMgCl2分子によって封鎖されていることを示唆する。アルコール官能基が溶液相の中心にあるMgCl2に配位していることは明らかである。中間のアルコール:MgCl2比での最大の溶解度は、いくつかの種がアルコールの同一性、特定のアルコール:Mg比及び溶液の温度に依存する濃度を有する溶液の状態にあることを示唆している。
図3は、固形物として単離された代表的な触媒成分のx線単結晶構造を例示している。図3に示すように、この成分は、マグネシウム中心分子を含む。この具体例では、その先駆物質は、マグネシウムに結合した2個のTHF溶媒分子並びに塩素の形の二個のハライド及び2個のアルコール配位子を有する。従って、この成分は、式MgCl2ROH2THF2(ここで、ROHはイソプロピルアルコールである。)を有する。また、ROHがエタノールである同族化合物も単離され得る。この特定の具体例では、例示される構造は、一般に、同一のタイプの配位子がマグネシウム原子の対称中心を介して関わり合っているため、トランス−八面体マグネシウム中心構造と呼ばれる。しかしながら、このような構造は、該触媒成分の任意の具体例にとっては必要でない。他の具体例では、先駆物質は、2種以上の個々の化合物の混合物であることができる。例えば、一具体例では、該成分は、MgCl2ROH1THF3とMgCl2ROH2THF2の混合物を含むことができる。該混合物が全体として式MgXx(ED)yz(ここで、yは1.9以下である。)を満たす限り、個々の化合物の任意の数が想定される。
他の具体例では、ハロゲン化マグネシウム触媒成分は、次式:
MgX2(ED)yz
(式中、y+zは4以下であり、yは1.9以下である。)
を有する。y+zが4未満であるこれらの具体例では、触媒成分は溶媒が不十分であるとみなされ得る。また、これらの組成物は、非化学量論的組成物とも呼ばれ得る。これらの組成物は、加熱し、減圧を適用し、又はその両方を行うことによって完全に配位されたMgCl2(ROH)2(THF)2又は他のMgXx(ED)yz組成物から固体の形で得られ得る。
図4は、MgCl2(ROH)2(THF)2の挙動を示す熱重量分析(TGA)測定を例示している。TGA測定は、損失重量が測定されないときの期間中に10℃/分の加熱速度でなされた。その試料が質量を損失している期間に、さらなる損失重量が測定されなくなるまで温度傾斜を排除した。図4に示すように、溶媒及びアルコールの大部分は、組成物を50℃〜200℃に加熱することにより、THF分子の一つをまず失わせ、次いでROH及びTHFの両方を失わせて取り除かれ得る。多孔質の触媒成分を形成させるのに好適な様々な多孔質のMgCl2含有組成物がこの方法で形成できる。従って、いくつかの具体例では、触媒成分は、単量体構造ではなく、むしろ配位不飽和構造及び重合体構造を有し得る。
別の側面では、上記の触媒成分の製造方法を開示する。触媒成分の製造方法は、溶媒を準備し、該溶媒とハロゲン化マグネシウムとを接触させ、そして電子供与体化合物を添加して重合用触媒成分を形成させることを含む。いくつかの具体例では、電子供与体化合物対マグネシウムのモル比は1.9以下である。特に電子供与体化合物がアルコールである他の具体例では、アルコール対マグネシウムの比は、1.9以上、例えば、約2.0、約2.1、約2.2、約2.5又は約3.0である。いくつかの具体例では、該方法は、重合用触媒成分を単離することも含む。また、該方法の具体例は、単離された重合用触媒成分から溶媒又はアルコールの一部分を除去することも含む。ある種の具体例では、溶媒又はアルコールの除去は、熱、減圧又は両者の組み合わせを適用することによって達成できる。
ハロゲン化マグネシウムと溶媒との接触は、典型的には、ハロゲン化マグネシウムの固形物と電子供与体化合物又はその溶液との物理的混合によって達成される。接触は、撹拌又は他の機械的撹拌を包含し得る。いくつかの具体例では、混合は、超音波周波数を得られた混合物に適用することによって促進される。ハロゲン化マグネシウムは、上に列挙したハロゲン化マグネシウム化合物のうち任意のものであることができ、且つ、固形物又はスラリーとして製造できる。
電子供与体化合物の添加は、いくつかの具体例では、直接添加によって達成される。他の具体例では、電子供与体は、溶液として供給される。電子供与体化合物として好適なアルコールとしては、上に定義されるような式ROHを有するアルコールのうち任意のものが挙げられる。溶液に添加されるアルコールの全量は、マグネシウムの量から決定される。いくつかの具体例では、アルコール対マグネシウムのモル比は、0〜1.9の範囲にある。他の具体例では、その比は1.9以上であることができる。さらに別の具体例では、その比は、約0.1〜約1.75の範囲にある。他の具体例では、その比は、約0.25、0.3、0.4又は約0.5〜1である。
これらの成分を混合した直後の重合用触媒先駆物質の形成は、任意の態様で実行できる。いくつかの具体例では、これらの成分は、約−10℃〜約200℃の範囲の温度で混合される。他の具体例では、これらのものを0℃〜約160℃で接触させることができる。好ましくは、その温度は溶媒の沸点以下であるべきである。いくつかの具体例では、溶媒、ハロゲン化マグネシウム及びアルコールを約5分から約3日にわたって反応させることができる。他の具体例では、所望のマグネシウム溶液濃度を達成するのに十分な時間は、30分〜5時間である。
いくつかの具体例では、低濃度のアルコールにより、溶液中に存在するハロゲン化マグネシウムのこれまでには得られなかった濃度を有する溶液の形成が可能になる。この溶解ハロゲン化マグネシウムの増大した濃度は、さらに望ましい重合用触媒の製造を可能にする。なぜならば、より多くのハロゲン化マグネシウムが触媒に取り込まれ得るからである。
有用な触媒先駆物質は、触媒成分と遷移金属化合物とを反応させることによって形成される。好適な遷移金属化合物としては、第III〜VI族遷移金属の化合物が挙げられる。いくつかの具体例では、遷移金属は、チタン、ジルコニウム又はハフニウムである。他の具体例では、該金属はバナジウム、ニオブ又はタンタルである。ある種の具体例では、後周期の遷移金属及びランタニド系列のような他の遷移金属が好適である。
遷移金属化合物は、様々な組成式で与えられ得る。いくつかの具体例は、チタンが+4形式酸化状態にある一般式を有するチタン化合物を使用する。触媒成分の製造に有用なチタン(IV)化合物は、次式:Ti(OR)a4-a(式中、Rは、それぞれ、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキソキシ、フェノキシ、デコキシ、ナフトキシ又はドデコキシのような1〜約25個の炭素原子基を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Xは任意のハライドであり、そしてaは0〜4の範囲にあることができる。)に従うハロゲン化チタン及びチタンハロアルコラートである。所望ならば、チタン化合物の混合物が使用できる。
ある種の具体例では、遷移金属化合物は、チタン化合物、ハロゲン化物、及びアルコラート基当たり1〜約8個の炭素原子を有するハロアルコラートから選択される。このような化合物の例としては、TiCl4、TiBr4、TiI4、Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC65)Cl3、Ti(OC6H13)Br3、Ti−(OC817)Cl3、Ti(OCH32Br2、Ti(OC252Cl2、Ti(OC6132Cl2、Ti(OC8172Br2、Ti(OCH33Br、Ti(OC253Cl、Ti(OC493Cl、Ti(OC6133Br及びTi(OC8173Clが挙げられる。
他の具体例では、チタン化合物は還元ハロゲン化チタンである。有用な還元ハロゲン化チタンは、式TiClx(式中、xは0〜4未満の範囲にある、)に従う。いくつかの具体例では、還元チタン化合物は、TiCl3、TiBr3又はTiI3である。
触媒先駆物質を製造する際に使用される遷移金属化合物又は遷移金属化合物の量は、所望の触媒のタイプに応じて広く変化し得る。いくつかの具体例では、マグネシウム対遷移金属化合物のモル比は、約56、好ましくは約20〜約30程度に高くてよい。他の具体例では、マグネシウム対遷移金属化合物のモル比は、約0.5程度に低い。一般に、遷移金属がチタンである場合には、約3〜約6のマグネシウム対遷移金属化合物のモル比が好ましい。
いくつかの具体例では、触媒先駆物質は、ハロゲン化マグネシウム成分と遷移金属成分との物理的混合によって形成される。このような技術の一つはボールミル摩砕である。いくつかの具体例では、ハロゲン化マグネシウム成分の溶液が遷移金属化合物と混合される。他の具体例では、2種成分がボールミル摩砕のような物理的混合技術によって混合されるが、これに限定されない。いくつかの具体例では、ハロゲン化マグネシウム成分と遷移金属成分との混合は、ハロゲン化マグネシウム成分及び遷移金属化合物を含め、様々な種を含有し得る反応生成物を形成させる。ハロゲン化マグネシウム成分と遷移金属化合物との反応は、任意の好適な温度で実行できる。いくつかの具体例では、その温度は、約−70℃〜約100℃の範囲にあることができる。他の具体例では、その温度は、約−50℃〜約50℃であることができる。反応を開始させた後に、その温度を上昇させ、そしてその反応を25℃〜約150℃で30分〜約5時間にわたって進行させることができる。勿論、これらの成分のいずれかの分解を生じさせる温度は避けるべきである。
ある種の具体例では、触媒先駆物質は、次式:
[Mg(ROH)rmTi(OR)np[S]q
(式中、ROHは、1〜約25個の炭素原子を有する一官能性の線状又は分岐アルコールを含み、RはR'又はCOR'であり、ここで、それぞれのR’は、それぞれ、1〜約14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は1〜約14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、Xは、それぞれ、Cl、Br又はIであり、Sは、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択され、mは0.5〜56の範囲であり、nは0、1又は2であり、pは4〜116の範囲であり、qは2〜85の範囲であり、そしてrは0.1〜1.9の範囲である。)の組成式を含む。
いくつかの具体例では、触媒先駆物質は、ルイス酸で処理され得る。一般に、有用なルイス酸化合物は、構造:RgAlX3-g及びRgBX3-g(式中、RはR'、OR'又はNR'2であり、ここで、R'は、1〜14個の炭素原子を含有する脂肪族ヒドロカルビル基又は6〜14個の炭素原子を含有する芳香族ヒドロカルビル基であり、Xは、Cl、Br、I及びそれらの混合物よりなる群から選択され、そしてそれぞれの場合においてgは0〜3である。)を有する。
好適なルイス酸化合物としては、塩化トリ−n−ヘキシルアルミニウム、塩化トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化トリメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化トリイソブチルアルミニウム、塩化トリ−n−ブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、(C25)AlCl2、(C25O)AlCl2、(C65)AlCl2、(C65O)AlCl2、(C613O)AlCl2並びに相当する臭素及び沃素化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
好適なハロゲン化硼素化合物としては、BCl3、BBr3、B(C25)Cl2、B(OC25)Cl2、B(OC252Cl、B(C65)Cl2、B(OC65)Cl2、B(C613)Cl2、B(OC613)Cl2及びB(OC652Clが挙げられるが、これらに限定されない。また、上に挙げた化合物の硼素及び沃素含有同族体も使用できる。ルイス酸はそれぞれ又はそれらの組み合わせで使用できる。
この目的のために好適なルイス酸に関するさらなる詳細は、米国特許第4,354,009号及び4,379,758号に記載されている。所望ならば参照されたい。
いくつかの具体例では、触媒は助触媒で処理できる。1種以上のアルキルアルミニウム化合物が使用できる。いくつかの具体例では、触媒は、部分的に活性化される。このような具体例では、十分な活性剤を使用して10:1、8:1又は4:1の活性剤化合物/Tiモル比を有する触媒を与えるべきである。この部分的な活性化反応は、炭化水素溶媒スラリー中で実施でき、次いで、溶媒を除去するために、得られた混合物を約20℃〜80℃の温度で乾燥させる。いくつかの具体例では、この部分的な活性化は約50℃〜70℃で実施できる。或いは、触媒の鉱油スラリーを活性剤化合物で処理でき、そして得られたスラリーを反応器に供給できる。部分的活性化手順を連続方法で行う別の部分的活性化手順が米国特許第6,187,866号に記載されている。所望ならば、参照されたい。得られる生成物は、同一又は異なる化合物であることができる追加の活性剤化合物によって活性化を完了させた場合には、重合用反応器に容易に供給できる自由流動性固体粒状組成物又はオイルスラリーのいずれかである。
変性触媒の活性化は、通常、重合用反応器内で実施されるが、いくつかの具体例では、該活性化は、重合用反応器の外で実施され得る。活性化が重合用反応器内で実施されるときには、活性剤化合物及び触媒は、別々の供給ラインを介して反応器に供給される。また、反応器への他の液状又はガス状供給を使用して反応器内で追加の活性剤化合物を分散させることもできる。エチレンのような化合物、窒素及び共単量体流れが使用できる。この溶液は、該活性剤化合物を約2、5、15、20、25又は30重量%含有し得る。
他の具体例では、触媒は、活性剤による処理によってさらに活性化され、且つ、溶媒の存在下又は非存在下に添加され得る。追加の活性剤化合物は、活性化されていない又は部分的に活性化された触媒に約10〜約400の全Al/Tiモル比を与えるような量で添加される。いくつかの具体例では、活性化された触媒中のAl:Ti比は、約15〜約60又は約30〜約100又は約70〜約200の範囲にある。
活性剤化合物は、それぞれ又はそれらの組み合わせで使用でき、且つ、Al(CH33、Al(C253、Al(C252Cl、Al(i−C493、Al2(C253Cl3、Al(i−C492H、Al(C6133、Al(C8173、Al(C252H及びAl(C252(OC25)のような化合物が挙げられる。
ここで説明されるハロゲン化マグネシウム成分、触媒先駆物質又は触媒は、特徴的な寸法分布を有する。ここで使用するときに、用語「D10」、「D50」及び「D90」は、Malvern 2600(商標)粒度分析器の手段によりスラリー化剤としてヘプタンを使用して決定されるログ標準粒度分布のそれぞれの百分位数を示す。従って、12μmのD50を有する粒子は12μmの中央粒度を有する。18μmのD90は、該粒子の90%が18μm未満の粒度を有することを示し、8μmのD10は、該粒子の10%が8μm未満の粒度を有することを示す。粒度分布の幅又は狭さは、そのスパンによって与えられ得る。そのスパンは、(D90−D10)/(D50)と定義される。
いくつかの具体例では、粒子は、約30μm〜約5μmの範囲の中央粒度を有する。いくつかの具体例では、その中央粒度は、約7μm、約8μm、約9μm又は約10μmであることができる。他の具体例では、その中央粒度は、約11μm、約12μm又は約13μmである。さらに別の具体例では、その中央粒度は、約15μm、約18μm、約20μm又は約25μmであることができる。いくつかの具体例では、その中央粒度は、粒子分析器での測定中に減少し得る。ここに開示される先駆物質のいくつかの具体例は、約1.5〜約4.0の範囲のスパンを有する。いくつかの具体例では、そのスパンは、これらの値より大きくても小さくてもよい。いくつかの粒子は、約1.6、約1.8又は約2.0のスパンを有するであろう。他の具体例は、約2.2、約2.4、約2.6、約2.8又は約3.0のスパンを有する。他の具体例では、該粒子は、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5又は約3.75のスパンを有する。
さらに別の具体例は、上記の触媒で重合体を製造する方法を提供する。このような具体例では、少なくとも1種のオレフィン単量体がマグネシウム、ハロゲン化物、溶媒、アルコール及びチタンを含む触媒(ここで、該触媒は、他のアルコールを実質的に含まず、しかもアルコール対マグネシウムのモル比は、1.9以下である。)の存在下に重合される。使用されるべき触媒の量は、重合技術、反応器の寸法、重合されるべき単量体及び当業者に知られているその他の因子の選択によって変化し、且つ、以下の実施例に基づき決定できる。
重合方法は、適当な重合速度を保証し且つ極度に長い反応器滞留時間を避けるのに十分高い温度で実施すべきであるが、ただし高すぎる温度のために粘着性の重合体を生じさせない程度に高くない温度で実施すべきである。一般に、温度は、約0℃〜約120℃又は20℃〜約110℃の範囲にある。いくつかの具体例では、重合反応は、約50℃〜約110℃の範囲の温度で実施される。
α−オレフィン重合は、約大気圧以上の単量体圧力で実施される。一般に、単量体圧力は、約20〜約600psiの範囲にある。
触媒の滞留時間は、一般に、バッチプロセスで約数分〜数時間の範囲にある。約1〜約4時間の範囲にある重合時間がオートクレーブ型反応では典型的である。スラリー方法では、重合時間は、望み通りに調節できる。約数分〜数時間の範囲にある重合時間が一般に連続スラリー方法では十分である。気相滞留時間は、一般にスラリー反応に等しい。
スラリー重合方法に使用するのに好適な希釈剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンのようなアルカン及びシクロアルカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、モノ−及びジアルキルナフタリンのようなアルキル芳香族、クロルベンゼン、クロルナフタリン、o−ジクロルベンゼン、テトラヒドロナフタリン及びデカヒドロナフタリンのようなハロゲン化及び水素化芳香族、高分子量の液状パラフィン又はそれらの混合物、並びに他の周知の希釈剤が挙げられる。多くの場合、重合用媒体を使用前に蒸留、モレキュラーシーブによるパーコレーション、微量の不純物を除去することのできるアルキルアルミニウム化合物のような化合物との接触又はその他の好適な手段によって精製することが望ましい。本発明の具体例に従う触媒が使用できる気相重合方法は、米国特許第3,957,448号、同3,965,083号、同3,971,768号、同3,972,611号、同4,129,701号、同4,101,289号、同3,652,527号及び同4,003,712号に記載されている。
重合は、酸素、水及び触媒毒として作用する他の化合物を排除する条件下で実施される。いくつかの具体例では、重合は、重合体の分子量を制御するための添加剤の存在下に実施できる。典型的には水素がこの目的のために任意の好適な態様で使用される。
重合の完了時に又は重合を終了させ若しくは触媒を不活性化させることが望まれるときに、該触媒を水、アルコール、アセトン又は他の好適な触媒不活性化剤と任意の好適な態様で接触させることができる。
重合体の分子量は、溶融流れ測定を使用して示すのが便利である。このような測定の一つは、ASTM D−1238、条件Eに従って得られ、2.16キログラム(kg)の加荷重で190℃で測定され、10分当たりのグラムとして報告されるメルトインデックス(MI)である。ここで説明したいくつかの触媒を使用して製造された重合体は、約0.01〜約10,000グラム/10分の範囲のMI値を有する。溶融流れ速度は、重合体を特徴付けるための別法であり、且つ、上記のメルトインデックス試験で使用される重量の10倍を使用してASTM D−1238、条件Fに従って測定される。溶融流れ速度は、重合体の分子量に反比例する。従って、分子量が高ければ高いほど溶融流れ速度は低いが、この関係は直線的ではない。この溶融流れ速度(MFR)は、溶融流れ速度対メルトインデックスの比である。これは、生成物である重合体の分子量分布と相関する。より低いMFRは狭い分子量分布を示す。ここで説明したいくつかの触媒を使用して製造された重合体は、約20〜約40のMFR値を有する。
また、重合体は、それらの密度によっても特徴付けられ得る。ここでの重合体は、プラックを作りそしてこれを平衡の結晶化度に近づけるために100℃で1時間にわたって状態調整するASTM D−792に従って測定したときに、約0.85〜約0.98g/cm3の密度を有する。このときに、密度の測定は、密度勾配カラム中で行われる。
いくつかの具体例では、重合体の収量は使用される触媒の量に対して十分に高いため、有用な生成物が触媒残渣を分離することなく得られ得る。本発明の触媒の存在下に製造された重合体生成物は、押出、射出成形及びその他の一般的な技術によって有用な物品に加工できる。
次の例は、ここに記載した本発明の様々な具体例を例示するために与えられる。これらは、本発明をともすればここに記載されるように限定して解釈すべきでない。
溶解度の検討
磁気スピン棒を備えた100mL枝付きフラスコのそれぞれに、5.09g(25ミリモル)の固形物[MgCl2 *1.5THF]をN2雰囲気下で添加した。0.5M〜2.0Mの所望のマグネシウム溶液濃度を与えるのに必要なTHFの変化量をそれぞれのフラスコに添加し、そしてそのスラリーを5分間撹拌した。次いで12.5ミリモル(1.45mL)のエタノールを添加して0.5のEtOH:Mg比を与えた。この混合物を60℃の油浴中で加熱し、そして可能であれば2時間にわたってその温度で保持して全てのMgCl2を溶解させた。次いで、試料を室温にまで冷却させた。沈殿した化合物を再度スラリーにし、そして徐々に再加熱した。該組成物がこの加熱プロセス中で溶解した温度を記録した。この溶液又はスラリーを室温にまで冷却させ、そして次に増加量のエタノールを添加した。次いで、このプロセスをこの高いEtOH:Mg比で繰り返した。これらの実験を他のアルコールで同様に実施した。
MgCl 2 (EtOH) 1 (THF) x の検討
磁気撹拌棒を備えた100ccシュレンクフラスコに、8.14gの固形物MgCl2(THF)1.5(40ミリモルMg)を窒素雰囲気下に水浴上で22℃で20ccTHF中にスラリーした。易撹拌性スラリーが得られた。このスラリーに2.3cc(40ミリモル)の純粋なエタノールを添加して1:1のROH:Mg比を与えた。このスラリーは濃厚になったが、懸濁された固形物は溶解しなかった。該スラリーを60℃に加熱したときに、これらの固形物の全てが溶解して溶液中で1:1のアルコール:Mg比を有する2MのMgCl2溶液を与えた。この溶液をゆっくりと冷却させた。45℃で、この溶液は濁り始めたが、沈殿は観察されなかった。このフラスコ及びその内容物を撹拌することなく周囲温度にまで冷却させ、そして結晶を2.5日間にわたって成長させた。溶液プール中の白色固形物の塊が得られた。このスラリーを中程度のフリットによって濾過し、そして細かな針状結晶及び顆粒状の物質を残して10ccの氷冷THFで素早く3回すすいだ。この固形物を室温でN2パージで一晩乾燥させた。収量:1.55g、分析:9.2%Mg、25.2%THF、26.75%エタノール。分析からのFW:231.8、熱重量分析(純粋なMgCl2に対する損失重量)からのFW:220。全組成:MgCl2(EtOH)1.53(THF)0.92
単離された物質は、溶媒和MgCl2/THF物質の混合物である。高分解能TGAスキャンは、50℃〜250℃の温度範囲にわたって6つの主要な損失重量のエピソードを示したが、これは、MgCl2/THFと真正のMgCl2(EtOH)2(THF)2とのTGAの重複であるように思われる。同様に、該物質のX線粉末図は、MgCl2(THF)2、MgCl2(THF)1.5及びMgCl2(EtOH)2(THF)2のピークを含んでいた。1:1のROH/MgCl2を有する純粋な物質は溶液から沈殿せず、むしろ予期される1:1の化学量論的ROH/MgCl2よりも全体的に高い固形物の混合物が得られた。
MgCl 2 (ROH) 2 (THF) 2 の製造
MgCl2(EtOH)2(THF)2:パドル撹拌機及び温度計を備えた500mL三口フラスコに、45g(225ミリモル)の[MgCl2 *1.5THF]を27℃の窒素雰囲気下で130mLのTHFと水浴上でスラリーした。次いで、225ミリモルEtOH(13.2mL)を10分間にわたって添加した。このスラリーは結晶質から透明なスラッシに変化し、そして内部温度を10℃ずつ上昇させた。該スラリーを60℃に加熱したときに、全ての固形物が溶解した。この点での溶液を1:1のEtOH/Mgモル比でMgが1.75モルであると計算した。さらに225ミリモルのEtOH(13.2mL)を添加する間に、濃い白色のスラッジが沈殿し始めた。EtOH/Mg比はこの点で2:1であった。この混合物を25℃に冷却し、そして30分にわたってスラリーした。第1の得られた固形物を粗いフリットを使用して濾過し、そして窒素流れ下で室温で乾燥させた。36gの生成物を回収した。この生成物をTGA及び湿式分析によって同定した。分析:式量(TGA):要求:331.2、実測量:344.9。
要求:Mg:7.34%、実測値:7.89%、要求:THF:43.48%、実測値:46.3%、要求:EtOH:27.78%、実測値23.8%。
MgCl 2 (EtOH) 2 (THF) 2 の熱老化
1バッチの未乾燥固形物を70℃での穏やかな窒素パージ下で加熱した。乾燥した組成物の物質及び配位子分析は、30.1%THF、30.8%EtOHの全組成物を与えた。該試料をさらに乾燥させて、20.5%THF、16.0%EtOHを有する組成物を生じさせた。TGAは、該化合物の重量の損失に相当する分子量を示した。
MgCl 2 (IPA) 2 (THF) 2
化合物を、アルコールとしてエタノールの代わりにイソプロパノールを使用して上記のエタノール含有化合物と同様に製造した。生成物をTGA及び湿式分析によって同定した。分析:式量(TGA)、要求:359.2、実測値:362.7、要求:Mg:6.77%、実測値5.5%、要求:Cl:19.74%、実測値20.0%、要求:THF:40.99%、実測値:39.8%。
MgCl 2 とドデカノール又は2−エチルヘキサノールとの反応
MgCl2のTHFへの溶解度を60℃でこれらのアルコールにより1〜2Mの範囲にまで増大させた。しかしながら、冷却しても結晶化合物を生じなかった。THFの蒸発により、MgCl2と錯体形成したTHF及びアルコールの両方を含有する油質残渣が得られた。
MgCl 2 と1,4−シクロヘキサンジオールとの反応
0.4MのMgCl2THF溶液をジオールで60℃で処理したときに、白色沈殿物がジオールの最初の数滴の添加後直ちに形成した。この沈殿物は、溶液中でのアルコール/Mg比よりも高いアルコール/Mgモル比を含んでいた。1モルのマグネシウム当たり0.25モルのジオールの添加時に、およそ0.5のジオール/Mgの組成を有する沈殿物が得られた。さらに多くのジオールを添加しつつ沈殿を続行した。1モルのMg当たり全0.5モルのジオール(又は1:1のアルコール/Mg)の添加時に、近似組成(MgCl)2(1,4−シクロヘキシルジオール)1(THF)2の濃厚化合物が形成された。要求:Mg:6.84%、Cl:19.95%、THF:40.5%、実測値:Mg:6.19%、Cl:20.0%、THF:39.3%。
MgCl 2 と1,10−デカンジオールとの反応
0.4MのMgCl2THF溶液をジオールで60℃で処理したときに、白色沈殿物が最初の数滴の添加後に形成した。この沈殿物は少量のTHFのみを含有していた。
5:1のMgCl 2 TiCl 3 EtOH/THF溶液の特性
40リットルステンレス製混合容器に、10.2LのTHF、10.7モルの純粋エタノール(492g、625mL)及び4.86モルのMgCl2(463g)を窒素雰囲気下で添加した。このスラリーを55℃に加熱し、そして一晩撹拌した。次いで、0.85モル(168.9g)のTiCl3AAを添加し、そしてその混合物を4時間にわたって撹拌した。2.2:1のEtOH/MgCl2比を有する5:1のMgCl2/TiCl3からなる溶液が得られた。室温にまで冷却したときに、チタンからの汚染を殆ど有しないMgCl2/THF/EtOH付加物からなる白色結晶が沈殿した。該溶液を全て蒸発させたところ、個々の白色及び深緑色の粒子と個々のMgCl2及びTiCl3溶媒和化合物とから構成された粉末状固形物が得られた。
5:1のMgCl 2 (EtOH) 2 (THF) 2 /TiCl 3 触媒先駆物質のボールミル摩砕
これらの成分の相互作用を促進させるために、個々の固形物MgCl2(EtOH)2(THF)2(31.0g、93.6ミリモル)及びアルミニウム還元TiCl3(3.724g、18.72ミリモル)を5:1のMg/Ti比で24時間にわたって窒素雰囲気下で磁器瓶内でボールミル摩砕することによって混合した。顕微鏡下で光を屈折させるピンク色の固形物が得られた。このボールミル摩砕された粒子の粒度分布は、粒度分析器内での撹拌5分後に実質的に変化しなかった。平均寸法は、1.6に等しいスパンで27μmであった。得られた粉末状Mg/Ti組成物をその後の重合のために鉱油中でスラリーした(0.025ミリモルのTi/gスラリー)。
5:1のMgCl 2 (THF) 1.5 /TiCl 3 触媒先駆物質のボールミル摩砕
これらの成分の相互作用を促進させるために、MgCl2(THF)1.5(30.5g、150ミリモル)及びアルミニウム還元TiCl3(6.033g、30ミリモル)の個々の固形物を5:1のMg/Tiモル比で混合した。この混合物を窒素雰囲気下で24時間にわたって磁器瓶内でボールミル摩砕した。レンガ色の非晶質粉末が得られた。得られた粒子の粒度分布は粒子分析器での撹拌の5分の間に著しく低下した。平均粒度は20μmから12μmに低下すると同時に、スパンは3.1から3.8に増大したが、これは、広い粒度分布を反映するものであり且つ僅かに結合した凝集体を示している。得られた粉末状Mg/Ti組成物を次の重合試験のために鉱油中にスラリーした(0.025ミリモルのTi/gスラリー)。
スラリー反応器でのエチレン重合方法
それぞれの実験室規模の重合試験を次のように実施した。1:1のスラリー重合用オートクレーブ中の500mLのヘキサンに、1.25ミリモルのトリエチルアルミニウム((C253A1)を窒素雰囲気下で添加し、次いで0.0075ミリモルのTiを含有する触媒先駆物質の鉱油スラリーを添加した。この反応器を水素ガスで40psigに加圧し、次いでエチレンで計200psigにまでさらに加圧した。重合を85℃の温度で30分間にわたって実施した。
Figure 2005533154
しかして、表1のデータは、触媒成分を含有するハロゲン化マグネシウムが活性な触媒種を形成させる際に有用であることを示している。さらに、このデータは、いくつかのハロゲン化マグネシウムの高い溶解度の利益が、得られた触媒の重合特性に悪影響を及ぼさないことを示している。
上に示したように、本発明の具体例は、ハロゲン化マグネシウムの溶液への溶解度を増大させる方法を提供する。また、具体例は、新規な触媒先駆物質及びこのような先駆物質の製造方法も提供する。他の具体例は、触媒、触媒の製造方法並びに重合体の製造方法を提供する。本発明の具体例は次の利点のうち1つ以上を有し得る。第1に、ハロゲン化マグネシウムの溶解度の増大により、このような触媒及び触媒先駆物質を反応器内でのマグネシウム化合物の沈殿による汚れ及び目詰まりを低減させつつ製造するのが可能になる。また、マグネシウムの溶液へのさらに高い溶解度は、従来可能であったよりも高いマグネシウム含有量を有する触媒先駆物質及び触媒の製造をも可能にする。従って、反応容器当たりにさらに多くの触媒が見込まれ、これは、触媒の製造及び小さなバッチ寸法に関連するコストを削減させる。重合反応に使用されるときに、これらの触媒は、満足できるほど高い活性値を示す。従って、これらの触媒は、既存のマグネシウム−チタン触媒に対する費用効果のある代替物となる。さらに、いくつかの触媒は、現在使用されている触媒の活性に匹敵する活性を有する。従って、ここで説明したいくつかの触媒は、コストのかかる現在のプロセスパラメーターの再設計を必要とすることなく既存の商業用プロセスで使用できる。また、ここで説明したハロゲン化マグネシウム成分を使用して、2002年7月15日に出願されたBurkhard E.Wagner外の同時継続出願「担持重合用触媒」(所望ならば参照されたい)に開示されるような担持重合用触媒を形成させることもできる。また、この先駆物質及び触媒を使用して、2002年7月15日に出願された「噴霧乾燥重合用触媒及びそれを使用した重合方法」(所望ならば参照されたい)及び2002年7月15日に出願された「噴霧乾燥重合用触媒及びそれを使用した重合方法」(所望ならば参照されたい)に開示されるような噴霧乾燥触媒を形成させることもできる。これらの利点は、部分的には、様々な範囲の利用できる化合物及び粒子中でのより均一なマグネシウム分布によって与えられる。その他の利点及び特性は、当業者には明らかである。
本発明を限定数の具体例で説明してきたが、これらの特定の具体例は、本発明の範囲をともすればここに記載され且つ請求されるように限定しようとするものではない。さらに、これらからの変形例及び改変例が存在する。例えば、ここで挙げていない様々な別の付加物を使用して触媒及び触媒先駆物質組成物並びにそれらから作られた重合体の1つ以上の特性をさらに向上させることもできる。重合方法のパラメーター、例えば、温度、圧力、単量体濃度、重合体濃度、水素分圧などは変更できることを理解されたい。従って、あるセットの反応条件に基づく選択基準を満たさない触媒を、それにもかかわらず別のセットの反応条件に基づく本発明の具体例で使用することができる。これらの具体例の全てを単一の触媒について説明しているが、これは、決して、2種、3種、4種、5種又はそれ以上の触媒を、分子量及び/又は供単量体の取り込みに関して同様の又は異なる能力を有する単一の反応器内で同時に使用することを排除するものではない。いくつかの具体例では、触媒は、具体的に列挙されていないその他の添加剤又は変性剤をも包含し得る。別の具体例では、該触媒は、ここに列挙されていない任意の化合物を含まず、又はそれを実質的に有しない。ここで説明した方法を使用して、1種以上の追加の共単量体をも取り込んだ重合体を作ることができることを認識すべきである。この追加の単量体の取り込みは、単独重合体又は共重合体には得られない有益な特性を生じさせ得る。該方法は、1つ以上の工程を含むように説明されているが、これらの工程は、特に示さない限り任意の順序で実施できることを理解されたい。これらの工程は、組み合わせることができ、又は分けることができる。最後に、ここで開示した任意の数は、該数を記載する際に用語「約」又は「ほぼ」を使用するか否かに関わらず、近似値を意味するものと解釈すべきである。最後に述べるが決して重要度が低いというわけではないものとして、特許請求された組成物は、ここに説明した方法に限定されない。これらは、任意の好適な方法によって製造できる。添付した特許請求の範囲は、本発明の範囲に包含されるような全ての変形例及び改変例をカバーするものとする。
本発明の3つの具体例についてのMgCl2溶液のTHFへの溶解度の挙動をアルコール含有量及び溶液温度の関数として例示した図である。 本発明のいくつかの具体例のTHFへの溶解度プロフィルを温度、MgCl2濃度及びアルコール:Mg比の関数として例示した図である。 代表的なハロゲン化マグネシウム含有触媒成分の構造を例示した図である。 本発明の触媒成分についての熱重量分析(TGA)の挙動を例示した図である。

Claims (14)

  1. (a)ハロゲン化マグネシウムと、(b)電子供与体として好適な溶媒と、(c)電子供与体化合物とを含む又はこれらから作られたハロゲン化マグネシウム組成物において、該ハロゲン化マグネシウムが、該溶媒の沸点まで温度の関数として低下しない該溶媒への溶解度を特徴とし、しかも該ハロゲン化マグネシウムの該溶媒への溶解度が0.7モル/リットル以上である、ハロゲン化マグネシウム組成物。
  2. (i)ハロゲン化マグネシウムが塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム又はそれらの組み合わせであり、(ii)電子供与体化合物が1〜25個の炭素原子を有する線状又は分岐アルコールを含み、(iii)溶媒が脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択され、(iv)該アルコール対該ハロゲン化マグネシウムのモル比が0.1〜1.0未満の範囲にあり、(v)該ハロゲン化マグネシウムの該溶媒への溶解度が1リットルの溶媒当たり0.8〜2.5モルのハロゲン化マグネシウムである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記組成物が次式:
    Mg(ROH)rCl2[R"]q
    (式中、ROHはアルコールであり、R"は脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択され、rは0以上1.9未満であり、qは0以上4未満である。)
    の組成式を含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 請求項1に記載の組成物と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択される遷移金属を含む第2成分との反応生成物又は混合物を含む組成物。
  5. 前記組成物が次式:
    [Mg(ROH)rmTi(OR')np[W]q
    (式中、ROHは、1〜25個の炭素原子を有する線状又は分岐アルコールを含み、R'はR'''又はCOR'''であり、ここで、それぞれのR'''は、それぞれ1〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は1〜14個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、Xは、それぞれCl、Br又はIであり、Wは脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択され、mは0.5〜56の範囲にあり、nは0、1又は2であり、pは4〜116の範囲にあり、qは2〜85の範囲にあり、rは0.1〜1.9の範囲にある。)
    の組成式を含む、請求項4に記載の組成物。
  6. 請求項4に記載の組成物と助触媒との反応生成物。
  7. ハロゲン化マグネシウム組成物が
    MgCl2(ROH)2THF2
    を含む、請求項1に記載の組成物。
  8. 電子供与体化合物が1〜25個の炭素原子を有する置換又は非置換の脂肪族又は芳香族アルコールを含む、請求項1に記載の組成物。
  9. アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−ドデカノール、シクロヘキサノール及びジ−t−ブチルフェノールよりなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
  10. 溶媒が脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記アルキルエステルが酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸エチル及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
  12. エーテルがジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
  13. ケトンがアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンチルメチルケトン、3−ブロム−4−ヘプタノン、2−クロルシクロペンタノン、アリルメチルケトン及びそれらの2種以上の組み合わせよりなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
  14. 前記反応生成物又は混合物が、脂肪族又は芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル及び脂肪族ケトンよりなる群から選択される第2溶媒をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
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