JP2005520306A - 固体酸化物燃料電池スタック及びパケットの構造 - Google Patents

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Abstract

固体酸化物燃料電池集成体は、燃料チャンバを形成し且つ燃料チャンバの内側に陽極を支持し外側に陰極を支持する可撓性固体酸化物電解質シートを用いた、多重セル−シートデバイスのパケットを有し、陽極と陰極を電気的に接続することにより、小型/高電圧発電ユニットを形成できる。追加フレームにより、酸化物シートを支持することができ、燃料供給及び空気供給用のコンジットまたはマニホールドを組み込むことができ、それによって、集成体を積み重ねて任意の所要寸法及び発電能力ももつ燃料電池スタックを形成できる。

Description

本発明は固体酸化物燃料電池(SOFC)に関し、さらに詳しくは、発電素子が、気体燃料をパケット内部に導入する手段に接続されている1つまたは複数の内蔵パケットを備え、燃料電池陽極が、パケット内部の、パケット壁の少なくとも一部を形成する可撓性セラミックシート上に配されている、SOFCの構造に関する。
多数の円筒形SOFC構造が知られている。これらにはシーメンスAG(Siemens AG)により提案されているような、長い、または扁平な、または長くて扁平なチューブ構造、三菱(Mitsubishi Corporation)で採用されているような、昇圧アレイを形成するために、縞状に配された帯を表面に備えたジルコニアチューブ、及びロールス−ロイスPLC(Rolls-Royce PLC)により提案されているような多重セル扁平チューブ構造がある。
平板電解質を利用する様々なSOFC構造も周知である。これらは一般に、厚い(0.10mm)電解質プレートと、各プレートに対して1つずつの陽極電極及び陰極電極とを用いる。反復セルユニットは、空気/燃料セパレータプレートとしても機能する大きな集電体を通常備える。各セルの陽極は隣のセルの陰極に面し、セパレータプレートは気体燃料と空気を混合させないために必要である。
さらに新しいプレーナ型構造には、より高い単一セル性能が得られる、約5〜50μm厚の薄い電解質層を支持する0.3〜1mm厚の厚い陽極支持プレートが組み込まれている。これらは、大きな集電体−空気/燃料セパレータプレートを通常備える反復セルユニットも用いる。同じく、陽極は隣のセルの陰極に面し、セパレータ/相互接続プレートは気体燃料と空気を混合させないために必要である。非特許文献1を参照すれば、上記及びその他の固体酸化物燃料電池及びマニホールドの構造が総括されている。
最近の開発されたものとして、薄いセラミック電解質シートを組み込んでいる燃料電池スタック構造などもある。例えば、特許文献1は組み合わされてチャネル付構造体を形成する、薄く可撓性のセラミック材の波形シートを備える燃料電池スタック構造を開示している。金属、セラミックまたはサーメットの導電体がこれらの可撓性シートに直接接合され、陽極と陰極が隣接して対面する構造をもつ多数のシートが燃料電池スタックに配置される。可撓性電解質に基づく別の構造が特許文献2に開示され、特許文献2では、温度サイクル及び熱衝撃に対する集成体の機械的抵抗力を向上させるために、電解質が非平面形状に形成されている。
セラミック体内の急激な温度変化及び温度勾配によるセラミック体の破断が、セラミック材の主要な破壊モードである。したがって、過酷な熱衝撃環境での使用を目的とするセラミック製品は、応力蓄積を回避するために低熱膨張係数材料でつくられる。十分な強度をもつ薄いセラミックシートは、座屈により熱衝撃を緩和できる。薄い波形セラミックシートは波状パターンにより座屈を調節する。
特許文献3は、流体加熱器及びその他の耐熱衝撃性構造体として薄い波形セラミック構造体を使用することを開示している。これらは、特許文献4に開示されているような薄い可撓性セラミックで形成されるに適しており、そのような薄い可撓性セラミックの内のいくつかは燃料電池の電解質としても有用である。耐面内応力性のためのセラミックシートの波形は特許文献5に教示されている。
SOFCシステムのコストの大部分は、先進中核体すなわちセル自体の効率的動作に必要な、規模の大きい周辺または支援システムにかかる。一般に、燃料電池スタックのコストはシステムコストの50%にもなり得て、活性セル自体のコストはスタックコストの何分の1にしか過ぎない。スタックコストのかなりの部分は、絶縁体、配管、プレート等のような、活性セル以外の部品によるものである。会計的には、活性セル以外の部品のかなりの“間接費”がセルに賦課されている。
一般的なプレーナ型SOFC構造では、個々のセルプレートが故障した場合に、スタック内のセル間相互接続及び双極性相互接続の永久性のため、故障セルプレートの交換が困難である。したがって、通常は、多数のセルプレート及び付帯する非セル部品からなるサブスタック全体を交換しなければならない。非セル部品の交換を最小限に抑えて、セルの入ったパケット自体を交換することができる燃料電池スタック構造であれば、かなりの経済的利点が提供されるであろう。
プレーナ型SOFCのスタック構造は、様々なマニホールド及び相互接続機構を備えている。独国ミュンヘンのシーメンスAGにより説明された最近の構造の1つは、アレイ配列された多数の個別セルのそれぞれが、フレーム内の個々の窓に貼り付けられ、並列に動作するものである。フレームは酸化物分散により強化された“Plansee”Cr−Fe合金(オーストリア国ロイッテ(Reutte)のMetallwerke Plansee社によるクロム−鉄−イットリア合金)で形成され、この合金は、セル相互接続、ジルコニアベース固体酸化物燃料電池のフレーム付け及び双極セル構造(非特許文献2)における空気と燃料の分離のために用いられる。フレームに対するセルの封止は、日本国東京の東京ガス株式会社(非特許文献3)による、金属フレーム及び相互接続を組み込んでいるいくつかの燃料電池スタック構造におけるような、ガラスシール材により達成される。
上述したような接合手法を利用するプレーナ型固体酸化物燃料電池集成体では、セラミック電解質を、適切な熱膨張を有する支持フレームに接合する必要がある。3モル%イットリア−部分安定化ジルコニア組成のセラミック電解質の25〜750℃の温度範囲における平均線膨張係数(CTE)は約11.0ppm/℃である。使用温度が750℃もの高温であり、かつ所要のCTEを備えた材料はほとんどない。クロム−鉄及びCr−Ni合金は、相互接続材料及びフレーム材料のいずれについても、燃料電池デバイスでの使用される、業界周知の代表的合金である。これらの合金系には、上述したPlansee合金の他に、タイプ446高クロムステンレス鋼のような金属も含まれる(非特許文献4を参照されたい)。フェライトステンレス鋼の平均CTEは10〜12ppm/℃の範囲にある(非特許文献5)。例には、報告されているCTEが約11.2ppm/℃で最高使用温度が約815℃の、Crを14〜18%含み、残りがFeである、タイプ430ステンレス鋼があり、さらに、CTEが約11.0ppm/℃で最高使用温度が約1100℃の、Crを23〜27%含み、残りが鉄である、タイプ446ステンレス鋼もある。Plansee合金のCTEはほぼ11ppm/℃であるが、イットリア粒界ピン止めにより、使用温度がさらに高い。
燃料電池におけるクロム−ステンレス合金の欠点の1つは、燃料電池の電極に対してクロムが“毒”として作用する傾向である。クロムが燃料電池動作温度でセル内部の雰囲気と反応し、電極上に堆積する揮発性種を形成することは良く知られている。これらの堆積物によって燃料電池陰極の中毒が生じ、セルの性能低下がおこり、最終的には故障に至る。この問題に対して提案されている解決策は、ゲッタ材としてのLa0.9Sr0.1MnO陰極へのLaCrOカバー層の適用またはLaの過剰添加などである(非特許文献6)。
クロムの問題に加えて、700〜750℃の燃料電池動作範囲で“シグマ”形成がおこりやすいという、高クロムフェライトステンレス鋼の長期安定性に関する問題がある。シグマは基合金組成に依存してFe/Cr比が変化するFeCr相である。注目する合金の場合、一般的なシグマ組成はCr約50%及びFe約50%である。シグマ形成の全温度範囲は非常に広く、例えば565〜980℃であるが、700〜810℃の範囲で最も速く形成がおこる。シグマは熱力学的に上記の温度範囲で安定な相であるために形成がおこるが、アニールにより相の溶解を達成できる。
特性へのシグマ形成の主要な影響は、延性及び靭性の低下である。延性の低下は低温で最も顕著である。自由運動に何らかの束縛が生じれば、動作温度と室温の間の燃料電池の温度サイクルにより金属支持構造体に亀裂が生じることがある。シグマ形成は、体積内金属クロムの減損により合金の耐蝕性も低下させ、体積内金属クロム減損により生じる卑金属組成の変化はおそらく熱膨張に影響する。残念なことに、容易に入手できる金属に関する調査によれば、25〜750℃の温度範囲にわたって安定化ジルコニア電解質材料のCTE値に近いCTE値をもつ金属は、ここで論じた金属以外には極めて少ない。
米国特許第5273837号明細書 米国特許第6045935号明細書 米国特許第5519191号明細書 米国特許第5089455号明細書 欧州特許出願公開第1113518号明細書 エヌ・キュー・ミン(N. Q. Minh),「セラミック燃料電池(Ceramic Fuel Cells)」,J. Am. Ceram. Soc.,1993年,第76巻,p.563−588 ブラム(Blum)等,「固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells)IV」,1995年,p.163 ヤスダ(Yasuda)等,「燃料電池−21世紀の電力源(Fuel Cells - Powering the 21st Century)」,燃料電池セミナー(Fuel cell seminar),2000年10月,米国オレゴン州ポートランド,Courtesy Associates(米国ワシントンDC),p.574 パイロン(Piron)等,「固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells)VII」,2001年,p.811 「金属ハンドブック(Metals Handbook)」,1948年 ミヤケ(Miyake)等,「固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells)」,1995年,p.100
非セル部品の交換を最小限に抑えて、セルの入ったパケット自体を交換することができる燃料電池スタック構造を提供する。
本発明は、可撓性電解質シートに基づくSOFCのための新しい構造を提供する。本構造は高電力密度及び向上した設計融通性を提供し、後者はモジュール式製作手法から生じる。本発明のSOFC構造において、セルの電力区画の基本構成単位は燃料が供給される“パケット”である。これらのパケットは、1枚、好ましくは2枚の固体酸化物シートで形成される発電集成体である。燃料電池の陽極はパケット内部に位置し、さらに集成体のための電解質層としてもはたらく固体酸化物シートにより支持されている。燃料電池の陰極はパケットの外部に位置し、酸化物シートの外面上で陽極とほぼ対向する位置に支持される。集成体の各パケットは、SOFC集成体に気体燃料を導入する燃料マニホールドからの燃料コンジットに接続される。
各パケットに組み込まれる電解質シートは、各シート上に多数の電流発生セルを形成するための、多数の陰極区画及び陽極区画を支持するであろう。好ましい実施形態において、それぞれの電解質シートのそれぞれの面に並置された陽極区画及び陰極区画は、それぞれのシート上の別のセルと直列または並列に電気的に接続された挟幅電流発生セルのアレイを形成する、挟幅平行電極すなわちストリップ電極のアレイとして配列される。多重セル−シートデバイスと呼ばれる、そのようなアレイ配列セル及びシート複合体は、本発明の燃料電池パケットのその他の構成素子とを効率的に協働させるのに十分適している。
多数の電極対が組み込まれたパケット集成体の電圧または電流容量を高めるには、それぞれのシート区画上の陽極及び/または陰極の間を電気的に直列または並列接続する導電性相互接続を採用することが有効である。例えば、セル電圧を高めるために固体酸化物電解質シートの厚さを貫通する、いわゆるバイアを埋めて横切る導電性セグメントで形成される導電性相互接続により、シート上の陽極−陰極対を電気的に直列に連結できる。
したがって、主態様において、本発明は、上述したようなパケット素子を用いた固体酸化物燃料電池のための発電集成体に属していることがわかる。パケット素子は、少なくとも一部分が1枚またはそれより多くの可撓性固体酸化物シート区画で形成された密閉内部を有する。
集成体からの電力は、密閉内部に配され、内部に面している可撓性固体酸化物区画の表面上に支持されている1つまたは複数の陽極を、シート区画の外面上に支持されている、対向する1つまたは複数の陰極とともに、介して発生する。陰極及び陽極はシートの両側の、互いにほぼ対向する位置に配置され、電極の重なりの度合いにより、パケット集成体の活性発電面積が決定される。
水素のような燃料ガスをパケットの密閉内部に供給するための燃料給送コンジットのような燃料給送手段も、上記発電集成体の一部として含まれる。集成体から電流を引き出すために、陽極及び陰極に電気的に接続された導電性電流搬送手段も一般に備えられる。
別の態様において、本発明は、積み重ねられた発電燃料電池アレイすなわち燃料電池スタックに集成された、上述したような多数の発電パケットを組み込んでいる固体酸化物燃料電池(SOFC)スタック構造を含む。そのようなスタック構造において、それぞれのパケットは、多数のセル及び相互接続をもつ2つの多重セル−シート電力素子を組み込んだサブスタックを形成する。そのように設けられた発電サブスタックは、かなりの電圧及び電力を発生するだけでなく、いずれかの多重セル−シート電力素子あるいはそれを支援している電気またはガス分配構造体の電気的故障時に容易に交換される。
そのような燃料電池スタックの構成はパケットまたはサブスタック構造を利用する本発明により簡便に容易になり、多重セル−シート電力素子の対向する縁を硬質または半硬質のフレーム素子にシールすることで、それぞれのパケット素子の密閉内部が形成されている。すなわち、上記の構造においては、それぞれのサブスタックがそれぞれ自体の複数の電力発生陽極及び陰極を支持し、それぞれのフレーム素子が、多重セル−シート燃料電池デバイスを物理的に支持するだけでなく、積み重ねられた燃料電池アレイのそれぞれのサブスタックへの燃料及び酸化剤ガスの供給及び排気のためのコンジット手段も定める。
本発明は図面を参照することにより理解を深めることができる。
燃料電池素子構造のモジュール式パケット化には従来手法に優る利点がいくつかある。平板電解質を採用している従来技術の構造とは対照的に、燃料ガス供給部と空気供給部の間のセパレータが不要である。代わりに、電解質シート自体及びシート両側の電極を接続している気密バイア導電体によって有効な燃料−空気分離が達成される。この簡素化によりガスチャンバ及びシールの数が半減し、この結果、信頼性が大幅に向上する。さらに、本明細書に説明されているような構造のパケットは、それぞれが、多重集成燃料電池スタックへ組込む前に個別に試験を行って、それぞれの性能を判断できる。
以下でさらに詳細に要点が述べられるように、本発明のパケット集成体に組み込まれる多重セル−シートデバイスは、それぞれのスタックからの有効な電力出力を達成するため、必要に応じてシールできる。通常は10Wをこえ、さらに一般には25Wをこえるかまたは50Wさえもこえるパケット出力が用いられ、最大出力における電流レベルをさらに高くした上で、20Vないしそれより高い電圧レベルが望まれる。一般に上記構造のパケットは、最低限度、700℃をこえる動作温度までの(少なくとも5回の)多重温度サイクル後に、上記の電力出力レベルを維持するであろう。
本発明にしたがうパケット集成体の構成には、数多くの様々なフレーム構造を効果的に用いることができる。例えば、フレームは機械加工された金属部品で構成することもできるし、打抜き金属フレームを用いることもできる。また、金属及び/またはセラミック(ガラス、ガラス−セラミック及び/またはセラミック)材の複合体が組み込まれた積層フレームまたはフレーム素子を、電解質シートとのより良い熱膨張整合のため、あるいはパケット集成体すなわちパケットのスタックのその他の素子とのより高い適合性のために用いることができる。
使用時の金属の酸化及び/または燃料電池汚染を少なくするため、金属フレーム素子またはその適切な部分に耐酸化被覆を施すことができる。特に、そのような被覆により、セル内に支持されている電極へのクロムの輸送を阻止または防止できる。適する被覆の例として、バナジン酸塩、ニオブ酸塩及びタンタル酸塩からなる群から選ばれる1つまたはそれより多くの化合物を含む被覆がある。酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、Y及びScの酸化物のような希土類元素の酸化物、酸化カルシウム、酸化バリウム及び/または酸化ストロンチウムからなる群から選ばれる酸化物で形成される被覆も適している。
フレーム素子のリセスにより、例えば、電解質シートの縁をフレームにシールするために、シートを熱損傷から保護するためまたは機械加工スタック相互接続部品のためのクリアランスを設けるために、パケットの構成に必須に用いられるシール材または必要に応じて用いられる断熱材のためのクリアランスを設けることができる。フレーム素子の波形または曲率は、パケットまたはスタックの温度上昇または温度降下の間におこる寸法変化を吸収するのに役立つ。
フレームリセスまたは断熱材の使用は、パケット集成体及び集成体スタック内の温度勾配形御のための有効な受動機構をなす。複数のリセスレベルを用いて、電解質シートの縁をシールするリセスレベルを深くするほど有効である。あるいは、また、電解質シートとフレームの間隔が燃料チャンバへのフレーム開口に向かって広がっていく、リセス付フレーム構造を用いることもできる。シートとフレームの間のリセスに断熱材が用いられる場合には、フレーム開口からの間隔が広がるとともに断熱材の厚さを薄くすることができる。
フレーム付パケット集成体内の熱応力を調節するためのその他の方法として、応力追従性を向上させるための、フレームまたは多重セル−シートデバイスでの曲率の使用がある。フレームの場合には、フレームと多重セル−シートデバイスの電解質シートの間への波形金属区画の挿入が有利であり得る。これらの区画は、薄いフレーム延長部または個別のフレーム素子とすることができる。波形の使用により、単軸または二軸歪逃がしパターン、同軸歪逃がしパターンまたは放射状歪逃しパターンを設けることができる。
電解質シート及び/または多重セル−シートデバイスの曲率も有効である。これらの集成体では、フレーム材料、多重セル−シートデバイス組成、電解質シートの縁のフレームへのシールに用いられる材料、縁のシールに用いられるシール温度、フレーム、デバイスまたはシール材の熱膨張係数の内のいずれも、及びこれらの組合せの内のいずれもが、完成パケット集成体の電解質シートの曲率に影響を与える要素となり得る。シートに付けられた曲率は、電解質シートの中点からシートの縁シールされた周縁までで測定された高さ対長さ比が1:600から1:6の範囲にあるかまたは深さが約50μmから100μmの範囲にあることが望ましい。曲率は電解質シートの陽極側または陰極側に向かうものであってもよい。曲率の代わりに、波形が付けられているかまたは波形縁端をもつ電解質シートを用いることができる。
パケット集成体は燃料電池設置のためのパケットスタックを形成するために結合されるから、スタックへの空気及び燃料ガス供給のためのマニホールドが設けられるであろう。そのようなマニホールドは、所望に応じて、フレーム付集成体の内部または外部に設けることができ、内部及び外部の空気及び燃料マニホールドをどのような組合せも用いることもできる。さらに、いくつかの構造については、集成体を抜け出し得るいかなる空気または燃料ガスも捕集して再利用するための外囲器または容器でパケットまたはパケットスタックを囲むことが有用であり得る。
空気及び燃料の流量及び圧力は、スタックの効率的動作を保証するために、所望に応じて調節することができる。圧力脈動または流れの断続によるシステム応力を回避するために、ベローズまたはその他の圧力脈動低減デバイスをスタック構造に備えることができる。多重セル−シートデバイスの縁に沿う流れ制御手段もシステムにおける圧力脈動の影響を最小限に抑えるために役立ち得る。
多重セル−シート構造に基づくモジュール式燃料電池パケット10についての基本的構成が図面の図1〜1bに示され、図1はパケットの平面図であり、図1bはパケットの側断面図である。図示される構成は部分安定化ジルコニア電解質シート12上に支持された4セルのセル−シート構造であり、セルは4対の銀/パラジウム合金電極16〜16aを備える。電解質シートは一辺を除く全ての辺に沿って第2のジルコニア裏打ちシート14にシールされ、シールは通常の熱−易焼結性セラミックシール組成材で形成される気密シール18である。
本構造において、電解質シートに固着された合金電極対16〜16aのそれぞれは、内部燃料電極すなわち陽極16a及び外部空気電極すなわち陰極16からなり、陽極16aと陰極16はシートの対向面上でほとんど重なり合う位置にある。これらの陽極−陰極電極対は、図1bに最も分かりやすく示されているように、シートの内表面上すなわち燃料側面上のそれぞれの陽極の突出端から、順次に連続する、シートの空気側面上の次の陰極の突出端まで、シートを横断している導電性金属合金バイア20で直列に接続される。
パケットの一辺には、セラミックシール組成剤でジルコニアシートに固着されたある長さの繊維状アルミナマット24で形成されている通気性シール22が組み込まれている。内部燃料電極16aに燃料ガスを供給するための手段は、孔が開けられた鋼製給送チューブ26を備え、鋼製チューブ26にはその長さに沿う複数のガス給送開口26aが設けられている。この単純化した構成においては、パケットには多重セル−シートが1枚しか組み込まれていないが、支持ジルコニア電解質シート上に内向きの陽極及び外向きの陰極をもつ第2の多重セル−シート集成体でジルコニア裏打ちシートが置き換えられている、同様の構成をもつデバイスも構成することができる。
上述した多重セル−シートSOFC構造手法は、電圧を急速に高めてそれぞれの多重セル−シートデバイスから有用な電力を発生することができる能力を含む、有意義な発電上の利点を有する。例えば、100対の電極をもつシートがあれば、0.5W/cmの最大電力密度及び500cmの活性セル面積により、〜50V及び5Aで250Wの電力を発生することができる。この比較的高い電圧レベルにおける電力出力は、IR損失が最小限に抑えられるから、比較的安価なリード、例えば断面積が比較的小さい線材を用い得ることを意味する。
多重セル−シート燃料電池構造の特定の利点は、大活性面積シートの製造を簡易化するプレーナ型バイア相互接続構成に固有の比例拡縮可能性である。これらの大面積シートの電圧増大能力により、それぞれのパケットからの比較的小さい電力リードの使用が可能になり、よって、細いリードをもつ比較的大電力の素子を個々の電力素子のリードの間だけの接続を介して統合して、大型燃料電子スタックにすることができる。パケットの電力素子の相互接続に大きな構造的接続が必要とされないから、適切な設計により、物理的分離が容易であり、したがって、燃料電池スタックからの個々の電力素子の取外し及び交換が容易な、基本的に“独立型”の電力源として、パケットを扱うことができる。
前述したように、モジュール式SOFCスタック構成は、適切なガラス、金属、複合材またはその他のシール材により、機械的支持体、例えば硬質または半硬質のフレーム部材に取り付けられた対向多重セル−シートデバイスからなる、縁シールまたは縁近シールパケットを利用して、簡素化される。そのようなフレームは、パケット陰極への空気の接触を容易にするための空気室設置のために、パケット間に開放空間を提供することができる。望ましければ、フレームは、パケットの内表面及び外表面にガスを供給するための燃料及び/または空気コンジットを収めるための、適切にシールされた内部マニホールドをもつこともできる。フレーム内のそのようなチャネルは、燃料電池スタック内の多数のフレーム付パケットの間のガスマニホールド接続を提供するに十分であるだけの簡単な外部マニホールドをもつ、チューブまたはその他のコンジット手段を介してパケットへの及びパケットからの水素含有燃料ガスの導入及び排気を容易にすることができる。このことは、やはり、発電パケット集成体の、あらかじめ定められたいかなる寸法及び電力出力ももち、ある場合には、それぞれ1本しかない燃料、空気及び排気配管でスタック全体に供給する、大きな内部マニホールド型SOFCスタックへの集成を容易にする。
そのような集成体に用いることができるフレーム付多重セル−シートパケット構造を説明する例が、図面の図2〜2bに簡略に示されている。図2をさらに詳細に参照すれば、耐熱鉄合金で形成されたフレーム素子30が、設計及び構成が実施例4の電極/シートモジュールと同様の、第1の10セル電極/シートモジュール32及び、フレームの対向側に取り付けられた、同じ構造の第2のシートモジュール32aを備える、燃料電池パケットのための支持体としてはたらく。それぞれのシートの縁は、陰極アレイ34を外側に向け、陽極アレイ34aをフレーム及び取り付けられたシートで形成される燃料チャンバ8内に向けて、縁シール材44によりフレームにシールされる。
フレーム素子30を貫通して、空気コンジット36及び燃料コンジット38〜38aが設けられているが、これらのコンジットはパケット集成体(シート及びフレーム)に空気及び燃料を供給するためのマニホールド部品として動作する。空気コンジット36は内部側方ポートをもたずにフレーム素子30を貫通し、よって、空気流すなわち酸素流は燃料チャンバ8に入ることなく燃料チャンバ8の脇を流過する。燃料コンジット38〜38bは多重セル−シート32と32aの間の燃料チャンバ8を通して燃料ガス流を流す。このコンジット配置により、コンジット38を介してチャンバ8に入る燃料ガスは矢印5で示される方向にチャンバを横切り、その間に燃料酸化がおこり、次いで費消燃料副生成物が排気コンジット38aを介して燃料チャンバ8から排気される。
図2〜2bに示されるようなフレーム支持パケットを利用するパケットまたは燃料電池スタックの構成は、それぞれのパケットの両面上の露出陰極への空気すなわち酸素の接触を可能にする中間フレームまたはスペーサにより、それぞれのパケットが隣のパケットから分離される、フレーム付パケットを積み重ねるだけの単純な構成とすることができる。酸素またはその他の酸化剤が陰極表面に供給されることになる場合は特に、セパレータは酸化剤チャンバを形成するための密閉“空気”フレームからなることができ、チャンバに酸化剤を給送するために内部または外部マニホールドが備えられる。あるいは、隣接するパケットからの必要な分離を提供するため、パケットの片面または両面上に一体化されてマニホールドが設けられた空気フレーム構造体をそれぞれのパケットに備えることができる。
上述したパケット及びパケットスタック配置は数多くの有用な設計原理を反映している。第1に、多重セル−シート燃料電池アレイを利用するパケットスタック手法は双極マニホールドを必要としない。デバイス対は、ガラス、ガラス−セラミック、金属、ガラス−金属またはサーメットベースシール材を用いて、互いにシールされるか、あるいはフレームまたは縁支持体にシールされ、基本的に硬質のシール材でシールされた燃料“チャンバ”を形成する。そのように結合された2つのデバイスは、デバイスと2つのデバイス+選択可能な(1つまたは複数の)フレームの間にある、燃料チャンバを形成する。これにより通常の相互接続構造体及び付加される空気/燃料セパレータが不要となる。
上述したように、パケットフレームは、ガス及び空気の両者のための分配マニホールドを一緒に形成できる複数の内部チャネルをもつことができる。ガスは、端板に取り付けられた内部充気室または外部充気室から上記の分配チャネルに供給されることができ、分配チャネルのオリフィスにより燃料キャビティまたは空気キャビティに入ることができる。したがって、パケットは容易に集成してスタックにすることができ、試験または修理のため容易に分解することができて、同時に、コンポーネントフレームの形状寸法によりスタック全体にわたる空気及び燃料の分配が保証される。
本発明のパケット及びスタック構造の別の特徴は、デバイスにかかる動作応力の制限に重要な役割を果たす。これらのデバイスの使用中に生じる主要な応力には、熱−機械的応力と圧力差誘起応力があるが、前者はデバイスの起動及び停止時に特に問題となる。熱−機械的応力源には、パケットコンポーネント間の熱膨張不整合、加熱遅れ(熱質量のためフレームの温度はデバイスの他の部分より緩やかに上昇する)及びデバイス動作による温度勾配がある。漏洩も、望ましくない燃料の燃焼が局所的ホットスポットを形成するかまたは全体的な加熱を生じる点で、熱−機械的応力源となり得る。
デバイスにかかる最大温度差は、空気及び燃料ガスに対して向流分配機構を採用することにより効果的に低減することができる。この機構は最高パケット温度をパケットの放出端に対して物理的に移動させることができる。結果として生じる、パケットにかかる最大温度差の低減により動作温度ウインドウをかなり狭く保っておくことが容易になり、よって電池性能が最大化されて材料劣化が最小化される。このことは、過温度電池動作により悪影響を受ける銀またはその他の材料を組み入れている電極構造にとって特に有用である。さらに、パケットの角隅で温度が最高になることを回避することにより、パケットの多重セル−シート電極アレイの波形のような形状寸法設計手段による制御が特に困難な二軸応力が低減される。
向流構造の別の利点は、メンブランにかかる酸素分圧が最大になる空気流入パケット端において燃料が減耗するために、シートにかかる電気化学的駆動力がより一様になることである。向流構造は、スタックの流入及び流出領域における双機能性を可能にする点で、おそらくは、より低費用でもある。
これらのデバイスにおける熱−機械的応力低減に対するいくつかの方策の内の1つしか説明しなかったが、多重セル−シートデバイスの波形またはその他の適切に設計された幾何学的形状が応力管理のための重要なツールであることに変わりない。一括して、これらの幾何学的形状の特徴は多重セル−シートのオイラー座屈を容易にする形状として説明することができる。知られているように、オイラー座屈は圧縮負荷に対する平板または梁の応答(すなわち平板の場合には面内剪断力)であって、印加応力を曲げ応力に変換する。曲げ半径が臨界曲げ半径より大きく保たれていれば、平板は破断しないであろうし、総応力は効果的に低減され得る。波形電解質により容易になるオイラー座屈は、面内張力または圧縮力を低減し、熱誘起応力が最大になるフレーム面での応力許容度を高めるから、多重セル−シートデバイスの面内応力の低減の幇助に特に有効である。
当然、これらのデバイスは印加応力が全くないままにされていることが好ましいであろうが、そうではあり得ないから、デバイスは、座屈が応力解放の主形態であることを保証するために圧縮下に保たれるべきである。波形のない平坦なシートの座屈は純粋に伸長性の印加応力を解放することができないから、このことは重要である。上述したような金属フレームに基づくパケットにおけるあるレベルの座屈、したがってシート圧縮の維持には、フレームへのシートの結合がデバイスの最高動作温度で、またはそれよりわずかに高い温度で、達成されていれば有利である。このようにすれば、そのような温度における電池の動作中に、より膨張の大きなフレームの熱膨張により大部分がセラミックの多重セル−シートに張力がかかることはあり得ない。望ましくは、本発明にしたがうパケット構成に利用される金属フレームは、用いられる電解質の平均線膨張係数に少なくとも等しいか、またはそれより1.5ppm/℃までしか大きくはない平均線膨張係数を有するであろう。
あるレベルの座屈の維持を保証する以外にも、座屈シート区画の曲率半径は最大化されなければならず、複合曲率は可能な限り最小化されなければならない。2次元の薄い平板の座屈の理論は十分に発展してはいないが、(完全に直角な隅のような)急峻な曲率半径を付与する構造要素は回避されることが好ましく、同様に、座屈を制限するかまたは、周波数がより高く、曲率がより小さい座屈モードを付与する構造パラメータも回避されるべきである。他方で、多重セル−シートデバイスとパケットフレームの間のシールの構造についてのシールの幾何学的パラメータ及びフレームの幾何学的パラメータは、多重セル−シートデバイスに座屈の凹状性または凸状性を意図的にあらかじめ付与するように選ぶことができる。これらにより、応力低減のための座屈手段の有効性及び予測可能性が大幅に向上するが、平滑な曲線を描き、急激な方向変化のないシール境界を使用することでさえも有用であり得る。
特許文献2は、固体酸化物燃料電池構造における波形セラミック素子の使用に適用できるいくつかの設計原理を開示しており、多重セル−シートデバイスについての現在の設計は同じ基本設計原理のいくつかから得られている。一般に、デバイスが薄くなるほど、応力低減のための座屈機構は有効になる。これは、ある程度は、セラミックフィルムのような、薄い平板の曲げの下で曲げ半径を限定する臨界割れの大きさが厚い平板についての臨界割れよりかなり大きくなり得るという事実による。事実、デバイスの臨界曲げ半径を許容できないほど小さくすることなく、電解質シートを貫通する大きな丸バイア孔を利用することを可能にし、支持金属パケットフレームにシートデバイスを結合するために可撓性ではなく硬質のシールを利用することさえも可能にするのは、多重セル−シートデバイスの薄い断面である。それにもかかわらず、現在入手できるシート作製材料について、応力低減の有効な手段として座屈を保持するには、一般に、約50μmをこえない電解質厚及び約150μmをこえない電極厚が必要である。
上述したように、本発明にしたがうパケットフレームの作製に選ばれる材料には、適切な熱膨張係数をもつ材料、好ましくは取り付けられた多重セル−シートデバイスに若干の圧縮力を加える材料が選ばれるべきである。これにより、様々な入手可能な固体材料の内のいずれか1つからのフレーム作製が可能になり、あるいは、混成フレーム組成を含む材料の複合及び打抜きまたは鍛造のような手段により形成される厚いかまたは薄いフレーム形成プレートの積層のいずれからのフレーム作製も可能になる。適するフレーム構成方法として、粉末冶金プロセス、または、ガラスまたはセラミックのフレーム部材の場合には、溶融、注入成形、プレス成型、焼結等を含む通常のセラミック処理手法がある。例えば、フレームに低熱伝導度が許容されるかまたは望ましい場合には、ガラス、セラミックまたはその他の非金属フレームまたはフレームコンポーネントを選ぶことができる。金属の積層で形成されたフレーム部材は、(CTEなどの)温度特性または(耐久性などの)化学特性の調整に有用である。現時点で好ましいフレームは金属であるが、より低い熱伝導度または向上した高温耐酸化性が望ましいような場合には、ジルコニア支持体またはアルミナ繊維マットを用いることができる。
打抜き薄金属プレートが一般に経済的であり、ガスコンジット及び/またはガス膨張チャンバを形成されたフレームの一体化部分としてプレート積層に備えることができるように、3次元構造(レリーフ)をつけて形成することができる。プレートのレリーフは、さらに、ガス流のためだけでなく、熱交換のためまたは正確な積み重ねのための構造を形成することができる。
薄く、熱質量が小さいフレームの使用により、フレームとデバイスの間の加熱遅れの低減及びシステム全体の高速温度上昇という付随的な利点が得られる。積層プレートで形成された吸気口及び単層プレートで形成されたエッジフレームのような様々な組合せに、厚いプレート、薄いプレート、打抜きコンポーネント及びインサートを用いることができる。フレーム用またはフレームコンポーネント用のインサートは、特に正確な形状寸法許容度が必要な場合に用いることができる。例えば、ガス吸気オリフィスは、正確に形成すれば、それぞれのパケットへの一様なガス流入が保証されるという利益を得ることができる。パケット間のシールもインサートにより利益を得ることができる。フレームは、薄い波形領域のような、圧力脈動の影響を緩和するために設計された可撓性構造をもつこともできる。
薄い打抜きフレームの使用も、また、加工費用が最小限に抑えられ、空所が金属ではなく空気で満たされているという点で費用効果の高い手法でもあり得る。すなわち、より大きなチャンバ断面をかなりのマニホールド作成費用を負うことなく採用することができる。ただし、断熱及びハウジング費用は若干高くなり得る。
本明細書に説明されるようなスタックのためのパケットは、それぞれが、多重セル−シートデバイスを一組しか備えていないことが多いであろうが、代わりに、多数のデバイス対を単一のフレーム部材と組み合わせることができる。これは、最も一般的には、単一のフレームに設けられた個別の“窓”に多数のデバイスを1つずつシールすることにより達成されるであろう。好ましくは、そのようなパケット構造のためのフレーム部材はフレームの“窓”のそれぞれのためのガス流入口及び流出口のための個別のマニホールドまたはフィードスルーを備えるであろうし、それを除けば窓は互いに隔離されるであろう。このモジュール式手法は、フレーム内の多重セル−シートデバイスの内の1つにクラックまたはその他の物理的故障が生じた場合に、スタックが損傷する可能性を最小限に抑える。
フレーム部材の構成のための金属組成の中で、最も便宜が良く、経済的な金属組成は、熱耐久性があり、膨張が燃料電池電解質シートにほぼ一致する、ニッケルベース合金及び鉄合金である。Plansee(商標)合金及び高クロム鋼はそのような金属合金の代表例である。ステンレス鋼合金は、中間温度(〜800℃以下)で動作する固体燃料電池スタックのための特に魅力的な構造材料である。実例は、極めて適していることが確かめられている、タイプ430及び446ステンレス鋼のような高クロムステンレス鋼である。
パケット構成での使用に選ばれるフレーム材料が、時間とともにデバイス性能を低下させ得る不要な汚染物である、アルカリ、フッ素、シリカ、クロムまたはその他の種の源として、スタック動作温度において、作用しないことが当然望ましい。フレーム材料からのクロムによる良く知られたセル汚染問題は、ニッケル−バナジウム及びニッケル−酸化ニオブフレーム被覆のような手段の使用により対処でき、これらの被覆は、タイプ420ステンレス鋼合金のクロム酸塩形成耐性をかなり向上させる。あるいは、クロムを不動態化するためにシリカベースガラスまたはガラス−セラミック被覆を用いることができ、これらの被覆は、揮発性であり得るクロム種よりも被覆の揮発性が実質的に低い、スタックの空気側で特に有用である。無電解メッキで被着できるニッケルベース被覆は特に魅力的であり、いくつかの用途ではニッケル−ニオブ被覆が酸化物被覆より優れていると思われる。
パケットフレーム素子としての積層構造の使用は、熱膨張制御、すなわち比較的広い温度範囲にわたる多重セル−シートデバイスとの厳密な熱膨張整合という付加的利点を提供する。適切な設計により、目標値を夾叉する熱膨張係数を有する金属を選択することにより、所望の複合材CTEを有する、2つ(またはそれ以上)の金属の積層を作成することができる。与えられた金属の組合せに対し、金属の相対厚を変えて積層の熱膨張係数を微調整することもできる。この設計選択肢に対する唯一の拘束条件は、膨張時にシート平坦性を維持するための、厚さの中心に対する積層応力の対称性である。この目的のため、個々の金属の厚さが、所望のフレーム熱膨張係数CTE並びに個々の金属の熱膨張係数及びヤング率に基づいて決定される。
パケットフレーム構造体として用いられ得るであろう特定の積層の例は、ニッケルコア及びコバール(登録商標)合金表面層からなる「コバール」合金とニッケルの積層である。25〜800℃の温度範囲にわたり平均線膨張係数が11.5ppm/℃になるように計算された層厚で設計したときに、実質的に全上記温度範囲にわたり目標とした平均線膨張係数が達成された。「コバール」合金の非線形熱膨張により、上記温度範囲の低温側(450℃以下)で線膨張係数が若干小さく、高温側で線膨張係数が若干大きくなった。この性能は、必要であれば、より線形の熱膨張挙動を示す金属または合金を採用することで改善でき、一方、そのような積層の熱耐久性は熱膨張挙動がより厳密に互いに整合する熱膨張係数夾叉金属の選択により向上させることができる。
積層フレーム素子の使用にともなうその他の利点には、積層の表面層として比較的不活性な金属を使用することにより、金属/セラミック電解質相互作用及び金属/電極相互作用を防止できる能力がある。そのように積層することにより、積層の内層によるセル汚染を有効に防御できる。強化されたセラミックシール材との結合を提供する表面層を選択することにより、多重セル−シートデバイスのフレーム部材との結合も容易に向上させることができる。
固体酸化物燃料電池におけるシールの重要性は十分に理解されている。パケット内部の燃料チャンバへの空気の漏入を防止するためにはたらくシールが最も重要であるが、燃料電池の陰極側の“作用”領域への燃料の漏出も回避されるべきである。すなわち、燃料/陽極シールは特に堅固でなければならないが、空気/陰極シールは気密である必要はなく、事実、パケットの空気側にはシールが施されないかまたは最小限のシールが施される構造を考えることができる。空気/陰極シールのためのそのような構造の1つに、パケットからの空気の減耗はハウジングからの空気漏出によるだけであるように、シールまたは半シールされた空気加圧ハウジング内にスタック集成体を単に収める構造がある。そのような手法の副次的利点として、この種の外囲器はスタックの熱管理にも有用な役割を果たすことができる。
それぞれのパケット内の陽極アレイからの空気の排除に重要なシールは、多重セル−シートデバイスのそれぞれと多重セル−シートデバイスが取り付けられているフレーム構造体の間につくられるシールである。事実、シールに隣接するフレーム構造体はスタック動作中にパケット内に発現する温度勾配から生じるシール応力の制御に重要な役割を果たす。これらのデバイスの薄いセラミック電解質シートを、より高い熱質量、熱伝導度または熱容量を備えるフレームへ結合及びシールするのに最も有効なものは、温度勾配が緩和される、耐熱衝撃性結合構造である。
シート−フレームシール自体を形成するに有用な材料には、適合するかまたは物理的に適合しない金属とセラミック材の結合に対して技術上知られている、様々なガラス、ガラス−セラミック、金属、ガラス−金属、傾斜分布金属−ガラス及び傾斜分布金属−セラミックシールのいずれか1つを含めることができる。しかし、応力を制限するためにはシール熱膨張及び機械的特性の傾斜分布化が極めて望ましい。適する傾斜分布シールの例は、フレーム表面における全金属から厚さの中間における金属/ガラス混合体を経て、多重セル−シート表面における全ガラス、全セラミックまたは全ガラス−セラミック組成体に傾斜分布するシールである。Duralco 230セメントのような熱硬化性複合材セメントは、使用可能な金属/ガラス混合組成材の例である。
結合構造の様相には、さらに、多重セル−シートデバイスの縁、セルシート/フレーム界面の組成及び形状、及び/またはフレーム自体の組成の改変を含めることができる。シート/フレーム界面における温度勾配の制御に特に有用な技法の1つは、シート縁の温度が周囲のフレーム部分の温度とさらに厳密に一致するように、フレーム/シート結合部をフレーム集成体自体内に引き入れることである。この手法の例が図面の図11及び12に示され、これらの図では、フレーム集成体203及び203aのそれぞれのリセスにより、フレーム集成体の要素による電解質シート214及び215のあらかじめ定められた幅の縁のオーバーハングが生じている。最善の性能のためには、このリセスは平坦な縁部分の、好ましくは、波形電解質ベース多重セル−シートデバイスが用いられる場合にはシートの波形部分の、全幅をカバーするに十分な深さとなっているであろう。
別の有用なシール構造手法は、フレームとシートの間の接合部に耐熱繊維マットのような断熱材を施すことである。波形セルシートの場合、断熱材の被覆領域は、概ねシートの全平坦境界にわたってひろがり、波形シート区画にもかかるべきである。図面の図12はそのような結合部の断面を簡略に示し、図12では、上部パケットフレーム部材205及び下部パケットフレーム部材207の内縁面からだけでなく内部パケットフレーム部材206からも、セルシート214及び215の露出した上縁面及び下縁面を遮蔽するために、断熱繊維マット区画、例えばマットセグメント221が用いられている。この断熱材により、フレームとシート縁の間の温度勾配が緩和され、シートの熱収縮応力の妥当な距離にわたる波形の曲げ/伸ばしによる緩和が可能になる。
上記の結合部保護方策はいずれも熱環境の傾斜分布を緩和し、よって大きな体積にわたり熱膨張/収縮歪を広く分布させることにより、加熱及び冷却速度が異なっていることから生じる応力集中を効果的に“丸める”ものである。可能であれば必ず、大きな半径/十分なすみ肉により、角を丸めた隅を用いることで応力集中を最小限に抑えることは、よく知られた工学原則である。すなわち、例えば、「応力集中回避のための設計法(Designing to Avoid Stress Concentrations)」,Machine Design, An Integrated Approach, 1998年,プレンティス−ホール社(Prentice-Hall Inc.), サイモン・アンド・シャスター(Simon & Schuster), 米国ニュージャージー州アッパーサドルリバー(Upper Saddle River),第2節,p.235において、ロバート・エル・ノートン(Robert L. Norton)は「鋭い角は完全に避け、相異なる外形をもつ表面間には可能な最大の遷移半径を与えること」と指示している。さらに、「材料の強度要素(Elements of Strength of Materials)」, 1940年,バン・ノストランド(Van Nostrand),米国ニューヨーク,p.29において、エス・ティモシェンコ(S. Timochenko)とグリースン・エイチ・マッカラフ(Gleason H. MacCullough)は「脆い材料の場合、応力集中点は高い弱化効果を有することがあり、そのような箇所は排除するか、または大きなすみ肉を用いて応力集中を緩和すべきである。応力の反転を受ける部材においては、材料が延性であっても、進行性クラックがそのような点から出発するようであるから、応力集中は常に考慮されなければならない」と教示している。最後に、また最も簡潔に、「材料強度上級篇(Advanced Strength of Materials)」, 1952年,マクグロウ−ヒル(McGraw-Hill), 米国ニューヨーク, p.48において、ジェイ・デン・ハートック(J. Den Hartog)は単純に「角を丸めろ!」と勧告している。この原理は本明細書に説明される構造にそのまま当てはまる。
上記の応力緩和方策はいずれも、フレーム材及びシート材が同等の熱膨張係数を有しているときに最も有効にはたらく。フレーム材及びシート材が同等の熱膨張係数を有するという条件により、フレーム間の接合部内に実際に埋め込まれているシート縁部分を、ほとんど応力を受けないかあるいは軽く圧縮されるだけにすることが可能になる。セラミックシート縁がかなりの引張り応力を受ける構造は回避されるべきである。
パケットスタック構成の別の重要な態様には、隣接パケットフレーム間、あるいはパケットフレームと隣接する空気フレームまたはその他のパケットスタック全体にわたる燃料ガスの分配にかかわる構造体の間に、十分なシールを得る態様がある。パケット集成体及び空気フレーム部材によりスタック内に形成される連続燃料チャネルのシールは特に重要である。
これらの金属フレーム部材間のシールは数多くの方法で作成することができ、そのような方法の1つに、隣接フレーム部材間の“膨張シール”の使用がある。そのようなシールの特定の例は、タイプ316ステンレス鋼リングインサートがタイプ446ステンレス鋼のパケットフレームのスタックの隣接燃料チャネル開口間の架橋コンジット部材として配置される、シールである。タイプ316ステンレス鋼の熱膨張係数(18ppm/℃)はタイプ446ステンレス鋼の熱膨張係数(11.5ppm/℃)より大きく、よって、725℃のスタック動作温度においては、パケットフレームの燃料マニホールドチャネル壁に対するリングインサートの膨張が、パケット間の気密シールを形成する。このタイプのシールでは、裸金属でシールリングを形成でき、あるいは、気密シールを確実にするための補助として、ニッケルのような、または金のような耐蝕性貴金属のような、別の金属でシールリングを被覆することができる。
スタックシールの別の手法には、セラミック材またはガラス−セラミック材で形成される同様のシールリングの使用がある。これらの材料は、高温におけるインサートの経時降伏及びクリープが大きくはないという利点を提供する。いかなる場合にも、燃料ガスマニホールドシールに関する上記手法の内のいずれか1つに集中することが、空気/燃料混合の確度及び可能な混合度合いが燃料マニホールドシールの有効性に正比例して減少するという点で、効率的であり、費用効果が高い。
コンプレッションシールがスタック構成に選ばれる方法である場合に意識すべき重要な事柄は、パケットフレーム、全ての付加空気フレーム部材、及びパケットシール近傍の多重セル−シート縁の縁面平坦性の度合いである。これらのコンポーネントのいずれの平坦性における欠陥も、電極アレイを支持している電解質シートにクラックの発現をおこさせ得る。十分に平坦なフレーム部材が入手できない場合の、適する代替シール手法は、多重セル−シートデバイスを適するセラミックフレーム上に搭載し、次いでフレーム付デバイスを金属ケースのスロットに挿入することである。
本発明にしたがう燃料電池スタックへの配置に適する特定のフレーム形状及びフレーム集成体の図が、図面の図3〜9に示されている。図面の図3は、本発明の構造の1つまたは複数のフレーム支持パケットにマニホールドをつけて燃料電池スタックにするためのフレーム集成体40の側面分解組立図を示す。本図において、フレーム素子30は電解質シート32の間に配置されており、空気プレート42がフレーム素子30,電解質シート32及び縁シール44の両側で集成体に結合するように配置されている。次いで、フレーム素子、電解質シート及び空気プレートを結合して一体集成体にするために端板46が用いられ、フレームコンジット46aが、集成体への燃料及び空気の導入及び集成体からの排気ガス放出のためのマニホールド手段を提供する。
図4は、図5に示されるようなタイプの多重セル−シートパケットモジュールの基本コンポーネントの、正確な比例関係にはない、すなわち比例尺で描かれていない、透視分解組立図である。図4において、2つの多重セル−シートデバイス101及び102は、多重セル−シートデバイス101及び102の縁がそれぞれフレーム103の表面及び裏面にシールされるときに、フレームとシートデバイスで画定される空間内の場所105に燃料チャンバが形成されるように、機械加工燃料電池パケットフレームに隣接して配置される。デバイス101及び102は、それぞれのデバイスの陽極が燃料チャンバに面するであろうような向きで、配置される。
機械加工プレート104からなる追加モジュールコンポーネントは、集成されたときにフレーム開口107により定められる空間内に空気チャンバを形成する、モジュールのための空気フレームとしてはたらく。このチャンバに入る空気は場所105にある燃料チャンバから見て外側に向いているデバイス102の表面上に配されている陰極にかけて流れる。空気プレート104は、所望に応じて、燃料電池パケットフレーム103に永久結合してもしなくても差し支えない。
図5にモジュール108として示される集成パケットモジュールは、燃料電池スタックのための基本反復ユニットを形成する。これらの基本反復ユニット108は、図6に示されるように重ね合わされて燃料電池116を形成し、図6は、同じく正確な比例関係にはない、すなわち比例尺で描かれていない、そのようなスタックの透視分解組立図である。完成集成体において、スタックは端板111及び112をさらに備えることになるであろう。端板111及び112は、貫通ボルト115のような手段により、いくつかのモジュール108とともに結合されて一体集成体にされる。
本スタックのパケットへの空気は、これらのフレーム(図5)の空気吸気口119を介して空気フレーム開口107の空気チャンバに適切に給送され、酸素が減耗した排気ガスは排出空気流出口120を介してチャンバからでる。以下でさらに十分に説明される、空気フレーム104の多重セル−シートデバイス102に面する表面の逃げが付けられた部分は、ガスの流通を提供し、空気吸気口/流出口190/120と空気チャンバの間に空気膨張域(チャンバ)を形成する。同様に、燃料ガスは、コンジット109及び110のそれぞれにより、パケットフレーム開口内の燃料チャンバ内に給送され、以降で説明されるように流れの膨張をやはりともなって、燃料チャンバから排気される。燃料ガスの空気チャンバへのいかなる漏洩も防止するため、膨張ワッシャ106(図4)が、スタックの、隣接する空気フレーム104と燃料パケットフレーム103の間の相互接続燃料コンジット109及び110に設けられる。
空気及び燃料ガスは、充気室としてもはたらく太い外部マニホールド/分配チューブにより燃料電池の両端に供給され、流入ガス圧はスタックをガスが適切に流過することを保証するために燃料及び空気チャンバに対して指定される圧力より十分に高い。空気供給はマニホールドチューブ114を介し、マニホールドチューブ114から、より細い空気分配チューブ118(図7)がスタックの両側にある空気吸気口119に接続している。コンジット120からの排出空気は細い空気捕集チューブ132及び太いマニホールドチューブ134を介して引き出される。
スタックへの燃料供給はマニホールドチューブ113を介し、マニホールドチューブ113から、より細い燃料分配管(図示せず)がスタックの両側にある燃料吸気口109に接続している。燃料排気コンジット110から排出される燃料ガスは細い燃料捕集チューブ117(図7)及び太いマニホールドチューブ133を介して引き出される。
本事例の場合、マニホールドの内のいくつかはスタック外部にあるが、内部マニホールドまたは外部マニホールドの選択は、システムコスト要件のような事項だけでなく、スタック構造にとられるシール手法にも依存し得る。図6〜9に示される構造においては、大容積外部マニホールドが(ガスの圧縮性による)供給圧変化にかなりの大きさの緩衝を与えるに十分な充気室容量を提供するが、望ましければ、圧力脈動平均化するためにベローズまたは膨張チャンバのようなデバイスを、さらにまたは代替として、用いることができよう。
図6〜9に示される構造においては、内部燃料分配コンジット109〜110及び内部空気分配コンジット119〜120が、パケット間の均等分配を可能とし、充気室からパケットへの圧力降下を制限するに十分であるより大きな断面積を有する。図6〜9に示される分配構造に対して考え得る代替分配構造は、マニホールドのための内部コンジットを廃して、補助配管により大きな充気室管からそれぞれのパケットにガスを直接入れる構造である。
スタック内の空気チャンバ及び燃料チャンバに入る空気及び燃料ガスの流量は、多重セル−シートデバイスの陰極面全体及び陽極面全体にかけて比較的一様であることが望ましい。それぞれのパケットへの及びそれぞれのパケットからの流量を調整するため並びにパケットからパケットへの十分な流量及び流量一様性のいずれをも確保するため、燃料コンジットと燃料チャンバの間及び空気コンジットと空気チャンバの間でフレーム内にガス膨張チャンバまたはガス膨張域を設けることが有用である。そのような膨張域は、空気及び燃料チャンバにかけて、したがってそれぞれのデバイスにわたって一様分配を提供するために、ガスがチャンバに入る前に、ガス流速を下げ、流入ガスの流れ場を広げるように機能することができる。基本的目標は、スタック内の吸気口−流出口間圧力降下及びチャンバ−チャンバ間圧力降下を最小限に抑えること及び、起動時及び停止時に、予測可能で限定された圧力振幅を確立するように、比較的一様なメンブラン差圧及び流量を提供することである。パケット内に等圧状態が達成されれば最適である。付随的目標は、ガス圧及びガス流量を、パケット内部ではなく、吸気口オリフィス及び流出口オリフィスの断面積、及び後続する膨張チャンバにより制限することである。このようにして、パケットにかかる圧力脈動の影響が弱められる。
燃料パケットフレームのためのガス膨張域またはガス膨張チャンバに適する構造の1つが、図4のフレーム103の拡大斜視図である図面の図8に示される。本フレーム構造において、膨張チャンバはフレーム開口105を定めるフレーム内縁へのビスケット切込125からなり、フレーム内縁は燃料チャンバの周縁としてはたらく。設けられたビスケット切込の深さは、コンジット109のスロット付開口121により例示されるように、ビスケット切込が燃料コンジット109及び110と交差し、燃料コンジット109及び110との流通を提供するに十分に、フレーム縁の幅内に延び込む深さである。
チャネル溝131はフレーム上に搭載された多重セル−シートデバイスへの電流リードのための経路を提供し、そのようなリードは、以降でさらに十分に説明されるように、インサートまたは外装を用いて適切に絶縁される。多重セル−シートデバイスをフレーム内にシールすることができ、それでも多重セル−シートデバイスがフレーム表面の平面より上方に突き出して隣接する空気フレームと接触することのないように、十分な深さをもつリセス130がパケットフレームの内縁をめぐって設けられる。セルデバイスがそのようにフレームに重なり合っていることにより、シールは全体的にデバイスの縁またはその近傍でリセス領域においてなされる。
パケットフレームの内表面により、一様な流れに影響を与える、パケット内のガスにかかる摩擦抵抗力が誘起され得る。これは、側流を過剰にさせずに、活性領域における流れの撹乱を回避するために、流れ制限縁構造(図8の縁123)が多重セル−シートデバイスの活性領域の十分外側にあることを保証することにより、簡単に対処できる。
さらに、空気フレームからの空気の流れを改善するためのガス膨張域またはガス膨張チャンバが、図4の空気フレーム104の拡大斜視図である、図面の図9に示される。本構造においては、逃げ部128が空気流入コンジット119を介する空気チャンバへの空気の流れの一様分布化に役立ち、一方、逃げ部129は排気コンジット120への排出空気の捕集のための拡大域を提供する。上記のパケットフレーム及び空気フレームの実例のいずれにおいても、膨張域のくさび形状または“ビスケット”形状により、膨張域から燃料チャンバまたは空気チャンバへの出口における一様な流れを保証するに十分な摩擦抵抗力が加えられる。
上述したような複数の膨張チャンバをこのように使用することにより、設計の融通性が向上し、PEM構造に通常のタイプの複雑な内部チャネル及び従来のSOFCマニホールド機構の必要性が小さくなる。本手法の有効性を、図面の図8に示される構造のコンジット及び膨張チャンバからパケットフレーム103内の燃料チャンバを通って流れている燃料ガスについて計算された流れ場をグレイスケールで示した流れ図である、図面の図10に簡略に示す。さらに、同じ手法により、図面のスタック116に示されるような(燃料及び空気がパケットの両面から供給される)燃料−空気向流ガス供給構成が容易になる。これにより、通常用いられるSOFCデバイスよりかなり大きいSOFCデバイスに対してさえ、向流構造が実施可能になる。すなわち、12cm幅,18cm幅の多重セル−シートデバイスを、あるいはさらに幅が広い多重セル−シートデバイスでさえも、スタックに用いることができ、ここで説明されるように、複数のチャネル及びチャンバにより比例拡縮に対する融通性が効率的に提供される。
パケット及びスタック構造は、燃料電池の動作中に生じる圧力差誘起応力に耐える必要があることにより実質的に影響を受ける。パケットまたはスタック内に発現する最大ガス圧応力の制限は、一般に、一様ガス流条件及び適切に設計されたガスチャンバを提供することにより対処される。間隔が狭まるほど、与えられた体積の燃料または酸化剤ガスに対するガスの流速及び圧力が通常は高まるから、パケットのシート間隔及びパケット間隔が重要な役割を果たす。ガス流速が高まると圧力差に影響することがある多重セル−シートデバイス表面の曲率の有無も、要因に含められるべきである。
特許文献1は、スタック内の燃料電池層を分離するために波形セパレータを使用することを開示している。本発明にしたがうスタックでは、そのようなスペーサ層は、空気チャンバ、さらに好ましくは燃料チャンバにおいて有用な場合もあるだろうが、一般には必要ではなく、加えて、多重セルシートの各部への質量輸送の抵抗及び障害が付加されるという欠点をもっている。慎重な設計により、これらのスタックでのセパレータの必要性は、すべて容易に排除できる。
図6〜11に示されるようなスタックの動作において、スタックの両側にある燃料充気室113からの燃料は、端板111及び112に取り付けられた、参照数字117で指定されるような、チューブによりスタックに供給される。燃料は次いで、空気フレーム及び燃料フレームを貫通して位置合せされているチャネルにより形成された分配チャネルに入り、分配チャネルから流量制限オリフィス121,ガス膨張チャンバ122を通って、燃料チャンバ105に入り、多重セル−シートデバイス上の陽極アレイに供給される。ある程度費消された燃料はガス膨張域125を通って燃料チャンバを出て、フレームの位置合せされたチャネルにより形成された排気コンジットに入る。このようにして、パケットの全てからの排気が集められ、117のようなチューブを介して排気充気室133に入る。
同様に、空気は空気充気室114を通ってスタックに入り、118のようなチューブを介して分配され、端板を通って、空気フレームの位置合せされた開口119により形成されたチャネルに入る。空気は次いでオリフィス126及び膨張域128を通過して、空気チャンバ107に入って、空気チャンバ107を通過するが、このときに空気中の酸素がある程度減耗する。酸素が減耗した空気は次いで、ガス捕集域129及び127を通って空気チャンバ107を出て、空気フレームの位置合せされたチャネル120により形成された排気チャネルに入り、排気チャネルから端板を通り、チューブ132を介して酸素減耗空気充気室134に入る。
打抜きまたはレーザ切断で形成されたフレームまたはフレームコンポーネントの使用は、本明細書で上述したような燃料電池スタックのためのパケットフレームの製作の費用効率の高い手段である。例えば、5層の薄い金属または複合材からなる積層フレームで図8に示されるようなパケット燃料フレームを置き換えることができ、位置合せされると、上述したコンジットと同様のコンジット構造を形成する孔が開けられた薄いプレートが重ね合わされる。すなわち、孔は組み合わされて、重ね合わされると全プレート層を通過する、空気及び燃料分配チャネルを形成することになろう。これらのコンジットにより分配される燃料流及び空気流のための絞りオリフィスを容易に設けることができ、多重セル−シートデバイス及びこれらのデバイスをフレームに搭載するために用いられるシール材を受け入れて支持するためのリセスも容易に設けることができる。
図5の一体集成体と機能形態が同様の積層フレーム燃料電池パケット集成体の一端203の簡略な側断面図が図面の図11に示される。図11では、2つの多重セル−シートデバイス214及び215が積層燃料フレーム部分集成体205−206−207にとり付けられる。フレームに備わる表面形成プレート211及び212には、シートデバイス及びシートデバイスをフレーム表面形成層205及び207にシールするシール材216のためのリセスが設けられる。プレート205及び207は、鑞付け、融着、溶接、レーザ溶接、ガラスまたはセラミックフリット、または基本的に一体構造を提供するに適するその他のいずれかの手段により、プレート211及び212にシールすることができ、205,206及び207の間のシールはフレーム付燃料パケットに必要な程度に気密である。全ての場合において、積層構造を結合するシールはプレート間またはプレートの縁に設けることができる。
例えば、スタックからの個々の集成体の自由な交換及び試験を容易にするためのモジュール反復構造を提供するために、上記の燃料電池パケット部分集成体にさらにプレートを結合してもよい。図11のパケット集成体203では、例えば、パケット部分集成体の一方の側に空気チャンバを設けるための一体型空気フレームが積層プレート217,218及び219で形成されている。この構造の有用な特徴は、プレート207,212及び217の組合せにより形成されたリセス220が存在し、プレート層217が、空気チャンバ及び燃料チャンバ内のシートデバイスとこのリセス内にあるシール材の間の温度勾配を制御するためのオーバーハングフレーム部を与えていることである。空気フレーム層の熱質量が、そのようなリセスがない場合に発現する温度勾配より緩やかな温度勾配をシール領域に生じさせる。
空気フレーム部分集成体及び燃料フレーム部分集成体の上述した集成体は、ほとんど全ての所望の寸法をもつ燃料電池スタックの構成のための完全な構造及び機能性反復ユニットを形成する。この構成ではパケット集成体が完全であり自蔵式ユニットであるから、大形スタックの構成に用いられる前に漏洩またはその他の欠陥についてのそれぞれのパケット集成体の100%独立な試験を実施することが実用的であり、また有利である。
別の積層パケットフレーム集成体の縁区画203aが図面の図12に簡略な側断面図で示される。この構成では、多重セル−シートデバイス214及び215がシールされる積層燃料パケットフレームが層205−211−206−212−207からなり、層206の両側に層211及び212の厚さ分のリセスが形成されている。しかし、本構造では、それぞれのリセスにおける断熱材221のセグメントの挿入により、シール領域の温度勾配がさらに緩和される。付随的利点は本構造のシール216がパケット集成体の空気側に配置されることである。この配置は、シール材が長期使用中に陽極性能に悪影響を与える可能性を有する場合に利用することができる。
また、本発明にしたがう燃料電池スタック集成体のための空気パケットフレーム集成体及び燃料パケットフレーム集成体を使用することにより、その他の多くの構造で利用できるよりも広範で多くの、熱管理及び燃料流処理のための選択肢が提供されることにもなる。例えば、燃料マニホールド内またはその近くに熱交換機を組み込むことにより、流入ガスを加熱するためにスタックからの廃熱を使用することができる。そのようにすれば、熱交換機を流過する低温燃料ガスはスタックの燃料チャンバへの導入の前に予備加熱されるであろう。
例えば燃料ガス改質のための、内部熱交換機またはその他のガスチャンバは、フレーム層として金属打抜きを用いることにより、空気パケットフレームまたは燃料パケットフレームに便宜よく直接組み込むことができる。例えば、ガス膨張チャンバと燃料チャンバの間にチャンバ空間を与える細長い流入区画を燃料パケットフレームに設けることができ、このチャンバ空間に、フレーム表面上に支持された改質触媒あるいは、触媒を含有する、表面積、質量輸送またはガス混合を高めるための多孔質気泡材料、ウール、フェルトまたは大表面積ハニカムを備えることができよう。また、一部触媒酸化改質、疑似自動熱改質及び/または流れ改質のための触媒を同様の構成に組み込むことができよう。向流燃料−空気分配を特徴とする本スタック構造においては、吸熱反応のためのあらゆる熱を、加熱された排出空気により提供することができよう。Ni金属、貴金属、ペロブスカイト、及び六アルミン酸塩のような金属母材触媒を用いることができよう。
同様に、燃料排気チャンバの延長により、流入空気をある程度まで予備加熱するための手段が提供されよう。熱交換を向上させるため、フィンのような構造をフレームチャンバまたはコンジットに設け得るであろうし、あるいは突出金属ハニカム区画をフレームチャンバまたはコンジット内に取り付けることもできよう。
フレーム積層を打ち抜いてフレームコンジットを流過するガスのための内部迂回経路をつくることにより熱交換を強めることができる。そのように形成されたガス経路は、多重セル−シートデバイスの迅速な一様昇温を確実にするために、フレームの流入端または流出端に、あるいは辺に沿って、設けることができる。熱交換は、例えば、気泡材料、フェルト、ウールまたは突出金属モノリスのような適する材料の挿入により、ガス分配チャンバで行うこともできる。熱交換及び熱管理を向上させるために、マニホールドフィーダーチューブまたは箔分配器の同様の改変を用いることもできる。
ある程度費消された燃料は、補助内部排気チャンバに捕集するか、または熱を生成するために空気中で燃やすことができる。捕集手法により未費消燃料及び蒸気の一部または全ての再利用が可能になり、蒸気は電気−熱同時発生/HAVCのような用途または複合サイクル用途に用いることができ、熱発生は本システム構成の重要な機能となり得る。排気チャンバまたはコンジットの表面は、触媒化する、すなわち、被覆されたフェルトまたはハニカムのような、触媒基板とすることができ、費消燃料熱生成を最大化する必要がある場合に、汚染物質の放出を低減するために用いることができる。上記スタックの高電圧/小型性により、上記スタックは可搬電源のためのAPUのようなモバイル用途に理想的となる。薄い、低熱質量多重セル−シートデバイスと組み合わせた、軽量フレームコンポーネントの採用は、起動時間が最短化されなければならない、上記用途に対して極めて重要である。
多重セル−シートデバイスの構成に利用される材料には、既知のまたは高温固体酸化物燃料電池製作に適すると認められる材料または配合物であれば、すべて含まれる。しかし、好ましくは、上記スタックに用いられるべき特定の材料は、本明細書で上述した高効率モジュラー式SOFC構成に必要な可撓性電解質縁シール及びフレーム付け手法との最適適合性に関して選ばれることになろう。
一般に、可撓性多重セル−シート構造の構成に用いられる電解質シートの厚さは、45μmより薄く、好ましくは30μmより薄く、最も好ましくは5〜20μmに保たれることになろう。可撓性多結晶セラミック電解質シートにより、耐熱衝撃性及び電気化学的性能がともに高められ、そのようなシートの例が、本明細書に参照として含まれるケチャム(Ketcham)等の特許文献4に開示されている。そのような電解質に適する組成の例として、部分安定化ジルコニアまたは、Y,Ce,Ca,Mg,Sc,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Ti,Sn,Nb,Ta,Mo及びWの酸化物並びにこれらの混合物の酸化物からなる群から選ばれる安定化添加剤がドープされた安定化ジルコニアなどがある。
本発明はいずれか特定の電極系、集電体系またはセル相互接続材料系にも限定されるものではない。すなわち、白金、白金合金、銀またはその他の貴金属、ニッケルまたはニッケル合金の線材またはメッシュで一般に形成されるような構造を用いることができ、これらの材料またはストロンチウムドープクロム酸ランタンまたは耐熱金属サーメットのような材料の被覆またはパターン層も用いることができる。これらの導電構造体は、電極層の上部または下部に、あるいは縁に沿って設けられる集電体としてはたらくこともできるし、あるいは層間相互接続としてはたらくこともできる。
あらかじめ焼結された電解質との組合せに有用な電極材料の中には、ニッケル/イットリア安定化ジルコニアサーメット、貴金属/イットリア安定化ジルコニアサーメットのようなサーメット材があり、これらは陽極材料として特に有用であるが、陽極材料としての使用には限定されない。有用な陰極材料には、貴金属/イットリア安定化ジルコニアサーメットの他に、ストロンチウムドープ亜マンガン酸ランタン、その他のアルカリ土類金属がドープされたコバルト酸塩及び亜マンガン酸塩のようなセラミックまたはサーメット材がある。上述の例は、使用され得るであろう様々な電極及び相互接続材料の例示に過ぎないことはもちろんである。
本発明にしたがう燃料電池構成に有用な陰極材料及び陽極材料は、貴金属及び貴金属間合金、例えば銀合金のような、高導電性であるが比較的耐熱性の金属合金からなることが好ましい。このタイプの特定の合金電極組成の例には、銀−パラジウム、銀−白金、銀−金及び銀−ニッケルからなる群から選ばれる銀合金があり、最も好ましい合金は銀−パラジウム合金である。
別の電極材料として、上記の金属または金属合金の多結晶相セラミック充填材とのブレンドで形成されたサーメット電極がある。ここでの使用に好ましい多結晶セラミック充填材として、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、安定化ハフニア、部分安定化ハフニア、ジルコニアとハフニアの混合物、ジルコニア含有酸化セリウム、ジルコニア含有ビスマス、ガドリニウム及びゲルマニウムがある。
上記の燃料電池パケットに含まれ得るその他の構成要素の例は、陽極アレイ及び/または陰極アレイと電気的に接触して設けられる低抵抗集電グリッドまたはその他の導電性構造体である。これらは、電極内の電流分布損失を低減することによりセルの内部抵抗を下げるためにはたらくことができ、これがなければ内部抵抗が高くなるであろう。
本発明の特定の実施において、モジュール式パケット手法はパケットを形成するために可撓性部分安定化ジルコニア(ZrO-3モル%Y)シートを用いる個別耐熱衝撃性燃料電池の製作に用いられた。それぞれのパケットに薄い電解質シート上に支持された上述の銀−パラジウム組成の複数の電極を組み込んだ場合に、1000Wをこえる電力出力を達成することができる燃料電池スタックが容易に提供される。
デバイス間の電気的相互接続は、所望に応じて、外部で行うことも、内部で行うことも可能である。また、絶縁体であっても導電体であっても、フレームはスタックの回路構成に重要な役割を果たし得る。フレームがガラスまたはセラミックなどの絶縁体であれば、フレームは挿入された電気リードを短絡をおこさずに支持するであろう。フレームが金属であれば、フレームは、例えば共通接地を提供することにより回路に加わるか、または被覆、インサート、絶縁チューブによりフレームを電流リードから絶縁できる。
単一パケット内の複数の多重セル−シートデバイス間で接続を行うこともできる。有利なことに、これらのデバイスの高電圧出力により比較的小電流ですむから、わずかな断面積の接続しか要しない。集電及び、金属−セラミック複合構造体のような電極付シート間の相互接続に適する手法は、特許文献2に説明されている。特許文献3に説明されているセラミック−金属積層のような別の構造も用いることができる。
それぞれの燃料電池パケット内で、2つまたはそれより多くの多重セル−シートデバイスを直列に接続するために、線材、リボン、フェルトまたはメッシュの形態を有するNi金属を用いることができる。リードを燃料電池内に保持することにより、高温のデバイスシートから低温の接触点まで電力を伝送するため、被酸化性のNiまたはNi合金を便宜よく用いることができる。燃料電池パケットは、アルミナ粉末またはジルコニア粉末のような絶縁体が充填されたチューブにより、実効的に延長して低温の接触点を設けることができる。この充填材は、パケットからの燃料の漏洩を制限する。チューブ構成に用いられる技術は、MgO充填材を入れた金属チューブに収められた導電体を利用し、MgO充填材が導電体を囲んで金属チューブから絶縁している、絶縁シール家電機器加熱素子の費用効率の高い製造に現在用いられている技術と同様とすることができる。
多重セル−シートデバイスの電気リード取付故障を最小限に抑えるに最も有効な電気リード取付方法は、デバイス電力取出リードがデバイスの周縁に接続し、硬質シールがデバイスとフレームの間につくられている領域を通して引き出される方法である。デバイス−フレーム間シールで実質的に支持されている場所で、すなわちそれらのシールに隣接するかまたはシール内の点で、これらのリードに接続することが、リード接続の補助的支持を与え、熱膨張またはデバイス自体にかかるその他の外力の影響を制限するために好ましい。
それぞれの取出点を通る電流を小さくし、セルからリード接続点まで横切らなければならない距離を短くするため、1つより多くの、それぞれのシートデバイスからの電力取出点を用いることも有利である。電流が小さくなるほど、取出点及びリードの断面積を小さくして、材料コストを削減し、熱応力を制限することができる。パケット端ではなくパケットの縁に沿って電力取出点を配置することは、チャンバの吸気開口及び排出開口におけるガス流撹乱を回避するにも役立つが、電極の形状寸法に依存して、この向きを燃料の流れに平行なセル電極の長軸におくことができる。
多重セル−シートデバイス構成の予備試験においては、25Wの電力出力が電圧5V及び電流5Aで容易に達成された。100Wデバイスについてさえ最大電流はこの値より小さいままであり、小断面積のデバイス−デバイス間接続が可能となっている。上記のデバイスの高電圧/小電流という特徴は、付随して、温度サイクル環境におけるコスト及び耐久性問題を示す従来のSOFC相互接続構造が排除されるので、スタック構成に対して明らかに有利である。金属充填バイア及び小断面積のデバイス−デバイス間接続のコストは、標準的なプレーナ型接続構造で付加されるコスト及び重量の回避で有り余るほど補償されるであろう。空気チャンバと燃料チャンバの間の無漏洩を長期にわたり保証するために、バイア材料及びデバイス作成プロセスの選択に注意を払わなければならないが、標準的な相互接続の耐久性問題(陰極と標準的相互接続の間の硬質結合部の酸化及び温度サイクル安定性)は完全に排除される。漏洩問題は、バイア充填材配合物における耐熱貴金属の使用及びスタック構成へのパケット手法により可能となったパケット集成体の100%品質検査などの手段によって、本発明のパケット構成において有効に対処できる。バイア充填材及び電極相互接続材としては貴金属または準貴金属またはサーメットの使用が好ましいことが多い。金属、金属合金及び、銀、金、白金及びパラジウムからなる群から選ばれる1つまたはそれより多くの金属を含むサーメットが最も好ましい。
よく知られているように、いかなる燃料電池スタックの実用性能要件も、スタックが電力給配を行おうとする用途に依存して大きく変わるであろう。目的用途により最も大きく影響を受けるのは、スタックの設計寿命及びスタック構造が満たさなければならない燃料要件である。40,000時間のスタック寿命の保証には、5,000時間でしかない寿命とは大きく異なる材料要件が課される。例えば、銀合金は、短動作時間及び/または低スタック動作温度における上記のパケットデバイスの電極、バイア及び/または集電体コンポーネントに適しており、したがって短いスタック寿命しか必要とされない場合に低コストの解決策を実現する。他方で、銀の揮発性は高動作温度におけるセルコンポーネント寿命を制限することがあるので、選ばれたパケット集成体の定期的交換または、金、白金及びパラジウムからなる群から選ばれる1つまたはそれより多くの金属を含む合金及びサーメットなど、耐熱性はより高いが、より高価な金属を使用する必要がある。
本発明は、限定ではなく説明を目的とする、以下の特定の実施例を参照することにより、さらによく理解できる。
実施例1
燃料電池スタックに使用するためのフレーム付パケット集成体は、図面の6〜11に示されるスタック集成体と実質的に同様のスタック集成体の構成にしたがう鋼製フレーム部材及び多重セル−シートデバイスで構成される。初めに、3/16インチ(約4.76mm)厚のタイプ446ステンレス鋼フレームが作成され、これらのフレームは機械加工されて、上述と実質的に同様の、吸気チャネル、オリフィス及び空気または燃料チャンバを組み込んでいる、燃料パケットフレーム及び一対の空気フレームを形成する。
次に、そのようにして形成された機械加工燃料フレームに一対の多重セル−シートデバイスが取り付けられる。この取付けに選ばれるデバイスは、総数540個のバイアホールが設けられた、12cm×15cmの3モル%Y−部分安定化ZrO組成の可撓性電解質シートを備える。上記のシートのそれぞれの第1の面すなわち陽極面上に、それぞれが6μm厚Ni/ZrO触媒層及び20μm厚セラミック粉末充填90%Ag/10%Pd銀合金からなる10個の陽極のアレイが被着され、粉末充填材は重量で40%の3モル%Y/ZrOからなる。
それぞれの可撓性電解質シートの第2の面すなわち陰極面上に、陽極に対向して、それぞれが重量で40%の3モル%Y2O3/ZrO充填材を含む6μm厚(La0.8Sr0.2)0.98MnO層及び重量で40%の粉末DyBiOを充填材として含む20μm厚Ag/Pd層からなる、10個の陰極のアレイが被着される。それぞれの陽極の先端を次に続く陽極−陰極対の陰極の後端に接続するバイアは90%Ag/10%Pd合金で充填される。電極アレイからのリードは繊維織物チューブ絶縁体内の銀線である。次いで電解質シートが1枚ずつ、そのようにして形成される燃料チャンバ内部に陽極アレイが面した状態で燃料フレームのそれぞれの面にシールされ、Duralco 230熱硬化性セメントがシールを形成するために利用される。
次に、そのようにして提供された集成燃料パケットにステンレス鋼空気フレームが、燃料パケットのそれぞれの面に1枚ずつ取り付けられて、2枚の空気フレームが取り付けられる。次いで、タイプ446ステンレス鋼から機械加工され、空気フレームの空気及び燃料コンジットと合う位置に配された開口を有する端板がそれぞれの空気フレームに取り付けられる。このようにして、燃料フレームに取り付けられた多重セル−シートデバイスの外部に向く表面上の陰極アレイを封入している、対向する空気チャンバが形成される。最後に、集成体への空気及び燃料ガスの供給のため、燃料充気室チューブ及び空気充気室チューブが端板の燃料コンジット開口及び空気コンジット開口に取り付けられる。
この集成体において、吸気及び排気のそれぞれのための燃料充気室及び空気充気室は、分配チャネルにおける圧力一様性を向上させるために、スタックの両面に設けられ、充気室は圧力一様性を維持するに十分な断面積をもつ。このようにして、チャンバ吸気口から排気口まで及び空気チャンバから燃料チャンバまでの圧力降下が最小の可撓性多重セル−シートデバイスが提供される。
チャンバ吸気口から排出口までの圧力降下に影響する変数として、チャンバ断面積、チャンバ長及びガス流量がある。高ガス速度での運転は、圧力降下への有害な影響のために好ましくない。しかし、デバイス間の空隙は、高められた質量輸送(挟い空隙)と圧力降下(広い空隙)の間の中間になるように選ばれる。構成の材料及び手段、例えば積み重ねられた薄い金属プレートは、この空隙のシステムコストへの影響を制限し、よって設計自由度をさらに大きくできるように選ばれる。
上記の特定のスタック構成のシミュレーションによれば、6リットル/分の最大空気流量において、圧力降下は空気側から燃料側までで27パスカル以下に制限され、空気チャンバ及び燃料チャンバのそれぞれにかけて吸気口から排出口までで最大でも2.4パスカルに制限されると予測される。小さい圧力降下は、ある程度は、12cm×15cmのデバイス表面積に対して高さがほぼ3.2mmである、燃料チャンバの大きな流れ断面積によるものである。この構成では、空気及び燃料チャンバ内の(標準的なプレーナ型デバイスの相互接続方式では一般に必要となる)いかなる垂直方向摩擦要素も排除され、よって、本質的に全ての圧力降下は分配コンジットからの吸気口にあるフレームの流量制限オリフィスにかけておこる。すなわち、オリフィスからオリフィスまでの総圧力降下は上に報告したチャンバにかかる2.4パスカルに対して60パスカルであるとシミュレートされる。この結果、かなり低い摩擦力が得られ、したがって、本デバイスに必要とされ、本デバイスで可能にもなった、より小さい圧力降下が得られる。
このスタックの性能を評価するため、吸気充気室及び接続チューブを含む集成体全体を電気炉内に入れて725℃のスタック動作温度まで加熱した。次いで、燃料チャンバを通して720℃のフォーミングガス(6%H/94%N)の状態調節流を流し始め、短い状態調節期間後に、100%水素流を導入した。
このパケットの燃料流量及び空気流量に対する応答を725℃の炉温で測定し、データは、空気流量による最大仕様流量給送圧において35%の燃料利用率を化学量論的限界近傍で示した。上記条件の下での燃料排気温度は燃料ガス排出オリフィスにおいて約735℃であった。
上記動作条件下で観測されたこのスタックからのピーク電力レベルは約54Wであり、この出力は、電圧レベルが5V,シート当りの電流レベルが5.4A,水素ガス流量が約2リットル/分及び空気流量が約3.3リットル/分で記録された。図面の図13は、そのような集成体についての代表的な電力対流量曲線のグラフである。図13に示される、電力の空気流量及び燃料流量に関する依存性は、漏洩及び燃料/空気交錯のない、十分にシールされたスタックを示す。
このパケット集成体構成の多重セル−シートデバイスの寸法及びさらに大きなスタックに結合できるパケット集成体の数に関する比例拡縮可能性により、広範な静止または可搬用途に十分な電力出力をもつ単一スタック寸法への容易な拡張が可能になる。例えば、幅が12cmで長さが70cmの電解質シート寸法を利用すれば、シートにかかる幅が10cmでシートに沿う長さが0.5cmの100個の電極をシートに載せ、それぞれの電極対間に2mmの間隔をとることができるであろう。0.5W/cmの電極電力密度において、それぞれの多重セルからの電力出力は250Wに、またそれぞれのパケット集成体からの電力出力は500Wに達するであろう。したがって、約12をこえない、上述したようなパケット集成体からなるスタックは、適当な電気架台において集成体の外部からなされる電気的相互接続により結合された場合に、ほぼ5kWの発電能力を有する。
実施例2
図面の図1に示されるパケットと構成が同様な、部分安定化ジルコニア(ジルコニア−3モル%イットリア)電解質支持シートを組み込んでいる、4セルパケットが初めに提供される。図1を参照すれば、このパケット10を提供するため、寸法がほぼ10cm×6cmであり、4対の銀/パラジウム合金電極16―16aを支持する、第1のあらかじめ焼結されたジルコニア−3モル%イットリア電解質シート12が、裏打ちシートとしての、第2のあらかじめ焼結されたジルコニア−3モル%イットリア電解質シート14に結合される。結合は、市販の(重量分率で)70:30の230 Duralco:954 Durabondセメント混合物で形成される縁シール18による。
第1のシートに取り付けられた合金電極対16−16aのそれぞれは内部燃料電極すなわち陽極16a及び外部空気電極すなわち陰極16からなり、陽極及び陰極はシートの表面及び裏面のそれぞれの上でほとんど重なり合う位置にある。これらの電極は、それぞれの寸法がほぼ0.8cm×8cmである。そのようなアレイを構成する対向陽極−陰極電極対は、図1に示されるように、シートの内部すなわち燃料側面上のそれぞれの陽極の突出端から、順次に連続する、シートの空気側面上の次の陰極の突出端までシートを横断している銀−パラジウム合金の導電バイア20により直列に接続される。
そのようなセメント付けシートを室温で硬化させ、次いで、第2のDuralco/Durabond縁シール22が2シート集成体の対向縁に沿って形成される。この第2のシールは、パケットのためのガス透過性底部クロージャーを設けるために、上部ジルコニアシートと下部ジルコニアシートをある長さの多孔質アルミナ繊維マット24にセメント付けすることにより形成される。
次に、あらかじめ形成された、チューブの末端区画の長さに沿って直径1mmのガス給送開口26aがドリルで開けられているステンレス鋼ガス給送チューブ26が提供される。このチューブは、ガス給送孔がシート間の空間に配置されるように、2枚のジルコニアシートの間に挿入され、硬化した上部Duralco/Durabondシールに押し付けられる。シールは硬化しているから、チューブがシールに貼り付くことはなく、代わりに、チューブは、図示されていない、可撓性アルミナフェルトスペーサによりシールから若干離されている。ガス給送チューブがパケット内に配置された後、パケットの残りの開放縁がDuralco/Durabondセメント混合物でシールされて、硬化させられる。
パケットのシールに続き、銀メッシュ電極リードが複数の点において(ガス供給チューブに隣接する)先頭の陰極に取り付けられ、最後尾の陽極に接続されたバイアにも取り付けられる。リード取付は、有機ビヒクル内に27重量%の添加ジルコニウム−3モル%イットリア粉末とともに80:20Pd:Ag合金粉末を含む80/20/27銀−パラジウム−ジルコニアサーメットインクによる。このインクは加熱して固体合金を融解することにより硬化させられ、得られたパケットは次いで試験のために炉に挿入される。
炉の空気雰囲気内でパケットを725℃の動作温度まで加熱しながらガス供給チューブを介してパケットに水素含有燃料ガスを流し込むことで、このデバイスの試験を行った。この温度において、燃料ガス中の水素が陽極で酸化され、パケットの上部にある銀メッシュコンタクトを介して外部回路に電子を放出する。陰極では、外部回路から受け取られる電子により炉内空気からの酸素が減少し、サイクルを完了させる。この試験の間に発生した代表的な電力レベルは、燃料として6%Hフォーミングガスを用い、725℃において、1cmの陽極/陰極重なり面積当り約0.25Wであった。燃料ガスとして純水素を用いると、本実施例の4電極対シートについての電力レベルは上記温度で約9.2Wに達する。
2電極付シートが縁でシールし合わされて、上述した(一方のパケット面上の陽極及び他方のパケット面上の陰極の)陽極/陰極アレイの内の2つを組み込んでいるパケットモジュールを形成する、同様の構成のデバイスも提供され得る。
実施例3
それぞれの電極が約3mmの幅及び約8cmの長さを有する8陽極−陰極対を備える8セルパケットが実施例1で説明されたようにして作成される。電解質支持シートは厚さが約25μmの可撓性ジルコニア−3モル%イットリアセラミックシートからなる。電極界面抵抗を下げるためにシートの表面粗さを大きくするため、ホットプレート上でシートを加熱しながらイットリア−ジルコニアゾルをシートにスプレーすることにより、イットリア安定化ジルコニア−ナノ結晶薄膜がシートの表面に被覆される。
そのように被覆されたシートの表面に、実施例1で用いられたジルコニア充填銀−パラジウム合金で形成される電極を、シルクスクリーン印刷によって設けた。実施例1のように電極対を相互に直列接続するための、シートを貫通するバイアが、同じ銀−パラジウム合金で形成される。
次いで、ジルコニア−3モル%イットリアセラミックで形成される可撓性パケット裏打ちシートが提供され、このシートは、燃料給送及び排出開口を設けるために厚さを貫通して穿孔されたガス分配孔を有する。パケットを集成するため、この裏打ちシートが電極シートと縁を揃えられるが、これらのシートはガラス粉末スラリー含浸アルミナマット縁取材により互いに隔てられている。次いで、そのように揃えられたシート及びマットが、ガラスを溶融してシートの縁をマットにシールするために、パケットの縁に軽い重しを載せて、900℃の温度に加熱される。このようにして形成されたパケットの開放チャンバは約1〜5mmの範囲の高さを有する。
次に、鋼製ガス吸気チューブがパケット裏打ちシートの燃料開口にシールされ、パケットは6%Hフォーミングガスを燃料として用い、実施例1と同様にして、試験される。700℃の燃料電池動作温度において、パケット電極アレイは7.5Vをこえる電圧を発生した。800℃の動作温度において、本パケットにより電極表面積1cm当り0.08と0.11Wの間のパケット電力出力を発生させることができた。
実施例4
それぞれが幅広イットリア−ジルコニア電解質シート上に4セル−2列に配置された8セルをもつ、2−多重セルパケットモジュールが製作される。それぞれのセルの陽極はニッケル−ジルコニアサーメットで形成され、陰極はマンガン酸ランタンストロンチウムで形成される。それぞれの電極の上には、それぞれのモジュール上のセルを直列に接続する単一の銀−パラジウム充填バイアに集電点で接続される集電銀−パラジウム合金グリッドが設けられる。
そのようにして提供された2枚のセル支持シートは、いずれのシートの陽極も内側に向くように、硬質アルミナフレーム部材の表側と裏側に載せられ、よってフレームと載せられたシートで形成されるチャンバに対して全陽極が露出する。シートは、フレームの一端の燃料ガス吸気ポート及びフレームの他端の燃料ガス排出ポートを備えるチャンバにガスだけが入れるように、シートの縁の周りでフレームにセメント付けすることによりシールされる。
そのようにして提供された燃料電池パケットを、実施例1と同様に、鋼製ガス給送チューブを介して燃料ガスを供給しながら、炉内で試験した。燃料として水素ガスを用い、800℃で測定したときに、直列に接続した2つの燃料電池モジュールにより約8Vの電圧が発生した。
実施例5
実施例4のパケット作成手順に概ねしたがって構成されるが、図1のように電極を平行に揃えて単列に配置した10セル電極/シートモジュールを用いた、2−燃料電池パケットが試験用にアレイ化される。このシートモジュールの電極は全て、Ag/Pd合金からなり、幅は0.8mmであって、それぞれのパケットの2−10セルシートモジュールのそれぞれに対して約80cmの活性セル面積を与える。これらのパケットのためのパケットフレーム構造体は繊維状アルミナシール材で結合されて形成される。
上記の2つのパケットからなるパケットアレイに外部マニホールド、すなわち2つのパケットの燃料吸気ポートのそれぞれへの燃料接続を備える水素ガス供給マニホールド配管を介して燃料が供給される。アルミナ繊維ガスケットからなるコンプレッションシールがそれぞれの給送コンジットへの上記ポートに設けられる。上記構成で燃料として水素ガスを用いて試験したところ、直列接続10セルシートモジュール1つで約9Vの開路電圧が発生し、最適電流出力において13Wの電力が発生した。
実施例6
実施例1のパケットアレイと同様であるが、より進歩した固体フレーム構造を利用するパケットアレイは、小体積からかなりの電力出力を得る点でさらなる利点を提供できる。金属フレームで提供される特定の利点の1つは、便宜のよい、内部の燃料、酸化剤及び排気マニホールドの提供である。適切に設計されたフレーム素子集成体が化学的適合性及び熱膨張に関してジルコニア電解質シートと適切に整合されれば、アレイ全体に供給するために単一の燃料、空気及び排気配管しか必要としない、パケットの拡張アレイを支援するであろう、内部の燃料、空気及び排気マニホールドが提供され得る。
図面の図2はそのような集成体に用いることができるフレーム素子の特定の例を示す。図2をさらに詳しく参照すれば、耐熱鉄合金で形成されたフレーム素子30が、実施例1の電極/シートモジュールと設計及び構成が同様の第1の10セル電極/シートモジュール32及び同じ設計の第2のシートモジュール(図示せず)を備える燃料電池パケットの支持体としてはたらき、第1のシートモジュールと第2のシートモジュールはそれぞれフレームの表側と裏側に取り付けられる。それぞれのシートは、陰極アレイ34を外側に向け、陽極アレイ(図示せず)をフレームと取り付けられたシートで形成される燃料チャンバ(図示せず)内に向けた状態で、縁がフレームにシールされる。
フレーム素子30を貫通して、空気コンジット36及び燃料コンジット38〜38aが設けられ、これらのコンジットはパケット集成体(シート及びフレーム)に空気及び燃料を給配するためのマニホールドコンポーネントとして動作する。空気コンジット36は内部側面ポートをもたずにフレーム素子30を横切り、よって空気流は燃料チャンバに入ることなく燃料チャンバの脇を流過する。燃料コンジット38〜38aは、燃料チャンバへのガスの流入を確保するための、シートモジュール32の表面下の燃料チャンバに接続しているポート39〜39aなどの、側面ポートに接続する。このマニホールド配置により、コンジット38を流過する燃料をポート39を介して燃料チャンバに分配することができ、費消された燃料の副生成物は排気ポート39a及びコンジット38aを介して燃料チャンバから排出することができる。
図2に示されるようなフレーム支持型パケットは、例えば、実施例1のモジュールと同じ組成及び構成の、対向する電極/電解質シートモジュールにシールされる2.5mmのステンレス鋼フレームを用いて構成することができる。シートモジュールはケイ酸塩ガラスシールを利用してフレームにシールすることができる。形成されるケイ酸塩ガラスシールをフレームと電極/電解質シートモジュールの空気側すなわち陰極側の間に優先的に使用すれば、燃料電池陽極のケイ酸塩汚染の低減に役立つ。
上述のパケットに外部からの空気及び燃料接続並びに電気接続を設け、パケットを炉内で725℃に加熱する。6%Hフォーミングガスを電極付シート間の燃料空間に導入すると、20Vより高い電圧が開路に発生し、電極面積1cm当り約0.2Wの電力密度で生じる、最大電力時に約10Vが発生した。純Hを燃料として利用すると、ピーク電力密度は約10Vにおいて0.3W/cm以上に増大した。
スタック構成のための機械加工金属フレームの使用の有用で経済的な代替の1つに打抜き板金フレーム素子でつくられたパケット集成体がある。これらは、適する金属であれば、どのような金属からも形成することができ、次いで、気密シールを形成するいずれかの方法により互いに結合させることができる。望ましければ、機械加工ガス分配コンポーネントを、例えば、完成スタック集成体に対する寸法公差を打抜き金属部品で得られるよりも厳密に満たすために集成体に含めることができる。
図面の図14〜14cはそのような集成体の1つを簡略に示す。これらの図では、縁シームで互いに結合された上部及び下部フレームシェル330t及び330bからなる打抜き金属パケットフレーム330に、機械加工燃料供給路インサート338が備えられている。打抜きフレームには、燃料供給路を発電多重セルデバイス332に接続している一体形成されたチャネル338'が備えられる。打抜きフレームには3つの燃料流出路338a設けられている。例えば熱膨張整合ガラス−セラミックシール材で形成された、シール318が多重セルデバイス332をフレームシェル330t及び330b上に支持する。2枚の打抜き半フレームを互いに溶接するか、さもなければ接合して、パケットを形成することができる。
図15は打抜き金属フレーム部材を組み込んでいる別のパケット構成を示す。この構成では、空気孔、燃料供給孔及びビスケット切込燃料パケット供給チャネルのそれぞれに対して機械加工インサートが備えられている。本実施形態では、多重セルシートデバイス及び機械加工インサートのそれぞれのためのリセスがフレームに設けられ、機械加工インサートは、隣接するパケットの機械加工インサートとの間の良好なシールを確実にする寸法につくられる。
図15をさらに詳しく参照すれば、打抜きプレートパケットフレーム430には2つの機械加工インサート444及び444aが組み込まれている。インサート444には多重セル−シートデバイス432にビスケット切込燃料ポート438'を介して燃料を供給する燃料供給チャネル438がある。インサート444aには使用済燃料の排出のための燃料流出ポート438a'及び流出チャネル438aが設けられている。インサート444aには3つの空気吸気口436も設けられ、孔436aにより空気排出口がインサート444に設けられている。多重セル−シートデバイスを打抜きフレームにシールするために、ガラス−セラミックのようなシール材で形成されるシール418が用いられる。多重セル−シートデバイス432のそれぞれが、スタック集成を容易にするために、打抜きフレームのリセス431に配される。機械加工インサート444及び444aは、打抜きフレームが機械加工面のシールを妨害しないようにリセスを有する。2枚の打抜き半フレームを互いに溶接することもできるし、さもなければ気密パケット集成体を提供するいずれかの手段により接合することができる。
上述の説明及び実施例が本発明の例示に過ぎず、当業者には、添付される特許請求項に述べられる本発明の実施に対して、前述の部分において説明した特定の材料、デバイス及び方法の多数の変型及び/または改変が利用され得ることが明らかである。
本発明にしたがって提供されるSOFCパケットの略平面図を示す 本発明にしたがって提供されるSOFCパケットの略側断面図を示す 本発明にしたがうフレーム付SOFC燃料電池パケットの略平面図を示す 本発明にしたがうフレーム付SOFC燃料電池パケットの略側断面図を示す 図2〜2bの基本パケット構造に基づくフレーム付SOFCパケットの分解組立図を示す パケット集成体の選択された素子の分解組立図である 図4のパケット集成体の斜視図である 図5に示されるようなパケット集成体を組み込んでいる燃料電池パケットスタックの斜視図である 集成された燃料電池パケットスタックの図である 燃料パケットフレームの斜視図である パケット集成体のための空気フレームの斜視図である 燃料電池パケット集成体の燃料チャンバを流過するガス流速度のグラフである 第1のフレーム支持燃料電池パケットのシール部の略図である 第2のフレーム支持燃料電池パケットのシール部の略図である 燃料電池パケット集成体からの電力出力のグラフである 打抜フレームパケット集成体の略図を示す 打抜フレームパケット集成体の略図を示す 打抜フレームパケット集成体の略図を示す 打抜フレームパケット集成体の略図を示す 別の打抜フレームパケット集成体の略図を示す
符号の説明
10,108 モジュール式燃料電池パケット
12 電解質シート
16 陰極
16a 陽極
30 フレーム
32,32a 多重セル−シート
109,110,119,120 コンジット

Claims (10)

  1. 電力を発生する固体酸化物燃料電池集成体において、
    a)少なくとも一部分が1つまたはそれより多くの可撓性固体酸化物シート区画から形成されている密閉された内部を有するパケット素子、
    b) 前記密閉された内部に配され、前記可撓性固体酸化物シート区画の内部表面上に支持された1つまたは複数の陽極、
    c)前記可撓性固体酸化物シート区画の外部表面上の、前記内部表面上の前記陽極とほぼ対向する位置に支持された1つまたは複数の陰極、
    d) 前記密閉された内部に燃料ガスを供給するための燃料給送手段、及び
    e) 前記集成体から電流を引き出すための、前記陽極及び陰極に接続された導電手段、
    を備えることを特徴とする集成体。
  2. 前記可撓性固体酸化物シート区画は、それぞれが複数の陽極及び陰極を支持し、前記導電手段が前記陽極及び陰極を電気的に直列または並列に相互接続する導電体素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の集成体。
  3. 固体酸化物燃料電池のための電力発生集成体において、
    a)少なくとも一部分が1つまたはそれより多くの可撓性固体酸化物シート区画から形成されている密閉された内部を有するパケット素子、
    b) 前記固体酸化物シート区画の縁を支持するフレーム素子、
    c) 前記密閉された内部に配され、前記可撓性固体酸化物シート区画の内部表面上に支持された1つまたは複数の陽極、
    d)前記可撓性固体酸化物シート区画の外部表面上の、前記内部表面上の前記陽極とほぼ対向する位置に支持された1つまたは複数の陰極、
    e) 前記密閉された内部に燃料ガスを供給するための、前記フレーム素子を貫通する燃料給送コンジット、及び
    f) 前記集成体から電流を引き出すための、前記陽極及び陰極に接続された導電手段、
    を備えることを特徴とする集成体。
  4. 前記フレームが、相異なる組成または相異なる熱膨張係数を有する少なくとも2つの材料で形成された複合物または積層品であることを特徴とする請求項3に記載の集成体。
  5. 前記フレームが、1つまたはそれより多くの金属から構成され、前記フレームの表面の全部または一部に酸化物被覆が施され、前記被覆が前記陽極及び/または前記陰極へのクロム輸送の低減に有効であることを特徴とする請求項3に記載の集成体。
  6. 前記フレームが前記パケット素子内の温度勾配を制御するための受動的手段を備え、前記受動的手段が、(a)前記固体酸化物シート区画を封入するフレームのリセス、(b)前記固体酸化物シート区画の周縁領域に隣接して張り出しているフレーム縁部分、及び(c)前記固体酸化物シート区画の周縁領域に接触または近接して配置された断熱材料、の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3の記載の集成体。
  7. 前記固体酸化物シート区画の前記周縁が前記フレーム素子の波形金属区画に取り付けられ、前記波形金属区画が、二軸、単軸、放射状及び同軸状の歪解放パターンからなる群から選ばれる歪解放パターンを備えることを特徴とする請求項3に記載の集成体。
  8. 前記固体酸化物シート区画が歪解放のための波形構造を備えることを特徴とする請求項3に記載の集成体。
  9. 請求項3に記載の電力発生集成体を複数有し、前記複数の電力発生集成体が積み重ねられていることを特徴とする燃料電池スタック。
  10. (a)前記集成体の前記燃料給送コンジットを相互接続する気密封止素子を備える外部または内部マニホールド、及び(b)前記積み重ねられた複数の集成体に空気を供給するためのマニホールド付空気給送コンジット、の内の少なくとも一方をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の燃料電池スタック。
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