JP2005519041A - 長期作用を備えたインスリン分子 - Google Patents

長期作用を備えたインスリン分子 Download PDF

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Abstract

本発明は、基礎作用時間でさえ延長させる、インスリン分子を提供する。インスリン分子は、A鎖のN末端、場合によりB鎖のN末端、B鎖リジンの修飾、および場合によりA鎖のC末端に修飾を含む。本発明はまた、インスリン分子の投与を含む、真性糖尿病の治療方法を提供する。

Description

本出願は米国仮出願番号60/344,310(2001年12月20日出願)および米国仮出願番号60/414,604(2002年9月27日出願)の優先権を主張する(これらを本明細書中に参照してそのまま組み込む)。
本発明は、真性糖尿病の特徴である高血糖の処置に有用であるインスリン分子に関する。
インスリンに対する生理学的要求は次の2つの相に分けることができる。(a)食事に関連する血中グルコースの上昇に対処するために、インスリンのパルス(pulse)を必要とする栄養吸収相、および(b)最適な空腹時血糖を維持するための肝臓のグルコース産出を調節するためのインスリンの持続的な送達(「基礎」インスリン分泌としても公知)を必要とする吸収後相。
糖尿病を有する人々に有効なインスリン治療は、通常、2つのタイプの外来性インスリン製剤(ボーラス注射により提供される即時作用型(速効型)食事時インスリン、および食事間の血糖レベルを制御するために1日1回または2回注射により投与される長期作用型(持続型)インスリン)の併用使用に関する。
理想的な外来性基礎インスリンは、継続した、「フラットな」時間作用を提供する。すなわち、少なくとも12時間、好ましくは24時間の間、重篤な低血糖の危険性を伴わずに血糖レベルを制御する。
市販され用いられている長期作用型インスリン分子は、24時間の間のインスリン効果を提供しない。従って、24時間までのインスリン効果を提供するインスリン分子に対する必要性が存在する。
本発明は、以下:
(a)式I:
Figure 2005519041
[式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載されている。]
で示されるA鎖、および
(b)式II:
Figure 2005519041
[式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。]
で示されるB鎖を有するインスリン分子を提供し、配列中、
A−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、
B−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるかまたは存在せず、
B28位のXaaはLysまたはProであり、
B29位のXaaはLysまたはProであり、
B30位のXaaはThr、Alaであるかまたは存在せず、
B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれか1つはLysであり、
B28位のXaaおよびB29位のXaaの両方共がLysであることはなく、
B28位またはB29位のLysのεアミノ基は正に荷電したアミノ酸のα−カルボキシル基に共有結合してLys−Nε−アミノ酸誘導体を形成している。
また本発明は真性糖尿病を治療する方法を提供し、この方法は被検体に本発明のインスリン分子を血糖濃度を調節するために十分な量で投与することを含む。
また、本発明は本発明のインスリン分子を含む微結晶、微結晶を製造する方法、および微結晶を投与することによる糖尿病の治療方法を提供する。
また、本発明は不溶相および溶液相を含む懸濁製剤を提供し、この不溶相は本発明の微結晶を含み、溶液相は水を含む。また、本発明は懸濁製剤の製造方法を提供する。
また、本発明は真性糖尿病の治療方法を提供し、この方法は懸濁製剤を被検体の血糖濃度を調節するために十分な量で投与することを含む。
また、本発明は懸濁製剤を製造する方法を提供する。また、本発明は真性糖尿病の治療方法を提供し、この方法は被検体の血糖濃度を調節するために十分な量で被検体に懸濁製剤を提供することを含む。
また、本発明はインスリン分子の製造方法を提供し、この方法は(a)インスリン鋳型の各遊離アミノ基を保護アミノ酸または保護アミノ酸誘導体でアシル化してアシル型インスリン分子を形成すること、(b)アシル型インスリン分子を精製すること、(c)各保護型アミノ酸または保護型アミノ酸誘導体から保護基を除去して脱保護型アシル型インスリン分子を形成すること、および(d)脱保護型アシル型インスリン分子を精製することを含む。1つの好ましい実施態様において、保護型アミノ酸は保護型Argであり、アミノ酸はArgである。別の好ましい態様において、保護型アミノ酸は保護型Lysであり、アミノ酸はLysである。
発明の詳細な説明
1つの好ましい態様において、本発明はインスリンA鎖のN末端、インスリンA鎖のC末端、インスリンB鎖のN末端、およびB鎖のLysの1ヶ所以上に修飾を含むインスリン分子を提供する。
別の好ましい態様において、本発明のインスリン分子はA鎖のN末端の修飾、B鎖のN末端の修飾、B鎖Lysの修飾および場合によりA鎖のC末端の修飾を含む。例えば、このようなインスリン分子は、ArgがA鎖のN末端に共有結合により付加され、ArgがB鎖のN末端に共有結合により付加され、B鎖Lysが修飾され、場合によりA鎖のC末端アミノ酸がGlyのような別のアミノ酸で置換されているインスリン分子である。
別の好ましい態様において、本発明のインスリン分子はA鎖のN末端の修飾、B鎖リジンの修飾、場合によりA鎖のC末端の修飾を含む。例えば、このようなインスリン分子は、ArgがA鎖のN末端に共有結合し、B鎖Lysが修飾されており、場合によりA鎖のC末端アミノ酸がGlyのような別のアミノ酸で置換されているインスリン分子である。
別の好ましい態様において、本発明は以下:
(a)式I:
Figure 2005519041
[式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載されている。]
で示されるA鎖、および
(b)式II:
Figure 2005519041
[式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。]
で示されるB鎖を有するインスリン分子を提供し、配列中、
A−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、
B−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジンホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるかまたは存在せず、
B28位のXaaはLysまたはProであり、
B29位のXaaはLysまたはProであり、
B30位のXaaはThr、Alaであるかまたは存在せず、
B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれか1つはLysであり、
B28位のXaaおよびB29位のXaaの両方共がLysであることはなく、
B28位またはB29位のLysのεアミノ基は正に荷電したアミノ酸のα−カルボキシル基に共有結合している。
1つの好ましい態様において、A−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、B−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在しない。
別の好ましい態様において、A−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaはArgであり、B−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在しない。
別の好ましい態様において、A−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaは誘導体型Lysであり、B−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在しない。
「式I」は以下:
Figure 2005519041
により示されるものであり、式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載されている。式IのA−1〜A21位のアミノ酸は、それぞれ、配列番号1の1〜23位のアミノ酸に対応する。式IのA1〜A20位および配列番号1の3〜22位のアミノ酸は、ヒトインスリンA鎖(配列番号3)の1〜20位のアミノ酸に対応する。
「式II」は以下:
Figure 2005519041
により示されるものであり、式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。式IIのB−1〜B30位のアミノ酸は、それぞれ、配列番号2の1〜32位のアミノ酸に対応する。式IIのB1〜B27位および配列番号2の3〜29位のアミノ酸は、ヒトインスリンB鎖(配列番号4)の1〜27位のアミノ酸に対応する。
多数の異なる種由来のインスリン分子のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列が当業者に周知である。好ましくは、「インスリン」はヒトインスリンを意味する。「ヒトインスリン」は、以下:
Figure 2005519041
で示される21個のアミノ酸A鎖、および以下:
Figure 2005519041
で示される30個のアミノ酸B鎖を有する。
ヒトインスリンのA鎖およびB鎖はジスルフィド結合により架橋されている。鎖間ジスルフィド結合の1つは式IのA7位のCysと式IIのB7位のCysとの間にあり、他方の鎖間ジスルフィド結合は式IのA20位のCysと式IIのB19位のCysとの間にある。鎖内ジスルフィド結合は式IのA6位およびA11位のシステイン間にある。
用語「宿主細胞」は、1種の宿主細胞および1種より多くの宿主細胞の両方を意味する。
本明細書中で用いる「インスリン分子」は、野生型インスリン、インスリン誘導体およびインスリンアナログを含む。
「正に荷電したアミノ酸」は、天然または非天然のアミノ酸であり、pH6.0で正味の正の荷電を有する。1つの好ましい態様において、正に荷電したアミノ酸はArgである。別の好ましい態様において、正に荷電したアミノ酸はLysである。
本明細書中で用いる「インスリン誘導体」は、Lysが誘導体化されてLysのε−アミノ基(−Nε)と別の部分との間で共有結合を形成しているインスリン分子を意味する。好ましい態様の1つにおいて、A鎖Lysを誘導体化してLysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成する。別の好ましい態様において、B鎖Lysを誘導体化してLysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成する。別の好ましい態様において、A鎖LysおよびB鎖Lysの両方を誘導体化して各Lysのεアミノ基および別の部分の間に共有結合を形成する。
別の好ましい態様において、正に荷電したアミノ酸を用いてアシル化することにより共有結合を形成する。この態様において、共有結合を形成するためのLysへのアミノ酸の共有結合の際にLysのεアミノ基由来の水素原子およびアミノ酸のαカルボキシル基のヒドロキシル部分が脱離して水を形成する場合に、共有結合はLysのεアミノ基とアミノ酸のαカルボキシル基の炭素との間に形成される。
別の好ましい態様において、共有結合はLysのεアミノ基とArgのαカルボキシル基の炭素との間に形成され、これは「Lys−Nε−Arg」誘導体を形成する。Lys−Nε−Arg誘導体を図1に示す。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Argインスリン誘導体は式IIのB28位のLysから形成される。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Argインスリン誘導体は式IIの29位のLysから形成され、これは配列番号4の29位のLysに対応する。
別の好ましい態様において、共有結合はLysのεアミノ基とLysのαカルボキシル基の炭素との間に形成され、これは「Lys−Nε−Lys」誘導体を形成する。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Lysインスリン誘導体は式IIのB28位のLysから形成される。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Lysインスリン誘導体は式IIのB29位のLysから形成され、これは配列番号4の29位のLysに対応する。
本明細書中で用いる「プロインスリン誘導体」は、LysがLysのε−アミノ基と別の部分との間に共有結合を形成するように誘導体化されているプロインスリン分子を意味する。1つの好ましい態様において、共有結合は正に荷電したアミノ酸とのアシル化により形成される。この態様において、共有結合は、Lysのεアミノ基と正に荷電したアミノ酸のαカルボキシル基の炭素との間に形成され、これは「Lys−Nε−アミノ酸」誘導体を形成する。好ましい態様の1つにおいて、共有結合は、Lysのεアミノ基とArgのα−カルボキシル基の炭素との間に形成され、これは「Lys−Nε−Arg」誘導体を形成する。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Argインスリン誘導体は式IIのB28位のLysから形成される。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Argインスリン誘導体は式IIのB29位のLysから形成され、これは配列番号4の29位のLysに対応する。別の好ましい様態において、共有結合はLysのεアミノ基とLysのα−カルボキシル基の炭素との間に形成され、これは「Lys−Nε−Lys」誘導体を形成する。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Lysインスリン誘導体は式IIのB28位のLysから形成される。別の好ましい態様において、Lys−Nε−Lysインスリン誘導体は式IIのB29位のLysから形成され、これは配列番号4の29位のLysに対応する。
本明細書中で用いる「インスリンアナログ」は、本明細書中で用いる「インスリン誘導体」とは異なる。「インスリン誘導体」は、Lysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成するようにLysが誘導体化されているインスリン分子である。「インスリン誘導体」とは異なり、「インスリンアナログ」は野生型インスリンとは異なるように修飾されているインスリン分子であるが、Lysは、Lysのεアミノ基と別の部分との間の共有結合を形成するように誘導体化されていない。従って、インスリンアナログは、それぞれ、ヒトインスリンのA鎖およびB鎖と実質的に同じアミノ酸配列を有するA鎖および/またはB鎖を有し得るが、A鎖および/またはB鎖に1つ以上のアミノ酸欠失を有する、および/またはA鎖および/またはB鎖に1つ以上のアミノ酸置換を有する、および/またはA鎖および/またはB鎖のNおよび/またはC末端に共有結合したアミノ酸を1つ以上有することにより、ヒトインスリンのA鎖およびB鎖とは異なる。
それゆえ、例えば、A0ArgB29Lys−Nε−Argインスリン、A0Lys−Nε−Arg−インスリンおよびA0Lys−Nε−ArgB29Lys−NεArg−インスリンはインスリン誘導体である。なぜならば、これらの分子の各々はLysが誘導体化されてLysのε−アミノ基と別の部分(Arg)との間に共有結合を形成しているからである。インスリン誘導体とは反対に、A0Arg−インスリンはインスリンアナログである。なぜならば、A0Arg−インスリンにおいて、LysはLysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成するように誘導体化されていないからである。
本明細書中で用いる「プロインスリンアナログ」は、本明細書中で用いる「プロインスリン誘導体」とは異なる。「プロインスリン誘導体」は、LysがLysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成するように誘導体化されているプロインスリン分子である。「プロインスリン誘導体」とは異なり、「プロインスリンアナログ」は、野生型プロインスリンとは異なるように修飾されているプロインスリン分子であるが、LysはLysのεアミノ基と別の部分との間に共有結合を形成するように誘導体化されていない。
従って、プロインスリンアナログは、それぞれ、ヒトプロインスリンにおけるA鎖、B鎖およびCペプチドと実質的に同じアミノ酸配列を有するが、A鎖、B鎖またはCペプチドにおいて1つ以上のアミノ酸欠失、および/またはA鎖、B鎖またはCペプチドにおける1つ以上のアミノ酸置換、および/またはA鎖、B鎖またはCペプチドのNおよび/またはC末端に共有結合した1つ以上のアミノ酸を有することにより、ヒトプロインスリンのA鎖、B鎖およびCペプチドとは異なるA鎖、B鎖およびCペプチドを有しうる。例えば、A0ArgB29Lys−Nε−Argプロインスリンはインスリン誘導体であるが、B28LysB29Proプロインスリンはプロインスリンアナログである。
式IのA−1位のXaaのアミノ酸は存在してもよいし、存在しなくともよい。存在する場合は、Arg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであることが好ましい。
A0位のXaaのアミノ酸は存在しなければならない。好ましい態様において、A0位のXaaは、Arg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンである。好ましい態様において、A0位のXaaは正に荷電したアミノ酸で誘導体化されたLysである。別の好ましい態様において、A0位のXaaはLys−Nε−Argである。別の好ましい態様において、A0位のXaaはLys−Nε−Lysである。
A21位のXaaのアミノ酸は遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、以下からなる群から選択される:アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)。好ましい態様の1つにおいて、A21位のXaaのアミノ酸はグリシンである。好ましい別の態様において、A21位のXaaのアミノ酸はセリンである。A21位のXaaのアミノ酸はトレオニンである。A21位のXaaのアミノ酸はアラニンである。
式IIのB−1位のXaaのアミノ酸は存在してもよいし、存在しなくともよい。存在する場合は、Arg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであることが好ましい。B0位のXaaのアミノ酸は存在してもよいし、または存在しないかもしれない。存在する場合は、Arg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンが好ましい。B0位のXaaのアミノ酸が存在しない場合、B−1位のXaaのアミノ酸もまた、存在しない。
B28位のXaaのアミノ酸はLysまたはProである。
B29位のXaaのアミノ酸はLysまたはProである。
B30位のXaaのアミノ酸はThr、Alaであるかまたは存在しない。
好ましい態様の1つにおいて、B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれかがLysであるが、B28位のXaaおよびB29位のXaaの両方共がLysであることはなく、B28位またはB29位のLysのεアミノ基は正に荷電したアミノ酸のα−カルボキシル基に共有結合してLys−Nε−アミノ酸誘導体を形成する。別の好ましい態様において、B28またはB29位のLysのεアミノ基はArgのεカルボキシル基に共有結合してLys−Nε−Arg誘導体を形成する。別の好ましい態様において、B28またはB29位のLysのεアミノ基はLysのεカルボキシル基に共有結合してLys−Nε−Lys誘導体を形成する。
別の好ましい態様において、インスリン分子中のアミノ酸はさらに誘導体化されている。好ましい態様の1つにおいて、アミノ酸誘導体化はアシル化である。さらに好ましくは、式IIのB29位のLysはアミノ酸でアシル化されている。
別の好ましい態様において、アミノ酸誘導体化はカルバミル化(carbamylation)である。好ましくは、Lysは誘導体化されてホモアルギニン(homoarginne)を形成する。さらに好ましくは、ホモアルギニンは式IIのB29位のLysから形成される。
「ポリペプチド鎖」は、ペプチド結合を介して共に連結されている2つ以上のアミノ酸を意味する。
好ましい態様において、本発明のインスリン分子のA鎖は2個のジスルフィド結合を介してB鎖に架橋されており、A鎖は鎖内ジスルフィド結合架橋を含む。さらに具体的には、「適切に架橋された」とは、(1)式IのA6位のCysとA11位のCysとの間のジスルフィド結合、(2)式IのA7位のCysと式IIのB7位のCysとの間のジスルフィド結合、および(3)式IのA20位のCysと式IIのB19位のCysとの間のジスルフィド結合を意味する。
インスリンおよびプロインスリン分子を示すために、本明細書中では簡単な省略表現を用い、式IのA鎖(配列番号1)および式IIのB鎖(配列番号2)に関して記載する。この表記法では、インスリン分子の省略名にA−1、B−1またはB0位のXaaアミノ酸が記載されていない場合、その位置のXaaは存在しない。A21位のXaaのアミノ酸がインスリン分子の省略名に記載されていない場合、アミノ酸は、野生型インスリンA鎖(配列番号3)のA21位のアミノ酸である、Asnである。B28位のXaaのアミノ酸がインスリン分子の省略名に記載されていない場合、アミノ酸は、野生型インスリンB鎖(配列番号4)のB28位のアミノ酸である、Proである。B29位のXaaのアミノ酸がインスリン分子の省略名に記載されていない場合、アミノ酸は、野生型インスリンB鎖のB29位のアミノ酸である、Lysである。B30位のXaaのアミノ酸がインスリン分子の省略名に記載されていない場合、アミノ酸は、野生型インスリンB鎖のB30位のアミノ酸である、Thrである。「脱(B30)(des(B30))」はB30位のXaaが存在しないことを意味する。プロインスリンのアミノ酸がプロインスリン分子の省略名に記載されていない場合、その位置のアミノ酸は野生型ヒトプロインスリン分子の位置のアミノ酸である。
省略名の非限定的な例において、省略名「A0ArgA21XaaB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン」は、式IのA−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaはArgであり、A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、式IIのB−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaはArgであり、B28位のXaaはProであり、B29位のXaaはLys−Nε−Argであり、B30位のXaaはThrであることを意味する。
省略名の別の非限定的な例においては、省略名「A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン」は、式IのA−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaはLys−Nε−Argであり、A21位のXaaはGlyであり、式IIのB−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在せず、B28位のXaaはProであり、B29位のXaaはLys−Nε−Argであり、B30位のXaaはThrであることを意味する。
省略名の別の非限定的な例において、省略名「A21Xaa−インスリン」は、式IのA−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaは存在せず、A21位のXaaはA21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、式IIのB−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在せず、B28位のXaaはProであり、B29位のXaaはLysであり、B30位のXaaはThrであることを意味する。「A21Gly−インスリン」はA21位のXaaがGlyであることを除き、A21Xaa−インスリンと同じである。「A21Ser−インスリン」はA21位のXaaがSerであることを除き、A21Xaa−インスリンと同じである。
省略名の別の非限定的な例において、省略名「B28LysB29Pro−インスリン」は、式IのA−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaは存在せず、A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、式IIのB−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在せず、B28位のXaaはLysであり、B29位のXaaはProであり、B30位のXaaはThrであることを意味する。
省略名の別の非限定的な例において、省略名「A0Arg−インスリン」は式IのA−1位のXaaは存在せず、A0位のXaaはArgであり、A21位のXaaはAsnであり、式IIのB−1位のXaaは存在せず、B0位のXaaは存在せず、B28位のXaaはProであり、B29位のXaaはLysであり、B30位のXaaはThrであることを意味する。米国特許番号5,506,202、および米国特許番号5,430,016を参照のこと。
「gHR」はα−グアニジルホモアルギニンを意味する。
好ましい態様において、本発明のインスリン分子は以下からなる群から選択される。
Figure 2005519041
Figure 2005519041
Figure 2005519041
Figure 2005519041
Figure 2005519041
別の好ましい態様において、本発明のインスリン分子はA鎖のN末端およびB鎖のN末端の修飾を含む。例えば、このようなインスリン分子は、ArgがインスリンA鎖のN末端に共有結合し、ArgがインスリンB鎖に共有結合しているインスリン分子である。好ましい態様の1つにおいて、本発明は以下:
(a)式I:
Figure 2005519041
[式中、式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載される]
で示されるA鎖、および
(b)式II:
Figure 2005519041
[式中、式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載される]
で示されるB鎖を有するインスリン分子を提供し、配列中、
A−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、
B−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
B28位のXaaはLysまたはProであり、
B29位のXaaはLysまたはProであり、
B30位のXaaはThr、Alaであるかまたは存在せず、
B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれか1つはLysであり、そして
B28位のXaaおよびB29位のXaaは両方共はLysではない。
本発明のインスリンアナログおよび亜鉛を含む微結晶もまた提供される。好ましい態様において、微結晶はインスリンアナログ、亜鉛およびプロタミンを含む。
微結晶の製造方法もまた提供され、この方法はインスリン分子を含む成分および二価の金属カチオンをインスリン分子のヘキサマーの形成を可能とするpHの水性溶媒中で接触させることを含む。「接触させる」とは、広義には成分を溶液中に配置することを意味する。やや狭義には、接触させるとは、成分の溶液を転倒させる、回転させる、振盪する、または振動させることを意味する。より具体的には、接触させるとは成分を攪拌することを意味する。
別の好ましい態様において、インスリンアナログは以下からなる群から選択される:
Figure 2005519041
「インスリン鋳型」は修飾されて本発明のインスリンアナログまたは誘導体を形成するインスリン分子を意味する。続いての化学修飾用の鋳型として用いられ得るインスリン分子としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されるわけではない:天然のインスリンおよび好ましくはヒトインスリン、ヒトインスリンのアナログ、B28LysB29Pro−インスリン、A0Arg−インスリン、A21Xaa−インスリン、A0ArgA21aXaa−インスリン、B0Arg−インスリン、B28Asp−インスリン、B3LysB29Glu−インスリン、および続いてのアシル化工程の反応特異性を上昇させるために1つまたは2つの遊離アミノ基が先に保護基(好ましくは、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc))で誘導体化されているインスリン分子。好ましくは、インスリン鋳型は組換えインスリンである。さらに好ましくは、インスリン鋳型は組換えヒトインスリンまたはそのアナログである。最も好ましくは、インスリン鋳型は組換えヒトインスリンである。
インスリン分子の脱アミド化を減少させるため、または阻害するために、および/または分子のインスリン効果を長期化させるために、式Iの21位の野生型アスパラギン(配列番号2の23位に対応する)を別のアミノ酸で置き換えることが望ましい場合、A21Xaa−インスリンをインスリン鋳型として用いることができる。好ましい態様の1つにおいて、A21AsnをA21Glyと置き換えてA21Gly−インスリンを形成する。別の好ましい態様において、A21AsnをA21Thrと置き換えてA21Thr−インスリンを形成する。別の好ましい態様において、A21AsnをA21Alaと置き換えてA21Ala−インスリンを形成する。別の好ましい態様において、A21AsnをA21Serと置き換えてA21Ser−インスリンを形成する。
「組換えタンパク質」は、真核生物または原核生物細胞においてタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターから発現されるタンパク質を意味する。好ましくは、組換えタンパク質は組換えインスリン分子である。
「組換えインスリン分子」は、真核生物または原核生物細胞においてインスリン分子のA鎖およびB鎖、場合によりプロインスリン分子のCペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターから発現されるインスリン分子である。好ましい態様の1つにおいて、組換えタンパク質は組換えインスリンまたはプロインスリンアナログである。別の好ましい態様において、組換えタンパク質は組換えインスリンおよびプロインスリンアナログである。
「組換えヒトインスリン」は、野生型ヒトA鎖(配列番号3)およびB鎖(配列番号4)アミノ酸配列を有する組換えインスリンを意味する。
「遺伝子学的に(遺伝子上)コード可能なアミノ酸」は、デオキシリボ核酸の3個の塩基の群である遺伝コドンによりコードされるアミノ酸を意味する。Biochemistry, L, Stryer編、第3版、W. H. Freeman and Co., New York、99〜107頁(1988)を参照のこと。遺伝子学的にコード可能なアミノ酸としては、以下のものが挙げられる:アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)。
臨床上正常な空腹時血漿グルコースレベルは70〜110mg/dlである。臨床上正常な食後血漿グルコースレベルは140mg/dl未満である。「被検体における血糖を調節するために十分な」とは、インスリン分子の投与が臨床上正常な空腹時血漿グルコースレベルを生じることを意味する。
当業者に周知であるように、長期にわたる所定の血漿グルコースレベルを維持するために必要とされる量の外来性グルコースを、インスリン分子により引き起こされるインスリン効果の程度および期間の指標として用いる「グルコース負荷(glucose clamp)」技術を用いて、インスリン効果を定量することができる。例えば、Burkeら、Diabetes Research、4:163−167(1987)を参照のこと。通常、グルコース負荷調査では、グルコースを静脈内注射する。インスリン分子が血漿グルコースレベルの減少を引き起こす場合、グルコース注入速度を上昇させ、所定の血漿グルコースレベルが維持されるようにする。インスリン分子の効果が減少した場合、所定の血漿グルコースレベルが維持されるようにグルコース注入速度を低下させる。
「インスリン効果」とは、グルコース負荷調査において、インスリン分子の投与が、グルコース負荷実験の間、被検体における所定の血漿グルコースレベルを維持するために静脈内血糖投与速度が上昇することを必要とするインスリン分子の投与が上昇することを必要とすることを意味する。好ましい態様の1つにおいて、所定のグルコースレベルは空腹時血漿グルコースレベルである。別の好ましい態様において、所定のグルコースレベルは食後血漿グルコースレベルである。
インスリン分子は、そのインスリン分子が高血糖(例えば、糖尿病)患者に、ヒトインスリンよりも長く持続するインスリン効果を提供する場合、「長期作用時間」を有する。好ましくは、インスリン分子は、インスリン分子の1回の投与後、約8時間〜約24時間の間、インスリン効果を提供する。より好ましくは、インスリン効果は約10時間〜約24時間持続する。さらにより好ましくは、効果は約12時間〜約24時間持続する。さらにより好ましくは、効果は約16時間〜約24時間持続する。最も好ましくは、効果は約20時間〜約24時間持続する。
あるインスリン分子が1回の投与後約24時間持続する、被検体におけるグルコース低下効果を提供する場合、そのインスリン分子は「基礎インスリン効果」を有する。
本明細書中で用いる「単離(された)タンパク質」は、タンパク質が製造された環境からそのタンパク質が取り出されていることを意味する。天然のタンパク質は、そのタンパク質が存在する細胞環境から取り出されている場合に単離されている。組換えタンパク質は、そのタンパク質が発現された細胞環境から取り出されている場合に単離されている。化学的に修飾されているタンパク質は、天然であろうと、または組換えであろうと、タンパク質が化学的に修飾される反応混合物から取り出されている場合に単離されている。好ましくは、単離されたタンパク質は他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドから取り除かれている。タンパク質を単離する方法としては、遠心分離、クロマトグラフィー、凍結乾燥、または電気泳動が挙げられる。このようなタンパク質単離方法および他のものは当業者に周知である。好ましくは、本発明のインスリン分子は単離されている。
タンパク質の「修飾」は、アミノ酸または誘導体型アミノ酸の付加、あるアミノ酸の別のアミノ酸での置換、またはアミノ酸の欠失を意味する。修飾は、組換えDNA方法を介して達成することができる。例えば、米国特許番号5,506,202、5,430,016および5,656,782を参照のこと。あるいは、修飾はインスリン鋳型の化学的修飾を介して達成することができる(例えば、インスリン鋳型への1つ以上の化学的部分の付加、またはインスリン鋳型からの1つ以上の化学的部分の除去による)。インスリン鋳型アミノ酸側鎖基での化学的修飾としては、カルバミル化、アミド化、グアニジル化、スルホニル化、1つ以上のαアミノ基のアシル化、ε−アミノ基のアシル化(例えば、リジンεアミノ基)、アルギニンのN−アルキル化、ヒスチジンまたはリジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が挙げられる。末端アミノ基(例えば、αアミノ基)の修飾としては、脱アミド、N−低級アルキルアミド、N−ジ低級アルキルおよびN−アシル修飾が挙げられるが、これらに限定されない。末端カルボキシ基の修飾は、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミドおよび低級アルキルエステル修飾が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、1種以上の側鎖または末端基を、タンパク質化学分野の当業者に公知の保護基により保護することができる。
本発明のインスリンアナログまたはインスリン誘導体を製造するために使用されるアミノ酸は、D体またはL体のいずれかであり、天然のアミノ酸または人工のアミノ酸のいずれかであり得る。
「誘導体型Arg」は合成化学的アプローチを介して修飾されているアルギニンを意味する。好ましいArg誘導体は、アシル化および/またはカルバミル化を通じて得られる。好ましい態様において、Argは正に荷電したアミノ酸で誘導体化される。別の好ましい態様において、Argをイプシロン(−Nε)アミノ基で誘導体化してArg−Nε−Argを形成する。別の好ましい態様において、Argをイプシロン(−Nε)アミノ基でLysを用いて誘導体化してArg−Nε−Lysを形成する。別の好ましい態様において、誘導体型Argはdアルギニン(dArgまたはdR)であり、これはα炭素位で逆転した立体化学を有するArgである。
「誘導体型Lys」は合成化学的アプローチを介して修飾されたリジンを意味する。好ましいLys誘導体は、アシル化および/またはカルバミル化を通じて得られる。好ましい態様において、Lysは正に荷電したアミノ酸で誘導体化される。別の好ましい態様において、Lysをイプシロン(−Nε)アミノ基でArgを用いて誘導体化してLys−Nε−Argを形成する。別の好ましい態様において、Lysをイプシロン(−Nε)アミノ基でLysを用いて誘導体化してLys−Nε−Lysを形成する。別の好ましい態様において、誘導体型Lysはホモアルギニン(ホモArgまたはhR)である。別の好ましい態様において、誘導体型Lysはdリジン(dLysまたはdL)であり、これはα炭素位で逆転した立体化学を有するLysである。別の好ましい態様において、誘導体型Lysはαグアニジノホモアルギニン(gHR)である。
ヒトインスリンは3個の遊離アミノ基を含む:A鎖のN末端αアミノ基、B鎖のN末端αアミノ基およびB鎖リジン側鎖のεアミノ基。通常、タンパク質のαおよび/またはεアミノ基を活性型カルボン酸でアシル化することができる。この文脈において、アシル化とはアミンとカルボン酸との間のアミド結合の形成を意味する。
インスリンA鎖のN末端アミノ酸のアミノ酸を用いてのアシル化は、ペプチド結合の形成を生じる。同様に、インスリンB鎖のN末端アミノ酸のアミノ酸を用いてのアシル化は、ペプチド結合の形成を生じる。Lysのε基のアミノ酸を用いてのアシル化は、Lys−Nε−アミノ酸誘導体を形成する。
「アシル型Arg」は、アシル含有化合物の酸性基とArgのεアミノ基との間に形成された共有結合を介してArgへと共有結合されているアシル部分を意味する。
「アシル型Lys」は、アシル含有化合物の酸性基とLysとの間に形成される共有結合を介してLysへと共有結合されるアシル部分を意味する。
「カルバミル型インスリン」は、カルバミル含有化合物のカルバミル基のカルボニル炭素とインスリンのアミノ基との間に形成された共有結合を介してインスリンへと共有結合されているカルバミル部分を意味する。
「カルバミル型Arg」は、カルバミル含有化合物のカルバミル基のカルボニル炭素とArgのαアミノ基との間に形成された共有結合を介してArgへと共有結合されているカルバミル部分を意味する。
「カルバミル型Lys」は、カルバミル含有化合物のカルバミル基のカルボニル炭素とLysとの間に形成された共有結合を介してLysへと共有結合されているカルバミル部分を意味する。
「製薬上許容可能な」は、ヒトへの投与に臨床上適切であることを意味する。製薬上許容される製剤は毒性の成分、望ましくない夾雑物などを含有せず、その中の活性化合物の活性を干渉しない。
「医薬組成物」とは、ヒト被検体への投与が臨床上許容可能である組成物を意味する。本発明のインスリン分子は、タンパク質が1種以上の無機塩基および無機酸および有機酸と相互作用して塩を形成するように医薬組成物中に処方することができる。酸付加塩を形成するために通常用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸である。このような塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、1水素リン酸塩、2水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩(sebacate)、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。
塩基付加塩としては、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などのような無機塩基に由来するものが挙げられる。それゆえ、本発明の塩を製造する際に有用なこのような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
「微結晶」とは、結晶状態の、および微視的なサイズ(通常、1ミクロン〜100ミクロンの範囲内の最大直径)の物質を主に含む固体を意味する。「微晶質の」とは、微結晶である状態を意味する。
「非晶質沈殿物」とは、形状が結晶性ではない不溶性物質を意味する。当業者であれば、結晶を非晶質沈殿物と区別することができる。
「懸濁液」は液体相および固体相の混合物を意味し、コロイドサイズよりも大きい、不溶性またはあまり可溶性ではない粒子からなる。例えば、NPH微結晶および水性溶媒の混合物は懸濁液を形成する。
「懸濁製剤」は、水性溶媒に微細に分散されている固体相に活性薬剤(例えば、微晶質固体、非晶質沈殿物またはその両方)が存在する医薬組成物を意味する。混合物の穏やかな攪拌により水性溶媒中にかなり均一な様式で懸濁されるように、固体は微細に分散されており、そこから投薬体積を取り出すことができるかなり均一な懸濁液を提供する。市販のインスリン懸濁製剤の例としては、例えば、NPH、PZIおよびUltralenteが挙げられる。微晶質懸濁製剤中の固体物質のうちの少量は非晶質であり得る。好ましくは、非晶質物質の割合は10%未満であり、最も好ましくは、非晶質懸濁物中の固体物質の1%未満である。同様に、非晶質沈殿物懸濁物中の固体物質の少量は、微晶質であってもよい。
「プロタミン」は、魚精子から得られる非常に塩基性の強いタンパク質の混合物である。プロタミン中のタンパク質の平均分子量は約4,200である[Hoffmann,J.A.ら、Protein Expression and Purification、1;127−133(1990)]。「プロタミン」は、比較的塩を含まないタンパク質の沈殿物を意味し、「プロタミン塩基」と呼ばれることも多い。プロタミンはまた、タンパク質の塩(例えば、プロタミン硫酸塩)からなる沈殿物を意味する。
「水性溶媒」は、水を含有する液体溶媒を意味する。水性溶媒系は水単独から構成されても、水および1種以上の混和性溶媒から構成されても、または溶質を含有してもよい。通常用いられる混和性の溶媒は、短鎖有機アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、短鎖ケトン(例えば、アセトン)およびポリアルコール(例えば、グリセロール)である。
「等張化剤(Isotonicity agent)」は、生理学的に寛容され、投与した製剤と接触している細胞膜を超えての水の正味の流入を阻害するために適切な張力を製剤に付与する化合物を意味する。グリセリンとしてもまた公知のグリセロールおよびマンニトールは、通常用いられる等張化剤である。他の等張化剤としては、塩化ナトリウムのような塩、およびデキストロースおよびラクトースのようなモノサッカライドが挙げられる。好ましい等張化剤はグリセロールである。
「ヘキサマー安定化化合物」は、6量体会合状態で本発明のインスリン分子を安定化する非タンパク質性の低分子量化合物を意味する。フェノール性化合物、特にフェノール性保存剤は、インスリン分子に関して最もよく知られている安定化化合物である。好ましくは、ヘキサマー安定化化合物は、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、メチルパラベンのうちの1つ、またはこれら化合物のうちの2種以上の混合物である。さらに好ましくは、ヘキサマー安定化化合物はフェノールまたはm−クレゾール、またはその混合物である。
「保存剤」とは、抗微生物薬として作用するように医薬製剤に添加される化合物を意味する。本発明の製剤中で使用される保存剤は、フェノール性保存剤であってもよく、ヘキサマー安定化化合物と同じであっても、異なっていてもよい。非経口製剤は商業的に適合する複数回用途製品であるための保存有効性についての指針に適合していなければならない。非経口製剤において有効であり、許容可能であることが当該分野において公知の保存剤のなかでも、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、クロロブタノール、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、プロピルパラベン、ベンジルクロロクレゾール、クロロクレゾールおよびそれらの種々の混合物が存在する。
「フェノール性保存剤」としては、化合物であるフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、メチルパラベンおよびこれらの混合物が挙げられる。特定のフェノール性保存剤(例えば、フェノールおよびm−クレゾール)はインスリン様分子に結合することにより物理的または化学的安定性のいずれか、またはその両方を上昇させる立体配置的変化を誘発することが知られている。好ましくは、フェノール性保存剤はm−クレゾールまたはフェノールである。「緩衝剤(液)」または「薬学的に許容される緩衝剤(液)」は、インスリン製剤での使用に関して安全である化合物を意味し、製剤のpHを製剤に対して望ましいpHに制御する効果を有する。本発明の結晶性製剤のpHは、約6.0〜約8.0である。本発明の液体製剤のpHは約3.5〜約6.0である。
pHを適度な酸性pH〜適度な塩基性pHに制御するための薬学的に許容される緩衝剤(液)としては、乳酸塩、酒石酸塩、リン酸塩(特にリン酸ナトリウム)、酢酸塩(特に酢酸ナトリウム)、クエン酸塩(特にクエン酸ナトリウム)、アルギン酸塩、TRIS、およびヒスチジンのような化合物が挙げられる。「TRIS」は2−アミノ−2−ヒドロキシルメチル−1,3−プロパンジオール、およびその薬理学的に許容される任意の塩を意味する。遊離塩基および塩酸塩形態が、TRISの一般的な形態の2つである。また、TRISは当該分野においてトリメチロールアミノメタン、トロメタミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとして公知である。pHを所望のレベルに制御するために適している他の薬学的に許容される緩衝剤は、当業者である化学者に公知である。
「即時作用型(速効型)インスリンアナログ」は、(a)皮下投与後にヒトインスリンよりも早く開始し、および/または(b)皮下投与後にヒトインスリンよりも短い作用期間を示す低血糖効果を提供する。B28LysB29Pro−インスリン(いわゆる「リスプロ(lispro)」インスリン)は即時作用型インスリンアナログであり、これは野生型B鎖(配列番号4)の28位のProおよび野生型B鎖(配列番号4)の29位のLysが交換されている。例えば、米国特許番号5,504,188および5,700,662を参照のこと。別の即時作用型インスリンアナログはB28Asp−インスリンであり、B鎖における28位の野生型ProはAspで置き換えられている。米国特許番号6,221,633を参照のこと。別の即時作用型インスリンアナログはB3LysB29Glu−インスリンである。米国特許番号6,221,633を参照のこと。
本発明のインスリン分子を含む微結晶が本明細書中において提供される。実施態様の1つにおいて、微結晶はプロタミンを含有しない。本発明の別の局面において、微結晶はプロタミンを含有せず、二価のカチオン(例えば、亜鉛)を含有する。このような結晶は特に、液体で、または続いての製剤化のための乾燥形態でバルクの結晶を製造するために適している。
別の実施態様において、微結晶はプロタミンを含有する。
別の実施態様において、微結晶は本発明のインスリン分子およびヒトインスリンの両方を含有する。好ましい態様の1つにおいて、微結晶は溶液製剤を製造するために使用される。別の好ましい実施態様において、微結晶は懸濁製剤を製造するために使用される。
本発明のインスリン分子を含む懸濁製剤もまた、提供される。懸濁製剤を含有する組成物もまた提供される。実施態様の1つにおいて、懸濁製剤は不溶相および溶液相を含有し、不溶相は本発明の微結晶を含有し、溶液相は水を含有する。望ましい場合、溶液相はヒトインスリンまたは即時作用型インスリンアナログ(例えば、B28LysB29Pro−インスリン、B28Asp−インスリンまたはB3LysB29Glu)を含有する。
懸濁製剤は真性糖尿病の治療用の医薬を製造するために使用することができる。また、懸濁製剤は、被検体における血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に懸濁製剤を投与することを含む方法で真性糖尿病を治療するために使用されうる。
本発明のインスリン分子は適切な二価の金属カチオンと錯体化することができる。「二価の金属カチオン」は、多数のタンパク質分子と錯体を形成するのに役立つイオンを意味する。遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属はインスリンと錯体を形成することが知られている金属の例である。遷移金属が好ましい。好ましくは、二価の金属カチオンは亜鉛、銅、コバルト、マンガン、カルシウム、カドミウム、ニッケルおよび鉄からなる群から選択される1種以上のカチオンである。より好ましくは、亜鉛は二価の金属カチオンである。好ましくは、亜鉛は硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛または酢酸亜鉛のような塩として提供される。通常、インスリン分子の二価金属錯体はほぼ生理学的なpHの水溶液中では不溶性である。従って、これらの錯体は懸濁液として皮下投与することができ、そしてインビボで低下した放出速度を示し、これにより化合物の時間作用を長期化する。
本発明のインスリン分子と二価の金属カチオンとの間の錯体を得るために、タンパク質を適切な緩衝液中および金属塩の存在下に溶解する。混合物を周囲温度でインキュベートして錯体を沈殿させる。適切な緩衝剤は約3.0〜約9.0のpH範囲に混合物を維持するものであり、錯体化反応と干渉しない。例としては、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝液およびグード(Goode’s)緩衝液(例えば、HEPES、TrisおよびTris酢酸塩)が挙げられる。適切な金属塩は、金属が錯体化に利用可能であるものである。適切な亜鉛塩の例としては、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化亜鉛および硫酸亜鉛が挙げられる。
「保護型アミノ酸」は、反応官能基のうちの1つを除いて全てが可逆的に誘導体化されており、その結果としてただ1つの官能基のみが反応性となっているアミノ酸である。例えば、保護型の活性型カルボン酸に関しては、αカルボキシレート基は反応性であるが、活性型カルボン酸上の他の官能基は全て非反応性である。保護型アミノ酸は、保護型官能基が除去された時点で「脱保護」される。好ましくは、保護型アミノ酸は保護型アルギニンである。
「保存的置換」は、同じ正味の荷電を有し、ほぼ同じサイズと形状を有する別のアミノ酸でのアミノ酸の置換である。脂肪族または置換型脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、側鎖中の炭素およびヘテロ原子の総数における差がおよそ以下の場合にほぼ同じサイズである。これらは側鎖中の分岐の数の差が1つ以下の場合にほぼ同じ形状を有する。側鎖中にフェニルまたは置換型フェニル基を有するアミノ酸はほぼ同じサイズと形状を有すると見なされる。以下に5個のアミノ酸グループを列挙する。インスリン中のアミノ酸を同じグループの別のアミノ酸と置き換えることにより保存的置換が生じる。
グループI:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システインおよびC1−C4脂肪族またはC1−C4ヒドロキシル置換型脂肪族側鎖(直鎖型またはモノ分岐型)を有する非天然のアミノ酸。
グループII:グルタミン酸、アスパラギン酸およびカルボン酸置換型C1−C4脂肪族側鎖(分岐無しまたは分岐点が1つ)を有する非天然のアミノ酸。
グループIII:リジン、オルニチン、アルギニン、ホモアルギニンおよびアミンまたはグアニジノ置換型C1−C4脂肪族側鎖(分岐無しまたは分岐点が1つ)を有する非天然のアミノ酸。
グループIV:グルタミン、アスパラギンおよびアミド置換型C1−C4脂肪族側鎖(分岐無しまたは分岐点が1つ)を有する非天然のアミノ酸。
グループV:フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシンおよびトリプトファン。
本明細書中に具体的に提供されるものを除いては、好ましくは保存的置換は天然のアミノ酸を用いて行われる。
「非常に保存的な置換」は、あるアミノ酸の、側鎖に同じ官能基を有し、ほぼ同じサイズおよび形状を有する別のアミノ酸での置換である。脂肪族または置換型脂肪族アミノ酸側鎖を有するアミノ酸は、側鎖中の炭素およびヘテロ元素の総数の差が2以下の場合にほぼ同じサイズを有する。これらは、側鎖中に同じ数の分岐を有する場合にほぼ同じ形状を有する。非常に保存的な置換の例としては、ロイシンのバリンでの置換、セリンのトレオニンでの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸での置換、およびフェニルアラニンのフェニルグリシンでの置換が挙げられる。あまり保存的ではない置換の例としては、バリンのアラニンでの置換、セリンのアラニンでの置換およびセリンのアスパラギン酸での置換が挙げられる。
本発明のインスリン分子では、A鎖はA鎖C末端にさらに1〜3個のアミノ酸を有してもよく、これは式IのA22、A23およびA24位である。好ましくはA22、A23およびA24位の各々のアミノ酸はXaaであり、Xaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸である。
B鎖はB鎖C末端にさらに1〜6個のアミノ酸を有してもよく、これは式IIのB31、B32、B33、B34、B35およびB36位である。好ましい態様の1つにおいて、B鎖はB31位にAla、B32位にArgおよびB33位にArgを含む。別の好ましい態様において、B鎖はB31位にAla、B32位にAla、B33位にAla、B34位にArg、B35位にArgおよびB35位にArgを有する。
インスリン分子、微結晶、懸濁液、溶液非晶質沈殿物または本発明の組成物の「有効(な)量」とは、インスリン治療を必要とする被検体に投与した場合に許容できない副作用を引き起こすことなく所望のインスリン効果を生じる量である。また、被検体に投与される本発明のインスリン分子の「有効(な)量」は疾患のタイプおよび重篤度、および被検体の特徴(例えば、全体的な健康、年齢、性別、体重および薬物に対する寛容性)に依存する。当業者であれば、これらおよび他の因子に応じて適切な投薬量を決定できるだろう。通常、本発明のインスリン分子の治療上有効な量は、成人に対して約0.01mg/日〜約1000mg/日の範囲であり得る。好ましくは、投薬量は約0.1mg/日〜約100mg/日、より好ましくは約1.0mg〜10mg/日の範囲である。
「所望の治療効果」としては、以下のもののうちの1つ以上が挙げられる:1)真性糖尿病に関連する症状の緩解、2)真性糖尿病に関連する症状の発症の遅延、3)治療しない場合と比較しての寿命の延長、および4)治療しない場合と比較しての生活の質の向上。例えば、糖尿病の治療のための本発明のインスリン分子の「有効量」とは、治療しない場合よりも優れた血糖濃度のコントロールを生じ、これにより糖尿病合併症(網膜症、神経障害または腎疾患)の発症を遅延を生じる量である。
投薬量、投与経路および1日あたりの投与回数は、治療目的、患者の疾患の性質および原因、患者の性別および体重、運動レベル、食生活、投与方法、および熟練した医師に公知の他の因子のような因子を医師が考慮することにより決定されるだろう。広範囲では、1日当たりの投薬量は、約1nmol/体重1kg〜約6nmol/体重1kg(6nmolはインスリン活性の約1単位に等しいと見なす)の範囲にある。約2〜3nmol/kgの投薬量が本発明のインスリン治療の典型である。
糖尿病を治療する際に当業者である医師は本発明の製剤を投与するための、治療上最も都合のよい方法を選択することができる。非経口投与経路が好ましい。インスリンの液体製剤および懸濁製剤の通常の非経口投与経路は、皮下経路および筋肉内経路である。本発明の組成物および製剤もまた、経鼻、経頬粘膜、経肺または眼内経路により投与することができる。
本発明のインスリン分子およびその組成物は、非経口的に投与することができる。非経口投与としては、例えば、筋肉内、静脈内、皮下または腹膜内注射によるような全身投与を挙げることができる。好ましくは、投与経路は皮下である。
本発明のインスリン分子およびその組成物は、高血糖を治療するための医薬組成物の一部としての1種以上の製薬上許容される賦形剤、キャリアまたは希釈剤と組合せて、被検体に投与することができる。
本発明のインスリン分子およびその組成物は液剤であってもよい。あるいは、本発明のインスリン分子およびその組成物は、本発明のインスリン分子の懸濁液または二価金属カチオンと錯体化したタンパク質化合物の懸濁剤であってもよい。
本発明のインスリン分子ならびに、等張化剤、二価カチオン、ヘキサマー安定化化合物、保存剤および緩衝剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む組成物が本明細書中において提供される。
適切な医薬キャリアは、本発明のインスリン分子と相互作用しない不活性成分を含みうる。Remington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton,PAに記載されているような標準的な医薬製剤技術が用いられ得る。非経口投与のために適した医薬キャリアとしては、例えば、滅菌水、生理食塩水、静菌的生理食塩水(約0.9%mg/mlベンジルアルコールを含有する生理食塩水)、リン酸緩衝化生理食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲル液などを挙げることができる。適切な賦形剤の例としては、グリセロール、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトールおよびマンニトールを挙げることができる。
「被検体」は哺乳動物、好ましくはヒトであるが、ペット(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)のような動物であってもよい。
インスリン鋳型およびインスリンアナログは、組換え方法を用いて入手することができる。例えば、組換えプロインスリンまたはプロインスリンアナログを用いることができる。あるいは、組換えインスリンA鎖およびB鎖を宿主細胞中で発現させた後、組み換えることができる。あるいは、インスリン前駆体を用いることができる。これらの方法は各々、当業者に周知である。例えば、米国特許番号4,421,685、米国特許番号4,569,791、米国特許番号4,569,792、米国特許番号4,581,165、米国特許番号4,654,324、米国特許番号5,304,473、米国特許番号5,457,066、米国特許番号5,559,094、欧州特許番号EP741188A1を参照のこと。また、Chanceら、Diabetes Care 16(Suppl3):133−142(1993)、Chanceら、「Peptides:Synthesis−Structure−Function」、第7回アメリカペプチドシンポジウム会報(Proceedings of the 7thAmerican Peptide Symposium)、Rich,D.H.ら編、Pierce Chemical Company,Rockford,IL、721−738頁(1981)およびFrankら、Munch med Wsch 125(Suppl.1):S14−20(1983)も参照のこと。
好ましい態様のうちの1つにおいて、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンは、A0LysA21GlyB29Lys−インスリンのεアミノ基を選択的にアシル化することにより製造される。εアミノ基の選択的アシル化は当業者により達成することができる。例えば、米国特許番号5,646,242を参照のこと。別の好ましい態様において、A21GlyC64ArgC65Lys−ヒトプロインスリンのεアミノ基を選択的にアシル化し、アシル型プロインスリン誘導体をプロテアーゼで消化して望ましくないアミノ酸を取り除き、他方でC65Lys−Nε−ArgおよびB29Lys−Nε−Argをインタクトなままで保持してA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン誘導体を製造することにより、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを製造する。
インスリン分子またはその前駆体をコードするDNAを含み、かつ適切な栄養培地中でそのポリペプチドを発現し得る条件下でペプチドを発現しうる宿主細胞を培養することを含む方法により、組換えインスリン分子を製造することができ、この後に得られたペプチドを宿主細胞および/または培養培地から回収する。
細胞を培養するために用いる培地は、最少培地または適切な補充物を含む複合培地のような、宿主細胞を増殖させるために適した任意の一般的な(conventional)培地であってよい。適切な培地は市販されているものか、または公開されている方法(例えば、the American Type Culture Collectionのカタログ中)から製造してもよい。次いで、目的のペプチドのタイプに応じて、遠心分離またはろ過により培地から宿主細胞を分離すること、硫酸アンモニウムのような塩により上清またはろ液のタンパク質性成分を析出させること、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のような種々のクロマトグラフィー方法による精製を含む都合のよい方法により、細胞により産生されるペプチドを培養培地から回収することができる。
従って、本発明のインスリン分子を発現させる方法が本明細書中に提供され、この方法は、宿主細胞の増殖およびインスリン分子の発現に適した条件下で、インスリン分子を含む宿主細胞を培養することを含む。好ましい態様の1つにおいて、この方法はさらに宿主細胞からインスリン分子を精製することを含む。別の好ましい態様において、この方法はさらに、インスリン分子を培養培地から精製することを含む。さらに別の好ましい態様において、この方法はさらに、インスリン分子を宿主細胞および培養培地の両方から精製することを含む。
好ましい態様において、宿主細胞は真核生物細胞である。好ましくは、真核生物細胞は真菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、または不死化哺乳動物セルライン細胞である。別の好ましい態様において、宿主細胞は原核生物細胞である。好ましくは、真核生物細胞は細菌細胞であり、より好ましくは大腸菌細胞である。
インスリン分子またはその前駆体をコードする核酸配列を、組換えDNA方法に簡便に供することができる任意のベクターに挿入することができ、ベクターの選択はしばしば導入される宿主細胞に依存する。従って、ベクターは自律複製ベクター、すなわち、細胞外の存在として存在し、その複製が染色体性複製からは独立しているベクターである(例えば、プラスミド)。あるいは、ベクターは宿主細胞に導入された場合に宿主細胞ゲノムに組み込まれて、組み込まれた染色体と共に複製されるものではない。
ベクターは、ペプチドをコードするDNA配列がDNAの転写に必要とされる追加のセグメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている発現ベクターであることが好ましい。プロモーターは、選択した宿主細胞で転写活性を示す任意のDNA配列であってもよく、宿主細胞に対して同種または異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子に由来し得る。種々の宿主細胞において、本発明のペプチドをコードするDNAの転写を指向する適切なプロモーターの例は、当該分野において周知である。
ペプチドをコードするDNA配列もまた、必要であれば、適切なターミネーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー配列および翻訳エンハンサー配列に作動可能に連結することができる。本発明の組換えベクターは、宿主細胞中でベクターを複製させ得るDNA配列をさらに含みうる。
また、ベクターは選択マーカー(例えば、遺伝子、宿主細胞における欠損を補う産物、またはアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を付与する産物)を含みうる。
本発明の親ペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても公知)を組換えベクター中に提供することができる。分泌シグナル配列を正確なリーディングフレームでペプチドをコードするDNA配列に連結する。分泌シグナルは通常、ペプチドをコードするDNA配列に対して5’に配置される。分泌シグナル配列は、通常ペプチドと会合していてもよいし、または別の分泌型タンパク質をコードする遺伝子由来ものであってもよい。
本発明のインスリン分子は、固相ペプチド合成技術の標準的な方法を用いることにより製造することができる。ペプチド合成機は、例えば、Applied Biosystems、Foster City CAから市販されている。固相合成用の試薬は、例えば、Midwest Biotech (Fishers, IN)から市販されている。固相ペプチド合成機は、干渉基(interfering group)をブロックすること、反応させるアミノ酸を保護すること、カップリングさせること、脱カップリングさせること、および未反応のアミノ酸をキャッピングすること(capping)について、製造業者の指示に従って用いることができる。
通常、樹脂上の伸張ペプチド鎖上のα-N-カルバミル保護型アミノ酸およびN-末端アミノ酸を、不活性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンまたは塩化メチレン)中、カップリング剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)および塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下、室温でカップリングさせる。α-N-カルバミル保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)またはピペリジンのような試薬を用いて得られたペプチド樹脂から除去し、ペプチド鎖に付加されるべき次の所望のN-保護型アミノ酸を用いてカップリング反応を繰り返す。適切なアミン保護基は当該分野において周知であり、例えば、GreenおよびWuts、「Protecting Groups in Organic Synthesis」、John Wiley and Sons、1991(この中の技術は参照して全て組み込む)に記載されている。例として、t-ブチルオキシカルボニル(tBoc)およびフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)を挙げることができる。
ペプチドは、適切な側鎖保護を有するt-ブトキシカルボニル-またはフルオレニルメトキシカルボニル-α-アミノ酸を用いる標準的な自動固相合成プロトコルを用いて合成することができる。合成の完了の後、標準フッ化水素法またはTFA法を用いて側鎖を同時に脱保護しながら、ペプチドを固相支持体から切断する。次いで、粗ペプチドを、Vydac C18カラムでの逆相クロマトグラフィー(水-アセトニトリル線形勾配を用いる。溶媒は全て0.1%TFAを含有する)を用いてさらに精製する。アセトニトリルおよび水を除去するために、0.1%TFA、アセトニトリルおよび水を含む溶液からペプチドを凍結乾燥させる。純度は分析逆相クロマトグラフィーにより確かめることができる。ペプチドの同定は質量分析により確認することができる。中性のpHで、水性緩衝液中にペプチドを可溶化してもよい。
本発明のインスリン分子は、組換えインスリン鋳型を化学的に修飾することにより製造できる。実施態様の1つにおいて、組換えインスリン鋳型を、活性型カルボン酸部分を用いて1種以上の保護型アミノ酸でアシル化する。好ましくは、活性型エステルまたはアミドを用いる。さらに好ましくは、活性型エステルを用いる。さらにより好ましくは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを用いる。
本発明の方法において、インスリン分子はインスリン鋳型を化学的に修飾して製造することにより、インスリン鋳型を活性型カルボン酸部分を用いて保護型アミノ酸でアシル化する。好ましくは、活性型エステルまたはアミドを用いる。さらに好ましくは、活性型エステルを用いる。さらにより好ましくは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを用いる。インスリンA鎖および/またはB鎖LysのN末端をアシル化する技術は当業者に周知である。
従って、好ましい実施態様の1つにおいて、組換えA21Xaa−インスリンをA1位およびB29位でアシル化してA0ArgA21XaaB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成する。別の好ましい態様において、A21Gly−インスリンをA1位およびB29位でアシル化してA0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成する。
別の好ましい態様において、組換えA0ArgA21Xaa−インスリンをB29位でアシル化してA0ArgA21XaaB29Lys−Nε−Lys−インスリンを形成する。別の好ましい態様において、A0ArgA21Gly−インスリンをB29位でアシル化してA0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Lys−インスリンを形成する。
別の好ましい態様において、組換えA0LysA21Xaa−インスリンをA0位およびB29位でアシル化してA0Lys−Nε−ArgA21XaaB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成する。好ましくは、A0LysA21Gly−インスリンをA0位およびB29位でアシル化してA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成する。
別の好ましい態様において、プロインスリンアナログを用いて本発明のインスリン分子を製造する。野生型ヒトプロインスリンにおいて、Lysはアミノ酸64位であり、Argはアミノ酸65位である。64位にArgおよび65位にLysを有するプロインスリンアナログを用いてA0LysA21Xaa−インスリンを製造した後、A0位およびB29位でアシル化してA0Lys−Nε−ArgA21XaaB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成することができる。好ましくは、A0LysA21Gly−インスリンをB29位でアシル化してA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを形成する。
好ましくは、水および有機溶媒の混合物中でタンパク質アシル化反応を行うが、また反応物質の可溶性に依存して純粋な有機条件または純粋な水性条件中でもまた行うことができる。以下の実施例において、有機成分としてMeOH、DMFまたはCHCNを用いて40〜60%の間で有機物を含有する混合物中で反応を行った。活性型カルボン酸部分はアミノ酸、ジペプチドまたは短いポリペプチドを含み、ここでεアミノ基および全ての側鎖官能基は適切な保護基で誘導体化されており、好ましくはタンパク質誘導体化工程が完了した後に除去される。水性混合物への好ましい可溶性および得られるNHS−エステルのタンパク質アミノ基との反応性が原因で、カルボン酸活性化基はN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が好ましい。NHS−エステルのインスリン鋳型に対する比は2〜20の間で変化しうるが、好ましくは3〜5である。比は、モノ−、ジ−およびトリ−アシル型産物ならびに生じるNHS−エステル試薬の相対的反応性の所望の程度に応じて調節する。
反応は室温(20〜25℃)で、通常は電磁攪拌子により攪拌しながら、またはローティッセリー(rotisserie)で混合しながら行う。好ましくは、反応は1/2時間〜6時間の間、進行させる。
所望のレベルのアシル化(LC−MSモニタリングにより測定する)が生じた後、反応混合物を酢酸またはトリフルオロ酢酸で酸性にすることによりクエンチする。さらに、後処理/精製を、(1)逆相HPLCによる反応混合物の直接精製、続いて保護基除去、および得られた単離した脱保護型産物の逆相HPLCによる再精製、または(2)水での反応混合物の、25%未満の有機物含有物への希釈および凍結乾燥、続いての保護基除去、カチオン交換クロマトグラフィーによる精製、および逆相HPLCまたはゲルろ過での最終的な精製/脱塩により、行うことができる。
保護基としては、タンパク質およびペプチドと適合性の条件(すなわち、タンパク質/ペプチドを破壊するほど過酷ではない条件)で脱保護が行うことができる基を挙げることができる。例えば、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)またはトリフルオロアセチル(tfa)基を用いてアミノ官能基を保護することができる。例えば、それぞれ、トリフルオロ酢酸(TFA)および水性水酸化アンモニウム(NHOH)を用いて保護基を取り除くことができる。グアニジノ部分の保護はBoc、Pmc(2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−5−スルホニル)またはPbf(2,2,4,6,7−ペンタメチルベンゾフラン−5−スルホニル)基を介するものである。PmcおよびPbf基はまた、TFAを用いて除去されるが、以下の実施例にさらに記載するようなスカベンジャーの存在を必要とする。
アミノ基はアシル化で適切に反応するために中性(脱プロトン型)形態でなければならないので、反応が行われるpHは反応速度に非常に影響を与える。通常、水性混合物では、特定のアミノ基の反応速度は、pHが非常に高い場合を除いてpKaに反比例する。また、反応速度は隣接基の立体効果および近接効果、および側鎖の溶媒への接近可能性の程度により影響を受けるかもしれない。インスリンの場合、3個のアミンは特徴的なpKa値を有し、反応性に関して周囲環境の異なる影響を有しているので、幾らか特異性が達成されうる(Lindseyら、Biochem.J.121:737−745(1971)を参照のこと)。特に、B29:リジン側鎖のεアミノ基は10を超えるpHでのアシル化反応の中心となる(Bakerら、米国特許第5,646,242号参照)。以下の実施例において、所望される特定の産物に依存して、反応特異性の微調整を可能とするために、反応は約6〜11の範囲にわたるpH値で行った。
以下の実施例において、最終生成物の識別はLC−MS(分子量の確認)、N−末端タンパク質配列決定およびS.Aureus V8プロテアーゼ消化物(これはGlu残基のカルボキシ側鎖上のペプチド結合のこの酵素による特異的な切断に起因して特徴的なインスリンフラグメントを生じる)のLC−MS分析を含む組合せ技術により確認した(Nakagawa,S.H.&Tager,H.S.、J.Biol.Chem.266:11502−11509(1991)参照)。
実施例1
A0ArgB0ArgB28Lys−Nε−ArgB29Proインスリンを産生するための水/CHCN中でのBoc−Arg(Boc)−NHSエステルを有するB28LysB29Pro−インスリンのアシル化
B28LysB29Pro−インスリン−Zn結晶(320mg、0.055mmol)をCHCN:PBS(1:1)緩衝液(30mL)に溶解した。5M KOH溶液(50μL)を加えてpH10で結晶を溶解した。次いで、5Mリン酸を用いてpHを約7.5に調整した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステルを、ジクロロメタン中で30分間、Boc−Arg(Boc)−OH、NHSおよびジシクロヘキシルカルボ−ジイミド(DCC)(各々1mmol)を共に混合して製造した。次いで、混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。次いで、Boc−Arg(Boc)−NHSエステルをMeOH(4mL)に溶解した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル溶液(2mL)をインスリン溶液に加え、溶液を室温で2時間混合した。この点でのpHは約6.4まで低下した。5M KOH溶液(40μL)の添加によりpHは7.1まで上昇した。残りのBoc−Arg(Boc)−NHSエステルをインスリン混合物に加え、反応をさらに2.5時間続けた。次いで、混合物をトリフルオロ酢酸(TFA)で酸性にし、水(30mL)で希釈し、一晩凍結乾燥させた。脱保護型生成物を産生するために、凍結乾燥型物質(合計約900mg、過剰なアシル化試薬およびPBS緩衝液由来の塩の存在に起因する)をTFA(20mL)に溶解し、室温に1時間静置した。次いで、混合物をほぼ乾固するまでロータリーエバポレーターでエバポレートし、CHCN:水(1:9)(20mL)に再溶解した。
サンプルをZorbax Eclipse XDB−C8(内径4.6mm×15cmカラム)での分析逆相HPLC(A=0.05%TFA/HOおよびB=CHCN:HO(60:40)中0.05%TFAで、10〜100%BのAB線形勾配、15分。流速1mL/分)により分析した。これらの条件で、サンプルは主要なピーク(LC−MSによりトリアシル型インスリンのMWであることを確認した)を、それぞれ主要なピークの直前および直後に溶離する少量のテトラアシル型およびジアシル型インスリンと共に示した。それらはこれらのクロマトグラフィー条件下では完全には溶解しなかったので生成物の相対量は測定しなかったが、約70%の物質がトリアシル型種であった。
粗アシル型物質の半分を、SP−セファロース物質を充填したガラス内径2cm×30cmカラムでのカチオン交換クロマトグラフィーにより精製した。0〜40%BのAB線形勾配を、流速3mL/分で100分かけて行った。溶媒組成は、A:HO:CHCN(70:30、pH4.0)中70mM酢酸ナトリウム、およびB:HO:CHCN(70:30、pH4.0)中70mM酢酸ナトリウム、1M塩化ナトリウム。トリアシル型インスリン生成物を含む画分をプールし、溶液を約96mL〜75mLに濃縮し、HO(100mL)で希釈し戻して、Vydac C18(内径2.0cm×25cm)分取カラムに20mL/分でかける。サンプルを2段階AB線形勾配(15分かけて0〜15%B、続いて100分かけて15〜65%B。A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN)を用いて10mL/分の流速で溶離した。合わせた精製物質を凍結乾燥させて52mgを得た(これは約34%の全体の収率に対応する)。
実施例2
A0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンを産生するための水/CHCN中でのBoc−Arg(Boc)−NHSエステルを有するA0Arg−インスリンのアシル化
Boc−Arg(Boc)−NHSエステル(0.5mmol)を製造し、MeOH(5mL)に溶解した。A0Arg−インスリン(104mg、0.017mg)をPBS緩衝液/CHCN(1:1、10mL)に溶解し、5M KOH溶液でpH11に調節した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル溶液(0.52mL、0.52mmol)をインスリン溶液に加えた。pHを約9まで低下させ、すぐに、5M KOH溶液を用いて11まで戻した。
反応を室温で30分間進行させ、続いて酢酸200μLで酸性にした。分析HPLC(上記実施例1で行った通り)に主要なピークが1つ存在し、これはLC−MSにより測定したモノアシル型生成物に関する正確なMWを有した。サンプルを上記の通り、2段階AB線形勾配でVydac C18分取カラムでの逆相HPLC(15分かけて0〜18%B、続いて160分かけて18〜100%B)により直接精製した。生成物を含むプールした画分を凍結乾燥させると合計約61mgとなった。凍結乾燥させたサンプルをTFA(10mL)に溶解し、30分間攪拌し、次いでほぼ乾固するまで濃縮し、CHCN:HO(10:90、20mL)に再溶解した。次いで、サンプルを上記の実施例1に記載の最終逆相精製にかけた。最終凍結乾燥型質量は31mgであり、全体的な収率はおよそ30%であった。
実施例3
A−1ArgA0Arg−インスリンを産生するための水/DMF中での組換えヒトインスリンのBoc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステルでのアシル化
ジクロロメタン中で60分間混合したBoc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−OH、NHSおよびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(各々0.2mmol)からBoc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステル(0.2mmol)を製造した。次いで、サンプルをろ過し、乾固するまでエバポレートしてDMF(4mL)に再溶解した。組換えヒトインスリン−Zn結晶(320mg;0.055mmol)をDMF:PBS(1:1)緩衝液(20mL)に溶解した。5M KOH溶液を加えた(結晶をpH10で溶解するために50μL)。5Mリン酸を用いてpHを8.2に調整し、Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(3mL、0.15mmol)を加えた。約1時間混合した後、分析HPLC(上記実施例1で行ったとおり)は、モノアシル型産物に起因する2個のピークを示した(LC−MSにより確認)。ピークは約70:30の比で存在した。
続いてのS.Aureus V8プロテアーゼ消化物のLC−MS分析により、A鎖N末端のアシル化に起因する豊富なピーク、およびB鎖N末端またはB29:Lysの側鎖アミンのいずれかでアシル化されている種の混合物を含む小さいピークが存在することを証明した。実施例1に記載したようなVydac C18カラムでの精製により、保護型A鎖アシル化生成物(49mg)を得た。この物質を、TFA:アニソール:MeOH:トリイソプロピルシラン(TIPS)(94:2:2:2、10mL)の混合物を用いて室温で1時間、脱保護した。
次いで、混合物をほぼ濃縮乾固させ、CHCN:HO(20:80、6mL)に再溶解し、ジエチルエーテル(10mL)で2回抽出した。最終的な逆相HPLCでの精製により(実施例1に記載)、A−1ArgA0Arg−インスリン生成物を全体的な収率を約10%で得た(34mg)。
実施例4
B−1ArgB0Arg−インスリンを産生するための水/DMF中での組換えヒトインスリンのBoc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステルでのアシル化
B鎖N末端またはB29Lysの側鎖のいずれかでモノアシル化した生成物(上記実施例3参照)の同時溶離に起因して、組換えヒトインスリンをA鎖N末端およびB29Lys側鎖アミン上でtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基を用いて最初に保護した。組換えヒトインスリン(320mg)をCHCN:PBS(1:1)緩衝液(20mL)に溶解し、pHを10.6に調整した。ジ−tert−ブチルジカルボキシレート(2.5当量)((Boc)O)を加えた(CHCN270μL中55mg)。30分後、pHは約8.7まで低下した。5M KOHを用いて約11までpHを戻した後、反応をさらに2.5時間進行させた。この時点で、LC−MS分析は、それぞれ、モノ−、ジ−およびトリ−Boc誘導体種の質量を有する3個の主要な生成物の存在を示した。
HPLCピーク領域は、モノ−、ジ−およびトリ−Boc誘導体が、それぞれ、約15:60:25の相対比で存在することを示した。物質の精製は実施例1に記載の通りにC18分取カラムで、以下の3段階AB線形勾配を用いて行った:(1)0〜20分の時間範囲で0〜20%B、(2)20〜30分の時間範囲で20〜25%B、および(3)30〜230分の時間範囲で25〜75%B。ジ−Boc誘導体型生成物(Boc−インスリン)を、凍結乾燥後に収率82mgで得た。S.aureus V8プロテアーゼ消化物のLC−MS分析により、最終的に、生成物はA鎖N末端およびB29:Lys側鎖にBoc基を含むことを証明した。
Boc−インスリン(82mg、0.014mmol)をDMF:PBS(1:1)緩衝液(10mL)に溶解し、pHを約8に調整した。Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステルを上記の実施例3に記載するように製造し、DMFに0.05mmol/mLの濃度で溶解した。NHSエステル溶液(1.4mL、0.07mmol)をBoc−インスリンに加え、1時間反応させた。Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステル溶液をさらに0.6mL(0.03mmol)添加し、反応をさらに1時間続けた。実施例1に記載されるように(しかし、A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN中で、25分かけて25〜100%BのAB線形勾配。流速1mL/分)、分析HPLCにより生成物を分析した。Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−Boc−インスリン生成物の正確なMWを有する1個のピークが現れることが見いだされた。
実施例1の通り、Vydac C18カラムを用いて、以下の3段階AB線形勾配で精製を行った:(1)0〜20分の時間範囲で0〜25%B、(2)20〜40分の時間範囲で25〜40%Bおよび(3)40〜100分の時間範囲で40〜100%B。精製した完全な保護型生成物を凍結乾燥後に得た(36mg)。物質を室温で1時間、TFA:アニソール:MeOH:TIPS(94:2:2:2、10mL)を用いて処理し、完全に保護した生成物を得た。次いで、混合物をほぼ乾固するまで濃縮し、CHCN:HO(10:90、10mL)に再溶解し、これをジエチルエーテル(15mL)で2回抽出した。最終的な逆相HPLC精製(実施例1に記載)により、最終的なB−1ArgB0Arg−インスリン生成物(24mg)を約8%の全体的な収率で得た。
実施例5
A0ArgB−1ArgB0Arg−インスリンを産生するためのHO/CHCN中でのA0Arg−インスリンのBoc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステルでのアシル化
実施例3に記載したように、Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステル(0.5mmol)を製造し、MeOH(4mL)中に溶解した。A0Arg−インスリン(320mg、0.054mmol)をpH10でCHCN:PBS緩衝液(1:1、40mL)に溶解した。pHを約7まで低下させた。約6.3のそのpIの近傍になるとタンパク質が原因で溶液が濁り始めた。Boc−Arg(Pbf)Arg(Pbf)−NHSエステル溶液の半分(0.25mmol、約4.7当量)を加え、溶液を15分間超音波処理した後、ローティッセリーで75分間混合した。HPLC分析は2つのピークを示した。これはLC−MSにより約85:15の比で存在するモノアシル型生成物であることを確認した。サンプルをTFA(100μL)で酸性にしたのち、HO(20mL)で希釈した。逆相精製を実施例2に記載するように行い、凍結乾燥後に主なモノアシル型生成物(55mg)を得た。ペプチドを実施例3に記載のTFAカクテル(20mL)を用いて2時間、脱保護し、ほぼ乾固するまでエバポレートし、CHCN:HO(10:90、20mL)に溶解し、ヘキサン(20mL)で抽出した。実施例1に記載の最終逆相HPLC精製により、生成物を得た(38mg、収率12%)。続いて、この物質が所望のA0ArgB−1ArgB0Arg−インスリンであることを確認した。
実施例6
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Argインスリンを産生するための水/CHCN中での組換えヒトインスリンのBoc−Arg(Boc)−NHSエステルでのアシル化
組換えヒトインスリン亜鉛結晶(307mg、0.053mmol)をCHCN:PBS緩衝液(1:1、30mL)に溶解した。5M KOH溶液(50μL)を加えてpH10で結晶を溶解した。次いで、5Mリン酸を用いてpHを約7.5まで低下させた。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル(1mmol)を実施例1に記載するように製造し、MeOH(4mL)に溶解した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル溶液(2mL、0.5mmol)をインスリン溶液に加え、得られた混合物を室温で2時間混合した。この点でのpHは約6.6まで低下した。5M KOH溶液(50μL)の添加によりpHは7.2まで上昇した。
次いで、得られたBoc−Arg(Boc)−NHSエステルをインスリン混合物に加え、反応をさらに3時間続けた。次いで、混合物をTFA(100μL)で酸性にし、水(30mL)で希釈し、一晩凍結乾燥させた。凍結乾燥させた物質(過剰のアシル化試薬およびPBS緩衝液由来の塩の存在が原因で合計1.07g)をTFA(20mL)に溶解し、室温で1.5時間静置して脱保護生成物を得た。次いで、混合物をロータリーエバポレーターでほぼ乾固するまでエバポレートし、CHCN:HO(1:9、20mL)に再溶解した。
サンプルを実施例1に記載するように分析逆相HPLCにより分析し、これはトリアシル型生成物の主要なピークと、主要なピークの直前および直後にそれぞれ溶離する少量のテトラアシル型およびジアシル型インスリンを有する類似のクロマトグラフィープロフィールを示した。生成物の相対量は、これらの条件下では生成物は完全に溶解しなかったが、約70%の物質はおそらくトリアシル型種(実施例1でも観察される)であることを決定した。
粗アシル型物質を実施例1に記載のようにカチオン交換クロマトグラフィーにより精製した。合わせた精製トリアシル型インスリンを約96mL〜75mLに濃縮し、HOで100mLまで希釈し、Vydac C18分取カラムにかけて実施例1に記載のように精製した。合わせた精製物質を凍結乾燥して得た(96mg、全体の収率は約31%)。
実施例7
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−ArgA21Gly−インスリンを産生するためのHO/CHCN中でのA21Gly−インスリンのBoc−Arg(Boc)−NHSエステルでのアシル化
凍結乾燥A21Gly−インスリン(65mg、0.011mmol)をCHCN:PBS緩衝液(1:1、8mL)に溶解した。5M KOH溶液を用いてpHを7.5に調整した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル(0.4mmol)を実施例1に記載のように製造し、MeOH(2mL)に溶解した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル溶液(1mL、0.2mmol、17当量)をA21:G−インスリン溶液に加え、得られた混合物を室温で3時間混合した。この時点でpHは約6.4まで低下した。5M KOH溶液(20μL)の添加によりpHは7.5まで上昇した。次いで、得られたBoc−Arg(Boc)−NHSエステル(0.2mmol)をインスリン混合物に加え、反応をさらに3時間続けた。次いで、混合物をTFA(50μL)で酸性にし、水(10mL)で希釈し、一晩凍結乾燥させた。ペプチド、過剰なアシル化試薬およびPBS緩衝液からの塩を含有する凍結乾燥物質をTFA(20mL)に溶解し、室温で1時間静置して脱保護生成物を得た。混合物をロータリーエバポレーターでほぼ乾固するまでエバポレートし、CHCN:HO(1:9、20mL)に再溶解した後、ヘキサン(20mL)で抽出した。サンプルを実施例1に記載するように分析逆相HPLCにより分析し、これはトリアシル型生成物の主要なピークと、主要なピークの直前および直後にそれぞれ溶離する少量のテトラアシル型およびジアシル型インスリンを有する類似のクロマトグラフィープロフィールを示した。これらのクロマトグラフィー条件下では生成物は完全に溶解しなかったので生成物の相対量は決定しなかったが、約60〜70%の物質が所望のトリアシル型種であることを示した。
粗アシル型物質を実施例1に記載のようにカチオン交換クロマトグラフィーにより精製した。合わせた精製トリアシル型インスリンを約96mL〜75mLに濃縮し、HOで100mLまで希釈し、Vydac C18セミ分取カラム(内径10mm×250mm)にかけた。サンプルを2段階AB線形勾配(15分かけて0〜25%B、続いて100分かけて25〜75%B。A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN)を用いて流速4mL/分で溶離した。精製物質を凍結乾燥させて21mgを得た(全体の収率は約32%であった)。
実施例8
A0LysB0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリンを産生するための水/CHCN中でのインスリンのBoc−Lys(Boc)−NHSエステルでのアシル化、およびN,N’−ビス−Boc−1−グアニルピラゾール(Boc−グアニルピラゾール)を用いてのA0gHRB0gHRB29Lys−Nε−gHR−インスリンへのグアニジル化
「gHR」は、α−グアニジニルホモアルギニンを意味する。組換えヒトインスリン−Zn結晶(300mg、0.052mmol)をCHCN:PBS緩衝液(1:1、20mL)にpH10で溶解した後、pHを約7まで調整した。Boc−Lys(Boc)−NHSエステル(10当量、CHCN(2mL)中に230mg)を加え、室温で2時間混合した。この時点でBoc−Lys(Boc)−NHSエステル(230mg)をさらに加え、反応を2.5時間続けた。LC−MS分析は大量のトリアシル型種が存在し、少量のジアシル型種を示した。混合物をHO(50mL)で希釈し、凍結乾燥させた。TFA(20mL)で1時間脱保護し、続いてLC−MSにより、主要生成物よりわずかに早く溶出する約10%のテトラアシル型生成物およびわずかに遅く溶出する20%のジアシル型生成物に両側を挟まれた、トリアシル型形態のインスリン(約70%)がまた存在することを再度示した。サンプルをほぼ乾固するまでエバポレートし、CHCN:HO(30:70、30mL)に再溶解し、等量に2つにわけ、凍結乾燥させた。凍結乾燥させた一部のうちの1つ(0.0026mmol)をMeOH:HO(9:1、10mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.5mL)を加えた。みかけのpHは9.3であった。Boc−グアニルピラゾール(160mg、0.52mmol)を加え、反応をさらに1時間続けた。Boc−グアニルピラゾールをさらに160mg加え、反応をさらに1時間続けた。この時点でLC−MS分析は、1〜4個のBoc−グアニル基が付加されている生成物の存在を示した。
Boc−グアニルピラゾールをさらに800mg(2.6mmol)加え、反応をさらに4時間続けた。合計3.6mmolのBoc−グアニルピラゾールを加えた。これは、最初のアシル化工程で加えた過剰のリジン(1mmol)のアミノ基と反応することが予測された量よりも少ない量であるが、2.6mmolがトリLys−インスリンとの反応に利用された(1アミノ基あたり約15当量試薬過剰)。
6時間の反応時間の最後に、サンプルをロータリーエバポレーターでほぼ乾固するまで濃縮し、CHCN:HO(60:40)に再溶解し、凍結乾燥させた。凍結乾燥させたサンプルをTFA(20mL)で2時間処理して脱保護型生成物を得、濃縮乾固させ、CHCN:HO(15:85、20mL)に再溶解した。この時点でのLC−MS分析は、予測した質量のヘキサグアニジル型生成物を有する主要なピーク(物質の約60%)、そしてまた、同時に溶離する少量のペンタグアニジル型生成物を示した。
カチオン交換クロマトグラフィーにより精製を実施例1のように(しかし、異なるAB線形勾配(100分かけて25〜70%B)、流速4mL/分および8mLの分画)を用いる)行った。プールした画分(総体積88mL)をロータリーエバポレーターで約65mLまで濃縮し、次いでHO(90mL)で希釈した。サンプルを実施例1に記載したような最終RP−HPLC精製にかけて最終生成物を得た(43mg、全体の収率は約29%)。
実施例9
A0LysB0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリンを産生するための水/CHCN中での組換えヒトインスリンのBoc−Lys(tfa)−NHSエステルでのアシル化
組換えヒトインスリン−Zn結晶(200mg、0.034mmol)をCHCN:HO(1:1、10mL)にpH10で溶解し、次いで6Mリン酸を用いてpHを約7に調整した。Boc−Lys(tfa)−NHSエステル(1mmol)をBoc−Lys(tfa)−OH、NHSおよびDCCから実施例1に記載のように製造し、MeOH(10mL)に溶解した。インスリン溶液にBoc−Lys(tfa)−NHSエステル溶液(1.7mL、0.17mmol、5当量)を加えた。混合物を75分間反応させ、次いでTFA(0.5mL)を用いて酸性にし、30mLまで希釈した。分析HPLCおよびLC−MSにより3つのモノアシル型ピーク、2つのジアシル型生成物、および1つのトリアシル型生成物の存在を確認した。
実施例2に記載の逆相HPLC精製、続いて分離した種の凍結乾燥により、以下のような保護型生成物を得た:A0LysB0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリン(33mg)、A0LysB0Lys−インスリン(36mg)、B0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリン(23mg)、A0Lys−インスリン(12mg)およびB0Lys−インスリン(31mg)。
脱保護を2工程で行った。最初に、リジンαアミノ基からのBoc基の除去を、5個のサンプル各々をTFA(5mL)で30分間処理することにより達成した。次いで、溶液をほぼ乾固するまでエバポレートし、残留TFAをサンプルチューブに窒素を吹き込むことにより取り除いた。次いで、15%NHOH/HO(v:v)(6mL)を添加し、サンプルを室温に3〜4時間放置することによりTFA基をリジンεアミノ基から除去した。次いで、サンプルをHO(40mL)で希釈し、酢酸(1.5mL)でpH4まで酸性にした。サンプルを実施例1に記載のように最終精製にかけ、以下に示す最終量を得た:A0LysB0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリン(14mg)、A0LysB0Lys−インスリン(17mg)、B0LysB29Lys−Nε−Lys−インスリン(8mg)、A0Lys−インスリン(5mg)およびB0Lys−インスリン(16mg)。
実施例10
A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを産生するための水/CHCN中でのA21Gly−インスリンのBoc−Lys(Pbf)−NHSエステルでのアシル化
A21Gly−インスリン(230mg、0.040mmol)をCHCN:水(1:1、24mL)に溶解した。NaHPO・HO(200mg)を加えた。5M KOH溶液(約50μL)を加え、pHを10.5に調整した。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステルを、ジクロロメタン(DCM)中に30分間混合したBoc−Arg(Pbf)−OH、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびジシクロヘキシルカルボジイミヂイミド(DCC)(各0.4mmol)から製造した。次いで、混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。得られたBoc−Arg(Pbf)−NHSエステル(0.4mmol)をMeOH(4mL)に溶解した。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(1mL、0.1mmol、2.5当量)をインスリン溶液に加え、混合物を室温で1時間ろ過した。この時点でのpHは約9.8に低下した。6M HPOを用いてpHをさらに9.0まで低下させた。さらにBoc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(1mL、0.1mmol、2.5当量)をインスリン溶液に加え、混合物を室温でさらに1時間攪拌した。この時点で、混合物がモノアシル型およびジアシル型生成物を約57:43の比で含むことが逆相HPLC(Zorbax Eclipse XDB−C8内径4.6mm×15cmカラムで行う。15分での10〜100%BのAB線形勾配。A=0.05%TFA/HOおよびB=CHCN:HO(60:40)中0.05%TFA、流速1mL/分)により示された。さらに0.5mLのBoc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(0.05mmol、1.25当量)をインスリン溶液に加え、混合物を5分間攪拌した。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液の二回目の添加(0.5mL)を行い、混合物を10分間攪拌し、次いでトリフルオロ酢酸(TFA)を用いてpH3まで酸性にした。溶液をCHCN:水(50:50、20mL)で希釈し、ろ過した。最終反応混合物は、220nmでのUV測定からのHPLCピーク領域により決定すると、主要なモノアシル型およびジアシル型生成物を30:70の比で含んでいた。
粗アシル型物質をVydac C18(内径2.2cm×25cm)分取カラムでの逆相HPLCにより精製した。サンプルを以下の2段階AB線形勾配を用いて流速12mL/分で溶離した:(a)15分にわたり0〜18%B、続いて(b)100分かけて18〜68%B。ここで、A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN。ジアシル型インスリンを含む画分をプールし、凍結乾燥させて保護型生成物134mgを得た。この物質を、TFA:アニソール:MeOH:トリイソプロピルシラン(TIPS)(91:3:3:3、20mL)の混合物を用いて室温で1.5時間、脱保護し、次いで次いでほぼ乾固するまでロータリーエバポレーターで濃縮し、CHCN:HO(10:90)(25mL)に再溶解し、ジエチルエーテル(20mL)で2回抽出した。最終的な逆相HPLCでの精製により、上記と同じVydac C18カラムで12mL/分で以下からなる2段階AB線形勾配を用いて行った:(a)15分にわたり0〜15%B、続いて(B)100分にわたり15〜55%B。ここで、A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN。これにより全体的な収率の約33%であるA0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン生成物を得た(77mg)。
実施例11
A0Lys−Nε−ArgB29Lys−Nε−ArgA21Gly−インスリンを産生するための水/CHCN中でのA21Gly−インスリンの(1)Boc−Arg(Pbf)−NHSエステルおよび(2)Boc−Lys(Boc−Arg(Pbf))−NHSエステルでのアシル化
Boc−Lys(Boc−Arg(Pbf))−OHをCl−(2’−クロロ)トリチルポリスチレンポリマー上で合成した。ポリマーに、ジメチルホルムアミド(DMF):ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)混合物(90:10)中で二倍過剰のBoc−Lys(Fmoc)−OHをロードした。続いて、DMF中20%ピペリジン溶液を用いてFmoc基をリジンεアミノ基から除去した。次いで、Fmoc−Arg(Pbf)−OHのα−カルボキシレート(4倍過剰)を、DMF溶液中O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロ−フォスフェート(HBTU)およびDIEA(アミノ酸:HBTU:DIEAの比は1:0.95:3)を用いる活性化を介して遊離アミノ基へと連結した。20%ピペラジンのDMF溶液を用いてArgのεアミノ基からFmoc基を除去し、続いて5倍過剰のジ−tert−ブチル−ジカーボネート(Boc無水物)およびDIEAをDMF溶液中1:2の比で用いて遊離アミンをキャッピングした。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP):ジクロロメタン(DCM)(1:2、30mL)で、それぞれ40分間、2回処理することによりポリマーから化合物を切断した。併せた溶液をろ過し、ロータリーエバポレーターでエバポレートした。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステルおよびBoc−Lys(Boc−Arg(Pbf))−NHSエステルを実施例1に記載したように、個々の酸をDCM中で用いてNHSおよびDCCを同じ割合で混合して製造した。
A21Gly−インスリン(230mg、0.040mmol)をCHCN:水(1:1、24mL)に溶解した。NaHPO・HO(200mg)を加えた。5M KOH溶液(約50μL)を加えてpHを10.5に調整した。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステル(0.4mmol)をMeOH(4mL)に溶解した。Boc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(0.1mmol、2.5当量)をインスリン溶液に加え、混合物を室温で40分間攪拌した。この時点で、混合物が主に出発物質およびモノアシル型生成物を40:60の比で含むことが逆相HPLC(Zorbax Eclipse XDB−C8内径4.6mm×15cmカラムで行う。15分での10〜100%BのAB線形勾配。A=0.05%TFA/HOおよびB=CHCN:HO(60:40)中0.05%TFA、流速1mL/分)により示された。さらに0.6mLのBoc−Arg(Pbf)−NHSエステル溶液(0.06mmol、1.5当量)をインスリン溶液に加え、混合物を室温でさらに15分間攪拌し、この時点で主にインスリンはモノアシル型種に変換されていた。この時点でのpHは、6M HPOの添加に伴い10.2から9.0へと低下した。Boc−Lys(Boc−Arg(Pbf))−NHSエステル(0.12mmol)をMeOH(2mL)に溶解し、インスリン溶液に添加した。混合物を室温で30分間攪拌し、次いでCHCN:水(50:50、20mL)で希釈し、TFA(300μL)で酸性にし、ろ過した。逆相HPLCにより観察された主要なピークは、HPLC質量スペクトル分析により確認したBoc−Arg(Pbf)およびBoc−Lys(Boc−Arg(Pbf))の各1個で誘導体化した生成物に対応した。
粗アシル型物質をVydac C18(内径2.2cm×25cm)分取カラムでの逆相HPLCにより精製した。サンプルを以下の2段階AB線形勾配を用いて流速13mL/分で溶離した:(a)20分にわたり0〜30%B、続いて(b)100分かけて30〜80%B。ここで、A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN。ジアシル型インスリンを含む画分をプールし、凍結乾燥させて保護型生成物を得た(105mg)。この物質を、TFA:アニソール:MeOH:トリイソプロピルシラン(TIPS)(91:3:3:3)の混合物(20mL)を用いて室温で2時間、脱保護し、次いでほぼ乾固するまで濃縮し、CHCN:HO(10:90)(25mL)に再溶解し、ジエチルエーテル(20mL)で3回抽出した。最終的な逆相HPLCでの精製を、上記と同じVydac C18カラムで12mL/分で以下からなる2段階AB線形勾配を用いて行った:(a)15分にわたり0〜15%B、続いて(b)100分にわたり15〜55%B。ここで、A=0.05%TFA/HOおよびB=0.05%TFA/CHCN。これにより全体的な収率の約25%に対してA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン生成物を得た(60mg)。
実施例12
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンの製造
ヒトプロインスリンアナログA21GlyC64ArgC65Lys−ヒトプロインスリンをコードする配列を含むプラスミドを大腸菌内で発現させた。プロインスリンアナログを精製し、フォールディングさせた後、以下のようにアシル化した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステルを、ジクロロメタン(DCM)(3mL)中で40分間共に混合したBoc−Arg(Boc)−OH、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(各々0.4mmol)から製造した。次いで、混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。次いで、得られたBoc−Arg(Boc)−NHSエステル(0.4mmol)をMeOH(4mL)に溶解した。
A21GlyC64ArgC65Lys−ヒトプロインスリン(約108mg)の10mM HCl(180mL)溶液を2個に等量に分け、凍結乾燥させた。分けたプロインスリンの1つを水/CHCN(50/50、12mL)に再溶解した。NaHPO(80mg)を加えて濃度約50mM POとした。5M KOH溶液を用いてpHを8.2に調整した。Boc−Arg(Boc)−NHSエステル(1mL、0.1mmol、約20当量)を加え、混合物を室温で2.5時間攪拌した後、pHは7.4まで低下した。pHを8.2まで調整し、さらにBoc−Arg(Boc)−NHSエステル溶液(1mL)を加えた。溶液をさらに3時間混合した後、水で50mLまで希釈し、トリフルオロ酢酸(TFA)(200μL)を用いて酸性にし、凍結乾燥させた。凍結乾燥させた反応混合物をTFA:水(95:5、20mL)に再溶解し、室温に1.5時間放置した。TFA混合物をほぼ乾固するまでロータリーエバポレーターでエバポレートした後、10%CHCN/水(25mL)で希釈し、ジエチルエーテル(20mL)で2回抽出した。脱保護した混合物をZorbax Eclipse XDB−C8(内径4.6mm×15cmカラム)での逆相HPLC(15分にわたり10〜100%BのAB線形勾配。A=0.05%TFA/HOおよびB=CHCN:HO(60:40)中0.05%TFA。流速0.9mL/分)および質量分析測定により分析し、少量の「過アシル型」生成物である予測したよりもさらに3個多いArg残基(N末端アミンおよびB29:LysおよびC65:Lysのリジン側鎖アミンにそれぞれ1個)が付加している生成物を含有することがわかった。これはおそらく、Tyrの側鎖フェノール基、His側鎖のイミダゾール基、または他の反応側鎖部分へのArg残基の結合に起因する。過アシル化産物の結合の塩基触媒性加水分解によりこれらの産物の量を減少させるために、30分かけてプロインスリン溶液をpH10.5まで上昇させた。このpH迂回(excursion)プロセスにより、過アシル型種の量は実質的に減少した。30分間の高pHでの処理の後、TFAを用いてpHを約3まで低下し戻し、溶液を−20℃で保存した。
2個目のA21GlyC64ArgC65Lys−ヒトプロインスリンに対して、化学修飾、脱保護、およびpH迂回方法を繰り返した。得られたA21GlyB29Lys−Nε−ArgC64ArgC65Lys−Nε−Arg−ヒトプロインスリン誘導体溶液を合わせ、凍結乾燥させた。粗脱保護型物質の純度は、逆相HPLCピーク領域により判定すると、約65%であった。
アシル型プロインスリン誘導体をトリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで消化してリーダー配列および残基C31ArgからC64Argの「Cペプチド」を除去しながら、インタクトなC65Lys−Nε−ArgおよびB29Lys−Nε−Arg部分を残してA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン誘導体を形成した。Des−30インスリン生成物の形成は、B29Lys上の修飾により効率よくブロックされた。精製したA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを、以下の通りにインビトロおよびインビボ実験で用いた。
実施例13
インビトロレセプター親和性
ヒトインスリンレセプター(IR)に対するインスリン分子の親和性を、放射性標識リガンドである[125I]インスリンを用いる競合結合アッセイで測定した。ヒトインスリンレセプター膜を、安定にトランスフェクトした、レセプターを過剰発現する293EBNA細胞のP1膜調製物として製造した。アッセイは、同様の結果を有するろ過およびSPA(シンチレーション近接アッセイ)態様の両方で展開し、有効であったが、SAP態様では、PVT PEI処理小麦胚凝集素結合型SPAビーズ、タイプA(WGA PVT PEI SPA)ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して行った。
放射性標識リガンド([125I]組換えヒトインスリン)を社内で製造するか、またはAmersham Pharmacia Biotechから購入した(基準日の比活性2000Ci/mmol)。SPAアッセイ緩衝液は、50mMTris−HCL、pH7.8、150mM NaCl、0.1%BSAであった。アッセイは、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar,3632番)でのハイスループット用に構成し、Titertec/Plus(ICN Pharmaceuticals)により加えた放射性リガンド、膜およびSPAビーズを用いて自動化した。
以下のオーダーで試薬をプレートウェルに添加した。
Figure 2005519041
プレートを接着性プレートカバーでシールし、1分間、LabLine Instrumentsタイタープレート振盪機で振盪した。プレートをWallac Microbetaシンチレーションカウンターに配置し、タイマーを12時間に設定して室温(22℃)で12時間インキュベートした。計測は[125I]に関して正規化したプロトコルを用いて1ウェルあたり1分間行った。
各インスリン分子についてのIC50を4パラメーターロジスティック非線形回帰分析から決定した。データは平均値±SEMとして報告した。相対的親和性は、各実験において各インスリン分子を組換えヒトインスリンコントロールと比較した後、行った実験数にわたり相対的親和性を平均化することにより決定した。従って、インスリン分子の平均IC50とインスリンの平均IC50との比較は、同じ値を生じない。
各インスリン分子および組換えヒトインスリンのインスリン成長因子レセプター(IGF1−R)に対する親和性を、[125I]IGF−l放射標識リガンドを用いる競合結合アッセイで測定した。ヒトIGF−1レセプター膜を、安定にトランスフェクトした、レセプターを過剰発現する293EBNA細胞のP1膜調製物として製造した。アッセイは、同様の結果を有するろ過およびSPA(シンチレーション近接アッセイ)態様の両方で展開し、有効であったが、SAP態様では、通常、PVT PEI処理小麦胚凝集素結合型SPAビーズ、タイプA(WGA PVT PEI SPA)ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を利用して行った。[125I]IGF−1放射性標識リガンドを社内で製造するか、またはAmersham Pharmacia Biotechから購入した(基準日の比活性2000Ci/mmol)。SPAアッセイ緩衝液は、50mM Tris−HCL、pH7.8、150mM NaCl、0.1%BSAであった。アッセイは、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar,3632番)でのハイスループット用に構成し、Titertec/Plus(ICN Pharmaceuticals)により追加した放射性リガンド、膜およびSPAビーズを用いて自動化した。
以下のオーダーで試薬をプレートウェルに添加した。
Figure 2005519041
プレートを接着性プレートカバーでシールし、1分間、LabLine Instrumentsタイタープレート振盪機で振盪した。プレートをWallac Microbetaシンチレーションカウンターに配置し、タイマーを12時間に設定して室温(22℃)で12時間インキュベートした。[125I]に関して正規化したプロトコールを用いて計測を1ウェルあたり1分間行った。
各インスリン分子についてのIC50を4パラメーターロジスティック非線形回帰分析から決定した。データは平均値±SEMとして報告した。相対的親和性は、各実験における各インスリン分子を組換えヒトインスリンコントロールと比較した後、行った実験数にわたる相対的親和性を平均化することにより決定した。従って、各インスリン分子の平均IC50とインスリンの平均IC50の比較は、同じ値を生じない。
選択性インデックスは、IR相対的親和性のIGF−1R相対的親和性の比として計算した。選択性インデックス>1は、HIRに対する相対的親和性がより高いことを示す。選択性インデックス<1は、IGF−1Rに対する相対的選択性がより高いことを示す。
表1は、各インスリン分子および組換えヒトインスリンに対するインスリンレセプター(IR)親和性、インスリン様成長因子1(IGF1―R)レセプター親和性およびレセプター選択性インデックス(IR/IGF−R)を示す。
Figure 2005519041
実施例14
インビトロ代謝有効性
各インスリン分子および組換えヒトインスリンの代謝有効性(グルコース取込)を、分化したマウス3T3−L1含脂肪細胞を用いるグルコース取込アッセイで測定した。未分化のマウス3T3細胞を、増殖培地(100μl。DMEM、高グルコース、L−グルタミン不含、10%ウシ血清、2mM L−グルタミン、1%抗生物質/抗真菌剤溶液)中25,000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。
分化培地(DMEM、高グルコース、L−グルタミン不含、10%FBS、2mM L−グルタミン、1%抗生物質/抗真菌剤溶液、10mM HEPES、0.25mMデキサメタゾン、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)、5mg/mlインスリン)の添加により、プレーティング3日後に分化が開始した。48時間後(3日目)、インスリンを含むがIBMXまたはデキサメタゾンは含まない培地に分化培地を交換し、6日目に細胞をインスリン、IBMXまたはデキサメタゾンを含まない分化培地に切り替える。1日おきに交換しながら、細胞をFBS培地中に維持した。
Cytostar T96ウェルプレートを用いてグルコース輸送アッセイを行った。アッセイの24時間前に、細胞を、0.1%BSAを含有する血清不含培地(100μl)に切り替えた。アッセイ日に培地を除去し、アッセイ緩衝液(50μl。いわゆるKRBHまたはクレブス−リンゲル緩衝液、HEPES、pH7.4(118mM NaCL、4.8mM KCl、1.2mM MgSOX7HO、1.3mM CaCl、HO、1.2mM KHPO、15mM HEPES)を含有する)を加えた。インスリン希釈物を、0.1%BSAを含有する同じ緩衝液中で調製し、2×で添加した。ブランクはKRBH、0.1%BSAおよび20mM 2×2−デオキシ−D−グルコース、0.2μCi/ウェルの2−デオキシ−D−(U−14C)グルコースおよび2×10−7インスリンを含有した。細胞を37℃で1時間インキュベートした。その後、サイトカラシンB(10μl)を、KRBH中で最終濃度200μMで添加し、プレートをMicrobetaプレートリーダーで読み取った。相対的親和性は、各実験の各インスリン分子を組換えヒトインスリンコントロールと比較した後、相対的親和性を行った実験数で平均化することにより決定した。従って、各インスリン分子の平均EC50とインスリンの平均EC50の比較は、同じ値を生じない。
表2は、インスリン分子および組換えヒトインスリン各々についてのインビトロ代謝有効性を示す。
Figure 2005519041
実施例15
インビトロ有糸分裂促進活性(mitogenicity)
各インスリン分子の有糸分裂促進効力を、培養中のヒト乳房上皮細胞(HMEC)の増殖を測定することにより決定した。HMECは、Clonetics Corporation(San Diego,CA)から7継代目で入手し、拡張させて8継代目で凍結した。各時点で新しいアンプルを用いて、全ての実験がHMECの同じ10継代目で行われるようにした。細胞は、BioWhittakerの説明書に従って培養中で維持した。細胞培養物を維持するために、増殖培地は1日置きに交換し、培養物を毎日視察した。
BioWhittakerからの2つの製品を増殖培地として使用した。
1.以下のものを含有する、充分補充したMEGM(CC−3051)(量はBPEを除き、最終濃度を示す。)
10ng/ml hEGF(ヒト組換え上皮細胞増殖因子)
5μg/mlインスリン
0.5μg/mlヒドロコルチゾン
50μg/mlゲンタマイシン、50ng/mlアンフォテリシン−B
13mg/ml BPE(ウシ下垂体抽出物)2ml(付属)。および
2.以下に列挙する補充物(SingleQuots,CC−3150)を全て含む基本培地(MEBM,CC−3151)
13mg/ml BPE(ウシ下垂体抽出物(CC−4009)2ml
10μg/ml hEGF(CC−4017)0.5ml
5μg/ml インスリン(CC−4031)0.5ml
0.5mg/mlヒドロコルチゾン(CC−4031)0.5ml
50mg/mlゲンタマイシン、50mg/mlアンフォテリシン−B(CC−4081)0.5ml。
増殖実験に関しては、アッセイ培地は5μg/mlインスリンを含有せず、0.1%BSAを含有する増殖培地である。アッセイは、96ウェルCytostartシンチレーションマイクロプレート(Amersham Pharmacia Biotech、RPNQ0162)で行った。組換えヒトインスリンおよびIGF−1は、各アッセイ試行で用いたコントロールであり、組換えヒトインスリンは各アッセイプレートに関するものである。
アッセイは以下のプロトコルに従って行った。1日目に、HMECをアッセイ培地100μl中4000細胞/ウェルの密度で播種した。増殖培地中のインスリンを、最終濃度0〜1000nMで段階的な用量の組換えヒトインスリンまたは他のインスリン分子と置き換えた。4時間のインキュベーション後、アッセイ培地10μl中0.1μCiの14Cチミジンを各ウェルに加え、プレートを48時間目および/または72時間目にTriluxで読み取った。
通常、最大増殖応答は、規定値の3〜4倍の刺激の間であった。応答データを0〜100%応答の間に正規化した[100×(濃度Xの時の応答−濃度0の時の応答)÷(最大濃度の時の応答−濃度0の時の応答)]。濃度−応答データは、JMPソフトウェアを利用して非線形回帰に適合させた。
各実験の各インスリン分子をインスリンコントロールと比較した後、行った実験数で相対的効力を平均化することにより相対的有糸分裂促進効力を決定した。従って、各インスリン分子の平均EC50とインスリンの平均EC50の比較は、同じ値を生じない。
表3は、各インスリン分子についての細胞増殖に関して測定したインビトロ有糸分裂促進活性を示す。表3のデータは、各インスリン分子が組換えヒトインスリンよりも有糸分裂活性が低いことを示す。
Figure 2005519041
実施例16
リン酸緩衝化生理食塩水溶解性
インビボでの時間作用(time−action)を延長する傾向の指標であるインビトロ沈殿アッセイを、以下のようにして開発した。pH4に調整し、薬理学的用量のインスリン分子(100国際単位)およびZn2+(30μg/ml)、m−クレゾール(2.7mg/ml)およびグリセロール(17mg/ml)を含有する水溶液を2国際単位までリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で中和し、14,000rpmで5分間、RTで遠心分離した。上清を取り出し、上清の約10分の1を分析Symmetry Shield RP8 RP−HPLCシステム(Waters,Inc.)に注入した。溶離ピーク下の領域を積分し、参照標準(これは0.1N HCl中のいずれかの組換えヒトインスリンである)のピーク下の領域と比較した。領域の比に100をかけてPBS中への溶解性%を得た。
組換えヒトインスリン製剤および各インスリン分子についてのPBS溶解性を表4に示す。
Figure 2005519041
実施例17
等電点
等電点電気泳動法は、等電点(pI)に基づいてタンパク質を分離する電気泳動技術である。pIは、タンパク質が正味の電荷を有さず、電場で動かないpHである。IEFゲルは効率よくpH勾配を作製するので、タンパク質は独特のpI特性に基づき分離する。タンパク質バンドの検出はNovexコロイド状クーマシー染色キットのような感度の良い色素染色により達成することができる。あるいは、検出は、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)メンブレン上へのゲルのブロッティングおよびポンソーレッドでの染色により達成することができる。タンパク質のpIは、既知の標準品のpIと比較することにより決定する。IEFタンパク質標準品は、均一な染色を与えるように混合された、非常に良く特徴付けられているpI値を有するタンパク質の組合せである。さらに別のpI測定方法は、キャピラリー電気泳動によるIEFである(cIEF)。pIは、公知のマーカーとの比較により測定される。
組換えヒトインスリンおよび各インスリン分子の等電点(pI)は、pH3〜10のNovex IEFゲルを用いるゲル等電点電気泳動(3.5〜8.5のpI性能範囲を提供する)により測定した。等電点を表5に示す。
Figure 2005519041
実施例18
イヌでのインビボ研究
一晩絶食させた、(大腿動静脈に)カニューレを挿入したままの(chronically cannulated)意識のある雄性および雌性ビーグル(Marshall Farms,North Rose,NY)で実験を行った。実験日には、留置血管アクセスポート(Access Technologies,Norfolk Medical,Skokie,IL)をアクセスさせて通過させ(accessed and cleared)、動物を3’×3’研究用ケージに入れた。イヌをケージ環境に少なくとも15分間順応させた後、空腹時のインスリンおよびグルコース濃度(時間=−30分)を測定するために動脈血サンプルを採取した。この時点で、環状ソマトスタチン(BACHEM,Torrence,CA)の静脈内連続注入(0.65μg/kg/分)を開始し、その後24.5時間継続した。注入開始の30分後(時間=0)に、動脈サンプルを採取し、生理食塩水またはインスリン調製物(2nmol/kg)の皮下ボーラスを頚部背側面に注射した。その後、血漿グルコースおよびインスリン濃度の測定のために、動脈血サンプルを定期的に採取した。
Beckman Glucose Analyzer II(Beckman Instruments Inc.,Brea,CA)でグルコースオキシダーゼ法を用いて試験日に血漿グルコース濃度を測定した。インスリン分析の時まで血漿サンプルは−80℃で保存した。ヒトインスリンおよびインスリン分子に対して感受性のある市販のラジオイムノアッセイキットを用いてインスリン濃度を決定した。
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−ArgインスリンおよびNPHインスリンはそれぞれ、生理食塩水コントロールよりも良好な時間作用を示した。A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン溶液は、NPHインスリンに匹敵する時間作用を示した。
A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンおよびA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを生理食塩水およびインスリングラルギン(A21GlyB31ArgB32Arg−インスリン)と比較した。2個の各試験において、A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンおよびグラルギンは、生理食塩水コントロールよりも長い時間作用を示した。最初の研究では、A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンおよびA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンはグラルギンに匹敵する時間作用を示した。第2の研究では、A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンおよびA0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンはグラルギンよりも短い時間作用を示した。
実施例19
ラットにおけるインビボ研究
一晩絶食させた後に、(大腿動静脈に)カニューレを挿入したままの(chronically cannulated)雄性Sprague Dawleyラットで実験を行った。実験日の朝に、カテーテルの中身を吸引し、カテーテルの末端を延長ラインに取り付け、動物を12”×12”研究ケージに配置した。30分の順応時間の後、動脈血サンプルを採取し、ビヒクル(0.3%ラットアルブミンを含有する生理食塩水)またはインスリン分子(0.3%ラットアルブミンを含有する生理食塩水で希釈したインスリン分子製剤。0.1、0.2、0.4、0.8または1.2nmol/kg。n=5/1投薬量)のivボーラスを投与した。血液は、静脈内注射の10、20、30、45および60分後に採取した。
全血液サンプルを2ナトリウムEDTAを含有するチューブに回収し、氷上に置いた。サンプルを遠心分離し、血漿を回収し、Monarch Clinical Chemistry Analyzerを用いて、試験日の血漿グルコース濃度を測定した。
グルコース曲線下領域(0〜30分)を、台形公式を用いて計算した。種々の投薬量に関して得られた値を、GraphPad Prismを用いてグラフ化した。2.45g・分/dLの曲線下のグルコース領域に対応する投薬量を決定し、インスリン製剤の相対的有効性を直接比較するために用いた。
1つの実験では、組換えヒトインスリンの推定有効性は0.160nmol/kgであり、A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関しては0.158nmol/kgであった。
別の実験では、組換えヒトインスリンの推定有効性は0.162nmol/kgであり、A0ArgA21GlyB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関しては0.200nmol/kgであった。
別の実験では、組換えヒトインスリンの推定有効性は0.207nmol/kgであり、A0ArgA21SerB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関する推定効力は0.226nmol/kgであり、A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関する推定効力は0.268nmol/kgであった。
別の実験では、組換えヒトインスリンの推定有効性は0.317nmol/kgであり、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関する推定効力は0.320nmol/kgであった。
別の実験では、組換えヒトインスリンの推定効力は0.217nmol/kgであり、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関する推定効力は0.275nmol/kgであり、A0ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンに関する推定効力は0.258nmol/kgであった。
実施例20
A0ArgB0Arg−インスリン亜鉛結晶およびプロタミン−亜鉛結晶
ストック溶液Aは、合成グリセリン(16.1g)、フェノール(0.73g)およびm−クレゾール(1.6mL)を約350mLの滅菌灌流用水に溶解することにより製造した。溶解後、滅菌水を最終溶液重量(503g)まで加えた。硫酸プロタミンストック溶液は、硫酸プロタミン(0.0366g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。A0ArgB0Arg−インスリンストック溶液は、A0ArgB0Arg−インスリン(0.0121g)をストック溶液(1.28mL)に溶解することにより製造した。酸化亜鉛ストック溶液は、25mg/mL酸化亜鉛溶液(1mL)を最終体積(25mL)まで希釈して最終酸化亜鉛濃度(1mg/mL)を得ることにより製造した。リン酸ナトリウムストック溶液を、二塩基性リン酸ナトリウム(0.0577g)を滅菌水(15mL)に溶解することにより製造した。塩化ナトリウムストック溶液は、塩化ナトリウム(1.1607g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。
A0ArgB0Arg−インスリン亜鉛結晶実験に関しては、A0ArgB0Arg−インスリン、酸化亜鉛およびストック溶液Aを酸性のpHで混合した。塩化ナトリウムもまた、いくらかのサンプルに添加した。全サンプルを合わせて最終体積0.1mLとした。リン酸ナトリウムストック溶液(0.1mL)を加え、析出物を形成させた。最終pHを7.4〜9.3の間に調整した。硫酸プロタミンもA0ArgB0Arg−インスリン、酸化亜鉛、塩化ナトリウムおよびストック溶液Aと合わせることを除いては、後は同じ方法で、A0ArgB0Arg−インスリンプロタミン−亜鉛結晶を製造した。
次いで、各サンプルを2つに分けた。サンプルのうちの1つを30℃でインキュベートし、他方のサンプルを室温に放置した。試験した条件を表6に示す。試験した条件の各セットに関して結晶を観察した。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
実施例21
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン亜鉛結晶およびプロタミン−亜鉛結晶
ストック溶液Aおよび酸化亜鉛のストック溶液、リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを実施例20に記載の通りに製造した。
硫酸プロタミンストック溶液は、硫酸プロタミン(0.0332g)をストック溶液A(10mL)に溶解することにより製造した。A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Argインスリンストック溶液は、A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.0112g)をストック溶液A(1.25mL)に溶解することにより製造した。
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Argインスリン亜鉛結晶実験に関しては、A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン、酸化亜鉛およびストック溶液Aを酸性のpHで混合した。塩化ナトリウムもまた、いくらかのサンプルに添加した。全サンプルを合わせて最終体積0.1mLとして、異なる条件を得た。リン酸ナトリウムストック溶液(0.1mL)を加え、析出物を形成させた。最終pHを7.4〜9.3の間に調整した。
硫酸プロタミンもA0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン、酸化亜鉛、塩化ナトリウムおよびストック溶液Aと合わせることを除いては、後は同じ方法で、A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンプロタミン−亜鉛結晶を製造した。
次いで、各サンプルを2つに分けた。サンプルのうちの1つを30℃でインキュベートし、他方のサンプルを室温に放置した。試験した条件を表7に示す。試験した条件の各セットについて結晶を観察した。濃度は全て公称である。
塩化ナトリウム濃度およびpHを最適化するために、さらに実験を行った。ストック溶液Aは、合成グリセリン(12.8g)、フェノール(0.59g)およびm−クレゾール(1.28g)を約300gの滅菌水に溶解することにより製造した。溶解後、滅菌灌流用水を最終総溶液重量(403g)まで加えた。硫酸プロタミンストック溶液は、硫酸プロタミン(0.033g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリンストック溶液は、A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.0042g)をストック溶液(0.3mL)に溶解することにより製造した。酸化亜鉛ストック溶液は、酸化亜鉛(0.0308g)を5N塩酸(1mL)に溶解することにより製造し、滅菌水を最終体積(25mL)まで添加した。リン酸ナトリウムストック溶液を、二塩基性リン酸ナトリウム(0.1893g)を滅菌灌流用水に溶解して最終溶液体積50mLにすることにより製造した。塩化ナトリウムストック溶液は、塩化ナトリウム(1.173g)を滅菌灌流用水(10mL)に溶解することにより製造した。
A0ArgB0ArgB29Lys−Nε−Argインスリン、硫酸プロタミン、酸化亜鉛、塩化ナトリウムおよびストック溶液Aを合わせて最終体積0.1mLとした。リン酸ナトリウムストック溶液(0.1mL)を加え、析出物を形成させた。最終pHを7.4〜9.3の間に調整した。
次いで、各サンプルを2つに分けた。1つのサンプルを30℃でインキュベートし、他方のサンプルを室温に放置した。試験した条件を表8に示す。試験した条件の各セットに関して結晶を観察した。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
Figure 2005519041
実施例22
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン亜鉛結晶
以下の実験に関して、ストック溶液Aおよび塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、酸化亜鉛およびクエン酸ナトリウムのストック溶液を以下の通りに製造した。
ストック溶液Aは、合成グリセリン(128.2g)、フェノール(5.9g)、m−クレゾール(12.9g)および二塩基性リン酸ナトリウム(30.3g)を約3500mLのmilli−Q水に溶解することにより製造した。溶解後、milli−Q水を最終溶液重量(4000g)まで加えた。
塩化ナトリウムストック溶液は、塩化ナトリウム(1.1614g)を滅菌灌流用水(10mL)に溶解することにより製造した。
リン酸ナトリウムストック溶液は、二塩基性リン酸ナトリウム(0.7538g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。このリン酸溶液(0.5mL)を滅菌水(9.5mL)に希釈した。
酸化亜鉛ストック溶液は、25mg/mL酸化亜鉛ストック溶液(0.4mL)を滅菌水(9.6mL)に溶解して最終酸化亜鉛濃度(1mg/mL)を得ることにより製造した。
クエン酸ナトリウムストック溶液は、クエン酸ナトリウム(2.9597g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。
1つの実験では、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンのストック溶液は、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.00335g)をストック溶液A(0.65mL)に溶解することにより製造した。溶液は濁り、pHはおよそ7.1であった。pHを約3.7に調整すると、溶液は透明になった。
結晶化は、まず、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを酸化亜鉛と合わせ、ストック溶液Aおよび塩化ナトリウムストック溶液を添加することにより設定した。溶液のpHを4未満に維持した。次いで、リン酸ナトリウムストック溶液を加え、沈殿を形成した。最終的なpHは6.5〜9.5の間に調整した。次いで、各サンプルを3つに分けた。1個のサンプルを5℃でインキュベートし、1個のサンプルを30℃でインキュベートし、他方1個のサンプルを室温に放置した。試験した条件および観測を表9に示す。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
Figure 2005519041
別の実験において、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンのストック溶液は、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.0032g)をストック溶液A(0.65mL)に溶解することにより製造した。溶液は濁り、pHは約7.1であった。pHを約3.7に調整すると溶液は、透明になった。
結晶化は、まず、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを酸化亜鉛と合わせ、ストック溶液Aおよび塩化ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウムのストック溶液を添加することにより設定した。溶液のpHを4未満に維持した。次いで、リン酸ナトリウムストック溶液を加え、沈殿を形成した。最終的なpHは6.5〜9.5の間に調整した。次いで、各サンプルを3つに分けた。1個のサンプルを5℃でインキュベートし、1個のサンプルを30℃でインキュベートし、他方1個のサンプルを室温に放置した。試験した条件および観測を表10に示す。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
別の実験において、酢酸ナトリウムのストック溶液は、酢酸ナトリウム(0.8203g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンのストック溶液は、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.003g)をストック溶液A(0.63mL)に溶解することにより製造した。溶液は濁り、pHは約7.1であった。pHを約3.7に調整すると溶液は、透明になった。
結晶化は、まず、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを酸化亜鉛と合わせ、ストック溶液A、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムのストック溶液を添加することにより設定した。溶液のpHを4未満に維持した。次いで、リン酸ナトリウムストック溶液を加え、沈殿を形成した。最終的なpHは6.5〜9.5の間に調整した。次いで、各サンプルを3つに分けた。1個のサンプルを5℃でインキュベートし、1個のサンプルを30℃でインキュベートし、他方1個のサンプルを室温に放置した。
試験した条件および観測を表11に示す。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
Figure 2005519041
別の実験において、塩化亜鉛ストック溶液は、10mg/mL酸化亜鉛溶液(1.0mL)を滅菌水(1.0mL)で希釈することにより製造した。最終的な酸化亜鉛濃度は5mg/mLであった。
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンのストック溶液は、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.00221g)を滅菌水(0.43mL)に溶解することにより製造した。溶液はほぼ清澄であり、pHが約3.7であることをチェックした。pHを約3.0に調整すると溶液は、透明になった。
結晶化は、まず、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンを酸化亜鉛と、塩化ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムのストック溶液のいずれかと混合することにより、準備した。溶液のpHを約3未満に維持した。次いで、リン酸ナトリウムストック溶液を加え、沈殿を形成した。最終的なpHは6.5〜8.5の間に調整した。各サンプルを室温で放置した。試験した条件および観測を表12に示す。濃度は全て公称である。
Figure 2005519041
実施例23
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンプロタミン−亜鉛結晶
ストック溶液Aは、合成グリセリン(16.1g)、フェノール(0.73g)およびm−クレゾール(1.6mL)を約350mLの滅菌水に溶解することにより製造する。溶解後、滅菌水を最終溶液重量(503g)まで加えた。硫酸プロタミンストック溶液は、硫酸プロタミン(0.0366g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造した。
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリンストック溶液は、A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン(0.0121g)をストック溶液A(1.28mL)に溶解することにより製造する。酸化亜鉛ストック溶液は、25mg/mL酸化亜鉛溶液(1mL)を最終体積(25mL)まで希釈して最終酸化亜鉛濃度(1mg/mL)を得ることにより製造する。リン酸ナトリウムストック溶液を、二塩基性リン酸ナトリウム(0.0577g)を滅菌水(15mL)に溶解することにより製造する。塩化ナトリウムストック溶液は、塩化ナトリウム(1.1607g)を滅菌水(10mL)に溶解することにより製造する。
A0Lys−Nε−ArgA21GlyB29Lys−Nε−Arg−インスリン、酸化亜鉛、硫酸プロタミン、塩化ナトリウムおよびストック溶液Aを合わせて最終体積0.1mLとし、異なる条件を得る。リン酸ナトリウムストック溶液(0.1mL)を加え、沈殿物を形成する。最終的なpHを7.4〜9.3の間に調整する。
次いで、各サンプルを2個に分ける。1個のサンプルを30℃でインキュベートし、他のサンプルを室温に放置する。試験した条件を表13に示す。結晶を観察する。
Figure 2005519041
本発明を好ましい態様に関して具体的に示し、記載したが、当業者であれば、形態および詳細における種々の変更は、特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲を逸脱することなく行われうることを理解するであろう。当業者は、慣用的にすぎない実験を用いて、本明細書中に具体的に記載した本発明の特定の態様に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。このような等価物は、本発明の請求の範囲に含まれることが意図される。
本明細書中に記載の全ての特許、特許出願、物品、本および他の刊行物を、参照してそのまま本明細書中に組み込む。
図1は、Lysのεアミノ基とArgのα−カルボキシル基との間に共有結合を形成することにより得られるLys−Nε−Arg誘導体を示す。
【配列表】
Figure 2005519041
Figure 2005519041
Figure 2005519041

Claims (53)

  1. (a)式I:
    Figure 2005519041
    [式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載されている。]
    で示されるA鎖、および
    (b)式II:
    Figure 2005519041
    [式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。]
    で示されるB鎖を有するインスリン分子であって、
    配列中、
    A−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
    A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
    A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、
    B−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
    B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
    B28位のXaaはLysまたはProであり、
    B29位のXaaはLysまたはProであり、
    B30位のXaaはThr、Alaであるかまたは存在せず、
    B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれか1つはLysであり、
    B28位のXaaおよびB29位のXaaの両方共がLysであることはなく、
    B28位またはB29位のLysのεアミノ基は正に荷電したアミノ酸のα−カルボキシル基に共有結合してLys−Nε−アミノ酸誘導体を形成している、インスリン分子。
  2. B28位またはB29位のLysのεアミノ基がArgのαカルボキシル基に共有結合してLys−Nε−Argを形成している、請求項1に記載のインスリン分子。
  3. B28位またはB29位のLysのεアミノ基がLysのαカルボキシル基に共有結合してLys−Nε−Lysを形成している、請求項1に記載のインスリン分子。
  4. A−1位のXaaおよびB−1位のXaaが存在しない、請求項1に記載のインスリン分子。
  5. B−1位のXaaおよびB0位のXaaが存在しない、請求項1に記載のインスリン分子。
  6. A−1位のXaa、B−1位のXaaおよびB0位のXaaが存在しない、請求項1に記載のインスリン分子。
  7. A0位のXaaがArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
    B0位のXaaがArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在しない、請求項4に記載のインスリン分子。
  8. A0位のXaaがArgであり、
    B0位のXaaが存在しない、請求項7に記載のインスリン分子。
  9. A0位のXaaがArgであり、
    B0位のXaaがArgである、請求項7に記載のインスリン分子。
  10. 真性糖尿病の治療用の医薬の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインスリン分子の使用。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のインスリン分子を含有する組成物。
  12. 組成物が医薬組成物である、請求項11に記載の組成物。
  13. 1種以上の製薬上許容される賦形剤をさらに含有する、請求項12に記載の組成物。
  14. 二価の金属カチオンをさらに含有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項14に記載の組成物。
  16. ヒトインスリンをさらに含有する、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物。
  17. 迅速に作用する(速効型)インスリンアナログをさらに含有する、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物。
  18. 真性糖尿病の治療用の医薬の製造のための、請求項11〜17のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  19. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のインスリン分子、および二価の金属カチオンを含有するが、プロタミンを含有しない、微結晶。
  20. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項19に記載の微結晶。
  21. 請求項4、6、7、8または9のいずれか1項に記載のインスリン分子、二価の金属カチオンおよびプロタミンを含有する微結晶。
  22. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項19に記載の微結晶。
  23. インスリン分子を含有する成分を二価の金属カチオンと、インスリン分子のヘキサマーの形成を可能とするpHで水性溶媒中で接触させることを含む、請求項19に記載の微結晶の製造方法。
  24. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記成分をヘキサマー安定化化合物と接触させることをさらに含み、該ヘキサマー安定化化合物がヘキサマー形成を容易にする濃度で存在している、請求項23に記載の方法。
  26. 真性糖尿病の治療用の医薬の製造のための、請求項19に記載の微結晶の使用。
  27. (a)インスリン鋳型の各遊離アミノ基を保護アミノ酸または保護アミノ酸誘導体でアシル化してアシル型インスリン分子を形成すること、
    (b)アシル型インスリン分子を精製すること、
    (c)各保護型アミノ酸または保護型アミノ酸誘導体から保護基を除去して脱保護型アシル型インスリン分子を形成すること、および
    (d)脱保護型アシル型インスリン分子を精製することを含む、インスリン分子の製造方法。
  28. 保護型アミノ酸が活性型カルボン酸である、請求項27に記載の方法。
  29. 活性型カルボン酸がN−ヒドロキシスクシンイミドである、請求項28に記載の方法。
  30. インスリン鋳型が組換えヒトインスリンまたはそのアナログである、請求項29に記載の方法。
  31. インスリン鋳型がA21Xaa−インスリンである、請求項27に記載の方法。
  32. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のインスリン分子を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、高血糖の治療方法。
  33. 請求項11〜17のいずれか1項に記載の組成物を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、高血糖の治療方法。
  34. 被検体が真性糖尿病に関して処置される、請求項32または33に記載の方法。
  35. 請求項19に記載の微結晶を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、真性糖尿病の治療方法。
  36. (a)式I:
    Figure 2005519041
    [式Iのアミノ酸配列は配列番号1に記載されている。]
    で示されるA鎖、および
    (b)式II:
    Figure 2005519041
    [式IIのアミノ酸配列は配列番号2に記載されている。]
    で示されるB鎖を有するインスリン分子であって、
    配列中、
    A−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
    A0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニンまたはαメチルアルギニンであり、
    A21位のXaaは遺伝子学的にコード可能なアミノ酸であり、
    B−1位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであるか、または存在せず、
    B0位のXaaはArg、誘導体型Arg、ホモアルギニン、脱アミノホモアルギニン、脱アミノアルギニン、Lys、誘導体型Lys、脱アミノリジン、αグアニジノホモアルギニン、αメチルアルギニンであり、
    B28位のXaaはLysまたはProであり、
    B29位のXaaはLysまたはProであり、
    B30位のXaaはThr、Alaであるか、または存在せず、
    B28位のXaaまたはB29位のXaaのいずれか1つはLysであり、
    B28位のXaaおよびB29位のXaaの両方共がLysであることはない、インスリン分子。
  37. A−1位のXaaが存在せず、
    B−1位のXaaが存在しない、請求項36に記載のインスリン分子。
  38. A0位のXaaがArgまたはLysであり、
    B0位のXaaがArgまたはLysである、請求項37に記載のインスリン分子。
  39. A0位のXaaがArgであり、
    B0位のXaaがArgである、請求項38に記載のインスリン分子。
  40. 請求項36に記載のインスリン分子および二価のカチオンを含有する微結晶。
  41. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項40に記載の微結晶。
  42. プロタミンをさらに含有する、請求項40または41に記載の微結晶。
  43. 請求項36に記載のインスリン分子を含有する組成物。
  44. 二価の金属カチオンをさらに含有する、請求項43に記載の組成物。
  45. 二価の金属カチオンが亜鉛である、請求項44に記載の組成物。
  46. 組成物が医薬組成物である、請求項44に記載の組成物。
  47. 製薬上許容されるキャリアをさらに含有する、請求項46に記載の組成物。
  48. 真性糖尿病の治療用の医薬の製造のための、請求項36〜39のいずれか1項に記載のインスリン分子の使用。
  49. 真性糖尿病の治療用の医薬の製造のための、請求項43〜47のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  50. 請求項36〜39のいずれか1項に記載のインスリン分子を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、高血糖の治療方法。
  51. 請求項43〜47のいずれか1項に記載の組成物を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、高血糖の治療方法。
  52. 被検体が真性糖尿病に関して処置される、請求項50または51に記載の方法。
  53. 請求項40〜42に記載の微結晶を被検体の血糖濃度を調節するために充分な量で被検体に投与することを含む、真性糖尿病の治療方法。

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